第14話〝遅れてきた二人組〟
「オレは狙撃手じゃない!」
「またかよ。お前海賊団の名前もヤだって言ってたろ」
ゾロに呆れられる。でも、〝ルフィ海賊団〟ってアニメ初期の頃の、呼び方が安定してない時のやつだし!
まぁ、確かにゾロが言うように自分から「麦わらの一味の○○だ!」って言うのも多少は違和感あるんだけど。結局、そこを突かれて説得できなかった。
仕方ないので、海軍から〝麦わらの一味〟って呼ばれだすまでは、極力みんなが名乗らいように気を張っていよう。
それに、今は〝狙撃手〟の話だ。ルフィに直談判しなきゃ!
「けどよぉ。エダは狙撃が得意だろ?」
「副船長より下手!」
「はっはっは! そりゃそうだ。ワシとお前さんじゃ年季が違う」
この人のことはウソップって呼び捨てにするのもなんだし、ナミさんに倣って〝副船長〟って呼ぶことにした。本当は、この人こそ狙撃手のハズなんだけどなぁ。
だから、オレの〝狙撃手〟って肩書だけは何としても返上しないと!
この人には〝副船長 兼 狙撃手〟になってもらおう。
「まあ、本人が嫌みてぇだし何か考えてやったらどうだ?」
「ゾロ!」
狙撃手の話では援護してくれるのか! ありがたい!
「じゃあ、他に何が出来るんだ?」
!?
じゃあ、他に何が出来るんだ? 他に何が出来るんだ? 何が出来るんだ? 出来るんだ? るんだ?
ハッ!! 気絶しかけた! 何気ないルフィの一言がオレの心をかき乱す。
ふぅ焦った、こんなの前世で圧迫面接をくらった時以来だ。
……オレ、何が出来るんだ?
「固まっちまった」
「お前の聞き方が悪かったんだろ。何か好きなことは無いのか?」
好きなこと? ONE PIECE!とは答えられないよなぁ。漫画とかアニメだってこの世界には無いし、音楽なんて言ったら〝音楽家〟に任命されそうだし。
うーん? いざ趣味や特技って聞かれると思い浮かばないもんだなぁ。
「ちょっと! エダは無人島に居たのよ。生活するだけで精一杯だったんじゃないの?」
「無人島……あ! 能力で色々作れるんだった」
試しに、1/1スケール〝和道一文字〟
実は何度か刀は作った事があるから得意なんだ。今はゾロの持ってる本物が近くにあるから余計に作りやすい。
「すっげー! ゾロの刀そっくりだ!」
「ほう」
「木製の物なら何でも作れるのか!?」
副船長の食い付きがすごいな。パチンコとかは
その後、オレが作れる物を簡単に説明した。
| ・一度に出せる限界は、腕と同じ〝体積〟まで
・手から切り離す前なら〝形状〟と〝性質〟を自由に変えられる
・ただし変化させられる性質は、植物の持つ特性の範囲内
・植物由来でもゴムのように加工が必要なものは、能力では作れない
・一度切り離すと能力で変化はさせられない
・例外として能力で出した物にならば、新規で出した切り離し前の物と〝癒着〟は出来る |
|---|
ふう、オレの説明力で上手く伝わったか分からないけど、副船長は何か考え込んで黙ってしまった。
「なあエダ! おれにも刀くれよ! ゾロごっこしようぜ」
「いや、何本作らせる気だ」
あ! 一番肝心な事を言い忘れてた。
「ダメだ! やり過ぎると腹が減る」
「そりゃ、大問題じゃねェか! わりぃ! おれ知らなくてよ」
ルフィが自分の事のように心配してくれる。
まあ、地面から栄養を吸える時なら実質作りたい放題なんだけど。船の上じゃ無駄に食料は消費できないしな。
なんか狙撃手を辞退したいのに、いつの間にか違う話になっちゃったなぁ。
狙撃手阻止失敗。
それからの数時間は、海賊旗を作ったり帆にマークを描いたり色々と原作と同じ事をした。
ルフィが勝手に大砲を撃った時は焦ったけど、その後に副船長から手解きを受けてオレが撃つ事になったのはもっと焦った。
どんどん狙撃手に仕立て上げられてしまう! 一応、大砲は命中して岩礁を破壊。
誰か居たら大変だと言うオレの言葉に対して、副船長は誰の
なんかこの人時々〝見聞色〟の覇気使ってるよね?
