機動戦士ガンダム Living Days   作:すからぁ

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エピローグ

エピローグ

 

 

 エレシュキガルを巡る戦いは幕を閉じた。四つ巴から始まった戦争は国連の敗走により三つ巴に、そして、この戦いを経てFPBとデウス残党軍は終戦協定を結び、新生連邦軍はやがて敗退した。

 総司令亡き新生連邦軍はその後に解体され、組織として存在は無くなった。結局連邦軍は地球圏の統一を為すことが出来ないまま、終焉を迎えたのである。後に平和戦争と呼ばれるこの戦争は多くの犠牲者を出したのだが、それと同時に今後の世界を大きく変えるきっかけとなった。

あれから一年の時が流れた。P.C0008年。新生連邦が崩壊した後の世界では、代わりに地球の国々は、元々地球連邦政府内の一組織であった平和国連盟によって統一されていく事になる。ギルス・パリシム亡き今、新たに設立された、新平和国連盟の最高議長にギア・ジェッパーが就任。彼により、武装撤廃宣言が行われた。それは許可なきMSにおける兵器や重火器類を条約の下、使用を禁止するというものであり、これにより、MSは兵器としての価値を大きく失う事になる。MSは、これからは運送用や農耕用等、人々のインフラや生活に欠くことの出来ないものとしての配備が進んでいく事となったのである。

そして、ギア・ジェッパーがデウス帝国皇帝、ナジェラ・メリクリファーと対談。こうして、新平和国連盟とデウス帝国の間に恒久和平条約が結ばれた。百五十年以上に及ぶ地球圏とデウス帝国の争いは平和という形で終焉を迎える事となったのであった。

表向きには平和になった地球と宇宙。だが、完全な恒久和平へはまだ遠いものだった。大規模な戦争は無くなれど、小規模な小競り合い等は未だに続いていたのである。こうした背景もあり、完全な平和に導くまでにはまだ、時間を要した。

その中で、新平和国連盟とデウス帝国の共同の管理の下、一つの組織が設立された。平和維持隊と呼ばれる部隊である。立場としては新生連邦政府発足後の新生連邦軍と何ら変わらぬものではあるが、この組織の大きな違いというのは、新平和国連盟並びにデウス帝国直属の部隊と言う事である。この存在は未だに存在している小規模の内乱やテロリストの鎮圧の為にある。

だがギアは大きな戦争がなくなった時代であれど、こうした武装組織が存在しなければならないという現実に、日々、苦悩していったという。

 兵器は平和の敵である。だが一方で、抑止力としての役目もある。人々の平和な日常というのは、こうした矛盾した存在によって成り立っていると言っても過言ではない。

 日常を作り出している文明、文化。それらと相反する存在、戦争。これらの存在は表裏一体であり、そして、日常を築き上げていく為には多くの人間の努力が必要となる。人々の秩序を守る為には、与えられた力の正しい行使が、日常を支える鍵となる。

 この戦いでレイは、日常を守る事が出来た。ごく普通の日常を過ごし、その上で普通でありたいと思った少年は、日常を守る為に地球を守り、仲間と共に、それらを救ったのだ。

 

 

 

では、あの戦いの後、各人々はどうなったのだろうか?

 

 

 

 エリィ・レイスはネルソン・アルビュースと無事、結婚。ネルソンは左腕を失っていたが、上肢の義肢を作り、そのリハビリも終え、現在は医者の資格の再取得の為の準備を進めているという。その間、エリィはMS乗り時代や非営利の復興作業を行ってきた経験を活かし、ジャンクパーツを扱う商店を開始。ネットワーク販売等を行い、少しずつだが生計を立てて言っているという。

 

 最終決戦時まで同行していたエレン・ニーマードは住み込みという形でエリィ達の下で販売業の手伝いをしている。つまり、家族同然の生活をしていた。弟であるゼオンを失い、また、友人であったスバキも戦争で失い、失意の底に落ちていた彼女だったが、今は優しい夫婦の手伝いをすることが出来、幸せそうに過ごしていた。しかし、あの戦いの後想いを伝えたレイから丁重に交際は断られたという。しかし、レイに交際を断られても、連絡は続いているという。友人として、交流を続けているのだ。

 

