植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

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〝MONSTERS〟

 ー 半年前・セカン島 ー

 

 「お達者でー! 兄貴たちーっ!!」「またいつか、お会いしやしょー!」

 

 「おう! またなー!」

 

 「お二人も、お元気で!!」

 

 なんだかんだで、半年近くも一緒にいた ヨサクさん と ジョニーさんに別れを告げ、ぼく達は帰りの汽車へと乗り込む。

 賞金稼ぎのお二人も、レッドアローズ海賊団から受けた傷が癒え次第〝本業〟へと戻るそうだ。

 ぼくも右肩を弓矢で射抜かれたけれど、温泉のおかげですっかり回復できたんだ。

 きっと、ヨサクさん達の傷もすぐに癒えると信じよう!

 

 さて、舟を停めている港までは汽車でも1時間の道のりだ。

 この時間に、ルフィーさんと次の目的地の相談でも──

 

 「うーん……」

 

 「あれ、ルフィーさん? 汽車に乗るのも、2回目だとつまらないですか?」

 

 「ん? んー……」

                     ゴチン!

 「ルフィーさんが考え事を!? そんなバカなっ……イタっ!! なんで殴るんですか!」

 

 「なんとなくだ! それよりよ、おれ考えたんだ」

 

 ルフィーさん。まさか、この前の戦闘で皆が傷付いた事を気にしてるのかな?

 温泉にいた時は、そんな雰囲気を微塵も感じさせなかったのに……。

 

 

 「この島の下に、でっけェ怪物がいるんだってよ!」

 

 「……はい?」

 

 「温泉にいたオッチャンに聞いたんだ! その怪物が暴れるから、火山が噴火するんだとよ!」

 

 「それって、おとぎ話ですよ。えーと、確か……セカン島はその昔───」

 

 人々を苦しめる悪い巨人を封じる為、女神様が〝島〟を投げつける事で誕生した場所なんだとか。

 あとは、邪悪なドラゴンを懲らしめる為、神様が〝山〟を投げ飛ばした。なんて話もありますね。

 ……どっちにしろ、昔の人が〝火山活動〟にムリヤリ理由を付けたって事ですね。

 

 

 「ドラゴンと戦ってみてェなー」

 

 「さすがに居ないですよ、そんな伝説の怪物」

 

 「わかんねェだろ、火山だって噴火するんだしよ! なあ、冒険のニオイがするだろ!?」

 

 「火山……冒険? あ、それならもっと確実な場所がありますよ!」

 

 数ヶ月前、この近海に現れた〝新たな島〟

 海底火山の噴火で、地面が隆起してきたと言われてますけど

 千年に一度姿を見せる〝ロストアイランド〟ではないか という噂もあるんです。

 竜のような、鳥のような見た事もない生き物も現れたそうですよ?

 どうです? 冒険にはピッタリでしょう!

 

 「幸い、その島はすぐ近くです! 行きましょうよ、ルフィーさん!」

 

 「しっしっし! 竜かー! おもしろそうだな!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー ロストアイランド近海 ー

 

 出港してから、北へ2時間。遠くに〝軍艦〟のような影が見えてきた。

 きっと、あれが軍艦島だ。

 例のロストアイランドは、あの島を取り囲む形で現れたらしい。

 

 「ハラ減ったなァ〜。コビー、メシくれよ!」

 

 「さっきのパンで最後です。あと1時間もしないで着くんだから、我慢して下さいよ」

 

 「ちェー。最近おまえ、キビしくなったなァ」

 

 「ルフィーさんのおかげで、ぼくも強くなったんです!」

 

 「ん……? お、鳥が飛んでんぞ!! 食おーぜ!」

 

 「やめて下さいよ。ゴムゴムのロケットで飛んだら、また前みたいに海へ落ち──」

 

 「──ロケットッ!!」 バシュン

 

 ああ、そうだ。ルフィーさんを止める時は、()()()使()じゃなきゃダメなんだった。

 ヨサクさん達がいる間は、なんだかんだで話し合いが出来てたから……つい忘れてた。

 

 パク!!

 

 あー!! さっそく巨大な鳥に(くわ)えられたぞ!?

 追いかけなきゃマズい! まったく、あの人は! 次は、殴ってでも阻止するぞっ!!

 

 

 「おーい、コビー!」

 

 「わっ!? 鳥に咥えられながら、コッチへ来ないで下さいよー!?」

 

 「大丈夫だ! この鳥、飼い主がいるみてェだから!」

 

 「え? 鳥の背中に、女の子が乗ってる?」

 

 「飼い主じゃなくて、相棒ね。アタシは、アピス! よろしく、コビーくん!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー ロストアイランド ー

 

 あれから たったの10分で、ぼくもロストアイランドへ上陸することが出来た。

 アピスちゃんと、その相棒のピンキーに咥えられたルフィーさんも、とっくに到着してるハズだ。

 近くには見当たらないけど、もう軍艦島へ行ってしまったのかな?

