後半はある、人物との出会い。
新生連邦軍本部のあるロサンゼルスに一隻の大型輸送機が姿を見せた。そこから降りてきた人物。ハット帽を被り、冬場にも関わらずサングラスをしているその妙な身なりの男。その男は、総司令に会いに来ていた。
やがて本部前に着いた男は、レヴィー・ダイルに会い、挨拶をする。
「お会い出来て光栄です。レヴィー・ダイル新生連邦総司令。」
「こちらこそ、お世話になっております。スルース・ディアン社長。」
スルース・ディアン。新生連邦政府にMS等の戦闘兵器を提供している軍事企業、アーステクノロジーの社長である。出会った直後に、両者は握手を交わした。
スルースは新生連邦への最大の出資者という事もあり、総司令、レヴィー・ダイルの対応は丁寧だ。この時の警備は厳重であり、幾多ものガードマン、果てはMSが並んでいた。この時、総司令の近くにはソフィア・ブレンクスの姿もあった。
輸送機内のMSデッキにて。そこにはスルースと総司令、そしてソフィアの三人が居た。
「総司令、そちらの女性は?」
「彼女はソフィア・ブレンクスです。私の側近を務めています。」
ソフィアはスルースに対し、静かに会釈のみをした。
「可憐な方ですねぇ……よろしくお願いしますよ。」
と、スルースはソフィアにも握手を求めた。それに応じるソフィア。
「さて、総司令、ご覧になって頂きたい機体はこちらです。」
スルースはそう言って、MSデッキ内に明かりを付けた。
「眩しい……」
ソフィアが一言、言った。
総司令は、明かり灯されたと共に、そこにあるMSを見た。
そこにあったのは四機のMSだ。今回、スルースはこれらを運送する為に、総司令に会いに来たのである。
「これは……まさか、ガンダムですか。」
そこにあった四機のMS……いずれもが、ガンダムタイプだったのである。
特徴的な二本のアンテナとツインアイ、口径部に該当する突起物等、いずれもがガンダムタイプに該当する、特有の顔貌をしている。
「ガンダムが、四機も……」
この世界観でのガンダムと呼ばれる機体は最初のMSと言われる、ファースト・ガンダムと、デウス動乱時に稼働していたとされるクリスタルガンダムのみであった。しかしP.C歴になり、レイの駆るアインスガンダムや、チェーニ姉妹が乗っていたヴェーチェルガンダム、エクルヴィスガンダムと、ガンダムの数は増えつつある。
今回は四機のガンダムが同時に開発されたのだ。その情報を知らなかった総司令は、その目を見開いた。
「失礼しました総司令。ですが、敢えて私は事前情報を伏せておきました。まさかガンダムタイプが四機も製造されているなど、思わなかったでしょう?サプライズと言うやつですよ。」
スルースはレヴィー・ダイルに対しての発言力が強い。やはり、新生連邦軍に対する最大の出資者という立場があるからであろうか。
「ところで総司令、まずは手前にあるガンダムを拝見して下さい。」
そう言われ、総司令は一番手前にあるガンダムを見る。
「機体名、ガンダムナパーム。貴方の専用機です。」
総司令の専用MS、ガンダムナパーム。型式番号NFMSX-BX54。全高18.7メートルのその機体。
その機体の最大の特徴は背部に大型ナパームランチャーと呼ばれる、巨大な実弾兵器を二基搭載していることにある。これによって質量による攻撃を可能とするのだ。
「貴方はデウス動乱時に前線で活躍をされたと聞いております。その敬意を表し、制作させて頂いた機体です。気に召しましたでしょうか。」
「私の専用機がまさかガンダムタイプだとは、思いもしませんでしたよ。これも軍備増強を進めて行った結果なのかも知れませんね……。」
レヴィー・ダイルは、静かに笑った。
「ところで……残りのガンダムタイプは、どのような機体なのでしょうか。」
と、総司令が聞いた時――
「よくぞ、聞いてくれました!!」
とスルースが大声を上げた。明らかに先程よりも気持ちが高揚している。まるで、それらについて聞かれた事を待ち望んでいたかのように。
「総司令のガンダムは勿論ですが……残りのガンダムタイプ達は正直、アーステクノロジーの傑作とも言える機体ですよ!」
新生連邦は総司令、レヴィー・ダイルの意向で軍備を徹底強化していく方針だ。その為、デウス動乱時以上の兵器の数を増産しているのが現状だ。今回のアーステクノロジーによるガンダムタイプ増産計画もその内の一つである。
これらの機体の外見的な特徴として、伝説の機体として語り継がれているガンダムの姿とは思えない姿をしている。辛うじてガンダムタイプと分かるとすれば角がついていて、カメラアイが二つついていることぐらいか。
「まず、手前の機体がNFMSX-4800デスペナルティガンダム。この機体は、武装が三機の中で一番少ないです、しかし独特の形状をしています。なんと言ってもこの機体の持つ鎌がこの機体の最大の特徴と言えます。」
「鎌……ですか。シルエットを見る限りではその外見上での印象は強いですが、実用的とは思いにくいですが。」
二重大鎌と呼ばれる、刃が二つ付着している巨大な鎌を持った機体がこのデスペナルティである。だが総司令の言う通り、鎌は普通戦争で戦うには不利な形状をしている。その疑問に対し、スルースは右手をパチンと弾き、答えた。
「総司令、まさかこんなデザインのMSが現れたら誰だって驚きますよね。増してや戦場で不必要かと思われる鎌の存在。その印象は、死神を連想させる。ですがそれで良いんですよ。」
「それで良い……?」
「デザインとはとても大切です。様々な機体があるこの世の中、見た目で敵を圧倒することも大切なのですよ。デスペナルティはある意味見た目重視の機体と言えます。勿論鎌に関してもご心配なく。切断力は十二分にありますから。“あの”パイロットなら扱えるでしょう。」
大型の鎌を持つガンダム、デスペナルティ。鎌も特徴だが、何よりも特徴的なのは漆黒のウイングだ。シルエットが印象的な機体であり、総司令は関心を抱く。
「では次に。NFMSX-6400バイラヴァーガンダム。この機体は近中遠どの距離でも対応できる、言わば汎用型のMSです。強力な近距離用の武装として特殊な槍状の武装があります。これ以外にもビームサーベル、ビームライフル等といった武装を搭載している為、様々なミッションに対応出来ます。更に三機の中でリーダー格でもあり、指揮官用の機体としても機能します。」
「リーダー格……ですか?」
と、総司令は聞く。
「言い忘れていましたが今から説明する機体を含む三機はチーム運用なんですよ。三機の小隊を組み、それぞれが運用する。そして小隊には隊長が必要です。その中のリーダー格が、この機体という訳ですよ。」
「……成程。」
と、総司令は納得した様子で言った。
「最後……一番奥の機体はNFMSX-5600アトミックガンダム。この機体は簡易変形可能なTMS(トランスフォーメーションモビルスーツ)ですね。あと、武装が新型の三機の中で一番多いのも特徴ですよ。基本的に射撃の役割を担う機体です。」
機体名称を聞き、総司令は疑問を抱いた。
「アトミック……原子力?何故そのような機体名が?」
スルースは、言った。
「気になりますよね?この機体、アトミックガンダムは核兵器を搭載しています。」
「核兵器ですって!?」
レヴィー・ダイルは驚いた。無理もない。
それは有史以来の人類にとっての叡智の炎。人類が触れてはいけない禁忌。核兵器は旧世紀から続く核兵器防止条約により、所持及び使用は禁忌である。
しかし、スルースは“核兵器”という単語を、あっさりと述べた。総司令はこの男に対し、僅かながら恐ろしさを感じていた。
「正確には特殊核と呼ばれる、本来の核兵器と違い、放射能汚染が発生しない特殊な核兵器です。核の破壊力を維持した上で地球を汚染しない兵器……傑作兵器と言えますが、その分莫大なコストが掛かります。しかし、運用できれば確実にそちらの軍のお役に立つ事ができますよ。」
スルースの言う、特殊核とは極秘裏に開発が進められた兵器である。核の破壊力のみに特化した兵器であるのだが、実用化に至るのに時間が掛った。
その特殊核を搭載している唯一のMSが今回スルースから提示された新型ガンダムタイプの一つ、アトミックガンダムである。放射能汚染を起こす核兵器ではないが、核兵器級の戦術兵器としての破壊力があるミサイルを搭載している為、その名前はある意味間違っていないと言える。
(アーステクノロジー、やはり恐ろしい企業だ。味方であることがこれ程心強いことはない。)
今までにないガンダムタイプ達。軍備増強を目指す総司令だったが、実際にこうした機体の情報を聞かされた時、その印象は大きく変わる。
「しかし……ガンダムの数が増えていくというのも、不思議な感じですね。」
と、総司令は静かに言った。
デウス動乱時まで存在していた“ガンダム”と呼ばれるMS。それは伝説のMSという側面が強かった。しかし戦後になり、そのガンダムの存在は増えつつあるのであった。
「今から百五十年以上前、最初のMS.、ガンダムがデウス軍を圧倒したと言う話ですけど、それが由来してガンダム伝説は現在も語り継がれています。貴方の機体、ナパームをはじめ、このデスペナルティ、アトミック、バイラヴァーの三機は強さの象徴とされているガンダムのバリエーションだと思っていただけたら良いでしょう。」
「時代は、変わっていっているという事なのでしょうか。」
スルースは答える。
「そう言うものですよ。例え開発コストが高くなっても、貴方をはじめとしたエースパイロットにこれらの機体を乗せ、戦果を上げれば十分に強さをアピールできます。だから強さの象徴として我々はガンダムを作るのですよ。これは人間の心理に関係がありますね。強いものを具体的にしたいと言う欲望……それが現在のガンダムと言う形となって現れています。」
「強さの、象徴……。」
