植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

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3部構成のため、いつもより文量が多くなっています。


Interlude
〝ROMANCE DAWN〟


 「チチチチ! 卑しい小娘め、ついに本性を現したな!」

 

 やっぱり、()()なったわね。

 急に〝海軍(シーガル)〟の船へ来いって要請が出た時から嫌な予想はしていたわ。

 だってこの船、最近は近海を巡回する任務だけだもの。難解な航海をするわけでもないのに、私を呼ぶ事が不自然だったのよね。

 

 「しかし、大佐殿……マール・デ・グレミオ所属の()()()()()が我々から金品を横領するとは考えにくいかと……」

 

 「じゃあ、なにか? 貴様は、誰かが罪をでっち上げたとでも!? そんな事をして、何の得があるのだね?」

 

 「そ、それは……」

 

 ()()じゃなくて()()()でしょ? 勘だけど。でも、海軍の一部からM・G(ウチ)への反感が高まってるって風潮は知ってるけど、このネズミって男に恨まれる覚えはないわよ……?

 そういえば! 前に、嵐が来るから軍艦の出航を見送るよう進言した時……「おかげで、被害が出るのを防げた」ってコイツの上役に褒められた事があったけど……まさかアレが原因かしら? だとしたらホント、嫌になるわ。

 

 「証拠は揃っているのだ! 一先ず牢へぶち込んでおきたまえ」

 

 「……はっ!」

 

 私に宛てがわれた部屋で、海賊から押収した財宝が出てきたらしい。ずっと測量室にいたから、その部屋へは一歩も入ってないって言うのにおかしな話よね。

 

 ま、コイツの悪い噂は聞いていたから、既に手は打ってあるんだけどね。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「申し訳ないが、嫌疑が晴れるまでここで過ごして頂く」

 

 「貴方は、私を疑ってないの?」

 

 「……上官の命令には逆らえん」

 

 そう言って、海兵の人は去っていった。まったく、軍人って連中は変に忠義心があるのよ!

 海軍の中にも派閥があるって聞くけど、ネズミみたいな奴の部下になった人は可哀想ね。

 まだ設立して十数年しか経ってない組織なのに、勝手に街を支配したりする海賊みたいな奴もいたんだとか。ホントは、ウチの下部組織なんだから他人事みたいには言ったらダメなんだけどね。

 

 はぁ、どうして商船と海軍船の両方で航海士をやらなくちゃならないのよ! いくら、航海士が人材不足だからって最近こんなことが多すぎよ。

 

 

 「あー、腹へったー」

 

 あら? 私以外にも人がいたのね。海賊には見えないけど、何で捕まってるのかしら?

 

 「なぁ、お前なんで捕まったんだ? 悪い海賊なのか?」

 

 「こっちのセリフよ! 私は濡れ衣。アンタこそ何やったのよ?」

 

 「おれは、ピースメインなのによ。あいつら海賊だからって捕まえやがったんだ!」

 

 「ピースメイン?」

 

 「ああ! 海賊からしか略奪しない海賊だ!」

 

 「ふーん? でも、海賊だから捕まったんでしょ?」

 

 「ネズミみてェな奴が、メシ食わしてくれるって嘘つきやがった! こうみょうな()()だ!」

 

 そいつの名前、そのままネズミなのよ。でも、こいつホントに海賊なのかしら? ピースメインなんて話も聞いた事がないわ。

 

 

 「なあ、お前! なにか食いもん持ってないか!」

 

 「どう見ても手ぶらでしょ私。ああ、あそこの机の上にパンがあるわよ? 海兵が戻って来たら頼んで……」

 

 「おお! あんなとこに! よし…………んぐんぐ。ぷはぁ〜……足りねェ」

 

 なに!? 今の! 腕が伸びたように、って言うか実際に伸ばしてパンを掴んでたわ。まさか!

 

 

 「ん? おれは、ルフィー〝ゴムゴムの実〟を食べたゴム人間だ!」

 

 〝悪魔の実シリーズ〟の能力者……。実際に目にするのは久々ね。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「でよぉ! コビーが海軍へ入ってからは、なかなか島に着かなくて困ったなぁ〜!」

 

 まるで御伽噺(おとぎばなし)のようなコイツの話を聞かされて、もう二時間は経った筈ね。

 いい加減ここから出たいんだけど、まだかしら?

 

 

 「出たまえ小娘。チチチチ! 私としたことが、身体検査をやり忘れていた。他に盗品が無いか検めてやる」

 

 「な! アンタ! 手付きがいやらしいのよ! きゃっ、やめ……!」

 

 「ほれ見たことか! あったぞ、盗まれたクリスタルだ!」

 

 「返せっ!! それは私の……!!」

 

 「おっと! 盗人(ぬすっと)の汚い手で触らないでくれたまえ」

 

 ……っ、殺してやる!

 

 「チチチチ! このクリスタルは、元々私が所有してい……ぶぎゃっ!!?

 

 え?

