機動戦士ガンダム Living Days   作:すからぁ

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超大型MS、ダッゲインMK-Ⅱが起動する話。
※一部性的描写有。


第二十四話 76.6メートルのMS

 

 早朝の奥多摩基地に五隻の、水色の空中戦艦であるマドラ級空中空母が降り立った。新生連邦軍の空中戦艦であり、ヒエラクス級の大型戦艦をより、小型化し、生産数を増やしたものがこれに該当する。

 その中で、一隻、通常のマドラ級空中戦艦とは違う、やや浅黒い色の戦艦があった。名はディラスター。ロシアから来日した、新生連邦軍の佐官、フーク・カズロブが指揮する専用艦である。

 何故五隻も空中戦艦が必要なのか。それは、マサアキが言っていたように、超大型MSがロシアより運搬されていたからだ。その運搬には四隻程の戦艦が必要になる程の巨体を誇る。通常のMSが入らないサイズの為、四隻の戦艦に特殊ワイヤーを装着し、運搬する。それだけでは強風が吹いた時に機体が大きく揺れる可能性がある為、数機のジョゼフが超大型MSの足元を支えるようにして、常にコントロールをして、運搬を行なっていた。

 やがて到着したそのMS。名は、ダッゲイン。かつて、デウス帝国軍が運用した超大型MSである。

 元々ダッゲインは従来の標準サイズのMSから、体格のみを大型化させた試験機として作成された機体であり、今回奥多摩基地に運送されたのは、その改修機体であるMk-Ⅱである。

 ダッゲインMk-Ⅱ。型式番号DGMⅡ-8600。最大の特徴は、その体躯である。従来のMSの全高が18メートル程度とすれば、ダッゲインMk-Ⅱの大きさは76.6メートルに該当する。これは、従来のMSの実に四倍に相当する。まさに、“巨人”と呼べるMSである。

 デウス動乱の終盤で使用されたこの巨体ではあるが、然程の戦果を上げられず敗北。その後に地球連邦軍が回収し、そのまま運用する形となったのである。

 このMSの最大の特徴は、サイコミュシステムが搭載されている事である。脳波コントロールによって無人の兵器を操るという技術。これによるオールレンジ攻撃を行い、一度に多数の敵勢力の殲滅を狙う事が出来るというものだった。

 しかし、サイコミュ兵器の運用には搭乗者の脳波コントロールが必要不可欠である。これは、常人……つまり、オールドタイプのパイロットがこれを運用した場合、莫大な情報処理を行わなければならない為、下手をすれば精神崩壊、意識消失、最悪の場合、そのままの死もあり得る、危険な代物なのだ。

 アレンの駆ったティフォンガンダムは、有線式のサイコミュ兵器が搭載されていた。それは、準サイコミュと呼ばれる兵器であり、ある程度有線が搭乗者の脳波コントロールに対応しているというメリットがある。無論、力を持つシンギュラルタイプ等の人間がそれを使用すれば、より強力な動きをする事が可能だ。

 今回、ダッゲインに搭載されているサイコミュ兵器は、バレットビットという兵器だ。ダッゲインのリアアーマー部分に搭載されている兵器であり、三十基、搭載されている。これら一つ、一度つを脳波コントロールで操り、実弾で敵を狙い撃つ。無線でそれらは行われる為、より高度な空間認識能力が求められる。故に、シンギュラルタイプや、強化モデルといった人間がこのような兵器のパイロットに選ばれ易いのである。

 ただし、レイの場合は特別だった。彼は初めてサイコミュシステムを用いたシミュレーションを行った。力を持つ人間であるレイであったが、彼はそれを全く知らない状態で、サイコミュシステムのシミュレーションを行ったのだ。それが、レイには刺激が強すぎた。故に、彼は激しい頭痛を感じてしまったのである。

 

 

ロシアから、佐官であるフーク・カズロブが降り立った。奥多摩基地の兵士達は皆敬礼をし、フークを迎え入れる。その中に、司令官であるマサアキの姿があった。

「カズロブ大佐。ロシアから遥々と、お疲れ様です。」

フークはマサアキの上官に当たる存在だ。階級も大佐と、佐官の中で高い階級に位置する。

「アルト少佐。シンギュラルタイプの研究を進めていると聞いてはいるが、どのような状況か、説明を願おうか。」

軽度のほうれい線が見える男、フーク・カズロブ。年齢は三十八歳。新生連邦軍の大佐だ。かつてのデウス動乱でも宇宙戦艦に乗り、前線を指揮した経験を持つ、男である。

「順調に戦績を残しています。シミュレーションの点数も常にハイスコアを取っています。実際のサイコミュ兵器を運用しても、差し支えないかと、思われます。ね、スバキ。」

そう言ったマサアキは、スバキをフークの前に差し出した。彼女の表情は暗く、俯いている。

「可憐な少女だ。このような少女がシンギュラルタイプの力を秘めている……不思議なものだな、まったく。」

「彼女の力は圧倒的ですよ。」

自信満々な様子のマサアキ。

彼がシンギュラルタイプに拘る要因の一つ。それは、戦力としての価値である。元々シンギュラルタイプは戦争中で覚醒したとされる人種。そうした人種は通常の人種であるオールドタイプよりも遥かに空間認識能力に優れている。常人以上の索敵能力は戦場では重宝される存在だ。

 しかし、フークが次に発した言葉はマサアキを落胆に追い込む事になる。

「サイコミュ兵器を扱うのにシンギュラルタイプが素晴らしい……か。アルト少佐、君の言いたいことは分かる。しかし……それでは時間が掛かるのだよ。」

「時間が……?」

マサアキの表情が、変化する。

「戦力を補充する為には、効率が求められる。シンギュラルタイプは確かに可能性があるかも知れない……が、覚醒に時間が掛かりすぎる。どのような状況であれ、戦局というのは常に変化する。シンギュラルタイプへの覚醒等、待っていては、変化し続ける戦局に対応が出来ない。これ、どういう意味か分かるかね?」

「まさか……大佐は、強化モデルを支持されているという事なのですか!?」

戦場では、常に効率が求められる。優秀な人材は常に配備されなければならない。

 常人、オールドタイプを上回る存在として存在しているのがシンギュラルタイプ。だがしかし、シンギュラルタイプへの覚醒自体の条件が不明である上、力自体の解放に時間を要するのが、事実。それでは現実の戦場では役に立たない。

 フーク・カズロブはそのような存在よりも、すぐに戦力になり得る存在を、支持しているのだ。それが、強化モデルなのである。

「察しが良いな、少佐。そう、シンギュラルタイプは良い存在かも知れんが、その力が強固たるものになるには時間を要するとされているのだ。ならば、即戦力に回せる者を用意するのが妥当だろう?それが、強化モデルなのだよ。」

と、フークは指をパチンと鳴らした。

「そして、この、ダッゲインMk-Ⅱのパイロットを務めるのがこの子だ。」

すると、ダッゲインMk-Ⅱの胸部のコクピットが開かれる。やがて、コクピットから一人の少女が降り立った。

その少女の髪色は紫色だった。透き通った青い虹彩を持つ、少女。彼女はマサアキを見た時、静かに礼をした。

「彼女はリノアス・クリストル。特殊強化モデルの人間だよ。」

「特殊強化モデル!?」

それは、セイントバードチームが交戦した三機のガンダムタイプのパイロットに該当する存在だった。強化モデルと呼ばれる人間の上位種である、特殊強化モデル。この場に、その人間が出現したのである。

 リノアス・クリストル。一見、物静かな印象を持つ少女。そのような彼女もまた、特殊強化モデルなのである。

「デウス帝国が残した遺産であるこのダッゲインMk-Ⅱ。サイコミュシステムを搭載しているこのMSを、このリノアスが扱う事が出来るかの実験を、ここでさせてもらう為に来た。特殊強化モデルが如何に戦場で役立つかのテストだ。」

フークは得意げに言う。一方のマサアキは、内心で悔しさに溢れていたのだった。

(強化モデル等、人の皮を被った化け物だ……!あんなもの等、認めない!スバキのような、純粋なシンギュラルタイプがサイコミュ兵器を操ってこそ、初めて真価を発揮する!化け物に役割を奪われる事があってたまるか!!!)