強さの象徴、ガンダム。最初の機体、ファースト・ガンダムから百五十年以上経過した時代で、多くのガンダムが開発されていた現実が、ここにあった。
「あと総司令、これらの三機には更に売りがありましてね。機体には前頭葉調節システム、通称“FLCシステム”が施されています。」
「FLCシステム?」
スルースは舌で唇を湿らせ、語りだす。
「ヒトの理性を司る、大脳において重要な要素を秘める前頭葉。戦争では理性的な判断も大切ですし、その上で闘争本能も大切です。それらを上手に引き出すのが前頭葉。状況を理解し、把握し、そして時には敵意を見せる。この前頭葉を上手く利用したのがFLCシステムです。このシステムが、貴方の機体以外の三機には搭載されています。」
スルースの言うように、戦場においては的確な行動は必要不可欠。だがそれだけではなく、敵を絶対に倒すという敵意も必要となる。それらを増幅するのがFLCシステムだという。
「ですが並みの人間、通称オールドタイプと呼ばれる人間ではこれをコントロールするのは非常に難しい。要は適切な動作を行いながら敵意を剝き出しにしなければならないのです。つまりオールドタイプがこれらのガンダムタイプに仮に搭乗した場合、精神崩壊は免れません。」
説明を聞く限り、軍備増強の為とはいえ、明らかに常軌を逸したMSを生み出したアーステクノロジー。これもまた、レヴィー・ダイルの意向なのである。だがその話を、彼はあまり好ましい様子で聞いてはいなかった。
「そこで……総司令、貴方ならどのような人間を選びますか?この場合、世の中にいる、“シンギュラルタイプ”と呼ばれる人間を待つには時間が惜しいとしたら?」
総司令はこの質問に対し、スルースを見て言った。
「……強化モデルですか。」
総司令が述べた、“強化モデル”というキーワード。レイやエリィのようなシンギュラルタイプといった存在は見つけ出すのが難しい中、生み出された生体改造ユニットの事だ。
そして、“強化モデル”というキーワードは総司令を明らかに躊躇わせた。
「ご名答!そう、通常の人間では扱えない兵器は、このような強化モデルを使って扱わせます。強化モデルはコストも良いし、何よりも貴方の目指す、徹底した軍備増強のためには強化モデルは欠くことのできない存在だと考えます!!」
これを聞いた総司令は、表情一つ見せなかった。
「総司令、少しお見せしたいものがあります。移動して頂く事は可能でしょうか?」
「ええ。」
やがてその場にいた三人はMSデッキから移動をする。スルースが、案内する形で。
輸送機内を移動している最中、歩きながらスルースは総司令に語り続けた。
「総司令、貴方は軍備の増強を図っていきたいという意思があるという話を聞いております。これからの時代、軍備の増強を図る為にはそれらを扱う人間も強力なものにしていなければならない。そこで、私はデウス動乱後に強化モデルの研究を始めました。」
「強化モデルの研究……ですか?」
「デウス帝国が使用していた強化モデル。これらの技術は連邦軍にも利用できる……と判断しました。私はアーステクノロジー社の社長でありますが、同時に強化モデル開発に関係する管轄顧問でもあります。」
スルース・ディアンのもう一つの顔を総司令は今、知った。彼は強化モデルの研究を優先的に進めていた人間だったのだ。
デウス動乱時、シンギュラルタイプと呼ばれる人種が活躍をしていた時代。だがその一方で、デウス帝国軍はこうした戦力を増強する為に密かに強化モデルと呼ばれる人間の開発に乗り出していたのだ。
シンギュラルタイプは戦場で有用な存在。だがその覚醒への機序は不明であり、明確な情報も出ていない状態。それらをより効率的に可能にする為、デウス帝国は常人を強化するという禁忌に乗り出したのだ。
そして戦後。アーステクノロジー社長として軍事企業を経営する傍ら、スルースは強化モデルの研究にも着手した。敗戦国、デウス帝国の技術を利用して。
「人の脳は無限の可能性に満ちています。しかしオールドタイプはその可能性を使い切れずにその生涯を追えます。シンギュラルタイプと呼ばれる人種が増えているとされる現状ではありますが、それを示す根拠は確立されていません。あくまでも、可能性の話に留まるのです。」
総司令はこの話に対して、俯く。
「戦争では優位に働いていたシンギュラルタイプと呼ばれる人種。当然、戦争に勝つ為にはそうした人種は増えた方が良い。だがしらみ潰しにシンギュラルタイプを見抜くなどまず不可能な話。そこで、効率的に考えてどうすればシンギュラルタイプを作り出す事が出来ると考えますか?」
またしても、スルースは質問をした。
「人工的に作成する事……ですか?」
答えた時、スルースはパンッ、と両掌を合わせる。大きな音が部屋に響いた。
「ご名答です!居なければ作れば良い。実際に我々が行った事は、デウス帝国が行っていた事を真似するだけです。ただ、それだけ。人体実験など、国際倫理委員会がどうのこうのと言われるかもですが力を持つ存在が増える事は、軍にとっては歓迎の筈!人道的とかそんな甘ったれた話じゃ軍備増強なんて出来ませんよ。」
この男の台詞は狂気に包まれている。人工的にその能力を引き出すという事はそれだけ危険を秘めている。それを平気で行うのが、この男、スルース・ディアンだ。
「人間を強制的に進化させる強化モデル。かつての戦争で猛威を振るった存在……しかし、それらを更に上回る存在、“特殊強化モデル”をご覧になっていただきましょう、総司令!」
と、ボタンを押すスルース。その時、厳重な扉が開いた。
そこには小さな檻に閉じ込められた三人の、人間の姿があった。
「おやおや……まるで飢えた野獣のようだ。歯が剥き出しになっていて、こちらを見ている。」
「これは……」
総司令はその三人の姿を見て動揺していた。内一人はじっとうつむいた状態が続き、残り二人はスルース達を睨み続け、檻に噛み付いている。その姿に、人間らしさは見られない。
「これが……強化モデル……」
「強化モデルではありませんね、“特殊強化モデル”です。」
「特殊強化モデル?」
先の話題にあった、強化モデルと違う存在の話をしたスルース。特殊強化モデルとは何か……総司令は、初めての単語に動揺を隠せない。
その時、織の中にいた人間達は野獣のようなうめき声を上げた後、突然大声をあげた。
「うおおおおお!」
「うらああああああああ!!!」
野獣のように叫ぶ人間達。いや、これを人間と呼んでよいものなのかという疑問さえあった。
「おや、これは、これは……相当ストレスが溜まっているようですね。ははははは!」
「……彼等は危険過ぎます……」
目に余る光景を見た総司令。彼は思わず目を逸らす。一方で目の前にいるこの男の笑顔に対し、疑問を抱いた。どのようにすれば、人間と言う生き物をここまで化け物のように仕立て上げることができるのか、理解出来ない様子だった。総司令は、体のどこかで寒気を感じたのは間違いない。
「特殊強化モデルは強化モデルを更に強化した存在です。従来の強化モデルは人工的にシンギュラルタイプに近づける事を目的とした手術を行い、強化します。」
“強化する”という言葉を平気で述べる、スルースという男。
「ですが特殊強化人間はそれの更に上を行きます。只の強化人間に留まりません。状況判断能力や空間認識能力、そして、闘争本能……それらを剥き出しにし、戦う。まさに理想的な“ソルジャー”と言えますね!」
スルースの声が、高らかに響く。
「それが、特殊強化モデルと呼ばれる人種です。彼等はその中の成功作品ですよ!!」
人間を、“作品”と呼ぶスルース。この男の常軌を逸している思考は、総司令を不快な気分にさせた。普段は冷静さを保つ彼でも、この男の狂気の前では不快感しかない。
スルースの言う、“特殊強化人間”は彼の研究の成果といえる存在だ。つまり、デウス動乱後に生み出された存在と言える。明確な敵対勢力が居ないこの世界でこうした人間が生み出されるという現実。それが今、起きているのだ。
「彼等が新型ガンダムタイプのパイロット三人です。紹介してきましょう。」
スルースは得意げに、語り始める。
「まずはニッカ・ドレイク。二十二歳の青年で、強化以前はプロバスケットプレイヤーの選手として活躍。強化された現在ではひたすら敵を狩る事を自己満足としている。ちなみにニッカは、より優れた人間となりたかったそうです。ジャンルは違いますが、優れた人間になりたいと言う彼の願いは叶ったと言えるでしょう。」
茶髪の青年はニッカと言った。特殊強化モデルへと変貌した彼は、スルースの言うように、凶悪な人格を植え付けられたのだ。
「続いては、ハーディ・クオレント。同じく二十二歳の青年で、強化以前は犯罪行為を繰り返したとされてます。彼は死刑囚でもあり、何度も脱出を繰り返してきたそうです。その凶悪性は他の二人よりも遥かに上です。何せ、元々が危険人物ですから。それならば戦力として扱う事が出来れば重宝するだろうと考え、私は彼を採用しました。」
「死刑囚……ですか。」
「その上何度も脱獄を繰り返しています。これ程凶悪な人間も珍しいでしょう。大丈夫、新生連邦のパイロットとして働いていると言えば警察もすぐに聞き入れてくれましたよ。」
明らかに権力で死刑囚の罪を揉み消しにした例である。死刑囚を特殊強化モデルにした為、警察も関与する事が無くなったのだ。それはレヴィー・ダイルが決めた話ではない。別の高官が取引をした結果、この場に死刑囚、金髪のハーディ・クオレントがいるのだ。
総司令がその経緯を聞き、複雑な表情を浮かべている時、次にスルースがシエル・ホーンドの話を始めた。
「シエル・ホーンド。先の二人と同じく二十二歳の青年で、強化以前はバンディットと呼ばれる裏稼業を務めていたとされています。バイラヴァーガンダムのパイロットを務め、強化されても前の二人と比べれば冷静かつ判断力に優れています。しかし通常時は大人しいとはいえ、ただならぬ殺気を出しているので警戒は必要ですよ。迂闊に近づいたら腕を切られそうになりましたからね。」
