私たちは結局あの屋敷まで来ていた。
エダが急にどっかへ行っちゃうから、荷物持ちが足りなくて買い出しは中断。アイツ、帰ってきたらどうしてやろうかしら。
それはそうと、見ず知らずの私達をあっさり中へ通すなんてお人好しすぎないかしら。
外から見ても立派なお屋敷だったけど中も相当な広さね。この街は五年前の戦争で大きく被害を受けたって話だけどココは大丈夫だったのかしら?
「ですから! 今日の所はお引き取り願います!」
「なんでだよー! 船くれるってお嬢様は言ってたぞ!」
客間の前まで行くとルフィーの声が聞こえてくる。
全く、どこに居てもトラブルを起こすのねアイツは。オジサンの冗談だって、まだ気づいてないのかしら。
応対してる執事の人にも悪いから早く連れて帰らないと。
「おいルフィー迎えに来てやったぞ」
「はやく戻るわよ。エダも居なくなっちゃったしアンタが買い出しに付き合いなさい」
良く考えたら舟は誰も留守番がいないんだし、早く買い出しを済ませて戻らないと。お宝は全部換金してるとはいえ、盗まれたくない物だって積んであるし。
こういう時、海賊は不便ね。前までは堂々と港に停めて、船にも誰かしら残ってたから舟番をたてるってことをスッカリ忘れてたわ。
「お、ゾロ、ナミ! あれ? エダは?」
「あいつは途中でどっか行っちまったぞ」
「そっかー。せっかく船がもらえんのになぁー」
「そんなワケないでしょ。アンタあのオジサンに騙されてんのよ」
「確かに嘘ばっか言ってたもんな。早く戻ろうぜ」
「オッサンは嘘ついてねぇよ。ちゃんとお嬢様に頼んでくれたんだ。それなのに
「……そこの彼が言うように、キハーノさんは嘘をついた訳ではないでしょう」
ルフィーの話じゃよく分からないからか、執事の人が見かねて説明してくれるみたいね。
「まず、ウソップ・キハーノはこの街の
眼鏡の位置を直し、執事の彼が語りだす。
私たちは、ウソップ・キハーノの物語を聞きながら
時に笑い 時に驚き
そして、どうしようもない理不尽な話に憤り 哀しんだ
「なんだよ! じゃあその船はオッサンが乗らなくちゃダメだ!」
「ですから、船のことは諦めて下さい」
「まさか有名な〝長鼻〟を作ったのがあの人だったなんて」
「元々長鼻は筒の長い銃を使う彼の異名だったのですが、いつの間にかその
「軽い調子で話すから嘘なんだと思ってたが、殆ど実際にあったことだったのかよ」
あの時、軽い気持ちで船をくれる人がいないか何て聞いてしまったけれど、今の話を聞いたら〝メリー号〟をもらう事なんてできないわ。
あの人の親友が造った夢の船は、ウソップ・キハーノが乗ってはじめて夢の果てまで突き進める船になるんだから。
ルフィーも今の話で船のことは諦めてくれたみたいね。
「でもよ、それとオッサンが旅に出ないのは違うだろ?」
確かに彼はもう自由なハズね。今は
「それは彼がお嬢様と一つ約束をしているからです。……この話をするには、まず私の冒した過ちからお話ししなければなりません」
あれは戦争が終わる少し前。街から離れ高台にあるこのお屋敷に人々は避難していました。
殆どの若い男は戦争へと駆り出されたのですが、私の家は
我が家に代々受け継がれているこの刺繍は、とぐろを巻いたヘビの様に一つ所へ落ち着くと言う意味があるのです。
一人の主君に仕え決して二心を持たないことだと私は解釈しています。
え? 二つ刺繍してある?
旦那様とお嬢様のお二人にお仕えしているから良いのです!