 

 

 「それじゃあ、ここまでありがとうございました! バンチさん!」

 

 「ウィ」

 

 ぼくが こんなに早く着けたのは、この巨大亀──バンチさんのおかげだ。

 こちらは、アピスちゃんの友達らしい。

 彼女のお願いでバンチさんが、メルヘン号を島まで引いてくれたんだ。

 

 アピスちゃんは〝ヒソヒソの実〟の能力者。動物と話す事が出来るらしい。

 その能力で助けてもらえたんだけど、出会って間もないぼくらに警戒心が無さすぎなんじゃないかな?

 ここは教会の勢力も強そうだから、能力者だってバレたら大変なハズだ!

 その辺、ルフィーさんは全く隠す気がないから困るんだよなぁ……。

 

 

 「お? なんだ(あん)ちゃん。こんな辺鄙な島で散歩かィ?」

 

 「あ、こんにちは。この島の人ですか?」

 

 「軍艦島はともかく、ここにゃ誰も住んでねェよ。なにしろ一面、岩場()()()からな!」

 

 「岩場? 確かに所々(ところどころ)ゴツゴツしてますけど、全体的には草原という印象ですよ?」

 

 「今はな。だが数ヶ月前まで、ここには草木が一本も生えてなかったんだぜ?」

 

 あ、そうだった。ここは、海底から隆起してきた大地。

 何故か今は草原が広がっているけど、当初は草木が生えてる訳ないんだ!

 考えてみれば、火山活動で生まれた島にこんなにも早く植物が根づくのは異常だ。

 草花の種は、風や鳥によって運ばれたとしても、それが育つ土壌がない筈。

 

 「一体どうして、こんな緑豊かに……?」

 

 「〝パイロブロイン〟

 

 「え?」

 

 「海楼石に含まれる、角質の粒子の事だ。そいつが、植物の成長に影響を与えてるんじゃねェかとおれは(にら)んでる」

 

 「なるほど……植物学者の方でしたか!」

 

 「んなワケねェだろ。どう見ても、おれァ──」

 

 

 「あー! やっと見つけた、コビーくん!! あと、カイリキー!」

 

 「カイリキー?」

 

 「あだ名みてェなモンだ、気にすんな。さて、とォ!!」ボゴン!

 

 「えぇ!? が、岩盤をくり抜いたァー!?」

 

 なんなんだ、この人!? 地面に指を入れて、両手で抱えられる位のサイズに岩盤をくり抜いたぞ!?

 やっぱり植物学者には、怪力が必要なんだろうか?

 かのノーランドも、相当なチカラ持ちだったと云われているし!

 

 「ちょっとカイリキー! そんな力技使ったら台無しでしょ! せっかく、メガネのお陰で学者っぽく見えてるのにー!」

 

 「うるせェな。サンプルは必要だろ? それとな、メガネ一つで学者になれりゃ世話ねェよ」

 

 「サンプル?」

 

 「ここでの調査は済んだ。あとは帰ってから、コイツを詳しく調べる予定だ」

 

 「あ、もう帰るの? ピンキーに送らせるね!」

 

 「そいつは助かるんだが……帰りは、背中に乗せちゃくれねェか?」

 

 「ムリ! ピンキーは女の子しか乗せないの♪」

 

 カイリキーと呼ばれた人は、巨大な鳥に咥えられながら大空へと消えていった。

 空を飛んでの移動は羨ましいケド……あの方法は、ちょっと遠慮したいなぁ。

 あ、そういえば───

 

 「ルフィーさんは一緒じゃないんですか?」

 

 「あはは。リュウ(じい)のとこに居るよ? 仲良くなったみたい!」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー 軍艦島・洞穴付近 ー

 

 地続きになってる軍艦島まで移動して、島の中央にある山の中腹。

 そこには、洞穴の入り口が見える。

 

 「ごめんねー、ピンキーがいれば山登りしないで済んだのに」

 

 「いえ、ぼくの方こそ。背中の乗り心地は大丈夫ですか? アピスちゃん」

 

 「子供扱いしないで!」

 

 「う、じゃあ……アピス、さん」

 

 「うんうん。乗り心地もいいよ、コビーくん! よーし、じゃあ〝(ソル)〟で一気に登っちゃって!」

 

 「ソル?」

 

 「あ。その見た目だけど、まだ使えないのね……」

 

 なんだか、ガッカリさせてしまった!?