強化モデルと呼ばれる人間を、“化け物”と罵るマサアキ。彼のシンギュラルタイプへの拘りが、垣間見えた瞬間であった。

 彼の表情の変化を、スバキは見逃さなかった。フークの言葉に対して怒りを覚えているマサアキ。その表情に、彼女は恐ろしさを感じていたのである。

「そこの少女……スバキ・シンドウと言ったか。彼女のデータも見せては貰うが、リノアスをダッゲインから降ろす気はない。彼女も試行錯誤して生まれた試作品だからな。」

この男、フーク・カズロブも、また、強化モデルを人として見ていない。あくまでも、“試作品”という扱いなのである。

(人の皮を被った化け物より、スバキが優れている事を見せてやる!そしてあのMSにスバキを乗せ、シンギュラルタイプの有用性を明らかにする!その為に私はここまでやって来たのに!!)

シンギュラルタイプを戦力として扱う。マサアキの悲願の一つだ。その為に、多くの人間を不幸に陥れた。スバキもその内の一人である。彼女の家庭を崩壊させ、その上で軍の一員として扱うマサアキ。彼の異常性が、ここでも露わになった。

「私は……何をすれば、良いですか。」

その時、特殊強化モデルであるリノアスが口を開けた。

「ああ、まずは挨拶をしようか。礼をすれば良い。それが、挨拶だ。」

「礼……。」

と、リノアスは一人の兵士を前にし、軽い会釈をした。

「そう。その調子。」

そう言われ、リノアスは別の兵士にも礼をする。

 この光景が、マサアキにとっては不快でしかなかった。強化モデルはMS等の戦闘において優秀な効果を発揮する人種ではあるが、その代わり強化以前の記憶が曖昧となりやすい。彼女の場合、特殊強化モデルではあるが記憶の欠如が著明になりやすいのである。

 軍として見れば、優秀な人間は必要不可欠。だがマサアキの場合はその人間は純粋なシンギュラルタイプでなければならない。純粋な人間しか認めないという、プライドが強いのだ。

(こんな奴がサイコミュ兵器のパイロット……認めないぞ……こんなのは……!)

シンギュラルタイプこそが至高と言う、マサアキの思考。彼の異常な拘り。それが、彼に関連する人間を巻き込み、やがてそれらを不幸に陥れる結果となるのである。

 

 

 その日の夜。天候は曇り空。学校から帰って来たスバキはマサアキと共に居た。

そして、夜が更けた頃。マサアキは、基地近くの自宅の一室にて、スバキと性行為を行っていた。この男はスバキに対し、苛立ちを発散するかのように、激しく彼女を求めていた。悪魔のような男は、スバキのような年端の行かない少女にも、容赦のない性行為を行う。

「痛……い……く……あぁ……!」

激しく、ただ相手を痛めるだけの性交は人を快楽に陥らせない。苦痛でしかない。マサアキの玩具と化したスバキは、痛みに耐え、ただ、彼の性欲のはけ口と成り果てるのであった。

 

 性行為を終えた両者は、一つのベッドの下にいた。募る苛立ちをスバキにぶつけるマサアキは、突如、口を開いた。

「シンギュラルタイプこそが至高なんだよ。スバキ。君も分かるだろう?」

そのようなものは、彼女にとってどうでも良い事だ。この状況が解放されれば、それでよい。しかし、現実は、そうは行かないのである。

「知らない……どうでも良い……」

強引な性交をされ、気力を失っていたスバキ。思わず、このような発言をしてしまった。

「シンギュラルタイプだからこそ、君の、その発言が出来る。力を持つけれども、その人間らしい言葉が話せる。私はそれが愛おしい。人間らしさを残しながら、力を持つシンギュラルタイプ。それこそが戦力として成り立つべき存在なんだよ!!強化モデルなど、似非!あのような連中が成り立つ戦場などあってなるものか!!!」

次の瞬間。マサアキはスバキに覆いかぶさるような格好をする。何事かと思い、驚愕するスバキ。

「しかしね、君のその発言は時に殺意さえ湧く!今の私の感情に対する、タイミングかな?タイミングってやつだろうなぁ!!!」

すると、マサアキはスバキの首を絞め始めた。怒る余り、その矛先をスバキに向け始めたのである。

「ぁ……や……め……ろ……!」

殺意があるのか、ないのかは分からない。ただ、マサアキはその表情を歪ませ、スバキを苦しめる。前腕には血管が膨張する程に浮き出ており、対するスバキは、それが早く終わる事を、祈っていた。

 やがてマサアキはスバキの首から手を離す。彼女の頸部は、痣が出来てしまっていた。マサアキの握力の強さが、そこに現れていたのであった。

「ガハッ!」

咳き込む、スバキ。

「はぁ、ごめんね、スバキ……やはり私は感情のコントロールが難しいようだ。」

先の行為に対して謝るマサアキ。そして、抱擁する。スバキはただ、この狂気的な男に対する憎しみを抱くばかり。気分の捌け口にされ、ただ、理不尽に感じる、スバキ。

「クソ……!」

眼に涙を浮かべるスバキ。だが、彼女はマサアキに逆らえない。屈辱を感じながら、せめてもの犯行の印として、マサアキを睨むばかり。

「そう言えば、スバキ。君は母親を二年、見ていないよね。今現在、母親がどうなっているのか、気になるかい?」

一糸纏わぬ姿でスバキを舐めるように見つめた後、突如、彼女の母親の話題をし始める。“母親”のキーワードが出た時、スバキは大きく反応をした。

「母さん……?母さんがどうしたんだ!?」

思わず近寄るスバキ。それと同時に、マサアキは近くにあったEフォンを持ち出した。

「今の状態を、君に見て欲しくてね。“母親”がどうなっているのかを。」

マサアキは、Eフォンの画面を見せる。電子ウインドウが拡大され、その“画像”が浮き出た。

 

 そこに映っているのは、スバキの母親だった。年齢は30代後半。スバキと同様、整った顔つきの美女。スバキと離れ離れになっている母親は現在一人で暮らしている。

 しかし、その光景には違和感があった。何故ならば、母親以外にもう一人、人間が映っていたからだ。その人間こそ、マサアキだったのである。スバキには母親へ会うなと言っておきながら、マサアキはスバキの母親に、密会していたのだ。

 やがて両者は、突如接吻を始める。それも、激しく、絡み合っている――

「おま……え……!」

まさか、母親が憎い男に接吻をされるという光景を、見せつけられたスバキ。この時、彼女の中で様々な感情が入り混じっていた。

 困惑、嫌悪、嫉妬、そして、怒り。これらの感情が、一斉にスバキの中で溢れ出る。彼女の眼が、震えているのが分かる。

 Eフォンの画面内は更に行為をエスカレートさせていた。母親とマサアキが抱き合う光景。そして性交。正常位、騎乗位、後背位。まるで、それをスバキに見せつけんとする、マサアキ。

