「それでね、ベルメールさんに斧の使い方を教えてもらったのよ」
「そういやナミ、ずっと斧もって来てたな。使ってるとこ見た事ないけどな!」
「オレは見た。竜巻き」
「「竜巻き?」」
「あんたは、ややこしくなるから黙ってなさい」
竜巻きはベルメールさん仕込みじゃなかったのか。あとさっきの話だとベルメールさんも、海軍じゃなくて商船の護衛団に所属してたらしい。
この世界で、未だに海軍に遭遇してないんだけど……まさか存在しない?
「で? トトさんに助けられてM・Gを辞めた所までは聞いたけど、その後は?」
「ブギーって奴にあったんだ! それでよ、ゾロが仲間になって!」
「……そうよ! ブギーが来るって親分さんに報告しておかなくちゃ!!」
一人黙ってベルメールさんのみかん料理を食べてたら、ナミさんが突然何かを思い出し外へと駆けて行った。
親分さんって言ってたよな? 思い当たる人は、1人しかいないんだけど。
「まったく、あの子は。相変わらず騒がしいわね」
「お前に似たんだな。ベルメール」
「オレ、追いかけてくる」「おれも行くぞ! 面白そうだ!」
サンジはノジコさんと一緒に料理をしてるから、気付いてなさそうだな。
うお、結構急いで出てきたのにナミさん脚も速いんだなぁ。もたもたしてたら見失いそうだ。
あのあと結局見失ったので、情報収集を兼ねてココヤシ村の病院へ寄ることにした。
「ゾロー。治ったかー?」
「治るか!」ペシ
新発見だ。ルフィと2人きりだとオレでもツッコミ役になれるんだな。
ゾロは表面上は元気そうだったけど、ドクターが言うには傷口が化膿しかけていたらしい。流石にそんな状態から短時間で治るハズないよ。
「お前ら、病院の中でくらい静かにしろよ」
「悪ぃウソップ。ゾロは? 治ったか?」
「ああ、ワシの処置が半端だったせいで悪化しかけてたが、ドクターのお陰でどうにかなった。今は、寝てるから騒ぐなよ」
「まあお前さんの医術は戦場仕込みだろう? 飽くまで応急処置としてなら問題ないんだがな」
「ルフィー、やっぱりキチンとした船医を仲間にしないとこの先厳しいぞ」
「そうだな。よし、音楽家の次は船医を仲間にしよう!」
「いや、優先順位おかしいだろっ!!」 ビシッ!
やっぱり、ツッコミと言ったらこの人だな。
でも医者の代わりまでは無理なのかぁ。まあこれでチョッパーが仲間になるフラグが立ったんだけどね。
ルフィはコック探しの時は音楽家とは言わなかったのに、なんで今更?
けど、音楽家か……オレは死んじゃったから見れなかったけど、FILM RED がルフィの音楽家へこだわる原点になってるんだろうなぁ。
「ところで、他の連中はどうしてんだ?」
「そうだ! 医者のジイさん、おやぶんってどこにいるんだ?」
「ん? おお、ジンベエ親分か。ここから西へ行くとアーロンパークと言う……」
「アーロンパーク!?」
「なんだ急に。大声出しおって!」
「おいエダ! 顔色が悪いけど大丈夫かよ?」
「オレ、ナミさんの所へ行ってくる!」
アーロンの代わりにジンベエが居るんだと思ってたけど、アーロンパークがあるって事は……!
ナミさん! 無事でいてくれよ!
「あ! エダー! なによ、追いかけて来たの?」
はぁ、はぁ、うん。魚人達とナミさんが和気藹々としてる。
村の雰囲気を見ただけでも、原作みたいなヒドイ事になってないのは分かってたんだけど。アーロンって聞いて、気が動転しちゃったよ。
「ふーん、あれがさっき言ってた仲間?」
「そうよ。ま、ちょっと頼りないんだけどね」
ひどいなぁ。なんか知らない人魚……いや、
「オレは、エダ・ブランチ。植物好きだ」
「なにそれ? ウケる! 私はメイプル・リード。八刀流よ」
「驚いたでしょ? メイプルは剣士なのよ」
「……
「あんた、男に戻ってからやっぱり頭が……。いい? ゾロは3本だから、8引く3でしょ?」
そうじゃないんだけど……なんか、いつもより優しいから否定しづらい。
オレが言ったのは、はっちゃんの六刀流より2本多いって事なんだ。身近に八刀流がいたら、はっちゃんの立場が……!
「ナミ。こう言う場合は、食べ物で例えてあげたら?」
「そうね! えーと、りんごが3つ みかんが5つ あるとするでしょ? 全部で何個かわかる?」
「……8個」
「そう! えらいわ、ちゃんと出来るじゃない!」
なに、この羞恥プレイ。
「エダ。おまえ……」
いつの間にか追いついて来てたルフィに見られてた!? やめてくれ! ルフィのクセして言い淀むなよ!
