まったく、いざ海賊が攻めて来るって段階になってからドタバタしすぎよ。
夜に入ったあたりからエダの様子がおかしかったけど、復活したと思えばいきなりとんでもない事を言うんだから!
それにしても、やっぱり海賊が来るのはコッチだったのね。
ルフィーとゾロの二人が南側に行っちゃったのがマズいわね。あの二人さえ居れば並の海賊なら楽勝だった筈なのに。
まずは今のメンバーでどう戦うのか確認しなくちゃ。
「ねえ、二人とも海賊が来たらどう戦うつもり?」
「隠れる?」 「ああ、それも一つの手だ」
こ、こいつ達。まさか私一人に戦わせるつもり!?
「だがまあ、ここはワシに任せておけ!」
なんだ、ちゃんと戦う気はあるのね。そうよキハーノさんは
──すっかり空も明るくなり、港へ海賊船が到着した。
この港にある〝長鼻大砲〟が使えればとっくに
海賊にしては事前の準備が周到すぎないかしら。
この人は任せておけって言うけれど、何か大きな見落としがあるんじゃないかと不安になるわ。
「ナミさん。援護は任せろ」
「もう、またそれ? 大丈夫よきっと。今はキハーノさんに任せておきましょう」
私の不安が伝わったのかエダが、任せろと言ってくる。勇気付けてるつもり? コイツがまともに戦ってる所って見たこと無いんだけど強いのかしら?
「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」
海賊が上陸し終えて一斉に坂を登ってきたわ。頼むわよ英雄様。
「そこで止まれお前たち!! 我が名はウソップ・キハーノ! この
凄い迫力! 海賊達も足を止めてたじろいでるわ。
そのままキハーノさんは堂々と〝長鼻〟を海賊船へと向け、静かに引き金を引く
パーンッ! という渇いた音が坂道に響き渡ると、彼は構えを解き、海賊船に真っ直ぐと指を差す
「海賊旗はお前達の象徴なのだろう? 引かぬと言うのなら、お前達もあの
風で揺れる
「うおぉ!? どうすんだ船長! アイツ全然衰えてないじゃねーか!?」
「チッ、オコメのヤロー適当な事抜かしやがって。英雄が出て来たんじゃ流石に分が悪ぃ」
効果覿面ね! 海賊たちの心は完全に折れてるわ。
「キハーノさん! スゲェ!! スゲェ!!」
「ちょっと、はしゃがないでよエダ。締まらないでしょ」
「ンンっ! もう一度言う! 大人しく引き下がるならば見逃してやろう!」
キハーノさんスゲェ! 覇王色でも使ってるのかって勢いで敵が恐れをなしてるよ。
あの
てっきりオコメかチューリップ頭が船長なのかと思ってたけど違ったみたいだな。
海賊旗はチューリップみたいなモチーフなのに、船長はツノハゲ男ってのは一体……?
「あ! あのハゲ、オレがチューリップを撃ち抜いたやつだ」
チューリップの印象がデカすぎて、ツノなんて目に入ってなかったよ。
「……そうか、お前が
やべ、声に出てた?
「アンタ! なに敵を刺激してんの! せっかく逃げ出しそうな流れだったのに!」
「ゴメンナサイ」
なんかチューリップのヤツ怒りすぎて血管が浮き出てないか?っていうか花は再生できないタイプなんだな。
オレの能力は
「ええい! 早く引き下がれ! 本当に撃ち抜くぞ!」
キハーノさんが銃を構える。このまま穏便に終わってくれるならソレでもいいかなぁ?
さっきから白目を向いてピクピクしてるチューリップがなんか怖いし。
「その銃でどうやって撃つって? ソイツは
ギクゥゥッ!!
なんか今、キハーノさんからそんな音がしたぞ。まさかな。
「テメェら! 恐がることはねぇ! いくら銃の腕が凄かろうと連発できねぇんじゃ
「あわわわ。バレた!」
マジか!? キハーノさん、そんな所で原作再現しなくてもいいのに!
チューリップも急に頭が冴えたみたいだけど、どうしてだ? 怒りで頭の血流が良くなったのか?
「ちょっと! アンタ
「んなもん勝手に周りが言ってるだけだ! ワシは
「威張るな!」
「行くぞテメェら。ハッタリの英雄とガキ二人だ、まさか怖ェなんて奴はいねェよな?」
「「「うぉぉぉぉぉ!!」」」
やっちまった! これは完全にオレのせいだよ。
さっきまでキハーノさんのハッタリで完全に場の空気ができてたのに、今じゃまるで逆転してる。
心なしか、晴れてた空まで曇ってきた気がするし。
ナミさんも慌てている。斧なんて持ってるけど戦いは苦手なんだろう。
ここは責任をとってオレが戦わないと。
考えてみたら初戦闘だ! 大盤振る舞いで能力を使ってやる!