 ガースト・ピュアスとプレーン・ミーンは日本に戻り、再び暮らし始めた。そこで、改めてプレーンはプレーン・ピュアスと姓を変えた。本当に平和を迎えた時代で夫婦となった彼等は第一子の出産を間近に控えていた。ガーストは平和戦争以前と同様に、シュアー・ラヴィーノの経営するジャンク屋で働き続けていた。プレーンはそのようなガーストを支える専業主婦として、幸せに生活をしている。目前に迫る、第一子を心待ちにしながら。

 

 インクとスラッグはそれぞれの故郷に帰った。スラッグが最終決戦時に伝えたインクへの想いは、残念ながら届かなかったようだ。しかし、インクとは相変わらず仲の良い様子で、時折酒を飲みに行く間柄ではあったという。

 

 ミシェはオスロに戻り、ジャンク業を続けている。相変わらず女性には恵まれない様子だったが、仲間達と仕事をする彼は幸せそうな表情を浮かべていたという。そんな彼の楽しみは、週に一回仲間達と酒を飲み、朝まで過去の女の話をする事だった。

 

セイントバードチームの面々以外にも、この戦争を戦い終えた人達がいる。

 

 アレン・レインド。かつてのデウス動乱で地球連邦軍として活躍をしたデウス動乱の英雄。彼は今回の平和戦争に於いてもブライティスガンダムを駆り、ネェルガルキャノンが地球に発射されるのを阻止する事に成功している。あの戦いの後、彼は一命を取り留めていたのだ。そして一年後。彼はジャンヌ・アステルと共に過ごす事になる。

最愛の人間であるココット・メルリーゼをエファン・ドゥーリアによって殺された彼。しかしその傍らジャンヌにより助けられた場面も多かった。

 だがその一方で彼はココットの死を引き金にしてブライティスに搭載されていたクリスタルシステムを発動させてしまった。その結果、凄惨な光景を生み出してしまった。

 今、彼は生きている。生きてこそいるが、その十字架は消える事は無い。彼が今両腕を無くしてしまっているのは恐らくその代償なのかも知れない。

 怒りに狂い、罪なき人間を巻き込んだ事実は消えない。彼はその事を胸に秘めつつも、今後の世界を見ていくつもりなのだ。

「世界は平和になっていった。けど、まだまだやるべきことはある。ギア議長が頑張ってはくれているけど、俺達に出来ることはしっかりと、やっていかないといけない……。」

アレンは、ジャンヌに言った。

「俺は大きな罪を犯している。恐らくもう、天国に居るであろうココットに会わせる顔もないだろう。けど、それでも構わない。それ相応に罪は償っていくつもりだ……」

「先の戦いで、余りにも多くの惨劇が生まれました。貴方一人の責任ではありません。私にも責任があります。これからの人生は、デウス動乱から平和戦争に至るまでに無くなられた多くの人々の贖罪の為に生きて行ければと、思います……」

「俺達に出来る事をしていければと、思う……」

「ええ……」

互いに恋人をかつて失った者同士がこうして引き合う結果となったのは因果なのかも知れない。だがその代償は、余りにも重い。

 彼等は平和の為に戦う傍ら、多くの罪を背負っている。ブライティスガンダムに搭載されているクリスタルシステムは恐らくその象徴と呼べるだろう。

 力を発揮する傍ら搭乗者の感情によって暴走する事さえあるそのシステムは、平和の為に扱うには余りに規格外な存在と呼べたのだった……

「俺達に出来る事は余りに少ないかも知れない。けど、俺は十字架を背負うよ。」

「それに私は付き添います。出来る事をして行きたいと、思いますわ……」

アレンとジャンヌ。平和の為に動いていた彼等の果ては余りに物悲しいと呼べる。それは彼等が背負った罪を贖罪しなければならないという今後の生活が関わっていると言えるだろう。

 彼等は互いに結ばれた。しかしそれは幸福と呼べるのかは分からない。互いに最愛の人間を失った者同士。そして、ジャンヌはアレンを暴走させてしまった事に対する罪悪感を、彼に対して感じているのだった……

「ジャンヌ、君が何か罪を感じる必要はない。俺は、出来る事をやっていくつもりだ。」

「アレン……」

戦争が起こした悲劇は多くの人間の運命を変えた。アレンも、本来ならばココットと添い遂げられたかもしれない。だが歪んだ世界が生み出した思惑は彼を絶望の淵に陥れ、そして彼は極限の怒りを感じ、あらゆるものを壊滅させた。