とりあえず、ヨサクとジョニーを間違って攻撃しちゃう事はなかったハズだけど。それなら、あの二人と何処で出会うんだろう?
作業もひと段落したので、今は休憩を兼ねて皆でラウンジに集まっている。
「コックを仲間にしようぜ!」
「いきなりだなオイ!」
「でも賛成よ。折角キッチンもあるんだし」
あれ? 音楽家とか言わないの? 原作だと音楽家をいつも欲しがってたのに。
「誰か料理が作れるやつはいねェのか?」
「おれは食うだけでいい!」
「ワシも無理だ!」
「私は作ってもいいけど有料よ?」
「オレはウサギの丸焼きなら」
結局、原作通りコック探しのためにレストラン〝バラティエ〟へ行くことになった。
場所は副船長とナミさんが知っていた。情報通が二人もいると頼もしい。二人に言わせれば、オレ達三人に常識が無いだけらしいけど。
航海は数日かかるみたいだし、のんびりと船旅だ。
〜 航海 三日目 〜
昨日の夜はオレが見張り当番をした。マストの上から見える景色は壮観だったなぁ。
その後一寝入りして、さっきシャワーを浴び終わった所だ。急に文化的な生活ができる様になって感慨深い。
今は自由時間になったので、辞書で勉強しようと思ってたんだけど副船長に呼び止められてラウンジに連行された。
なんか、いつの間にか操舵棒の横に台が作られてるし! 昨日は無かったから1日で作ったのか?
原作と違って〝ウソップ工場〟とは書かれてないけど、工具も色々乗ってるしこれは間違いないな。
「ここは、ワシが様々な発明をする〝ウソップ工場〟だ!」
ほらね。文字が書かれてないのは、日本語がこの文化圏に無いからだろう。
「さあ! エダ! どんどん能力の実験をするぞ!」
はい?
このあと滅茶苦茶、実験された。
航路を外れる事もなく旅は順調。私が寝ている間は副船長が確認してくれるから大分楽になったわね。
お風呂まで付いてるし、前に乗ってたどの商船よりも快適だわ。
アイツらも自由時間以外はちゃんと仕事してくれるし、あとはコックさんが居てくれれば完璧ね。
私も今は自由時間なんだけど、どうしようかしら?
ルフィーは見張り当番なんだけど、相変わらず船首の上に座ってるわ。エダも最初は乗りたがってたけど、安定しない場所だからか諦めたみたいね。
今はルフィーの
ゾロは昼寝。コイツは仕事以外の時間、鍛錬と睡眠しかしてないんじゃないかしら?
エダと副船長も相変わらず何か実験してるみたいね。最初エダはお腹が減るから出来ないって断ってたんだけど、花壇の土から栄養を摂ってる所を見られて、副船長は一切遠慮しなくなったわ。
花壇の栄養が心配ね。故郷に寄った時に、みかんの木を植えようと思ってたのに。
「やっと終わった……ロウキ違反だ」
あら? エダも解放されたみたいね。たまに意味の分からない事を言ってるけど、やっぱり
最近は良く喋るようになったけど、ちゃんと辞書で勉強してるからかしら? 今も何か本を読んでるみたいね。
「エダ、その絵本どうしたの? 子供向けの辞典みたいだけど」
「え!? あ、えーと……」
「私が買ってあげた辞書の方が詳しく載ってるでしょ?」
「ゴメンナサイ」
どうやら
はぁ、あの時言ってくれれば一緒に行ったのに。
ん? 私が呆れていると急に真面目な顔になったわね。
「なに? 急に?」
「殴らなくちゃいけない奴ができた!」
本屋も災難ね。
「もう! 今は先に進むのが優先よ。字が読めないなら空いてる時間に教えてあげるから」
「ナミさん……任せろ!」
ちゃんと伝わったのかしら?
でも、コイツの境遇を考えれば字が読めないのも当然の話だったわ。あの時はいきなり居なくなって何考えてるのか分からなかったけど、ちゃんと理由があったんだわ。
そう考えると偶に言ってる訳の分からない事にも、きちんと理由があるのかもしれないわね。
「ねぇ、エダ。教会で言ってた〝でんでん虫〟? あれってどう言う意味だったの? ほら、プルプルってやってたアレよ!」
「ソレ ハ ワスレテ クレ」
また片言に戻っちゃたわ。
オレは決意した! 必ずあの邪知暴虐な
副船長の労基を無視したブラック実験から解放されて、ラウンジでボーっと辞典を眺めてたらナミさんに見つかってしまった。
あの時は、勝手に交換しちゃったから怒られると思ったんだけど。ナミさんは哀しそうな表情をするだけだった。
その
『大人一匹10万ベリー
『アーロン!!』『
『ルフィ……助けて…』
当たり前だ! その役目はルフィに任せるけど、オレも一発ぶん殴る!