 

 

 「そいつは、お前なんかのもんじゃねェだろ。ほら、宝物(たからもの)なんだろ?」

 

 「あ、ありがとう……アンタ、割と強いじゃない」

 

 「ししし、ピースメインだからな!」

 

 それって、理由になってるのかしら? はぁ、もう怒りも吹っ飛んじゃったわ。う、クリスタルは拭いたけど……直ぐには肌へ触れさせたくないわね。仕方ない、普通に付けておくか。

 ……ネズミは大の字になって気絶してる。一緒に来た海兵も何も言ってこないし、助ける様子もない。人望がないのね。

 

 「おれの帽子もさ、宝物なんだ」

 

 「そう、なんだ。理由を聞いてもいい?」

 

 「ああ、これは……」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「〝海軍第16支部 ネズミ大佐〟貴様の指揮権は只今を以て剥奪。本部へ移送後、軍法会議が待っている。なお、この軍艦の指揮権はリッパー中佐が臨時で受け持つ事とする」

 

 「はっ!」

 

 ネズミが気絶から覚める前に、私が呼んでいた()()が軍艦を引き連れて到着し、プリンプリン准将って指揮官がネズミを拘束して連れていくみたい。

 それと、私を牢へ連れて行った人は中佐だったようね。この人が、私の部屋へ財宝を運んだっていう海兵を見つけ出して、ネズミの企みだったという証言を取ってくれたらしいわ。

 どうして、こんなにまともな人が中佐で()()が大佐なのかしら?

 

 

 「ふぅ、待たせて悪かったね。ナミちゃん」

 

 「ううん! あいつも痛い目にあったし、丁度いいタイミングだったわ。トトさん」

 

 「准将も別の任務中だったのに、私の頼みを聞いてくれて助かったよ。ただの()()が無理を言ってしまい申し訳ない」

 

 「ははは、M・G(マール•デ•グレミオ)の中でも中枢に居られる方が何を仰る! 任務とて既に帰還するのみですので何も問題ありません」

 

 トトさんは国からの信頼も厚い人だから、M・Gの下部組織である海軍への更迭(こうてつ)権を一部委任されている。まあ、こういう風に命令できちゃうからウチは海軍の一部の人間から疎まれてるんだろうけど、今回は助かったわ。

 

 元々は()()()()から香辛料などを輸入していた会社が、今じゃ世界の貿易を一手に担う大組織だもの。

 (マール)()ギルド(グレミオ)なんて大それた名前も、今では万人が認めるしかない規模にまで拡大しているわ。

 国境に縛られず活動出来るのは、あの教会とウチぐらいなものよね。特に()()()()()()は、あの運河の権利を持っているからM・Gの中でも特別な役割を持ってるわ。

 

 

 「では我々は、あの者を連れ本部へと帰還致します! リッパー中佐! トト殿の護衛を頼むぞ」

 

 「はっ!!」

 

 「助かったよ准将。ああそれと最近、教会の動きがどうもキナ臭い。気に留めておいてくれ」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「なんだ? もう、出ていいのか?」

 

 「ええ、アンタも濡れ衣みたいなものでしょ? ピースメインなんて言って、海賊のフリしてるから捕まるのよ」

 

 「ピースメイン!? 君の事かい?」

 

 「おう! なんだオッサン。ふくよかだなぁ〜」

 

 失礼ねコイツ。でもピースメインって言葉を、トトさんは知っていたみたい。

 なんでも一昔前に、そう名乗る海賊団が海の治安を守っていたんだとか。でも、ある時急に居なくなってしまい、それからは〝私掠撰〟や〝海軍〟が活躍し出すまで海賊が活発で困った、とトトさんは語った。

 

 その話のあとにコイツ、ルフィーが乗って来たっていう舟を見たんだけど……

 

 「これが、おれの舟〝快速メルヘン号〟だ!」

 

 「これは……!? まさしく、ピースメインの舟だ。〝モーガニア〟から奪った海賊旗をこんなにも!」

 

 モーガニアって言うのは、人々から略奪する海賊の事らしいわ……ってそれなら、普通の海賊は全部モーガニアね。

 トトさんは、この旗を見てすっかり信じちゃってるけど大丈夫かしら? この人、商人のクセしてどこかお人好しなのよね。

 

 パッと見ただけでも、有名な海賊の旗があるわね。騙るにしても、これはやり過ぎよ。

 あの横向きドクロにハートマークは〝金棒のアルビダ〟

 三日月マークは、そのままの二つ名〝三日月のギャリー〟

 あのカニのヤツは〝ギャンザック海賊団〟

 あとは〝レッドアローズ海賊団〟と……!? あれって! 〝キャプテン・ジョーク〟の旗!