「いいわあ!最高です!貴方……!あの人が死んでからずっと寂しかったのぉ!」

母親の、声だ。二年越しに聞いた母親の声は、憎むべき男に抱かれている、愚かな雌の声へと成り果てていたのだった。

「お金の心配から解放されて……スバキはちゃんと育ってる!私、やっと自分の時間が出来た!とても幸せですぅぅぅ!!!」

憎い男に抱かれ、性器を突かれている母親の姿はなんと、醜い姿だろうか。それを、Eフォンというデバイスで見せつける、マサアキ・アルトという男。

 それを目の当たりにしたスバキは、突如嘔気を催した。怒りを通り越し、あらゆる感情の処理が出来なくなった彼女の身体に異常を来たしたのである。

「うぶッ……!」

手を口に運び、そのまま洗面所へ走る。

 

「おええっ!おえええええ!!!」

吐瀉物は彼女の胃を逆流し、口内から出た。醜いものを見せつけられたスバキの精神は、限界を迎えつつあったのだ。その拒否反応が今出たのだろう。

 洗面所に、シルクローブを纏ったマサアキの姿が。彼女の心境など構わないこの冷酷な男は、何故このような仕打ちを平気で行うのだろうか。

「これが、現実さ……ちなみにこの動画は一週間前の動画。君がレイ君を助け出した頃の……ね。」

追い打ちを掛ける、マサアキ。

 スバキは、全てを奪われた気分になった。経済的支援という条件の代わりに、母親との接触禁止、基地内でのシンギュラルタイプの兵士としての活動。管理される生活。そしてマサアキ・アルトからの暴力、暴行。その状況でも彼女は母親と言う心の支えを保っていた。

 しかし、それは今、マサアキの手によって堕ちた。母親から聞かされた言葉が、彼女の脳裏に響く。

 

―――――――――あの人が失われてからずっと寂しかったのぉ―――――――――――

 

―――――――――――――――とても幸せですぅぅぅ―――――――――――――――

 

母親というかけがえのない存在から聞かされた言葉は彼女の心を破壊するのに十分だった。人の事を見ないこの男は、スバキの心を、この場であえて折るような真似をしたのである。

「これで、君はシンギュラルタイプの兵士として闘う以外に道は無くなったという訳だ。頑張ってくれよ。強化モデルに負けない、シンギュラルタイプへの力の発揮……それを、私は期待しているからね。カズロブ大佐へは打診するよ。君がダッゲインのパイロットになれるように……と。」

その声も聞こえる筈がない。もう、どうすれば良いかも分からないのだ。

(嘘だ……嘘だ……嘘だ……!)

言葉すら出せなくなったスバキ。彼女はただ、呆然と、立ち尽くすだけ。

 絶望的な状況はいつまで続くのだろう。どうして彼女はこの状況に陥る事になるのだろう。全ては、自分に目覚めてしまった“力”が原因だった。それさえなければ、このような未来になる事は無かっただろうと、感じるスバキ。

 しかし現実はそうはさせない。それを利用する軍の人間がいる限り、この悲劇は終わらない。戦争で有益とされるシンギュラルタイプ等の力を持つ存在。彼女もまた、戦争における利益、欲にまみれた人間の犠牲者の一人と言えるのであった――

(助けて……誰か……)

強気だった彼女が、初めて、誰かに助けを求めた。その想いは、誰を想定したのだろうか。それは分からない。  

心が、壊れて行く。今までは自身を強く保つ為の、支えがあった。だがその支えは一人の男により、脆くも崩壊してしまった。彼女を支えるものは、もう、何もない。その中で、スバキは涙さえ、浮かべられなかったのだ。

 

 

 

 一方、セイントバード内にて。救出されたレイはまず、頸部に装着されていたチョーカーを切除して貰っていた。爆弾が内蔵されているものだった為、ジャンク屋内の爆弾処理専門の人間にそれは解体された。

 そして、彼はこの一週間であった出来事を全て、話した。それを聞き、エリィは彼を慰める。一方のネルソンは腕を組み、考え事をしていた。

「力を持つ人間を利用する人間……か。そのような存在が、新生連邦内にいるとはな。大変だったな、レイ。」

「あの時、エリィさん達が来てくれなかったら、どうなっていたかも分かりません。本当に、すみません……」

落ち込むレイ。しかし、エリィはそれを気にする様子はない。

「貴方は謝る必要なんてないんだよ。無事で何よりだよ。けれど……厄介なのはEフォンを敵に取られているのもそうだけれど、それ以上にその、女の子が心配ね……」

レイを助けた少女、スバキ。だがそのスバキは、マサアキ・アルトに支配されているという状況。彼は彼女を助けたいと願っている。しかし、それはどのようにすれば叶うのだろうか。

「僕は、スバキを助けたいんです。あのままじゃ、あの子は壊れてしまうと思うから……」

一週間余りという時間ではあるが、スバキの悲惨な状況を聞かされたレイ。彼は、彼女を助けたいと思う一心でマサアキに身を委ねた事もあったが、それは空回りに終わってしまう。しかし、どうしても、レイはスバキを助け出したい気持ちが強いのだ。

「レイ、君の気持ちは分かる。囚われている少女を助け出したい、君の気持ちは……な。」

というネルソンだが、彼は俯いている。

「しかし、残念ながら現実はそんなに甘くはない。君が偶然知り合った少女は可哀想な境遇かも知れないが、君の行動により、我々が損害を被る事もある。」

ネルソンの言葉は正論だ。今回の出来事はレイの身に起きた出来事であり、彼の意思を尊重してしまうと、セイントバードのクルーが危険な目に遭う可能性があるのだ。

 しかし、レイはこの言葉に納得出来なかった。彼女の心が壊れてしまうかも知れないと思うレイは、気が気で、なかったのである。

「そんな!じゃあスバキを放っておけって事なんですか!?あの子は、あそこにいては行けないんだ……あのままじゃ、壊れちゃう……」

そう言われ、ネルソンはただ、黙るしか出来ない。レイの身柄は戻ってきている状況ではあるが、彼の心境は、スバキを助けたいという気持ち、ただそれのみなのである。

「大尉、私はレイ君の意見に賛成ですよ。」

傍にいたエリィの、優しい声が聞こえた。

「囚われている女の子を助けたいって気持ちになるのは男の子だったら当然じゃないですか。そこに、大人の都合なんて入れたらダメですよ。」

「しかし、艦長、その後に起こり得るリスクも考えなければならない!セイントバードの事や、アインスガンダムの事等が奴等に知られれば、やがてはここのジャンク屋のメンバーにも迷惑が掛かる!どういう手段で奴等が攻撃を仕掛けてくるか見当もつかない!」

ネルソンの意見は間違ってはいない。しかし、エリィは言う。

「じゃあ大尉はあの時にどうしてレイ君を助けたんですか?って話になりませんか?」

「それは……」

元々ネルソンはアインスがチェーニ姉妹に襲撃を受けている所を偶然見つけ、ハルッグで救助した。そこに利害はない。危機的状況の人間を助けるのは人として当然と、考えているからだ。

「それに、今はモグリでも大尉は医者だったでしょ?人を助けない医者なんて必要ですか?人を助けるのに理由はありますか?そう言う事ですよ?大尉。」

エリィは、笑顔で言った。それを見たネルソンは、黙るしか出来なかった。

「さて、レイ君。その子、スバキさん……だったかな。その子の救出作戦を考えないといけないね。」

エリィの言葉は、傷心だったレイに光をもたらした。彼が助けられたのは昨日の夕方。それから翌日になったこの日。エリィが彼に言葉を掛けるまでは、スバキの事で悩み続けていたのだ。

