植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

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偉大なる航路突入編
第37話〝その海の名は〟


 

 「……もう止めようナミさん。こんな戦い、虚しいだけだ」

 

 「私は諦めないわっ! 絶対に取り戻してみせるから! エダっ!!」

 

 「──向かって来るなら、容赦しないぞ」

 

 「上等よ! 私を甘く見たツケを払わせてやるわ」

 

 2人の新たな戦いが始まる───互いに〝譲れない想い〟をかけて。

 

 

PART.2

STRONG WORLD

 

 

 

  〜 時は(さかのぼ)り、ロビンが加入した翌日 〜

 

 空は快晴、風は軟風。

 今朝は風車がよく回りそうな気候だ。

 キッチンの窓から、美味しそうな匂いが風に乗って漂ってくる。

 お腹空いてきたな……けど、朝食はみんなが起きてからだ。

 

 昨日()仲間歓迎のプチ宴会が開かれたから、二日酔い組はまだ熟睡中。

 いま起きているのは、みかんの観察をしてるオレ。

 料理中のサンジ。

 甲板で談笑してる女性陣。それと───

 

 「おーい! 何か見えたぞー!!」

 

 船首の上で、見張り当番をしてるルフィだ。

 呼びかけに応えて、ナミさん達も移動している。

 ロビンは、なんだか楽しそうだなぁ……オレには辛辣なのに。

 いつかルフィが言ってた様に、きっとロビンも冒険にワクワクしてるんだろう。

 

 ま、当然だ! オレも普通に気になるし!

 よし、観察終わり。異状なしっと。

 

 「何が見えるんだ? ナミさん」

 

 「岬が二つ見えるでしょ? あれがジブラルタル海峡──通称〝ヘラクレスの柱〟よ」

 

 「「「ヘラクレスってあの!?」」」

 

 「カブト虫か!?」「森の勇者の……!」「大英雄の!?」

 

 「エダが正解、伝説の英雄よ。カブト虫の名前の由来にもなってるし、ある意味ルフィーも正解ね」

 

 「なあロビン、森の勇者って何だァ?」

 

 「…………ぅ」

 

 「ちょっとルフィー、そこはスルーしなさいよっ! ロビンも気にしないで! 別にクイズじゃないんだから」

 

 ロビン、哀れなり……。

 あんな得意顔で 森の勇者 なんて言えば、そりゃルフィだって気になるよ。

 けどそれって〝ヘラクレス()の方だから! 残念っ!

 うぉっ!? キッって音がしそうな迫力で睨んできた!? なんでオレに対して怒ってるんだ!?

 

 「──それでヘラクレスは帰ってくる時に山を壊して、あの海峡を創ったって伝説なのよ」

 

 「山を壊しちまうなんて、スゲェでかい奴なんだな!」

 

 「もー、あくまで伝説よ? そんな大きな人間いる訳ないもの」

 

 ここは元々、大きな山があって陸続きだったらしい。それを壊すほどの巨体……古代巨人族ならあり得る?

 でも今はロビンの機嫌が悪いみたいだし、話を振れないな。

 おっと! それよりも、ちょっと聞き流しちゃってたナミさんの話の方が重要だった!

 さっきヘラクレスが()()()()()って言ってたけど、どこから帰ってきたのかが問題なんだ。

 

 「ナミさん! さっき言ってた〝オケアノス〟って?」

 

 「何よ今更。私たちの最終目的地は最果ての海(オケアノス)でしょ?」

 

 「初耳だけど!?」

 

 「言ったわよ、初めて会った時に。あ! あんた言葉が理解できないんだったわね……」

 

 「今はちゃんと喋れるぞ! 勉強したんだ!」

 

 「昨日の夜はサボってたってロビンに聞いたわよ? まあいいわ。簡単に説明するとね───」

 

 ふむふむ。オケアノスって言うのは、未開の海の事らしい。

 それこそヘラクレスの時代は、地中海の外は全てオケアノスだったそうだ。

 現在だと人類の探索も大分進んで、太平洋の一部の海域だけがそう呼ばれているって話だ。

 そこが最果ての海(オケアノス)

 みんなの野望は、何だかんだでそこへと繋がっていた。

 

 話を聞けば、島があるのかどうかも不明の海域。

 だけど、もしそこに島があったなら、それは〝最果ての島〟と呼べるモノだ。

 オレの野望も───〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース )〟を見つけられる可能性も、きっとその海にある!

