植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

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第38話〝始まりの町〟

 ー バンジード 中層・商業エリア ー

 

 スラム街を抜けたら、一気に普通の街並みになったわね。

 人通りも多くて凄い賑わい。ここへは初めて来たけど、西の流通拠点って話は本当だったみたい。

 あとは何事もなく補給できればいいんだけど……。

 

 「少しいいかしら、ナミ?〝バンジード〟って〝無法者〟という意味だと思うのだけど」

 

 「ええ、共通語だと〝Bandit(バンディット)〟ね。バンジードって言うのはルブニールの訛りよ?」

 

 「やっぱり……あの町と似ているのは、街並みだけじゃないみたいね」

 

 「あ、ローグタウンだっけ? 確かに名前の意味は似てるかも」

 

 「ごめんなさい。あまり〝原作〟の話はしない約束だったのに」

 

 「大丈夫、ロビンが心配する気持ちも分かるから。でも、この街に海軍支部はないから安心よ?」

 

 ロビン と エダが知っている物語。

 ここ数日で、空島を冒険する段階まで聞いたけれど……

 この世界とは〝完全に別モノ〟と思うことに、私は決めた。

 

 目の前でベルメールさんを失い、アーロン一味へと加入させられ

 海賊専門の泥棒としてお金を稼いでいた(ナミ)

 対して、エイダ(お姉ちゃん)を失ってからも、ノジコとベルメールさんが側に居てくれた私。

 似ている様で、環境は大分違うわ。村が長年にわたって支配されるなんて、想像しただけで耐えられないもの。

 

 でも──

 それはそれとして、物語として割り切っちゃえば続きを聞くのが楽しみね。

 あんなに面白い話は、他にないんだから!

 

 「あら? 向こうでサンジ と ルフィが、手を振って呼んでるわ」

 

 「目立ちすぎよ。ルフィーには賞金首の自覚が足りないわね……ナルトくんはともかく」

 

 「フフっ、サンジは似顔絵の手配書だもの。ナミも()()手配書だから安心ね」

 

 「笑わないでよ! 私だってあんな怒ってる所を写真に撮られるなんて──!」

 

 「おかげで、あれを見て貴女と結びつける人間は少ないと思うわ。普段は可愛いもの」

 

 「……もうっ!」

 

 なんだか最近、年下扱いされてる気がする! ロビンとは20歳同士のハズなのに。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー 広場 ー

 

 「なに怒ってんだ? ナミ」

 

 「あんたが目立つ真似するからよ! なんで銅像に登ろうとしたのっ!!」

 

 「この銅像、船乗りかしら?」

 

 「ああ、ルフィーが珍しく食いついたんで、ナミさんに誰の像なのか聞こうかと……」

 

 「高い所から呼べば、お前らも気付くと思ったのによ。ナルトが邪魔すっから」

 

 「ナイスよ、ナルトくん! その調子でルフィーの暴走を止めるのよ!」

 

 「無茶を言うナミさんも、素敵だ!」

 

 「それよりナミ! この銅像のオッサン誰なんだ?」

 

 「ホントに興味あるのね……意外だわ」

 

 「失敬だなお前ェ!」

 

 あはは。失敬なんて言葉を知ってたのも意外。

 さてと、()についての説明か……うーん。どこから話せばいいのかしら?

 

 「見たところ、過去に偉業を成した この街の出身者という感じね」

 

 「さすがロビン。そう、この人は私たちの大先輩よ」

 

 「海賊なのか!?」

 

 「どちらかと言えば〝探検家〟ね。サンディ大陸の外周航路を開拓した100年前の船乗りなの」

 

 「それって、おれ達が辿る予定の航路だろナミさん?」

 

 「ええ。その航路が、レッドラインの向こう側と交易を始めるきっかけになったの。だから彼の出身地であるこの街は〝始まりの町〟とも呼ばれているのよ」

 

 「なるほどな、未開の海を切り拓いた大先輩って所か。まあ今じゃ、商船はロゼ運河を通るのが普通らしいが」

 

 「それだけ時代が進んだのね。ちなみに彼の船もメリー号と同じキャラヴェル船だったって話よ」

 

 「「おぉ!」」

 

 ナルトくんまで一緒に はしゃいでるわね。

 偶然とはいえ、ルフィーが興味を持ったのも何となく分かるわ。

 私だって少し興奮するもの。歴史に刻まれた伝説の航路……航海士の腕の見せ所ね!