青髪の青年はシエルと言った。唸り声、叫び声を上げたニッカ、ハーディと違い、沈黙を貫いているが、その目付きはどこか、不気味である。
三人目の説明が終わった時、総司令は曇った表情で拍手をした。そして怪しむように、スルースを見る。
「恐らく、どれもが優秀なパイロットなのでしょうね。」
「当然ですよ。いずれも新型のガンダム専門の特殊強化モデルに仕立てていますから。」
残忍なその男は総司令の表情を見て笑みを浮かべた。
「いかがでしょう?これらを戦力に加えて頂ければ、新生連邦軍に多大な貢献をすることが出来ると思いますが!?」
「……ええ、承諾しましょう。」
新型の三機のガンダムとそのパイロットのプレゼンを聞き、総司令は承諾した。
これによって交渉は成立。正式に新生連邦軍に新型ガンダムが編入される事となったのだ。
「さて、総司令。交渉成立と共にお願いがあります。FLCシステム搭載機体の内の一機、アトミックガンダムの試験データを取らせて頂く事は可能でしょうか?」
「何故?」
三機の特殊強化モデルが搭乗するガンダムタイプの内の一機、アトミックガンダム。この機体の試験データのみを取る理由が、分からない。
「実はこの機体のみ試験データを取ることが出来ておりません。何せ、“核兵器”を搭載している機体ですので。」
絶大な破壊力を秘めるMS、アトミックガンダム。その試験を行うには危険が伴うと、スルースは判断しており、今まで実施してこなかったのだ。しかし今回正式に新生連邦軍で使用される事が判明した為、この場を利用しようと考えていたのである。
「……構いません。ただし、核兵器を搭載している機体となればこの基地周辺で行うのは危険性があります。先程の話を聞く限り、パイロットがそれを抑制できるかも怪しい印象を受けます。」
総司令が疑問に抱くのも無理はない。アトミックガンダムは特殊核による核ミサイルを搭載している危険なMS。万が一の事を考えるのが普通だ。パイロットも特殊強化モデルという、得体の知れない存在。それらの危険因子を踏まえ、彼は言ったのだ。
「総司令、提案があるのですが、あのヒエラクス級に貴方の機体を含めた四機を搭載し、太平洋上で試験データを取らせて頂く事は出来ますか?」
スルースが指差したもの。それはセイントバードと同型艦のヒエラクス級の大型空中空母、ウイングイーグルだった。太平洋上でアトミックの試験を行い、万が一の事態にも備えられるようにするという狙いがあった。
「……ローゼント艦長に聞いてみましょう。」
ウイングイーグルを任されているのは以前にスパイッシュと共にいた事のある女性士官、ダリア・ローゼントである。
その後輸送機を降りた総司令は基地へ戻り、ダリアに声を掛け、確認を取った。総司令の依頼もあり、ダリアは承諾。それを見たスルースは静かに笑みを浮かべた。
やがて総司令、ソフィア、スルースはそのままウイングイーグルへ乗り込む。それと同時にガンダムタイプ達が搬入された。やがて、ウイングイーグルはそのまま浮上。太平洋沖へ向け、発進したのである。
太平洋上を浮かぶウイングイーグル。今から、FLCシステム搭載機体の内の一機のガンダムの試験が開始されようとしていた。
「ハーディ・クオレント。これは試験ですので、あまり暴れ回らないようにお願いしますよ。」
スルースの言葉に呼応するかのように、新型機体、アトミックガンダムが発進された。パイロットは元死刑囚の男、ハーディ・クオレントだ。
試験データ収集に関しては単純で、いわば模擬戦形式で行われる。実物大のMSの形状をしたバルーンを数多く用意し、どれだけ早く、正確に、数多く撃破できるかを確かめるというものだった。
すでにデータを収集しているデスペナルティ、バイラヴァーはほぼ同等のデータを収めている。その際のパイロットデータを見ても、一般兵と比べても遥かに上回っている。その際の状況判断能力も的確だ。
アトミックガンダムは主武装であるビームランチャー等の武器を器用に使いこなす。それぞれがほぼ確実に的を破壊している。命中精度も、常人では考えられないほど正確だ。
先程総司令が見た野獣のような男の動きとは到底思えない。ウイングイーグルのブリッジ内では情報の収集が続けられる。
「……人がいねぇ……誰も……誰もいねェじゃねェかよぉぉぉぉぉ!!!」
突如、パイロットであるハーディ・クオレントが発狂したかの如く叫びだした。無論、この音声はブリッジ内にも聞こえており、急な言動に皆が驚く。
「あぁぁぁぁぁ!つまんねぇぇぇぇぇぇ!!!」
すると、ハーディはあるボタンを押した。その瞬間、胸部のハッチが開き、一基の大型のミサイルが展開された。
「あの馬鹿……!」
それを見たスルースが額に手を当てる。それは、先程スルースが総司令に説明した時に伝えた特殊核による核ミサイルだったのだ。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
海上は凄まじい爆炎に包まれた。爆音も尋常ではない。球状に広がる赤い光は、周辺に居たあらゆる存在を消滅させた。
アトミックガンダムが放った核ミサイル。放射能汚染の出ない、特殊核による強力極まりない兵器は、海中の生物に甚大な被害を与えたのだ。無論、試験で使うバルーンは全て消滅した。
やがて試験データの採集は終了した。核ミサイルの破壊力は絶大だ。
ブリッジに連れて来られたハーディ。彼はその鋭い目をスルースに向けた。スルースの周りには、研究員らしき人間が数名いる。
「何故貴方は核ミサイルを使ったのですか?」
スルースはハーディに詰め寄った。それに対し、ハーディは口を開く。
「まとめて壊したら良かったじゃねぇかよぉ。つーかなんで誰もいねぇんだよォ!!!人がいなきゃ……いみねェだろぉが!!」
乱暴な言葉遣いでスルースに詰め寄るハーディ。やがて彼がスルースに対して暴力を振るおうとした瞬間だった。
「おい、やれ。」
と、側近にいた研究員が手に持っていたスイッチを押した。
「あがががが!?」
突如、床に伏せ始め、もがき始めた。苦しみだすハーディ。その様子は、呼吸困難に陥った様子だった。
「やれやれ、もう少し調教が必要のようですね。理性と闘争心の兼ね合いというのは難しいようですねぇ……
ええ!?おい!?なんで良い子でいれないかなぁ?」
突如声を荒げたスルース。普段は丁寧口調しか喋らない男から発せられた大声。それを聞いたブリッジクルーは全員動揺しており、この男の存在を恐れている。
大声を上げた直後、スルースはブリッジの全員を対象に語り始めた
「私とあろうものが、失礼しましたね。」
と、スルースは咳払いをし、言った。
「彼は少し教育がなっていませんでしたね。結果的に核ミサイルを使用するという愚かな選択をしてしまいました。あんな強力な兵器をポンポン使うようではまだまだ調整は必要ですね。」
スルースの言葉に対するブリッジのメンバーの対応との温度差が激しい。
「もう少しこちらで特殊強化モデル達は調整した方が良さそうですね。貴方方のご迷惑にならぬように……ね。」
スルース・ディアンという男。新生連邦軍への出資者である為、総司令は何も言うことが出来なかった。だが、彼の中に残る不快感は紛れもないものである。
「さて、試験はこれにて終了です。調整さえすれば実戦での活躍も夢ではありませんよ。ただ、それを活用する場所があれば……の話ですが。」
そこの部分だけ、スルースはやや悲しげな表情を浮かべる。自信作と言える三機のガンダムタイプ。それらが活かせる場面が無い事が、残念だと言うのだ。
その時、ダリア・ローゼントが総司令に言った。
「総司令、先日カイロ基地よりヒエラクス級の同型艦の存在が目撃されたという情報があります。」
「同型艦……ですか。」
それはセイントバードの事だ。
「そして、行方不明になっているアインスガンダムらしき機影がその周辺で確認出来たという情報も入っております。」
「これは、偶然でしょうか。」
「いえ、それは存じ上げかねます。」
その情報を聞いていたスルースは、両者に対し、言った。
「それは興味がありますね。エジプトのカイロで奪われたウイングイーグルの同型艦の目撃及びアインスガンダムの機影確認……フフ、もしそれが事実ならば、この三機の試験に使えるかも知れません。」
「それは、どういう意味でしょうか。」
スルースは引き続き語る。
「この三機を使い、そのヒエラクス級を奪還するという作戦はどうでしょうか。試験運用も出来る上に上手く行けば全てを取り返すことが出来る。新生連邦にとっては美味しい話ですよ。これはもう、準備を進めるしかないと思うんですけどねぇ。」
スルースの提案はあくまでも予想だ。しかし説得力はあると言える。
「総司令、この後一度カリフォルニアにウイングイーグルを止め、戦力を補充した後に再出発し、地中海付近にウイングイーグルを止め、様子を見るのは如何でしょうか。」
と、提案をするのはダリアだ。
「成程、それは有かも知れませんね。」
総司令はその可能性を信じる事にした。特別に、アインスガンダムもセイントバードも新生連邦に、すぐに必要な戦力という訳ではない。しかし今回は特別な状況だ。何せ、新型のガンダムタイプを合計四機も乗せている状態。その上での航行。ガンダムタイプの試験運用も込みで、それらと対峙することが出来れば戦闘データも取ることが出来る。
「では、一度カリフォルニアに帰還しましょう。そこで新型機体のジョゼフを十機搭載し、地中海へ向かいます。戦力は、多い方が良いですから。」
総司令が言った。
新型ガンダムの話からの、アトミックガンダムの試験。人離れした的確な射撃能力、そして特殊核による核ミサイルの爆発力。それらを知った上で、総司令、レヴィー・ダイルはスルース・ディアンという男を心底恐ろしく感じていた。それから、カイロ基地からの情報によるセイントバード、アインスガンダムの目撃情報。