 

 

 「なぁナミ。魚人たちが何かやってるぞ?」

 

 「わぁ! 海峡の柱が、もう完成間近ね!」

 

 「けどナミさん。柱って言うより、埋め立て工事みたいだぞ?」

 

 「そう、埋め立てよ。事故で広がった海峡を、元の幅に戻す工事なの。柱って言うのは伝説になぞらえただけの名前ね」

 

 「何故そこまでして戻すのかしら?」

 

 「あ、そっかロビンは知らないわよね。数年前まで地中海には、大型の海王類が入り込んでいたの───」

 

 言われてみれば、オレ達の航路には大型海王類が出なかったなぁ。

 ナミさんの話では、地中海には元々海王類が生息していなかったとのこと。

 

 けれど、その生態系は20年前に海峡で起きた事故のせいで一度崩れる。

 事故で広がった入り口から、多くの大型海王類が迷い込んできたそうだ。

 それをジンベエが長年かけて、全て大西洋側へと帰したらしい。

 その後はじまった埋め立て工事が、いよいよ完成間近まで来ているんだ。

 

 一通りの説明を聞いていたら、船はもう海峡へと差し掛かっていた。

 船室で寝てた皆も甲板へ出てきて、ついに地中海を抜ける瞬間がやって来た!

 長かったなぁ。ココヤシ村を発って、間もない筈なのに……まるで数ヶ月経ったかのような気分だ。

 まあいいか。

 さて〝偉大なる航路(グランドライン)〟! ここは一つ意気込みでも──

 

 

 「ナミ〜!」「達者でな!」「お前ら、ナミを頼んだぞ〜!」

 

 「ダルマ! ゼオ! ドスン! 行ってきまーす!」

 

 「相変わらず魚人に人気だなー、ナミ」「ヨホホホ、微笑ましいですねェ」

 

 「人魚は!? 人魚は居ないのか!?」「落ち着けエロコック」

 

 え?

 工事してたの新魚人海賊団だったのかっ!?

 みんなニコニコしてて、キャラ崩壊しすぎなんだけど!?

 

 あー! 気付けば大西洋に突入してる!? 変なサプライズのせいで出鼻を挫かれた……。

 

 


 

 

 ー 船内・ラウンジ ー

 

 「スペードのエース、キング、クイーン、ジャック──階段革命!!」

 

 「なっ!?」

 

 「8切り、8切り、3のトリプルに、4のトリプルっと」

 

 「何よソレ!?」

 

 「はい、6が最後の一枚だから──またオレの勝ちだ!」

 

 「絶対おかしいっ! あんたイカサマしてるわ!!」

 

 「おい止めとけよナミ。エダのは正真正銘、ただのだ……ワシは二度とやらん!」

 

 「副船長は黙ってて! いくら巻き上げられたと思ってるのよ!?」

 

 荒れてるわねナミ。

 でも、彼の()()は、ウソップの言うように ただ運が良いだけなのよ。

 

 私も、もう抜けるわ。

 最初は見張り番のゾロを除いた全員でやっていた〝ダイフゴー〟だけど……

 あまりにも一人勝ちが続くから、今残っているのは ナミ と エダ だけ。

 彼もやめるように説得してるけど、ナミは引きそうにないわね。

 

 

 「だからさ、オレはカード運がいいし、出し方もミスしないし……」

 

 「この〝ダイフゴー〟はM・Gで作られたゲームよ! 何であんたが、そんなに詳しいのよ!」

 

 「だってコレ、オレのやってた地元(ローカル)ルールと同じ、大富豪だし」

 

 「なによソレ! 私だって、M・Gじゃ負け無しだったんだから! 絶対、取り戻してみせるわ!」

 

 これも偶然の一致なのかしら?

 彼が前世でやっていたルール。大富豪も大貧民も発生しない、特殊な〝大富豪〟

 本来なら、勝ち負けに応じて身分が決まるゲームなのだけど

 このルールでは、毎回全員が平民(フラット)の状態で勝負するから、前回勝った者が強いカードを搾取するような事はない。

 純粋にカード運と戦略だけがモノを言うゲーム。

 M・Gのメンバーが、ほぼ革命軍の人達だと考えれば納得のできるルールね。

 

 

 「ジョーカーのダブル」

 

 「はぁ!?」

 

 「8切り、8切り、8切り、4のトリプルで上がりっと」

 

 「なんで8を一枚ずつ出すのよ! 腹立つわねっ!!」

 

 「……もう止めようナミさん。こんな戦い、虚しいだけだ」

 

 ホントに異常なカード運ね。

 ちょっと前に、ルフィの天運に対して気落ちしてたのが嘘のよう。

 いい加減、ナミが泣きそうよ?

 

 あ……今度はナミが、一枚も出せずに勝負が着いてしまったわ。

 ジョーカーが2枚入った、全54枚。2人での勝負だから、その半分の27枚がお互いの手持ち札。

 運が良いとはいえ、彼はあの短時間で初手から完封までの流れを読んだのね……。

 これなら私が居なくても、少しコツを掴めば性質変化技くらい使えるんじゃないかしら?

