植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

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第47話〝新時代〟

  〜 メリー号が襲撃される少し前 〜

    ー 下町・地下倉庫 ー

 

 まさか、おれがここへ辿り着くとはな。今日は穴運(あなうん)が良いのか、悪いのか判らん日だ。

 一度目は、穴に落ちたせいで保護対象を見失ったが……

 二度目は、偶然にも地下倉庫(ここ)への入り口を発見する事ができた。

 さらに、見張りが誰も居ないという好条件だ。

 この機を逃す手はないだろう。なんせここは、上層部が長年捜索していた……

 

  プルプルプルプル

 

 おっと、またコイツか。

 このキカイな生き物を持たされて早2年。

 受話器を取って、吉報が飛んできた試しがない。

 やれ機密情報が漏れただの、海軍が2つに割れただのと。凶報しか運んでこないヤツだ。

 だから極力、こちらからの報告は伝書鳩で済ませているというのに……。

 

 最近じゃ、憎さからかコイツの目つきまでイヤらしく感じる。

 かつて聞いていた話では、もう少し可愛げのある印象だったが

 おれに回された個体は、やたらと手のかかるヤツだ。

 エサの好き嫌いが激しい上に、受話器を取らずにいればそのうち勝手に──

  ガチャ

 

 『おーかーきーっ!』

 

 通話状態へと移行する……参ったな。

 

 

 「あられ。おれです。いま、少し立て込んだ状況でして……」

 

 『地下におるのだろう? 千里眼は届かんが、電伝虫の念波は届くようで安心した。それで、中の様子は?』

 

 「ざっと調査しただけですが、大量の武器と兵器。さらには悪魔の実をはじめ、絶滅種の(ダイアル)に、加工された海楼石なんて珍しい物まで──おそらく、捜していた〝交易港〟で間違いないかと」

 

 『よもや、荒屋(あばらや)が建ち並ぶ下町の地下にあったとは……私としたことが、中層の港ばかりに気を取られ、まるで盲点だった』

 

 センゴクさんが嘆くのも無理はない。

 あからさまに怪しいというのに、ウミットは長年調査しても証拠の出ない男だったからな。

 最近では専ら、真の黒幕が用意した囮の可能性が高いとまで考えられていた。

 だが奴の本拠地でこうして物証が上がったからには、やはりウミットこそが〝深層海流〟で間違いないのだろう。

 ん?

 

 「これは……月齢表か? なるほど、物資の運搬は〝新月〟の日を中心に行っているようです」

 

 『千里眼への警戒か。暗闇での運搬になるが、嗅覚か聴覚の優れた動物(ゾオン)系がいれば可能だろう』

 

 「おそらく、ヤツらの中にはモグラの能力者でもいるんでしょう。この地下施設は、人力で掘れる規模を越えてますから」

 

 『皮肉なものだ……密輸の為の地下施設とはな。あの物語の〝ドレスローザ〟と同じではないか』

 

 「あの物語、ですか」

 

 よもや その情報が、こうも広まってしまうとは思いもしなかった。

 おかげで兄は危険人物扱いだ…………まあ、否定はできんが。

 しかし、()()()出航間近までの内容を記した〝木製の歴史の本文(ポーネグリフ)〟とは、また厄介なモノを。

 巡り巡って、現在は島ごとシキが手中に納めたらしいが……

 奴の登場する劇場版(はなし)が記されていない点だけは、せめてもの救いか。

 

 『ロシナンテ。お前一人では調査しきれんだろう。そちらは、明日到着するゼファーに任せる』

 

 「先生が直接? 組織の再編成は済んだので?」

 

 『モノは言いようだな。実際は、信用できる人員を見繕って離脱しただけにすぎん。当然、人手不足だ!』

 

 「それは、また……」

 

 『北極帰りのところ悪いが、さっそくお前にも働いてもらうぞ!』

 

 「……では、調査報告をしに おれも一度ドレスローザ支部まで」

 

