ガレオン船の残骸が粗方海に沈み、近づいてくる小さな舟が見えるようになった。あれが〝鷹の目〟か!
「ハッハッハッ!あんな小舟で追ってきやがって! おれを舐めた事後悔させてやるぜェ!!」
クリークってヤロウが、どこから出したのか大砲を構えていやがる。やめとけ、そんなので倒せる相手じゃねェ。
「今おれは陸地で、テメェは海だ!
鷹の目に向かって真っ直ぐ飛んで行った砲弾は、海上で真っ二つに斬られた。
さっきの海の揺れで小舟が転覆してねェし、離れた場所から船を斬ったんだと思っちゃいたが、やっぱり
おれも斬撃を飛ばすくらいなら出来なくもないが、それで
「畜生! どんな能力を使ってやがる!?」
「そんなもんじゃねェ、ありゃただの剣技だ」
「剣技ぃ!? ただの剣で鉄が斬れるわけねェだろうが!」
「……さっきので打ち止めなら、もう邪魔しねェでくれ。アイツとはおれが戦う」
「テメェ!
クリークの部下たちがピストルを撃ったが、今度は斬りもせず切っ先だけで弾を逸らしやがった。
あれは
鷹の目はもう上陸間近だ。ここは剣士の礼儀でおれから名乗っておかねェとな。
「おれは、ロロノア・ゾロ! お前と戦う為に海に出た!!」
「……何を目指す」
「最強」
「哀れなり、弱き者よ」
「アイツ!?〝豪剣〟だったのか!?」「あいつが!?」「刀三本!間違いねェ!」
外野がうるせェな。しかし鷹の目を前にして騒がれる程、おれの名が知られてたとはな。
「一端の剣士ならば、己との力量差くらい測れよう。なぜ立ち向かう?」
「おれの野望ゆえ、そして親友との約束の為だ」
「オイ、何のつもりだソイツは?」
「生憎
こいつ! 首に下げてた十字架型のナイフでおれと戦う気か! ふざけやがって!
「鬼斬り!!……!!?」
止められた!? 剣が動かねェ! あんな
こんなに遠いのかよ!? 世界最強!!
「うぉぉぉああ!!」
「……凶暴な剣だ」
く、どれだけ打ち込んでも全部ナイフ一本で
この男、柔剣だけじゃねェ。
「はぁ、はぁ、」
「弱き者よ、これで終いか?」
「いや、やり方を変える。この
「ほう」
あの時より、多少は鍛錬も積んだ。短時間しか保たねェからトドメだけに使うつもりだったが、出し惜しみなんてしてる余裕はねェ!!
「〝
「おお! 黒くなるやつ!」「アイツも能力者か!?」「何だ?腕が黒く……!?」「ほう、覇気か」
「〝
「拙いながらも、覇気を纏うか」
「いくぜ! 〝三刀流〟……!!〝
ギギィン!!!
「おれに覇気を使わせるか……死なすには惜しい男だ」
何が起きた!? 奴の刃が一瞬
そのあと、なにか衝撃をくらったのは確かだ。こんな遠くまで吹き飛ばされてやがる。クソ、斬られてもいねェのに身体が動かねェ!!
「ゾロー!! 起きろぉ!!」
遠くでルフィーが叫んでるな。こんな所でへばってる場合じゃねェのに、ピクリとも動けねェ。
これじゃ剣士として死ぬこともできねェな……
〜 13年前 〝シモツキ村〟 〜
「やー!」
「く……!」 「勝者くいな! 二刀流のゾロの負け」
「相変わらず弱いわね、男のくせに」
くそォ! なんであの女に勝てないんだ! おれは将来、世界一の剣豪になるんだ! あんな奴に負けてるわけにはいかねぇんだ!
「たー! わー!」
「道場は退屈か?」
ジジー見てたのか。道場だけで練習しててもたりねェんだ! くいなに勝つために練習しねェと!
え? この刀くれるのか!? おれ金持ってないぞジジー!
