警官というより正義の味方と裏の彼女達   作:モンターク

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落胆

城南島埋立地

特車二課棟

 

今日も第二小隊が待機任務といういつものことが行われているのだが、どうにも様子がおかしかった。

 

「変っすね班長…」

 

「シゲ、どうした?」

 

「いやぁ、いつもなら何かしら騒いでる第二小隊の皆さんがやけに静かなんですよ。食中毒でも起こっちまったんですか?」

 

「……さあな」

 

何も事情を知らないシゲがぼやく中、事情を知る榊班長はあえて流した。

 

そしてその第二小隊はと言うと…。

熊耳は第二小隊オフィスにおいて書類の作業を行っているがどこか表情は暗く、ため息もついている。リチャード・王(=内海課長)の件でも精神的に追い込まれた彼女ではあるが、それとは別のベクトルでまた精神が安定していないというものの現れであった。

山崎はまた畑や鶏の世話をしているが、同じく浮かない表情であり、珍しく肥料の量や鶏のエサの量を間違えたりしている。

太田はこの中ではまだいつもの調子に近く、整備班がこしらえた人間が携行できる銃が使える射撃練習場で拳銃を撃っているが、的には命中しているものの浮かない表情であり「クソッ」と嘆いていたほど。

進士はその横で大田に付き添っているがどこか上の空。太田に対するツッコミもほぼしない上、弾に関しても直ぐに太田に渡すという珍しい有様である。

そして遊馬は屋上に登り、東京という街を見渡していた。

 

(…確かに平和だ。レインボーブリッジが攻撃されたりなんかされてねえ…でもこの裏には…野明)

 

そう思いつつ、野明のことを心配しているようだった。

 

そしてその野明は…。

 

「………」

 

女性用仮眠室で1人ベッドにくるまったままだ。

今は当然日中であり、勤務時間ではあるが、状況が状況なので誰も咎めることはない。あの遊馬や太田ですら何も言っていないのである。

 

(私達がいるこの平和が……()()()()に守られていたものだったの…?)

 

あの時の夜。

後藤が話したことは想像をも超えることだった。

 

明治以前に誕生した組織を前身とした秘密組織『DirectAttack』

そしてそのエージェントの『リコリス』

政府が公認し、その組織が孤児を教育し暗殺者に仕立て上げ、犯罪者等を抹殺する。

警察とは完全に真っ向から反する組織なのに警察はそれに逆らえない。

 

(そしてあの子達も…)

 

野明が行ってた喫茶リコリコのあのバイト二人もそのDAのリコリスであることも明らかにされた。

 

(私は…何もわかっていなかった…)

 

野明は項垂れるしかなかった。

今まで自分達もやれることはやっていた。レイバー犯罪を少なくし、レイバーが悪く言われないようにしたいと彼女は思っていた。

 

(グリフォンの時のあの子は人身売買で売られて、悪いやつに教育されてゲームするようにレイバーを操っていた。そんなのに似たのが…この日本も…)

 

 

グリフォンとは違い、後藤はDAは日本の裏の治安維持を担い、民間人に危害を加えることはないとは言った。だがそれでも「悪い大人に子供が洗脳されて銃器を握らせてる」という事実に変わりはない。

野明は今まで持っていた何かが崩れたような感覚だった。

名誉?誇り?そんなものじゃない。もっと大事ななにかだった。

だがそれを言い表すには今の野明では到底無理なことであった。

 

「……はぁっ…」

 

――――――――

 

そして特車二課隊長室。

 

「全く…ついに話したのね。通りであなたの部下たちの気力が全くないと思ったら」

 

「前も言った気がするけど、うちの連中は繊細だからねえ…」

 

「言わないって選択肢はなかったの?」

 

「まさか黒服があんなに来るとは……来なきゃもう少し誤魔化せたんだが…」

 

後藤はため息をつく。

 

「それでどうするのよ。このままってわけにはいかないでしょ」

 

「まあそこは…立ち直ってもらうしか無いとしか言えないねえ…俺ができることはせいぜい酒に誘うかそれくらいしかないよ」

 

後藤は外の風景を見つつ言う。そしてふと時計に目をやると時計は17時を指していた。

 

「あ、そろそろ俺行かないと」

 

