うーん、島の水溜まりで確認した時は
島でウサギを追いかけてた頃、トムとジェリーみたいに腕を前に伸ばしたまま前傾姿勢で走ってたから背骨が曲がったのかもしれない。ウサギめ。
──オレは今、服屋へと連れて来られ鏡の前に立っている。
「意外と似合ってるじゃない。これで少なくとも変質者には見えなくなったわね」
服を選んでくれたナミさんが褒めてくれた。褒めてるんだよな?
今着ている服は、上から《白の襟付きシャツ》《赤い腰巻》《茶色のズボン》《黒のサンダル》だ。
これにオレがもともと着てた黒いマントと、ルフィの麦わらを借りればシャンクスのコスプレ完成です。
いやいや、街にいてもおかしくない服を選んでくれるんじゃかったのか? なんでこんなザ•海賊なコーディネートになってるんだ?
「じゃあ、コレと似た感じのやつ色違いであと二つちょうだい」
あ、コレで決定なんですね。しかも着替えのカラバリまで用意されてしまった。
「ずいぶん甘ぇじゃねーか」
バンダナを物色してたゾロが戻ってきた。
ちなみにオレのバンダナはみすぼらしいからと捨てられた。ヒドイ。
「しょうがないでしょ。あの格好じゃ完全に不審者よ。それにお金は貸しだから! ちゃんと働いて返しなさいよ」
なんとなくニュアンスで金を借りたんだと理解できた。きっと利子3倍ねと言っているんだ。
マズいぞ、返せるアテが無いな。働くにしても言葉がまだ完全じゃないし。何か売るにしても今の所持品はマントと模造刀くらいだ。
マントは丁寧に編み込んで作ったからか捨てられずに済んだ。染色までしたこだわりの一品だから助かった。
模造刀もパッと見だと立派に見えるからか無事だった。けど、中身は空洞だから一発でダメになるんだよなぁ。
そうだ! 島での経験を活かしてモノを作って売ればいいのか。ハサミでも有れば服づくりに再挑戦もしてみたい。
何しろ材料費0ベリーだ。さて何から作ろうかなぁ。
「うん、まぁこんなもんね。さ、次のお店に行くわよ」
売れそうなモノを色々と考えているとナミさんの買い物も終わったみたいだ。ローグタウンの時みたいなファッションショーはなく、普通にラフな服を何着か買い足したみたいだ。
「次はどこ行くんだナミ」
「うーん、食料は荷物になるから出航前でいいし今は本屋さんね」
「本屋ぁ? なんでそんなとこに」
「情報は大事よ。有名な探検家は冒険譚が出版されたりするし、これからの航海に役立つかもしれないでしょ?」
「そんなもんかねぇ。おれは、字を読んでんと眠くなるんだが」
「じゃあアンタは絵本でも見てなさい」
「ふざけんな! 子供じゃねーぞおれは」
うぅ話に入れない。コレが世に聞く、グループ会話苦手って現象なのか? 前世じゃおしゃべりな方だっただけにウズウズする。
「へぇ〝悪魔の実シリーズ〟の図鑑なんてあんのか」
「図鑑ならアンタでも興味を持つのね」
本屋には様々な本が置いてあった。いやコレ凄いな普通に
たしか中世って聖書くらいしか印刷されてないんじゃなかったっけ? まあ、ホントの中世じゃないと思うけど。
そういえばモルガンズの出てくるシーンで、印刷機からバンバン新聞が刷られてたな。オレが死ぬ少し前の話だから鮮明に思い出せる。
てっきり手書きの本しか無いと思って期待してなかったけど、これならあるんじゃないか
「ナミさん! コレ!コレ!」
割と簡単に見つけられて、興奮したままナミさんに買って買ってする。
「なによ、辞書? アンタがほしいの?」
「オレ、コレでコトバおぼえる!」
「買ってあげるから落ち着きなさい。またカタコトに戻ってるわよ」
「アリガトウ!アリガトウ!」
コレさえあれば天下無敵! 歩きながらさっそく、買ってもらった辞書で勉強するか! 荷物は能力で出した背負いカゴに入れたから、気分は〝二宮金次郎〟だ。
あ。あの像は歩きスマホを助長させるとかで取り壊されたんだっけ。受け継がれ
まあそんなことより今は辞書だ! 革の装丁がクタクタになるまで読み込んでこんやるぞ!