 

 「あら? ナミ。この銅像、下のプレートに名前が───」

 

 「あ、ホントだ。来歴とかも書いてあるじゃない。まったく、いちいち呼ばないでよね!」

 

 「「面目ねェ」」

 

 「はぁ〜、もういいわ。私たちは買い出しに戻りましょう。ロビン……どうかしたの?」

 

 「〝偉大なる探検家〟バルトロメオ。神の守護を得て、嵐の岬を越えた男」

 

 「へ〜、ロメ()って言うのか」

 

 なんかアクセントが違ったような?

 まあいいわ。ロビンも〝神の守護〟なんて聞いて胡散臭いと思ったんでしょ。

 どんな嵐でも岩礁にぶつからず、砲撃を受けてもビクともしないなんて伝説は、流石に盛りすぎよね。

 本によっては、かなりのワルだったとも書かれてるし。案外、海賊としても先輩なのかも。

 

 

 「お、ルフィー。このオッサンが乗ってた船の一部が、街の博物館にあるみたいだぞ?」

 

 「ホントかよ!? おれちょっと見てくる!」

 

 「あ。もう! なんで()()読んじゃうのよナルトくん!」

 

 「悪ィ、ナミさん。ロビンちゃんが真剣に読んでるもんだから、つい」

 

 「ごめんなさい2人とも。もう平気よ」

 

 「それじゃ、私達は行くわ。ナルトくんは食料の調達をお願いね」

 

 「あのゴムは、いいのかい?」

 

 「もう諦めたわ。あいつが問題を起こす前に、お互い買い物を済ませましょ?」

 

 食料は上層近くに売ってるみたい。

 上層にはM・G支部があるんだけど、ナルトくんなら顔も割れてないし大丈夫でしょ。

 万が一バレても、ウミット支部長は海賊に対して融通が効くって噂だし。

 前は黒い噂がある人は警戒してたけど、いざ海賊になっちゃうと気にならないものね。

 

 さってと、私たちも早めに買い物を──

 

 「待って、ナミ。どうしても寄りたい場所があるの」

 

 


 

 

 ー 大図書館 ー

 

 ナミに無理を言って寄り道させてもらったけど、正解だったみたいね。

 交易が盛んなだけあって豊富な蔵書量。目当ての本以外にも、興味深い物が幾つかあるわ。

 でも、書物は全て持ち出し禁止。急いで目を通さないと───

 

 「ロビン? 確かにここは魅力的だけど、あんまり時間は取れないわよ?」

 

 「ええ。すぐに終わるわ」

 

 これは!?……やっぱり、私は大きな思い違いをしていたのかもしれない。

 いえ、仮説を立てるのは今()()情報をまとめてからだわ。

 

 「ありがとうナミ。もう行きましょうか」

 

 「ねぇロビン。ホントに今ので本を読んでたの? 私にはパラパラめくってるだけに見えたんだけど!」

 

 「ええ。今のは視ただけで、内容は1割も理解出来てないわ」

 

 「ちょっと!?」

 

 「けれど、目で見た情報は(ここ)へ全て入ったわ。後で、ゆっくり読み直すつもり」

 

 「自由に記憶を読めるなんて……ズルい。あんたソレ泥棒よ?」

 

 「フフっ、面白いわ」

 

 「む。私の二つ名で笑ったんでしょ! まったく、なんで私が〝泥棒猫〟なのよ!?」

 

 ナミの二つ名……いえ、エダを除く〝麦わらの一味〟の二つ名と懸賞金に関しては〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟の影響ね。

 あんな高額を懸けられるような事件は起こしていないもの。

 そう考えると、彼の賞金額 800万という数字は正当な評価なのかしら?

