植物好き(仮)と麦わらの一味もどき   作:浅学寺のえる

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第 8 話〝騎士と姫〟

 私には親友がいる。もう長く会えていないけれど、彼女ほど仲良くなれた人は他にはいない。

 初めて会った時は気の強い子だと思ったけれど、本当はとても優しい子なのだと私はよく知っている。

 でも、些細なすれ違いから私の部屋へ訪れなくなってしまった。執事のクラハドールは自分の所為だと言い張るけれど、きっと違う。

 あの時は確かに驚いたけれど、あの子(ペローナ)があんな事ぐらいで私の事を誤解するなんて思えない。

 けれど、未だに彼女が暮らす教会を訪ねられないでいる。

 もし会いに行って拒絶されてしまったらと考えると、勇気が出ない。

 

 

 私には()()がいる。子供の頃のごっこ遊びに未だ付き合ってくれる優しい騎士が。

 あの子が来なくなった頃から、昔の様に冗談みたいな話を聞かせに来てくれる。

 私が出歩けるまで回復できたのもウソップさんが励まし続けてくれたからだ。

 嘘みたいな冒険の話はとても面白く、この人が誰よりも冒険に憧れているんだと伝わってくる。

 私は彼が本当の冒険へ旅立つことを願う一方、このまま側にもいて欲しいと思ってしまう。

 

 いつか幼い時に交わした約束を、今も守ってくれているこの人に私は甘えてしまっていた。

 

 

 「それでよー! 地面がドバーっと盛り上がって、囲まれた中に雨が溜まったんだよ!」

 

 今も目の前で子供の様に話すウソップさんは、歳が離れているけれど友達の様な存在だ。

 

 「それで住む所が沈んじまって、困った人達は山の上に新しい街を……ってどうした()?」

 

 「ふふっ、ウソップさんが話すと本当の事みたいに思えるわって」

 

 「ああ! 世界は広いんだ! 嘘だってホントになるかもしれねぇぜ!」

 

 身振り手振りを交えて、いつもこんな事を言い私を励ましてくれる。

 さっきは船を人に譲ってくれないか、と珍しく頼られてしまい思わず返事をしてしまったけれど

 やっぱりあの船にはウソップさんに乗ってもらいたい。メリーだってそう願っている。

 

 「今日は外へ出ないのか? いくら快適だからって部屋に閉じこもってたら体に毒だぜ」

 

 この部屋はウソップさんが作った〝冷たい空気の出る管〟を壁に取り付けている。

 夏は暑い日が続くこの島ではとても重宝されてる物だ。

 私達は彼に助けてもらってばかり。戦争の時もその後も。

 

 私も決心しなければならない。

 ずっと考えていた。どうすれば彼らへ恩を返せるのか。

 私のせいで夢が叶えられなくなったウソップさんとメリーに、何をしてあげられるのかと。

 

 まずはウソップさんが海へ旅立てるよう私も勇気を出さなければ。

 この人は旅に出るには歳を取りすぎたなんて言っているけれど、きっと切っ掛けがあればいつでも旅立つのだろう。

 だから、私との()()はもうお終いにしてしまおう。

 

 「ねえ、ウソップさん。さっき船のことは()()()()()()()って言ったけど、やっぱり無かったことにできない?」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 最初は驚いていたウソップさんも私の話を聞いてなんとか納得をしてくれた。

 もう私も子供じゃない。あの子(ペローナ)のことも、メリーのことも全部一人で大丈夫だからと。

 まだ本当は自信がないけれど、口に出して言ってしまえば()()()()()()()()()()()()()()()()のでしょう?

 

 そして、あなたは人を護り街を護りずっと戦い続けたのだから、もう自由に生きて欲しいのだと。

 

 だからウソップさん、本日をもってあなたを〝私の騎士〟から解任します。

 

 


 

 

 うーん? なんでアイツ()()()を撃ち抜いただけなのに動かなくなったんだ?

 能力被りが嫌すぎて、考えなしに標的を()に決めたんだけど。まさかアッチが本体だったのかな?

 そういえば、頭から花みたいのが生えた奴って原作にもいたんじゃないか? あ、クロッカスさん以外で。

 そうだ!〝オマツリ男爵〟の映画に出てきたアレか? んー? あれは植物の()が頭から生えてたんだっけ?

 うぅ、あの映画は割とホラーな要素もあったから詳細を思い出せない。怖いことは忘れてしまうのが前世からのクセなんだ。

 

 幸い弾は海に入って行ったから、めし屋には気付かれ無かったみたいだ。もう坂を登りきったのか、姿も見当たらない。

 体を固定してる蔓を解くと、緊張も一緒に解かれたみたいだ。

 ふぅ、喉が渇いたなぁ。ちょうど根を出してるから水分補給しとこ。

 サンダルだから根も隙間から出せて咄嗟に射撃ができたんだ。ナミさんに感謝。

 

 あ、模造刀(バレル)がボロボロになってる。相変わらず一発で使い捨てになっちゃうなぁ。

 能力で作れるとはいえ、細かく溝を作らなくちゃいけないから面倒くさいんだよなぁ。一回作ったことのあるアイテムなんだから、ポンって出せる仕様にしてくれればいいのに。

 

 「ぜぇぜぇ、やっと追いついたと思ったが……」

 

 うぇ!? キハーノさん!? 息を切らしてるから、走ってきたみたいだけど。林の中からじゃ狙撃したところは見られてないよな?

 

 「お前! 今のはライフルなのか!? 火薬の臭いが全然しないけどどうやって、いやそれよりも何を撃ったんだ!?」

 

 うん。バッチリ見られてたな。目良すぎだろ!