 『それには及ばん! 伝書鳩からの書面でおおよそ把握出来ている。クリケット達との旅は楽しかったようだな』

 

 筆マメな性格があだになったか。

 どうにも以前のMADS(マッズ)潜入時から、いつ死んでも悔いが残らないよう書面を残すクセが抜けないな……。

 ああ、この電伝虫を実用化させたのは、そのMADSだったか。

 おれが潜入していた時期は解析すら出来なかったというのに、近年になって〝血統因子〟の存在が解明された様だ。

 おかげでカタツムリの個体(ナンバー)識別が可能となり、裏社会を中心に通信機として利用され始めた。

 表へ流出する解析済みの個体は希少なため、海軍では一部のSWORD(ソード)のみが所有していたんだが───

 果たして、向こうの海軍はどうなっている事やら。

 

 仕方ない、羽を伸ばせる調査任務もこれで終了だ。帰郷は、次の任務を果たすまでお預けだな。

 

 

 『よく聞け。現在外では〝麦わら〟〝ドレーク〟〝ホーキンス〟が襲撃されている状況だ』

 

 「街でロコカイユのエージェントと異端審問官(インクイジター)を見ましたが、まさかソイツらに?」

 

 『いや、その連中は既に壊滅している。だが厄介な事に、ビッグ・マム海賊団がロコカイユに肩入れする可能性がある』

 

 「やはり、連中は手を組んでいましたか」

 

 『プリン・シャーロットの大会出場だけが目的で、母船を出しはしないだろう。おまけに〝長男〟まで出張って来ておる』

 

 目的は、巨大船による大量輸送か。大胆な事だ。

 そして、ペロスペローまで居るとなれば、麦わらの一味もタダでは済まない。

 能力の練度が高い上に、狡猾な男だ。船をキャンディで固め、逃げ道を封じるくらいはする筈だ。

 物語ではペドロの犠牲で危機を脱したが、この世界では──

 

 『お前が〝麦わら〟の出航を助けてやれ』

 

 「……相手は、海賊ですが?」

 

 『構わん。敢えて理由を付けるのなら、連中は〝ピースメイン〟だ。文句もなかろう?』

 

 ハハ……! これがNEO海軍か。

 名称こそ同じだが、()()()の組織とは違う様で安心した。

 

─────────

──────

───

 

 センゴクさんが立案した作戦は、至って単純なモノだ。

 デボラが、能力で敵を無力化。

 おれは、その効果が及ばないよう味方を守る。

 

 幸いなことに、デボラとも面識があるので話は早く済むだろう。

 〝音を介する能力〟と〝音を遮断する能力〟

 任務でエレジアを訪れた際に、おれの能力が有効だった事も確認済みだ。

 あの時、楽譜を破棄できていればドレークが苦労する事もなかったんだろうが……。

 

 

 『外へ出たのなら、港へ急げ。今度こそ、穴に落ちるなよ?』

 

 「!?」

 

 『〝ヴァイオレット〟が全て見ていた。だが地下倉庫発見の手柄で、保護対象(ビビ)を見失った件は大目に見てやる。麦わらの一味に加わった以上、保護対象からも外れるのでな』

 

 ヴィオラめ……この前は「千里眼も全てを見れる訳じゃない」と言っていただろう!?

 〝ギロギロの実〟の効果範囲は半径4,000㎞という破格なモノだ。

 だが、透視が可能な範囲はせいぜい半径40㎞。隣国とはいえ、ここ迄は遠く及ばない距離だ。

 そして、同時に複数箇所を見る事も出来ない。

 

 王族としての務めを果たしつつ、海峡の監視も行っている身だ。当然、()()を見る時間は限られているハズだが……

 なぜ、おれがドジを踏んだ場面を見ていた!?