 

─────────

──────

───

 

 ー 洞穴 ー

 

 「しししし、コビー! こっち来てみろよ!」

 

 「……!!? こ、これがリュウ爺!? 本物の竜……!?」

 

 なんて迫力だ! 悠然とした佇まいで、体長も10メートルはある……!

 身体は鱗じゃなくて羽毛で覆われているけど、あの大きな牙は爬虫類の特徴だ!

 超スズメや、超カルガモの〝歯〟とは全く違う、鋭い牙だ!

 つまり……目の前にいる生き物は〝鳥〟じゃなくて、やっぱり〝竜〟なんだァ!!

 

 

 「すごいですよ! わァ! カッコいいなァ、リュウ爺!!」

 

 「違うよコビーくん。そっちは、りゅーのすけ。リュウ爺は、ルフィの側にいる子だよ?」

 

 「え、まだ他にも竜が!? って、そっちの竜は()()じゃないですか!? 全然、爺じゃない」

 

 「リュウ爺はよ、生まれ変わったみてェだ。爺さんだった時から、アピスと友達だって言ってたぞ」

 

 「すごいルフィ! ホントに、リュウ爺の言葉が分かるのね」

   オォーン……!

 「アピスの爺ちゃんが作った、豚まんが食いたいって言ってんぞ!」

 

 「そんな詳しく聞き取れるの!?」

   オォォォン!

 「へー〝リュウ爺〟ってのは、あだ名なのか! ホントの名前は……」

 

 「わー!? もう! 私の能力が霞んじゃうから、ソレ以上やめてー!!」

 

 相変わらず無茶苦茶だなぁ、ルフィーさんは。

 けれどアピスちゃんも、困ってる様でいてどこか嬉しそうだ。

 

 それから少しして、アピスちゃんが詳しい経緯を教えてくれた───

 数ヶ月前、リュウ爺は〝ネルソン提督〟の海軍船に襲われて一度死んでしまったらしい。

 けれどその時、竜の群れが現れると同時に〝ロストアイランド〟が浮上してきた。

 

 ロストアイランドは、千年竜──リュウ爺と同じ種族が一同に集う伝説の島。

 そして、千年に一度だけ姿を現すその島へ 竜たちが集えるのにも理由(ワケ)があった。

 仲間へ〝座標〟を伝える役割を持つ竜だけが、千年もの間ずっとその島の近辺に残るそうだ。

 ぼくが最初に見た巨大な竜が、その役目を持つ りゅーのすけ。そしてリュウ爺は、その前任()

 

 

 「もう他の竜たちは、旅立っちゃったの」

 

 「千年かァ。気の長ェ話だなー、次に竜たちが来るまで おれ生きてっかな?」

 

 「そこは、死んどきましょうよ! 人としてっ!」

 

 「あはは……。でも、島がある内に来られてラッキーだったと思うよ?」

 

 「もしかして、もうすぐ沈んでしまうんですか!?」

 

 「うん。あと半年くらいで、また沈んじゃうみたい。りゅーのすけ が教えてくれたんだ!」

 

 この竜は、これから千年間も仲間を待ち続けるのかぁ。

 〝渡り〟の習性がある千年竜は、世界の何処か──あるいは、この世界とは別の何処かを飛び続けるらしい。

 そして、千年経った時。再び、この地へ訪れて……また新たな生命が誕生する。

 

 参ったなぁ。

 スケールが大きすぎて、頭が追いつかないや。

 

─────────

──────

───

 

 

 「千年竜に関しては、このくらいかな! 他に、何か聞きたいことある?」

 

 「あ、そういえば。前に襲ってきた海軍は、結局どうなったんですか?」

 

 「大きな戦艦だったけど、バンチが頑張って追い払ってくれたの!」

 

 「やるなー、亀! そういや、あの鳥も強そうだったよな!」

 

 「亀、鳥、竜……なんだか、おとぎ話みたいですね。ひょっとして、虎までいたり?」

 

 「うん。でも、虎のバイガオは留守なんだ。悪いネズミを見張ってるの!」

 

 「ネズミ〜? そんなの、虎なら喰っちまうだろ?」

 

 「あはは。さすがに、悪さをする前に食べちゃったら可哀想だよ」

 

 なんだか不思議な子だなぁ。

 人間とも、動物とも分け隔てなく接する。そんな印象の子だ。

 明るく笑って、周りまで笑顔にする所は───どこか、ルフィーさんとも似ている気がする。

 

 「えぇー!! ウソ!? また、ネルソンが!?」

 

 「どうしたんだ、アピス?」

 

 「動物が教えてくれたんだけど、海軍の艦隊が島の沖に現れたみたい!」

 

 「海軍……。さっき聞きそびれたんですが、なぜ海軍が千年竜を狙うんですか?」

 

 「ネルソンは、千年竜の骨に〝不老不死〟の効果があるって信じてるの。馬鹿げてるでしょ?」

 