 

 「ちょっと、アンタ! あの旗どこで!?」

 

 「ん? ああ! アレかぁ。海の真ん中に大穴が空いててよぉ……」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「そんな話、信じられる訳ないでしょ!!」

 

 あの旗を見て、つい取り乱しちゃったわ……宝物だって言う帽子の話は信じるけど、今の話はさすがに信じきれない。

 

 「でもよぉ! ホントなんだって!」

 

 「なんで、ガイコツが動いたり喋ったりするのよ!」

 

 キャプテン・ジョーク──お姉ちゃんが死んだ原因を作ったアイツは、10年前くらいにこの海から姿を消した。以降何の情報も無し。

 私はアイツを探し出して(かたき)討ちをするためにM・Gに入ったのに、2年経っても痕跡の糸口すら見つからない。

 でも……この海で航海を続けていればいつかきっと……!

 

 

 「……ふむ、そこは〝海のヘソ〟だったんじゃないのかい?」

 

 「そうだ! コビーがそう言ってた。デッケェ、ザリガニとかがいてよぉ!」

 

 「もういいわよ! いい加減にして!」

 

 「待ちなさい。彼の話は突飛だが、信憑性もある。実際に〝海のヘソ〟と呼ばれる()()()()()()()()()()は存在するんだ」

 

 「え?」

 

 ホントにそんな場所があるの?

 その後も、他の海賊を倒した時の話も含めてトトさんが話の裏付けをしていった。驚く事に、どこにも()()が無かった。

 海賊達が消息不明になったり、活動が見られなくなった時期とコイツの話は合致していた。私達は、本部が海賊の情報を整理して、それを文書で伝達されてるんだけど、コイツがこれだけ詳しく知る(すべ)はない筈だ。

 それこそ、今の話が全部真実でも無い限り……

 

 

 「……ナミちゃん。どうやらキャプテン・ジョークは既に死んでいて、彼がその亡霊を倒したようだ」

 

 「そんな……!」

 

 トトさんは、私の事情を知っている。と言うよりもココヤシ村へ立ち寄ったこの人に、航海士としての才能を見出されてM・Gに入ったようなものだ。

 今も真剣な目で私に語りかけてくるこの人は、信頼できる。

 

 そう……もう、敵討ちはできないのね。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「本当にいいのかい?」

 

 「ええ、もうM・Gに居る意味も無くなっちゃったし。海軍との(いさか)いにもうんざりしてたのよね。私の事を推薦してくれたトトさんには申し訳ないんだけど……」

 

 「いや、無理強いはできないよ。元々、仇を見つけるまでの約束だしね」

 

 「なんで、おれの舟に乗るんだよ!」

 

 「私がトトさんを呼ばなかったら、捕まったままだったじゃない。アンタ、海賊なんだから」

 

 「若い海兵に、ピースメインと言っても通じないからね。ルフィー君、彼女を近くの街まで連れて行ってくれないかい?」

 

 「わかった! おっさんには助けられたしな。じゃあ、よろしくな()()()!」

 

 「混ぜるな!! よりにもよって、なんでアイツと!!」

 

 

 「よーし! 出航だー!!」

 

 トトさんと何人かの海兵に見送られて、私は新しい旅に出る。

 まあ、直ぐに街へ着くんだけどね。

 

 


 


 

 

 〝1人目〟

 

 

 ー とある街 ー

 

 「おおぉ! 着いたぞ! 街だ!」

 

 「コビーって人の苦労が分かったわ……なんで適当にオールで進もうとするのよ。海流に乗ってるだけで、簡単に着いたハズなのに」

 

 「ナミ! おれの仲間になってくれよ! 海軍は辞めたんだろ?」

 

 「元々海軍じゃないわよ。私はマール……ただの、商船の航海士よ」

 

 「けど辞めたんだろ? なぁ、海賊やろうぜ! いいぞー、海賊は! 自由だしな!!」

 

 「……自由、か」

 

 案外悪くないかも知れないわね。コイツが本当にピースメインって海賊だったらの話だけど。

 実際、海賊からの略奪だけで生活できるのかしら? もし、コイツが街を襲ったら困るし……。

 

 

 「なんだ? それ?」

 

 「斧よ。アンタの舟は船室もないし、盗まれたら嫌でしょ?」

 

 

 「おうおう。お前ら! ここが誰のシマか知ってて上陸したのか?」

 

 「海賊みてェだが、どこのモンだ? って、こんなに海賊旗を掲げてちゃ分からねえェだろ!」

 

 そうだった、この街を拠点にしてるのは〝私掠撰〟の一人〝道化のブギー〟だったわね。手下はガラ悪そうだから、何とか穏便に済まさないと。

 

 「なんだ、コイツら?」

 

 「アンタは黙ってなさい。えーと、こう言う時は何だったかしら? たしか……〝パーレイ〟?」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 あの後、海賊達に連れられて海岸沿いにあるサーカスのテントのような場所へ連れて来られた。

 

 

 「で? 話は何だ。おっと、まず船長はどっちだ?」

 

 え? 何で船長の前まで連れてこられたの!? パーレイって暴力は止めて話し合いましょうって意味じゃなかったの!?

 どうしよう!? 何も話なんて無いわよ!

