第25話〝みかん畑と悪い虫〟
「ふふ〜ん♪ よし、こんな感じかな?」
「何してんのよ?」
「刀作りだ!」
そう、船での自由時間も増えたのでオレは趣味の模造刀作りに精を出している。
無人島じゃ、とにかく暇だったから色々と作ったもんだ。お気に入りだけでも回収しとけば良かったなぁ。
今は〝雪走〟と〝三代鬼徹〟を作ってる。やっぱり、このタイミングのゾロが使うなら雪走じゃないとね。
まあ、ローグタウンで本物が手に入るまでの繋ぎなんだけど。
「お、もう出来てんじゃねェか」
「まだ、鞘と柄が完成してない!」
「いつの間に機織り機なんて作ったのよ!? それに、染色までする気?」
「今から、糸を染める」
「そこにこだわるなら、刀身に
「!!!」
そうだ! すっかり忘れてた。原作でも、たしぎが刃文を見てうっとりしてるシーンがあったな。
なんてこった。オレの作ったものは、ただの木刀だったんだ。
「こんなもの……!」
「おい! 捨てる事ねェだろ! それで十分だ、くれよ!」
「あんた、情緒不安定なの? 相談に乗るわよ♪」
「で? 結局、納得のいった物がソレか?」
「造は
「……えらく饒舌に喋るじゃねェか」
そう言えば、するっと出てきたな。原作セリフだから?
まあ、今はどうでもいいか。もう一振りあるんだ。
「こっちは〝
「妖刀って、オイ。そもそも、木刀だろ。だが、気に入ったぜ! ありがとな」
「え? 投げないの? クルクルって」
「何言ってんだ?」
結局、二本ともゾロが持って行った。本腰を入れすぎて制作に三日もかかったけど、あれなら納得の一品だ。
まさかこんな形でウルシが役に立つとは思わなかったなぁ。
そうそう役に立つと言えば、アレを作った時はサンジにも感謝されたな。
「おいクソゴム! テメェ、夜中に食材盗み食いしただろ!」
おお! おなじみのやり取り第一回目だ。鍵付きの冷蔵庫になるまで、この攻防が続くんだなぁ。
……いや、いざ自分が船に乗ってる状況だと割と問題だ。お金は大分余裕があるみたいだけど、食材を積める量は決まってるんだし。
うーん、オレの能力で食べ物をポンって出せればいいんだけどなぁ〜。
「ナルトー。なんか、これ味がしねェぞ?」
「勝手に食ってんじゃねェよ。それはエダの分だ」
「オレの?」
「ああ、お前
「ありがとう! サンジ」
能力の影響なのか、少しの塩分でも十分しょっぱく感じるんだ。でも、減塩料理って考えるとオレだけ年寄りみたいでなんかヤだな。
「気にすんな、塩とは言え調味料は貴重なんだ。節約できるから、むしろ助かる」
そうか、調味料……!
なにか出せないかな? 植物由来だと……コショウ、あれは実か。オリーブオイル……も実だな。
クミン、グローブ、カルダモン……だめだ全部、種とか実だ。
オレの能力だと、花と実と種は無理なんだよなぁ。食用って言うと大体その辺りになっちゃうよな……んー、ロビンなら実も作れるのかな? 悪魔の実はお断りだけど。
枝、蔓、葉辺りで調味料になるものは?
山椒……はやっぱり実か。アレ? 葉っぱも食べられるんだっけ? そうだ、鰻に乗ってた事があったっけ。
たしか〝
でも、肩から出る葉っぱはオークの木の葉になっちゃうんだよなぁ。匂いを付けるくらいなら弄れるけど……
───「お! 初めて味わうが、少しだけ辛味があって香りもいいな。これなら、十分料理に使えるぜ!」
あの後、葉っぱを色々と弄ってみたけど、結局それは失敗に終わった。
けれど蔓にも僅かに葉っぱが付いてるのを思い出し、こっちで試してみたら呆気なく再現する事が出来た。その前までの苦労は一体……。
「他にも食材を出せるのか?」
「やってみる」
蔓性じゃない山椒の葉を作れたってことは……! 葉物野菜を全て作れてしまうのでは!?
