植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

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シロップ村(仮)編
第 5 話〝ウソップ?登場〟


 

 「ワシの名はウソップ・D・エラマンチャ! この聖都を守護する騎士である!」

 

 「あのねぇ、今の時代貴族や王族以外は響きがいい名字を勝手に名乗る奴も多いけど。〝D〟 なんて軽々しく名乗ってるとアンタ消されるわよ」

 

 ナミさんが謎のオッサンに注意している。珍しくドスの効いた声だ。

 

 「それに都だって、ここから大分離れてるじゃない。全部 嘘ね」

 

 「はっはっはっ! よくぞ見抜いた娘っ子。〝D〟は盛りすぎたな、忘れてくれ」

 

 「なんだ嘘か」

 

 ルフィの言葉で、オッサンが何か嘘をついていたんだと分かった。

 まだ完全には言葉を聞き取れないものの、オッサンが自分のことをウソップって名乗ってたのは理解できたから、それが嘘だったんだろう。

 ということは、村の少年の名を騙るモブおじさんで確定だ。こんなのと遭遇するのは、オレが同行したせいで原作にズレが生じてしまったからなのか?

 

 「舟を見た所、海賊船のようだがお前達は海賊なのか?」

 

 「ああ! おれはルフィー、海賊だ。ピースメインだけどな!」

 

 相変わらず他人同士の会話は分かりにくいな。敵意はなさそうなので、オレは近くに本物のウソップがいないか探してみる。

 そこの木陰にでも居ないかな? この際ウソップ海賊団の子供でもいいんだけど。

 

 「ピースメイン? ワシも平和は好きだ、ならいいだろ。ようこそ客人達、都を案内してやろう」

 

 「おう! ありがとなオッサン」

 

 「おい。大丈夫なのかよソイツ。さっきから微妙に会話がおかしいぞ」

 

 「どっちにしろ街までは一本道よ。着いて行くことになっちゃうわ」

 

 おかしいどこにも居ないぞ。

 そうこうしている内に、ルフィ達はあのオッサンに着いていくみたいだ。

 どうする? このまま何も言わず消えるのはさすがに……迷っていると、オッサンの背中──にかけられた砲身の長い銃が目に入ってきた。

 まさかヤソップ? いや、年齢は近そうだけど見た目は別人だ。

 黒髪だしどちらかといえばウソップのほうが似ている……?

 

 

 「おーい。置いてくぞー」

 

 言いようの無い嫌な予感を感じながら、こちらへ呼びかけているルフィへと駆ける。

 オレが原因でおかしな事になってるかもしれないんだし、まずは無事に原作の流れに戻さなければ!

 ここでオサラバはできないな!

 

 


 

 

 しばらく歩くと街が見えてきた。ナミのやつも言ってたがここまで一本道だったな。

 何か考えごとでもしてるのか、最近喋れるようになったアイツも今は大人しく歩いている。

 途中、レンガで舗装された道に出た辺りからキョロキョロと珍しそうに見ていやがった。

 あの何も無い島にいたんだ無理もねぇ。

 

 「あそこに見える大きな城に、ワシのお仕えする姫がいらっしゃるんだ」

 

 「城〜? んなもんないぞ」

 

 さっきからオッサンが嘘ばかり言ってやがる。確かにデカい屋敷は見えるが城なんてモンはどこにもない。

 ルフィーは律儀に付き合っているが、おれとナミは話半分に聞き流している。

 エダは……街を観察するんでソレどころじゃないみたいだな。

 

 「さあ! ここが聖都一のレストラン〝シルバー・ムーン〟だ」

 

 「いやただの飯屋だろ〝MESHI〟って看板に書いてあるし」

 

 オッサンに連れられて辿りついたのは一軒の飯屋。街の規模からすると小さめの店だが中からいい匂いがしてくる。

 

 「おーい! 客を連れてきてやったぞー」

 

 「おう! ()()()()さんいらっしゃい。お客さんもどうぞ、座って下せェ」

 

 あのオッサンはキハーノって言うらしい。名字か下の名前かはわからないが、やっぱりさっきの名乗りは嘘だったみたいだな。

 

 「おっちゃん! メシー!」

 

 ルフィーはもう座ってやがる。いつの間に手にしたのかフォークとナイフを持ってテーブルを叩いている。

 

 「はっはっはっ。好きなだけ食えワシが奢ってやる!」

 

 「まあ! なんて気前のいいオジサマなの。素敵!」

 

 ナミめ、タダだと分かり手の平を返しやがった。このオッサンのどこを見れば信用できるんだか。

 悪い奴じゃなさそうだが、さっきから適当なことしか言ってないぞ。

 メシを食い終わった後に「奢るといったがアレは嘘だ」なんて言い出しかねないぞ。

 

 「へい、おまち! ゆっくりしてってくれよ」

 

 もうメシが用意されたのか。よく見たらメニューが無いなどういう店なんだ?

 うぉ! メシって頼んだからかホントに白米しか出てきてないぞ!

