例の無人島を出発して はや二日、舟は航路を外れず順調に進んでいる。
こんな小さい舟だから時間はかかるけど、もう半日もあれば目的地につけそうね。
この辺りは気候も安定しているし、本来なら私じゃなくても航海術を少しかじってる人なら楽に航海できるでしょうね。
チラリと目に入った残り
アイツ、エダが追加で食料を調達してくれたおかげでなんとかなりそうね。
まさか飛んでる鳥を狙い落とすなんて思わなかったわ。エダが言うには魚を釣るよりも簡単らしい。
肉、肉とうるさかった船長もすっかりご満悦でエダを褒めてる。
この二日で新入りのアイツも随分と馴染んできたみたいね。
言葉もどんどん話せるようになってるし、こちらの話も理解してる……と思う。
出航した日──沖に出たあとで私たち三人が軽く自己紹介をした時は、ほとんど話が理解できてない様子だったんだから──あの時よりは、大分マシになってきてるわね。
けど、アイツが「ソウデスネ」って言ってる時は大体話を理解してない時ね。そういうのは、
今もルフィーに少し困った顔で「そうですね」と笑うアイツを見てふと思う、やっぱり少し
見た目どころか性別からして違うんだけど、なんとなく雰囲気が近い気がする。
困った顔で無理して笑ってるのに、どこか優しげなあの表情を私はずっと近くで見てきたんだ。
そのせいなのか、必要以上にアイツの面倒を見てあげたくなっちゃうのよね。
島で最初に見た時は潜伏してる犯罪者か何か かと思っちゃったけど、こうして見ていると普通に気のいいやつね。
そう、この舟にいる連中は三人とも気のいい奴らなんだ。海賊なんて言ってるけど一般人からは一切略奪しない方針らしいし。
それだけ聞くとまるで
船長のアイツは〝ピースメイン〟だなんて言ってるけど、それで言うなら私の知る多くの海賊は〝モーガニア〟の部類ね。
海賊からしか略奪しないで船旅を続けるなんて普通は無理だ。この海には確かに海賊は多いけれど、そうそう かち合うことなんてないんだから。
少し前の時代なら航行中の商船を、助けがこない海上で襲う っていうのが海賊のセオリーだったみたいだけど。
今では港町や海沿いの村へ奇襲をかけて、警備隊や軍が到着する前に 奪うだけ奪って逃げ出す っていう方法が主流になっている。
こんな世の中では、ピースメインを謳っても他の海賊に出会す前にお金も食料も尽きてお終いになる。
でも、ルフィーは違ったみたい。最初は嘘だと思ったけど、この間アイツの舟と一緒に燃えてしまったあの
私も知ってる海賊旗がいくつかあったし、ブギー海賊団との戦いで見せたアイツの実力を考えれば納得するしかないわ。
そのブギーから頼まれてあの無人島に寄ったんだけど、お宝が無かったどころかとんだ拾い物をしちゃったわね。
横で寝ているゾロはブギーに頼まれたことに気付いてないけど、知られたらちょっと面倒だからこのまま黙っておくわ。
ルフィーは基本話を聞かないしね。アンタは言葉が分かるんだからちゃんと聞けとも思うけど今は都合がいい。
内緒の
少しして航路にズレがないか確認が終わったので、ルフィー達を見てみる。
もう食事は終わって、今は二人で何か遊んでるみたい。
お互いに能力で腕と蔓を伸ばしてどっちが長いか競いあってる。
アホね。二人とも。
こんな普段の姿からは想像もつかないけど、ルフィーならば本当にあの海まで行けるのかもしれないと思うときがある。
私はまだ決めかねている。
今、一つの勝負が終わった。
男と男の闘いに決着がついたのだ。
「おいエダ! 見てみろ、おれのが長いぞ」
ルフィにエダと呼ばれるとついブリュレだよ!と言いたくなってしまう。ブリュレじゃないけど。
そんなどうでもいいことは置いといて、気づいたら〝どっちが長いんでショー〟に参加させられていた。
正直、勝敗はどうでもいいんだけどルフィのノリについ乗せられてしまう。
けど、上に伸ばすのならまだしも、横に伸ばすとなると途端に苦手になる。何しろ支えるのはオレの体なんだ、筋肉が多少ついたとはいえ体重が軽すぎて
ここが舟の上じゃなければ〝根〟を張って踏ん張れるんだけどなぁ。
とにかく負けは負けだ。素直に認めよう。
「オレの負けだ」
ようやく流暢に喋れるようになってきた口で そう言ってやるとルフィは満足げだ。
さっきまで肉が食えなくて死ぬって言ってたのに調子のいいやつだ。まさか、肉を三日食べてないだけでシワシワに干からびるとは思わなかった。
元から舟に積んであったパンは食べてたし、ヤシの実で水分も摂ってたにも関わらずにだ。
まあ、肉が食えない
ちょうど舟の真上に鳥が飛んでいたので、狙いを定めて〝ニードルキャノン〟で撃ち落としてみた。
さすがに距離が離れていたから
この眼帯──と言っても穴が空いてるので目を隠してはいない──こいつは能力で作り出したものだ。
体に接触していればある程度自由に形を変えられる性質を生かして、蔓で作った眼帯を常に身につけているんだ。
小さいモノや遠くのモノを狙う時は穴の上下左右に
これが結構馬鹿にできなくて、命中率が飛躍的に上昇するんだ。
オレの気配に敏感になったウサギを 遠距離から狙撃する為に編み出したってことは、みんなには内緒だ。
無事、肉にありつけて喜んだルフィから「お前は狙撃手だ!」なんて任命されて焦った。
それはウソップに言うセリフだから! なんとか辞退しようと頑張ったけど、納得してもらえず多分〝狙撃手(暫定)〟って形に落ち着いてしまったんだと思う……。
シロップ村に着いたら早いうちにトンズラしないと大変なことになりそうだ!
