植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

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第39話〝何の因果か〟

 

 ー 武器屋・ARMS SHOP ー

 

 「はんっ! たったの10万じゃ、ナマクラに毛が生えた刀しか買えねェぞ? オ!?」

 

 「客にキレんなよ……。おれだって別に、木刀(これ)で満足してんだ。無理に新調しねェでも──」

 

 「ん? んんっ!? おめェそれ!?」

 

 「あ?」

 

 「〝三代鬼徹〟!〝和道一文字〟! それに〝雪走〟ィ!? どういうこった!?」

 

 「ああ、刀に詳しけりゃ当然の反応だな……だが生憎、コイツは木刀だ。ほれ」

 

 「──ッ!! 帰れ、帰れっ! 刀をナメやがって、トーシローめっ!!」

 

 なんなんだ、この店主。

 しっかし、エダの作った模造刀はそんなに本物と似てるのか?

 あいつは此処に本物が二振りともあるなんて言ってたが、三代鬼徹の方は見当違いだったようだしな。

 本物の妖刀ってヤツを、一度は拝んで見たかったぜ。

 

 「……ちょっと待て。オメェ、その〝和道一文字〟だけ木刀じゃねェだろ?」

 

 「お! 分かるのか、さすが武器屋だな。コイツだけ本物だ」

 

 「そうか本物。本物……ホンモノォ!?」

 

 「なんなんだよ一体……?」

 

 「かーっ! おれとした事がっ! おめェさん〝豪剣〟だろ!?」

 

 「ははっ。最近そっちの名じゃ無くなっちまったがな」

 

 「ああ、新聞じゃ〝海賊狩り〟なんて呼ばれてたが、おめェさんには一度会いてェと思ってたんだ!」

 

 「どういう事だ?」

 

 「おれはその昔、()()()()()()()()()()()()()時代があってよォ───

 

─────────

──────

───

 

 驚いたな。

 この店主が、まさかジジーの弟子だったなんてよ。

 おれがガキの頃に、村の裏山で鍛冶修行をしていて、道場にも何度か来てたそうだ。

 まったく、覚えてねェ……。

 だが、これも〝縁〟ってヤツだな。ちょうどいい、()()()()の供養を頼んじまうか。

 

 「あん? なんだァ、その風呂敷は?」

 

 「おれが未熟だったせいで、折れちまった刀だ。済まねェが供養してもらいたい」

 

 「こ、こいつは!? オイ! 詳しく話せ!!」

 

 「2本ともジジーに貰った刀だ……〝鷹の目〟との闘いで、真ん中が砕けちまった」

 

 「…………悪かったな。剣士に対して、酷な事を聞いちまった」

 

 「構わねェ。いずれまた、鷹の目とは再戦する予定だ」

 

 「はっはっはっ、師匠が刀を託しただけあるぜ。にしても、大した刀だ」

 

 「ああ、おれもそう思う。ジジーは〝ナマクラ〟だと言ってたがな」

 

 「あァ!? コイツらがナマクラだったら、店の刀の9割は、鉄クズになっちまうぜ!?」

 

 前に世話になった鍛冶屋も似た様な事言ってやがったな。

 ジジーからすればナマクラの刀でも、世間じゃそうでもねェみたいだ。

 今だって、(つか)を握れば〝声〟を感じる。《まだまだ斬り足りねェ》とおれへ訴えてくる。

 コイツらは、紛れもなく名刀だ。あの時のおれに、あと僅かでもチカラがあれば────

 

 

 「オイ!? その刀、()()()()()()()ぞ!?」

 

 「どういう事だ?」

 

 「おめェさんが柄を握った瞬間、僅かだが〝執念〟が見えた──!」

 

 「執念? ははっ、そりゃそうだ。コイツらは、まだ斬りてェらしいからな」

 

 「〝声〟が聴こえるのか!?」

 

 「ああ」

 

 「……一つ聞くが、おめェの仲間には能力者が居るらしいな?」

 

 「なんだ突然? 新聞に載ってんだろ? 船長と、植物と、骨と……」

 

 ああ、暗黒女は載ってねェか。

 考えてみりゃ、船員の半分が能力者なんだな。一斉に溺れでもしたら、ヤベェかもな……。

 