 「そんな理由で軍を動かしてるんですか!? やっぱり、海軍に〝正義〟なんて無いんだ……っ!!」

 

 「あ、違うの! 誤解しないで、コビーくん。あれは、ネルソンの独断だから───」

 

 アピスちゃんが言うには、この周辺海域を管轄する海軍 第8支部はネルソンという男に私物化されてしまったそうだ。

 その男の独断で軍を動かし、いくつかの島から財宝を奪い取ったりもしているらしい。

 まただ。この一年で、海軍の嫌な所を散々見てきた。

 モーガン大佐、ミンチー軍曹、ビリッチ准将……全員、私利私欲で権力を悪用していたんだ。

 

 こんな海軍なら、もういっそ……!

 

 

 「ルフィーさん! ぼく、決めました! ピースメインとして、海軍と──」

 

 「あ! もう解決したみたい! バンチが仲間を呼んで、全部 沈めたって!!」

 

 「え……全部? 艦隊を?」

 

 「おぉー!! ホントにすげェな、あの亀!!」

 

 ぼくが〝ピースメイン〟になろうと決意した瞬間。もう、全てが解決してたようだ……。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ー ロストアイランド・上空 ー

 

 りゅーのすけ に乗せてもらって、ぼく達3人は空を移動中。

 ピンキーと違って、この竜は選り好みしないみたいだ。おかげで、空を満喫できるぞ!

 島の沖には、軍艦の残骸がまだ浮かんでいる。

 大勢の海兵達が、小舟で逃げ出してる姿も見える。

 一際大きなボートに乗った、海兵と思えないような体型をした巨漢がネルソンらしい。

 

 「あはは。ネルソンの重さで、ボートが全然進んでない!」

 

 「仮にも〝提督〟を名乗ってるのに、あんな贅肉のカタマリだなんて……」

 

 「コビーだって、一年前はぜい肉ダルンダルンだったぞ?」

 

 「あそこまで酷くなかったでしょ!? あれじゃ、まるで──」

 

 ──「そう、まるで〝トド〟のようだろう?」

 

 「んなッ! 誰だ、コイツ!?」「ここ空中ですよ!?」

 

 「え!? あぶない! 避けて、りゅーのすけ──」

 

 カマカマの……〝カマイタチ〟!ザシュ!!

 

 突然、りゅーのすけ の羽が片方傷ついた!? バランスが崩れて上手く飛べないでいる!

 マズい、このまま落下したら地面に衝突するぞ!?

 

 「ゴムゴムの〝風船〟!!

 

 「たすかった〜! ありがとう、ルフィ!」

 

 「ルフィーさんのお陰で衝撃は和らいだけれど……りゅーのすけは!?」

   オォーン!

 「うん、うん……そっか。羽が傷ついて上手く飛べないけど、怪我は大したことないって!」

 

 「あんにゃろ、いきなり襲ってきやがって!」

 

 ぼく達を襲ってきた男は、空からゆっくりと降りてきた。

 達人の中には空を飛んだり、斬撃を飛ばしたり出来る人もいるらしいけど……

 あの男は、おそらく能力で飛んでるハズだ。

 さっき〝カマカマの〟って言っていたし、きっと〝カマカマの実〟の能力者だ!

 

 「落下の衝撃で死ななかったか。キサマも能力者だな?」

 

 「おれは、ルフィー! 海賊で、ゴム人間だ!!」

 

 「そうか。おれは旋風(つむじかぜ)のエリック〟傭兵だ。そこの千年竜に用がある」

 

 「りゅーのすけ、おれが代わりにアイツぶっ飛ばすぞ?」

   オォーン!

 「戦うつもりか? 打撃は無効のようだが、斬撃ならば効くのだろう?」

 

 「ああ!」

 

 どうして素直にバラしちゃうんだろう、あの人は……まあ、敵にも言えることだけど。

 なんの能力かは勿論だけど、能力者だってこと自体も極力隠した方がいいのに。

 

 

 「ねぇ!! カマカマの人!」

 

 「どうした、小娘。命乞いか?」

 

 「一応、確認!〝カマカマの実〟って、超人系(パラミシア)でしょ?」

 

 「ほう! よく、おれの能力が分かったな。そうだ、分類で言えば超人系。だが風を操る能力は、もはや自然系(ロギア)と同等の──」

 

 「じゃあ、あなたミンク族ね!!」

 

 「なんだと……?」

 

 「だって、あなたの()。さっきからダダ漏れだし。アタシ、動物の心が分かるの!」

 

 動物って、ミンク族まで含まれてるんだ!?

 しかも、考えてる事まで判るのだとしたら……アピスちゃんの能力って、実はスゴイのでは?

