〜 メリー号が襲撃される少し前 〜
ー 下町・地下倉庫 ー
まさか、おれがここへ辿り着くとはな。今日は
一度目は、穴に落ちたせいで保護対象を見失ったが……
二度目は、偶然にも
さらに、見張りが誰も居ないという好条件だ。
この機を逃す手はないだろう。なんせここは、上層部が長年捜索していた……
プルプルプルプル
おっと、またコイツか。
このキカイな生き物を持たされて早2年。
受話器を取って、吉報が飛んできた試しがない。
やれ機密情報が漏れただの、海軍が2つに割れただのと。凶報しか運んでこないヤツだ。
だから極力、こちらからの報告は伝書鳩で済ませているというのに……。
最近じゃ、憎さからかコイツの目つきまでイヤらしく感じる。
かつて聞いていた話では、もう少し可愛げのある印象だったが
おれに回された個体は、やたらと手のかかるヤツだ。
エサの好き嫌いが激しい上に、受話器を取らずにいればそのうち勝手に──
ガチャ
『おーかーきーっ!』
通話状態へと移行する……参ったな。
「あられ。おれです。いま、少し立て込んだ状況でして……」
『地下におるのだろう? 千里眼は届かんが、電伝虫の念波は届くようで安心した。それで、中の様子は?』
「ざっと調査しただけですが、大量の武器と兵器。さらには悪魔の実をはじめ、絶滅種の
『よもや、
センゴクさんが嘆くのも無理はない。
あからさまに怪しいというのに、ウミットは長年調査しても証拠の出ない男だったからな。
最近では専ら、真の黒幕が用意した囮の可能性が高いとまで考えられていた。
だが奴の本拠地でこうして物証が上がったからには、やはりウミットこそが〝深層海流〟で間違いないのだろう。
ん?
「これは……月齢表か? なるほど、物資の運搬は〝新月〟の日を中心に行っているようです」
『千里眼への警戒か。暗闇での運搬になるが、嗅覚か聴覚の優れた
「おそらく、ヤツらの中にはモグラの能力者でもいるんでしょう。この地下施設は、人力で掘れる規模を越えてますから」
『皮肉なものだ……密輸の為の地下施設とはな。あの物語の〝ドレスローザ〟と同じではないか』
「あの物語、ですか」
よもや その情報が、こうも広まってしまうとは思いもしなかった。
おかげで兄は危険人物扱いだ…………まあ、否定はできんが。
しかし、
巡り巡って、現在は島ごとシキが手中に納めたらしいが……
奴の登場する
『ロシナンテ。お前一人では調査しきれんだろう。そちらは、明日到着するゼファーに任せる』
「先生が直接? 組織の再編成は済んだので?」
『モノは言いようだな。実際は、信用できる人員を見繕って離脱しただけにすぎん。当然、人手不足だ!』
「それは、また……」
『北極帰りのところ悪いが、さっそくお前にも働いてもらうぞ!』
「……では、調査報告をしに おれも一度ドレスローザ支部まで」
『それには及ばん! 伝書鳩からの書面でおおよそ把握出来ている。クリケット達との旅は楽しかったようだな』
筆マメな性格があだになったか。
どうにも以前の
ああ、この電伝虫を実用化させたのは、そのMADSだったか。
おれが潜入していた時期は解析すら出来なかったというのに、近年になって〝血統因子〟の存在が解明された様だ。
おかげでカタツムリの
表へ流出する解析済みの個体は希少なため、海軍では一部の
果たして、向こうの海軍はどうなっている事やら。
仕方ない、羽を伸ばせる調査任務もこれで終了だ。帰郷は、次の任務を果たすまでお預けだな。
『よく聞け。現在外では〝麦わら〟〝ドレーク〟〝ホーキンス〟が襲撃されている状況だ』
「街でロコカイユのエージェントと
『いや、その連中は既に壊滅している。だが厄介な事に、ビッグ・マム海賊団がロコカイユに肩入れする可能性がある』
「やはり、連中は手を組んでいましたか」
『プリン・シャーロットの大会出場だけが目的で、母船を出しはしないだろう。おまけに〝長男〟まで出張って来ておる』
目的は、巨大船による大量輸送か。大胆な事だ。
そして、ペロスペローまで居るとなれば、麦わらの一味もタダでは済まない。
能力の練度が高い上に、狡猾な男だ。船をキャンディで固め、逃げ道を封じるくらいはする筈だ。
物語ではペドロの犠牲で危機を脱したが、この世界では──
『お前が〝麦わら〟の出航を助けてやれ』
「……相手は、海賊ですが?」
『構わん。敢えて理由を付けるのなら、連中は〝ピースメイン〟だ。文句もなかろう?』
ハハ……! これがNEO海軍か。
名称こそ同じだが、
センゴクさんが立案した作戦は、至って単純なモノだ。
デボラが、能力で敵を無力化。
おれは、その効果が及ばないよう味方を守る。
幸いなことに、デボラとも面識があるので話は早く済むだろう。
〝音を介する能力〟と〝音を遮断する能力〟
任務でエレジアを訪れた際に、おれの能力が有効だった事も確認済みだ。
あの時、楽譜を破棄できていればドレークが苦労する事もなかったんだろうが……。
『外へ出たのなら、港へ急げ。今度こそ、穴に落ちるなよ?』
「!?」
『〝ヴァイオレット〟が全て見ていた。だが地下倉庫発見の手柄で、
ヴィオラめ……この前は「千里眼も全てを見れる訳じゃない」と言っていただろう!?
