植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

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第31話〝奈落〟

 煙に変化したスモーカーの腕に捕らえられ、大勢の海賊が空中に持ち上げられた。

 キツく締め付けてるのか、ナミさんも苦しそうにしてるっ! クソ、何発撃ってもやっぱり当たらない……!!

 

 「坊ちゃん! 相手は自然(ロギア)系です! 弱点を突くか、覇気で実体をとらえなければっ!!」

 

 「煙の弱点って!?」

 

 「さあ?」

 

 おじいちゃんなのに、知恵袋はないのか!? こんな時、バルトロメオのばーちゃんなら……ダメだ、生活の知恵専門だったな!

 現状だと弱点も覇気も無理、オレもさっきの闘いで消耗が激しい! だったら、まずは……!

 

 「スモーカー大佐! 広場の包囲完了しました!」

 

 「コイツらを牢へ運ぶ、ザコは任せるぞ」

 

 させるか!

 

 

 「〝干割(グラウンド・セッコ)奈落(シンクホール)〟!!」

 

 「まさかクロコダイル!? なぜ、四掠撰(フィアクロッセア)が!?」

 

 みんなを巻き込まないよう、吸収箇所をスモーカーの()()()()に絞った1人用の落とし穴だ! ついでに、消耗してたエネルギーも急速補充。

 

 「落とし穴だと? くだらねェ」

 

 クソ、やっぱり()()()のか!

 ナミさん達を拘束してる腕も律儀に浮かしたままだしっ! 驚いて一瞬でも離してくれれば、覇気を使えるルフィとゾロなら自力で脱出できたかもしれないのに。

 でも、たしぎっぽい人がクロコダイルの名前を出してたな。やっぱり、例の七武海もどきだったか。よし……!

 

 「クハハハハ! オレはふぃあくろっせあだぜ? 小物がァ!」

 

 「く、やはりさっきの能力は〝スナスナの実〟! でも一体なぜドレスローザに!?」

 

 「えーと、オレとミンゴは()()だからだ! さあ、おとなしく帰るんだなァ!」

 

 「あんなモンに騙されてんじゃねェ、たしぎ。クロコダイルの顔は写真で知ってるだろうが! 眼鏡をかけろ、バカ!」

 

 「はっ!?……やはり海賊っ! 汚い真似を!」

 

 くっ、たしぎは騙せたのに! あと、汚い真似はそっちだって同じだろ! 不意打ちしてきたクセに!

 渾身のモノマネも通用しないんじゃ、もうスモーカーへの有効打が無い!

 

 

 「ナミを離しなさいっ!!」

 

 「ベルメールさん!?」

 

 「村の方ですねっ! 海軍への敵対行為は、捕縛対象になりますよ!?」

 

 「なにが、海軍! ただの護衛団が正義を気取らないで!」

 

 落ちてたナミさんの斧を拾って、ベルメールさんがたしぎと戦い出してしまった。いつの間にか広場も海兵達で囲まれてるし、一体どうすれば!?

 まずい……! スモーカーが皆を捕らえたまま離れようとしてる! どうにか、足止めしないといけないのに手立てがないっ!

 

 〝眠り歌・フラン〟!!フィーン♫

 

 「ぐ、なにを……しやがった!?」

 

 「ヨホホホ! 移籍していきなり船長を奪われては海賊の恥! あなた自身には効かずとも、部下には眠ってもらいます!」

 

 スモーカーは耐えてるのか!?……でも、()()か。ブルックの技に耐えてる海兵が他にもまだいるな。

 だったら……!

 

 

 「〝ベノム・ショット〟!!

 

 「ぐっ!」「なんだ!? 針!?」「威力は低いぞ!」「だが、なんだか気分が……!」「うう」

 

 「た、大佐……!」「おえっ」「……」

 

 「どうしたお前ら!? ちっ、姑息な手を使いやがって……!」

 

 「何言ってるの! そっちこそ、不意打ちを仕掛けたクセに!」

 

 「ヨホホホ! そちらのお嬢さんの言う通りです。こちらだけが、卑怯と言われる道理はないでしょう!」

 

 ノジコさんも残ってるのか……ナミさんが捕まってるんだ、当たり前だな。早く助けないと!