これでオレの肩書きは、狙撃手から食材補充係だ!
「ふん!…………」
「なんだ? ただの蔓みてェだが?」
やっぱりそんなに甘くないか。
その後、また色々実験したんだけど
でも、樹木の場合。食べられる部分は大抵が実なんだよなぁ。
「まあ、気を落とすな。〝タラの芽〟ってやつは出せたじゃねェか」
う。タラの芽は前世で山菜取りに行った時、間違えてウルシの芽を触っちゃって
「おい、エダ。お前、刀は使わねェのか?」
模造刀作り中、手の空いてる時間にゾロが話しかけてきた。
「オレは作るだけ」
「そういや、その腰のやつも飾りだったな」
これはライフルの筒だからな。でも、腰の物が飾りってのは侍がする挑発みたいだな。どうせ向こうも木刀なんだし、ノってみるか!
「なにおう! この黒刀〝秋水〟のサビにしてくれよう!」
「ただの黒い木刀じゃねェか。だが、やる気だな!」
「も゛うゆ゛るしで……!」
「何だよもう終わりか? まあ、最初は道場剣術の真似事でつまらなかったがよ。後半に使って来た型だけは面白かったぜ」
ボッコボコにされた。
剣道なんて、前世の授業でしかやった事ないんだ! それだって「〝突き〟は危ないのでやめましょう」なんて方針だったんだし。
どうやってもゾロには当たらなかったから、木刀を瞬時にもう一本作って〝二天一流〟とか、ジェットが無い〝天然理心流〟とかやってたらゾロが本気を出してきた。
「その型は、どういう発想で生まれたんだ? 無人島で編み出したのかよ?」
「え? カッコいいから……?」
「ははっ! おれの見立てじゃ、それをモノにするのに10年以上かかるぞ。剣は最初に見せた道場剣術ぐらいにしとけよ」
え……もうすでに、無人島で10年やってたんだけど。
まあ、暇な時しか? やってなかったし? ウサギにすら当たらないし? ダメだ、言ってて悲しくなる。
「やっぱしお前は、狙撃手が向いてるんだろ」
そうだった! 狙撃手の肩書きを撤回してもらうっていうプチ目標があったんだ。
「
「そうか、お前もジジイの技を見てたな。だが、フォームはともかく体重が乗ってねェな。お前はやっぱり、狙撃手が向いてるんじゃねェか?」
この仲良しさん共め! 同じ様なこと言うなよ……。
「なあ! おれが教えてやるよ! エダ!」
「けっこうです」
ルフィの戦い方は真似しろって方がおかしい。
「あんた、そんなに狙撃手がやりたくないの?」
「狙撃手は副船長でいい」
「ワシは、お前にも才能があると思うけどな」
「ならいっその事〝植物好き〟って事でいいんじゃない?」
「いや! それはもう肩書きじゃなくて、趣味だろ。オイ!」
副船長のツッコミはキレがあるなぁ〜。けど、植物好きか……別に好きじゃないし。
「ほら、あんた植物の事詳しいし。果物だって好きじゃない」
「確かに、オークの木は知らなかったみたいだが図鑑に載ってる他の木は割と知ってたな」
「別に好きじゃない」
「なに不貞腐れてんのよ。狙撃手が嫌って言うから考えてあげたのに!」
う。植物好き…………そりゃ、
前世のトラウマが……『植物の世話と! アタシ! どっちが大事なのよ!!』どっちも大事だよ。と言ったら平手打ちされた。
あれ以来植物が好きとは口にしない様にしてたけど、考えてみれば前世の話なんだよな!
よし! 決めた!