〝ギロギロの実〟の効果範囲は半径4,000㎞という破格なモノだ。
だが、透視が可能な範囲はせいぜい半径40㎞。隣国とはいえ、ここ迄は遠く及ばない距離だ。
そして、同時に複数箇所を見る事も出来ない。
王族としての務めを果たしつつ、海峡の監視も行っている身だ。当然、
なぜ、おれがドジを踏んだ場面を見ていた!?
『ああ、それと。作戦の成功後は、そのままドレークと行動を共にしてくれ』
「……念の為聞きますが、まさかバリウッド大陸までですか?」
『ははは、
「それは市民への建前でしょう! おれだって多少、興味はありますが……!」
『文句なら、お前の後輩に言え。ヤツが、新しい人員を寄越せと陳情してきおったのだ』
丁度、その後輩が見えて来た。
私掠撰としての活動に、例の〝黒ひげ〟案件、さらにはW7の視察……
そしてトドメが、デボラのお守りとは。
アイツは、1人でどれだけの案件を抱えるつもりだ?
おれの姿を確認し、珍しく表情の明るいドレークを見れば──文句なんて言える訳がないな。
どうやら、帰郷は大分先になりそうだ。
〜 そして、現在 〜
「なんだ? アイツら全員倒れてくぞ!? まさか、死んだのか!?」
ビッグ・マム海賊団の面々が、次々と倒れて行く。これが、デボラの──ウタの能力?
ルフィ達も突然の出来事に慌てている。
「死んじゃいねェようだ。ワシには
「ヨホホホ、見聞色ですね! 私には全く聞こえませんケドー!」
「そうよ!? 外の音が全く聞こえないのはどうして!?」
「〝防音壁〟だ。おれの能力で、外部の音を遮断している」
「そもそも、アンタは誰なのよー!!」
「あ! あなた、あの時の!」
「知ってる奴かい? ビビちゃん」
「路地裏で、私を罠から助けてくれた人よ! あの時は、ありがとうございました」
「ああ……無事なようでなによりだ」
「お礼を言えて良かった! 急にどこかへ消えてしまったから……」
「別に消えた訳じゃない……穴に落ちたんだ」
ボソっと喋ってたけど、周りが静かだから聞こえたぞ。
状況を考えると……その穴って、既に発動してた落とし穴だろうな。ほら、最初に山賊を落としたヤツ。
つまり、見えてる穴に落ちたって事だ───このドジっ子ぶりは間違いない。
この人は、コラソンだ!
……まあ、能力の時点で確信してたケド。
「んん〜? そういや、おれもどっかで見た事あるような気がするんだよなァ?」
サンジも接点が?
あ、それ多分! ワイン飲み過ぎて体に引火した、真っ赤な目の男!!