 

 「おいおい。またオコメギャグかよ! ちゃんとおかずも出してやれよ」

 

 「はっはっ米には自信があるんだ。ちゃんと魚も焼いてやるから安心しな」

 

 オッサンと店主の会話から察するに、お馴染みのやり取りらしいな。

 

 「おっちゃん! おかわりー!」

 

 ルフィーは関係なしに米だけで食い終わってやがる。急がないとおれの分までルフィーに食われそうだな。

 疑ってても腹は膨れねぇ。とりあえずメシを食っちまうか。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 焼き魚も出てきてナミとエダも食い出したようだ。ルフィーは米だけで五杯食ってまだおかわりしてやがる。

 

 「しょっぱい」

 

 「なんだ食わないのか? ししし、おれが食ってやるよ」

 

 「大丈夫、美味い」

 

 おれもエダと同じ焼き魚を食ってるが別にしょっぱくは感じねぇ。アイツ意外と味にはうるさいのか?

 

 「あら? アンタ()が使えるのね」

 

 「能力で出せるから、島でも使ってた」

 

 「ふーん。たまたま似たようなものを作ってたのね」

 

 ナミは箸を使って魚を食ってるエダが気になるみたいだが、おれのいた村でも箸はガキの頃から使ってるから、ありふれたモンだろ。

 

 「おっちゃん! この果物もうめーなー! もっとくれよ!」

 

 オメーはどんだけ食うんだよ。おれも結構食う方だがコイツには勝てねぇ。

 

 「果物?」

 

 「おう! エダも食ってみろ、うんめーぞー?」

 

 あんま見たことの無いものだが、梨みたな形の果物をエダも食いたいみたいだ。

 

 「ああ、それはこの島の名産〝バンビネッラ〟だ。お前達も食ってみろ」

 

 オッサンが教えてくれたが、聞いたことねぇな。また嘘か?

 だが味は悪くねぇこれなら何個か舟に積んどいてもよさそうだな。

 舟の上じゃ、ナミがおれたちにライムだのレモンだのを食わしてきたがどうせならこっちの方がおれ好みだ。

 そういやエダのやつはレモンをかじったあとマズそうにして、ナミにバレないように服の中に仕舞っていたがアレは早業だったな。

 

 「うぇ」

 

 どうやら今度も食えないらしい。アイツの味覚はどーなってんだ?

 

 「なんだ食わねーのかよ。よこせ! んぐんぐ、こんなうめーのに!」

 

 ルフィーが文字通り手を伸ばしてエダから果物を奪い取る。さっきからちょいちょい手を伸ばしては他人の皿からもメシを奪って食ってやがる。

 全く、一般人からは()()()()んじゃなかったのかよ。オッサンの皿から一番多く奪ってんぞ。

 呆れながら見ているとおれの皿にも手が伸びてきたので箸で弾き返してやった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「ほう、4人で舟旅をしているのか。あの小舟じゃ手狭なんじゃないか?」

 

 しばらく経って一通りメシを食い終わった頃、おれ達の身の上話になった。

 

 「そうなのよ男三人と同じ部屋なんて考えられないわ。ねぇオジサマどこかにタダで大きな船を譲ってくれる優しい人はいないかしら?」

 

 んな都合のいい話があるか。舟だってお前が寝る時、おれたちは部屋から出てただろーが。

 

 「いいなーデカい船! おれの乗ってたやつは()()()()ちまったし。今乗ってんのはブギーのマークが描いてあるし」

 

 「やっぱデカい船がほしいかー! よし、ワシがくれそうなヤツを紹介してやろう」

 

 「ホントー!? もうオジサマ大好き!」

 

 「ありがとな! オッサン!」

 

 この女はタダって聞くと警戒心がなくなるのか?

 いや、都合が良すぎんだろ。確かに此処のメシ代は払ってもらったが、船となると話が違う。そう簡単にくれるヤツなんていないだろ。

 

 「もう船がもらえる?」

 

 エダも疑問に思ったみたいだ。ルフィーとナミはもう乗り気になってやがるが、これはおれが確認しとかないとマズイな。

 

 「話しが上手すぎるんじゃねーか? おれたちにそこまでしてくれてオッサンにどんな得があるんだよ」

 

 「ん? ワシがお前たちを気に入ったからだ! 理由なんてそれで十分だろう。さあ、姫の下へ案内してやる。着いてこい!」

 

 そう言い切ったオッサンは先に店を出ていった。

 

 


 

 

 「で? どーすんだよナミ」

 

 そうゾロに問いかけられ、ため息をこぼすナミさん。さっきまで船がもらえると喜んでた彼女も、キハーノさんが言った()という発言で正気に戻ったみたいだ。

 

 「はぁ、まんまと踊らされちゃったわね。まあゴハンは美味しかったしオジサンのイタズラに付き合ってあげた分でチャラね」

 

 「だが、ルフィーは着いていっちまったぞ」

 

 「からかわれてるって気付けばそのうち戻ってくるでしょ? 私達はアイツがいない間に買い出しをしちゃいましょ」

 

 そう言って重そうな袋をオレとゾロに渡してくる。舟にあった宝箱から持ち出した物をここで換金するみたいだ。

 そう、原作では村だったこの場所が()()()()()できるほどの大きな街に発展しているんだ。

 最初に街を見た時は驚きで大分混乱したけど、今は一周回って冷静だ。

 