 

 

 『ああ、それと。作戦の成功後は、そのままドレークと行動を共にしてくれ』

 

 「……念の為聞きますが、まさかバリウッド大陸までですか?」

 

 『ははは、W7(ウォーターセブン)の状況次第では〝最果て(オケアノス)〟まででも構わんぞ?』

 

 「それは市民への建前でしょう! おれだって多少、興味はありますが……!」

 

 『文句なら、お前の後輩に言え。ヤツが、新しい人員を寄越せと陳情してきおったのだ』

 

 丁度、その後輩が見えて来た。

 私掠撰としての活動に、例の〝黒ひげ〟案件、さらにはW7の視察……

 そしてトドメが、デボラのお守りとは。

 アイツは、1人でどれだけの案件を抱えるつもりだ?

 

 おれの姿を確認し、珍しく表情の明るいドレークを見れば──文句なんて言える訳がないな。

 どうやら、帰郷は大分先になりそうだ。

 

 


 

 

 〜 そして、現在 〜

 

 「なんだ? アイツら全員倒れてくぞ!? まさか、死んだのか!?」

 

 ビッグ・マム海賊団の面々が、次々と倒れて行く。これが、デボラの──ウタの能力?

 ルフィ達も突然の出来事に慌てている。

 

 「死んじゃいねェようだ。ワシには()が聞こえる」

 

 「ヨホホホ、見聞色ですね! 私には全く聞こえませんケドー!」

 

 「そうよ!? 外の音が全く聞こえないのはどうして!?」

 

 「〝防音壁〟だ。おれの能力で、外部の音を遮断している」

 

 「そもそも、アンタは誰なのよー!!」

 

 「あ! あなた、あの時の!」

 

 「知ってる奴かい? ビビちゃん」

 

 「路地裏で、私を罠から助けてくれた人よ! あの時は、ありがとうございました」

 

 「ああ……無事なようでなによりだ」

 

 「お礼を言えて良かった! 急にどこかへ消えてしまったから……」

 

 「別に消えた訳じゃない……穴に落ちたんだ

 

 ボソっと喋ってたけど、周りが静かだから聞こえたぞ。

 状況を考えると……その穴って、既に発動してた落とし穴だろうな。ほら、最初に山賊を落としたヤツ。

 つまり、見えてる穴に落ちたって事だ───このドジっ子ぶりは間違いない。

 

 この人は、コラソンだ!

 ……まあ、能力の時点で確信してたケド。

 

 「んん〜? そういや、おれもどっかで見た事あるような気がするんだよなァ?」

 

 サンジも接点が?

 あ、それ多分! ワイン飲み過ぎて体に引火した、真っ赤な目の男!!

 

 

 「おれに関しての疑問は後だ。デボラの能力で敵は眠ったが、奴らの船はデカい。船内には、まだ起きてる敵がいるかもしれん」

 

 「あれ、デボラがやったのか!? 今も、マストの上で歌うマネしてんぞ?」

 

 「実際に歌っている。そんな事より、出航を急げ」

 

 「確かに、今は船を出すチャンスだわ……ってウソ!? まだ、アメが残ってるじゃない!?」

 

 「ペロスペローは眠っているだけで、気絶した訳ではないからな。慌てずとも、炎で溶かせる」

 

 「ナミさーん! おれに任せてくれ! いくぞ、悪魔(ディアブル)ジャン……ぐぅ」Zzz…

 

 「何やってんだ、アホコック!? 仕方ねェ、おれ……ぐー」Zzz…

 

 「ちょっと!? なんなの一体! 帆を張りに行った副船長とブルックまで寝てるじゃない!!」

 

 「……言い忘れてたが、おれの能力の範囲から出たらデボラの歌にやられるぞ?」

 

 「言うのが遅いっ!! どうするのよ、コレ!?」

 

 あはは、ドジっ子だなぁ……。

 いや、割とピンチだ!? 炎を出せる仲間がみんな眠っちゃったぞ!?