「おれに関しての疑問は後だ。デボラの能力で敵は眠ったが、奴らの船はデカい。船内には、まだ起きてる敵がいるかもしれん」
「あれ、デボラがやったのか!? 今も、マストの上で歌うマネしてんぞ?」
「実際に歌っている。そんな事より、出航を急げ」
「確かに、今は船を出すチャンスだわ……ってウソ!? まだ、アメが残ってるじゃない!?」
「ペロスペローは眠っているだけで、気絶した訳ではないからな。慌てずとも、炎で溶かせる」
「ナミさーん! おれに任せてくれ! いくぞ、
「何やってんだ、アホコック!? 仕方ねェ、おれ……ぐー」Zzz…
「ちょっと!? なんなの一体! 帆を張りに行った副船長とブルックまで寝てるじゃない!!」
「……言い忘れてたが、おれの能力の範囲から出たらデボラの歌にやられるぞ?」
「言うのが遅いっ!! どうするのよ、コレ!?」
あはは、ドジっ子だなぁ……。
いや、割とピンチだ!? 炎を出せる仲間がみんな眠っちゃったぞ!?
メリー号の周りは、アメでガッチリ固められてるんだ。
「そうだわ! ドレーク、あんた怪獣なら口から火を吹けるんじゃない!?」
「無茶を言うな!?」
「だから、ナミさん。怪獣じゃなくて、恐竜だ。アロサウルスだ」
「あーもう! ゴムに植物に恐竜! あと変なの2人! 能力者がこれだけいれば、火くらい起こせるでしょ!?」
「ちなみにだが、ホーキンスは巨大化したせいで〝防音壁〟の範囲外だ」
「へー、じゃあ立ったまま寝てんのかアイツ! おもしれェー!」
ゴン!
「面白くないっ!!!」
火か。オレも道具を作れば焚き火くらいなら出来るけど、火力が足りないよな。
こんな時、エースでも居てくれれば〝火拳〟で一発なのに……ん?
そうだ!
「ルフィ!!〝
「? なに言ってんだ、エダ?」
「まだ使えないのか!? えーと、ギア2と武装色の覇気でゴムゴムの
「ギアせかんど? なんだそれ? おれ、知らねェぞ?」「……!」
「えぇーッ!?」
「……
「あるぞ。コビーと汽車で、温泉の街に行ったからな!」
「ほう、セカン島か。あそこは、いい場所だ」
「こんな時に何言ってるのよーっ!?」
ナミさんが混乱するのも無理ないけど、必要な確認だったハズだ。
ただそうすると、コラソンが〝ギア2〟の概要を知ってる事になるんだよな。
オレが書き残した〝
仮にあれを読んだとしても、蒸気機関とギア2を結びつけるのは難しいと思う。
それこそ、もっと詳細に原作を知らない限り───
あれからすぐ、意外と機械に詳しかった ドレーク が ルフィ に蒸気機関の説明をした。
まあ、細かい理屈を言ってもルフィは理解しなかったから、結局ナミさんが砕いて説明する事に。
「なるほどね。ようは、ポンプでいいのよ。血流が速くなればいいんでしょ?」
その結果───
「ゴムゴムの〝
「出たわ、炎! その調子で、防音壁から出ないように〝アメ〟を溶かすのよ! ルフィー!」
「まかせろ!」
「伸びる腕ならば、防音壁の中から攻撃可能か。考えたな、植物好き」
「え?」
「エダはそんな深く考えてないわよ。それよりドレーク! あんたも船長なら舵取りは出来るでしょ?」
「当然できるが、まさか おれを働かせる気か!?」
「私とビビで帆を張るから、他に居ないの! エダはケガしてるし、防音の人は動いちゃダメみたいだし!」
「オレがやるよナミさん。そこまで深手じゃないし……」
「ダメ! 腕が千切れなかったのが不思議なくらいよ!? いいから座ってなさい! 命令よ!」
「あ、ハイ」
命令って言われて……つい、返事しちゃったよ。
肩の傷だって、今は葉っぱの回復効果で大分マシになってきたんだけどな。
お、ドレークが文句を言いながらラウンジへ入って行った。ナミさんの命令には逆らえなかったか。
見張り台には、未だに歌っているデボラ。声は聞こえないけど、楽しそうな表情をしてるな。
ルフィはアメを溶かす……というか砕いてる。
ナミさんとビビは、防音壁から出ないよう慎重に帆を張ってる。
目には見えない防音壁だけど──甲板で寝てる仲間たちが、その効果範囲を示してくれてるようだ。
カルーを除けば、いま手の空いてる人間はオレと、目の前にいるコラソンだけ。
「そう警戒するな、植物好き。おれは別に、元・天竜人じゃない」
「──そのセリフ。ミンゴと一緒だな」
「兄とも話していたか……なるほど、合点が行った。お前なんだろう? 例の原作知識を書き残したヤツは」
「うへっ!? そ、そうだ!」
「一つ疑問がある……なぜ、103巻辺りまでで書くのを止めた? 中途半端だろう」
「そこまでしか知らないから、しょうがないだろ!」
「そうなのか? おれはてっきり、アイツの……いや、そういう事もあるのか」
なんか勝手に納得した!?