 

 「どういう勘違いだ、小娘! このおれの何処が、ミンク族に見える!?」

 

 「確かに……。アピスさん、やっぱり勘違いでは?」

 

 「ううん。ちゃんと聞こえるの!〝絶対、不老不死になってやる〟って声が!」

 

 「何故それを……そうか、なるほど! 小娘だと侮っていたが、大した推理力の持ち主のようだ」

 

 不老不死に関しては、千年竜を狙うんだから目的を推測できなくもない。

 けれど、アピスちゃんは能力で心の声を聞いたんだろう。彼女が嘘をつく理由がないのだから。

 

 でもそうなると、やっぱりエリックの外見に疑問が残る。

 ミンク族って確か、動物に似た姿で全身に体毛が──

 

 「そっか! きっと、猿のミンク! 体毛は、毎日剃ってるのね!!」

 

 「なにィー!? あいつ、サルなのか?」

 

 「そういう事だったのか! アピスさん、推理力もスゴイですよ!!」

 

 「えへへ」

 

 「何が推理だ……いい加減にしろ、キサマら……」

 

 「「「?」」」

 

 「初めてだ! ここまで、おれをコケにした馬鹿共はなァ!!」

   ヒュ──ンッ!!

 

 突風!?

 違う! 地面が()()()る! 見えないけど、カマイタチが向かって来てるんだ!

 ぼく達はともかく、このままじゃアピスちゃんまで!

 ダメだ……もう間に合わないっ!!

 

 「ぐ……!」「なんだ!? イテ〜!」

 

 「チッ、距離があり過ぎて威力が弱まったか。おれとした事が、冷静さを欠いてしまった」

 

 「アピスちゃん! 大丈夫ですか!?」

 

 「もう! ヒドイ事するなぁ! おかげで、服が台無しよっ!」

 

 「服だけ!? ぼく達は、傷だらけなのに……?」

 

 「あ。アイタタタタ! 全身がイタイ〜。助けて、コビーくん!」

 

 「うーん? どこも斬れて無いようですけど」

 

 「ちょっと! 女の子の肌をジロジロ見ないで!?」

 

 えー!? 理不尽だなぁ。

 けれど、無事みたいで良かった。

 さっきは場の空気に流されちゃったけど。相手が能力者な以上、油断しちゃダメなんだ。

 ルフィーさんは、もう完全に闘う気だ。ぼくも、しっかりしないと!

 

 「コビー! りゅーのすけ とアピスは任せるぞ!」

 

 「はい! 敵の攻撃は〝風の(やいば)です! 目に見えないから気を付けて下さい!」

 

 「おう!」

 

 いい返事をしたルフィーさんは、()()()()敵に突っ込んで行った。

 カマイタチで全身を切り刻まれながらも、確実に敵へ接近している。

 これは、ぼくの忠告は要らなかったかな。

 

 「ぐ!? コイツ、なぜ(ひる)まない!?」

 

 「こんなモンじゃ、おれは止まらねェ!!」

 

 ルフィーさんが敵と定めた以上、あんな攻撃じゃ止められないんだ。

 あの人の、鍛え抜いた丈夫な身体。そして、その身体よりもさらに強い〝信念〟

 たとえどんな攻撃だろうと〝友達〟(りゅーのすけ)を傷つけたエリックを倒すまで───あの人は止まらない!!

 

 「ゴムゴムの〜〝バズーカ〟ッ!!!」

 

ドン!!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 「すごーい! ルフィ!! 敵を空に吹っ飛ばしちゃった!」

 

 「しっしっし!」

 

 「無茶しすぎですよ。こんなに血だらけになって、もう!」

 

 「そうそう。もっと強いバズーカでも良かったのに!灰熊銃(グリズリー・マグナム)なら、カマイタチごと吹き飛ばせたでしょ?」

 

 「ぐり? なに言ってんだ、アピス?」

 

 「!? あはは、なんでもなーい! アタシの家で手当てするよ。軍艦島に戻ろう!」

 

 「まだだァ! この、程度で……〝不老不死〟を諦められるモノかァ!!」

 

 エリックが空から戻って来た!?

 さっきのダメージはあるようだけど……細身の割に、かなりタフみたいだ。

 

 「そうだったー!? エリックが、何故か()()()の忘れてた!」

 

 「ふざけた小娘だ。だが、キサマのおかげで(ようや)く理解する事が出来た!!」

 

 「え? えぇー!? どうしよう、マズいかも!?」

 

 「なんで あわててんだ、アピス?」

 

 「心でも読んだか? まあいい。その能力が、()()()()()だという事実こそが答えだったのだ!」

  ビリッ!