 「で、能力者がどうした?」

 

 「いや、偏見がねェことは、その表情(かお)を見て分かった……これも因果ってモンか」

 

 「さっきから、何言ってやがる?」

 

 「着いて来い。おめェにピッタリの刀を用意してやる」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー 店の裏・鍛冶工房 ー

 

 「ここに刀があるのか? 言っとくが、金は10万ベリーしかねェぞ?」

 

 「金は要らねェ。それに、刀も今はねェ。これから()()()んだ」

 

 「作るだと!?」

 

 「ああ、その二振りを……そういや、銘を聞いてなかったな」

 

 「枯金(こがね)屯炉(たむろ)だ」

 

 「金と屯? はっはっはっ、流石師匠だな。シャレが効いてやがる!」

 

 どういう事だ?

 思い返してみりゃ、ジジーはあの場で名前を付けたようにも感じるが……?

 

 「気付いてねェならいい。どうせ、その銘はもう使えねェ。なんせ───1つに生まれ変わるんだからな」

 

 「いっ!? コイツらを1本にする気かっ!?」

 

 「そうだ。短ェ刀2本って手もあるが、それじゃ気に入らねェだろ?」

 

 「あ、ああ。おれは短刀は使わねェ。だがよ、いくらジジーの弟子でも刀をくっ付けるなんて……」

 

 「それが出来ちまうんだよ。何の因果か、おれはこの前〝悪魔の実〟を食っちまったからな!」

 

 「!?」

 

─────────

──────

───

 

 カーン! カーン! カーン!

 

 「いいかっ!? しっかり押さえてろ!〝覇気〟も乱すんじゃねェぞ!?」

 

 「おい! 能力でくっ付けるんじゃねェのかよ!?」

 

 「黙ってろ! おれだって、初めてやってんだ。()()じゃ打ちにくくて仕方ねェ!」

 

 「く……ぐぐっ!」

 

 能力者なんて言うもんだから、てっきりモノを合体させる能力かと思ったぜ!

 このオヤジが食ったのは〝カチカチの実〟って言うらしい。

 てめェの体を硬くするチカラと、体の一部を高熱にするチカラ。

 

 最初オヤジは、折れた刀を2本抱き込んで高熱で()()()て1つにした。

 次に、左腕を金床(かなとこ)代わりにして、右手の拳を槌代わりに刀を叩いてやがる。

 

 おれは刀を押さえる役目だ。しかも、押さえながら〝覇気〟を流せっていう無茶な注文付きのな。

 短時間で作る為に必要な事らしいが……流石にキツくなってきたぜ!

 

 

 「なあ!? これ、普通の道具を使ってもいいんじゃねェか!?」

 

 「トーシローは黙ってろ! それじゃ〝魂〟が篭らねェ! おれの腕で〝霜月コウ三郎の意志〟を受け継ぐにゃ、これしかねェんだ!」

 

 「意味が分からねェよ!」

 

 「おれは勝手に弟子入りした身だが、一つだけ教わった事があんだ」

 

 「……」

 

 「下手な鍛冶屋でも心血注いで打ち続けりゃ、生涯で一本くれェは〝名刀〟が打てるってなァ!」

 

 「……んんっ!?」

 

 「おれァ、そりゃもう何千本と打ってきたが、名刀なんて呼べるモンは一本も出来た試しがねェ!」

 

 「話が見えねェぞ!?」

 

 「…………」

 

 カーン! カーン! カーン!

 

 黙っちまいやがった!? 不安になってきたぜ……。

 おれが刀を掴んでる火箸(ひばし)越しに、刀からも不安の〝声〟が聴こえて来てんぞ!?

 

─────────

──────

───

 

 「よし、もう〝覇気〟はいいぞ。形が馴染んだみてェだ」

 

 「馴染む?」

 

 「刀自身に、手前ェの〝カタチ〟ってモンを覚えさせる……今回の場合は()()()()()()って所だな」

 

 「よく分からねェ、一体なんの意味があるんだ?」

 

 「元は2本だった刀を溶かしたんだ。本来なら、溶かしてくっ付けようがそれは別の刀になっちまうだろ?」

 

 言われてみりゃその通りだな。だがそれと覇気になんの関係が?