くそ! 完全に会話の主導権を握られた。
強気モードで行こうとしたのに、いきなり
せめてヒノモト語ならもう少し駆け引きもできるんだけど、近くにナミさんがいるからな。命には変えられない。
「ふぅ、帆は準備完了! 錨は上げてあったし、あとはアメだけね」
「お疲れ、ナミさん。かなり早かったんじゃないか?」
「そうなの。ビビが手際良くてね」
「小さい頃から、商船には何度も乗ってるの。見よう見まねだけど、上手く出来たみたい!」
「そう言えばトトさんが自慢してたわね。うちのメルクは何でも出来て、甲板長 顔負けだ。なんて」
「そんなの、
なんだ、この会話?
まるでビビが、トトおじさんの娘みたいな……。ていうか、ナミさんまでトトおじさんと関わりが?
「植物好きが固まってるが、ナミ。お前に話がある。〝四郷のクリスタル〟は持っているか?」
「え? 何よ急に!? あげないわよ!」
「……そのクリスタルは世界に4つ存在し、それを金獅子のシキが狙っている」
「知ってるわ。ブギーからの情報だけどね」
「シキが全てを揃えてしまえば、この世界に未来はない。くれぐれも、奪われないよう注意するんだ」
「それは初耳なんだけど!? え、どうしよう!?」
「すまない、脅かし過ぎたな。簡単に揃う事は無いから安心しろ。
「ちょっと待ちなさいよ!? それって、コレでしょ!?」
ぐいーん
「イタタタ! まって、ナミさん!? 首、クビが締まるぅー!」
「……それは!?」
ブギーが寄越したコレ。やっぱり、厄ネタすぎるだろ!?
「よーし! アメは全部砕いてやったぞー!! 出航だァ!」
ー バンジード沖 ー
結局 情報は錯綜したまま、ルフィの号令が掛かってしまった。
目指すは、先に沖へ出ていたドレークとホーキンスの船。
真夜中の海もナミさんの腕ならば全く問題はなく、すぐに2隻の船を発見できた。
今はデボラも歌い終わって、コラソンが能力を解除。
ただ……デボラ自身が眠らないと、歌の能力は解除されないらしい。
おかげで、甲板には眠ったままの仲間4人と、
「これだけ離れれば、追いつかれる事もないだろう」
「ねぇ、アンタたち。今更だけど、どうして私達を助けてくれたの?」
「市長の件はおれ達に非がある。巻き込んじまった尻拭いをしたまでだ」
「よく分かんねェけど、ありがとう! お前ら!」
「にっしっし! 気にしないでいいよルフィー!」
「おいデボラ! 元はと言えば、お前が能力の説明をしなかったせいだろっ! おれはオン、オフできるものだとばかり……!」
「もー、怒らないでよドレーク。それに、これからはロシナンテがいるから平気だよ」
普通にロシナンテって呼ばれてるのか。この人も、ドレークの旅に同行するらしい。
西回りも危険な旅って話だったけど、さっきの能力コンボを見ちゃうとなぁ……。
そっちの旅、かなりイージーモードなんじゃないか?
おっと、無事に向こうの船とも接舷できたみたいだ。そろそろ、お別れか。
「あー!