 メリー号の周りは、アメでガッチリ固められてるんだ。

 

 

 「そうだわ! ドレーク、あんた怪獣なら口から火を吹けるんじゃない!?」

 

 「無茶を言うな!?」

 

 「だから、ナミさん。怪獣じゃなくて、恐竜だ。アロサウルスだ」

 

 「あーもう! ゴムに植物に恐竜! あと変なの2人! 能力者がこれだけいれば、火くらい起こせるでしょ!?」

 

 「ちなみにだが、ホーキンスは巨大化したせいで〝防音壁〟の範囲外だ」

 

 「へー、じゃあ立ったまま寝てんのかアイツ! おもしれェー!」

  ゴン!

 「面白くないっ!!!」

 

 火か。オレも道具を作れば焚き火くらいなら出来るけど、火力が足りないよな。

 こんな時、エースでも居てくれれば〝火拳〟で一発なのに……ん?

 そうだ!

 

 「ルフィ!!火拳銃(レッドホーク)だ!」

 

 「? なに言ってんだ、エダ?」

 

 「まだ使えないのか!? えーと、ギア2と武装色の覇気でゴムゴムの(ピストル)を打つカンジだ!」

 

 「ギアせかんど? なんだそれ? おれ、知らねェぞ?」「……!」

 

 「えぇーッ!?」

 

 「……()()()()()()()、蒸気機関車を見た事は?」

 

 「あるぞ。コビーと汽車で、温泉の街に行ったからな!」

 

 「ほう、セカン島か。あそこは、いい場所だ」

 

 「こんな時に何言ってるのよーっ!?」

 

 ナミさんが混乱するのも無理ないけど、必要な確認だったハズだ。

 ただそうすると、コラソンが〝ギア2〟の概要を知ってる事になるんだよな。

 オレが書き残した〝歴史の本文(メモ)〟は飽く迄、出来事を羅列した文章なんだ。当然、絵もない。

 仮にあれを読んだとしても、蒸気機関とギア2を結びつけるのは難しいと思う。

 

 それこそ、もっと詳細に原作を知らない限り───

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 あれからすぐ、意外と機械に詳しかった ドレーク が ルフィ に蒸気機関の説明をした。

 まあ、細かい理屈を言ってもルフィは理解しなかったから、結局ナミさんが砕いて説明する事に。

 

 「なるほどね。ようは、ポンプでいいのよ。血流が速くなればいいんでしょ?」

 

 その結果───

 

 ゴムゴムの〝火拳銃(レッドホーク)〟!!ボウッ!!

 

 

 「出たわ、炎! その調子で、防音壁から出ないように〝アメ〟を溶かすのよ! ルフィー!」

 

 「まかせろ!」

 

 「伸びる腕ならば、防音壁の中から攻撃可能か。考えたな、植物好き」

 

 「え?」

 

 「エダはそんな深く考えてないわよ。それよりドレーク! あんたも船長なら舵取りは出来るでしょ?」

 

 「当然できるが、まさか おれを働かせる気か!?」

 

 「私とビビで帆を張るから、他に居ないの! エダはケガしてるし、防音の人は動いちゃダメみたいだし!」

 

 「オレがやるよナミさん。そこまで深手じゃないし……」

 

 「ダメ! 腕が千切れなかったのが不思議なくらいよ!? いいから座ってなさい! 命令よ!」

 

 「あ、ハイ」

 

 命令って言われて……つい、返事しちゃったよ。

 肩の傷だって、今は葉っぱの回復効果で大分マシになってきたんだけどな。

 お、ドレークが文句を言いながらラウンジへ入って行った。ナミさんの命令には逆らえなかったか。

 

 見張り台には、未だに歌っているデボラ。声は聞こえないけど、楽しそうな表情をしてるな。

 ルフィはアメを溶かす……というか砕いてる。

 ナミさんとビビは、防音壁から出ないよう慎重に帆を張ってる。

 目には見えない防音壁だけど──甲板で寝てる仲間たちが、その効果範囲を示してくれてるようだ。

 