 

 「おれはルフィー! ピースメインで船長だ! こいつはナミ! ウチの航海士だ!」

 

 「ほう、海賊だと聞いちゃいたがピースメインか。その、麦わらは真似で被ってるのか?」

 

 「真似じゃねェ! これは預かったんだ!」

 

 何とかなったのかしら? 流れで私まで海賊になっちゃったけど……

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「ギャハハハハハ」「あははははは」

 

 あの後、急に意気投合したルフィーとブギー。今は、突然始まった飲み会の真っ最中。

 海賊ってこんなノリなのかしら? 頭が痛いわ。

 

 

 「おれは、おめェが気に入った! どうだ? ウチに入らねェか?」

 

 「ダメだ! おれは自由に冒険したいんだ!」

 

 「だが、おれは欲しい! 航海士のネェちゃんも大した腕みてェじゃねェか! まとめて来いよ」

 

 「ダメだ! ナミはウチの航海士だ!!」

 

 何なのよ。どっちの物でもないわ。今の内に逃げちゃおうかしら?

 

 「すまねェな嬢ちゃん。昔からウチの船長は、気の合うヤツは全員仲間に誘っちまうんだ」

 

 「あはは、私は別に海賊じゃ……って、え!?」

 

 気が付けば、ブギー海賊団の面々が周囲に集まり出してるわ。

 さすが大海賊ね。本拠地っていうのもあるんだろうけど、今だけでも海岸沿いに300人くらい居るわよ。

 

 「ではこれより、ブギー海賊団 対 麦わらの二人組によるデービーバックファイトを開催します!!」

 ワァァァァァァァァァァ!!

 

 外で何かが始まった。誰も疑問を口にしないけど、海賊にとっては常識なの?……それに麦わらの二人組って、もしかしなくても私も巻き込まれてるわよね?

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「ちょっと! ルフィー! 一体どういう事なの!?」

 

 「アイツが仲間になれってウルサイからよぉ、けど戦って勝てば仲間にならなくていいんだってよ!」

 

 こいつ、説明する気あるのかしら……えーとつまり、これから私たち2人がブギー海賊団と戦って、負けたらブギーの仲間にされるって意味!?

 

 「無理よ無理! 相手は300人くらい居るのよ!」

 

 「ああ、心配すんな嬢ちゃん。1対1の3本勝負だ。ま、こっちが先に2勝すれば誰も居なくなっちまうがな!」

 

 「えー、今回は1対1のみの特別ルールですので、種目はアームレスリングフェンシングコンバットの順で固定になります」

 

 「なお、麦わら側は二人しか居ないため選手の決定も競技前に決める形になります」

 

 

 「では、第一試合。アームレスリング、準備が整いました! 双方、選手はタルの前まで移動して下さい!!」

 

 「ウチからは〝豪剣〟のゾロだ! 頼むぜ!」

 

 「ちっ、何なんだよこの茶番は。まあ、フェンシングなんて言われてもやりづれェと思っちゃいたが……」

 

 

 「ウチはどうするんだ? ナミがやるか?」

 

 「やるわけ無いでしょ! アイツ〝豪剣〟よ! まさか、ブギーの所に居たなんて!?」

 

 「ふーん? 有名な奴なんだな。よし! おれが戦ってくる!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「レディ〜、ファイッ!!

 

 

 「ぐっぐぐぐ」「ぐぬぬぬぬっ!」

 

 「やるなお前。おれはゾロ、だっ!」

 

 「ぐぎ、おれはルフィー! お前こそやる、なっ!!」

 

 驚いた。結構強いんじゃないかと思ってたけど、あの豪剣といい勝負が出来るなんて!

 さっきは状況に思考が追いつかなかったけど、もしアイツが敗けちゃったら私がフェンシングをしなくちゃいけないのよね? 失敗したわ、こんなことなら腕相撲で負けといた方が安全だったかもしれない。

 

 「ルフィー! がんばってー!!」

 

 

 「へ、オンナを取られたくなくて必死、だなっ!!」

 

 「ふんっ!! ぐぬぬ、ウチの航海士はやらねェ!!!」

 

 「両者白熱の試合! 舌戦も止みません! でも、航海士を取るのは〝ピーナッツ戦法〟だ! そんな恥知らずは〜……?」

 

 ブー! ブー! ブー!

 

 「なんなのよ! さっきから! 謎のルールが多すぎよ」

 

 「デービーバックファイトは奥が深い、ルールブックならあるが読むか?」

 

 サングラスをかけた小さなオジサンが、本を持ってきてくれた。けど、その分厚さ……。

 

 「遠慮しとくわ。目を通してたら、日が暮れちゃいそう」

 

 

 「ぐおおおおお!」「ぬわぁぁああああ!!」

 

 「出たァァァァ!! 豪剣の由来! 覇気だぁ!! おお!? 麦わらも、まさかの!? 覇気だぁぁぁ!?」

 

 「うぉ!?」「わわっ!」

 バキンッ!