そのあと副船長もやってきたので、ナミさんから魚人達を紹介してもらう事になった。
原作と同じく、クロオビとチュウを始めアーロンパークに居た魚人達。
それに加えマクロ一味やアラディン、さっきのメイプルさんみたいに初めて見る顔もいたりとかなりの大人数だ。アーロンパークもそれに合わせてか、原作より大きくなってる様に感じる。
そして、あらかた魚人の人達を紹介してもらったタイミングで……
「ワッハッハ! 待たせてしもうたな。わしがジンベエじゃ。よろしくの、お前さんら!」
「よろしくな! おれはルフィー! ピースメインだ」
「あんたがジンベエか! マンチャが包囲された時は助かったぜ〜! 援軍に来てくれたあんた達には、ずっと礼を言いたいと思ってたんだ!」
「お前さんその銃、長鼻のキハーノか! わしの方こそ、一度会ってみたかったぞ」
「へぇ、副船長の恩人でもあったのね」
なんでもジンベエは〝四掠撰〟として、近海をパトロールしてたらしい。真面目だな。
でも、このジンベエやけにスマートだな。いや体型は同じだから、シンプルって表現のがしっくりくるか。特徴的だったチョンマゲと、飛び出した牙が無くなってる。眉毛もシンプルな太眉だしパッと見だと、ただのオールバックにした魚人のオッサンだ。
けれど残ってる特徴もある。クルっと巻いてるモミアゲと、
これでも耳はいい方なんだ。すでに今世でも一度、モリア神父から聞いてる声だし間違いない! 改めて思ったけど、モリアとジンベエの中の人が同じって凄いよなぁ。
オレが考え事をしてる間も、副船長が昔ジンベエに助けられたことがあったらしく話が弾んでいた。ルフィーも他の魚人とさっそく仲良くなってる……ヒトデの魚人で名前は〝ヒトデナシ〟って言うらしい。でもその名前って、パッパグの持ちネタだよね?
その後も水の中から、モームとワダツミが現れたり、建物の中に水族館みたいなエリアがあったりと驚かされる事がいくつもあった。
でも結局、アーロンとはっちゃんだけは何処にも居ないようだ。
「また考え事? さっきは、ふざけちゃったけど悩みがあるなら聞くわよ?」
さっきって? さんすうのお勉強の事?
まあ楽しそうだったし、いっか。
「アーロンパークって名前。えーと……由来は?」
「ああ、その事ね。アーロンって人には私も会ったこと無いんだけどね」
ナミさんから、簡単にアーロンパークが出来た経緯を教えてもらう。途中で、メイプルさんも加わり色々と補足してくれた。
20年近く前、アーロン一味としてチュウ、クロオビと共にメイプルさんもゴロツキみたいな事をして尖っていた時期があったらしい。つまり、この人若く見えるけどアラフォーは確実だよな?
おっと、余計な事は言わない方がいいな。それでジンベエが七掠撰っていう公認海賊になった時、ジンベエを慕ってた魚人達が一緒に着いて行く事にしたらしい。アーロン一味もその内の一つだったみたいで、この国まで着いてきたようだ。
それから色々と国からの要請を受けて、時には戦争に参加することもあったんだとか。でもある時、混乱する戦場の中でアーロンが敵国へ捕らえられ消息不明になってしまったらしい。
その後ジンベエは考え直し、国からの要請は最低限の範囲でしか受けないよう方針を変えたらしい。
その直ぐ後ココヤシ村を海賊の襲撃から助け、この辺りが襲われやすい立地という点から、村の近辺に新拠点を作る事にしたんだとか。ここは首都からは遠いけれど、航路の関係で船が多く立ち寄る地点になるため、海賊退治には打ってつけらしい。
「で、いつかアーロンが帰って来た時に驚かしてやろうと思って。あいつの名前を付けてやったのよ」
「そのアーロンって人、無事でいるといいわね」
「あの国の事だから、
例の監獄……インペルダウンだなきっと。原作でも捕まってたし。
けど、こっちだとジンベエが七武海……じゃなかった七なんとかになった後で捕まったみたいだから、恩赦とかはないんだろうな。
まあ、アーロンの事は分かった。
はっちゃんも話題に出なかったから、多分メイプルさんがはっちゃんの枠なんだろう。TS仲間? いや、存在ごと別人にすり替えられたって感じか。
そして、過去の話を聞いてもフィッシャー・タイガーの名前が一度も出て来なかった事も、今は一旦置いておこう。