 めし屋でのやり取りで確信した。あのオッサン、キハーノさんはウソップで間違いなさそうだ。

 特徴的な〝長鼻〟じゃないから分かりづらかったけど、良く見たら原作のオマケコーナーで描かれてた未来のウソップの姿と似ていたし。

 もちろん、何かあった未来の方じゃない。確かあっちは「ルフィはおれの弟子だ」とか大ボラ吹いてる小汚いオッサンだったな。

 

 でも、キハーノさんが四十歳くらいだとすると原作より二十歳以上年をとってることになる。

 まさかシロップ村だけ時間軸がズレてて、二十年でシロップ街に発展したのか?

 ウソップ海賊団の子供が見当たらないのも、もう成人してそれぞれの野望を達成した……とか?

 この辺りの謎は、食事中にも考えてたけど答えはでそうにない。もうオレが関わったから原作がズレた なんて次元を越えている。

 完全な形で原作と同じ結末を迎えるのは、もう無理そうだ。ウソップが四十代ならヤソップは一体何歳なんだよ!

 一瞬ロジャー世代まで老けこんだヤソップを想像してみて……あ、ワンピース世界の老人だから普通に現役で戦えそうだなー。なんて思わなくもないけど!

 

 ふぅ。ひとまず考えても分からない事は置いておいて、今は流れを見守るしかないか。なんだかんだ広い目でみれば、まだ原作と似た流れではあるんだし。最終的に、麦わらの一味が〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟を手に入れるのなら、まあ問題ないな。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「フフン♪ 結構な額になったわねー!」

 

 「ありゃ恫喝だろ。捕まるぞ」

 

 「何言ってんの、あの店主が最初にナメた額提示してきたのがいけないんじゃない。こっちは海賊よ?」

 

 「おまえ調子のいい時だけ海賊になりやがって。まだ保留なんだろ?」

 

 どうやら換金も無事に済んだみたいだ。

 色々考えてる内に終わっていたけど、キレたナミさんの怖さから現実逃避してただけかもしれない。

 

 「さ! これからはショッピングよ。荷物持ち共、着いてきなさい♪」

 

 これから買い物かぁ。ルフィー達はまだ戻って来ないけど、確かこのあとジャンゴと遭遇するんだったっけ?

 細かい流れは思い出せないなぁ。まあ、今すぐ事件が起きたりはしなかったハズだ。

 

 「と。そうだ! その前に、エダ! いい加減その暑苦しい上着を脱ぎなさい!」

 

 「ん? なんだ?」

 

 「マントよ! この島暑いでしょ? 見てるこっちも暑くなるのよ」

 

 ナミさんがグイグイと〝蔓〟で編んだマントを引っ張ってくる。マズい脱げる!

 

 「「あ」」

 

 バサッと音を立てマントが地面に落ちた。

 そして、オレが着ている()()の服が露わになった。ついにバレてしまった!

 

 「なによその服!? 生地はズタズタだし、袖の長さも左右で違うじゃない!」

 

 う、これでも頑張って作ったんだ。

 まず機織り機は能力で問題なく作れた。手の平から最大で腕の太さまでの〝枝〟ならいくらでも出せるし、変形させれば細い角材にもできる。

 組み立ても簡単だ。体に触れてる内なら継ぎ目なく枝同士を接合できるので、釘もネジも必要ない。

 糸だって変形能力の応用で〝蔓〟から繊維を抽出すれば用意できた。

 

 ──問題は生地ができたあと、()()する時だ。オレの能力じゃどうやっても切れ味の鋭い刃は作れなかったんだ。

 棘は穴を空けるだけだし、枝や蔓も変形できる限界がある。鋭くて薄く強度も保つって欲張りセットは無理なんだ。

 唯一の可能性にかけて葉っぱを試したけど、いくらやっても大きさが変えられるだけで()()()()()()な形のものしか出てこない。

 

 とげキャノン つるのムチ ねをはる は使えるのに。 はっぱカッター だけ再現できない!

 わざ を四つ以上覚えているから?

 

 大分脱線してしまったけど、オレの着てる今の服は無理矢理引きちぎった布を適当な寸法のまま縫ってくっつけたものだ。

 そもそも、前世で雑巾くらいしか作ったことないんだから土台無理な話だった。

 

 「新しい服買ってあげるから今はそのマント着てなさい」

 

 「ア、ハイ」

 

 落ちたマントを拾うため屈んだら、ポケットにねじ込んでいたレモンが落ちてきた。もちろんポケットも雑な作りだ。

 

 「あ! アンタそれ私があげたやつじゃない!」

 

 酷い服を着てたのがバレた上に、レモンを隠したことまでバレてしまった。

 どう言い訳しようかと考え。

 ふと見上げた看板にはValletta(バレッタ) と書いてあった。

 

 あー、原作でもこういう小ネタよくあったなぁ。




 日曜日(アニメ)と月曜日(原作)の日はお休みになります。

 次回は火曜日8/2に更新予定です。
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