 

 「ごめんナミさん。オレ、勝負に手加減は出来ないんだ!」

 

 「もうヤダ! エダきらい! ロビ〜ンっ!!」

 

 「フフッ、あらあら」

 

 「なっ!? ズルいぞロビン!……う、そのドヤ顔をやめろ!」

 

 能力に関してのヒントは、しばらく黙っている事に決めたわ。

 

 


 

 

 ー 補給地、近海 ー

 

 船は海峡を抜け一旦北へ。地球で言うポルトガルを目指している。

 交易が盛んな場所らしく、食料を始めとした物資を買い込むには最適みたいだ。

 

 「おい元気だせよナミ。もう目的地の港が見えてるぜ?」

 

 「……副船長が居れば平気でしょ」

 

 「ワシは別に構わねェけどよ。普通ならルフィーの仕事だからな?」

 

 「お、そうだな! よし、任せたぞ ウソップ!」

 

 「はぁ〜、ナミの苦労が良く分かったぜ」

 

 ナミさんが本調子じゃないから、代わりに副船長が方針を決めるみたいだ。

 ここでの目的は物資の補給。

 サンジ と ルフィが食料担当。

 ナミさん と ロビンが日用雑貨──服とか椅子などを買い足すらしい。

 オレ と ゾロが武器──砲弾と銃弾の補充と、いい刀があればそれも買う予定だ。

 残りの2人、副船長とブルックは船番。

 

 原作だと船番を立てるケースは少なかったけど……ここは必要そうだな。

 港へ入ったメリー号が、さっそくゴロツキ達に取り囲まれてる!

 

 

 「おいおい、ここが(あざけ)りの町だと知らねェのか?」

 

 「へっへっへっ、貧乏そうな船だが下町に停めちまったのが運の尽きだ」

 

 「ビリーさん、やっちまいやしょうぜ」

 

 「ああ、女2人は傷付けんなよ? ありゃ、高値で売れそうだ」

 

 嘲りの町ってモックタウンみたいだな。

 それに、ビリー? バラティエの人とは別人みたいだけど……。

 まあ、ありふれた名前か。STRONG WORLD(ストロング ワールド)に登場する鳥もビリーって名前だったし。

 おっと、今はそんなことより気落ちしてるナミさんが心配だ!

 流れ弾が当たらないように気を付け──

 

 〝巻き〟!」「〝ムチ〟!」「〝シュート〟!

 

 「「うぁぁぁぁ!!?」」

 

 ──る、必要もないな。船長とその両翼が、あっさりと無双しちゃったよ。

 あれ? でもなんかロビンは難しい顔してるな。アイツらの発言に怒ってるのか?

 

 「どうしたんだ、ロビン?」

 

 「いえ……ルフィ達に関して少し気になっただけよ。さっきの技、割と初期のモノよね?」

 

 「そりゃ相手が弱かったんだから、強力な技を使うまでもないだろ」

 

 「そうね。杞憂ならいいのだけど……」

 

 「ヨホホホ! 分かりますよ、お二人とも。あの強さを見てしまっては気後れもするでしょう」

 

 「だが気にすんな。ワシらはワシらで、得意分野が違うんだ。戦闘はアイツらに任せて、各々が出来る事をすりゃいいさ」

 

 おおー! なんか、含蓄のある言葉だ。

 副船長は狙撃、発明、操船、医術と多方面だし。

 ブルックだって、音楽以外にも、長く生きてるだけあって知識が豊富だ。

 ナミさんは当然、航海士として船には欠かせないし。

 オレも得意分野で頑張るか!

 

 あれ、なんかデジャヴが───?

 

 「まずいぞロビン! オレ達だけ得意分野が無い!?」

 

 「一緒にしないで欲しいわ。私は考古学の……いえ、原作の知識が──」

 

 「森の勇者とか言ってたのに?」

 

 「VIVRE CARD(ビブル カード)には〝ヘラクレス〟という名前で載っているわっ!」

 

 「さすがロビ ン! ムダに詳しいン!」

 

 「──っ!」キッ!

 

 「なに姉弟喧嘩してんのよ。ロビンの能力で操船は大分楽になったし、エダは……強いじゃない。トランプ」

 

 オレの得意分野ってトランプだけなのか!?

 

─────────

──────

───

 

 「助かったぜエダ。やっぱ船をキレイに直せんのは、お前さんだけだな!」

 

 「う……気遣いありがとう、副船長」

 

 「ヨホホホ! なんという綺麗な仕上がりっ。さすがです坊ちゃん!」

 

 さっきの戦闘の余波で、メリー号が少しだけ傷付いていた。

 それを能力で修復して、ただいま副船長とブルックに気を遣われている最中。

 仲間なんだからそんな気遣いは無用なのに……2人とも完全に子供扱いしてきてるなぁ。

 オレも色々あって、あれくらいじゃショックを受けない程度には強くなってるんだ!