 あら? 噂をすれば……大通りの向こうから、見慣れた緑髪が見えるわ。

 

 「はぁはぁ、ナミさんとロビン!?」

 

 「あ、エダ。どうして1人なの? なんか慌ててるみたいだけど……」

 

 「緑髪コンビを解消したのかしら?」

 

 「あはは。ちょっとロビン! 笑わせないでよ」

 

 「ロビンだって緑髪だろっ!! 急ぐからもう行くぞ!」

 

 「ちょっと! 説明しなさいよ」

 

 「ぐべっ!?」

 

 いくら彼の首が細いからって、握って動きを止めるのはどうかと思うわ。ナミ。

 彼を分身として外へ出していたから、私に痛みがフィードバックしなくて良かったわ……。

 

 「えーと、ここはローグタウンで! 女の子に5段アイスを奢ってあげて!」

 

 「……女の子?

 

 「ち、違う、子供! 父親もいたし! で、それからゾロと武器屋の前まで行って……」

 

 「? ゾロに何かあったのかしら?」

 

 「ゾロは武器屋にいる。靴とかに仕舞ってた、10万ベリーも預けて来たんだ!」

 

 「そう言えばあんた、サイフ以外にお金を分けてたわね。まったく、小心者なんだから」

 

 「ちょっと待ってナミ。そのお金は緊急用だった筈よ? つまり……」

 

 「わりぃ、サイフ盗まれた」

 

 「このばかー!!」「っダメよナミ! その威力で殴ったら分身が消えるわ!」

 

 く、チカラが強い───!?

 思わず六輪咲き(セイスフルール)で動きを止めてしまったわ……。

 

 「ナミさんを()()ぞロビン! じゃ、急ぐから!」

 

 「エダ。犯人を探す当てはあるの?」

 

 「ある!」

 

 「分かったわ。ナミは抑えておくから行きなさい」「んー! んーっ!」

 

 「なにかあったら、ナミさんを守ってくれって意味だったんだけど!?

 

 走りながら何か言っていたけど聞こえなかったわ。

 さて、ナミが怪我をしないように動きを止めてるけど、このままじゃ流石に可哀想ね。

 ふわっ

 「もう! なにするのよロビン!」

 

 「ごめんなさい。また分身を作り直すのが大変だから、つい」

 

 「う。その節はゴメンなさい。分身を消されると、体力が消耗しちゃうんだっけ?」

 

 「ええ。自分で解除する分には問題ないのだけど、彼も急いでいたから」

 

 「あのバカ。お金を取り戻せなかったら、絶対に許さないわっ!」

 

 街へ来て早々、大金を盗まれるなんて もう生涯の運を使い果たしてしまったのかしら?

 あら? けれど、あのサイフって───

 

 


 

 

 ー 中層・路地裏 ー

 

 「ウソ!? やけに厚みがあると思ったけど、まさかこんなに!?」

 

 とてもこんな大金を持ってそうには見えなかったのに。

 そういえば、隣に居た剣士は見るからに〝ブシドー〟って雰囲気だったわ。

 あのレベルの護衛を雇える程の金持ちだったって事ね……。

 

 まあ本人は隙だらけだったから簡単に盗めたけど。

 さてと、稼げるだけ稼いだし、こんな街さっさと出ましょう!