今まで漫画の中のことだと思ってたけど、こうしてナミさんを目の前にするとアーロンの所業はとても許せるものじゃない。
今もナミさんは故郷の事を思って苦しんでいるハズだ。
「なに? 急に?」
ここでアーロンの名前は出せないな。でも、決意だけは伝えておこう。
「殴らなくちゃいけない奴ができた!」
ナミさんは一瞬呆気に取られたみたいだけど、すぐに続けた
「もう! 今は先に進むのが優先よ。字が読めないなら空いてる時間に教えてあげるから」
大丈夫だナミさん、ルフィが必ず助けてくれる。オレもアーロンには一発デカいのを食らわせてやるし!
「ナミさん……任せろ!」
目標が出来て急にやる気が出てきたぞ! 字も教えてもらえるみたいだし頑張るぞー!
その後ナミさんが〝電伝虫〟の一発ギャグの件を蒸し返してきて、オレの心は敢えなく砕け散った。
〜 数日後 〜
結局、ガイモンの島や1作目の映画に出てくるおでん屋に寄ることもなく、あとわずかでバラティエに着くみたいだ。
ウソップがオッサンだったから、サンジの代わりにおでん屋のジイさんが仲間になるんじゃないかとヒヤヒヤしたけど杞憂に終わりそうだ。
でも海上レストランでオレが活躍できる事はないだろうなぁ。
オレの能力は地面がない場所だと燃費が悪すぎて、まともに戦うのは厳しいって欠点がある。
メリー号の花壇の土は、もう栄養がスッカスカになっちゃたし打つ手なしだ。副船長め。
それに、せっかくナミさんが文字を教えてくれるって言うのに、副船長に捕まって中々機会が作れない。その代わり能力の開発や、狙撃の精度が向上したりはするんだけど。ぐぬぬ。
「
え? 島?
「おお! すっげー! 船みたいなレストランだな!」
「あれが
海上レストランじゃないの!?
なんか島から出てる桟橋とくっ付く形で建てられてるけど、見た目は
うーん? 陸地があるのはオレ的には嬉しいんだけど、また原作とズレるのか?
サンジまでオッサン化してたら泣くよ?
「お!おれ達以外にも客がいるんだな」
「そりゃそうだ。ここの料理の評判はワシの故郷でも噂になるくらいだしな。西を目指す航路の上にあるってのも大きいが」
「桟橋に停まってる船以外にも
ゾロが後ろを指差す。
そうだった。ここで海軍のフルボディが出てきて……
「オウオウ、なんだテメェら! 海賊か? おれ達〝
「なんだ? おまえら?」
どう見ても〝ニャーバン・
何で今? なに? 遅刻?
「
「へへ、もう準備できてるぜ
「アイツら! 撃ってきやがった!?」
「ゴムゴムの……〝風船っ〟!!」
えー。何でルフィ
ドゴーン
案の定バラティエの上部、おそらくゼフの部屋に直撃した。
「ブチ、レストランへは
「おう! 進路変更!」
ネコネコ団が勝手に喧嘩撃ってきて、勝手に帰って行きそうだ。
いや〝団〟って言っても二人だけみたいだけど。アイツら二人だけでよくデカい船を動かせてるなぁ。
「エダ! 良く見ておけ! コイツが〝長鼻〟の真骨頂だ!」
そう言って副船長が撃った砲弾は、ネコを模した船首だけ綺麗に破壊した。あれ
「よし! やってみろ!」
「ダメだ、アイツら逃げてる」
「そうよ。砲弾だってタダじゃ無いんだから! 逃げてる奴にまで使ってたら勿体無いじゃない」
結局、ネコネコ団はオールを漕いで素早く逃げていった。副船長が砲撃する前から逃げようとしてたし、バラティエにいるゼフを怖がってたのかな?
「あれ? ルフィは?」
「レストランへ
桟橋へ船を着けて、オレたちもレストランへ入って行く。
ようやく、サンジと会えそうだ。ちょっと緊張してきたな、オレは前世でもサンジに憧れてたから芸能人に会うみたいな心境だ。
頼む! オッサンになってないでくれ!!
「いらっしゃいませ! イカ野郎!」
セーフ! 別のオッサンだ。