 「なんだ、あいつ!? 羽が生えたぞ!?」

 

 「それだけじゃないですよ!? 見た目も、動物みたいな姿に!?」

 

 あっという間に、エリックは翼の生えた大きな虎に変身してしまった。

 あの姿……動物(ゾオン)系の能力者だったのか!?

 けれど、あの虎は普通の動物じゃない。

 あんな、お伽話にしか出てこないような動物に変身する〝悪魔の実〟は確か──

 

 「動物(ゾオン)系……幻獣種!?」

 

 「そうだとも小僧! どうやら、おれが食ったのは〝カマカマの実〟ではなかったらしい!!」

 

 「〝ネコネコの実 幻獣種 モデル:窮奇(カマイタチ)?」

 

 「でもよォ、アピス? ネコでもイタチでもねーし、サルでもねェ! あれは虎だろ!」

 

 「アタシだって詳しく知らないよ!? エリックの心がそう言ってるの!」

 

 

 ぼくは、少しだけ聞いた事がある。

 ヒノモトの妖怪 鎌鼬(かまいたち)。その源流は、花ノ国(かのくに)の霊獣〝窮奇(きゅうき)

 一説では風を操るチカラを持ち、その姿は翼の生えた虎だという。

 

 「さあ! 新たなチカラを試すいい機会だ……すぐに死んでくれるなよ?」

 

 「ルフィーさんは血を流しすぎてる! ここは、ぼくが!」

 

 「能力者でもない小僧が、おれと戦うだと? ナメるなァ!!」バサッ! バサッ!

 

 「な、空中からの攻撃!?」

 

 「今のおれは、飛びながらでも〝カマイタチ〟を起こせる。キサマでは、どうする事も出来まい!」

 

 「ぐっ……!」

 

 空を飛ぶ敵が、こんなにも厄介だなんて!?

 カマイタチの威力も、さっきより数段上がっている!

 せめて大きな岩でもあれば、投げ飛ばして攻撃できるのに……!

 

 「おれに任せろ、コビー! ゴムゴムのバズーカで撃ち落としてやる!」

 

 「ダメですよ、ルフィーさん! 今のボロボロな状態じゃ、腕が保たない!!」

 

 「んなモン! やってみなくちゃ、分かんねェだろ!」「けれど!!」

 

 「もう! ケンカしないで2人とも。空を飛ぶ相手には、適任が居るでしょ?」

   ドン!

 「ぐおォッ!? なんだ!?」

  

 「「リュウ爺!!」」

 

 背後からリュウ爺の突進を受けて、エリックの翼が片方 傷付いた!

 バランスを崩して上手く飛べない様だ。あの状況は、まるでさっきの──

 

 「りゅーのすけを傷付けた、その仕返しだって!」

 

 「地面に落ちそうです! あとは、ぼくが!」

 

 「待ってコビーくん。幻獣種は、すごくタフなんだよ? みんなで戦おう!」

 

 「えぇ!? けれど、敵は1人なんだし……」

 

 「あのね。大きな虎を退治する時は、3人がかりでもいいんだよ? ね、ルフィ!」

 

 「しっしっし! そうだな!!」

   オォーン?

 「ごめん! リュウ爺も居るから4人だったね!」

 

 「よし! いくぞ、コビー! アピス! 龍神丸ーッ!!オォォーッ!!

 

 えっ……りゅうじんまる?

 あ、リュウ爺の本当の名前か。急に知らない名前を叫ぶからビックリしたァ。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 作戦と呼べる程のものじゃないけれど、やる事は決まった。

 ぼく達がエリックの気を引いて、ルフィーさんが強力な一撃で倒す。

 ……あれ? そう言えば、なぜかアピスちゃんまで戦う流れになってるぞ!?

 

 

 「アピスちゃん! 無茶しないで! 敵の注意は、ぼくが引くから!」

 

 「敵が強くなっちゃったのは、アタシのせいだし。がんばる!」

 

 「危ないって、アピスちゃん!!」

 

 「もう! アピス()()。でしょ?」

 

 「そんなコト言ってる場合じゃ!?」

 

 「大丈夫! 山登りとかで鍛えてるから!」

 

 そう言って、カマイタチを難なく避けるアピスちゃん。

 見えない攻撃を、どうして簡単に避けられるんだろう……。

 あ! そうか、アピスちゃんはエリックの考えてる事が分かるんだ!

 情けないけど、彼女の後ろを着いていけば風の刃に邪魔されず敵に肉薄できる!

 

 「チッ、小娘め! ええい! オマエも邪魔だ、チビ千年竜ッ!!」

   オォ!?

 「リュウ爺! このォッ!!」

 

 「ぐゥ!? ただの小僧と思ったが、それなりに戦えるのか……ッ!」

 

 「コビーくん武装色が使えるの!? ルフィは灰熊銃(グリズリー・マグナム)知らないのに──きゃ!?」

 

 「ふ、ふはは! 油断したな小娘!!」

 

 「アピスちゃん!?」

 

 「動くなよ、キサマら。動けば、この小娘の胴体を食いちぎるぞ!」

 

 卑怯なマネを!