 一方のジャンヌも平和の為に行動をした結果、裏切りに遭い、それが彼女を行動するきっかけになっていった。その中で彼女はレイを利用する形を取り、そして一度は憎まれた。やがて互いに共闘していく事になったのだが、一方でブライティスに禁断のシステムであるクリスタルシステムを採用。平和の為に危険を冒すという矛盾行為を起こし、その結果彼を暴走させてしまった。

 平和戦争が終わっても彼等にはしなければならない事が山程ある。恐らく、彼等はこの先の世界で真の平和の為に戦い続ける事となるだろう。それは生涯に渡る贖罪と呼べるのかも知れない。

 

 

 

では、レイの故郷、モントリオールでの面々はどうなったのだろうか。

 

 

 

 レイの友人達はハイスクールに進学をした。それぞれの将来の夢の為に、学びたい事について学んでいるという。中には家計の為に働く者もいたという。

 

 リルム・エリアス。レイの幼馴染。姉のヒューナ・エリアスが自殺をし、更にヒューナは血の繋がった姉でないという事実は彼女を苦境に追い込んだ。それから平和戦争が終わるまでは両親と共に生活はしていたというが、口数はほとんど利かなかったという。

 ベレーナジュニアハイスクールを卒業した彼女は親元を離れた。レイと共に経験した事を思い出していた彼女は、今まで全く縁のなかったMS工学の道を歩みだしたのだ。

 親元から離れ、新しい環境で過ごすリルム。しかし最初は癖の強い男子生徒が大半を占めるクラスで馴染むのに苦労したという。

 が、彼女に奇跡的とも呼べる出来事があったのだ。先の最終決戦でヴァントガンダムに駆り、デスゲイズに倒されたはずのアイリィ・トゥールが転校してきたのだ。彼女は国連が解体したことを機に軍を止め、退職金を使ってMS工学を学ぼうと決意。そこで奇跡的にリルムと再会したのであった。

「アイリィさん!!」

「リルム!!この学校に居てたんだねー!」

「信じられない!まさか……こんな!嬉しい、私……本当に……」

これまで様々な経験をしてきたリルムにとって、シュネルギア内で仲が良かったアイリィと一緒に学ぶことが出来るのは何よりの幸せだったのだ。

「退職金が出てね、そこでMSの事学ぼうと思ったらさー、まさかリルムがここにいるなんてね!」

「うん、うん!!」

リルムは、リルムなりに幸せを噛み締めている。アイリィはリルムよりも年齢が二つ上であったがクラスは一緒だ。彼女の過去の情報はクラスメイトには知らされていない。軍属であり、MSに乗って戦っていたという事実は隠しており、表向きでは二浪した生徒という名目でハイスクールに通っているのだ。

 

 レイの家族達は相変わらずモントリオールで生活をしている。ジュナスは大規模な戦争がなくなったことでジャーナリストとしての仕事は減ってきていたが、現在でも小規模の国の内乱等はある為、それらのジャーナリストとしての活躍をしている。しかし、以前よりも家に帰る事が多くなったという。

カレンはレイの事をようやく受け入れることが出来ていた様子だった。レイがアドバンスドタイプという事実は最初、困惑する事実ではあったが、ジュナスの説得も甲斐あり、カレンはレイを改めて自分の自慢の息子として受け入れたのであった。だが、帰ってきていない息子の心配はしている状態である。

 

 

 

 レイ・キレス。ごく普通の学生生活を送っていた彼はある出来事をきっかけに壮絶な体験をしていくことになった。やがて最終的にはエレシュキガルを巡る攻防戦にも参加し、最強の敵であったエファン・ドゥーリアを破り、間接的とはいえ地球を救った英雄だ。そして、何よりも常人を超えた存在でもあった。ごく普通の少年だったレイ・キレスは最終的にはEVEシステム由来のディヴァインセルを受け入れた、アドバンスドタイプEVEとして人を超えた存在へと覚醒し、この戦争を生き抜いた。

 あの戦いの後、一命を取り留めたレイは、自分のすべき事を胸に秘めていた。それから、彼は実家に戻る事なく過ごしていたのだ。

 と言うのも、彼は日常を守る存在として、戦争の後、多くの事を学んで行きたいと考えていた。彼はそのまま実家に戻る事なく、ある場所にて語学留学を行う事を決めていたのだ。