 そのためにも、まずはスモーカーの注意をオレに向けさせる! 部下をやられたまま撤収はしないだろうけど、皆を連れて行かれたらマズいしな。

 

 「その毒はニコチン。アンタの、葉巻と同じ毒だ」

 

 「なに!?」

 

 その葉巻がヒントになった。オレは前世で喫煙した事はないけど、ニコチンはナスやトマトにも含まれてるんだ。

 少量なら害になるどころか、利点もある物質だけど……()()()()()()()()()()()()()()()()。連射可能なニードルショットは細い棘だから、致死量を含ませるのは無理だけど、嘔吐や眩暈は引き起こせるみたいだ。

 タバコと違って有毒なタールは含んでないから、時間が経てば回復するだろうけど。

 

 「うぉお!若!」「海兵を軒並み倒したぞ!?」「やっちまえ二代目!」

 

 捕まってるのに元気だなブギー海賊団……。そうだよ! 捕まってたってルフィだったら、攻撃の手段があるんじゃないか!?

 

 

 「ルフィ! 覇気で煙を攻撃出来ないか!?」

 

 「んぐぐぐ、むぐぐ」

 

 「やはり、こいつが〝麦わらのルフィ〟! こいつ()だけは、動けねェよう全身を拘束させてもらっている」

 

 「ルフィーさん! あれでは、息が……! なんて、(むご)い事を!」

 

 「そうだ! 背中の正義が、泣いてるぞ!!」

 

 「背中? 何を言って……!? まさかあの予言の事か! テメェ、どこで知った!?」

 

 なんだよいきなり! 予言って何!? そんなの信じちゃうキャラじゃないだろ……ってよく見たら背中に何も書いてない!? ヒノモト語がマイナーだから? だったら、Justice(ジャスティス)とでも書いとけよ!

 いや、今はそれどころじゃないな。どうにか足止めにはなってる……けど、ルフィを解放してやらないとホントに息がもたないぞ……!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「ぐっ!」

 

 「ベルメールさん!」

 

 「はぁ、はぁ、海賊へ味方するならばっ! 容赦は……しませんっ!」

 

 ベルメールさんが倒された!? このままじゃ、庇ってるノジコさんまで危ない!

 

 

 「まったく、ウチの客にこれ以上手を出さないでほしいガネ。〝キャンドル(ウォール)〟!!

 

 「あなた! さっきの受付の!? 私達、さんざん値切ろうとしてたのに……!」

 

 「不満を言う客は、改善点を見つけ出す兆し!〝より良い興行のため、客の意見は全て聞く〟のが私のモットーだガネ!」

 

 モットーは姑息な大犯罪じゃないのか!? なんか、すごくマトモなこと言ってるぞ!

 でも強力な助っ人だ! 頑丈な壁のおかげで、たしぎも攻められずにいる。アレなら向こうは大丈夫そうだな。

 

 「ブギーJr.(ジュニア)! そっちは任せただガネ!」

 

 「(さん)! 助かった!」

 

 「ギャルディーノだガネ!!」

 

 「ブギーの息子だと!? テメェは一体!?」

 

 さっきから、スモーカーの食い付きがすごいな! でも、オレをターゲットにしたのか撤退を止めてコッチへ近づいてきてる! 

 ずっと腕を使って皆を捕らえてるからか、オレ達へは足技しか使ってこない……これだけハンデがあるのに、反撃の手段はないのか!?

 

 「魂の(ソウル)パラード〟!!

 

 「ぐ、()だと!?」

 

 「ヨホホホ! 煙の弱点など分かりませんが、どうやら()()()事で浮きにくくなったようですね?」

 

 「多少重くなっただけだ。それよりも、ブギーの息子に用がある!〝ホワイト・アルマーダ〟!

 

 「坊ちゃん! 避けて!」

 

 またさっきの飛ぶキックか! 避けた所で、煙を操作されて軌道を変えられそうだ。

 どの道、()()に攻撃を当てられないと皆を助けられない!……見聞色は覚えたんだ、ぶっつけ本番で武装色を!

 ガキィン……!!

 

 「ウチの二代目に、手ェ出してんじゃねェよ海軍(シーガル)

 

 「カイリキー!?」

 

 「悪ぃな、エダ。客の歓声が大きくて、気づくのが遅れちまった」

 

 スモーカーの攻撃を()()()って事は! 武装色を使ってるのか!? 頼もしいな、カイリキー!

 

 

 「ちっ、ブギーの右腕〝怪力〟か。そいつは海楼石だな?」

 

 「生憎と()()()覇気を使えねェんでな」

 

 「腕を攻撃すれば、皆を!」

 

 「ああ、だがそれはおれの役目じゃねェ」

 

 ビュン!

 

 「……!! ぐ、弓矢だと!? どこに潜んでやがる!?」

 

 「ぶはーっ! はぁ、はぁ、助かった」

 

 「ルフィ!」

 

 おそらく覇気を纏った弓矢がスモーカーの腕を掠ったんだ! どこに居るのかは分からないけど、やったのはマーガレットだろう。

 煙が少しだけ削れたおかげで、ルフィは顔を出せたけど……相変わらずスモーカーの腕に捕らえられたままだ。もう一手、なにか……!