フムフム。
ん?
アレ? やっちまった?
英単語の意味を
うおおおぉ! ウルトラミス!
外国人に国語辞典渡して、コレで日本語覚えてね! って言ってるようなもんじゃないか!
……オレが欲しかったのは
「あ! 早速勉強してるのね。それ結構したんだから大事にしなさいよ」
マズい。笑顔のナミさんに、コレやっぱいらねェ なんて言えない。
「ナミさん! 先に、行ってて、くれ!」
「え? ちょっとどこ行くのよ!」
この世界にクーリングオフなんてあるのか分からないけど、急いで本屋に戻らなければ!
身振り手振りを交え本屋と交渉し、子供向けの
マネーマネーと言っても金を返してくれなかったし、英和辞書なんてものも置いてなかったから苦肉の策だ。
基本的なことしか載ってないのか それ程厚くはないけど、忘れてる単語も多いから役に立つだろう。
今度こそ何か調べてみるか。
お! 木の絵を発見。tree branch ツリーにブランチ?〝枝〟ってブランチって言うのか。
エダよりブランチのが格好いいな! 王様みたいで。
戻ったらさっそく改名していいか交渉してみよう。
──あれ? どこに行けばいいんだ?
あー!! 次にどこ行くのか聞かないで、勝手に一人になっちゃたよ! どうせ聞いても分かんないし着いてけばいいやって思ってた10分前のオレを殴りたい。
まずいぞ。このあと原作の流れだとどうなるんだっけ? クロとジャンゴが海岸で密会するんだったかな?
そうだ! そこに行けばルフィとウソップ、じゃなくてキハーノさんもいるかもしれない。
えーと海岸はあっちか。
そういえば最初に来た時は街ゆく人からジロジロと視線を感じたけど、服を着替えてからは注目されなくなった。今までそんなに変な格好だったのかな?
……改めてさっきまでの姿を思い返してみたら、マントですっぽりと全身を隠したアブナイやつだったな。
今度からマントは前を閉めずに肩にかけるだけにしておくかぁ。
そうだ、眼帯も作り直さないといけないな。バンダナと一緒に剥ぎ取られてそのままだった。
一度でも体から離れると操作できなくなるのが困りものだなぁ。
手首から〝蔓〟を出し、頭まで伸ばして巻きつける。こうして一度体に触れさせとけば手首から切り離しても操作可能だ。
よし! 目の所に穴を開けて、完成!
あれ? なんかまた視線を感じるぞ。もしかして眼帯もアウト!?
オレより怪しい格好の人だっていっぱいいるだろこの世界。ほらあのコートのやつだって……?
おお! ジャンゴ発見! あの
バレない様にコッソリ追いかけるか。
──さっそく見失った。
おかしいな、目はかなり良いはずなんだけど急に消えたぞ。
街に発展したせいで建物が増えたからなぁ。もう見つけるのは無理かもしれない。
丁度街の出口も見えてきたし、このまま海岸に向かうか。
結局、一本道でもジャンゴは見つけられずキハーノさんと出会った坂の上まで戻ってきた。
この横にある林から崖下の海岸が覗けそうだ。ルフィ達だっているかもしれない。
ふぅ。久々の自然はなんか落ち着くなぁ〜、っといけない! 思考が植物寄りになってる。オレ、ニンゲン。
少し先の視界が開けた場所に、都合よく一本だけ木が生えてるな。あの裏に隠れればよさそうだ。
ルフィ達は居ないみたいだけど、先に崖下を覗いてみるか。どれどれ。
怪しい二人組発見! 幸先いいぞ。
ん?
怪しすぎる!? なんだアイツら。一人は頭の上にゴハンの入った茶碗乗せてるし、もう一人は頭からチューリップが生えてる!
クロとジャンゴはどこ行ったんだ!? ワケが分からないよ!
あ! オレ達が乗ってきた舟を見てる!
「おいバレちゃいないだろうな?」
「問題ねぇ。その舟はさっき
「なら金目のモンもねぇな」
「ああ。今はそんなチンケなことどーでもいいだろ。
アイツらの会話ってクロとジャンゴがするのと同じなんじゃないか? 雰囲気からの勘だけど。
アレがこの世界の二人? いや、さっきジャンゴっぽいやついたし。アイツらは二人とも執事って風貌じゃないな。
あれ? そういえばゴハン乗せてるやつの顔どっかで見た気が……?