「待てデボラ。高所にいる人間を、むやみに操ろうとするな! 仕方ない、おれが……」
「ああ、いいよ。みんな疲れてると思うし、オレが連れてくる」
「ちょっとエダ! ケガは!?」
「肩も上がるし、大丈夫そうだ」
よっと。
下からじゃ見えなかったけど、マストの上の見張り台で寝こけてる幼女を回収っと。
よく寝てるなぁ。ゾロ達も含めて、いまは全員〝同じ夢の世界〟にいるらしい。
さらにデボラは、眠った人間を自由に操る事まで可能みたいだ。
ホーキンスが立ったまま寝てたのも、操られてたせいだろう。
いまもデボラに操られて、自分の船へと歩かされてる最中だ。
「それじゃ、あとは頼むドレーク」
「……ああ。おれが背負う」
「ふぁ〜、そろそろ眠くなってきちゃった。私もおんぶして、
「おれは、1人背負ってるだろ。頼むのなら……」「おれを見るな、ドレーク」
「やっぱり、自分で歩くよ。ロシナンテはすぐ転ぶからね!」
「……」
「では、麦わら。おれ達ももう行く」
「またね、ルフィー!〝最果て〟で待ってるから!」
「しししし! 負けねェぞ! またな、お前らー!!」
沖合にて別れを告げる、二人の若き船長
互いに辿る航路は、奇しくも先人のそれと一致する
片や、400年前に新大陸を発見したノーランドの辿った
片や、100年前に嵐の岬を越えたバルトロメオの辿った
やがて新時代を征く船長たちも、その名を歴史へ刻むこととなる
一人は、世界一周の偉業を果たすことで
一人は、世界を揺るがす大事件の中心人物として
そして、その両方に加担しながらも決して歴史に名を刻まない男が一人
その瞳は、揺れる
ー とある国 ー
窓のない薄暗い部屋で、間の抜けた音が木霊する。
プルプルプルプル
「あらァン。出なくていーノゥ?」
「構わんさ。既にエージェントへは、撤退の指示を出してある」
「見捨てられちゃうなんて、ウミットちゃんも可哀想ねい」
「あんな男でも、捜査の目眩しにはなるだろう。最後くらいは〝深層海流〟として役立ってもらわねばな」
「かつての海運王も、その末路は哀れなモノねい。ターゲットのコ、あちしが捕まえてあげましょーかァ?」
「いや、もういい。もはや止まることのない流れだ───〝時代のうねり〟と同様にな」
「? ケド、倉庫の荷物はドゥーするのよーう?」
「案ずるな。まもなく〝隠匿師〟が現地へ到着する頃合いだ」
「まるで、全部見越してたかのようねい。なら当然、次の輸送ルートも確保してるんでしょーう?」
「勿論だとも……時代は〝空〟だよ。
艶のある黒髪。妖艶さが垣間見える、切れ長の目。そして、胸には豊満な双丘。
ミス・ボンクレーと呼ばれた者は、女性としか表しようのない外見をしている。
だが、彼は男である。
その見た目は、自身の能力によるモノか。
はたまた、彼が敬愛する
「そろそろ、君を呼んだ理由を話そう」
「そうよう! ボス直々の呼び出しなんて初めてよーう!? 相変わらず、仮面のせいで顔は見えぬァいケドー! んもう、恥ずかしがり屋さんねーい!!」
「なに、すぐに判るとも」
「ハッ……! ひょっとして、あちし消されちゃうのーう!? ジョーダンじゃ、ないわよーう!!」
「──少しの間、ある男の代わりをしてもらいたい」
「それってぃ、まさかァ!!?」
響き渡る驚愕の声。されど、男は素知らぬ顔で話を進める。
ー メリー号・甲板 ー
甲板で鳴り響くイビキの
ゾロ、サンジ、副船長、ブルック。そして、ルフィ。
あの後すぐに、ルフィだけは普通に寝たんだ。慣れないギア2で疲れたらしい。
難局を乗り越えたとはいえ、まだ夜明け前だ。
割と夜目の効くオレが、しっかりと海を見張ってないと、な……ふぁ〜ぁ。
「ちょっとエダ。なにずっと物思いにふけって、海を眺めてるのよ?」
「ん? ナミさんか。黄昏てるオレを見て、惚れ直しちゃった?」
「ダッサい眼帯つけて何言ってんのよ!」
「……ダ、ダサい? え、ホントに?」
「ほら、ビビも言ってやって?」
「あはは……」
苦笑い!? もういいよ! こんな眼帯、外してやる!
狙撃の時だけ、ツルを変形させれば済む話だし!
そういえばカリファ戦で気付いたけど、服の下にツルを隠しておくのが意外と有効だったよな。
これからは、予め服の下に……あ!
「ごめん、ビビ! 色々あって、マントを返しそびれてた! 取ってくる!」
「待って! あのマントは、もう必要ないの。よかったら、もらってくれない?」
「え?」
「元々、顔を隠すために渡されたモノなんだけど……もう本名もバレちゃったし」
「なんて言うか、色々とごめん。あと、マントありがとう!」
「ふーん。あんた、ビビのマントまで着るんだ? ロビンの帽子だってずっと被ってるみたいだし?」
「そういうのじゃないぞ、ナミさん!? これは、えーと。実用性だ!」
マントは体を隠せるからな。罠を準備するのに最適なんだ。
帽子だって、寝癖を隠せたりして便利だろ?
