「うまっ!」 「うめェな」 「おいし〜」
オレ達は案内されるままテーブルに着き食事中だ。店内は他にも客が数組いたけど、店に砲弾が直撃したのもお構いなしに、みんな食事を楽しんでいるみたいだ。多分、日常茶飯事なんだろう。
原作通りにウェイターは全員辞めてしまったのか、パティと思われるコックがホールを担当している。なぜか、パティは素肌の上に小さい上着を羽織っただけっていうワイルドな格好なんだけど。
胸元全開で接客して大丈夫?
それにしても、料理は美味いなぁ。期待以上の美味さで黙々と食べてしまってた。
「あの、
「そりゃそうだ。アイツは海賊だったんだろ?」
「そんな話もあったわね。けど結局見つからなかったのよね?」
「まあ、オコメの飯も美味かったがここには到底かなわないな!」
「ヘボイモおそれ入ります」デヘッ!
びっくりした! ぎこちない笑顔のパティは心臓に悪いよ。
「てめェは引っ込んでろパティ、交代だ」
サンジー! 見た目もそのまま! よかった〜! もしかしたら、このままパティが一味に加入するんじゃないかと不安だったんだ。
うんうん。ちゃんとレディーにデレデレな所も原作通りだ。今も目の前でナミさんに一目惚れして〝恋はいつでもハリケーン〟状態だ。
ナミさんは、ちゃっかり
「ありがと。ウェイターさん♪」
「あ、いや。申し遅れましたレディー、おれはコックでして。〝副料理長
うんうん。ちゃんと原作通り副料理長だってばよ。
ん?
「こちらフルーツのマチェドニアをどうぞ、お姫さま」
「わあっ、ありがとう
あ、フルーツおいしそうだな〜。オレも欲しい……って現実逃避しちゃダメだ!
「おーい。ワシにもくれよ〜、
「気安く呼ぶなオッサン。レディー限定だ」
え? ホントに名前ナルトなの? ヴィンスモーク・ナルトなの?
あ!……そういえば前世で兄貴が言ってたな。確かONE PIECEが連載する前に、コックの仲間に設定してた名前は〝ナルト〟だったんだとか。
オレは本編以外の設定とかは気にしてなかったんだけど、この話は衝撃的だったから覚えてる。
それで確か、漫画のNARUTOが同時期に連載してたから名前を〝サンジ〟に変更したらしい。
もしかして、この世界って
「オーナー! 無茶ですって!」
「うるせェ! おれの店だ! おれが厨房に立たないでどうする!?」
店内に大声が響いてきた。
推定ゼフがコック二人に両脇を抱えられながら厨房へ向かっている。でも、パッと見ただけでも重症なんだけど。全身血まみれだし、義足もポッキリ折れてる。
ん? 副船長が急に立ち上がったけど、どうするんだ?
「ワシに診せてみろ。これでも医術は少しかじってるんだ」
「助かるぜお客さん! オーナーを診てやってくれ!」
副船長って医学まで修めてるの!? チョッパーが仲間にならないなんて事にならないよね?