一番の問題は、この国の名前が〝ドレスローザ〟だと言う事だ。
「あいわかった。ブギーも七掠撰だったんじゃ、わしも面識があるわい。
「ありがと! 親分!」
ジンベエ達に別れを告げ、再びナミさんの家へ向かう。
ゴア王国の中にフーシャ村があるんだし、ココヤシ村も何処かの国に属してるとは思ってたけど……ドレスローザとはなぁ。まあ当然、ココヤシ村ではオモチャが歩き回ったりはしてないけど。
さっきの話だと国名くらいしか聞けなかったし、詳しく話を聞いておかないと。
「ナミさん! ナミさん!」
「なによ?」
「ドレスローザのこと、教えてくれ」
「ワシにも聞かせてくれ! ウチの国とは同盟国だったが来るのは初めてだしな」
「おれはどうでもいいや。ドレス
「ローザよ!」
ルフィは興味ないみたいだけど、原作の様に道端で寝たりはしなかった。まあ、いざやられたらナミさんがキレるな。
「私だって、首都には一回しか行ったことないし大した知識はないわよ」
そう前置きしてナミさんは語り出した。
……ちょっと長すぎて、久々に聞き取れない部分もあったんだけど。まあ、簡単にまとめるとこんな感じだ。
1.昔から続いている歴史のある国。
2.国王はリク・ドルド3世。通称〝リク王〟
3.王女ヴィオラの婚約者がマール・デ・グレミオの幹部。
4.その幹部の名前は〝フラミンゴ〟 次期国王候補。
5.その関係で、M・Gの支部が首都にある。ナミさんも就職する際、一度だけ訪れたとか。
6.首都には闘技場があり、闘
7.女性は情熱的で踊りが好き。恋にも情熱的であり、男に裏切られると容赦なく刺す。
8.ザガン帝国という国と敵対関係。過去に何度も海戦があった。
一部物騒な要素もあるけど、原作よりは平和なのかな?
ここから導き出される答えは一つ! ドフラミンゴが頭打ってイイ人になったってことだ。間違いない、花京院の魂を賭け……るのは、やめておこう。ONE PIECE世界での賭け事って、これから騒動が起きるっていう前兆だと思うし。
オマツリ男爵に、FILM GOLD。それこそ、原作でドレスローザにも賭博シーンがあったな。
ましてや、これからデービーバックファイトをするんだし……賭けるのは、自分の身一つに留めておかないと。
一先ず、ドレスローザって言ってもここは首都から大分離れてるみたいだし、訪れる予定もないそうだ。
最大の問題は、なぜ
その後ナミさんの家で夕飯をごちそうしてもらえる事になったんだけど、まだ時間が早いから今は
「驚いた! あんた手際いいじゃない! どう? ウチに来ない? ナミとノジコ2人ともオススメよ♪」
「ベルメールさん! ふざけないでよ、もう」
丁度、植え替えしやすい小さめの木が3本あったから助かった。この大きさなら根回しも必要なさそうだし、土を崩さない様に掘り出して麻布で巻き、その上からロープで固定してあげれば終了だ。
「でも、私も驚いたわ。てっきり、穴掘りなんかは能力でズルするんだと思ってたわ」
「それだと、土の栄養が減るからダメだ」
「ししし、やっぱエダは植物好きだな!」
この位なら、前世で何度もやった事あるしな。道具だって全部ベルメールさんが貸してくれたし、あとはメリー号まで運ぶんだけど……小さいとはいえ、流石に3本は持ちきれないな。
「ルフィ、メリー号へ運ぶから手伝ってくれ」
「おう、いいぞ〜」
そう言ってルフィは軽々と両肩に2本の鉢部分を乗せ、バランスよく走っていく。
よしオレも。よっと、重っ! でも、ギリいける……よな?
「ちょっと、大丈夫? なんなら、
「できる、ぞ!! 大丈、夫だ」
ナミさんは笑ってるから冗談で言ってるんだろうけど、普通にオレの方が非力な可能性が高い。
これは、いよいよ本格的な筋トレでも始めないとマズイな。
メリー号へ戻ってから花壇の土が栄養ゼロだった事を思い出して、一度全て入れ替える事にした。
今は無事に植え替えが終わり水やり中だ。航海中に倒れないように支柱で固定もしたし、これで完了だな。
ただ、何度か往復して土を運んでたから全身筋肉痛だ。
島にいた頃は動物性タンパク質が限られてたけど、今はサンジが料理してくれてるんだ! せめて、前世と同じくらいまで筋力を付けないとな。
これからは花壇の栄養を吸うわけにはいかないし、しばらく土からの栄養補給はお預けだ!