 

 

 「あわわ。アイツ! 悪者!」

 

 海岸線で蹲ったまま動かない男を指差し必死に弁明してみる。

 

 「アレは……死んじゃいないようだが一体だれだ?」

 

 生きてるのか。でもこの距離から分かるなんて本当に凄いな。っていうかあの花の奴は誰なんだ? どう言えば……

 

 「あー、えーと、海賊?」

 

 「そういやお前は話すのが苦手だったな、安心しろワシは別に責めてるんじゃない。撃ったのには理由があるんだろ?」

 

 おお! 年の功って奴なのか貫禄があるなぁ。落ち着いていて話も聞きやすい。

 

 「あ! おーい。エダとオッサーン!」

 

 「ん? 追いかけて来たのにいないと思ったら、あいつ崖の下にいたのか。まさか落っこちたんじゃないよな?」

 

 ギュルギュルと音を立ててオレの横にある木にルフィの腕が巻かれていく。

 

 「い!? なんだ!?」

 

 このまま上がって来るみたいだ。あ! 崖沿いの木だからか斜めに生えてて、ルフィが引っ張る力で抜けそうになってるな。

 蔓で固定しておこう。根を張ってる今なら余裕で支えられる。

 ルフィに倣いギュルギュルと巻き付けようとしたけど。ビュルルって音になってしまった。

 

 「おわっ! お前もかよ!」

 

 「よっと、何でおれ下に落っこちてたんだ?」

 

 「おかえり」

 

 「おう! しししし」

 

 「お前たち、もしかして二人とも()()()なのか!?」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ルフィが来てくれたことで話がスムーズに進むかと思いきや、状況はますます混沌としていった。

 キハーノさんはオレ達が能力者ってことを知らなかったから慌ててしまい、さっきまでの余裕は消えてるし。

 ルフィは直ぐ眠らされたからアイツらの会話は聞いてなくて、メシ屋が悪い奴だったってことだけ主張している。

 この流れでオレに上手く説明できるだろうか?

 

 「それでよ。メシ屋の仲間の()が何かしたら急に眠くなって……」

 

 ここだ!

 

 「花の奴をオレが撃った!」

 

 「なんだエダが倒してたのか」

 

 「じゃあ海岸のアイツは海賊で、ってオイ! 居なくなってるぞ」

 

 キハーノさんに言われ海岸を見るとそこには(しお)れたチューリップだけしかなかった。

 やっぱり生きてたんだな。花が無くなったショックで倒れただけだったんだろう。

 

 「それで? めし屋の主人も悪い奴って話だが、アイツは三年くらい前から店を出してるんだぞ?」

 

 「じゃあメシ屋は海賊じゃないのか?」

 

 どうなんだろう? チューリップの方は見るからに海賊って格好だったけど。あ、今のオレもか。

 めし屋の方は頭のゴハン以外は街にいた時と同じだったしなぁ。とりあえず

 

 「アイツら明日街を襲うって言ってた」

 

 これだけは確実だろう。

 

 「海賊が襲撃して来るってことか? それであそこにいた奴を狙撃した所にワシが現れた、と」

 

 「そうそう」

 

 「なんだアイツ〝モーガニア〟だったのか! やっつけに行くぞエダ!」

 

 「まあ待てお前を疑う訳じゃないが、めし屋の()()()のやつとも付き合いは長い。まずはアイツの店に行ってみないか?」

 

 めし屋はオコメって名前らしい。ド直球な名前だなぁ、偽名なんじゃないの?

 そういえばオコメは街の方へ帰って行ったハズだけど、一本道なのにキハーノさんはすれ違わなかったのかな?

 

 「そういやオッサンなんで居るんだ? お嬢様に用があったんだろ?」

 

 「ああ、お前が屋敷を出ていくのを見かけて話をしに追いかけて来たんだ」

 

 「話ってなんだ?」

 

 「いや、海賊が襲って来るかもしれないんだ。話はこの件が済んでからにしてくれ」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 結局、街まで戻りメシ屋へ寄ってみたものの店には誰もいなかった。

 

 その後、ナミさん達と合流する為にお屋敷へと行くことになったんだけど。

 ルフィが言うにはオレが抜けた後、二人はお屋敷で執事から話を聞いていたらしい。

 ()()()()()()()がついてる執事って該当者一人しかいないんだけど……この世界、やっぱりキャプテン・クロもちゃんといるんだな。

 

 ルフィとキハーノさんは気が合うのか会話が尽きることがないみたいだ。この辺は年齢関係なく相性がいいんだろうなぁ。

 いつの間にか名前で呼び合ってるし。

 この分だと船に乗った後もオジサンが一人だけ()()ってことはなさそうだ。原作でも〝偉大なる航路(グランドライン)〟に入ってからは仲間の年齢もバラバラになってくるんだし余計な心配だったな。

 

 屋敷へと辿り着くとメリーともクロとも違う執事の人が迎えてくれた。まぁこの規模のお屋敷だし執事が二人以外に居たっておかしくないよな。

 この人が言うには客間ではゾロが寝ていて、ナミさんは教会に行くと言って出て行ったらしい。

 オレが言えたことじゃないけど、みんな()()すぎないか?

 

 「おーい! ゾロ、今度はおれが迎えにきたぞー!」

 

 ルフィに続き、客間に入ったオレは目を疑った。

 

 床に顔を擦り付け、「ネコになりたい」とうわ言を繰り返すどう見てもキャプテン・クロな執事がいるからだ。

 え? どういう作戦?

 

 これが〝百計〟? 確かに一般人には理解できないな。




 初期プロットのクロに〝マゾヒスト〟という設定があるわけではありません。
 シロップ村(仮)編が終わった後に、どのキャラクターが初期案由来かまとめたものを載せる予定です。
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