「おーい、エダ! ちょっと手伝ってくれ」
「オレ、医者じゃないけど」
「大丈夫だ、ちょっと
厨房へ繋がる廊下まで移動して、副船長に言われた通りの大きさで〝枝〟を作る。
コック達は急にジャストサイズの棒を持ってこられて驚いてたけど、今はピッタリ
「一先ずの応急処置だ。あとは安静にしておいてくれよ」
「ありがとよ、大した腕だ。礼にメシを食って行ってくれ、今作るからよ」
「おいおい! 言ってる側から! メシはもう食ったって! 美味かったよ」
結局、副船長とコック達の静止も聞かずに厨房へ入って行ってしまった。
あ! 扉が閉まる前に、一瞬ルフィが見えた……案の定、皿を割ってるよ。
〜 ウソップ工場 〜
「よし、次は球状に作ってくれ」
あれからオレは、副船長に連れられてメリー号へ帰ってきた。
今は副船長と一緒に、きちんとした〝義足〟の制作中だ。と言っても、オレは言われた通りのパーツを作るだけなんだけど。
なんでも副船長は以前から義足に関して構想があったらしく、この機会に作ってみたいのだとか。つくづく発明家気質だなぁ。
「副船長、あの人の足の大きさ測ってないけど大丈夫か?」
「ん? ああ。左脚の方の大きさは
この
それから、一時間くらいかけて義足が完成した。
途中で店の方から大きな音がしたけど、副船長はお構いなしにパーツを組み立てていた。多分ギンが店に来て、パティにボコボコにされたんだろう。
無事にサンジもといナルトから、メシを食わして貰ってればいいけど。いや、もう原作知識は当てにできないから自分で確認しておかないと危ないな。
「これから最後の仕上げだ。エダ、オーナーの所へ行くぞ」
「わかった」
店内に戻りコックの一人に聞いたところ、オーナーは自室に戻ったらしい。なんでもナルトがオーナーの担当していた料理を既に準備して作り出していたんだとか。
きっとパティが接客している間に色々と準備してたんだなぁ。オーナーも認めたのか、一口味見したあとに自室に戻ったらしい。
「なんだ、お前さん達か」
「邪魔するぜ、おやっさん。ちょいとコイツを試して欲しくてな!」
「こいつは!……義足か?」
「ああ、ワシはモノを作るのが趣味でな。前から義足も作ろうと思ってたんだ」
副船長が、今嵌っている棒を抜き取り新しい義足を取り付けた。ホントに寸法ピッタリだな。
オレに最後の仕上げを頼むと言ってオーナーから離れたけど、上手くできるかな。
「オメェ。能力者か?」
「そうだ。あんまり動かないでくれ〝接合〟してるから」
手のひらから、枝を出して〝樹皮〟のみに変形させる。そのまま薄く広げていき、義足と脚を繋ぐ金属部分に
ふぅ、ここまでは上手く行ったな。さんざん船で実験されたからなぁ。
膜を通して能力を使い、義足と金属部分のわずかな隙間を埋めていく。
本来なら能力で作ったモノ同士しか
「なに? 触れている部分としか癒着させられない? だったら〝枝〟を薄く変化させ、膜みたいにして
「それに
「お前さんの能力が植物由来ってんなら、溶かす為に〝樹液〟が出てるんじゃないか?」
「んで、お前さんの能力ならその
天才か! オレもネバネバする蔓を作ったりはしたけど、
言われた通りに義足と金属部分を
「おお! 成功か!? エダ!」
「たぶん。オーナーさん、立ってみてくれ」
「!!こいつぁ! スゲェ! 足首まで本物みたいに動きやがる!」
よかったぁ、無事成功したみたいだ。でもやっぱり、精密作業はエネルギーの消費が激しいなぁ。さっき食べた料理分をキレイに消費した感じだ。
〝樹液〟を応用すればゴムすら作れちゃうんだけど、戦闘で使うには時間がかかるし、コスパも悪すぎる。
このまま戦闘員として役に立てずにいたら、副船長に材料を提供するだけの要員になりそうで怖いな。
「ありがとよ! お前さんら! だが、悪ぃがおれはコレに釣り合う代価は支払えねェ」
「ああ、それに関して一つ相談があるんだ。ウチの船長の事なんだが……」
このあと副船長が交渉して、ルフィの雑用期間が一週間にまで縮まった。
むしろ引き取ってくれとまで言われたけど、副船長からすると本人に反省させるには丁度いいからダメらしい。
この副船長、レイリーやベックマンみたいだな。
副船長はオーナーとまだ話すことがあるみたいで、暇になったオレは部屋の外のバルコニーに出てきた。
「怒られる理由と、証拠がねェ!」
サンジもといナルトが海へ食器を捨て、ルフィと一緒にギンっぽい人を見送ってる。
「じゃーなー、ギン!」
そのまま、小舟に乗ったギンが土下座しながら出航して行った。
原作通りっぽいけど、いいシーン見損ねた! 前世ではギンが再登場するのをずっと待ってたのに! ここでまで会えないなんて!