アーステクノロジー社長、スルース・ディアンの話から始まったこの一連の話。セイントバードの同型艦、ウイングイーグルには総司令のガンダムをはじめ、特殊強化モデル用のガンダム三機、そして新型量産機体とされるジョゼフの搭載。これらの戦力を一つの艦に投入する為に、彼等はカリフォルニアへ帰還する。
ウイングイーグル艦内の一室にて。ソフィアがレヴィー・ダイルに対し、自身の胸中を吐露していた。
「レヴィー様……一つお伺いしたい事があります……」
それに対し、総司令は察した様子で言った。
「分かっている。強化モデルの話だろう。」
スルースが語っていた強化モデル。その気味の悪さ、恐ろしさを感じていた両者。特に、ソフィアはこれまで総司令に見せなかった嫌悪感を抱いていた。
「レヴィー様はどう思われていますか?私は……怖いです……まるで――」
「それ以上は言わない方が良い。」
と、ソフィアの言葉を遮った。
「シンギュラルタイプを自らの手で生み出す為に作り出した存在、強化モデル。まさか更に上の存在がいるとは思っても見なかった。人は目的の為にあそこまで残酷になれるのか……とは思っている。」
「あの時の禍々しい感覚……とても人とは思えません。私はレヴィー様に対してはそのような不快な感じはしないのに、さっきの人からは狂気しか感じませんでした……」
“感覚”という話をするソフィア。彼女もまた、シンギュラルタイプなのだろう。
「その恐ろしい人間を作り出したのがスルース・ディアン氏を始めとした強化モデルの研究員なのだろう。人の可能性を追求した結果が、あのような存在ということか。」
軍備増強の為にはMSのみならず、人員も必要になる。更に、より強力な戦力を投入するとなれば、人間でさえ強力な存在にしていかなければならなくなる。
「未だに公には証明されていない存在、シンギュラルタイプ。君は人から感覚を感じることが出来る。そして、僕自身も……」
この時明らかになったのは、総司令、レヴィー・ダイルもまた、シンギュラルタイプという事だ。この両者は、互いに力を持つ存在同士という事になる。
デウス動乱時代も敵戦力を倒す為に非人道的な行為は多々あった。しかし戦後になっても、戦前の過ちから学ぶどころか、それを利用し、更に凶悪な存在を作り出してしまう。
人という生き物は、軍備の増強や効率化、果ては進化を求めるが為に時に、こうした倫理観から逸脱した行動をとる者もいる。スルース・ディアンがその尤もたる例だ。
そして、シンギュラルタイプである総司令はこれを黙認している。全ては、彼の掲げる軍備増強の為に。
「軍備を増強する為にはこうした事情も容認しなければならない……のか。」
彼は一人、呟く。その様子を、ソフィアはそっと、見ていた。
やがてカリフォルニアで戦力補充が開始された。
新生連邦軍の新型MS、ジョゼフ。型式番号NFMS-990。ディーストの後継機であるこの機体。今回はその試作モデルが十機、ウイングイーグルに搭載される事になった。この時、十名のパイロットが補充された。
その中の一人が、アインスガンダムの噂を聞いた時、妙な笑みを浮かべていた。
「まさか、こんな幸運が来るなんてな……俺はツいてるぜ……!」
とある、一人の男。彼はウイングイーグル艦内にて、静かに笑みを浮かべていたのだった。
セイントバード艦内で飲酒パーティーがあってから翌日。クルーの大半が酒に酔い、潰れていた。皆が食堂にて眠りについている。大きなイビキが食堂内に響く。
別に部屋にて。眠りについていたレイは目を覚ました。瞬きをし、眠気眼を擦ろうとした時――
「……えええ!?」
レイの目は大きく見開かれた。そこにあったのは、エリィの顔だったからだ。
昨日の夜、エリィを介抱して彼女の部屋まで運び、そのまま抱き締められたレイ。彼は額にエリィの唇を感じた後、急な眠気に襲われ、そのまま眠ってしまっていたのだ。つまり、彼はエリィと一緒のベッドで眠っていたことになる。
「あ……え、えと……?」
明らかに動揺しているレイ。この時、彼は昨日の状況を思い出す。
(落ち着け、昨日は確かエリィさんを連れて……それから……えっと、それから……なんか、感じたような気がして……何だろう、何かあったような……えっと……)
思い出せないレイ。ただ、目の前にあるエリィの奇麗な顔に、緊張するばかりだ。
(だ……だ……だ……ダメだ!こんなの、良くないよ!とにかく、起こさなきゃ……)
動揺しているレイ。まさかエリィと一晩同じベッドで過ごす事になる等、思ってもみなかったからだ。
しかしこのままじっとしているわけには行かない。もし今、エリィが目を覚ましたらどうなるだろうか。恐らく、慌てるに違いない。レイ自身、エリィとそこまで近い関係になる気は無かった。だがこの状況がもしエリィに発覚すれば今後の生活が気まずい事になりかねない。
レイは一度、布団から出る。そして、咳払いをし、改めてエリィを起こそうとする。
「エリィさん!朝ですよー!起きて下さい!ほら、早く!!」
と、レイはエリィの耳元で叫ぶ。だが――
「ねむ……ん……寝る……」
と、起きる様子がない。
はぁ、とレイは溜息を吐く。そして――
「もう!エリィさん!いい加減に起きて下さい――」
バッ
と、彼は布団を取った時だった――
「えええええ!?なんで!?なんで下着!?う、嘘だ!どうして!?確か昨日は服を着てたのに!?」
レイが見たものは、下着姿のエリィだ。昨夜は酔い潰れ、眠っていたエリィ。その際は確かに、服を着ていた。夜中に服を脱いだというのだろうか。彼は驚きを隠せない。
「寝相が悪過ぎますよ!昨日から本当に何なの!?この人は!」
眠るエリィの姿は艶やかだ。美しい顔つきに、張りのある乳房、そしてすらりと伸びた美しい脚。レイは行けないと分かっていても、その美しい身体を見て見惚れてしまう。
と、同時に彼は無防備な彼女の姿に対し、ただ、恥ずかしさのみを感じていたのであった。
ピキィィィ
その時だ。レイは頭に電流が流れる感覚を覚えた。
(あ……この感じ……あれ、覚えがある……確か昨日……)
彼が感じている感覚。それは、昨日の夜、酔っていたエリィに抱き締められ、額にキスをされた時に感じた感覚だ。その際レイは眠気に襲われていた為、うろ覚えではあったものの、今、彼は改めてその感覚を感じていたのだ。
(やっぱり、あれは気のせいなんかじゃなかったんだ……けど、なんだろう?これは一体……)
レイは、暖かくて優しいその感覚を感じていた。今まで、彼はMSに乗り、危機的状況に陥った時のみその感覚に陥っていた。しかし、今は違う。特に危機的状況ではない。
では、何故その感覚を感じるのか。それは、全く分からないのだ。
(外から感じる……それはなんとなくだけれど、分かるような……)
レイはその正体を知りたいと思い、エリィを残し、部屋を後にした。
やがて外に向かおうと廊下を歩いている時だった。
「レイ君、随分と目覚めが早いな。どうした?」
と、声を掛けるのはネルソンだ。
「おはようございます。その、ちょっと気になる事があって。」
「気になる事?」
「あの、セイントバードって、まだ発進はしないですよね?」
「ああ、そうだが」
レイは少し躊躇いつつ、言った。
「外に……出てみたいなぁって思ってまして。」
「外?こんな朝早く?何故?」
「言い辛いんですけど……その……」
彼は自身の事について説明した。エリィと同じ人種かも知れないレイ。シンギュラルタイプ故に感じる、感覚。その話をした時、ネルソンは言った。
「以前に言っていたやつか。やはり君は、我々には分からない、センシティブな感覚を持っているという事か。艦長と同じく。」
「信じて貰えませんか?」
そこが壁になっていた。ネルソンはその“感覚”を感じられない人間。故に発言には躊躇うのだ。
「いや、私は艦長が今まで艦の危機を、彼女の勘で乗り切ったりした場面を見てきている。君が同じくそれを持つ者と言うのなら、信じるしかないだろう。シンギュラルタイプ……か。」
元軍人のネルソン。デウス動乱中でも存在していたそうした人種を、彼は信じていた。
「少なくともそうした人種は一定数いる。君自身が気になるというのなら、行くと良い。ただし――」
ジャキッ
と、ネルソンは懐のポケットから銃を渡した。ずしん、と重みを感じるそれを持ち、レイは驚く。
「銃……ですか!?」
「護身用だ。今の世の中何があるか分からないからな。」
レイのような少年に銃を渡すネルソン。
「あと、その“感覚”の正体が分かればすぐに戻ってくる事だ。私は今から作業をしないと行けないから一緒には行ってやれん。だから、念には念を……だ。」
「あ……ありがとうございます。」
始めて見る銃。このようなものなど扱った事がないレイにとっては緊張するばかりだ。
それを腰のポケットにしまうレイ。その事だけでも彼にとっては緊張だ。
「それより艦長は?艦長も同じ感覚を感じているなら一緒の方が良い気もするが……」
「それが……今、眠ってまして。」
レイは一連の話をした。無論、一緒に寝ていたという話は伏せたが。
「はあ、そうか……まあ疲れているだろうし起こすのも悪いだろう。」
と、納得した様子のネルソン。
「あの、じゃあ……僕……行ってきますね!」
そしてレイはそこを去ろうとした時だった。
「レイ君……いや、レイ。気を付けてな。」
ネルソンが、笑顔で見送った。
(……あれ、呼び捨てにした……)
と、密かにレイは疑問に感じていた。
時刻は午前7時。日の光が僅かに出ている時間。早朝のアレクサンドリアは閑静だ。レイは自身に感じるその、“感覚”を頼りに移動する。
(やっぱり町の方から感じる。不思議な感覚だ……気持ち良い……でも……分からない……なんだろう?)
