ありふれない覚醒カウンターは世界最強   作:旧管理局

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2022/12/25:文章を編集。


EP.1:1-2 異世界召喚

 

 魔法陣が放つまばゆい光に包まれ、目をゆっくりと開くとそこはまだ自分がカウンターになる前から常に寄っていたカフェに続く一本道だった。

 

「懐かしいな……」

 

 しかし自分は異世界行きの魔法陣の光に包まれたはずだと思い、たまたま近くにあった花に触れてみる。

 

「……やっぱりな」

 

 手が花をすり抜けた。

 

「とするとここは……俺の精神世界か……」

 

 とりあえずカフェにつけば答えがわかるだろうと思いそのまま道なりに歩き、見慣れたドアを見つけ、そのまま開いた。

 

「いらっしゃい。いつも通りの物でいいかな?」

 

「頼むよマスター」

 

そう言ってカフェの中に入ってカウンター近くの椅子に座る。

 

「できたぞ。いつも通りのブラックコーヒー」

 

「どうも……」

 

そう言ってコーヒーを飲む。

 

「さて……今日の物語は何かな? いつも通りのかもしくは……珍しい物か。どっちかな?」

 

「そうだな……異世界召喚されたカウンターとその仲間たち…なんてのはどうだ?」

 

「今の君の状態じゃないかい?」

 

「ああ……そうだな」

 

 それから二人は無言になりカフェのマスターはコップを拭き、古鷹はコーヒーを味わいながら飲む。

 

「ふぅ……ご馳走様。相変わらずのうまさだよ」

 

「そうか、嬉しいね。それで……これからどうするつもりだ、()()()()()?」

 

(地球)に帰る手段を見つけてとっととおさらばしてゆっくりするさ……()()()()()()

 

「フッ……まさかその名前をまた聞くことになるとはな? まぁいいさ。そのうち手土産を持って会いに行くから楽しみしていてくれ。祐介」

 

「ああ、楽しみにしてるよ。そろそろ行く時間だろうしな」

 

 一枚のコインを置いて椅子から立ち上がりドアへと歩いて行く。

 

「ああ、お前が感動するような土産を持ってきてやる」

 

 そう言われてドアを開けた瞬間、またあの時と同じ光に包まれた。

 

 


 

 

「―――! ――や! 祐介!」

「―――! ――君! ゆう君!」

「ゆう―! ――加減―を――して――!」

 

「…………んんっ」

 

 体を揺さぶられる感覚と、自分の名前を呼ぶ声。

 

 聞き覚えのある声にゆっくりと目を開けると、そこにはたった1人の世界最高のオタク仲間とその恋人、そして最愛の彼女が自分を覗き込んでいる姿が視界に飛び込んできた。

 

「っ……ハジメ…雫…香織…?」

 

 上半身を起こして周りを見渡す。右手には普段から持ち歩いている大切なカバンがしっかりと握られていた。

 

「取り敢えず自分は大じょ「裕也!」ぐはっ!?」

 

 結構な強さの力で雫が抱き着いてきた。

 

「げほっげほっ……そ、そんな勢いよく抱き着くなよ……」

 

 今のはとても痛かった(小並感)

 

「他のみんなが起きたのに……祐介だけ目を覚まさなかったから…ぐすっ……心配したんだよ…………!」

 

 泣きながらそう言う雫の頭を左手で優しくなでる。

 

「そうか……心配かけたな。悪かったよ」

 

「裕也のバカっ……」

 

「悪かったって」

 

 しばらく頭を撫で続けたら離れてくれたのでカバンを背負って立ち上がり、周りを見渡す。最初に目に入ったのは巨大な壁画だった。後光を背負った中性的な顔立ちの人物が草原や湖、山々を両手を広げ包み込む絵が描かれていた。フランスのシャルトル大聖堂やバチカンのシスティーナ礼拝堂にありそうな所謂、宗教画だった。

 

 絵としての素晴らしさはよくわかるが、それ以上に生理的な気持ち悪さを感じ、目をそらした。

 

 周囲をよく見てみると、どうやら自分達は巨大な広間のような場所にいるようだった。素材のほとんどは大理石に近い物で、所々に金やそれに近しい素材でできた装飾品なども見つかった。