 

 何アレ!? 肘を突いてたタルが壊れた!! どうなるの!? 引き分け……?

 

 「ゾロも黒くなるやつ使えんのか! おれもじいちゃんの真似でちょっとだけ出来るんだけどよ〜」

 

 「へぇ、おれもジジーの真似事だ」

 

 「これはハプニングだぁぁ! 頑丈なタルを使っているハズなのに、この2人!! あまりの強さで破壊してしまったぁぁぁ!!」

 

 「実況はいいから、勝敗はどうなるのよ!」

 

 「えーと、カイリキさんルール的には?」

 

 

 「待ってろ、確か……ああ、あった。規定によると、()()()()()使()()()ロロノアの反則負けだな」

 

 「な!!?」

 

 「勝ったのか? ラッキー!」

 

 勝者! 麦わらのルフィー!! えー、ルールブックによると〝覇気〟の使用は禁止とあります」

 

 「なんだそりゃ! 聞いてねェぞ!!」

 

 「ええい! そういうルールなんだ! そもそも覇気なんて使える奴が少ないから、ルールブックにも小さくしか載ってないんだ!」

 

 

 「そんなルールがあったなんて、おれ様も知らなかったぜ……だが、負けは負けだ。おい〝麦わら〟一人選べ」

 

 そうだ! ルフィーが勝ったんだから、向こうから一人選べるんだ!

 惜しかったわね。次の競技に誰が出るか決まってれば、ソイツをとっちゃって不戦勝だったのに!

 

 

 「じゃあ、ゾロ。来いよ。一緒に冒険しようぜ!」

 

 「……おれには、世界一の剣士になるって野望がある。お前は、どこまで冒険するつもりだ?」

 

 「最果てまでだ!」

 

 「上等だ! よろしくな船長(キャプテン)! じゃあな、()()()。短い間だったが、世話になったぜ」

 

 「おう行け行け、デービーバックファイトでの移籍は後腐れがあっちゃいけねェ」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 第二試合のフェンシングは、既に出場しているルフィーは出たらダメらしい。豪剣がこっち側から出場するのは大丈夫みたいね。

 

 つまり、私か豪剣のどちらか何だけど……ここは、剣士って事で豪剣、ゾロが出てくれるみたい。フェンシングはやった事ないって言ってたから、とにかく突けばいいのよとアドバイスしておいた。

 でも、まさか……相手が()()()()()()()()()だったなんて!

 

 キャプテン・ジョークの話を聞いてなかったら、悲鳴をあげて気絶してたわね。なんでも〝ヨミヨミの実〟を食べたっていう能力者らしいけど、どういう能力なのかしら?

 ジョークの能力は、どんな攻撃も通用しないなんていうインチキだったんだけど……もしあの時、救援がもう少し早ければ……ううん、もう後悔しないって決めたんだったわ! 今のナシ!

 

 「ヨホホホ! 私の得意分野でこうまで攻められるとは……!」

 

 「あんたとは一度戦ってみたいと思ってたんだ。ブギーの所で一番の剣士はあんただろ?」

 

 「さて、どうですかねっ!!」

 

 「へへ、とぼけやがって! 参謀のヤロウでも立ててんのか? そういうのも、例のアレって事かよ?」

 

 「そう、それがコツ!」

 

 あのブルックって剣士も相当な腕前ね。たぶん能力なんかじゃなくて、剣の実力でゾロの攻めを全て(さば)いてるんだわ。

 本業は剣士じゃなくて音楽家らしいけど……ルフィーがそれを知ってから目を輝かせてるわ。まさか、この試合に勝ったら仲間に選ぶつもりなんじゃないでしょうね……?

 

 

 「(らち)が明かねェな! ソイツは柔剣ってヤツか?」

 

 「そうです! ですが私の力では〝覇気〟を使われれば呆気なく敗けていたでしょう」

 

 「ルールっつーんだからなっ!! そっちだって能力の技は使ってねェだろ?」

 

 「ヨホホホ! あなただって、突き技だけだから()()竜巻も起こせないのでしょう?」

 

 「純粋に剣で勝負したいって事か! よし! 全部捌かれちまうんなら、捌けねェくらい連続で突けば……!」

 

 脳筋ね。竜巻って言うのも意味が分からないし、剣士が技で竜巻を起こすって言うの? 天候の学問をナメないでよね!

 

 

 「なんだ? 急に暗くなったぞ?」

 

 ……え? なんで急に……!? ()()は!? 

 

 ドゴォォォォン!!

 

 突然落ちてきた巨大な砲弾によって、島の一部が吹き飛んだ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「チチチチ!! ここに居るのは分かってるぞ! 航海士ナミ!! よくも私の経歴を台無しにしてくれたなぁっ!!」

 

 この声って!? どうして!?