 

 

 「平たく言やァ、おめェが長年親しんだ刀の形を、覇気で無理矢理に再現したってコトだ」

 

 「ますます意味が分からねェ」

 

 「最近じゃ、形状記憶合金なんてモンがあるんだが……まあ、それと似たような効果だろ。よしあとは、コイツを風呂に入れて……」

 

 「風呂っ!? 刀だぞ!?」

 

 「おめェは休んでな。刀と一緒に、おれもひとっ風呂浴びてくらァ」

 

 「おいおい、能力者だろうが」

 

 「んなモン気合いで、どうとでもなる」

 

─────────

──────

───

 

 「ふぃ〜、サッパリしたぜェ」

 

 「ホントに刀と一緒に、風呂に入って来たのかよ!?」

 

 「〝焼き入れ〟って作業だ。おれは能力で温度を弄れるから、最高の状態だぜ?」

 

 「じゃあ完成したのか!?」

 

 「鍛冶をナメんな! おめェの〝覇気〟と おれの〝能力〟で大分工程をスッ飛ばしてるが〝仕上げ〟に刃を研がねェでどうすんだ!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「……完成だ」

 

 「これが、生まれ変わった刀──っ!」

 

 「〝硬さ〟だけは折り紙付きだ。なんせおれの血と汗が染み付いてる」

 

 「なっ!?」

 

 「その硬さは能力の恩恵ってヤツだな。文字通りに心血を注いじまったみてェだ……まあ、そのせいか刀身が赤みを帯びちまってるが」

 

 「だがよ? 刀は硬いだけじゃダメなんだろ?」

 

 「ああ勿論、()以外は〝柔らかさ〟もある。後は精々折れねェように、覇気を上手く使うこった」

 

 覇気か。

 思えば、あんな長時間使ったのは初めてだったな。おかげで、おれも成長してると実感できた。

 にしても、手に馴染むな。覇気を纏わせるのにも違和感がねェ。

 さっきオヤジが言ってたのはこう言う事か───コイツは確かに 枯金 と 屯炉 だ!

 

 「造りはそのまま流用した黒漆太刀拵(くろうるしたちこしらえ)。刃は皆焼(ひたつら)。銘は───そうだな鈍枦(にびはぜ)とでも名付けるか」

 

 「鈍枦?」

 

 「ハゼってのは秋になると真っ赤に染まる木の名前だ。ソイツは鈍くだが、赤みを帯びてるからな」

 

 「にぶいって、切れ味は大丈夫なのかよ?」

 

 「はっ、元々(なまくら)と名付けられてたが、十分な切れ味だったろ?」

 

 「元々……ナマクラ?」

 

 そうか!〝金〟と〝屯〟で(なまくら)じゃねェか!?

 ジジーめ、適当に名付けやがったのかっ! だが……〝枯〟と〝炉〟はどっから来た?

 

 「大方、鍛冶師として〝枯れた〟師匠が、()()に〝炉〟を使い、打った刀ってトコだろうな」

 

 「最後?」

 

 「人生最後の二振りだった筈だ。ソイツに今も篭ってる〝執念〟は師匠の……あー、なんだ。怨念かもな?

 

 「妖刀じゃねェか!?」

 

 「精々、魂を持ってかれねェよう気を付けな!」

 

 とんでもねェ刀になっちまった。心なしか勝手に覇気を使わされてる気もするぜ。

 だが、紛れもなく〝おれの剣〟だ。

 一本になっちまったが、長年使い込んだ感覚はそのまま残ってる。

 改めて、よろしく頼むぜ〝鈍枦〟!

 

 さて、エダには悪いが一本だけ木刀じゃ納まりが悪ィ。

 あいつがくれた10万ベリーで、もう一本買っていくとす、る……ん?

 

 なっ、金がねェ!?

 

 


 

 

   〜 刀が完成する3時間前 〜

 ー 服屋・ROBECCA HANBERG ー

 

 いい加減サイフを返してくれ!……ってアレ? どこだココ!?