 カルーを除けば、いま手の空いてる人間はオレと、目の前にいるコラソンだけ。

 

 

 「そう警戒するな、植物好き。おれは別に、元・天竜人じゃない」

 

 「──そのセリフ。ミンゴと一緒だな」

 

 「兄とも話していたか……なるほど、合点が行った。お前なんだろう? 例の原作知識を書き残したヤツは」

 

 「うへっ!? そ、そうだ!」

 

 「一つ疑問がある……なぜ、103巻辺りまでで書くのを止めた? 中途半端だろう」

 

 「そこまでしか知らないから、しょうがないだろ!」

 

 「そうなのか? おれはてっきり、アイツの……いや、そういう事もあるのか」

 

 なんか勝手に納得した!?

 くそ! 完全に会話の主導権を握られた。

 強気モードで行こうとしたのに、いきなり歴史の本文(やらかし)の件をぶっ込んでくるとは……!

 せめてヒノモト語ならもう少し駆け引きもできるんだけど、近くにナミさんがいるからな。命には変えられない。

 

 

 「ふぅ、帆は準備完了! 錨は上げてあったし、あとはアメだけね」

 

 「お疲れ、ナミさん。かなり早かったんじゃないか?」

 

 「そうなの。ビビが手際良くてね」

 

 「小さい頃から、商船には何度も乗ってるの。見よう見まねだけど、上手く出来たみたい!」

 

 「そう言えばトトさんが自慢してたわね。うちのメルクは何でも出来て、甲板長 顔負けだ。なんて」

 

 「そんなの、()が勝手に言ってるだけよ!? 親バカなの!! それに子供の頃の話だし!」

 

 なんだ、この会話?

 まるでビビが、トトおじさんの娘みたいな……。ていうか、ナミさんまでトトおじさんと関わりが?

 

 

 「植物好きが固まってるが、ナミ。お前に話がある。〝四郷のクリスタル〟は持っているか?」

 

 「え? 何よ急に!? あげないわよ!」

 

 「……そのクリスタルは世界に4つ存在し、それを金獅子のシキが狙っている」

 

 「知ってるわ。ブギーからの情報だけどね」

 

 「シキが全てを揃えてしまえば、この世界に未来はない。くれぐれも、奪われないよう注意するんだ」

 

 「それは初耳なんだけど!? え、どうしよう!?」

 

 「すまない、脅かし過ぎたな。簡単に揃う事は無いから安心しろ。()()()()()()()()に至っては、長年 所在不明だからな」

 

 「ちょっと待ちなさいよ!? それって、コレでしょ!?」

  ぐいーん

 「イタタタ! まって、ナミさん!? 首、クビが締まるぅー!」

 

 「……それは!?」

 

 ブギーが寄越したコレ。やっぱり、厄ネタすぎるだろ!?

 

 

 「よーし! アメは全部砕いてやったぞー!! 出航だァ!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー バンジード沖 ー

 

 結局 情報は錯綜したまま、ルフィの号令が掛かってしまった。

 目指すは、先に沖へ出ていたドレークとホーキンスの船。

 真夜中の海もナミさんの腕ならば全く問題はなく、すぐに2隻の船を発見できた。

 

 今はデボラも歌い終わって、コラソンが能力を解除。

 ただ……デボラ自身が眠らないと、歌の能力は解除されないらしい。

 おかげで、甲板には眠ったままの仲間4人と、降魔(ごうま)(そう)状態のホーキンス。

 

 「これだけ離れれば、追いつかれる事もないだろう」

 

 「ねぇ、アンタたち。今更だけど、どうして私達を助けてくれたの?」

 

 「市長の件はおれ達に非がある。巻き込んじまった尻拭いをしたまでだ」

 

 「よく分かんねェけど、ありがとう! お前ら!」

 

 「にっしっし! 気にしないでいいよルフィー!」

 

 「おいデボラ! 元はと言えば、お前が能力の説明をしなかったせいだろっ! おれはオン、オフできるものだとばかり……!」

 

 「もー、怒らないでよドレーク。それに、これからはロシナンテがいるから平気だよ」

 

 普通にロシナンテって呼ばれてるのか。この人も、ドレークの旅に同行するらしい。

 西回りも危険な旅って話だったけど、さっきの能力コンボを見ちゃうとなぁ……。

 そっちの旅、かなりイージーモードなんじゃないか?

