ありふれない覚醒カウンターは世界最強   作:旧管理局

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メインストリーム EP.1
EP.1:1-1 全ての始まり


 

全ての物は必ず滅びる。

 

たとえ神であってもいつかは死に至る。

 

神々自身がそれ()を望んだから。

 

生と死を繰り返す人生を永遠に味わい続ける、たとえそれが地獄のような物だったとしても。

 

なら自分は何なんだろうか。

 

神の意思に背いた罪人?それとも神の祝福を受けた使者?

 

 

それとも…人の形をした、化け物なんだろうか?

 

 

「そう考えた所で何も変わらない……まぁ……それも今更か」

 

 

瓦礫の上に立ってそうつぶやく一人の少年がいた。

 

周りの建物は無残に崩れ、廃墟と化していた。

 

曇った空から滴る雫が身体を打つ。

 

 

グォォォオオオオオっ!

 

 

雨の落ちる音だけが鳴り響く廃墟と化した都市の何処かから大きな咆哮が聞こえた。

 

「……まだ生きてたのか……ちっ……手間をかけさせる」

 

 そう言って彼は瓦礫に突き刺さしていたパルス・リボルバーを手に取り、大きな咆哮が聞こえた方向へ走り出した。

 

 

 

彼の名前は古鷹祐介。18歳の高校に通うごくごく普通の高校生であり、カウンターである。

 

 

 

「よう……でかいの。まだ生きてたのか?」

 

そう言って大きな咆哮を出した張本人――ビーストと呼ばれる生命体の成体――に向けて声を掛ける。

 

 

グルルルル……

 

 

挑発されたと感じたのかビーストが唸り声を上げる。

 

「……このままでかい獲物を狩らずに手ぶらで帰るのもどうかと思っててな。来い、お前が満足するまで相手をしてやる」

 

そう言ってパルス・リボルバーをコッキングして構える。

 

 

グアアァァァァーー!!

 

 

大きな咆哮を上げたあと、前足を振りかざして祐介に襲い掛かる。

 

「分かりやすい動きだな……」

 

攻撃時の動き方を知っていたおかげで簡単によけられた。

 

 

ドッガァァァァァンッ!

 

 

「動きを知っていたとはいえ……もろに食らえば大体のカウンターは即死だろうな」

 

前足で踏みつぶした場所にはちょっとしたクレーターと放射状に広がる無数のヒビが入っていた。

 

「……今度はこっちの番だ」

 

ガシャッ!

 

パルス・リボルバーをコッキングし、ビーストの足に向ける。

 

バババッ! ガシャッ!

 

素早く3連射した後、直ぐにコッキングし、また構え、引き金を引く。

 

バババッ! ガシャッ!

 

地味ではあるものの、ビーストの成体に対して上手くダメージを確実に与えられる方法だ。

 

「そう簡単には切れないか……なら……これならどうだ?」

 

そう言ってパルス・リボルバーのグリップ近くにあるセレクターを触り、銃身を展開する。

 

「狙って……ズドン!」

 

ビーストの足の付け根を狙って引き金を引く。

 

 

ガシャッ、ダァン!

 

 

鮮血のように赤い1本の光線がビーストの足を身体から吹き飛ばす。

 

 

グアアァァァァーーッ!!

 

 

足全体が関節から吹き飛ばされ、ビーストは悲鳴のような咆哮を上げる。

 

「これは痛そうだな」

 

ふと、左腕に付けられた腕時計を見る。

 

「……早くしないと時間が来ちまうな」

 

彼は個人で活動するカウンターでありながら高校に通う高校生でもある。

 

彼だって学校に今まで無遅刻無欠席で通っていた記録を破りたくないのだ。(誰もがそうかどうかは分からないが)

 

「くそっ、こうなったら……"ナイトフォール"で終わらせるのが一番か」

 

そう言った途端、紫色の結晶が左腕を包み込む。

 

「悪いが今すぐ消えてもらう!」

 

手のひらで結晶をどんどん大きくさせ、ランス

 

「食らえ!」

 

ビーストに向けて結晶槍を放つ。

 

 

グアァァァァ……

 

 

結晶槍がビーストのコアに命中し、ビーストが結晶で出来た像と化した。

 

「ふぅ……相手せずにとっとと帰りゃ良かった……早くノーマルサイドに帰って学校行かないと……」

 

そう言って何処かへと走り去った。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

月曜日、それは新たな週の始まりである。しかし、世の中には『サザ○さん症候群』や『ブルーマンデー症候群』といった言葉が存在するように殆どの人にとっては憂鬱な1週間の始まりでもある。

 