「アインスガンダムで行きたいです!あの基地に行って、攻撃をして……それで、スバキを救えば!」

焦るレイ。言葉に余裕がない。無論、それは反対されてしまう。

「こういう時は、作戦が必要だ。短時間で確実に彼女のみを救出する作戦がな。基地の内容に関しては君が詳しい。詳細を、教えてくれ。」

「はい……!」

牢獄に捕らえられたような感覚だったレイ。こういう時、セイントバードチームの仲間が心強い。彼等は無償でレイに協力してくれている。

 純粋な善意は人との繋がりに於いては必須だ。人は助け合いを経験し、それが繋がりとなる。そこに、利益が生まれるか生まれないかは不明だが、何らかの形で人に対する善意を行い、見返りを求める事は言語道断である。

 利益の追求といった場面では互いに利になるという意味では善意を強調する必要がある時があるかも知れない。しかし、今は困っている人、助けてを欲している人がいる状況。そこに、理由など求めては行けない。その人を少しでも苦しみから解放するという事が、大切なのだ。

 しかし、それは組織が大きくなれば制約が生まれる。それにより、助かる命が助からない事もある。幸い、セイントバードチームはMS乗りという、何処にも所属しない組織だ。故に、レイの想いを皆が汲んでくれているのであった。

 

 

 

 翌日。マサアキは上官であるフークに、スバキの事について話をしていた。シンギュラルタイプの有用性を示したいと、ダッゲインMk-Ⅱのパイロットについて、改めて交渉をしていたのである。

 MSデッキにて。フークとマサアキはダッゲインMk-Ⅱの前で、対面に立ち、話をしている。それぞれが贔屓する、パイロットについて。

「カズロブ大佐。私は、シンギュラルタイプの有用性を再確認したいと考えております。覚醒に時間を要すると言いますが、シンギュラルタイプは間違いなく、戦局を大きく左右する存在です。自然に覚醒した者の力は、重要な戦力になり得ます。」

それは自身がシンギュラルタイプである事も含めての、意見だ。

「スバキ・シンドウのシミュレーションのデータは見させて貰った。確かに、サイコミュシステムを稼働させる上では十分に優秀と言えるだろう。」

フークはスバキの実績を褒めた。しかし――

「実はリノアスにも同様のシミュレーションを行っている。このデータを見たまえ。」

と、フークは小型のコンピュータのウインドウを開き、そこに示された数値を見せた。

 そこに写っているのは、シミュレーションの点数だ。スバキとリノアスの、結果。僅かではあるが、リノアスの方が勝っているのである。

「強化モデルに純粋なシンギュラルタイプが拮抗するのは大変優秀ではあるが、数字がモノをいう。僅差でも数値が優れている方を、我々は推奨する。彼女は戦力としては引き続き温存すべきだが、サイコミュに関してはリノアスを優先させる方針だ。」

マサアキの内心は、再び怒りに満ちる。シンギュラルタイプこそが至高と考えるマサアキにとって、強化モデルに敗北する事はありえないと考えるのだ。

「この機体を見たまえ」

と、フークはダッゲインの方に視線を見る。76.6メートルもの巨体を前にすれば、彼等の存在がまるで蟻のように映る。

「この機体はデウス動乱時にデウス帝国がサイコミュシステムを試験導入した機体だ。脳波コントロールで兵器を操るという技術は旧世紀から試されていた。それにより、身体の一部等を動かす事は可能になってはいた。だがそれを遠隔操作し、兵器に流用する技術に至るには途方もない時間を要したのだよ。」

旧世紀より、脳波コントロールは意識下による端末操作や、身体が不自由な人間のコントロール等、日常生活上における技術として発達してきた。だが、サイコミュ兵器として用いるのには膨大な時間を要した。人型兵器、MSに搭載され、それを駆使しながら脳波で無線兵器を操るというのは、困難を極めていた。

 ダッゲインは、それを成し遂げた機体である。但し、それを行う為には機体を大型化せざるを得なかった。故に機体と、遠隔兵器であるバレットビットは一基あたり高さ約3メートル、幅1.5メートルの、兵器となってしまったのである。それが、リアアーマーには三十基も搭載されているのだ。

「シミュレーション上では問題ないかも知れないが、実際にバレットビットを操るにはリノアスのような特殊強化モデルが妥当だ。そもそも、ダッゲインは強化モデルが搭乗していたという話だ。ちなみにだが、シンギュラルタイプがこうした兵器を操ったという事例は今まで、ない。」

フークの言うように、デウス動乱時のダッゲインのパイロットは強化モデルとされた。

 しかし、マサアキはフークの意見に食らい付く。シンギュラルタイプが如何に有能な存在であるかを、確認したいが為に。

「カズロブ大佐。ですが実際に操ってみなければ分からないと思いませんか?シンギュラルタイプが優れているのか、強化モデルが優れているのか。」

「貴官は何が言いたい?」

腕を組み、聞くフークに対し、マサアキは、答えた。

「ダッゲインにスバキとリノアスを乗せるのです。そして、サイコミュ兵器を操ります。ダミーバルーンを用い、何体撃破出来るのかを競います。シンギュラルタイプと、強化モデルの競い合いです。」

マサアキの提案。サイコミュ兵器を実際に操り、その実力を見るというものだ。しかし、スバキにとってこれは危険である。

 彼女は今まで行ったのはシミュレーション上であり、実際の兵器での実戦経験はない。しかしリノアスは実際の経験がある。この違いは、大きい。

 だがシンギュラルタイプの有用性を見たいとするマサアキは、そのような危険など顧みず、フークに懇願するのだ。

「面白いな、貴官の考えは。採用してみるか。明日に試験を開始しよう。」

フークは頷き、その場から去っていく。この時、マサアキの思惑が実ったのであった。

 全ては、己が信条とする、シンギュラルタイプの飛躍の為。その為には、この男はスバキのリスクなど全く省みない。この男の狂気は、留まる事を知らない。

 

 

 フークとの要件を終えたマサアキは、一人、廊下を歩いていた。スバキを用いての、シンギュラルタイプの可能性の顕示をする機会を貰ったこの男。しかし、実際は自身が支配している人間を利用しているに過ぎない。

「マサアキじゃねえか!」

その時、マサアキは一人の男に声を掛けられた。急いで振り返ると、そこに居たのは、クラリス・デイルであった。数日前までギリシャでヒースト姉妹に助けられたこの男が、何故かここ、奥多摩基地内の廊下に居たのでる。

「クラリスか!久しぶりだね!士官学校以来か!何故、ここに!?」

クラリスとマサアキは、士官学校時代からの友人だ。クラリスが以前に日本に知り合いがいると言ったのは、奥多摩基地の司令官を任されているマサアキがいるのを知っていたからである。

「色々とあったんだよ。俺もな。しかし、随分山奥に基地があるもんだな。滅茶苦茶迷ったぜ。」

「東京は高層ビルが多すぎるからね。基地を作るにはこうした環境が良いと、判断されたんだろう。」

奇跡的に生きていた男と、司令官を任されている男が再会した。しかし、彼等の階級には大きな、差があったのである。

「お前……少佐になったのか!?」

クラリスはマサアキの襟元にある階級章を見て、驚愕する。士官学校時代以来合流していなかった彼は、まさか友人が大きく出世していると、思っていなかったのであった。

「クラリス……ああ、君は中尉か。じゃあ、立場としては私が上官にあたるね。」

マサアキの言うように、彼の方が階級は上だ。しかし、クラリスはそれを気にしないようにと、言ってきた。

「階級が上とか関係ないだろ?俺等は友人関係だろ?せっかく再会出来たのにそりゃないぜ。」

と言う、クラリスの表情はどこか、慌てている様子だ。

「階級上の立場と、プライベートとしての友人関係。それで変わる対応。それって、難しいよね。クラリス。」

 友人や同僚が上司になるという事は、社会では有り得る事だ。しかしその場合の線引きは、どうなるのだろう。仕事上では敬語を使い、プライベートでは友人や同僚時代のように会話をするのだろうか。