 ──『あら? もしかして犯人と会っていたのかしら?』

 ロビン! そうか。分身を解除したんだな。

 ──『ええ。少し脳内で調べたい事もあるから』

 相変わらず唐突だなぁ……。

 

 折角、ディックって奴も倒してサイフを取り返すとこだったのに。

 ──『山鯨のディックね? 私が居ないのに、1000万ベリーの相手をよく倒せたわね』

 知ってるのか!? でも、原作にそんなキャラ登場してないだろ?

 ──『アニメオリジナルよ。ファンなら、ディックと聞けばすぐ気が付くでしょう?』

 

 気付く訳ないだろっ!?

 ディックって言ったら、普通は〝モビー・ディック号〟の方だ!!

 ──『フフっ……ちなみに、港で襲ってきたビリーもディックの弟分だったわ』

 その時、教えろよ!? 聞いた感じだと、セットで登場する奴らだろソレ!

 ──『ごめんなさい。あなたの記憶力が何処までヒドイのか、把握しきれてなかったわ』

 

 「もうヤダこの暗黒女……オレを傷付けなきゃ会話できないのか?」

 

 「あ、エダね。ロビンが呼び戻すって言ったのに、反応が無いから困ってたの」

 

 「ごめんナミさん。えーと、ここは服屋?」

 

 「そうよ。買い物は済んだから、もう出るところだけどね」

 

 「え、ナミさんのファッションショーは!?」──『もう終わったわ。残念ね?』

 

 「ぜェぜェ、お買い上げ、ありがとうございました」

 

 あ、ハンガー頭の店員さんが疲れ果ててるな。

 ──『彼はハンガーさん。そのままの名前ね。ちなみに、あれは髪の毛だったわ』

 まさか、触って確かめた?

 

 いや……そんなことより、どうして呼び戻したんだ? サイフもまだ返ってきてないんだぞ。

 ──『それは解決済みよ。だって、あのサイフは分身で作った装飾品だったのだから』

 

 


 

 ー 昨夜 ー

 

 「ひぃ、ふぅ、みぃ……しめて200万と。流石に勝ちすぎたかな?」

 

 「元手が3,500ベリーの相手に全敗よ? ナミは不貞寝しちゃったわ」

 

 「う、半分は一味の共有財産って事にして船に置いとくかー」

 

 「珍しく殊勝な考えね。あ、分身を解除するから 一旦お金は私が預かるわ」

 

 「また勉強させる気だな!?」

 

 「明日は上陸予定なのだし、今日くらいはサボらずに勉強しなさい?」

 

 「あ……ちょ!? フワッ

 


 

 ー 今朝 ー

 

 「体咲き(クエルポフルール)幼児(ニーニャ)

 

 「ん……? わっ!? なんで毎回、子供の姿で分身を作るんだよ!」

 

 「その方が、消耗も少ないから。節約は大事よ」

 

 「ふぁ〜あ。まあいいや、どうせ簡単に変身できるんだし。よっと!」

 

 「あなた、脳内で勉強せずに寝てたわね……。あら? サンダルじゃなくていいのかしら?」

 

 「大丈夫だ、分身の時なら靴越しでも〝根〟を出せたから」

 

 「色々と実験してるのね。それはそうと、ナミが起きる前に女部屋から出た方がいいわ」

 

 「そうだった!? なんで部屋の外で分身を出さないんだよー!!」

 


 

 あれから慌てて部屋を出て、サンジに鬼の形相をされて……?

 

 あ! 確かにサイフを返してもらってない!? じゃあ、もしかして!

 ──『本物は私のポケットに入ってるわ。中身の半分は船に置いてきたけれど』

 そうか、ならあんなに焦る事なかったな……まあ何はともあれ、これで一安心だ。

 ──『いえ、それはどうかしら?』

 

 「エダ? 早く来なさいよ」

 

 「あ、ゴメン。っと、っと、わぷっ!」

 

 「もー、何やってんのよ?」

 

 「なんか歩きにくくて……? うわっ、ハイヒール履いてる!? なんで!?」

 

 「そりゃそうよ。さっき、ロビンの服を一式揃えたんだから」

 

 「あ。ロビンの姿のままだったんだ! む、分身の時みたいに簡単には変身できないか……でも、集中すればいけそうだな」

 

 「ストップ! あんた自分の格好を考えて!!」

 

 「え、格好……?」

 

 

 あれ、この服って? もしかして、ドレスローザ編でロビンが来てた服か? 