 アピスちゃんを咥えられた状況じゃ、ぼくとリュウ爺は動けない!

 ルフィーさんは……!? ダメだ、あの位置からじゃ攻撃が届く前にエリックに気付かれる!

 

 

 「うーん。〝虎〟はもう居るんだけど……ま、いっか」

 

 「何を言っている? こむす、め───」

 

 「!? アピスちゃんを放した! 今です、ルフィーさん!!」

 

 ゴムゴム……()()()()のォォォォ!〝バズーカ〟ッ!!!

 

ドゴン!!

 

 限界まで伸ばした腕で放たれたバズーカは、さっきとはケタ違いな威力だ!

 エリックは気絶でもしたのか、何も出来ずに遠くの空まで飛んでいった。

 かなり際どかったけれど……今度こそ、ぼくらの勝ちだ!!

 

 

──────────────────────────────

────────────────────

──────────

 

 

 

 「ルフィーさん! ぼくらは、ここで別れてしまうけど……ずっと、友達ですよね!?」

 

 「ああ! 一緒に航海を共にした、大事な友達だ!!」

 

 まさか、こんな突然の別れになるなんて思わなかった。

 エリックを倒した直後に現れた海軍本部の軍艦。彼らによって、ネルソンは捕縛された。

 

 第8支部には、大規模な査察が入り

 周辺海域に出た被害も、全て海軍が補償するらしい。

 密かに本部へ連絡を取っていた、リッパー中佐が教えてくれた情報だ。

 

 中佐は、モーガンの後任が決まった後、第8支部への転属となりネルソンの部下になったそうだ。

 つくづく上官に恵まれない方だと思う。

 そして、そんな中佐の要請で本部からやって来た部隊というのが───

 

 

 「別れは済んだか、コビー」

 

 「はい! ラパヌイ……少将!」

 

 「水臭い呼び方をするな! 前のように、ラパヌイ()()で構わんぞ?」

 

 「なんだ、あの新兵?」「少将殿に馴れ馴れしくないか?」

 

 「わー!? 誤解です!!」

 

 虹の霧で出会った〝パンプキン海賊団〟のラパヌイくんが、まさか海軍本部の少将になって……

 いや、それよりも! あの時より、50歳も年を取ってるなんて!

 あの虹、やっぱり危険な場所だったんだ!?

 出口を間違えてたら、ぼく達まで50年前の世界に行ってたかもしれない。

 ホントに、ルフィーさんとの旅は不思議な事でいっぱいだったんだなぁ───

 

 

 「また会おうなー!! コビー! アピスー! りゅーのすけ! 龍神丸ー!あと、ラパヌイ

 

 「ええ! いつか、また!!」「またねー! ルフィをお願い、バンチ!」ウィ

 

 オォー!
  
 オォー!
     

 「おれは、ついでかッ!」

 

 「少将! あれは海賊旗です!」「あんなに沢山!?」

 

 「あー、かまわん! 奴は〝ピースメイン〟だ。手を出すなよ?」

 

 ルフィーさんは、バンチさんに船を引かれて〝黒海〟を目指す。

 千年竜たちは、島に残ってこの地を守る。

 そして海軍本部へ向かう、ぼくと……アピスちゃん。なぜ?

 

 「あの! どうして、アピスちゃんまで!?」

 

 「あはは。えーと、なりゆきかな?」

 

 「ほら! 村にお爺さんが居るんでしょう!? お別れもしないで旅立ったらダメですよ!」

 

 「あー、ボクデン爺ちゃんは話が長いからいいの!……もうとっくに家出済みだし

 

 ──「おい! 早く来い、新入り2人! 雑用は幾らでもあるぞ!」

 

 「は、はいっ!!」「はーい!」

 

 そうだった! 他人の心配をしてる余裕もないんだ。

 まだ見習い扱いだけど、ここから頑張るぞ!

 ルフィーさんのおかげで、身体だけは強くなれたんだ!!

 ラパヌイくんの推薦で、本部の訓練場にも行けるみたいだし。

 

 次にルフィーさんと会う日まで、鍛えて、鍛えて。とにかく鍛えて!

 

 そして、いつか───海軍大将に、ぼくはなる!!