 それは、人に寄るだろう。両者が築いてきたそれまでの関係に寄るだろう。互いに信用できる関係ならば仕事上でも許されるかも知れない。だが、そうでない場合はどうなるのだろうか。

 マサアキ・アルトは危険な人間である。しかし、クラリスといった友人を士官学校時代に作っているのもまた、事実なのである。

 

 

 両者は、少しの間会話をした。過去の事や現在の事等。マサアキは、シンギュラルタイプの研究の話を、クラリスは自身が今まで経験した事等を話している。

 まず、マサアキはシンギュラルタイプの事について話した。マサアキがそれをクラリスにカミングアウトしたのは学生時代の事だ。だがそれを言った所で、クラリスは信じる様子を見せなかったのである。

「クラリス。君は今でもシンギュラルタイプ、信じないのかい?」

コーヒーを飲みながら、クラリスは言った。

「分からないものを信じろったって無理に決まってるだろうが。」

ブラックコーヒーは彼の喉を通り、苦みが舌に伝わる。

(所詮オールドタイプにシンギュラルタイプの事など理解出来ないんだろうね。)

と、マサアキは友人である筈のクラリスに対して思っていた。

「にしても、お前はやっぱり天才だよな。司令官しながら研究所の所長を任されてるなんてよ、友人としちゃ、誇らしいけどな。」

一方のクラリスは彼の出世を喜んでいる。研究所の所長に、基地の司令官と言う肩書を持つマサアキは、クラリスにとって誇りと言えたのだ。

「私の場合は夢中になる事にとことん夢中になる性格だったのさ。故に士官学校時代のガールフレンドには悉く愛想を尽かされた。だから今でも独身なのさ。」

と、自身の過去を呟くマサアキ。それに対するクラリスは、やや顔をしかめた。

「そういやさ、俺、ガンダムを支給される筈だったんだよ。地道にテストパイロットとかを頑張った結果、やっとガンダムなんてさ、伝説とか言われてる機体を支給されるんだぜ。」

と、今度は彼はこれまでにあった経緯を語り始めた。

「けどさ、ガンダムは奪われた。糞みたいなガキに……あんな、女みたいな顔したなよなよしたガキに奪われて……それで俺はこのザマっつーわけだ。情けねぇ。」

と、溜息を吐くクラリス。ここに来るまでにあった苦労話をマサアキにする。

 しかし、マサアキは彼の言葉の、あるキーワードに興味を示した。

「女みたいな顔した……なよなよしたガキ?」

それに該当する、覚えのある人間が一人。レイである。

「今はどこにいるかは知らねえが、まあ何にしても知人の基地に合流出来たのはありがたい話だぜ。いや、ホント――」

「詳しく、聞かせてくれるかな?」

クラリスの言葉を、マサアキの言葉が遮った。それに反応するクラリス。

「ああ。構わないけど?」

「その少年、名前は分かるかな?」

知り合いなのか……と、クラリスは疑問を抱く。恐らく違うとは思うが、クラリスは答えた。

「レイ・キレスって奴だが?」

マサアキは、右手で指を鳴らした。そして、笑みを浮かべる。

「偶然だね!いや……これは奇跡的と言っても良い!まさか!クラリス、君がレイ君を知っているとは!」

彼等は共通の人間を知っていた。レイ・キレス。アインスガンダムのパイロット。偶然とはいえ、これは出来過ぎていると言えるような出来事だ。

「君の口からレイ君の名前が聞けるとは思わなかったね!ありがとう。友は持つべきだと思ったよ。」

クラリスの肩を、パンパンと叩くマサアキ。

「いや……え?なんで知ってんの、お前。」

「いや、実はね……ここに来てたんだよ。とても、可愛いくて、奇麗な子だったね。」

と、彼は唇を舌で濡らした。クラリスはこの時、僅かな寒気を感じていた。

(何言ってんだこいつ)

まるで、不審者を見るような目つきでマサアキを見るクラリス。

「それはさておき。彼、ガンダムに乗っているんだね。MSに乗っているっていう話は聞いていたけれど。まさか、あの伝説の機体に乗っているとは思わなかったよ。……で、彼は強かったのかい?」

率直に聞くマサアキに、クラリスは答える。

「言いたかねえ。あんなガキに負けるなんて、あんな屈辱、あってたまるかよ……連邦の軍人がよ!」

と、クラリスは右手で拳を作り、壁に当てた。僅かに痛みを感じたが、彼はそれを気にしている様子はない。

「俺がもっと強けりゃいいのになぁって思うんだよな。奴は一体何者かは分からねぇ。恐らく、只のガキじゃねぇのは分かるんだけどな。」

クラリスがそう言った時、マサアキは静かに言った。

「そりゃ……彼も力を持つ人間だからね。」

「はあ?何言ってんだ?んな事があってたまるかよ。」

シンギュラルタイプを信じないクラリス。だが、マサアキは語り続ける。

「かつてのガンダム伝説で語られる、ファースト・ガンダムのパイロット、ホワイト・デーモンと呼ばれるパイロット。性別は不明だが、その人間も力を持つ存在だったという。そして、一説によれば、ホワイト・デーモンは民間人だったという話があるんだよ。」

マサアキはガンダム伝説について話し始めた。

 彼の言うように、この世界観のガンダムという存在は、現代から百五十年以上前の、ファースト・ガンダムという存在が由来である。それが基盤となり、MSという兵器が生まれて言った。

「君が言っていたように、レイ・キレス君がガンダムのパイロットだとすれば……彼は民間人でありながらガンダムのパイロットを務めているという事になる。これは偶然なのか?それとも……だね。」

マサアキは眼鏡を、くいと上げて言った。

「そして、デウス動乱時に活躍した、クリスタルガンダムのパイロット……デウス動乱の英雄、アレン・レインドも民間人から地球連邦軍に入隊したという話がある。その、圧倒的な力を持って……ね。」

同じ力を持つ存在であるマサアキは、レイやアレンといった存在をリスペクトしている。それ故に、レイの存在に関心を抱いている。そして、彼が最も贔屓しているのはスバキ・シンドウだ。スバキに対し、歪んだ愛情を注ぐマサアキ。だが、この事はクラリスは知る筈がなかったのである。

「そんなのは偶然だろうが。本来ならば、ガンダムは俺が操るべきだったのによ!仕方ねえとはいえ、悲しい話だぜ。全く。」

やはり、力を持つ存在には興味を示さないクラリス。無理もない。信じていないのだから。

「俺はな、オカルト話は興味ねぇんだよ。それよりさ、せっかく再会したんだ。出来ればMSが欲しい。お前が司令官なら、俺に何か手配してくれよ。量産機でも何でも良い。頼むぜ。」

そう言うクラリスだが、これに対し、マサアキは密かに、握り拳を作っていた。

「そう言えば一機、試作兵器があったね。それを紹介しようか。」

「へぇ、そりゃ楽しみだ。」

「じゃあ、移動しよう。」

そう言いながら、マサアキはクラリスを誘導する。基地の司令官であるマサアキは、誰に遠慮する事なく、クラリスをMSデッキへ案内した。

 

 MSデッキにて。そこにはディースト、ジョゼフといった新生連邦軍の機体が並んでいた。その中で、一機、頭部はジョゼフだが武装が異なる機体があった。両肩には大型のビーム砲、大型のバックパック。そして、左腰部に存在する、まるで日本の“侍”のような武装。