だから変な対抗意識はヤメテくれ!? どうして、ナミさんのスカートを履かそうとしてくるんだ!?
プルプルプルプル
「もう、困ったからってプルプルしないでよ。さすがにスカートは冗談だってば」
「……オレじゃないぞ?」「え?」
「この音、ラウンジから聞こえてくるわ。ナミさん!」
この特徴的な着信音は、間違いなく電伝虫だよな!?
てっきり、この世界には存在しないと思ってたのに……居るなぁ。テーブルの上に。
その隣には置き手紙。
〝おまえにやる〟
これ書いたの、コラソンだろ!! 『ローのビョーキをなおしてくる』と筆跡が似てる!
わざわざヒノモト語で書かなくてもいいのに……ん?
よく見たら、小さな字で番号も書いてあるな。一体、誰の番号なんだ?
ガチャ
『おーかーきっ!!』
「え!? 喋った!? ど、どうしようエダ?」
「……あられ。オレです」
『悪い知らせだ。倉庫にギバーソンが現れた……おそらく証拠は消されるだろう。既に、港で倒れていた連中も消えておるからな』
「えーと、どうしよう。港の連中は、そのギバーちゃんに殺されたんですか?」
『死んではおらんだろう……いや、ワラワラの対象にされていた何人かは死んだか? とにかく、教会もロコカイユも確保は厳しいという事だ。だが安心しろ、ウミットだけは別件で──』
「ろこかいゆ?」
『ん? 少し待て。どうしたヴィオラ嬢? なんだと!? 電伝虫の相手は〝植物──』
「あ、やべ」ガチャ
相手は、どうやってもセンゴクだよな?
オレの声真似が上手かったのか、勝手にペラペラと喋ってくれたけど……もうバレてるよなぁ絶対。
ジリリリリリリリ
「おわっ!? また掛かってきた!?」
「出なさいよエダ!」
「もう無理だって、ナミさん! ほら、お年寄りを騙すのは良くないだろ!」
「どの口が言ってんのよ!? それに、放っておいても勝手に喋りだすでしょ! このカタツムリ!」
ガチャ
『キサマ! なぜ合言葉を知って──』ガチャ
「ふぅー」
「ちょっと!? 切ったって、また掛かって来ちゃうでしょ!?」
そうだった! この電伝虫、なんで勝手に通話するんだよ!?
どうにか黙らせる術を考えないと……って、一体どうすりゃいいんだ!?
──『85巻のSBSによれば、電伝虫は〝しつけ〟次第でマナーモードも覚えるらしいわ』
ナイスだ! ニコ!!
要は、ペットのしつけと同じってコトだな!
ジリリリリリリリ……
「ほら、葉っぱだぞー? 黙ってくれたら、コレをあげちゃうぞー?」
「鳴り止んだわ」
「よーし、いい子だ。勝手に通話しなければ、何枚でも出してやるからなー」
「ロビンさんの出した葉っぱを食べてる……今更だけど、コレって生き物なの?」
「よく見れば、普通に生息してる大きなカタツムリだわ。変な機械が取り付けてあるケド」
「機械の部分は、副船長が起きたら見てもらおう」
「はぁ〜、寝てる連中が羨ましいわ。こっちは、色んな事が起きすぎて大変だっていうのに!」
まあ、なにはともあれ無事に出航できたんだ。
ちょうど朝日が昇ってきたし、もうすぐ皆も目を覚ますだろう。
今後のこともある。いま最優先すべきは───
ビビたちを歓迎する宴だな!! 難しい話なんかは、全部そのあとだ!
これにて〝偉大なる航路突入編〟と題したバンジードの物語は終了です。
また、今回で定期更新も一旦ストップとなります。
3ヶ月近くお付き合いして下さった皆様、ありがとうございました!
幕間と設定集は、5月上旬に更新予定です。
その後、書き溜め期間を挟んで、再び定期更新を始めたいと思います。
※ちなみに、ギロギロの実の制限に関しては捏造設定です。
・鳥の目を借りるような視点で、自身の半径4,000㎞を俯瞰できる
・そのうち40㎞圏内でのみ、あらゆる遮蔽物を無視して覗き込むことができる
という制限を付けてみました。心を覗く力や、涙で攻撃する力は原作通りです。
それと、ギア2に関しても公式設定ではありません。
ルフィは海列車から技の着想を得たのだろうという妄想です。