レイは一人、静かに歩いていく。
エジプト国第二の都市、アレクサンドリア。西洋とイスラムの風景が混じり合う美しい海辺の都市。その朝焼けはより一層、美しさを醸し出す。
日の光は少しずつ海を照らし、その海は波とともに乱反射し、ギラギラと、光が放たれる。その反射した光は建造物を照らし、美しいコントラストを作り出していた。
その中をレイは一人、歩く。感じる感覚を追いながら。
(本当に何なんだろう。この優しい感覚……これが、シンギュラルタイプ……なのかな。分からない、分からないけれど……こんな感覚を感じるなんて……)
やがて市内に入る。そこでもまだ、感覚は残っている。彼の頭の中で、その優しく、穏やかな感覚は消えていない。心地よさのみが、残り続ける。
市内には僅かに人がいた。これらを見ていると、散歩をしている人が目立つ印象だ。
「朝の散歩って、なんだろう、こう……清々しいっていうか……なんていうか――」
バッ
「んうっ!?」
しかし何気なく呟いていた最中の事だ。
突如、レイは何者かによって口を閉じさせられ、更に無理やり裏路地に連れて行かれた。残忍なその行為は、レイに抵抗する余裕すら与えてくれなかった。
路地裏。人通りが見られない場所。レイはそこに拉致された。
レイの目の前には二人の大男がいた。身長は両者共に180センチメートル程度。一人は太っている。もう一人は至って標準体形だ。突然の出来事に、恐怖のあまりプルプルと子犬のように震えるしかできなかった。
「へぇ可愛いじゃん。こんなところで一人でいるなんて訳ありかい?」
「君は運が悪かったな。拉致られちゃうなんてね。悪く思わないでくれよ。君みたいな漫画から飛び出したような女の子、レアなんだよな。」
「んう……?」
どうやら、男達はレイの事を少女と勘違いしているようだった。
レイの顔立ちは必ずと言っていい程、所見で少女に間違えられる。今目の前にいる男達も同様だ。この時、レイは不本意ではあるが少女の“フリ”をしようと考えていた。
「なんか喋りたそうだな。離してやろうぜ。」
「お、おう」
と、口を閉じていた標準体型の男が手を離す。
「ぷぁ……えっと……僕……じゃなくて、私を……どうするんですか……?」
ブルブルと震える姿を強調するようにした。胸元に手を置き、怯えている。そうすれば一層少女らしく見えると思ったのだろう。彼は少女であれば暴行を振るわれないだろう……と、甘い考えをしていた。
だが、男達は予想だにしない事を言い出した。
「いやあ、うちらもちょっとしたそのさ、ビジネスっつーのをやってんの。あれよ。君みたいな可愛い子供って希少価値があるんだよな。つまりさぁ」
人身売買だと、レイは直感で感じた。この男達はレイを少女だと勘違いしている。その上での路地裏への拉致。
このままでは危険だと、レイの本能が察した。
ダッ
と、引き返そうとした時だ。
「逃がすか!」
と、逃げる方向に太った男が居た。逃げ出せない状況。危機的状況がレイに迫る。
ギュウッ
「うあ……!」
突如レイは首を絞められた。それも、強く。レイの目は少しずつ閉じられていく。太った男の力は強い。レイの華奢な腕では振り解けない。
「おい、こいつ犯すか?」
標準体型の男が言う。完全に少女と思っているこの男の顔は、煩悩に満ちている。
「けど商品になるのに大丈夫かよ?」
「んなもん取引先が分かんねぇだろ!それより見ろよ、こいつの苦しむ顔、そそる……!」
苦しむレイを見て喜ぶ男達。突然の出来事にレイは何も出来ない。
ネルソンには出来るだけ早く戻る様に言われているレイだったが、予想外の出来事は彼を苦しめた。彼はただ、自身に感じた“感覚”の正体を知ろうとしただけなのに、何故このような状況に陥るのか……
首を絞めていた男は、その手を離した。咳込むレイ。それと同時に、レイの両手をぐっと握り込む。これにより、レイは逃げ場を失う。
「けほっ……離して!むう……!?」
再び口を塞がれる。声を出す事も出来ないレイ。このままでは男達の良い様にされるだけだ。
「そおれ!舐めてやるかなッ!その発達したての胸を!」
すると、標準体型の男が唇を舐め回した後、ジャケットの内ポケットからナイフを取り出し、レイの着ていた服を切り裂いた。服が切られ、レイの白い肌が露わになった。
この瞬間、レイは男だと判明した。これを見た男達は驚愕し、呆れた。
「はぁ!?男だと!?」
「まじか!?そんな訳……」
「マジだよ!いくらなんでも胸なさすぎだろ!こんなメスガキ嫌だよ!」
顔立ちが少女であるレイに降り掛かる受難。そして彼の場合、男と知った時に相手は勝手に呆れ果てる。この身勝手な男達に対してはかすかに憤りさえ感じている。
だが今の状況では自身の身体が危ない。下手をすれば殺される可能性もあり得る。
人身売買をするような人間は、人の思考をしていない。つまり、普通の人間なら通用する常識が通用しない人間だ。そのような人間を相手にする方法を、レイは恐怖の中で考える。
(そういえば……)
レイは思い出した。この状況を打開できる可能性のある、一つの武器を持っている事を。
ドンッ
と、レイは手を持つ男の股間部に目掛けて思い切り後ろに蹴った。突然の出来事に動揺する、その男。
「おわっ!?」
後方に姿勢を崩す男。その隙に、レイはポケットにある銃を取り出そうとした時だ――
「物騒なもん持ってるじゃねえか!?ええ?」
「あっ……!」
その様子を、もう一人の男に見らえてしまったのだ。
銃を構えようとするが利き腕を掴まれ、銃を奪われてしまった。更に太った男は痛みに悶えつつもレイ両手首を掴むものだから、手の自由が利かない。必死に抵抗するが、それも無駄だった。
「おい、押さえてろよ……ヘヘッ!」
バヂッ
「あっ……」
レイの眼が見開かれた。それと同時に、彼はその場で気絶した。
標準体型の男はスタンガンを持っていた。それでレイを気絶させたのである。
「最初からこうすりゃ良かったんだよな。このクソガキ、舐めた真似しやがる。」
身勝手な男達。自分達の私利私欲の為にレイに対し暴行を加え、その上で気絶させた男達。この男達には人道という言葉などない。“外道”の一言で片付けられる連中だ。
「で、どうすんの?こいつ。」
「売れば良いだろ。こいつは男でも女みたいなナリしてるしな。売っちまえば利益になるし、俺等はウハウハだぜ?」
そう言いながら、男達はレイを担ごうとする。人目に付かないように、すぐに立ち去ろうとしていた――
「まさか、こんな所で姑息な小悪党に出会うとはね。」
その時だ。悪者達の背後に一人の男の姿があった。
赤茶色の髪色で、整った顔立ちの青年。目の色は茶色。身長は悪党達程の高さではないが、整った体型のその青年は、再び喋る。
「戦争が終わってもこんな奴等がウロチョロしているんじゃ、平和なんてまだまだ先だな……」
「誰だてめえ!?」
「なんだ、見たのか。じゃあ生かして返すわけにはいかねえよなぁ?」
獰猛な悪者達のセリフだが、青年は軽く流す。
「お生憎、残念だけどその言葉、そっくりそのまま返させてもらう。但し、殺す必要はない。殺すに値すらしないよ。」
「んだとぉ!?」
逆上した男達。太っている男がまず、その青年に対して握り拳を作り、殴りかかった。しかし青年はこれを軽々と回避。男の頬に向け、お返しと言わんばかりに殴り倒す。その勢いは凄まじく、男の歯は折れ、気を失った。
「な……何だこいつ……!?強い……?」
焦りつつも、もう一人の男はナイフを取り出し、青年に迫る。間合いを詰め、一気に迫ろうとした―
ドンッ
と、青年が男のナイフを持った手を蹴った。その反動でナイフが手から離れる。
「しまっ――」
男が慌ててナイフを取ろうとした時――
グキッ
素早い動きで、青年は男の頸動脈を絞める。ぐいと押さえつけられる事で男の目は次第に閉じられ、そのまま気絶した。
僅か30秒にも満たない時間。その間に二人の男達は、一人の青年によって倒されたのだった。
青年の目の前には、二人の醜い男が山積みになって倒れていた。その光景を見て、青年は言った。
「その振る舞いからして特に大した存在でもなさそうだ。さて……」
と、青年は倒れているレイを見た。
「助けてあげないとね。とりあえずうちに預けよう。やれやれ、あいつには心配掛けるな。」
そう言って、青年はレイを抱え、その場から去って行く。
少しして青年は自宅に辿りつき、その中にいた人間にレイの身柄を渡した。するとすぐに出かける準備を始めた。
「突然だけどこの子を頼むよ。危ない街なのに、一人で歩いてたんだ。」
と、青年が言った。
「は!?何言ってんだ?いや、いきなり過ぎるだろおい。」
青年に声を掛けるのは初老の人物だ。しわが目立つその人物は急な出来事に対して驚きを隠せない様子だった。
「てか、お前さんはどうすんのよ?」
「俺はまた、出掛けなきゃならないから。」
どうやら青年は用事があるらしい。初老の男に対し、挨拶するように手を上げた。