しかしカウンターサイドでの変異体駆除やアンダーグラウンドでの暗殺の様な地獄を土日に味わっている彼――古瀬祐介――にとってはある意味幸せな1週間である。

 

しかし最近はそうでもない。

 

「あーだりぃ……」

 

背中に長方形状のカバンを背負った状態で廊下を歩く。

 

「えーっと自分の教室、教室…あ、あった」

 

ダルそうにそう言いながらドアを開ける。

 

ガラガラガラ。

 

「だから――」

 

 うわでた。こいついっつも正義感満載の説教垂れてんな。

 

「邪魔だ。どけ」

 

 首を右手で掴み、そのまま力任せに強引に押しのける。

 

「ぐはっ!?」

 

 結構な勢いで壁に激突した。いい気味だ。

 

「あ、祐介。今日もギリギリね」

「おはようユウ君。今日は珍しくダルそうだね。何かあったの?」

 

「え?いや、別に。特に何も」

 

白崎の質問に答える。

 

「でも……左目の方……まだ包帯で覆われてるじゃん。本当は何かあって、それを隠してるだけじゃないの?」

 

 「ああこいつか?」と言ってを前髪ずらして左目を見せる

 

「心配し過ぎだ。別にそんな大した事じゃない。そんなに心配しなくても大丈夫だ、そのうち治る」

 

「そう……何かあったら言ってね? あんまり出来ることはないだろうけど」

 

「わかったよ……白崎」

 

 彼女の名前は白崎香織(しらさきかおり)という。学校で二大女神と言われ、男女問わず絶大な人気を誇るとてつもない美少女である。

 

「ハァ…全く……」

 

ため息をつきながらカバンから1冊の本を取り出す。

 

「おい、ハジメ。起きてるか?」

 

「ん?…うん」

 

「そうか…ほら、借りてた本だ、返すよ。それ面白かったからまた貸してくれ」

 

「ん。分かった」

 

 目をこすりながら本を取る。自分の友達の中で唯一の男友達であろう少年――南雲ハジメである。

 

「珍しくラノベ借りたのね。普段は変なものばかり読んでるのに」

 

「別にいいだろ……あと資本論の本の事を言ってるんだったら一度読んでみろ、意外と面白いぞ」

 

「遠慮しとくわ…難しそうだし」

 

 彼女の名前は八重樫雫(やえがししずく)。私自身の恋人であり、剣道仲間でもある。彼女も二大女神と呼ばれる一人である。

 

「いてて……と、とにかく南雲、さっきも言った通り、いつまでも香織の優しさに甘えないことだ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

 

「ちょっと光輝くん。私はハジメ君と話したいから話してるだけでだってば」

 

白崎の声には若干のイラつきが混じっていた。

 

 こいつの名前は天之河光輝(あまのがわこうき)。絵に描いたようなイケメンであり、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人である。

 

「全く……それに古鷹もそうだ。最近チャイムの鳴る2、3分前に来ているがもう少し早く来たらどうなんだ? 雫だっていつまでもお前にかまってられるわけじゃないんだぞ」

 

「はいはい分かりましたよ、次からは気を付けてみますよ…っ、こっちの都合なんか知らない癖によく言うよ……

 

適当に返事をした後、くそ野郎(天之河)への嫌味を小声で言う。返事が適当だったのが気に食わないのか気を悪くしたのか更に文句を行ってくる。

 

「お前はいつもそうじゃないか! そうやっていつもいい加減な態度をとってるから上手くいかないんだ! だから剣道を中途半端に終わらせたんだろう!? もう少し物事を真剣にやってみたらどうなんだ!」

 

この言葉を聞いて雫が天之河の言葉を止めた。

 

「光輝! そろそろいい加減にして! 彼だって家の事情があって剣道部を辞めたのよ!? それ祐介はいい加減なんかじゃ――」

「その辺にしろ雫。文句があるんだったら昼休みの時にしろ。それにもうチャイムはなったんだぞ。早く自分の席に戻れ」

 

 こうなったら彼女は普段の止め方では上手く止められないないので少し殺気を出して威圧するように言った。

 

「……ごめんなさい。少しカッとなっちゃって……」

 

「別に……次から気を付ければいい」

 

「そうね……」

 

 

 いつも通り教師が教室の教卓の前に立ち、朝の連絡事項を伝える。そして授業が始まると同時にハジメが眠りにつき夢の世界へと旅立つ。それを見た教師はそれを注意することなく授業を進める。

 

 

  そんなハジメを見て香織が微笑み、雫が苦笑いし、男子達は舌打ちをし、女子達は軽蔑の視線を向ける。

 

 