「お! エダ! コックの仲間が見つかったぞ!」
「ならねェって言ってんだろ!」
「ルフィ! 雑用が短くなったぞ」
オレも降りて行って、お互いにさっきまでの経緯を話した。
やっぱりギンに関してはほぼ原作通りみたいだ。ただ、フルボディに捕まった訳じゃなくて敵から逃げ続けていたらしい。補給もできずに、餓死寸前の所でバラティエに辿り着いたんだとか。
改めて考えると〝
サン、ナルトはオーナーの義足に関してお礼を言ってくれたけど、殆ど副船長のお陰だと弁明しておいた。
「そういやアンタ、あのレディーに出したフルーツを食いたがってたな。店も
う、凄く嬉しいんだけどマズイ。果物は何度か挑戦したんだけど戻しちゃうんだよなぁ。サ、ナルトの前で食べ物を粗末にする訳にはいかない!
「オレは、果物が食べられないんだ」
「そーいや前もマズそうにしてたなぁ、あんなにうまかったのによー」
「なんだ? アレルギーか?」
アレルギーって概念あるの? 原作でもあったっけ? ダメだ思い出せない。
「たぶん、能力のせいで果物を
「〝悪魔の実シリーズ〟……まさか、そんな副作用があるとは厄介なもんだな」
「おれは何ともないけどなぁ」
「お前も能力者なのかよ!?」
「たぶん、オレの食べた
オレは実の名前は分からないけど、植物に関連した能力を使える事を話した。
「なるほどなぁ、おれも昔〝悪魔の実大図鑑〟を読んだことがあるが……? いや、アレじゃあねェな」
「何か知ってんのかー?」
「いや、勘違いだ。特徴が合わねェ。それより、エダって言ったか? アンタさっきのコース料理は全部食べてたよな?」
「ん? ああ! 美味しかった!」
「そうかい。なら、ちょっと待っててくれ」
「なんだなんだ? 何か作ってくれんのかなー、エダ?」
ナルトは厨房へ向かったみたいだ。って言うかルフィ、サボりすぎじゃない?
しばらくして、ナルトが戻ってきた。
「ほれ、コイツを食ってみてくれ。〝林檎のコンポート〟だ」
「うまほー!」
「テメェは後だ雑用!」
わざわざ作ってきてくれたのか? 美味そうだけど、吐いたらヤバイ。
んー、どうするかなぁ〜……っ!! 口の中に入れられた!?
あ、甘い!それになんだコレ!?芳醇な香りが鼻腔を
「んめぇ〜〜〜!!!」
「へへ、だろ? 今日の魚に使ったソースは隠し味で林檎を使ってたんだ。もしかしたら
「ありがとう! サンジ!」
「
「ああ、エダは無人島にいたからたまに変なコト言うんだ! それより、おれにもくれよー」
「無人島!?」
その後、無人島で過ごしてた話をしたら色々と共感してもらえた。
サン、ナルト……もう心の中じゃサンジ呼びでいいや。サンジも遭難した経験を話してくれたんだけど、オレは根っこから栄養を吸える環境だったからちょっと気まずい。
サンジは能力の代償で果物が食べられ無かったんだから気にするなって言ってくれたんだけど。
あれ? そう言えば、サンジは能力者に対して偏見がないのかな?
「サンジは能力者がコワイとかって思わないのか?」
「だから何で
あ、またサンジって呼んじゃった。けどその夢見てる実ってアレでしょ?
「〝スケスケの実〟?」
「お前! 分かるのか!
「え? ちがっ」
「ああ、だが〝悪魔の実シリーズ〟は二つ目を食ったら死んじまうんだったな。すまねェ!!」
「そーなのか!? おれ知らなかったぞ!」
「エダ! お前の夢の分までおれが背負ってやる! もし〝スケスケの実〟を見つけたらおれに食わせてくれ!」
それからしばらく、〝スケスケの実〟談義を聞かされた。サンジとは物凄く仲良くなれたんだけど、きっかけがコレとは。
まあ〝サンジ〟って呼んでもあだ名として認めてもらえたのは良かったけど。
結局、長話をしてたせいで怒ったオーナーがサンジとルフィを叱って、
一人残ったオレはサンジの嬉しそうな顔を思い出す。
まるでオールブルーを語る時みたいな笑顔だったんだけど、話してる内容は