 鉄で出来た小型の戦艦が海に見える。その小型船に不釣り合いな程大きい大砲でさっき爆撃してきたのね。

 

 「あの准将が運んでいた、海賊ギャンザックの置き土産だ! それに、海軍からの退職金代わりに財宝もまとめて持ってきてやった!!」

 

 聞いてもいないのにペラペラと。別に拡声器で言わなくてもいいじゃない! でも、財宝ねぇ……。

 

 

 「デービーバックファイトのルールによると、乱入者が現れた場合は一時中断。敵を倒したのち再開、だ」

 

 「おれ様のシマでナメた真似しやがって。ナミ、おめェの知り合いみてェだが?」

 

 「逆恨みよ! キッチリ拘束されてたハズなのに!」

 

 「ああいう手合いにツケ狙われるたぁ、災難だな。だが、敵を招いちまった責任はどうするよ?」

 

 う、海賊のクセに筋の通った事言うわね。確かに、私を追いかけて来たみたいだし……。

 

 

 「どうして私が逃げ出せたか不思議か? チチチチ! あの教会が私を見込んで牢から逃し、さらにこれだけのお膳立てをしてくれたのだ!!!」

 

 「さあ、出てこい! 島が穴だらけになるぞ? まずは、その小汚い小舟を燃やしてやる!」

 

 あの戦艦、火炎放射器まであるの!?

 

 

 「あんにゃろ!! メルヘン号を!!」

 

 「あのバカな小僧も一緒だなぁ!? チチチチ! まとめて大砲の餌食だ!!」

 

 ルフィーが船を燃やされたのに怒って、戦艦まで飛んで行っちゃったわ。これは、任せちゃって大丈夫かしら?

 

 

 「あいつ一人で大丈夫そうだな。お前と因縁があるみたいだが、いいのか?」

 

 「いいのよ! 出来れば二度と会いたくなかったわ。アンタこそ何してたのよ。勝負は中断したんでしょ?」

 

 「ああ、ブルックと再戦を約束してた」

 

 

 「おい、麦わらのヤツ敵船まで行ったはいいが帰ってこれねェんじゃ……?」

 

 「え!?」

 

 そうだ! さっきは崖の端をつかんで、ゴムの反動で飛んで行ったけど帰りは……?

 大暴れしてるから今にも敵船が沈みそう……そうよ! 能力者は泳げないんだったわ!!

 

 

 「ちっ、待てナミ。おれが行く、世話の焼ける船長(キャプテン)だぜ」

 

 「餞別だ、小舟をくれてやるよロロノア・ゾロ」

 

 「助かる!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「しかし〝キャプテン・ブギー〟敵がまさか一人で乗り込んでくるとはなぁ」

 

 「ああ、ハデに砲撃しやがるからどんな奴かと思ったが、こりゃぁ〝大山鳴動してネズミ一匹〟ってやつだな」

 

 まさに、その通りよ。

 

 

 「さて、敵を招いた云々ってのは麦わらがカタをつけりゃナシだ」

 

 「……でも、島に被害が」

 

 「なぁに、街には直接落ちてねェんだし、どうとでもならぁ。それによ、教会が絡んでるみてェだしこれはウチの話でもある」

 

 「教会……。以前〝七掠撰〟を抜けたのは、教会と揉めたからって話?」

 

 「ああ、おれを公認してた国には教会の本部もあるからな。何かと突っかかってきやがった」

 

 実際、ブギーが七掠撰だった時期は5年程度って話だったわね。ブギーの脱退を期に他の二人も抜けて、今の四掠撰になってから10年以上経ってるわ。

 

 「大海賊ともなると色々あるのね」

 

 「ギャハハ! 気付けば大所帯になってただけだ! ところで、話は変わるがお前さん歳はいくつだ?」

 

 「20だけど……なに? 私は、まだルフィーの仲間よ。それに、海賊のオンナになんて……!」

 

 「ちげェ! 子供みてェな年の娘に手ェ出すかよ!」

 

 身の危険を感じたけど勘違いだったみたい。ちょうどルフィー達も、小舟で戻って来たわね。まあ、()()に負ける訳ないとは思ってたけど無事で良かったわ。

 ルフィーへ手を振り返してたら、ブギーから意外な話題が出てきた。

 

 私は、ブギーと一つの取り引きをすることになった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「じゃあ、勝負はあとにすんのか?」

 

 「ああ、(じき)に教会の連中も来るだろうしな。どうせなら横槍が入らねェ時の方がいいだろ? ハチ! 顔を見せとけ」

 

 「へい」

 

 「なんだ? ハト?」

 

 「アッシは〝伝書のハチ〟トリトリの実の能力者ですぁ。アッシの伝書鳩で連絡出来るようにしやすんで、鳩が来たら返信をお願ェしやす」

 

 「伝書鳩の元締めってアナタだったの!? M・Gでも普通に利用してるけど、運営してるのがドコなのか誰も知らなかったのよ!?」

 