そんなごくごくありふれた日常は……突然崩れ去った。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 突然だが私はカウンターである。

 

 

 それこそ今まで見たことも聞いたこともない結晶を制御出来るカウンターである。

 

 10歳のころ、私は浸食現象に巻き込まれ、私たちが住んでいる地球のパラレルワールド――カウンターサイドに飛ばされてしまった。

 

 そこで私は10年間もの間――地球自体で流れた年月はたったの1週間だったが――カウンターサイドで地獄の様な生活を送った。その過程でナイトフォールと呼ばれるエタニウムの変種が身体に融合し、半分人間、半分得体の知れない何かに変貌した。

 

 そこで旧管理局と呼ばれた組織の施設の探索や結晶融合体と呼ばれる異形の浸食体との戦闘を経験した。

 

 旧管理局の施設からいくらかの武器や保存食を()()()りして何とか生きていた。

 

 それからカウンターサイドをしばらくさまよっていた時にタスクフォースカンパニーの1つであるイクリプス社に拾われ、それから新入社員としての生活を始めた。

 

 自分の父と母は浸食現象から一時的に逃れるためにグラウンドワン――管理局直轄の大型都市――に移り住んだ。

 

 父母は仕事にはありつけたものの、浸食現象がかなり大規模だったせいで復興工事が理由で暫くは家に帰ってこれないそうだ。

 

 これが私がカウンターとしての仕事を始め、剣道部を辞めた理由だ。

 

 無論、こんな事を知っているのは雫だけで、他の部員や顧問には単純に部活動費が払えなくなったからだと説明した。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 そうこうしているうちに昼休みになった。自分で作った弁当を開け、頂きますと小さな声で呟いた後、何も言わずに食べ始めた。

 

「もう食べ始めてたのね」

 

 いつの間にか雫が横に来ていた。

 

「っ!?…突然声を掛けるな…ビックリするだろうが」

 

「そうね…今度から気を付けるわ」

 

「今度じゃなくて今からだ!…ていうか別にいいだろ? いつ食事を食べるかは俺の勝手だ」

 

「一緒に……いいかしら?」

 

「好きにしてくれ……」もぐもぐ

 

 雫が横に座り、弁当箱を開き、食べ始める。

 

「……ん、古鷹特製玉子焼き発見! 頂き!」サッ!

 

「あっ…お前なぁ……」

 

「別にいいじゃない。1つぐらい」

 

「1つぐらいとはよく言ったな雫! 先週は朝早くに作った唐揚げを昼に全部食い尽くしたじゃないか!」

 

「恋人なんだしいいじゃない少しぐらい! 未来の夫の食事の味を知っておきたいの!」

 

 そう言いあっていると…

 

「えっと……一緒に食べてもいいかな?」

 

 白崎がきた。

 

「あー……どうぞご自由に」

 

(ん?あれこれもしかして……)

 

「白崎ちゃん……私と祐介君は一緒に食べてるの。天之河君たちのとこに行ってくれない?」

 

 雫は今まで過ごしてきて一度も聞いたことがない声を出した。えっなにその声怖い。(小並感)

 

(やべっ…やっちった、完全に修羅場だこれ。やべ、まじでどうしよ……)

 

「……なんでそんなこと言うのかな?別に、私も一緒に食べてもいいでしょ?」

 

「ダメ。古鷹は私のもの。彼女と彼氏。分かる? だから()()()()()()()()()()()()は仲良しの天之河君と食べてきたら?」

 

「なぁ……飯ぐらい別にいいだろ。そんなにケンカしなくても「「貴方は黙ってて!」」いや…でも…ったく、分かったよ」

 

(……ダメだこりゃ)

 

 そう思いながら食事を取ろうとすると…

 

 なんだあいつ? あのバカ(天之河)来やがった!

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。古鷹は香織の優しさを無下にしているようだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

 

「…何で光輝くんの許しがいるの?」

 

 明らかに白崎の声に殺意が混じっていた。

 

 まともに飯が食えそうにないので怒鳴ってでも止めようとして椅子から立ち上がったその時、信じられない物を見た。

 

 純白に光り輝く円環と幾何学模様。所謂魔法陣である。

 

 そしてその魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 

「……くそっ」

 

 悪態をつきながら自分のカバンを急いで握りしめる。

 

 そして視界が真っ白に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  光によって真っ白に塗りつぶされた教室が再び色を取り戻す頃、そこには既に誰もいなかった。

 

 

  蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品はそのままにそこにいた人間だけが姿を消していた。

 

 

 この事件は、白昼の高校で起きた集団神隠しとして大いに世間を騒がせるのだが、それはまた別の話。

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