そう、次の目的地はおそらくシロップ村のようだ。
ある程度会話ができるようになったので、それとなくルフィに聞いてみたらバギーと戦ったあとにオレのいた無人島に来たみたいだ。
ちなみにネイティブの発音だとブギーとなるらしい。バイオハザードの レオン も リオン って呼ばれてるしよくある事だね。
そういえば、バギーと戦ったオレンジの街からシロップ村までの間に、ガイモンの島へ寄った気もするけど……どうだったかな?
うーん、次の目的地は店もあってそこで補給するって言ってたし、やっぱりシロップ村が先だったかな?
あ! ウソップとガイモンが会話してた記憶があるな。やっぱり、シロップ村の後にガイモンの島だ! よかったぁ〜、オレの島に寄ったせいでガイモンのフラグが消滅したかと焦ったよ。
あんな無人島に二十年も一人なんて耐えられないよな……ん?
無人島、二十年、ついでに緑髪ってまさか!
オレがガイモンだったのか!?
いや、ナイナイ。顔が全然違うし。動物と共存できてないし。そもそもガイモンは大人になってから仲間の海賊に置き去りにされて無人島にいたんだ。
オレは赤ん坊の頃からいたんだし。島で過ごした年月も若干違う。
ほぼ植物として過ごしてた期間が曖昧だけど十三年ほどで、記憶を取り戻してからは丁度十年だ。
──ガイモンはオレが舟から降りた後にきっと救われると信じよう。
ナミさんが言うには、もうあとわずかで着くらしい。
途中ナミさんから食べろと渡されたレモンはマズすぎて食べられなかったりしたけど、旅自体は順調らしい。
ちなみに、その時のレモンはバレない様にポッケナイナイしている。前世では果物が好きだっただけに なんとかしたい所だ。
この辺りの海は穏やかで、滅多に天候も崩れないようなので安全に移動できたようだ。
そういえばあの島でもスコールみたいな雨は片手で数える程度だったなぁ。
この二日とちょっとで、一対一のゆっくりとした会話ならば大分上達できた。
最初の日はみんなが自己紹介してくれていたみたいだけど、聞き取れたのはごくわずかだ。まぁ聞かなくても知ってるんですけどね。
「島が見えたぞー!」
ルフィからおなじみのセリフが聞こえてきた! 英語でも今のは完全に理解できた。
生で聞くことができた感動で、ヤバい涙が。
「ん? 何泣いてんだ?」
「ようやく別の陸地に行けるのよ。感動もするんでしょ」
「そうなのかー? そういうもんか!」
アレ? でもシロップ村って島だったっけ?
ワンピースの世界では珍しく大陸にある村だったような? うーん。
バルトロメオの様にルフィの言葉に感動したり、色々と原作の事を考えたりしていたら、既に島に到着していた。
「おい。早く行くぞ」
いつの間にか起きていたゾロが先に上陸している。オレも急いで後を追う。
この地形は見覚えがある!
目の前には長い坂道。その両脇は崖になっている。
先行してるルフィ達に追いつくと、もう坂の上には人影があった。
「ワシの名はウソップ・D・エラマンチャ! この聖都を守護する
誰このオヤジ
新たなるDの意志!果たしてエダは時代のうねりに着いていけるのか!?
と、これは嘘予告です。
ちなみにガイモンと会うのはオレンジの町〜シロップ村の間で合っています。
主人公が勘違いしたのはアニメではシロップ村の後にガイモンの島へと寄っているからです。
シロップ村は大陸にある?って疑問は原作でルフィが大陸と呼んでいた事から勘違い。
後からでた設定でゲッコー諸島の島の一つと判明しています。