 一見異様な機体に見えるその機体。クラリスはそれを見て、興味を示した。

「こいつは……?」

「ジョゼフを大幅に改修した機体だよ。NFMS-990/KB、ジョゼフのカスタムだ。昔の日本のサムライ……確か沖田総司だったか。彼が使用していたとされる、カタナ、菊一文字を模して造られたカタナを装備したジョゼフだ。これを君の機体として与えよう。友人として……ね。」

そうは言うが、マサアキのクラリスに対する表情は暗い。

「なかなか、良いじゃねぇか。ジャパニーズカタナ!こりゃ、ロマンがあるな!もし何かあればこいつに乗って戦うぜ。レイの奴が日本にいるなら、出撃の機会はあるだろうしな!!」

打倒レイに燃えるクラリス。しかし、それを見たマサアキの目は、冷めていた。

(シンギュラルタイプを蔑ろにするクラリス……強い人間を分からない君に相応しい、その玩具で満足すれば良いさ。)

シンギュラルタイプこそが至高と考えるマサアキだったが、友人である筈のクラリスはそれを信じようとしない。機体こそ彼に与えたが、内心ではクラリスの事を受け入れていない。

 マサアキがクラリスに与えた機体。ジョゼフのカスタム機体である。火力や機動性を大幅に上昇させた機体であるが、誰がパイロットになるかは決まっていなかった。この場に現れたクラリスに、丁度良いと判断したマサアキは、このジョゼフ菊一文字カスタムをクラリスに授ける事にしたのであった。“玩具”として。

 

 

 

 スバキを助け出す為の作戦会議を立てているセイントバードチーム。レイは基地の内容を把握していた。だが会話の最中、ネルソンは悲報を、レイに対して伝えた。

「あのチョーカー型爆弾、解析の結果、発信機が取り付けられている事が分かった。これで、我々の居場所は新生連邦に知られたという事になる。相手の司令官は君がMSに乗れる事を知っていると言ってたな、レイ。」

彼がエリィやネルソンに対して話をした時に、その事を聞かれていた事も、全て話していたのである。

「はい……」

「となれば、セイントバードが新生連邦に狙われる可能性があるのも時間の問題……か。」

セイントバードの事やアインスの事が知られれば、新生連邦軍が動くのは当然である。それらを奪い返す為に、どのような行動を行うのかは容易い。

「けど、日本政府は新生連邦に対して強い権限を持っている筈です。確か、日本国内で定められている保護区での勝手な戦闘は禁止されている筈ですよ?」

と、エリィが言う。

「保護区があるのならば、ここにいる限り安全ではあるかも知れない。しかし連中はここにセイントバードとガンダムがある事を知っている。それが、危険な可能性がある。厄介な事に、我々に所属はない。そして、連中は軍備を欲している。」

ネルソンが不安を感じている。

 彼等がいる場所は、“保護区”と呼ばれている場所であり、如何なる戦闘行為を中止出来る場所となっている。しかしセイントバードとアインスはどこにも所属しない、MS乗りの所属。いくら保護区で保護されているとはいえ、敵がどのように動くか分からない。それ故に、ネルソンは心配しているのだ。

「じゃあ、先手を打ってしまえば良いと、思いますよ!」

エリィが右示指を立て、言った。

「レイ君が言ってたように、アインスガンダムをあえて出撃させて、基地に向かわせるんです。そして、アインスガンダムを交換条件にスバキさんを救い出す。これも選択肢の一つとしては成り立ちませんか?軍が戦力を欲しているのなら、相手も考える筈です。」

エリィの提案に対し、ネルソンは腕を組んだ。

「しかしそう簡単に行くだろうか?差し出すような真似をするなど……」

「ガンダムは渡す気はないです。あくまでも、“囮”に使うんです!」

「囮……?」

ネルソンは首を傾げた。

「ガンダムを欲しているのなら、万が一の時の為に、あえて出すんです。仮に敵がしつこく追いかけてきても、日本政府と繋がりがあって、尚且つ保護区に指定されているここ、シュアーさんのジャンク屋を襲うなんて事は恐らくしない筈ですよ。彼等の目的がセイントバードであったとしても。」

シュアー・ラヴィーノが日本政府の高官とコネクションがあるという話はガーストが以前にしていた。今回、それが役に立ったと言える。それが無ければ成り立たない作戦なのだ。

「しかし、レイ一人でそれは成り立つとは思えない……」

傍で聞いていたレイも、それは感じていた。アインスを操るのは彼だ。だが、その間誰がスバキを救出するのか。そこが、そもそもの問題なのである。

「そこで、私の出番です!」

と、エリィがどや顔で、両手で腰を持ち、笑みを浮かべた。

「エリィさんが?」

「レイ君、私をアインスに乗せて欲しいの。救出は私がします。」

「でも、そんなの危険ですよ!」

困惑するレイ。しかし、エリィは言った。

「私、これでも潜入は得意なの。それにね、レイ君。その、私、貴方と浅草で会った時に彼女の“感覚”も感じていたの。これってつまり、彼女も“シンギュラルタイプ”の可能性があるという事だよね?」

この時、レイは思い出した。エリィがシンギュラルタイプの持ち主であるという事を。力を持つ存在は、それ自体がセンサーになる。マサアキが、正にそれだ。

「力を持つ存在同士は惹かれ合う……これ、何となくだけれども分かる気がするんだよね。」

「力を持つ存在は惹かれ合う……?」

 

――――――力を持つ者同士は惹かれ合う運命にあるのかも知れないねぇ―――――――

 

忌むべき男、マサアキ・アルトが発した台詞。これに根拠はない。ただ、やはり奇妙な言葉に聞こえたのは間違いないと、言えた。

(どこかで、聞いたような……)

「験担ぎって訳ではないけれど、力を持つ人間が一緒にいる事は損はない筈だよ。目的はあくまでもスバキさんなんだから……ね?」

密かに、レイは思っていた。

「アインスをあえて前面に出して、その隙に艦長が救出する……という手筈という事か?」

ネルソンの言葉に対しエリィは、首を横に振った。

「いいえ、まず私が潜入します。それで、万が一の事があればアインスを囮にするんです!そしたら、相手も動じる筈ですよ!」

「しかし、それで大丈夫なのか……?」

確証が低い作戦だ。相手がどう出るかも不明な以上、リスクが伴う。しかし、エリィは“サムズアップ”ポーズを作り、言った。

「大丈夫ですよ。必ず戻りますから!」

力を持つ存在であるが故に、実施可能な救出作戦。それを、MS乗りであるセイントバードチームが行うのだ。

 無論、そこに利益はない。だが、困っている人間がいるのにそれを放置など出来ない。彼等は利ではなく、“人”の為に動くのだ。

「そう言えば、ガーストさんってどこにいるんですか?」

ふと、レイは聞いた。いつもジャンク屋へ働きに来ているガーストだが、今日は姿を見せていない。

「今日は休みだから、お出掛けをしているんじゃないのかな。」

「あ……そっか。」

一人でも、今の状況を知ってもらいたいと思っていたレイ。しかしガーストはセイントバードチームの人間ではない。あくまでも、働いているだけ。この時に仲良くなったガーストと会えないのは、少しばかり、悲しげな様子だった。

「まあ、何にしても、行きましょうか。」

「……はい!」

レイは、大きく頷いた。

 彼が提案した救出作戦。それに乗ってくれる、セイントバードチームのクルー。この時、レイは改めて、このチームに対する恩を、感じていた。

 

 

 

 奥多摩基地にて。そこではダッゲインMk-Ⅱのサイコミュ兵器、バレットビットの試験運用が行われようとしていた。パイロットはシンギュラルタイプである、スバキと、特殊強化モデルであるリノアス・クリストル。スバキは本日、学校を昼まで受け、早退してこの場に居る。