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 なんの音だ? 地震?

 

 ズバシャァー!!

 

 

 「なんだありゃ!? 水? どうして地面からいきなり!?」

 

 「お、なんかお湯が出てきてケムリの腕が外れた! ラッキー♪」「ようやく動けるぜ」

 

 「とと、地面が近くて助かったわ……これって、間欠泉!?」

 

 「温泉みたいなもんだろ? ナミ」

 

 「ええ、これはお風呂に近い温度だし似たような物ね。でもどうして突然?」

 

 「あれだろ、エダが最初に開けた穴。あそこから噴き出てるぞ」

 

 「お手柄じゃない! エダ!」

 

 スモーカーはオレの方へ近づいてきた事で、最初に開けた穴から噴き出てきたお湯をモロに受けたみたいだ。

 ブルックの技によって腕の高さも地面近くまで下がってたため、ナミさん達も怪我なく解放されている。

 オレが開けた穴は確かに幅を狭くした分、いつもより深くなってはいたけど……こんな都合よく、奇跡的な事が起こるものなのか?

 

 「あの野郎! 散々レディーを苦しめやがって!」

 

 「ケムリンめ! もう捕まらねェぞ!」

 

 「そうだ、やってしまえお前ら」「いや戦えよ。副船長」「ヨホホホ! 皆さんヤル気十分ですね!」

 

 「あとはルフィー達に任せましょう……ってエダ?」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ──やっぱり都合が良すぎる。

 ルフィは「ラッキー♪」なんて言ってたけど、ラッキーマンじゃないんだから……いや、声は一緒だけどさ。

 

 前世でオレがしてた考察の一つ、ニカの影響によって引き起こされる奇跡

 これはおそらく、ルフィ以外にも仲間や一緒に行動した人間へも影響するハズだ。覚醒前から既に、様々な影響を及ぼしていたと推察できた。

 

 ONE PIECEが連載初期の頃は、過去回想以外で人が死なないなんて言われてたみたいけど、アラバスタ編にてルフィと面識の無いツメゲリ部隊の4人は、作中で初めて回想以外で明確に死亡が確認されている。

 けれど同じアラバスタで、ペルはあれだけフラグを立てておいて生き残っている。

 

 ペルとルフィは、対クロコダイル用に〝水を入れた樽〟を用意していた。そしてルフィを背中に乗せてレインベース〜アルバーナまで飛行しているんだ。協力者としてルフィにしっかりと認識され、奇跡の対象になったんだと考えられる。

 

 他に奇跡を起こしたケースは、ロケットマンでエニエスロビーに突っ込んだ場面も該当するだろう。

 麦わらの一味はともかく、同行していたココロチムニーそれにゴンベまで、激しく衝突した列車内にいたのに鼻血を出すだけの怪我で済んでいる。

 他にもサボボン・クレーの様に当初は死亡したと思われていたけれど、あとになって生存していた事が判明したケースもある。

 

 奇跡が起こる条件は、ルフィ自身に認識されているかどうか。それに加えて、状況認識の度合いでも影響力に差があるのかもしれない。

 さっき、ルフィが顔を出して状況を認識した直後に間欠泉が湧いてきたんだから。

 

 逆に同条件を満たしても奇跡が起こらなかったケースは、エース、白ひげ、ペドロ。

 頂上戦争の場には、ニカの影響を打ち消すなにかがあったのかもしれない。幾つか候補が考えられるけれど、今はいいだろう。

 ペドロに関しては、実は生存していたという可能性も否定しきれない。ジェルマの扉絵連載でホールケーキアイランドが出てきていたので、もしかすれば……まあ、オレには確認する術はないけれど。

 

 再確認も兼ねてニカの影響だと思われるケースを並べてきたけれど、さっきの間欠泉もニカの影響によるものと考えれば腑に落ちる。

 皆が無事だったのは嬉しいけど、結局オレは何もできなかったんだ……。

 

 


 

 

 「貴方が、ロロノア・ゾロですか?」

 

 「い!? その顔……!」

 

 やっぱりこういう反応をされる! 分かっていたけれど、あの予言を裏付ける形になってしまった。

 目の前の剣士は、物語の主軸で語られている1人だ。その物語では、亡くなった幼馴染と交わした〝世界一の剣豪になる〟という誓いを果たそうとしている。

 そして、その幼馴染くいなさんと()は瓜二つだとも書かれていた。

 

 「私は〝海軍本部曹長 たしぎ〟です」

 

 「……」

 

 う、やりづらい! 何でなにも言わないの! 私の目標は、悪人の手に渡った名刀の回収。でも、あの物語を読む限りでは()を悪人と決めつける事はできない。

 ()()()()()()()だけの情報で、スモーカーさんは独断で部隊を率いてココヤシ村(ここ)まで来てしまったけれど、本当に〝麦わらの一味〟を捕まえてしまってもいいのだろうか?