 

 名前は良く分からないけど、下着みたいなヤツだ。

 ──『キャミソールドレスよ。服以外に、帽子とブーツもドレスローザコーデにしてみたわ』

 こだわるなぁ。良く似た服を見つけたもんだ。分身だったら、ポンって着替えられるのに……。

 ──『そうね。そして、今のあなたは本体。だから、服までは弄れないのよ?』

 

 「ひょっとして今男に戻ったら、大変な変態になってしまうのでは!?」

 

 「やっと気付いたわね。でも、ロビンの姿でバカなこと言わないでくれる?」

 

 「仕方ない、服屋で男物を調達して──」

 

 「ダメよ。残念だけど、あんたが自由にしていいお金は()()()()の」

 

 「えぇー、横暴!?」

 

 「何言ってんの! ロビンから全部聞いたわ。あんた分身を利用して、サイフを中身ごと複製できるんでしょ?」

 

 そう表現されると、どエライ犯罪臭がするっ!?

 決して、故意じゃないんだ! 紙幣偽造が目的じゃなかったんだ……。

 

 お出かけ前にサイフを持つ前世の習慣が抜けなくて、無意識にサイフを作ってたんだ!!

 ──『フフっ、あなたキャッシュレス化の波に置いていかれたまま、死んでしまったもの』

 

 笑うなっ!

 

 

 「まあ、そういうコトが出来るって話はどうでもいいの」

 

 「いいのか……。じゃあ、どうして?」

 

 「あんたの最初の賭け金〝3500ベリー〟が、そもそも複製マネーだったのが問題なのっ!」

 

 「あー、そっか。確かに、あの時も分身だったな」

 

 「良く聞きなさい? あんたは()()()()()()()で私と勝負して、不正に200万も取っていったのよ?」

 

 「えーと……つまり?」

 

 「耳揃えて返しなさい。ホントは慰謝料も含めて倍額払って欲しいけど……特別、よ?」

 

 ツンデレみたいに可愛く言ってるけど……横暴だよね?

 ──『ナミの理屈も通ってはいるでしょ? 元々、持て余してたのだし、返してあげなさい』

 あーあ、こんなコトならトランプ勝負なんてするんじゃなかった。

 ──『結局、哀しみしか産まなかったのね。早めに抜けて正解だったわ』

 

 「ナミさん。取り合えず、今持ってる100万を返す……残りは船にあるみたいだ」

 

 「分かったわ。それはそれとして、お願いがあるの♪ 元々、その為に来てもらったんだし!」

 

 「どういうコト?」

 

 「いい家具を見つけたんだけどね? ちょーっと高かったの。それでね? エダって割と器用じゃない?」

 

 「まさか……!」

 

 「能力で同じモノを作ってくれたら助かるんだけど〜?」

 

 「無理だナミさん。分身は、服と装飾品しか作れないんだ」

 

 「何言ってんのよ? 普通に木材を出して作れるでしょ? 木刀とか作ってたじゃない」

 

 どっちにしろ、デザインの盗用になるのでは!?

 

 しかも、別にオレじゃなくてもロビンが作れるだろ!

 ──『無理よ? 私は〝ハナハナ〟の模倣に特化するよう能力を鍛えたの。細かい基本技は使えないわ』

 

 ロビンの〝融通の利かな(つよさ)さ〟の秘密がなんとなく分かったよ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー 武器屋のある通り ー

 

 「ありがと、エダ! 船に帰ったら残りもよろしくね」

 

 「やってしまった……」

 

 あれから一通り家具を見て回って、手軽に出来そうだった木製のコップをナミさんへ作ったんだ。

 船に帰ったら、椅子、机、ドレッサー、バーカウンターまで作れとのご命令だ。

 大丈夫。これはDIYだ! デザインだって緻密すぎて完全には真似できないし。セーフだろ、ロビン?