 ハチって人? は結局ハトの姿しか見せてくれなかった。

 能力で鳥と話す事ができるから、伝書鳩を雇って世界中で文書のやり取りを手助けしてるみたい。

 最初は情報を抜いてるんじゃないかと疑ったけど「そんなケチなマネはしやせん!」と怒らせてしまった。ブギーのために、資金を集めてるだけらしいわ。

 

 

 「おれ様達も、コトが済んだら拠点は捨てて旅立つ予定だ」

 

 「え!? 10年くらい、この街にいて街の人達にも大人気なんでしょ?」

 

 「教会の本部が近ェこの島からは、どの道離れるつもりだったんだがよ。向こうから喧嘩を売ってきたんだ、ひと暴れしたら旅立つ事にするぜ」

 

 ブギーからもらった小舟を確認し、私たちは旅立つ準備を始めた。

 ルフィーとゾロが荷物を運び込んでいる間に、私はブギーのテントへ置いたままだった斧を取りに戻る事にした。

 

 「随分と物分かりが良い事を言ったな、()()()()()よぉ」

 

 「考えてもみろ、ブルックはあのまま行けば敗けてたしよぉ、3戦目の相手はナミで確定だぜ?」

 

 「2戦目は引き分けって形にして、コンバットで嬢ちゃんから勝ちをもらうってか?」

 

 「ギャハハハハ! カンペキだろ! それで麦わらを取っちまえば、延長戦を受けねェ訳にはいかねェだろ?」

 

 呆れた。筋の通った漢気のある海賊だなんて思っちゃったけど、やっぱり海賊は海賊ね。

 こうなったら、再戦までに意地でも強い仲間を見つけないとね!

 まだ何かを話してる二人にバレないように、私はコッソリと斧を回収して退散した。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「舟も大きくなったし、仲間も増えた!」

 

 「はぁ、成り行きで着いて行くけど、海賊にはならないわよ。でも、あの船からお宝を持ち出したのは褒めてあげる!!」

 

 「それのせいで狭いけどな」

 

 

 「じゃあな、麦わら。次の勝負までに腕を磨いておけよ!」

 

 「おう!」

 

 どの口が言ってんのよ! 私が相手だって決めてるクセに! いっそ、私自身が鍛え……って、ガラじゃないわね。

 コイツらと一緒にいると、考え方が単純になりそうで怖いわね。

 

 「よし! 出航だー!」

 

 

 ブギーとの再戦を誓い、舟は南へ進む。まずは、例の無人島へ……何か担がれてる気がしなくもないけど、今は旅を楽しみましょう。

 

 


 


 

 

 〝置き土産〟

 

 ー 十日後、誰もいなくなった筈の無人島 ー

 

 

 「各員散策開始! ヤツの痕跡を探し出せ!」

 

 例の海賊〝道化のブギー〟がアド・オリーチェ教会本部を襲撃して一週間、ブギーが長年拠点としていた街で私達は()()()の情報を得た。

 ブギーはここ十年間、飛行能力のある部下を使って度々この島を監視していたようだ。

 街の酒場の御主人が言うには、この島は昔ただの岩山だったけれどある時突然、自然溢れる島へと変貌したらしい。それをブギーがしきりに気にしていたとか。

 私達は行方を眩ましたブギー捜索の為、わずかな手がかりでも見つけ出さなければならない。

 

 「たしぎぃ!! おれ達は、この大木周辺を調査だ。ボサっとするな!」

 

 「は、はいスモーカーさん! 大木の調査ですね! えーっと、あ! 上の方に小さな穴がありました!」

 

 「周辺だって言ってんだろうが、だが穴だと? ギリギリ人間が通れなくもねェか、お前なら通れそうな幅だな。よし、確認して来い!」

 

 「え!? 私よりスモーカーさんが飛んだ方が早いのでは……? 穴の大きさだって煙になれば関係ないですし……」

 

 黙ってジロリと睨まれてしまった。

 命令なら仕方ない。木登りは得意じゃないんだけどなぁ。

 

 

 「遅えェぞ、たしぎ! だが、遅れて来て正解だったみてェだがな」

 

 結局痺れを切らして能力で先に穴の中へ消えていったスモーカーさんが、顎で入口の床を指す。

 

 「これは!? トラップ!? しかも、致死性のものじゃないですか!」

 

 もし、私が先に入っていたらこの棘だらけの吊り天井に潰されていた……!?

 許せない! こんな卑怯な罠を仕掛けるなんて!

 

 

 「ソイツは、おそらく動物の侵入対策だな。そこに穴だらけになった蛇の皮がいくつかある」

 

 「これは……!?」

 

 「ああ、猛毒を持つ種類だ。ウチの隊で噛まれるマヌケはいないと思うが、あとで注意しておけ」

 

 「り、了解です!」

 

 この島に、こんな危険な動物がいたなんて……

 

 「けれど! 間違えて人が入って来たら……!」

 

 「誰も来なかったんだろうよ。少なくとも、今日まではな」

 

 

 「…………え? アレってもしかして?」

 

 「どうした?」

 

 「こ、これは!!〝和道一文字〟!? それに、ヒノモトの国宝〝秋水〟も!? 名刀がこんなに! 私の〝時雨〟まで……え?」

 

 「ようやく気づいたか。模造刀だろ、刀バカが」

 

 そんな! 全部刀身は木だなんて。鞘や柄なんて着色までしてあるこだわり様なのに!