 

 無人島への再調査は、当初ヒノモト語を読める部隊を編成し直接向かう予定だった。だけどコーメイ中将が提案した〝大きな紙に()()をとる〟という方法が採用されたので今頃本部では、調査隊が持ち帰っているであろうキューブの写しをヒノモト語を読める人員が解読している筈だ。

 

 私が知らない残りのキューブに、どんな内容が書かれているのかは分からない。けれど、あの予言はきっと……麦わらのルフィを主人公とした冒険譚なんだ。

 訪れる地の問題を次々と解決し、新たな旅へ出る。そんな彼らの姿は海賊とは名ばかりで、まるで幼い頃に憧れた……。

 

 「どうした? 剣士として勝負するんじゃねェのか?」

 

 「和道一文字……」

 

 「へぇ、知ってんのか。あんたの刀は何て名だ?」

 

 「え!? 時雨(しぐれ)ですけど?」

 

 「ほぅ。おれは自分の刀以外は、よく分かんねェが……いい刀みてェだな」

 

 な!? こんなこと言う人だったの!? あのキューブには、名刀について無知なロロノアが私と出会って新たな刀を手に入れると書いてあったのに。他には、私の眼鏡が壊れて何故かロロノアを海軍で働かせるなんて事も……そういえば、今も腰に()()()()差してあるけど……あれは!?

 

 「待ってください! それは〝三代鬼徹〟〝雪走〟じゃないですか!?」

 

 「なんで知ってんだよ! エダの奴が適当に付けた名前じゃなかったのか!?」

 

 「……エダ?」

 

 「おれの仲間だ。これは、そいつに作ってもらった。まあ、()()()()()()だがな」

 

 「いま、何て言いました?」

 

 「あ? だから模造刀だっての、ほら刀身も木だろ」

 

 

 「……エダと言う人はどこに?」

 

 「何なんだよ! 闘わねェのか!?」

 

 「いいから!!」

 

 「う、その顔で詰め寄るな! エダならあそこで突っ立ってる奴だ」

 

 ブギーの息子だと言われていたあの男が!? クロコダイルのフリをして私のことをダマし、仲間へ毒を撃ち込み、さらにはスモーカーさんを間欠泉へ(おび)き寄せたあの卑怯者が!?

 

 


 

 

 「ちょっと! どうしたのよ!? まだ戦ってる最中よ!」

 

 「きっと、もう大丈夫だ……」

 

 ルフィがいれば、全部上手くいく。さっきだって、次々と援護してくれる人が現れたんだ。

 今だって、あれだけ圧倒的だったスモーカーが武装色を使われて苦戦を強いられている。きっと、この先の旅でも……。

 

 「なによ、すっかり覇気が無いじゃない。あ、紛らわしいか。元気がないってコト!」

 

 「覇気か、それがあればもっと役に……」

 

 「エダ! 避けろ!」

 

 え?

 

 

 「うわっ! なんで、たしぎがコッチに!?」

 

 「気安く呼ばないで下さい! あなたを捕縛し、本部へ連行します!」

 

 「アンタ、さっきベルメールさんを怪我させた女ね!! エダ、下がってなさい。コイツは私が倒すわ!」

 

 「……ベルメール。やっぱり聞き間違えじゃなかった! その名前の(かた)()()()に亡くなっているのでは!?」

 

 「「「勝手に殺すなぁ!」」」

 

 あ、良かったベルメールさん意外と元気そうだな。斬られた感じもなさそうだし、たしぎは峰打ちだったんだろう。

 けど、ジョークの名を騙ったティーチの襲撃は12年前って聞いてるし、8年前って数字はどこから? 原作のアーロンがきた年か? でも、この世界は原作の超新星編より2年進んでるんだし……?

 

 

 「あのパクリ女、模造刀を見せたらいきなりエダを襲いやがった!」

 

 「ゾロ、さっきは助かった」

 

 「ああ悪ぃな、おれも油断してたから逃しちまった。それより、あの女がこの模造刀の名前を知ってたんだがよ?」

 

 「たぶん、刀マニアだからだ」

 

 「なるほどな! 合点がいったぜ」

 

 

 「勝手に決めつけないで下さい! エダ! あの予言を書いたのは、やっぱり貴方なんですね!」

 

 「余所見してんじゃ、ないっ!!」

 

 「うっ……!」

 

 ナミさん強っ! いまの腕力だけだよね……? たしぎがこっちへ吹っ飛んで来たんだけど!