 おっと、無事に向こうの船とも接舷できたみたいだ。そろそろ、お別れか。

 

 「あー! ()()()、見張り台に置いてきたままだった!? 降ろさなきゃ」

 

 「待てデボラ。高所にいる人間を、むやみに操ろうとするな! 仕方ない、おれが……」

 

 「ああ、いいよ。みんな疲れてると思うし、オレが連れてくる」

 

 「ちょっとエダ! ケガは!?」

 

 「肩も上がるし、大丈夫そうだ」

 

 よっと。

 下からじゃ見えなかったけど、マストの上の見張り台で寝こけてる幼女を回収っと。

 よく寝てるなぁ。ゾロ達も含めて、いまは全員〝同じ夢の世界〟にいるらしい。

 さらにデボラは、眠った人間を自由に操る事まで可能みたいだ。

 ホーキンスが立ったまま寝てたのも、操られてたせいだろう。

 いまもデボラに操られて、自分の船へと歩かされてる最中だ。

 

 「それじゃ、あとは頼むドレーク」

 

 「……ああ。おれが背負う」

 

 「ふぁ〜、そろそろ眠くなってきちゃった。私もおんぶして、船長(ドレーク)

 

 「おれは、1人背負ってるだろ。頼むのなら……」「おれを見るな、ドレーク」

 

 「やっぱり、自分で歩くよ。ロシナンテはすぐ転ぶからね!」

 

 「……」

 

 「では、麦わら。おれ達ももう行く」

 

 「またね、ルフィー!〝最果て〟で待ってるから!」

 

 「しししし! 負けねェぞ! またな、お前らー!!」

 

 


 

 

 沖合にて別れを告げる、二人の若き船長

 互いに辿る航路は、奇しくも先人のそれと一致する

 片や、400年前に新大陸を発見したノーランドの辿った(みち)

 片や、100年前に嵐の岬を越えたバルトロメオの辿った(みち)

 

 やがて新時代を征く船長たちも、その名を歴史へ刻むこととなる

 一人は、世界一周の偉業を果たすことで

 一人は、世界を揺るがす大事件の中心人物として

 

 そして、その両方に加担しながらも決して歴史に名を刻まない男が一人

 その瞳は、揺れる水面(みなも)を見つめ続ける 〝闇〟が晴れるその時までは───

 

 


 

 

  ー とある国 ー

 

 窓のない薄暗い部屋で、間の抜けた音が木霊する。

 

  プルプルプルプル

 

 「あらァン。出なくていーノゥ?」

 

 「構わんさ。既にエージェントへは、撤退の指示を出してある」

 

 「見捨てられちゃうなんて、ウミットちゃんも可哀想ねい」

 

 「あんな男でも、捜査の目眩しにはなるだろう。最後くらいは〝深層海流〟として役立ってもらわねばな」

 

 「かつての海運王も、その末路は哀れなモノねい。ターゲットのコ、あちしが捕まえてあげましょーかァ?」

 

 「いや、もういい。もはや止まることのない流れだ───〝時代のうねり〟と同様にな」

 

 「? ケド、倉庫の荷物はドゥーするのよーう?」

 

 「案ずるな。まもなく〝隠匿師〟が現地へ到着する頃合いだ」

 

 「まるで、全部見越してたかのようねい。なら当然、次の輸送ルートも確保してるんでしょーう?」

 

 「勿論だとも……時代は〝空〟だよ。()()()()()()()()

 