「肉だ! 肉を食べるんだ!」
「そうだ! 肉!! エダ、はやく食おうぜ!」
「なに変な友情を育んでるのよ。お肉があるかは分からないけど、そろそろ時間ね。一度ゾロの様子を見てから帰りましょ」
病院へ再度訪れると、今度はゾロが起きていた。
「世話になったな。寝たら治ったぜ」
「!!!???」
ドクターが、いわゆる
「ぶがふが!」
「ドクター! えいっ!」ガコッ
「ふぃ。助かったわいナミ……ああ、お前さんはもう退院じゃ。念のため、酒は控えておけよ」
「問題ねェだろ酒くら……うごっ!」
「ちゃんと言うこと聞きなさい! ドクターに診てもらわなかったら危なかったのよ!」
「ししし、治ったんだから良かったじゃねェか! ありがとう医者のジイさん!」
ゾロも退院したし……半日くらいだからそもそも入院っていうのかは謎だけど、とにかく夕飯だ。肉があるといいな。
夕飯は全員揃ったのもあって、とても騒がしいものになった。
酒を飲もうとするゾロがナミさんに何度か叩かれたり、サンジが作った肉料理をルフィとオレで取り合ったりした。まさか、生ハムメロンまで出るとは思わなかったよ。奮発してくれたんだなぁ〜。
そのあとも、ベルメールさんとゲンさんは夫婦みたいな喧嘩をし出すし、酔った副船長はオレにやたらと絡んできたりした。
唯一残念だったのは、オレは生ハムメロンを食べられなかった事だ。当然、メロン
食事も終わり、さすがにこの人数じゃ泊まる訳にもいかないので、ナミさん以外は船で寝る事になったんだけど……。
「エダ、ちょっといい?」
オレだけナミさんの部屋へ呼ばれている。いや、そういうアレじゃないと思うよ? 何か用があるそうだ。
どうせなら近隣の地図でも見せてもらおうかな? ナミさんの部屋ならそういうのもあるだろう。
取り敢えずさっきから騒がしいサンジをなだめて、部屋へ向かう。
「この人が、私の姉〝エイダ〟よ」
「写真……」
どことなく、ナミさんに顔立ちは似てるなぁ。でも雰囲気なんかは、ちょっと違う? どちらかと言えばロビンに近いかも……。
エイダって名前を聞いて女スパイみたいな想像をしてたんだけど、そのイメージ通りだったな。
「無愛想な表情の写真しか残ってないけど、たまに笑った時はどことなくあんたに似てたのよ」
「エイダ……さん」
ナミさんが形見のネックレスを写真の前へ置く。
「これは、置いていこうと思ってるの」
「どうして?」
「ブギーとの取引は、
ああ、クソ。言葉が出ないのがもどかしいな! 何か短く、簡単な言葉はないか……!?
不安そうなナミさんの顔を見ていたら、あの映画のシーンが脳裏に浮かんでくる。金獅子のシキに攫われたナミさんが、
『みんなが私を追ってきてくれても、命を落とす結果になる。これだけ言っておきます……必ず
「必ず、助けに、行く!!」
「!?……どういう、意味よ?」
もう文脈とか完全に無視してたな。でも、意思だけは伝えておきたい。
クリスタルをナミさんの首へとかけ直す。大事な物を勝手に触って申し訳ないけど、ここに置いたままじゃダメなんだ。きっと。
「……なんとなく分かったわ。あんたなりの、覚悟なんでしょ?」
一度頷いて、部屋を後にした。
あ、地図見せてもらうの完全に忘れてた。
でも、そろそろ戻らないとサンジがうるさそうだな……仕方ない、明日にするか。
ベルメールさん達に軽く挨拶して、外へ出たらもう誰もいなかった。
もう真っ暗なんだけど! ランプは副船長が持ってたやつだけなのに、置いてくかフツー!
仕方ない、久しぶりに火おこし機を作って……
「ようやく、出てきたか。もう少し遅ければ乗り込んでいたぞ!」
「え? ゲンさん……?」
「着いてこい、どうせ明かりも持ってないんだろ?」
良かったぁ。折角いっぱい食べたんだから、能力はあまり使いたくなかったんだ。きちんと消化して筋肉へ変えないと!
あれ? でも方向が違うような……?
「ここは?」
「エイダの墓だ。お前が、ナミに名付けられた話は聞いている」
「さっき、エイダさんの写真を見た」
「ナミの部屋におったんだろ? あんな大声を出しおって、家の外まで聞こえてきたぞ」
え!? それって、家の中にいたベルメールさん達にも丸聞こえだったって事なんじゃ?
「それは、もういい。エイダの事をどこまで聞いているかは知らんが、私の話を聞いておけ」
「わかった……ゆっくりでたのむ」
少し呆れられたけど、ゲンさんはゆっくりと語り出す。ナミさんの過去、そしてエイダさんが亡くなった日、この村に起こった顛末を……。