 でもまた予言って言ってたな。しかも、書いたって何? ノストラダムス的なやつでもいるの? そんなのと間違えないでくれ、傍迷惑な話だなぁ。

 

 

 「……あの刀。無人島にあった〝秋水〟を始めとした模造刀も、貴方が作ったんですね!」

 

 「ええ!? オレの無人島に行ったのか!?」

 

 「そこで劣悪な模造刀を見て怒りが湧きました……! しかも、あんなトラップまで仕掛けてっ! 危うく死ぬところだったじゃないですか!」

 

 「ごめん」

 

 「無人島って、あそこは何もなかっただろ?」

 

 「オレの拠点があるんだ」

 

 たしぎが怒ってた訳がようやく分かった。ヘビ用のトラップに殺されかけたんだ。そりゃ怒るよ。

 しかも、あの模造刀を見られるなんて……! 当時は完璧だと思ってたけど、ゾロに指摘された今じゃあんなの唯の木刀と同じだ。

 

 「いえ、刀の件も大事ですが……いい加減、予言について答えて下さいっ! 本部が歴史の本文(ポーネグリフ)と呼称しているあの立方体の事を!」

 

 この世界にも歴史の本文(ポーネグリフ)があるのか! これは朗報だな。空白の歴史があるって事は、逆に言えば世界の謎がちゃんと存在するって事なんだから。

 

 「言いにくい事なら、こちらの言葉で聞きます。あの拠点の地下にあった、103個の立方体。あれに綴られた物語を、どうやって知り得たのですか?

 

 

 …………完全に忘れてた。

 原作を忘れないようにメモした備忘録のことを忘れるなんて! 10年前くらいに書いて、能力の実験も兼ねてポーネグリフチックに加工してそのまま放置してたんだ。

 

 だって、原作知識は細かい所以外はそうそう忘れないから見直す必要がなかったし。結構いい加減に書いてるから、アニメのオリジナルエピソードとかごっちゃになってそうだし! あと、木の中が入り口付近と最深部以外まっくらだから火を用意するのも面倒だったんだ。

 

 「あれの事は忘れて下さい。この世界とは関係の無い物です

 

 「そんな勝手なことを……! 私のことだって書かれてるんですよ!?

 

 そうだった! たしぎだって結構登場シーンが多いんだ。名前だってそのまま日本語で書いちゃってるんだし、無関係って言っても誤魔化せないよな。

 えーと、たしぎの身に起こる災難は?……ロビンに殺されかける、アラバスタでの顛末で悔し泣き、スモーカーと入れ替わりブラを引き千切られる。

 予言だと思ってるんだし、これらが自分の未来に起こると思ってるんだよな?

 

 「あれに書かれている内容は、必ず起こる出来事ではありません……上司のセクハラも事前に防げる筈です

 

 「なにを言って……? 私の上司って事はスモーカーさんですか?

 

 「ですから彼に、事前に言っておけば大丈夫です。女性の下着を引き千切ってはいけませんと

 

 「まさか!? スモーカーさんに限ってそんな事は……!

 

 

 「おいエダ。ヒノモト語を止めた方がいいんじゃねェか? 後ろを見てみろ」

 

 「え? ナミ、さん……?」

 

 「大丈夫よエダ 私も学んだの 悪いのはヒノモト語を話す連中よね?

 

 それって、オレも含まれてない? あとゾロも。

 

 「おい! 今すぐ黙らせろ! 正気じゃねェだろアレ!」

 

 「でも、どうすれば!?」

 

 「なんかあんだろ! 月が綺麗だとかそう言うのが!」

 

 「知ってたのかよ!」

 

 「聞こえてるわよ 結局それって どう言う意味だったの?

 

 

 「……あなたを、愛しています」

 

 ナミさんは一瞬だけ呆気に取られたのち、次第に顔が赤くなっていった。気が付けば、ゾロもたしぎも離れている。

 さっきまで、あれだけ絶望的な状況だったのに……あ、ナミさんの事じゃなくてスモーカーの脅威の方だけど。

 

 もうそんな空気は消えてしまっている。やっぱりニカの影響なのか? オレの沈んでた気持ちも大分楽になってるし……いや、これはナミさんのお陰だな。




 今回の考察には『ルフィが認識していないであろうシャンディアのカマキリが奇跡的に生き延びている』という穴があります。
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