 艶のある黒髪。妖艶さが垣間見える、切れ長の目。そして、胸には豊満な双丘。

 ミス・ボンクレーと呼ばれた者は、女性としか表しようのない外見をしている。

 だが、彼は男である。

 その見た目は、自身の能力によるモノか。

 はたまた、彼が敬愛する()の能力によるモノか──その真相を知る者は少ない。

 

 

 「そろそろ、君を呼んだ理由を話そう」

 

 「そうよう! ボス直々の呼び出しなんて初めてよーう!? 相変わらず、仮面のせいで顔は見えぬァいケドー! んもう、恥ずかしがり屋さんねーい!!」

 

 「なに、すぐに判るとも」

 

 「ハッ……! ひょっとして、あちし消されちゃうのーう!? ジョーダンじゃ、ないわよーう!!」

 

 「──少しの間、ある男の代わりをしてもらいたい」

 

 「それってぃ、まさかァ!!?」

 

 響き渡る驚愕の声。されど、男は素知らぬ顔で話を進める。

 ロコカイユ(rocaille)の名の如く〝岩〟で囲まれたこの場所へは 〝千里眼〟さえ届かない───

 

 


 

 

  ー メリー号・甲板 ー

 

 甲板で鳴り響くイビキの五重奏(クインテット)

 ゾロ、サンジ、副船長、ブルック。そして、ルフィ。

 あの後すぐに、ルフィだけは普通に寝たんだ。慣れないギア2で疲れたらしい。

 

 難局を乗り越えたとはいえ、まだ夜明け前だ。

 割と夜目の効くオレが、しっかりと海を見張ってないと、な……ふぁ〜ぁ。

 

 「ちょっとエダ。なにずっと物思いにふけって、海を眺めてるのよ?」

 

 「ん? ナミさんか。黄昏てるオレを見て、惚れ直しちゃった?」

 

 「ダッサい眼帯つけて何言ってんのよ!」

 

 「……ダ、ダサい? え、ホントに?」

 

 「ほら、ビビも言ってやって?」

 

 「あはは……」

 

 苦笑い!? もういいよ! こんな眼帯、外してやる!

 狙撃の時だけ、ツルを変形させれば済む話だし!

 そういえばカリファ戦で気付いたけど、服の下にツルを隠しておくのが意外と有効だったよな。

 これからは、予め服の下に……あ!

 

 「ごめん、ビビ! 色々あって、マントを返しそびれてた! 取ってくる!」

 

 「待って! あのマントは、もう必要ないの。よかったら、もらってくれない?」

 

 「え?」

 

 「元々、顔を隠すために渡されたモノなんだけど……もう本名もバレちゃったし」

 

 「なんて言うか、色々とごめん。あと、マントありがとう!」

 

 「ふーん。あんた、ビビのマントまで着るんだ? ロビンの帽子だってずっと被ってるみたいだし?」

 

 「そういうのじゃないぞ、ナミさん!? これは、えーと。実用性だ!」

 

 マントは体を隠せるからな。罠を準備するのに最適なんだ。

 帽子だって、寝癖を隠せたりして便利だろ?

 だから変な対抗意識はヤメテくれ!? どうして、ナミさんのスカートを履かそうとしてくるんだ!?

 

  プルプルプルプル

 

 「もう、困ったからってプルプルしないでよ。さすがにスカートは冗談だってば」

 

 「……オレじゃないぞ?」「え?」

 

 「この音、ラウンジから聞こえてくるわ。ナミさん!」

 

 この特徴的な着信音は、間違いなく電伝虫だよな!?

 てっきり、この世界には存在しないと思ってたのに……居るなぁ。テーブルの上に。

 その隣には置き手紙。

 

  〝おまえにやる

 

 これ書いたの、コラソンだろ!! 『ローのビョーキをなおしてくる』と筆跡が似てる!

 わざわざヒノモト語で書かなくてもいいのに……ん?