 

 「おっと()()()()()、大通りへは通行止めだぜ?」

 

 「──山鯨(ヤマクジラ)の一味!?」

 

 「ほう、おれを知ってたか。なら分かるだろ? 他人のナワバリで盗みを働いたんだ」

 

 「分け前を寄越せって……?」

 

 「ダハハハ、そうだな。()()()を全部寄越せば、ここでの盗みを許してやる」

 

 「くっ」

 

 後ろは袋小路、逃げ場がないっ……だから早く出て行きたかったのにっ!

 この巨漢は、元・山賊〝山鯨のディック〟()()()()()()()()()()()()()()()()()

 こんなヤツが街の悪党を仕切ってるから、仕事がやりにくくてしょうがないわ!

 海軍支部がないからここへ来たのに、まさか市長に裏の顔があったなんて……。

 

 市民からの人望も厚く、M・G支部長も兼任してる 市長・ウミット。

 裏では山賊や海賊を金で飼い慣らして、他所から来た悪党を襲わせる事で治安維持にも利用している。

 私は、そんな仕組みに囚われてるコイツらが無性に許せない───

 

 「にしても、まさかあの孔雀鳩(クジャクバト)が女だったとはな!」

 

 「ねぇ、ディック……さん」

 

 「あン?」

 

 「市長とどういう取引をしたのかは知らないけれど、アナタ()()でいいの?」

 

 「……どういう意味だ?」

 

 「〝誇り〟は無いのかって言ってるの! いくら幅を利かせたって、所詮は飼い犬じゃない!」

 

 「テメェッ!!」

 

 ふふ、そんな大筒で脅したって無駄よ。

 コイツが肩に担いでる大砲。路地裏とはいえ、撃ったら街が大変な事になるもの。

 怒って冷静さを失ってる今の内に()()()()()()()()()()、包囲を突破しましょう。

 

 「待ってくれお頭!」「こんな所で撃ったら街が!?」

 

 「関係ねェ! 街ごと吹き飛ばしてやる!」

 

 「嘘っ!? ()()()()()()()()とは聞いてたけど……ホントに撃つ気!?」

 

 「知ってたのかよオメェ!?」「なら、なんで挑発した!?」

 

 う……まさか、飼い主の街を壊すなんて思わないじゃない!

 

 

 「ダハハハ、あばよお嬢ちゃん」

 

 「マズいっ!?」

 

 「おれをナメた事、後悔しながら死にやが──うおぉ!?」

 

 「なぁっ!?」「うわぁぁ」「ひぇっ」

 

 え? なんで急に、こんな()()が!?

 アイツら、全員落っこちて……。

 

 

 「無茶しすぎだ、お姫サマ」

 

 「え?」

 

 「よっと、うぉ危なっ! 穴を広げすぎたな」

 

 「さっきの男!? どうしてここに!?」

 

 「いや、サイフ返してもらいにだけど?」

 

 上手く盗れたと思ったのに、気付かれてたの? しかも()けられてたなんて、不覚っ!

 いえ、それよりもさっきの口ぶり……まるでこの男が穴を開けた様な言い方だった。

 得体が知れないわ! とにかく、何かされる前に逃げなきゃ!

 

 「来て! カルー!」ピイイイィィ

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 「…………?」

 

 

 「っ、カルーに何をしたの!?」

 

 「濡れ衣ぅ!? カル……あの鳥なら、さっきまで路地の手前に居たぞ?」

 

 「見え透いた嘘ねっ! 私はカルーとしか言ってないのに、鳥だと断定したのがその証拠よ!」

 

 「ああもう! いいからサイフ返してくれ!!」

 

 


 

 

 〜 20分前、武器屋のある通り 〜

 

 「あった! ゾロ、あの武器屋に行くぞ!」

 

 「離せ。ガキじゃねェんだ、引っ張らなくても迷わねェよ」

 

 「あはは、抜かしおる」「テメェ!?」

 

 子供にアイスを買ったり、ゾロを連れ戻したりと色々あったけど。

 ようやく見つけたぞ! 武器屋〝ARMS SHOP(アームズ ショップ)

 創業200年の老舗で、いっぽんマツが店主を勤める……本来なら()()()()()()()()()店だ。

 アイスの件でほぼ確信してたけど、やっぱりここは──!