 このままチョッパーみたいなポジションになる前に、ハッキリ言っておこう!

 

 「子供扱いはやめてくれ! オレはもう一人前!……だ、よな?」

 

 「おいエダ。船直したんなら、とっとと行くぞ。他の連中はもう行っちまったんだ」

 

 「あ、ゾロ。今行く! それじゃ、留守番よろしく」

 

 「ヨホホ、お任せを」「おう、()()()()も頼んだぞ!」

 

 「ん? ゾロ、その荷物は?」

 

 「武器屋へ行くついでだ。気にすんな」

 

 一足遅れて、ゾロと一緒に買い出しだ。さっき地理は頭に入れたし、迷うこともないだろ。

 

 この街の名前は〝バンジード〟

 ルブニール王国に属する大きな港街。ルブニールって言えば、原作だとノーランドの出身国だな。

 丘に面してつくられた街で、三層に区分けされている。

 今いる下層は、治安最悪なスラム街。

 高町と呼ばれる上層は、貴族や富豪が暮らすエリア。

 これだけ聞くと、完全にゴア王国なんだよな……。

 

 まあ、オレ達が向かってるのは中層。治安も良く、普通に店が営業してるエリアらしい。

 全部さっきのビリーって奴が教えてくれた。サンジが半ば強制的に吐かした情報だ。

 そういえば、相手が海賊じゃなくてルフィはショックを受けてたな。

 なんでも、最近モーガニアの旗を手に入れてないんだとか。

 たしかに副船長の故郷では、ルフィ不在で解決しちゃったし。

 クリークの旗は、ミホークが船ごと沈めちゃって回収不可能。あとは海軍としか戦ってないからなぁ。

 

 「で? 砲弾から買うのか?」

 

 「いや、荷物が増える前にゾロの刀を見よう」

 

 「ああ……別に木刀(これ)でも構わねェんだがな」

 

 「まあまあ、軍資金はあるんだし」

 

 「お前ソレ、ナミからぶん取った金だろ」

 

 「……哀しい戦いだった」

 

 「お前らがいいんなら、構わねェがよ。仲間を巻き込むんじゃねェぞ?」

 

 「? オレもナミさんも仲間同士だから、巻き込むも何もないだろ」

 

 「……お前の図太さだけは()()()だよ」

 

 なっ。さっきの会話聞いてたのか!?

 図太さだけって……オレは割と繊細だぞ!

 それにナミさんとの関係も、旅の間は〝仲間〟って事に2人で決めたんだ。

 ああ──でも、もしロビンが現れなかったら あのままなし崩しで……

 

 「せいぜい、刺されねェよう気を付けろよ」

 

 「……実はもう、1回刺されてる」

 

 「おいっ!?」

 

 「浮気はしてないからなっ! ホントだぞ!?」

 

 「仲間同士なら、浮気も何もねェだろ。ったく」

 

 う。ゾロが呆れた目で見てくる。

 ソレとコレとは話が別なんだ。ナミさんは浮気絶対許さないウーマンだからな……。

 浮気なんて一切してないのに、あの気迫に押されて つい挙動不審になっちゃうんだよなぁ。

 それに引き換え、ゾロはどこか余裕がある。

 先の先を見据えて動いてるって言うか……どんな場面も想定してる一人前の男ってカンジだ。

 

 「おい、置いてくぞ」

 

 こうやってぶっきらぼうな様で、さりげなく船員(クルー)の事も見ているんだ。

 オレも少しは見習っ───てえぇっ!? そっちはスラムの方向だろ!?

 明らかに街並みが違うのに、なんで間違えるんだ!? しかも足取りに一切迷いが無い!

 脳内マップにモザイクでもかかってるのか!?

 

 やっぱゾロも全然、一人前じゃなかったな……。

 おっと、呆れてる場合じゃなかった。急いで追いかけないと───

 

 「ん?」

 

 「3段アイスだーっ!!」「おいおい、走ると落っことしちゃうぞ」

 

 「あっ」ベチャ!!

 

 「冷たっ!」

 

 嘘だろ!? 双子岬っぽい所を越えて来たんだぞ!?

 なのに……!

 オレのズボンがアイス食っちまった!!

 なんでローグタウン限定イベントが起こるんだ!? ああもう! 訳がわからん!

 

 けれど! いまオレがやるべき事くらいは分かる。

 それは───

 

 目の前で泣きそうな顔をしてる女の子に〝5段アイス〟を買うコトだ!!

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