 今、彼女達は並んで座っていた。機体に乗る順番を、待っているのである。スバキはこの時、リノアスから感じる妙な感覚に違和感を覚えていた。

「あの……さ。」

いつもの活気が無いスバキ。心の支えを失い、マサアキの道具と成り果てた彼女。

「はい。」

リノアスは無表情で答える。

「嫌じゃないのかよ。こんなの。」

何気なく、聞いた。彼女はもう、この状況から抜け出したいと願っている。しかしリノアスはどうだろうか。特殊強化モデルと呼ばれる人間ではあったが、どのように考えているのかが気になったスバキは、声を掛けたのである。

「“嫌”という言葉が何を示すのか、不明。命令なら、そうします……それが任務なら、遂行する……。」

「分からない、私にはそれが、全く分からない……」

何故このような場所にいるのか。何故、力を持ったが為に、軍の実験に付き合わされなければならないのか。スバキの場合はマサアキの歪んだ愛情、狂気も重なり、既に精神は崩壊しつつあるのであった。

「いっそ、お前みたいに命令にただ、従うだけの人間になれれば楽なのかもな……感情なんてあるから、こんな思いをする。もう、何もかもが分からない……」

独り言のように呟くスバキ。今の心境を吐露し、話す。

 リノアスという存在を前にしても、動じる様子はない。恐怖という感情は、彼女の中で薄れつつあったのである。

「感情……」

リノアスはその言葉を、呟いた。

「感情って、何ですか」

スバキの言葉に疑問を抱くリノアス。その言葉は、彼女にとって、知らない言葉であった。

「変な教育受けてるんだな。泣いたり、笑ったり、怒ったり、楽しんだり。それが感情だろ。」

「理解不能。それらを表現することは不必要……と言われています……」

特殊強化モデルであるリノアスは、戦闘マシーンとして生きてきた。

「人間らしさ、まるでないじゃん、そんなの……」

「人間らしさ……理解不能」

リノアスの質問に疑問を抱くスバキ。

「さあ、知らない。私も人間らしい事、出来てないし……所詮、戦争の道具なんだよな。この力なんて。こんなのがなければ私だってさ……」

「道具……人間らしさ……感情……」

何故、スバキが発したこれらの言葉を、リノアスが復唱するのかは分からない。特殊強化モデルである彼女は、スバキの言葉をどう解釈しているのか。感情や人間らしさという言葉を使うリノアス。そう言いながら、スバキの方をじいっと見る。

「まあ、もうどうでもいい……今はただ、やる事をするしか、ない。ただの兵器として……」

「兵器……それは、私の役目。」

「変な奴……お前が強化モデルか何か知らないけど、どうでも良い……マサアキの為に生きるしか、私にはないから……」

そう言った後、スバキは立ち上がる。そして、ダッゲインのコクピット内に入っていく。シンギュラルタイプであるスバキが、先にサイコミュ兵器の実戦を行うのだ。

「感情……人間らしさ……何……?どこかで……覚えがある言葉……?」

残されたリノアスは、スバキが発した言葉を、連呼するばかりであった。

 

ビゴォォォン

 

ダッゲインMk-Ⅱのモノアイが、輝いた。赤く輝くそれが発火するように燃えた後、その巨体は静かに、それでいて厳かに、動き出す。

 ダッゲインMk-Ⅱのコクピットは従来のコクピットと違い、特殊な形状をしていた。力を持つ人間用に設計されている、特殊なコクピット。それは一切操縦桿等がなく、搭乗者の脳波コントロールのみでそれは動くのだ。

 スバキは黒いテストスーツを装着した状態で、コクピット内で、静かに目を閉じる。そして、標的を攻撃するイメージを行う。

そして、目が開かれた。

 

ピシュンッ、ピシュンッ、ピシュンッ

 

バレットビットが宙を舞う。ダッゲインのリアアーマーより展開されるそれは、無線兵器であり、スバキの脳波によってコントロールされている。

 それらは一斉に実弾を連射し、ターゲットであるダミーバルーンを破壊する。一体ずつ、確実に。

「素晴らしい……!流石だ、スバキ!!!」

傍聴席でその動きを見るマサアキは感激している様子だった。シンギュラルタイプである彼女が操るサイコミュ兵器の動きは、驚異的と言える。これが実証されれば、今後の戦力としても期待が出来るのだ。マサアキが狙っていたのは、これだったのである。

「う……あああああ!」

その時、ダッゲインのコクピットからスバキの悲鳴が聞こえた。彼女の目は見開かれ、頭を抱える。それに呼応するように、バレットビットはゆっくりと、地面に落ちていく。

「スバキ!おい!」

声を掛けるマサアキ。その直後、ダッゲインはその動きを止めたのだった。

 

 スバキが目を覚ましたのは悲鳴を上げてから2分が経過した時だ。気が付けば目の前のコクピットは開いていた。そこに居たのは、忌むべき人間、マサアキ・アルトである。

「恥をかかせたね、スバキ……まさかこうも簡単に意識を失うとはね!」

「う……う……ごめんなさい……」

スバキを追い込む事を言うマサアキ。それに対し、彼女は謝るしか出来ない。最早、この男に対する反抗する意志は、ないのだ。

「アルト少佐、その少女では所詮リノアスに及ばないな。すぐに後退だ。リノアスの実力を、見せてやる……」

マサアキはこれを聞き、フークに聞こえないように、静かに言った。

「人の皮を被った化け物に負けるなんてな……スバキ、今宵は覚悟しておけよ……!恥をかかせて、只で住むと思うなよ……!」

と言いながら、スバキの頬を叩く。しかし彼女はこれに歯向かう事もせず、自身の頬が腫れていく感覚を知る事しか、出来ない。

 

 少しの時間が経ち、今度はダッゲインにリノアスが乗る。元々彼女が乗っていた機体であり、その相性は充分と言えた。

 やがて再び起動するダッゲイン。この時、リノアスは目を瞑り、標的をイメージしていた。

(感情……人間らしさ……それは……何……?何……?何……?何……?何……?)

スバキから聞かされた言葉を、思うリノアス。

(感情……要らないモノ……人間らしさ……不要なモノ……私は……兵器……私は……兵器?私は……私は……私は……何……!?)

特殊強化モデル、リノアス・クリストル。彼女は極力感情を排除するように強化、調整をされてきた人間である。デスペナルティ、アトミック、バイラヴァーのパイロットであるニッカ、ハーディ、シエルとはまた異なるタイプの特殊強化モデルだ。

 一見静かな印象を持つリノアス。好戦的な印象を持つガンダムタイプに乗っていた特殊強化モデルとは違う彼女。しかし、彼女には大きな欠陥があるという事を、管理者であるフーク・カズロブは知らなかったのであった。

 

ゴオオオオオオオ

 

その時だ。ダッゲインは突如、脚部のバーニアを展開した。その巨体を少しずつ動かしていき、やがて基地から出ようとしていた――

「機体異常確認!」

「リノアス!何をやっている!戻れ!!!」

声を掛けるフークだが、リノアスは止まらない。

「感情……人間らしさ……感情……!!!」

何を求めているのか。何故、彼女は暴走を始めたのか。そのまま、巨体は基地を去ろうとする。ダッゲインは、どこへ向かおうとしているのか――

「大佐!ダッゲインが基地を離れようとしています!このままでは山の方に逃げます!」

「馬鹿な!何故だ!何故このような事が!」

騒然とする基地内。それに反し、ダッゲインは基地から離れる。何故その行動を行うのかは、定かではない――

「様子観察だ……もし奴が暴れるような事があれば……MSを出撃させろ!」

予想外の出来事が起きた。リノアスの駆る、ダッゲインは基地を離れようとしている。何故このような暴走行為に至ったのかは不明だ。パイロットであるリノアスは目を大きく見開き、脳波コントロールを行いながら、巨体を操り、移動しようとしていた――