とりあえず二人が立て直すまで足止めしておかなきゃな。
両手首から〝蔓〟を出して左右の岩壁に突き刺す。まだまだ!〝蔓〟同士を格子状に絡ませて極太の
最後に
「〝
「なんだ!? 急にイバラが!?」
「アイツ能力者か!?」
よしよし、慌ててるな。けどコレは相手が冷静になったら剣や斧で対処されるだろう。
アイツらが混乱してる今がチャンスだ! さっきのキハーノさんの
崖上に〝蔓〟を伸ばして木に巻きつける。
そのまま切り離さずに、伸ばしてる〝蔓〟を収縮させれば〝ゴムゴムのロケット〟
「アイツ、崖の上に逃げやがったぞ!」
逃げたんじゃない。
さっきの技で色々消耗してるから丁度いい。
〝根〟を最大速度で地中へ張り巡らす。おぉ、五臓六腑に染み渡るなぁ〜。
「エダ? 動かないけどどうしちゃったの!?」
「上へ逃げたんじゃないのか!? 隠れなけりゃ狙い撃ちされるぞ!」
そうか、当たり前だけど敵も鉄砲を持ってるんだ。
ここの岩盤はもう
「な、急に崖が崩れッ!!」
「ぐわぁぁ!」「逃げろ!」「イバラが!」「潰されるよりマシだ!」
激しい音が止んだ後、砂埃が舞い上がって視界が悪くなる。よし、今のうちに〝蔓〟で反対側の崖上へ移動しとかないと。
うわー、我ながらエゲツない自然破壊っぷりだなぁ。港から街への道が完全に塞がっちゃたよ。
けど、コレで敵は閉じ込められた。
今回は地形の条件が良すぎたなぁ。これから海賊になろうって言うのに、海での戦闘じゃ役に立てなそうで将来が不安だ……
おっと。今は目の前の戦いに集中しなきゃな! ちょうど風が吹いてきて視界も開けてきた。よしよし、あとは上から一人ずつ狙い撃つだけの簡単なお仕事だ。
「ニードル・キャノン!」
「うわぁ! 撃って来やがった!」
「避けろ!」「馬鹿押すな! トゲが!」「ぐわぁあ」「ひでぇ」「悪魔だぁ」
おーおー、好き勝手言いなさる。キハーノさんの勧告で帰ってればよかったのに。
にしても思ったより数が多いな。オレも
何故か
「テメェら! 騒いでる暇があったらイバラを切り払え! コイツさえ切っちまえば出られんだろうが!!」
やっぱりチューリップは気が付いたか。こうなると時間の問題だな。
どうする? コッチの崖も崩せば生き埋めにすることもできるけど、距離的にナミさん達も危険だな。うーん……
「よしッ! ここから抜けられるぜ!」
な、マズい!? 予想より早く抜けられた! 崖が崩落した振動でイバラが
「ナミさん! 逃げろ、敵が来るぞ!」
「はぁ? 逃げるワケないでしょ」
え? なんか雰囲気が違う。
いつの間にか髪を後ろに縛ってショートポニーテールにしてるし。それに、滅茶苦茶怒ってないか?
「この為に、わざわざ
ナミさんは斧──確かあの形状はバルディッシュって種類だったかな──その
えー。これってアレ? 竜巻がでちゃう感じ?
いやいや、まさかゾロじゃないんだから……
「〝トルネード=テンポ〟!!!」
イバラからやっとの思いで抜け出した海賊達が、竜巻に吹き飛ばされて岩盤や瓦礫に叩きつけられてる。
あ、オレのイバラもズタズタに切り裂かれてるや。
竜巻が収まったあとに立っている敵は一人もいなかった。
コレ、最初に使ってればとっくに終わってたんじゃないの? オレが
「驚いた? エダ。これが航海士の戦い方よ」
うん、絶対に違う。
っていうか、その斧どうなってんの? 振れば真空呪文が発生する魔法の玉でも埋め込まれてるんじゃないの?
はぁ、結局オレが倒した敵は10人もいないのに、ナミさんが残った敵を全部倒してくれたなぁ。海賊が無双するゲームで言うなら50 K.O.って所だ。
あれ? そういえば
「図体がデカいだけのノロマも役に立つ時があるもんだぜ……そこまでだガキども! 武器を捨てろ! 」
チューリップ! 仲間を盾にして竜巻を凌いだのか!? クソ! 完全に油断した!
四つん這いにされたキハーノさんの背中を踏んで、銃を頭に向けている。
「すまん! お前ら!」
「黙れ! ハッタリ野郎!」
「ごわっ」
「キハーノさん! やめて! 武器は手放すから!」
「おい! 上にいる
マズい! アイツに手の内を見せ過ぎたせいで下手に動けない。
〝根〟ならバレずに使えるか? いや、ここで崖を崩したら全員巻き込むからダメだ!
「見てみろこの惨状、ガキ二人相手に全滅だ。どいつもコイツも役に立たねぇ!! 散々バカにされた
「キハーノさんを離してくれ! 花を撃ったのはオレだ!」
「そうだテメェだ。テメェらみたいな
「ワシに構わず撃て! エダ! ッぐっ」
誰も動けない中、海へと抜ける強い風だけが無情にも吹き抜けてゆく。