「成程ね。バンディットも楽じゃないねえ。」
初老の男はバンディットという単語を言った。
バンディット。それは砂漠の狩人であるアスーカル・エスペヒスモが副業でしていたというものだ。その実態は何なのかは不明だ。
「明日には戻ると思う。よろしくねー。」
そう言い残してその青年はその場を去った。
この二人は何者なのかは分からない。ただ、一つ言えるのは、レイは再び厄介事に巻き込まれたという事実があった。
レイが目を覚ました時は既に時計の短い針は7を指していた。だが、目を覚ました場所はレイにとって全く分からない場所だ。見渡すと、そこは木材で出来ているであろう空間が広がっている。彼が眠っているベッドはマットレスの柔らかさが伝わる。
「あれ……ここは……?」
気が付けば知らない場所。その経験は今回で二度目だ。
「確か僕は襲われて……その後で意識を失って……。」
と、自身にあった事を思い出す。だが、思い出そうにも頭がぼんやりとしており、眩暈のような感覚さえ覚えていた。
少しすると、レイに近寄ってくる影があった。音を聞いた時、レイはピクリと反応する。そして、じいっと、その影を見つめ、警戒していた。
やがて影はレイの前に姿を表す。それに対し、レイはじっと睨みつけるが、影の正体は全く同様すらせず、寧ろ笑っていた。
「ハハハ……随分可愛らしい睨み方だな。そんなに睨まれても困るぜ。」
「貴方は……あの人達の仲間ですか?そしたら僕をどうする気……ですか……」
見知らぬ場所に、見知らぬ人間。先程の事もあり、警戒しない筈がない。
が、ビクビクと震えるレイに対し、男は言った。
「ガハハ、最初に言っておくぜ!俺は関係ねえよ!以上!」
「へ……?」
唖然とするレイ。ただ、感じるのは男が発する、品があるとは思えない笑い声のみ。
「そうそう、服、洗濯しといたからな!脱がしても起きねぇんだもんな。なかなか、お前さんもやられたみたいだな。」
「えっ服……?」
そう言われ、自身の姿を確認する。彼は上半身裸で、下着姿のみになっていた。そして、スタンガンを当てられた場所にはガーゼのようなもので処置されている跡があった。
「いやあ、俺って綺麗好きだからさ。洗濯とかしちまうのよ。大目に見てくんねえかな?」
「あ、はぁ……ありがとう……ございます。」
と、レイは一言礼を言った。
何故自分がここにいるのかは分からないが、相手の反応を見る限り、悪人には思えない。気絶していた自分を助け出してくれた人なのかも……と、レイは考えていた。
「そういや名前聞いてないな。嬢ちゃん……じゃねえや、坊ちゃん。何て言うんだ?」
「今、わざと間違えました!?」
「何言ってんだよ!わざとじゃねえって!」
と、再び男は笑いながら言った。
「そ、そうですか……僕は……レイ・キレスと言います。」
レイの名前を確認した上で、その男も自己紹介をした。しかし、この間にも少女と間違えたワートンが疑問に思えて仕方が無かった。
「ワートン・ディアラだ。よろしくな。坊ちゃん。」
白髪が目立つワートンという男。その男は、レイの目から見ても壮年男性にに見える。しかし口調は若々しく、言葉だけなら年を感じさせない。その為か、厳かでありつつも軽快な印象をレイは持った。
「ワートンさんが、僕を助けてくれたんですか?」
「いや、違う。もう一人が助けた。」
「もう一人……ですか?」
ワートンは咳払いし、言った。
「スパーダ・スクードって言う奴だ。変わった名前だろ。」
明らかに奇妙なその名前にレイは違和感を覚えた。苗字はイタリア語で盾。名は同じくイタリア語で剣。偽名なのかとさえ、レイは思った。
「スパーダ・スクードさん……ですか?」
レイは疑問を抱きながらワートンに聞く。
「お前さんの表情見てたら分かるぜ。察しの通り本名じゃねぇ。本名は本人の意向で出すなって言われてるから俺はそれに従ってるだけだ。」
何やら訳ありの様子。レイは首を傾げた。
「それより腹が空かねえか。」
「お腹……そういえば……」
ワートンの言葉で思い出す、空腹感。それと同時にレイは腹部を抑える。自身の胃が収縮しているのを感じた。
「飯は作ってやろかなって思ってた。あと、風呂も入れている。どうする?入っとくか?」
「え、お風呂があるんですか!?」
風呂はレイの故郷であるモントリオールにも普及している。日本の文化が浸透しているからだ。まさかこのエジプトで風呂という言葉を聞くなど、思いもしなかったのだ。
「あの、出来ればお風呂に入りたいです!構いませんか?」
セイントバードに助けられて以来、風呂に入っていなかったレイ。ここで入浴が出来るという喜びを、感じていたのだ。
「じゃあ入ってきな。風呂上りの服とかは用意しておいてやるから。その間に飯作ってやるよ。」
「あ、ありがとうございます。」
と、言った後でレイは風呂場へ向かった。ワートンは笑いながら台所へ向かい、レイに食べさせる料理を作り始めた。
ザバァ
湯の心地良さはよく知っている。肩まで浸かる事で、全身に温もりを感じている。親切な初老の男が、レイの為に準備をしてくれたのだ。
「ふぅ、気持ちいい……久しぶりだなぁ、お風呂なんて……シャワーばっかりだったから……」
体は休まる。ワートンも恐らく悪人ではない。それには安心しているレイだったが……
「しまった、Eフォン、忘れた……連絡、取れないや……」
彼はセイントバードを出る時にEフォンを忘れてしまっていたのだ。すぐに戻るつもりでおり、まさかこのような事態になるなど想像もしていなかった為である。
ネルソンやエリィ達と連絡が取れず、この先どうすれば良いか分からないレイは、湯船の中で体育座りのままぶくぶくと水面に泡を吹いて気を紛らわそうとしていた。
(こんな事になるなんて……僕は何をやっているんだろう……)
レイは自分を責め始めた。元はと言えば彼が感じた、優しい“感覚”が発端だ。しかし今更自分を責めたところでどうにかなる話ではない。
(後で、お礼を言って……すぐに出る準備をしなきゃ。エリィさん達に迷惑を掛ける訳にはいかないし……)
と、彼は考えていた。
風呂から上がり、レイは用意された服を着替えた。だが彼にサイズが合っていなかったのか、上半身のTシャツを着ただけで、下半身の3部丈分程度は覆える程の大きさだ。少し違和感を覚えたものの、着替えてすぐに、ワートンの元へ向かった。
リビングにはワートンが料理を並べている最中だった。その時にレイは
「お風呂、ありがとうございました。」
と、きちんと感謝の気持ちを伝えた。それを聞いてワートンは笑い始める。呆然とした様子でレイはじっと見つめた。
「ははは、なぁに、例には及ばねえよ。服はちょっとでかいけどな。それより、飯ができたぜ。」
「はい、お願いします。僕、お腹が空きました……」
空腹の為か、溜息を吐くレイ。それを見てワートンは彼を椅子に座らせた。レイが座ったのは木製の椅子。この事から、ワートンは木造に何らかの拘りがある人間なのかと、彼は考えた。
「ま、子供はたくさん食べて成長しないとダメだよな。じゃんじゃん食いな!」
そう言われ、レイは目の前にある多量の料理を食べ始めた。
彼の目の前に置かれていたのは中華料理だった。炒飯をはじめ、酢豚、青椒肉絲等の様々な料理が並べられている。程よい油加減はレイの味覚をより刺激した。
「美味しい……美味しいです!中華料理が得意なんですか?」
そう言われ、ワートンは自慢げに話す。
「美味いだろ!大分腕をあげたんだぜ!これはな、ある若い女の子に教えてもらったんだよ。なんか、彼氏とベタベタしててあんまり印象は悪かったけど料理はマジで上手いからな。」
「それって、どういうきっかけがあったんですか?」
何気なく、レイは聞いた。
「風の噂ってやつよ。中華料理が上手い女の子がいるって話を聞いたもんだからさ、それで聞きつけたらすげぇ可愛い女の子でさ、教えてくれって言ったらあっさりと教えてくれたわけよ。」
初老の男が、若く、しかも彼氏のいる女の子にわざわざ料理を教えてもらっている姿。レイは思わず笑ってしまった。
「本当にありがとうございます。あの、僕この後すぐに出なきゃいけないです。待たせている人が居て……Eフォン、忘れちゃって……だから急いで戻らないと――」
と、レイが言った時だ。ワートンの目つきが少し、変わった。
「やめといたほうが良いぜ。少なくとも、明日の朝になるまではな。」
「え、どうして……ですか?」
「この町は治安が悪い。特に夜は一人で出歩くのは死ぬようなもんだぜ。聞けばお前さん、一人でこんな街をうろついてたって言うじゃねえの。ここで助けて貰ってるのが奇跡的だぜ?」
「そんな……そうなんですね……」
すぐにセイントバードへ戻ろうと考えていたレイの試みは失敗した。ワートンの言うように、アレクサンドリアは治安が悪い街だという。その情報を聞いていなかったレイはただ、溜息を吐く。