「やるっつってんだ。ナマクラだぞ」
「いいか、刀は〝人斬り包丁〟人を殺すために生まれる」
い……! ジジーは刀の怖さを教えてくれた。刀は凶器、おれがもらったこの2本も人を斬るための物なんだ。
刀には性格もあるってジジーは言う。この2本がどんな性格なのか、おれにはまだ分からねェ。
「なあジジー! この刀は、
「あ? そんなもんは……、そうだな
「どっちが枯金だ?」
「……右手に持ってる方だ。たぶんな」
「よし! こっちが枯金。こっちが屯炉! 今日からおれの刀だ」
「ずいぶん手に馴染んできたじゃねェか」
「ジジー! でも、刀の性格は分からねェんだ」
「そいつが分かるようになるのは、まだ
「ジジー死ぬのか!?」
「直ぐじゃねェ、だが確かに先は短ェだろうな……お前、おれが侍だって内緒に出来るか?」
「やっぱサムライだったのか! できる! 内緒だ!」
ジジーの刀が、一瞬黒くなって巻き藁を斬っ……いぃ!? その先の地面まで斬れてんぞ!?
「ごほっ、無理するもんじゃねェな……今のが〝流桜〟侍の技だ 覚えとけ」
「りゅうおう? スゲー! もう一回見せてくれよ!!」
「殺す気か!?」
それから少し経って、ジジーはホントに死んだ。くいなのじいさんだったんだな。
先生は命をけずって無理をしたって言ってた。おれが見たあの技、命がけで見せてくれたのか……
「くいな! おれと真剣で勝負しろ!」
「私の……二千一勝目ね」
畜生ォ……! くやしい……!
「パパが言うの、女の子じゃ世界一にはなれないって。ゾロはいいね男の子だから……私も……ぅ」
「おれに勝ってそんな泣き事言うなよ! 男とか女とか関係ねェ! いつか必ずおれか、お前が世界一の剣豪になるんだ!」
「バカヤロー……弱いクセにさ……でも!」 「ああ」
「「約束だ」」
「先生っ! あいつの刀おれにくれよ!」
「…………ああ、いいとも」
「おれ、あいつの分も強くなるから! 天国までおれの名前が届くように、世界一強い大剣豪になるからさ!!」
約束したんだ。おれはまだ敗けられねェ!
刀はどこだ? 枯金と屯炉は手に持ったままか。和道一文字……先生から銘を教えてもらった、くいなの刀……あそこか、よかった無事みてェだな。
なんだ? さっきから不思議と刀の気配が分かる。動かなかった身体の方も力が戻ってきた……っ!!
「まだ立てるか。何という強き心力……名は何と言ったか?」
「はは、ロロノア・ゾロだ。忘れるんじゃねェぞ」
「憶えておこう。久しく見ぬ〝強き者〟よ。おれも剣士たる礼儀をもって、この黒刀〝夜〟で沈めてやろう」
ようやく抜いたか。黒刀……そうか、あれも一緒なんだな。
「ゾロも黒くなるやつ使えんのか! おれもじいちゃんの真似でちょっとだけ出来るんだけどよ〜」
「そいつぁ〝覇気〟ってもんだ。悪りぃな、おれは使えねェから名前しか教えられねェが」
「ヨホホ。私も使えませんが、何でも〝見えない鎧を着るイメージ〟それがコツだとか」
ずっと、出来なかったが今なら分かる。腕に覇気ってのを使うんじゃない、
あの日、ジジーが見せてくれた技。さっき鷹の目が見せた技。どっちも同じだ。
「〝
この力を、全て刀へ。流す!