あ! アイツめし屋のオヤジじゃないか!? ドヤ顔で白米出してきたからよく覚えてる。今世で初の白米は大変おいしかったです。
めし屋の時は頭に何も乗せてなかったのに、キャラ作りか?
「それで例の騎士はどうだったんだ?」
「ああ、すっかり腑抜けてやがる。情報通り、全部
「なら街を襲っても戦える奴は一人もいねぇんだな?」
「あの街の連中はすっかり平和ボケしてらぁ。少し前まで戦争してたってのによ」
「それが人間ってもんだ、喉元すぎりゃぁナントやらってな。それでようやく復興して金が溜まった街を襲うのが俺らって事だ」
「ちげぇねぇ。明日にゃおれ達も大金もちよ!」
下卑た笑いが木霊する。こういうのを聞くと胸糞悪いな。
どう見ても悪党の密会だなぁ。街、襲う、明日ってワードから察するに襲撃計画でも話してるんだろ。
どうする? 放っておくワケには────
「おーい! エダー! お前、さがしたぞー! 舟になんか忘れたのか?」
っルフィ! マズい。アイツらに気づかれる!
「誰だ! どこにいやがる!?」
遅かった。周囲を警戒しだしたぞ。早く離れないとバレるな。
「なんだ、アイツら? あ! あのおっちゃん!」
ああ、もう無理だ。
「おーい! メシうまかったぞー! ありがとう!」
「ああ、あのガキか。バクバクおれの分まで食いやがって、お陰で頭のコレしか残ってねぇよ」
「殺してもかまわねぇな?」
「はっはっ! ダメったって殺すだろーが」
アイツら! どーする!? 気付かれてるのはルフィだけみたいだけど。
「なに言ってんだ、アイツら? なあ、エダ──」
「〝
なんかガニ股になって頭の横に両手を上げたぞ! なんだっけアレ、既視感があるんだけど……えーと。スペシャルファイティング……いや違うな。
あ!〝ナハナハ〟ってギャグか! 世代が違うから本家のギャグは知らないけど、それを元にした遊びならやったことある!
「ん? なんだこれ。粉?……ぐー」
確か、せんだ……って! 下らない事考えてたらルフィが崖から落ちてる!?
あわわ、大丈夫か? 大丈夫だよな、ゴムなんだし。そう、原作でも落っこちてたはずだ。
けどあのチューリップのやつ能力者だったのか! 花ってことは〝ハナハナ〟? いやそれはロビンだ。
名前はともかく能力は強力だ。おそらく花粉を飛ばしてルフィを眠らせたんだろう。崖下から届くんだから飛距離もヤバいな。
何よりヤバいのは植物系の能力がオレと被ってるってことなんだけど。どう見ても悪党なやつと類似能力なんてカンベンしてくれ。
「呆気ねぇな、勝手に落ちて死んじまったぜ」
「相変わらずスゲェな。コレで悪魔の実シリーズの
「これのせいで酷ぇ目にもあったがな。役立たせないと勿体ねぇだろ?」
「はっはっ! 怖えヤロウだ。とにかく明日の夜明けに決行だ、そこのガキには仲間がいたな。人が増える前におれは戻るぜ」
あ、アイツら解散して何処かへ行きく気だな。ルフィは死んだと思われてるみたいだ。
どうする? あんなのが居る時点でもう原作の流れも怪しくなってきたし、街が襲われる前に狙撃しておくべきか?
一人なら確実に倒せる。気配を消して狙撃するのは散々やってきた。
けど、次が無い……残った方に気付かれれば、当てられる可能性はグッと減る。
警戒して動き回る的に当てられる程、オレに射撃の才能はないんだ。
かと言って接近戦はさらに自信がないし、腰に下げてるコレは近距離用じゃないし……
マズい! もうアッチの奴は射程距離ギリギリまで離れてる!
難しく考えるのはヤメだ。
標的は決まった。
レティクル生成。距離確認。風向き確認。照準合わせ
3、2、1、
ニードルライフル
砲身は崩れ落ち、標的を貫いた弾丸は海へと消えていった。