だが、何故語学留学をしようと決意したのか。それは、レイには多くの人の為に役立ちたいという意思があったからだ。彼は語学留学をしている内に、やがて医療人への道を歩もうと決意した。その大きなきっかけは、最終決戦におけるエファンの言っていた人を愛する事が大きく関係していた。

自身が人を救う人間になり、多くの人と交流したいという意思が、今のレイにあったのだ。そして、その人達の日常を守る支えとなりたい。それが、今の彼の想いだ。

 今、彼は留学をしている。しかし彼が語学留学をする前に、平和維持隊への勧誘があった。しかしレイはこれを拒否。レイはMSに乗る事を、二度としまいと誓っていたのである。もう、何かを守る為に人を殺める事をしたくないと、考えていた為だ。

 ごく普通の生活を送ってきた彼は、貴重な経験をし続けた。仲間を守る為に敵を殺し続けたレイ。しかし彼自身は元々優しい少年だ。それでいて、普通の生活を送りたいと人一倍願っている少年でもある。彼が最終決戦で語った言葉である、“人を超えていても人は人”という言葉。それは彼自身を指しているとっても過言ではなかった。

 人を超えた存在、アドバンスドタイプ。レイは最初、この力を拒否した。そして、苦悩し続けた。だが今、彼はこの力を受け入れた上で新しい未来を歩もうとしている。アドバンスドタイプEVEとしての力が、二度と戦争等の非日常で使われない事を祈りながら、彼は医療人を目指す為の語学留学をする事に至ったのだ。

 

 オーストラリア、ダーウィン。かつて新生連邦軍がヴァイダーガンダムを駆り、市街を廃墟にした街。現在は復興が進んでおり、レイが今、いる場所。彼は今アパートで独り暮らしをしている。そしてそこは、エファンが悪夢を見せた場所でもあった。

 今のレイには多くの人の日常を少しでも救いたいという気持ちがあった。その為には、自分自身がもっと知識を磨き、人の日常の為に役立てる人間にならなければと考えていたのだ。

 彼はこの事を知人達に話していた。平和戦争で共にしたエリィをはじめとする仲間や、友人や幼馴染のリルム等。そして、かけがえの無いない家族にも。今でも彼等は交流を続けている。Eフォンによって、レイは皆と繋がる事が出来たのだ。

「レイは、元気にしてる?」

声の主はリルム・エリアスだ。アイリィ・トゥールという友人を経て、充実したハイスクール生活を送っているリルム。彼等は一度恋人同士という関係になっていたが、今では以前のような関係に戻っている。

「うん、大変だけど、楽しくやってるよ。」

「そっか、またモントリオールに戻ったら顔を見せに来てね!」

「そのつもりだよ!じゃあね。」

離れていても人は繋がっている。一度は関係が破綻しても、時間がそれを戻す事さえある。それは何がきっかけかは分からないが、人はこのようにして様々な人と交流し、社会生活を生きていくのだろう。

 

 

 

 とある朝。レイはアパートの一室にて目を覚ました。あれから一年の時が流れたレイの姿は成長しており、それでいて美しかった。うんと欠伸をした後、レイは静かに窓を開ける。

「気持ち良い……フフ、良い風だね……」

その日は爽やかな風が吹く日。そして、朝日が眩しく、それでいて気持ちの良い朝。

レイは窓を見て優しい笑みを浮かべた。眼は青く澄んでおり、金色の髪を靡かせた。

 彼の見る景色は青く澄んでいた。雲一つない、透き通った空。爽やかな風は彼自身を笑顔にしたのだった。

 思えばあの戦いは何だったのだろうとさえ、思う事がある。自らの中に力を宿し、それが火星にある、アドバンスドタイプの始祖と呼べる存在、EVEシステム由来の力。だがそれは、平和を謳歌するこれからのレイにとっては不必要な存在だ。あの時の力がこれからの生活でハンデになる事は、ない。彼はそれを理解した上で、生きていく。自らの身体の事での悩みなど、ない。それを認めた上で行動しているのだから。

 その後、レイは身嗜みを整え、移動用に購入したバイクに乗る為にまずはヘルメットを装着。その後でバイクに跨り、エンジンを掛けた。

 やがてバイクの起動音が鳴ったと同時に、レイはアパートの駐輪場からバイクを発進させた。ヘルメットから余る、煌びやかな金色の髪を靡かせ、彼は走り去ったのだ。

 P.C0008年。それぞれの新しい未来が歩み出す。皆、それぞれの未来を生きていく為に。

 

~fin.~

 

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