 トンっ

 「おっと」

 

 「あら、ごめんなさい」

 

 「こっちこそ、ゴメン」

 

 「何やってんだエダ。中へ入るぞ」

 

 人通りが多いのに、考え事してたらダメだな。

 でも、今ぶつかった女の人……どこかで聞いた事ある声だったような?

 

 「いらっしゃいまし!」

 

 「刀を見たいんだが」

 

 「へいへい。どんな刀をお探しで?」

 

 「ゾロ、そっちじゃない。多分この樽の中に〝三代鬼徹〟があるぞ!」

 

 「ぶっ! あるかっ!? そんな伝説の妖刀! ウチは普通の武器屋だぞ!?」

 

 「え? 無いの?」

 

 「そう言えば、あの女海兵がヒノモトにあるとか言ってたな」

 

 いっぽんマツが言うには、この店に妖刀の類いは一切無いそうだ。

 まいったな。ヒノモトなんて大分先の話になるぞ?

 仕方ない、せめて〝雪走〟だけでも貰って……あ。

 そうだよ! 妖刀クルクルチャレンジが出来ないんだ。これじゃ、タダで貰える流れにならない!

 

 金があるとはいえ、流石に〝良業物〟を買える程じゃないしなぁ。

 うーん。妥協して、ゾロの為に一本だけでも〝業物〟クラスの刀を買うとするか。

 ちょっと痛い出費だけど……ここは気前良く、ドンっ! っと現金一括払いで……あ、れ?

 

 「どうした? エダ」

 

 「……サイフが、ない?」

 

 「いっ!? お前、どこかで落とし……いや! さっきの女だ! あの時スられたんじゃねェか!?」

 

 「おーおー、サイナンなこって。だが、金がねェならとっとと帰ってくれ!」

 

 どうする!? 靴やズボンに隠した金は無事だけど、合わせて10万ベリーしかないぞ!?

 これは取り合えず、ゾロへ渡して……オレは泥棒さがしだ!!

 

 

 「ゾロ! この金で刀を見繕っといてくれ! オレは泥棒を捕まえてくる!」

 

 「あ? まあ、いいけどよ。お前1人で大丈夫なのかよ?」

 

 「大丈夫! ()()がある!」

 

 あの声。それに、フードの中に見えた水色の髪。

 前世で何度も聴いた声だ。ようやく分かった──あれはビビだ!

 

 だけど、この人混みでビビ1人を見つけ出すのは難しい。

 捜すなら、目立つ()()の方だ!!

 

─────────

──────

───

 

 〜 現在 〜

 

 そんなこんなで、途中ナミさん達に会ったりしつつも無事にカルーを発見。

 カルーが覗き込んでた路地裏にて、ゴロツキに絡まれてるビビも発見。

 さくっと穴に落として、ピンチを助けたハズなのに……。

 

 なんか警戒されちゃって、一向にサイフを返してくれないんだけど!?

 確かに大金だけど、さすがに一国の王女が固執する程の額じゃないだろ。

 そもそも、なんで泥棒なんて───あ。

 

 「もしかして、組織への上納金が必要とか?」

 

 「馬鹿にしないで! 私はどこへも属してないわ!」

 

 違うのかいっ!

 バロックワークスへ潜入中なのかと思ったのに。

 まあ、違うなら違うでいいんだ。これで遠慮なく返してもらえ───

 

 「……ぐぉぉぉぉ!!」

 

 おっと、しぶといなぁ()()()

 幅の広い穴にしたせいで、深さが足りなかったみたいだ。

 

 「ディック!? 子分を踏み台にして、穴から出てきたの!?」

 

 「テメェ等ァ!! 下らねェ、マネしやがって!!」

 

 あれは、担ぐタイプの大砲? パティの持ってたヤツよりも大きいぞ。

 だけど───構造的には、ただの大きな(ピストル)ってカンジだな。

 ロビンが居ない今、オレは基本技しか使えない……だったら、まずは久々に〝狙撃〟からだ!