「そこまで、至ったかっロロノア!!」
これが正真正銘、最後の一撃。世界一か死か。
『ゾロ! 死ぬなよ!』
ははっ、最後に思い出すのがアイツかよ。ああ、アイツとも
「三刀流奥義!! 八大竜王 三・千・世・界!!!」
敗けた……敵わねェ
枯金、屯炉すまねェ……おれの力量不足で砕けちまった
和道一文字だけは無事か、せめて最期は剣士として……
「何を!?」
「背中の傷は、剣士の恥だ」
「見事!」
見事だ、若き力よ。死に急ぐな。
「ゾロォー!!!」
ロロノアの仲間か……! まさか、
「貴様もまた、よくぞ見届けた」
「うぉぉ!!」
「安心しろ。あの男は生かしてある」
「ゾロ! しっかりしろ!」
「ばか! 揺らすな雑用! 店に薬と包帯がある! 取ってきてやるから止血しとけ!」
「我が名、ジュラキュール・ミホーク。おれは先、幾年月でも最強の座にて貴様を待つ」
「このおれを超えてみよ! ロロノア!!」
「……ルフィー、不安にさせたな。おれが世界一の剣豪にならねェと……お前が困るんだったな」
「おれはもう! 二度と敗けねェから! あいつに勝って大剣豪になる日まで、絶対にもう、おれは敗けねェ!!」
いいチームだ、次に
さて、折角の闘いを穢されるようだが
「た、鷹の目! なぜおれを付け狙う! おれは、お前と争う気なんて無かったんだ!」
「貴様を売ったあの男も同じような事を言っていたがな」
「ガスパーデのやろうか!? その口振りじゃ始末したんだろ? ハハっ、いい気味だぜ。だがおれは、もう船もねェ! 見逃してくれねェか!?」
「貴様が仕掛けた
「黙れ! 能力にあぐらをかいて最強を気取りやがって!」
「……おれを能力者だと思っているのか?」
「何をとぼけてやがる! あの豪剣の小僧もお前も能力者じゃねェか! ただの人間があんな闘いできるわけがねェ!!」
「ワッハッハッハッハッハッ! なんと小さい! 井の中の
気が変わった。この男の命は〝ビブルカード〟で確認できる。この場は、あの者に譲るのもまた一興だろう。
〜 孤島 裏側の海岸 〜
ああー!!! ゾロ vs ミホークめっちゃ見たかったよぉー!!!!!
メリー号を、島の裏側まで回したから全く見えない! どうなったんだろ? って言うかヨサクとジョニーが居ないどころか、
「マズい! 早く戻らないと!」
「なに言ってんのよ。せっかく裏側まで避難したっていうのに」
そうだ、ミホークが帰ったとしてもクリークにメリー号が狙われるかもしれない。
歩いて戻るしか無いのか?
「おっと、お客さんだエダ」
え? クリークの手下かな? 小船でこっちに寄ってきてる。あのシマシマなデザイン見覚えがあるような?
「ワシの見立てだと、おそらく無事だった小船でメリー号を奪いに来たって所だろう」
「なに冷静に解説してるのよ! アンタたち狙撃が得意でしょ、早く撃ちなさい」
これは、まさに〝渡りに船〟ってやつなのでは? メリーはここに置いて、あの小船を頂いてバラティエまで戻ろう。
よし、大砲で狙撃するのは絶対ダメだ。あの船の
「おれはクリーク海賊団、〝
「シャチ〜? ガレオン船がぶった斬られたのを見た後に、シャチって。ギャグかよ!」
「ぷふっ。笑っちゃダメよ副船長、アイツだって頑張って切ったのよきっと……シャチを!」
「あはははは!!」
煽るなぁ〜、ナミさん達。オレもめっちゃ笑っちゃったけど。こういう時、
「テメェら! ビリーさんに謝れ! この人、シャチを馬鹿にされるのが何より嫌いなんだ!」
じゃあ何で切ったんだ? まぁ、目の前まで近づいてくれたんだ。怒りで固まってるし、このままニードルキャノンで狙撃しちゃうか。
「三連火薬星! よし、エダ縛っておいてくれ」
副船長……やっぱり狙撃手交代しない? オレはもう〝物資補給係〟とかでいいよ。
とりあえず、3人いた敵をその辺の木に縛りつけておいた。1人に至っては喋ってすらいなかったな。
「で? 代わりの船は手に入ったが、戻るのか?」
「ゾロが怪我してるかもしれない!」
「怪我で済んでればいいけどね。まったく、私1人だけ置いてく気じゃないでしょうね?」
「決まりだな。治療用の道具を準備して、3人で戻るぞ」
〜 再び、バラティエ近くの海岸 〜
「小僧。お前は
「なんで知ってんだ!?」
「その
「??? なんでアイツと戦うんだ? ナルトのこと殴りやがったから確かにムカつくけどよぉ」
「あいつは〝モーガニア〟だ。おれの知る、その帽子を被った男ならば理由はそれで十分な筈だが?」
「しししし、ああ十分だ!」
コックによる不恰好な治療を施された剣士が見守る中、
【屯する】 たむろ−する
人が集まること。
このお話で屯した剣士は
ゾロ、ミホーク、コウ三郎、コウシロウ、くいな──そして ビリーでした。