 

 天井は彫刻が掘られた巨大な柱に支えられたドーム状で、奥の方には台座と複数の人がいた。

 

 台座の近くにいるその集団はぱっと見ただけでも20~30人はおり、全員が同じ組織の人間だろう。

 

その中のうちの1人が立ち上がり、こちらに歩き始めた。

 

「な…なんか歩いてきてるけど…大丈夫だよね?」

 

 香織が心配そうな顔をして聞いてくる。

 

「大丈夫だ…多分…」

 

「多分じゃ困るんだけど?!」

 

 

 

 そんな言葉を交わしていると、こっちに歩いてきた1人、南米辺りにいそうなド派手な鳥みたいな煌びやかな衣装を纏った老人が口を開いてこう言った。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

 そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。

 

 それから自分や雫、香織、ハジメとその他を含む異世界召喚組は大広間という部屋に案内された。

 

 少なくとも10メートルはあるであろうテーブルの席に座らされた。非常に煌びやかな作りで、調度品や飾られた絵、壁紙がかなり価値のあると一目でわかるものばかりだった。

 

 全員が着席すると、絶妙なタイミングでカートを押しながらメイドさん達が入ってきた。外国にいるような、やや厳ついメイドではなく、男子の夢を具現化したような美女・美少女メイドである。クラスメートの男子は鼻の下を伸ばし、女子生徒からは氷点下の視線を向けられる。先に置かれたカップに紅茶をどんどん注いでいくが自分は断った。何が入っているかわからないものなんて飲みたくない。

 

 全員に飲み物が行き渡るのを確認するとイシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方においてはさぞ混乱している事でしょう。一から説明させていただきますのでな、まずは私の話を最後までお聞きくだされ」

 

 ちなみに、この話でバルジ大作戦の約2時間半程ではないにしろ時間がかなり潰れたので割愛させて貰う。

 

 要約するとこうだ。

 

 まず、この世界はトータスと呼ばれている。そしてトータスには大きく分けて三つの種族がいる。人間族、魔人族、亜人族である。

 

 人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。

 

 

 何でも人間族と魔人族が何百年も戦争を続けているらしく。

 

 魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していた。今の所でかいドンパチ(戦争)は起きていないらしいが、異常なことがここ最近、多発している。

 

 

 それが魔人族による魔物の使役。

 

 

 魔物とは、通常の野生生物が魔力を取り入れ変質した異形の事だ、と言われている。正確にはよく分からんとのこと。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく、強力で凶悪な害獣らしい。

 

 おまけについ最近、人間側の辺境の地に大きな船のような物が墜落したらしく、そこから得体の知れない化け物が無尽蔵に湧き出ているらしい。

 

 補足だが、彼らの言う所の得体の知れない化け物は我々カウンターが言う浸食体である。

 

 取り敢えず魔人族が魔物を飼いならし、得体のしれない化け物が国の境目で大暴れしているせいで人間側が詰み状態だという事を覚えておけばいい。

 

「あなた方を召喚したのは『エヒト様』です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらくエヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という『救い』を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、『エヒト様』の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

 例の教皇様が恍惚とした顔を浮かべている。おそらく神託を聞いた時の事でも思い出している。翼は授かってないし、空を飛べるかは知らないが、頭は確実にいかれてる。

 

 イシュタルいわく、人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。

 

 そんな連中の「神の意志」とやらに疑いの一つすら感じず、それどころか嬉々として従うこの世界からどうやって逃げ出そうか考えていると、テーブルを叩き突然立ち上がって猛然と抗議する人物が現れた。

 

 

「ふざけないで下さい! 結局この子達に戦争と人殺しさせようってことでしょ! そんなの許しませんよ! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっとご家族も心配しているはずです! 貴方達のしていることは唯の誘拐ですよ!」

 

 

 運悪く教室に残っていた社会科教師の畑山愛子。身長150cmの低身長に童顔とかいうギャップ萌えの塊みたいな人である。こんな感じでも威厳ある教師を目指しているらしい。ちなみに未だ結婚できず今年で25歳らしい。(本人談)

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

 凄まじい爆弾発言である。

 

「ふ、不可能って…ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

「先程言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんので。あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第ということです」