話を戻しましょう。当時まだ幼かったお嬢様は怯える人々を励まそうと声をかけて回っていました。
そんな時、一人の少女と出会ったのです。
お嬢様とその少女は歳が近かったことも幸いし、とても仲睦まじくしておりました。
戦火から逃れ不安を感じていた人々も、彼女達の姿を見て心が洗われている様でした。
しかし私は愚かにも、少女とお嬢様の仲の良さを嫉妬していました。
お嬢様が小さな頃から成長を見守って来たのは私だ。と下らぬ意地を張っていたのです。
この驕った感情が全ての原因だったのでしょう。
先程話したように、英雄
街の復興が始まってからもお嬢様と少女には親交がありました。
程なくして、復興を待たずに旦那様と奥方様のお二人がお亡くなりになられ、悲しみから部屋へと篭りがちになったお嬢様は、やがて体調を崩され少女と会う機会も無くなってしまいました。
愚かにも当時の私が、訪ねて来る少女を嫉妬に駆られ追い返してしまったからです。
それが、第一の罪。今では悔いるばかりです。
しかし驚くことに、少女はその様な状況でもお嬢様とお会いしていたのです。
屋敷の者に気付かれずお嬢様のお部屋へ毎日のように来ていたと後で知りました。
ええ、彼女もまた〝悪魔の実シリーズ〟を食べた一人だったのです。名前は〝ホロホロの実〟
肉体から魂を切り離し、自由に飛び回れる能力です。
彼女は身元を引き受けてくれた教会に肉体を置き、魂のみでお嬢様の元へ訪れていました。
そんな親交がしばらく続いたある日、
私は二階にあるお嬢様のお部屋へと入っていく魂を目撃してしまいました。
結果、お二人の仲を決定的に引き裂いてしまうこととなったのです。
ホロホロの実には触れた相手の
お嬢様が襲われると勘違いし少女へ触れてしまった私は、心にもないことを言ってしまいました。
〝どうせ私なんてお嬢様からは嫌われているんだ〟
〝ああ生まれ変わったらネコになりたい〟
〝ネコになってお嬢様に踏みつけられたい〟 と
あぁ誤解しないで下さい、決してその様な願望はないのです。ただ感情が沈み、偶然口にしてしまっただけですので。
……ともかく私の発言が少女へあらぬ誤解を招き、お二人はここ一年ほど顔を合わせていないのです。
これが、私の第二の罪。
あっきれた! 何が「第二の罪」よ!
長々と語りだすからどんな話かと思えば、この執事の
この部屋やけに涼しくて快適だからゾロは途中で寝ちゃうし。ルフィーなんてエダを探して来るって言って飛び出して行っちゃたわ。
最後まで話を聞いてた私が馬鹿みたいじゃない!
「それで? この話のどこにキハーノさんが関わって来るのよ?」
「それはキハーノさんとカヤお嬢様がある約束を…………」
ようやく聞けた本題なのに、執事の話は途中から耳に入ってこなかった。
その時私は見てしまったからだ。 窓の外に
「ねえ! アレって話に出てた女の子じゃないの!?」
「やべっ、バラすなよお前! 私はソコの執事が苦手なんだ」
「ペローナさん! どうか私の話しを聞いて下さい」
そう言って逃げそうになる女の子の手を執事が引き止め、られずにバランスを崩して体ごとスリ抜けたわ。
「オイばか! 私に触るな!」
「ああ、どうせ私が全て悪いのです。お嬢様が中年男性にしか心を開かないのも私のせいです」
「やめろ! 勝手にカヤを変な妄想に巻き込むな!」
ああ、これがそうなのね。でもこの感じだともしかして……?
「ねえ、アナタ。お嬢様に会いにきたんでしょ? もう誤解してないようだし」
「なっ! 最初から誤解なんてしてない! ただ私は……」
床に蹲る執事と、未だに寝ている男を無視して私たちは話し始めた。
「あー! 良く寝たー! ん? ここどこだ?」
崖下のルフィがようやく目覚めたみたいだ。でも今オレはまずい状況にいる。
「お前! 今のはライフルなのか!? 火薬の臭いが全然しないけどどうやって、いやそれよりも何を撃ったんだ!?」
オレの隠し玉は