「戦後の混乱で妙な輩が増えてきてな。それに対抗して軍も見回り強化。しかもたまに銃撃戦もある。首都のカイロ程じゃねえが、犯罪率は急上昇。一人で出歩くのはマジでやめとけ。」
ワートンの言葉もあり、レイはしぶしぶ、すぐに出歩くのを諦めた。
明日の朝まで待たなければならないという現実。その上Eフォンを忘れるという失態。ネルソン達と連絡を取ることが出来ず、ただ、彼は呆然としている。
「そう言えばさ、お前さんってどこから来たんだよ?」
と、話題を変えるようにワートンは聞いてきた。
「僕は……」
レイは自身の事を伝える。ここまでの経緯について。故郷の事、MSの事、セイントバードの事等。
それらを伝えた時、ワートンの目は見開かれた。
「へぇ、お前さんもなかなか冒険してんのな。女顔の凡人坊ちゃんと思ってたけどなぁ。」
「それで、色々とありまして……」
「MSにも乗った事があるんだって?そりゃすげえ。」
「ええ……まあ。」
レイの事を知り、感心する様子のワートン。
「んで、早く帰らねえとってなった訳か。話が合うな。」
「そうなんです。でも、外が大変なんですよね……?」
「まあ、今は安全に過ごす事を優先するこったな。それより飯食べろよ。最期の晩餐になるかも知れねぇんだからよ。」
「はい……はい?」
突如、不吉な言葉を発したワートン。
ジャキン
その時だ。ワートンは突然銃を取り出した。それはレイにとって見覚えのある銃だった。ネルソンが、護身用に渡してくれた銃だったのだ。
その銃を片手で構えるワートン。標的は、目の前で作った料理を食べているレイだ。
「えっ……?」
「悪いな、お前さん。ずっと気にはなってた。お前さんみたいな子供が、こんな拳銃なんて物騒なもの持ってるなんておかしいだろ?」
先程のひょうきんな目つきとは違った、真剣な眼差しで、レイを見る。先程までのワートンとは明らかに違う、人を疑う目だ。レイの表情は食事による悦楽から一転、焦燥に駆られる。
レイにとって今何が怖いのかと言えば、自分の持っていた銃を向けられていることである。
「それは……人に渡されて……護身用って……」
説明をするレイだが、ワートンは聞く様子を見せない。
「可愛い女顔の坊っちゃん。お前、まさか氷河族じゃねえだろうな?」
「え……え……?」
突然ワートンの口から出た奇妙な言葉、〝氷河族〟。レイは、彼が何を言っているのか理解に苦しんだ。
「わ、分からないですよ、そんなの!違います、違いますよ!」
「お前さん、銃を持つってのはいくらでも言い訳が出来るんだぜ。護身用って言いつつも本当は暗殺する為に銃を使う奴だっている。」
レイは懸命に頭を横に振る。必死に、否定している。だがワートンは全く聞く様子を見せない。
「氷河族の連中……特に子供連中は演技力を教え込まれるって聞く。子供は大人から見て油断するからな。そこで銃を撃ち、標的を殺す。良い女を使って男を騙して貪る、美人局の子供版みたいなモンだぜ。」
そう言いながら、レイに銃口を近付ける。豹変するワートンの姿に、彼は恐怖を抱くしか出来ない。
「お前さんさ、証拠がない以上は生きて返すわけにはいかないんだよ。氷河族かも知れない危険な人間、うちも入れたくないんだよな。」
「そんな……そんなのって……」
レイは懸命に弁解する。しかし、ワートンは疑い続ける。
「じゃあな。組織の人間なら俺はガキだろうが躊躇わないのさ。」
そして、ワートンは引き金を引き始めた。このままでは撃たれる――
レイは目を瞑り、ワートンに撃たれるのを覚悟した。
ピューッ
「ひぁぁっ!?」
レイは甲高い声を上げた。頬に、冷たい液体が掛かるのを感じた為である。
慌ててレイは目を開く。すると、大きく笑っているワートンの姿があった。彼が手にしているものは銃ではなく、水鉄砲だったのだ。
「わははははは!どうだ、驚いただろ?」
「それって……水……!?」
「ははははは!すまねえなー、ちぃっとばかりびびらせちまったよ!」
と、笑いが落ち着かないワートン。レイは、ただ、呆然と見るだけだ。
「なぁに、心配はいらねえ。この銃はうちに元々あったやつでさ、お前さんの持ってた銃とそっくりなんだよ。んで、お前さんの銃はこれ。」
と、ワートンはもう一つの銃を左手に手をしていた。彼の言うように、ワートンはレイの持っていた銃とそっくりの水鉄砲をレイに向けたのだ。
彼なりの冗談行為ではあったが、レイは動揺が収まっていなかった。
「スクードが助けたって言ってるのに銃を撃つ奴がいるかよ!それにな、お前さんは顔が可愛いからな、ついいじめたくなるんだよ。そう言う顔してるぜ。いや、ほんと。」
この瞬間、レイの動揺が消えた。その次に、ワートンに対して言った。
「殺されるかと思ったんですよ!嫌な演技しないで下さい!」
と、レイは怒ったのだ。殺されると思った恐怖からの冗談は、レイにとっては怒りを感じる十分な要因だったのだ。
「おいおい、マジギレかよ……。」
本気で怒っているレイ。それも、まだ大人の余裕が出来ていない、子供である何よりの証なのかも知れない。
「だって……怖かったですよ……とても……」
信用している人に裏切られたような感覚。レイからすれば恐怖以外の何者でもない。そうした状況に慣れていないレイはうっすらと涙さえ浮かべでいた。
いくら冗談とはいえ、レイにこの冗談は通じない。彼自身、真面目に育ってきた少年であり、こうした事をされると怒ってしまうのだ。そして恐怖が解き放たれ、涙を流すのだ。
「おいおいおい、泣いちゃったよ。やりすぎたなぁ、やれやれ……」
脅し、泣かしてしまった事に対してワートンは溜息を吐いた。
「まあ、その様子から見ても間違いなくお前さんは氷河族の人間じゃないってのは分かる。それどころか、多分特殊な訓練も受けてない子供だろうな。見た所、凡人か……」
凡人という言葉は何故かレイを安心させた。“普通”でありたいと思うレイにとって、こういう風に言われるのは有難い事だ。
「ところで……氷河族って何ですか?」
レイから出る疑問。それは先程から彼等が述べている、〝氷河族〟とは何なのか。ワートンが言うには近年出現している犯罪組織だと言う。
「戦後になって急速に勢力を伸ばした犯罪組織だよ。連中は落ちこぼれの人間やガキを使って犯罪行為を働く連中だ。お前さんみたいなガキだっている。」
「犯罪組織……?」
犯罪は人の過ちだ。人が成長していく中で、人は様々な善悪を覚える。それらが過度に拗らせた時、人は犯罪に走る。それが世間では“英雄”と称えられる行為であっても、法律上で“犯罪”と見做されればそれは犯罪なのだ。
「昔からギャングとかマフィアとかの、連中がいただろ?そうした連中の中で新しく出来たのが、氷河族って奴等って訳。その内情は複雑極まっているらしいケドな。」
ワートンの言葉を聞くに、彼自身も氷河族と言う存在をあまり把握している様子ではなさそうだった。
「要は、悪い事とかを平気でする人達って事ですか?」
聞き慣れない言葉の為、レイは理解するのに苦労した。
「分かりやすいな!まあ、そういう事だな。」
ワートンは、笑いながら言った。
「ああ、そうそう。お前さんにちょっと、見せたいものがある。きっとびびるぜ。」
「見せたいもの……?」
「飯食べたら俺の部屋に来いよ。」
そう言って、ワートンは自分の部屋に戻っていった。この時、レイはテーブルに置かれている、残された食事を食べる事にしたのだった。
食事を終えたレイはワートンの部屋へ向かう。扉をノックし、レイはその部屋に入る。
「う、うわぁ……」
そこに見えたモノ……レイの澄んだ青い瞳に映ったのは、無数の銃だ。ショットガンや、ハンドガンや、マシンガン等、銃の種類が充実している。その種類は見ただけでは判別出来なかった。
「どうだ。凄い種類だろう。俺が集めた!」
「これ全部ワートンさんの……?」
「俺は実は銃マニアでね、デウス動乱の時も銃弾のエキスパートって言われていたんだよ。狙撃なら百発百中!デウス軍の暗殺部隊として活躍してたんだよ。」
ここで、ワートンがデウス軍だと言う過去が明らかになった。ネルソンも元デウス軍だと言う事を考えると、もしかすれば、彼はネルソン同じ環境で過ごしていたのかも知れないと思う、レイ。
「けどご存じの通りデウス軍は連邦に負けちまって、生き延びた俺は隠居生活でも始めようか……と思ってた。けどな、さっき言ったスパーダ・スクードと出会った。そいつは俺が助けたんだよ。奴は死にかけてたからな。」
「そうだったんですか!?じゃあ、ワートンさんは僕を助けた人の命の恩人って事ですか?」
「そういう事になるわな。」
ワートンはショットガンらしき大型の銃を、乾いた布で拭きながら言った。
「隠居生活するにも生活費が必要だ。それに趣味の銃集めするにも金が要る。ケド俺は御覧の通りご老体。それで奴に条件を出した。」
「条件?」
「スパーダ・スクードをバンディットとして働いてもらって、生活費を稼いで貰ってるんだよ。そしてその代わりに、飯や寝床を提供している。」