 

 ……無反応。

 

 それにしても、凝ったデザインだよなぁ。

 ああ言うのって、たしか〝ロココ調〟って呼ぶんだっけ。あれ?〝バロック調〟だったかも?

 教えて! ロビン!

 

 ……無反応。

 

 さっき、ビビの話をしてからずっと引き篭もったままだ。

 おかげで、オレがロビンの姿のままゾロを迎えに行くハメに……。

 色々あって、羞恥心が麻痺してたオレだけど。さすがに、この格好は恥ずかしい!

 スカートが短すぎるし、背中も開いてるし……何より胸元が無防備すぎる!!

 これだけ開いてれば、そりゃトンタッタ族だって潜り放題だよっ!

 

 

 「あはっ、大分ハイヒールには慣れたじゃない。服だって似合ってるんだから、恥ずかしがるコトないのに」

 

 「う、早く店内へ急ごう、ナミさん」

 

 「まあそうね。通りは目立つもの……少しは、イヤらしい目でジロジロ見られる気分が分かった?」

 

 「誤解だ!? オレは、そんな目でナミさんを見たこと──なくもないか

 

 「いいから、お店へ入るわよ。あんまり注目されても、ロビンに悪いしね」

 

 「わわっ。引っ張んないでくれ!」

 

 急に引っ張られると、コケそうになる。まだ重心の違いに慣れてないんだ!

 あれ? 店にゾロが居ないな?

 いまカウンターに居る女の人は、多分〝いっぽんウメ〟さんだな。

 ん? 名前がスっと出た。ロビンがサポートしてくれたのか? 

 

 

 「あら、いらっしゃい。ごめんなさいねぇ、いま店主が立て込んでるのよ」

 

 「あ、大丈夫です。私たち、仲間を迎えに来ただけなんで!」

 

 「お嬢ちゃん達、あの緑髪の子の仲間かい。まだまだ、時間が掛かるんじゃないかねぇ?」

 

 「ん? ゾロは何してるんだ?」

 

 「今、ウチの亭主と一緒に刀を打ってるのさ」

 

 刀を打ってる!? なんで!?

 あ! ゾロに預けた10万ベリーも消えてる筈だから……もしかして、働いてお金を返してるのか!?

 ごめんゾロ! オレがトランプ強かったばっかりに、ツラい思いをっ!

 

 「仕方ないわね、荷物も置きに行きたいし……一先ず船に戻りましょうか?」

 

 「……あ、うん」

 

 「何か見てたの? あんた、刀は使えないでしょ?」

 

 「使えなくても刀は欲しいケド……嘘っ嘘! 見てたのは〝(はさみ)〟だから!」

 

 「あー、なるほどね。じゃあ買っていきましょう?」

 

 「いいの!? でも、オレお金無いぞ!」

 

 「買い出し費用から出すわよ。武器の調達費用だって船に用意してたでしょ?」

 

 あ、別口で用意してくれてたんだ。てっきり自腹で払うのかと思って探してすらいなかったよ……。

 うん。考えてみれば、ナミさんは結構優しいんだ。

 さっき「お金を返し終わるまで、あんたは私の〝しもべ〟よ?」とか言ってたけど、アレは冗談だったんだろう。

 

 今は特に、オレがロビンの姿だからか普段より3割増しで優しい気がする。

 まだ他にも欲しい物があるし──ここは一つ、おねだりで買ってもらうとするか!

 

 

 「はい、買ってきたわよ」

 

 「ありがとう、ナミさん! あとさ、植木鉢 と 霧吹き と それから……」

 

 「それは自分で作りなさい。実際、厳しいのよ? 最初に手に入れた財宝以外で、身入りが無いんだから」

 

 「あ、ハイ」

 

 正論すぎて反論できない。ピースメインを謳ってるけど、モーガニアに遭遇しないからなぁ。

 でも、作らなくちゃいけない物多すぎなんですけど……。

 

 ふと振り返れば、店の奥で説教されてる店主の姿が。変なシンパシーを感じるなぁ。

 

 「アンタが刀を入れて汚したんだから、さっさとフロ掃除しちまいなよ!」

 

 うん……説教の内容は意味不明だな!

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