 よく見たら、小さな字で番号も書いてあるな。一体、誰の番号なんだ?

 

   ガチャ

 『おーかーきっ!!』

 

 「え!? 喋った!? ど、どうしようエダ?」

 

 「……あられ。オレです」

 

 『悪い知らせだ。倉庫にギバーソンが現れた……おそらく証拠は消されるだろう。既に、港で倒れていた連中も消えておるからな』

 

 「えーと、どうしよう。港の連中は、そのギバーちゃんに殺されたんですか?」

 

 『死んではおらんだろう……いや、ワラワラの対象にされていた何人かは死んだか? とにかく、教会もロコカイユも確保は厳しいという事だ。だが安心しろ、ウミットだけは別件で──』

 

 「ろこかいゆ?」

 

 『ん? 少し待て。どうしたヴィオラ嬢? なんだと!? 電伝虫の相手は〝植物──』

 

 「あ、やべ」ガチャ

 

 相手は、どうやってもセンゴクだよな?

 オレの声真似が上手かったのか、勝手にペラペラと喋ってくれたけど……もうバレてるよなぁ絶対。

 

  ジリリリリリリリ

 

 「おわっ!? また掛かってきた!?」

 

 「出なさいよエダ!」

 

 「もう無理だって、ナミさん! ほら、お年寄りを騙すのは良くないだろ!」

 

 「どの口が言ってんのよ!? それに、放っておいても勝手に喋りだすでしょ! このカタツムリ!」

 

   ガチャ

 『キサマ! なぜ合言葉を知って──』ガチャ

 

 「ふぅー」

 

 「ちょっと!? 切ったって、また掛かって来ちゃうでしょ!?」

 

 そうだった! この電伝虫、なんで勝手に通話するんだよ!?

 どうにか黙らせる術を考えないと……って、一体どうすりゃいいんだ!?

 ──『85巻のSBSによれば、電伝虫は〝しつけ〟次第でマナーモードも覚えるらしいわ』

 

 ナイスだ! ニコ!!

 要は、ペットのしつけと同じってコトだな!

 

  ジリリリリリリリ……

 

 「ほら、葉っぱだぞー? 黙ってくれたら、コレをあげちゃうぞー?」

 

 「鳴り止んだわ」

 

 「よーし、いい子だ。勝手に通話しなければ、何枚でも出してやるからなー」

 

 「ロビンさんの出した葉っぱを食べてる……今更だけど、コレって生き物なの?」

 

 「よく見れば、普通に生息してる大きなカタツムリだわ。変な機械が取り付けてあるケド」

 

 「機械の部分は、副船長が起きたら見てもらおう」

 

 「はぁ〜、寝てる連中が羨ましいわ。こっちは、色んな事が起きすぎて大変だっていうのに!」

 

 まあ、なにはともあれ無事に出航できたんだ。

 ちょうど朝日が昇ってきたし、もうすぐ皆も目を覚ますだろう。

 今後のこともある。いま最優先すべきは───

 

 ビビたちを歓迎する宴だな!! 難しい話なんかは、全部そのあとだ!




 これにて〝偉大なる航路突入編〟と題したバンジードの物語は終了です。
 また、今回で定期更新も一旦ストップとなります。
 3ヶ月近くお付き合いして下さった皆様、ありがとうございました!

 幕間と設定集は、5月上旬に更新予定です。
 その後、書き溜め期間を挟んで、再び定期更新を始めたいと思います。

※ちなみに、ギロギロの実の制限に関しては捏造設定です。
 ・鳥の目を借りるような視点で、自身の半径4,000㎞を俯瞰できる
 ・そのうち40㎞圏内でのみ、あらゆる遮蔽物を無視して覗き込むことができる
 という制限を付けてみました。心を覗く力や、涙で攻撃する力は原作通りです。

 それと、ギア2に関しても公式設定ではありません。
 ルフィは海列車から技の着想を得たのだろうという妄想です。
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