 なぜ、こんなモノが? 刀へ憧れがある人なら、例え模造刀でも刀身をこんないい加減に作るとは思えない……きっと、私の敵。不思議と確信できる。

 

 「しかし、ここにあるもの全て木製だな。この機織り機は穴よりもデケェ、中で作ったんだろうが……?」

 

 「釘が見当たりません。はめ込み式だとしても継いだ跡すら判らないなんてありえない!」

 

 「おそらく、何らかの能力だろう。植物関連の能力だとすれば、厄介な案件かも知れねェぞ」

 

 植物の能力。悪魔の実大図鑑に載っているだけでも〝ワラワラ〟〝モサモサ〟〝モリモリ〟そして〝ヒトヒト モデル:ドリアード〟と──

 幸い〝モサモサ〟の能力者は海軍に所属している方だけれど。

 

 

 「ここから下へ降りられそうだ、ひょっとすると、この大木の中はほぼ空洞なのかもな」

 

 「ここに住んでいる者がくり抜いたのでしょうか?」

 

 「おそらくな、ご丁寧に階段まで作ってやがる。なんだありゃ!? 四角い木材が幾つもありやがる」

 

 これは!? 巨大な立方体が所狭しと並んでいる。この層だけでおそらく30個。もしまだ下に部屋があるなら一体いくつ……?

 

 「こいつは……? おい、たしぎ。確かヒノモト語を読めたよな?」

 

 「え、ええ。私の育った街はヒノモトの文化がありましたから多少は」

 

 

 なに……これ?

 

 

 「おい、驚いてるみてェだが、口に出さねェと分からねェだろ」

 

 「富、名声、力……この世の全てを手に入れた男〝海賊王 ゴールド・ロジャー〟?

 

 「海賊王? 女帝じゃなく、王か……この前、M・Gへ戦争を仕掛けたあのクリークの事じゃねェよな?」

 

 「ええ、名前は確かにロジャーと。その、海賊は処刑されたとも書かれています。その際に、財宝を探し出せと人々へ促したとも」

 

 「……空想話の類か? にしては、手が込みすぎてやがるな。念のため、全部目を通しておけ」

 

 「ぜ、全部!? 無理ですよ! 私一人じゃ、どれだけかかるか!」

 

 「おれは、下の層に誰かいねェか調べてくる。おそらく、もぬけの殼だと思うがな」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 結局、この大木の中どころか島の中にさえ誰も居なかった。人間はおろか生きた動物一匹すら居ないと言うのは一体なぜ?

 

 その後、今の人員で唯一ヒノモト語を読めるマシカク軍曹にも手伝ってもらい、最初に見つけた30個だけはどうにか解読できた。

 なぜか、一面だけにしか書かれていないので字がとても小さく、ロウソクの明かりを頼りに解読するのに丸一日かかった。

 

 さらに、下へはあと3層もあることが判明し立方体は全部で103個も見つかった。

 それぞれに順番が書いてあり、私が最初に見た物が1番。一層につき30番刻みで置かれていて、最下層だけは13個しかなく91〜103番で終わりの様だ。

 

 この30個分を解読した内容を上へ報告するのは、とても恐ろしい。

 

 これは、おそらく物語の(てい)をとった予言書。世界の作りや歴史などに矛盾はあるけれど、たまに出てくる名称はそのまま現実に存在するものだ。

 クリーク海賊団の崩壊と鷹の目による追撃。これは、今まさに起ころうとしている事態。これが昨日今日書かれたものに見えない以上、予言と認めざるを得ない……。

 それにまさか、私の事まで書かれているなんて。

 

 けれど一番問題なのは、アラバスタ王国の顛末。もし、あれが未来に起こるのだとすれば……!

 

 

 「たしぎ曹長、早く出ましょう。この場所は、私にはとても恐ろしく感じます」

 

 「そうですね。ロウソクの火もそろそろ尽きそうですし、スモーカー大佐へ報告しに戻りましょう」

 

 一瞬、この火を落として全て燃やしてしまうべきなのではと考える。

 ダメだ。これを書いた人間がどこかに居るんだとすればここで燃やしても意味がない。

 でも、その人間はここから去る際に、なぜこんな物を残して行ったの? これが世に出れば、世界は大混乱に陥るかもしれないのに!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 まだ解読されていない残りの大多数は、後日再編されるヒノモト語を読める部隊が調査する事になった。

 あれの存在を知るのは、まだ私達3人と上層部の一部だけ。

 

 当然、緘口令(かんこうれい)が敷かれたけれど……話すつもりは毛頭ない。あの場所の事は、出来れば記憶から消したいくらいなのだから。

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