つまり、ワートンが家事担当で、スクードが生活費などを稼ぐという条件で二人は生活しているという事になる。
ここでレイは一つ疑問を抱いた。“バンディット”とは何か……だ。
「あの、バンディットって……何ですか?僕、聞いた事はあるんですけど、分からなくて。」
彼がその言葉を初めて聞いたのはアスーカルとウネフがカイロの喫茶店で喋っていた時だ。ここでも同じ言葉が聞けた為、レイは聞いてみた。
「これも戦後になって出た職業だな。いや、万事屋みたいなモンか。」
「万事屋……?」
「そいつは、戦後にある人間が運営するSNSのサイトから始まったとされてる。そこで“バンディット”として登録する事で、依頼を受けた仕事をこなすっていうのが主な流れ。交渉次第では破格の額を得る事も出来る、夢のある仕事だぜ。」
ワートンは別の銃を乾いた布で拭き始めた。
「元々無法者って意味だがそれを曲解して、“何でもやる”“万事屋”といった解釈が生まれるようになって、バンディットって呼ばれるようになった。探偵業とか殺し屋とかをやる連中もいる。基本的に依頼の内容は何でも良い。だからバンディットはそれぞれ専門分野を作り、サイトに登録して自身の仕事を売る。それを気に入った依頼者がそのバンディットに依頼するっつーのが流れ。」
「そんなの、犯罪じゃないですか?」
当然の疑問だ。普通殺し屋等の経営していることが発覚すれば咎めを受けるのは間違いない。
しかし、バンディットの最大の特徴は、その“サイト”の存在にあった。
「それがミソなんだよ。SNSってのは底深くに存在している深層ネットってのがある。普通の人間や並みのハッカー等じゃ絶対に分からねえ場所だ。Eフォンとかで検索してもそんな情報を知っている人間なんて軍の情報機関ですら見つけるのは難しいと言われるんだ。まず見つからねえ。それに軍が見つけたところでそれを脅威には思わねえよ。」
「それを知る方法って、どうやるんですか?」
「お前さんみたいな平凡な子供にそんなもん教えてどうする?俺はバンディットは高額報酬を得られるからスパーダに協力しているけどな、無暗にお前さんみたいな子供を危険な行為に巻き込む気はねぇよ。」
それはワートンなりの気遣いだ。彼の言葉を聞く限り、バンディットは非常に危険な存在である可能性が高いと、考えた。
「サイトへのアクセスも一部の人間しか知らねぇ。しかもバンディットってのは厄介でな、一度登録すれば撤回が出来ねぇ。スパーダはそれを覚悟した上で受け入れてくれたよ。」
「どうして撤回が出来ないんですか?それじゃあ、スパーダって人がもしバンディットを嫌になったら止められない……」
自分を助けてくれた人間に対する同情だろう。レイの表情はどこか虚ろだった。
「運営者の秘密を知ろうとする奴を減らす為だろうな。元々公になっていない危険な職業だ。それを知ろうとする馬鹿なジャーナリストもいるからな。その秘密を知り、暴こうとする奴も一定数居てる。」
「もし、知ろうとしたらどうなるんですか……?」
レイは恐る恐る、聞いた。
「消される。」
と、ハッキリと言った。レイはパチパチと、瞬きをした。
「どういうカラクリかは知らねえけど、バンディットの運営者の秘密を知ろうとした人間の全てが何かしらの制裁を受けてる。」
ワートンは、椅子に座り、引き続き語る。
「SNS上で馬鹿な事をする奴っているだろ?普通の人間がやらなさそうな事とかをあえて動画とか音声でアップロードして、検証してみた!とかやるやつ。そんな簡単なノリでバンディットのサイトに登録する奴も居てんだ。」
レイも見た事があった。Eフォン等のデバイスを使い、誰もがSNSを経て発信や配信が出来るシステムがある。それらをすることで利益を上げている人間が一定数いる。それを真似て配信を続ける人間が後を絶たない。
それには自己顕示欲や己の利益、単純に他者への貢献等をする者も多い。だが多くの人間は継続できず、膨大な数の情報に埋もれて終わる。
「その噂だけを聞き、実際にバンディットのサイトに登録し、その運営者を特定しようとする為に、動画を取ってSNSに流そうとした馬鹿の極みみたいな奴も過去にいたんだよ。そいつは速攻で消されたケドな。確かアメリカの方だったかな。不審死で片づけられたな、確か。」
「なんだろう、怖い世界だ……」
レイは世の中の裏事情を、少しだが知った様子だった。
そして、このような危険な仕事を、アスーカルはしていた……と、考えていた。高額な報酬を得られる分、一度登録すれば抹消は出来ないという問題が生じるのだ。
アスーカルは高額報酬を得られるかも知れないバンディットと、MS乗りをして生計を立てていた。だが資金繰りが思わしくなく、最終的にレイと交戦し、彼は命を落とした。その背景を知った時、レイの表情は暗くなる。
(あの人、そんな事もやってたんだ……)
「どうした?」
「あ、いえ……」
今更憂いても仕方がないのは分かっている。バンディットと言う裏家業の事を知ったレイ。彼が倒した人間がそれをしていたという事を知った為、余計に悲しい気持ちになったのだ。
そして、レイを助けたスパーダという男性もまた、バンディットという事。レイを助ける人間は何らかの形でバンディットが関係しているのもまた、因果なのだろうか。
「それよりそろそろ夜も遅いぜ。もう寝るか?俺は酒でも飲んでもう少しのんびりする。坊主は早く寝て、大きくなれば良いんだよ。」
と、言われ、レイは時計の方を見る。短針は11の数字を指していた。それに気づいた時、彼は僅かだが眠気を感じていた。
「はい……ありがとうございます。」
気を失っていたレイを助けた男、スパーダ。そしてそのスパーダの生活面を支えている男、ワートン。レイはまだ、スパーダの存在を見ていない。だがワートンの話し方や様子を見る限り、安心できる存在なのだろう……と、考えていた。
それからレイはワートンに案内され、先程まで眠っていたベッドの上に、転がるように倒れ込んだ。明かりは消され、部屋は暗くなる。
この時、レイは一つの事を考えていた。
(結局、あの感覚って何だったんだろうか……)
ワートンによって様々な事を聞かされたレイ。氷河族、バンディット等。今まで彼が住んでいたモントリオールでは聞くことのなかった単語達。多くの事を聞き、学んだレイ。
だが一つの疑問がある。それは、彼が朝に感じた、“優しい感覚”の正体だ。それは一体何なのか。何も分からないまま、レイは目を瞑る事にした。
――――――――――――――――――――死ね――――――――――――――――――
レイは再び“あの夢”を見た。何度も見る悪夢。そしていつも、レイは殺される直前で目を覚ますのだ。
「はぁっ!」
目を覚ましたレイ。近くにある時計を見ると、短針は5の数字を指している。
朝早くに目を覚ました彼は、もう一度眠りに就こうとするのだが、一度目を覚ましている為か、眠ろうにも眠れない。
ピキィィィ
(今の……あの時の感覚……!)
まるでレイが目を覚ますのを待っていたかのように、昨日の朝に感じた“感覚”が再びレイを包んだ。それを感じた時、彼はベッドを飛び起きていたのだ。
リビングへ向かうレイ。すると、明かりがついていた。恐らくワートンが起きているのだろうと思っていた。
近づいていくと、話し声が聞こえてきた。ワートンと、もう一人の男の声。その男の声はワートンと比べて、若い。
「ご苦労なこったな、こんな状況で。」
「まあ、今日は昼までは居る予定だよ。それまではゆっくりとさせて貰おうかな。」
「そういやお前さんが助けたって坊主が寝てるぜ。」
「無事だったんだね、そりゃ良かった。」
会話が聞こえる。レイは、そろり、そろりと近づき、壁の所でそっと聞いていた。
ピキィィィ
(あれ……この人……?)
再び、レイは“感覚”を感じた。
(この感じは……?)
その時、レイはもう一人の声を“聞いた”。
その際、両者は顔を合わせていた。壁側でこっそりとワートンと男を見ているレイと、レイを見る男。その“感覚”は両者をまるで引き合わせるかのように、互いの脳に電流が流れたのだ。
「貴方……は?」
「君……は?」
レイが感じていた、“感覚”の張本人。それが、目の前にいる男だと、彼は直感で感じ取っていたのだ。
「おうおう、どうしたんだよ?」
互いの目が合ったのを確認するワートン。だが何が起きたのかを理解していない様子だった。
「ああ、坊や。こいつがお前を助けたスパーダ・スクードだぜ。丁度さっき帰って来たんだよ。」
「スパーダ……さん?」
レイを助けた青年、スパーダ・スクードが目の前にいた。そして、レイはこの青年から、優しい暖かさを感じていた。
彼がずっと感じていた感覚の正体。それは、目の前にいる青年、スパーダ・スクードだったのだ。
第十五話投了。新生連邦側に四機もガンダムタイプが投入されるという話。後半、レイが出会った人物は今後の話に於いても重要人物となります。