「行かないとってどこに?」

 

「まあちょっとね。俺にも付き合いはある。夜だけ非番にしてくれてありがとうね」 

 

そう言うと後藤はいつも制服姿からスーツに着替えると車乗って何処かへ行ってしまった。

 

「……全く後藤さんは」

 

南雲はまだ書類はあるのにと言おうとしたが、言うのは止めて自分で整理し始める。ただしその表情はどこか嬉しそうであった。

 

――――――――

 

Bar forbidden

決して表からは行けない会員制のバーであり、それを利用するのは財界人や政治家などそれなりの人物ばかりである。

そして後藤はバーの仕切りがある個室に腰を置く。

ここは基本バーの人間もバーを利用する他の人にも守秘義務があり、内部で話されたことは絶対に漏れることはないが、それでも聞かれたくない物があった場合はそれ専用の個室がある。

 

「……久しぶりだね。ミカ」

 

「久しぶりだな、後藤」

 

喫茶リコリコのマスターであり元DAの教官のミカと元警視庁公安部で現警視庁警備部特車二課第二小隊隊長の後藤。

交わりにくいはずではあるが、知り合いであったようだ。

 

「すまないね。俺のところの部下が暫くそっちに通ってて」

 

「なに…千束が喜んでいた。そのせいか千束も最近はレイバーにハマってリコリコでレイバーを持とうと言って聞かなくてな」

 

「レイバーほしいなら紹介するよ?うちの部下には篠原重工の御曹司も一応いる。もっとも本人はその立場を嫌っているが」

 

「駐車スペースがないんだが…」

 

「なあに。おたくらならパパっとでしょ?我々警察が踏み込めないところも踏み込めるなら民家の一つくらい潰したところで」

 

そう言うと後藤はウイスキーに手を付け、飲んでいる。

 

「…後藤、部下に言ったのか?」

 

「ああ言ったさ。いやぁ、楠木司令も強情だねぇ。わざわざリコリスを保護しただけなのにあれだけ情報部の連中に囲ませるとか…同じ治安維持をしてる人間だってのにまあ。お陰で部下に誤魔化しようができなくなったよ。うちの連中は謎だと思うことはなんやかんやで調べたくなるのが多くてね。その前に先手を打っておこうと……。まあ、他言無用と厳命はしておいたけど」

 

「………そうか」

 

「おや、一応機密バラしてるのに良いのかい?」

 

「今は俺はDAの左遷先の人間だ。それに関しては何も言えない」

 

「あ、そう…」

 

そして暫く後藤とミカが無言になる。

その二人はそれなりの友人ではあるらしく、緊張といった面は見られなかった。

だがそこから今度は後藤が口を開く。

 

「そういえば聞く限り千束ちゃんは元気そうだけど、『人工心臓』も問題ないの?」

 

「ああ、千束の体調等は問題ない。だが…」

 

「千束ちゃんの好きな通りに過ごさせればいいさってのがミカの意見だろう?なら俺は口を挟むことはないさ。だがあいつがわざわざ機関の教えを破ってまで接触してきたと聞いた時は驚いたが……全く、今の俺じゃ何もできないのに厄介事ばかりは積み重なる…神でもなんでもいいからなんとかしてほしいよホント」

 

酒が入ってるからか若干ぶっきらぼうになっている後藤である。

 

「後藤、お前は本当に何もできないのか?」

 

「当たり前だ。辺境の埋立地に飛ばされた身だよ?こっちができるのはレイバー犯罪の取り締まりかハゼ釣りか野菜畑か…」

 

「……後藤。隠しても無駄だ。とっくにあの件については掴んだのはわかってる」

 

「お?そこまで地下鉄のことの情報渡ってたの?」

 

「勘だ」

 

「おっと」

 

珍しくカマかけに引っかかってしまった後藤である。

 

「情報を集めることには何も言わないが何を企んでいる?」

 

「なに…治安維持のための大事なことさ。もっとも少し警察官としては外れているかもしれないが……ちょっと引っかかることがあったからね」

 

「…やっぱりお前はカミソリだな。昔から変わらない」

 

「……どうだか」

 

後藤はウイスキーのグラスを覗き込みつつ、再び飲み干した。

 

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