 

 「近距離だ。さすがに眼帯は、要らないか」

 

 「何言ってるの!? あれは脅しじゃないわ! アイツ、ところ構わず大砲を……!」

 

 「もう遅ェ! 今度こそ消し炭にしてや「ニードルキャノン」あァ? な、弾が出ねェ!?」

 

 「一体何が?……嘘っ!? まさか、()()()()を壊したの!?」

 

 (マト)がデカい分、むしろ狙いやすかった。

 フリントロック銃は、撃鉄が無くなれば発射できない。副船長から教わったんだ!

 けど、原作だとビビが大砲の導火線を切っても事態は解決しなかったからな。

 ここは油断せずに───

 

 「くそっ! だが、そんなヒョロガリ野郎、直接殴っちまえば……うがっ!?」

  ビターン!

 

 「転んだ!?」

 

 「まず1つ目! さあ、まだまだ(トラップ)は仕込んで……ん?」

 

 「ピクリとも動かないわ。一体何をしたの!?」

 

 「えぇー……」

 

 想像以上の効果で、逆にコッチが驚くよ。根で作っただけの所謂〝草むすび〟だぞ。

 無人島のウサギですら、1回しか引っ掛からなかった代物なのに。

 トラップの初歩の初歩。

 獲物の足を引っ掛けて転ばすだけの罠だ。当然、大した威力もない。

 

 ただ今回は──

 相手が巨体な上に、猪みたいな勢いで一直線に罠へ突っ込んだから

 地面へ激突した際の衝撃が凄まじかったんだ。下が石畳だったのも大きいな。

 あーあ、まさかの1個目でダウンなんてガッカリだよ。他にも色々用意してたのに。

 

 「完全に気絶してる。〝元〟とは言え、山賊のディックをこうもあっさり……」

 

 「え? 山賊だったのかコイツ」

 

 なるほど、相手が山賊だったなら仕方ないな!!

 何せオレは、あの山賊界のレジェンド〝ヒグマ〟さんと同格だから。

 格下相手なら無双しちゃって当然だった!

 

 「知らないの? あの〝山鯨〟を。1000万ベリーの賞金首で有名よ?」

 

 「そーなんだ。格上だったよ……ヒグマめっ

 

 「あら? そう言えばあなたの顔も……そうだ! この前の新聞っ!?」

 

 「うっ……!」

 

 「〝植物好き〟エダ。変な二つ名だから覚えてるわ! 確か懸賞金は800……」

 

 「ストーップ! そんなことより、姫! いい加減サイフを返しt───フワッ

 

 


 

 

 えっ!? 突然消えた!?

 いえ、そんな訳ないわ。きっと目で追えない程のスピードで去ったんだ。

 あの戦闘力に、この速さ……恐ろしい男だわ。あれで800万? 上手く世間を騙したものね。

 

 でも、あれだけサイフを返せって言ってたのに、私を助けるだけ助けて居なくなるなんて──

 そういえば、私の事を〝姫〟って呼んでたわ。あれは一体?

 もしかして……私に惚れたって意味?

 う、分からないわ! 今まで、あんなに言い寄られた事なかったし……

 

 あ! そっか、大金を置いていったんだから……やっぱりそういう事で確定ね!

 うん。得しちゃったと思いましょう。どうせ二度と会うつもりもないし。

 ふふっ。サイフは念のため、胸の間にしっかりと挟んでいたから取り替えされる心配もなか……え?

 

 「ないっ!? どうして!?」

 

 まさかあの一瞬で、私の胸元からスリ返したの!? 私の()()、から──っ!! あの男っ!

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