「オレは、エダ・ブランチ! 麦わらの一味で〝植物好き〟だ!」
「私から提案しといてなんだけど、締まらないわね」
「それに、麦わらの一味って言い張ってるのお前だけだぞ」
「ルフィ! オレ、植物好きだ!」
「おう! 知ってるぞ」
こうしてオレは狙撃手から解任されて、謎の役職?〝植物好き〟になった。
その後も、ナミさんに色々な道具を作っていた事がバレて、売却用に量産させられたり
ルフィのせいで食糧危機に陥り、タラの芽が大活躍したりと何かと能力を使わされた。
おかげで、バラティエのあった孤島で入れ替えてきた花壇の土も栄養がスカスカになってしまった。
ー ココヤシ村近海 ー
「な、なんだアレ……!? 家が全部ひっくり返ってる!?」
「ああ、アレ皆驚くのよね。そりゃそっか」
なんかナミさんが軽く流してるけど、
「そこは元々、ゴサの町って呼ばれてたんだけどね。12年前、海賊キャプテン・ジョークに襲われ
「おれが闘ったガイコツだな! あいつは悪いガイコツだったもんなぁ〜」
「これは、あの
キャプテン・ジョンじゃなくて、ジョーク? そんなのいたっけ?
あ!! アニオリのスペシャルで出てきたアイツ! オレは3歳くらいだったから、ガイコツが怖く感じたあの話か!
でも、アイツって能力者だったっけ?
「おーい! ナミ姉ちゃーん!」
「誰か呼んでんぞナミ」
「まさか! ナミさんの弟なのか!?」
「違うわよ。アイツはチャボ。近所に住んでる子供よ」
今 の子供か。現代を生きる子供って意味じゃなくて、Tシャツに〝今〟って書かれてる子供。
「ねぇ! 私が帰って来たって村の皆に伝えておいて! 海賊船だけど平気だって!」
「分かったぁ!」
「あのガキ〝今〟って意味分かって着てんのか?」
「何の事? ゾロ」
「あ? ああ、服に書いてあった文字だよ。そういや、お前らは読めねェんだったな」
んんん? まってくれ! まさか!!
「ああ、アレってヒノモト語だったのね。アンタが字を読めるなんて意外だわ」
「その言い方だと、共通語の方も読めねェみてェに聞こえるんだが?」
「ヒノモト語が分かるなら、もっと早く言ってくれよ! ゾロ! まったく!」
「うおっ!なんだよ。お前、ヒノモト語の方が上手く喋れるのか?」
「なんだなんだ!? お前ら急に頭が……!?」
結局、ゾロもヒノモト語を話せるって事が判明したんだけど、他の仲間には通じないから
こんな事なら、無人島で初めて会った時に日本語で話しかけておけば良かったよ。
ー ココヤシ村 ー
「おっほー! デッケェ村!」
「いや、村の規模じゃねェだろ! さっきの町よりデケェんじゃねェか?」
「そりゃそうよ。ゴサの町の人達もこっちに来てるんだから。村ってのは名前だけよ。少しは海賊避けになるでしょ?」
「たしかに、ワシも最初聞いた時は寂れた村って印象があっ……ぐへ」
「殴るわよ?」
ナミさんも武装色とか使ってないよね? 今は副船長だったけど、ルフィもたまに殴られてダメージ受けてるし。まあ、それは原作通りか。
でも、村の雰囲気はちょっと物々しいな。チャボって子が伝えてくれてるハズだけど、やっぱり警戒されてるのかな?
「ナミ! なぜ海賊船に乗っている!?」
「あ、ゲンさん! ただいまー!!」
「なんか怒ってるが、まさかナミさんのお父様!?」
サンジはさっきから勘が悪いな。それよりゲンさん、ちゃんと風車を付けてるなぁ。でも、身体に傷痕が見当たらないって事はやっぱり……?