 

 


 

 

 ー 現在、メリー号にて ー

 

 軍艦島の話。ルフィーが詳しく話すのは、初めてね。

 ロストアイランドと第8支部の顛末は、私もM・Gの頃に聞いた事あるけど……。

 千年竜。動物と話せるアピスって子。それと、幻獣種:カマイタチの能力者ねぇ。

 

 

 「へェー、幻獣種なんてホントにいるんだなァ。ワシは見たことねェよ!」

 

 「あの、副船長! オレ! 幻獣種:ドリアード!!」

 

 「いまいちピンと来ねェんだよな、それ」

 

 「そりゃそうだウソップ。ドリアードって言えば、普通は美女だぜ!? なんで男なんだよ!」

 

 「もう! ()()()さん? ロビンさんにも事情があるのよ?」

 

 「ナルトって呼んでくれ、ビビちゃん!」「オレも、ロビンじゃないんだビビ!」

 

 またやってる。ホント、仲良いわねコイツら。

 そう言えばルフィーも、コビーとは気が合う仲で1年も一緒にいたらしいけど

 思ってたより別れは突然だったのね。

 でも、それから半年経って私と出会ったのよね?

 

 「ねぇ、ルフィー。大きな亀で移動して、それから半年間は何してたの?」

 

 「亀は〝女ヶ島〟まで運んでくれたんだけどよ。その後は知らねェんだ」

 

 「あのねぇ、亀がどうなったかじゃなくてアンタの話を──」

 

 「「女ヶ島!?」」

 

 「なんだよ、ナルト!? ブルックも!」

 

 「てめェ、ルフィー! なんて羨ましい所へ……!」「全男子が憧れる、夢の島ですよ!?」

 

 もう! スケベ2人のせいで、話が変な方へ行っちゃったわ。

 まあ、今はビビの歓迎会なんだし。ルフィーの話は、また今度でいっか。

 操船技術を一通り習熟してるビビは〝甲板長〟に決まったことだし、

 これからの航海を考えると、頼もしい存在ね!

 

 

 「え!? Mr.ブシドーって呼ばないのか!?」

 

 「この人は、ゾロさんでしょ?」

 

 「勝手に変なあだ名付けんじゃねェよ、エダ」

 

 「ちゃんと、全員覚えてるわ! ロビンさん。ルフィさん。ナミさん。ウソップさん。サンジさん」

 

 「オレは!?」

 

 「まあ、ロビンとエダは一緒みてェなモンか」

 

 「そう言えなくもないケド! そこは分けてくれよ!?」

 

 「あのー……私も呼ばれてないんですケドー!?」

 

 「あ、ごめんなさい! ミスター・サタン!!」

 

 「ヨホ!?」「その呼び方はダメだ!? ビビ!」

 

 あー、確かにブルックの見た目は〝悪魔王〟ってカンジよね。

 エダはなに焦ってるのかしら? アフロなんだから、余計にマズいってどういう意味よ?

 まあいいわ。エダが意味不明な事を言うのにも慣れたしね。

 何かあっても、ロビンが付いてれば大丈夫でしょう!

 私が目を光らせてなきゃいけないのは、むしろ───

 

 「なァ、ナルト! 肉が足りねェぞ! もっと作ってくれよー!」

 

 「あァ? 今日の分はもうねェよ」

 

 「なにィー!? おれはまだ食い足りねェぞ!?」

 

 「食いたけりゃ、てめェで獲物を仕留めて来い。そうすりゃ、なんでも料理してやるぜ?」

 

 「よーし! 海王類でもなんでも、かかってこーい!!」

 

 「馬鹿言わないで! そういうのと遭遇しないよう、比較的 安全な航路を通ってるのよ?」

 

 「ナミさんを困らせんじゃねェ、ルフィー! 魚でも釣りゃいーだろ?」

 

 「じー……」 ジュルリ

 

 「クエー!?」

 

 「ちょっと!? なにカルーを見てヨダレ垂らしてんのよ!」

 

 「お! 飛んでる鳥もいるぞ! あれなら、いいだろ!」

 

 まったく! コイツは、どこまで冗談なんだか……!

 それに さっきの話じゃ、大きな鳥を食べようとして逆に食べられかけたんでしょ?

 飼い主の子がいたから良かったものの──

 巨大な鳥に乗る女の子、か。

 ビビもカルーに乗ってるし、そういう子って意外と居るのかしら?

 

 「ゴムゴムの〜……」

 

 「ルフィ、待った! オレが狙撃する──あ」 バシュン!

 

 「おい、エダ!? 外すなよォ! 逃げちまったじゃねェか!?」

 

 「ごめん!」

 

 「なんだなんだ。もう一度、ワシが狙撃の心得を教えなきゃダメか?」

 

 あら珍しい。エダが狙撃を外すなんて、初めてじゃない?

 慌てて逃げてく鳥が見えるわ。あれ? あの鳥……帽子をかぶって、カバンを身につけ───

 

「ちょっと!? あれ、ニュース・クーじゃないっ! 何してんのよ、ばかーっ!!」

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