 

「そ、そんな…」

 

 無責任にも程がある。これだから宗教団体ってのは気に食わねえんだ。

 

 そんなイシュタルの言葉に愛子は椅子に崩れ落ち、それをきっかけに生徒達は軽いパニックを起こす。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねえ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

「……貴方は怖くないの?」

 

不意に雫にそう言われる。

 

「……べつに?この手のラノベとかじゃよくある話だし…カウンターで何度もカウンターサイドにダイブしてるし…それ程でもないな」

 

 落ち着いた声でそう答える。

 

 そんな中、例のご都合主義者が立ち上がりテーブルを叩く。その音に驚き、注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始める。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味が無い。彼にだってどうしようもないんだ。…俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。…イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

 

「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲ってる感じがします」

 

「ええ、そうです。ざっとこの世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

 

「よし、なら大丈夫だ! 俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!」

 

 拳を握り、そう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。

 

 同時に、彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮し、絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の半数は熱っぽい視線を送っている。

 

 

「だからって戦争に参加するかどうかは自分で決めんだろ?それにお前たちに戦争が出来るとは思えんしな」

 

 

 そう言ったのは冷たい目をした古鷹だった。

 

「古鷹……お前…どういう意味だ」

 

「言葉通りだ。わざわざ1つしかない命を捨てたくないんでな」

 

 天之河が机をたたき、バン!と音を立てて立ち上がる。

 

「どうしてだ!古鷹!この世界の人々を救いたいと思わないのか!?」

 

「思わないな」

 

「なっ!?…どうしてだ!」

 

天之河に賛成していた人達やイシュタルが古鷹を睨む。

 

「…お前戦争がどんなものか理解してるのか?」

 

「俺は理解してるさ!だったらお前は「ふざけたことを抜かすな!」なっ!?」

 

 椅子から立ち上がり、天之河に向けて怒鳴る。

 

「戦争を理解してるだと!?だったら戦争がどれだけ残虐なものか分かってるのか!動物の狩りやゲームの世界とは違う!人と人が互いに命というものを奪い合う行為を戦争と言うんだ!」

 

「っ…だったら話し合いで「出来たらとっくに戦争は終わっているだろうが!」うっ……」

 

 古鷹がの言葉に勢いを失う天之河。

 

「俺たち人類の国同士の殺し合いの歴史を見てみろ!今まで戦争が話し合いで終わった事があるのか!?第一次世界大戦、第二次世界大戦、ベトナム、中東、イラン・イラク戦争、フォークランド紛争、アフガニスタン侵攻…いったい今までどれだけの人間が死んだ!?何十万、何百万と死んだ!」

 

「それに戦争だって必然的に起こったものあるが、多くは自国の利益の為だけや、他国への不満に耐えかねた国、下らないお偉いさん共の「相手の国は簡単に軍事力で支配できる」だなんて下らない発想から生まれた結果だ!」

 

 ふぅと息を吐きながら椅子に座り、天之河の言葉に賛同した生徒の顔を見てから言った。

 

「だが忘れるなよ、戦争に参加するという事は人を殺すという事だ。仮にイシュタルの言うこの戦争とやらが終わった所で、まともに生きられるかどうかは誰にも分からないし知ることも出来ない。俺が言った言葉の意味を理解して、それでもなお戦うというのなら止めはせん。だが最後まで自分の選んだ選択を後悔せずに、自分の手にある大切な物を失ったとしても戦い抜けるのか?それを一度"自分だけで"考えてみろ。自分だけでな。他人に頼るんじゃない。人の命の生き死にを決める責任は重い。俺はそれを嫌というほど理解してる」

 

そう古鷹は言い放った。その言葉を聞いた天之河の主張は追加される。

 

「みんな!俺は絶対に死なない!みんなも俺が死なせない!だから大丈夫だ!俺達ならやり遂げられる!!」

 

 その言葉にクラスの殆どが賛同し、極々一部の生徒だけは戦争に参加するかどうかを考えた。

 

その後、イシュタル曰く、この聖教教会本部がある『神山』の麓の『ハイリヒ王国』にて既に受け入れ態勢が整っているという。とても上手く出来た話である。

 

 




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