「ナミ! 質問に答えなさいっ!」
「大丈夫よ。コイツらは悪い海賊じゃないわ。あ! ゲンさんなら〝ピースメイン〟って言えば分かる?」
「ピースメイン!? 信じられん! もう聞かなくなって十年以上経つぞ」
「おれはルフィー! ピースメインだ! オッサンはナミの父ちゃんか?」
「……私はゲンゾウ。村の駐在だ。はぁ、お前達に敵意が無い事は、ナミの様子で分かった」
「ゲンさんには、小さい頃からお世話になってるの。あとは、村の皆ね。みんなー! 悪い海賊じゃないから平気よー!」
「まあ、ナッちゃんが言うなら」「確かに海賊っぽくないしな」「あんなに笑顔なんだし大丈夫でしょ」
ナミさんは、村の人達から信頼されてるみたいだ。
その後、ナミさんの家があるっていう村のはずれへ移動する事になった。
ちなみに、ゾロは途中で寄った病院でドクターからしこたま叱られ、即日入院になった。今は副船長も付き添いで病院に残ったから、オレとルフィとサンジ、それにナミさんとゲンさんの5人だ。
お! みかん畑だ。広いなぁ〜。前世の実家じゃ蜜柑を出荷用には栽培してなかったけど、庭に何本か植えてあったから良く食べたもんだ。
花が咲いてる木もあるし、色んな品種を育てて収穫時期をずらしてるみたいだ。でも流石に日本の品種ではないみたいだな。
それに今は実が付いてる木は無いのか、残念。
「お、あの木の列はマンダリンか? ナミさん」
「そうよ。さすがコック、みかんにも詳しいのね」
〝植物好き〟あやうし! オレだって日本の木なら……! せめて実が付いてれば分かるんだけどなぁ。
「ししし、ナルトの方が植物好きなんじゃねェか?」
「……お前、空気ってモンを。エダが……って何してんだ?」
「あ、虫がいたから」
「カイガラムシ? 見落としがあったのね。ありがとう、エダ」
この世界にもいるんだな〝カイガラムシ〟まあ、日本のとは少し違うみたいだけどコイツの厄介さはそれこそ〝植物好き〟な人間なら知ってるハズだ。
名前の通り、
「お前! 点数稼ぎしやがって!」
「ただのクセだ」
「なによナミ。男を引き連れてきちゃって。彼氏でも見つけたの?」
「ノジコ! ただいま! コイツらは、そんなんじゃないわよ」
「今度こそナミさんのお姉様だ! あの美貌間違いねェ!」
「ははは、まあ姉代わりみたいなもんよ。あら? 私があげたブレスレットまだ着けてくれてるのね」
「……当たり前でしょ! M・Gへの就職祝いでもらったんだか、ら……あ、私あそこ辞めたわ」
「「は!?」」
知らせてなかったのか……って当たり前か。電伝虫も無いんだし、伝書鳩で会社辞めましたって報告もしづらいよな。
世界で一番大きな貿易商の組合で働いてたって聞いてるけど、一流企業を辞めたって事だもんなぁ。う、ゲンさん達の空気が悪くなったな。
この状況、オレたち3人がナミさんを
「何があったのか知らないけど、取り合えず話はベルメールさんの前でしなさい!」
「う、あのね! クビになったとかじゃないのよ! 居る意味がなくなったの!」
「いいから行くぞ! 早くしなさい」
言われるがまま、ゲンさんに引っ張られていくナミさん。なんだか新鮮だなぁ。このまま、ベルメールさんのお墓へ行くとかかな?
ルフィが空気を読まず話しかけたら、ナミさんの保護者の二人に睨まれた。なんでオレとサンジまで……。その迫力、近海の主だったらとっくに失せてるよ。
その後、オレ達は無言のまま後ろを着いて行き一軒の家へと辿り着いた。
そこで今世一番の衝撃を受けることになった……いや、やっぱ一番はロビンになった事だな。
「だから、キャプテン・ジョークはここにいるルフィーが倒しちゃってたからM・Gにいる必要が無くなったのっ!」
「あんたが言うんだから、あの海賊を倒したって事は本当なんだろうけど……」
そう、今目の前で話しているこの人は……
「それはそうと、どいつがあんたのオトコなのよ?」
「だから、そんなんじゃ……」「はい! おれですお義母様! ああ、家族全員お美し……ぶへっ!」
「あれは、違いそうね。やっぱりジョークを倒したっていう彼?」
サンジが吹っ飛んだ。なんかナミさんの戦闘力が上がってる気がするんだけど。これは、下手なこと言えないぞ。
「おれは違うぞ。ナミは仲間だ!」
「オレも。仲間だ!」
「…………そうよ。こいつらは仲間!」
「ふーん? ま、いいわ。取り合えず歓迎するわ! みかん料理しか出せないけど食べてって!」
そう、ベルメールさんが普通に生きていて目の前にいる。いつか、アーロンを必ずぶっ飛ばすって心に誓ったけど……アレ、なかった事にできねェかなぁ?