 

 

 

 アインスは奥多摩基地へ向け、移動を開始していた。エリィを傍に乗せ、レイは移動する。

 この時、アインスの装備は通常のものを使用していた。ビームライフルにシールドと言う、オードソックスな装備。その状態で、バーニアを駆使して移動しているのだ。今回の目的はスバキの救出。余計な武装を装着する必要は無かったのである。

「スバキさん、無事だと良いけれど……」

傍にいるエリィは言った。それに対するレイの表情は、真剣そのものだ。

「スバキは、絶対に助けるんだ……僕が、必ず!」

彼女には助けて貰った恩もある。しかし基地内で彼女の実情を知ったレイは、悲しみに暮れる彼女を絶対に助けたいという、強い意志を抱いていた。彼のその強い意志は、エリィも感じ取っている。

 

ピキィィィ

 

しかし、その時だ。彼等の脳内に電流が流れた――と同時に、苦しみを訴える事になるのは。

「うぁぁ!?」

「これ……は!?」

突如脳裏に過る妙な感覚。何故、この感覚が急に生じたのかは不明だ。

 だがレイはモニターに映る、巨大なMSの姿を見た時、その疑問は解決する事になる。

「あれから……感じる……あの機体は一体……?」

それはMSと呼ぶには余りに巨大なものだった。一歩ずつ、確実に前進するその巨体は森林を破壊し、突き進んでいく。

「レイ君、気を付けて!何かが来る!!」

エリィが叫んだ時だった――

 

ダダダダダダダダダダ

 

二基の浮遊物が、突如アインスを襲ってきたのだ。それらは実弾を放ち、迫ってくる。サイコミュ兵器、バレットビットだ。

「何ですか!?これ!?」

「デウス動乱時に使われた、ビット兵器かも……でもどうしてこんな所で!?」

困惑する両者。だが、その浮遊物は容赦のない射撃を行う。

 実弾はアインスに向けて、攻撃するのに対し、シールドを構え、防ぐアインス。すぐにビームライフルを構え、それを狙おうとするが――

「避けた!?」

ライフルに反応するかのように、浮遊物は避ける。そして、すぐに実弾を放った。二基の浮遊物は躊躇なく、アインスに向かってくる。まるで、彼等が基地へ向かうのを阻もうとせんと、動いているのだ。

「まさか、こっちの動きが読まれた……?」

「分かりません、けど!」

集中し、浮遊物を狙うレイ。その兵器に照準を定め、彼はスイッチを押す。

 

バシュゥゥゥ

 

ビーム粒子が銃口より放たれ、浮遊物に直撃。一基は破壊された。だが、もう一基が再び実弾を放つ。アインスはこれを避け、再びライフルを構え、射出。浮遊物は破壊された。

「あのMSが放ってるんだと思う。けど、どうしてあれが動いているのかが不思議だけれど……」

レーダーに映る、巨体、ダッゲイン。それはバーニアスラスターの出力を高めながら、山の中を移動していく。それと同時に、バレットビットを同時に展開し、放っている。それはまるで、敵を攻撃しようとせんばかりに動いているのだ。

「あれ、どこに向かっているんですか……?」

ふと、レイは思った。狙いを見る限り、アインスを狙っているようには見えない。偶然射程内にアインスが居たから攻撃してきたようにも見えたのだ。

「分からない!けど、あんなにビットが浮いていたら近づくにも近づけないわ……!」

合計二十八基のバレットビットが浮遊している状況。そして、ダッゲインはバーニアの出力を上げ、迫る。

「また、来る!?」

すると、アインスの動きに反応するかのように一基のビット兵器が再び迫ってきた。大気圏内とは思えない、軽やかな動きはアインスを翻弄するのに、十分だった。

 実弾が放たれる。容赦のない攻撃。レイはこれを、辛うじて回避する。

「射程から離れるしか……」

攻撃を加えるのではなく、逃げる事を選んだレイ。それが、最善の選択と言える。

 迫るバレットビットではあったが、反撃をせず、アインスは逃げる。その射程から離れれば、標的が変わるかも知れないと考えたからだ。

 幸い、彼の予想は当たった。バレットビットはアインスを追撃するのを止め、元の場所へ戻っていく。しかし――

「あの機体、やっぱり都市部に向かってませんか!?」

「どういう事!?それって……」

「嫌な予感が、します……」

暴走しているダッゲインの向かう先。それは、都市部だ。住民が多いそこへダッゲインのような巨体が迫るという事は、甚大な被害を起こす可能性がある。

 しかし彼等の今の目的はスバキの救出だ。どうすれば良いか、分からないレイは一度待機する事を決めたのだ。

「あれ、一体何なんですか……?あんなに大きなMSなんて、見た事がないです……」

困惑するレイ。傍にいたエリィも、困惑していた。

「分からないわ……どこの所属なのかも不明だし……経過を見るしかないわね……」

と、彼等が話をしていた時だった。

 上空を、二機のMSが飛んでいた。SFS、エンパワーに乗っているディーストがな二機。いずれもダッゲインの方に向かっている。

「新生連邦のMS!?」

ディーストはダッゲインに向けてビームライフルを放つ。

 

バイイイイイイイイイイイイイン

 

機体に直撃した筈のビームは、ダッゲインに触れた瞬間に消失した。ビーム兵器が、通用しないのである。

「止まれデカブツ!!」

と、エンパワーに搭載されているミサイルでダッゲインを攻撃するディーストだが――

「ビット!?」

射程に入ったバレットビットがディーストを狙い撃つ。この攻撃で二機のディーストは瞬く間に破壊された。

 止まる様子のないダッゲイン。二機のディーストが破壊されたのを見届けたダッゲインはバーニアの出力を上げ、更に都市部へ接近していった。

「やっぱり、あれを止めなきゃ……!」

レイは迷わなかった。新生連邦の機体であるディーストが破壊されたのを確認した彼は、巨体を止めなければならないと、考えていた。

「ちょ……レイ君!?」

止めるエリィ。しかし、彼は止まる様子を見せない。スバキの事は心配だ。だが、この巨体は都市部へ向かう。それはつまり、都市部に住む人達に被害が及ぶという事だ。

 危険な状況ではある。しかし、レイは止まらない。エリィは制止しようとするが、彼の優先順位は、今、ダッゲインを止める事だったのである。

 

 

 ダッゲインMk-Ⅱは都市部に進出してしまった。巨体が出現した時、街中は騒然としている。まるでパニック映画のワンシーンのような状況。暴走するダッゲインは何故、都市部に向かうのか。

 東京の都市部に出現したダッゲインを巡り、日本政府は臨時連盟を開いていた。突如迫る巨体を止めなければならないのであるが、どのように止めるべきかという話を、議員達は話している。

「何故都心にあのような機体が現れるんだ!?」

「今は止める事を考えなければならない!新生連邦に応援を要請しなければ……」

「もう、出動はしていると聞いている!!」

「なら、どうする……?」

「自衛隊に配備しているジャスティスを展開するしかない!」

日本政府は独自の戦力を持っている。自衛隊と呼ばれる戦力だ。ただ、それらの役割というのは国に脅威が及ぶ事があった場合のみに出動を許可されるというものであり、普段はこれらが出撃する事は少ない。しかし今回の場合は明らかに有事であり、ダッゲインを止めなければならない状況だった。従って、MSが出撃されるのである。

今、湾岸部の自衛隊の基地から旧地球連邦軍のMS、ジャスティスが発進されようとしていた。これは新生連邦軍が日本を加盟国にした際に、自衛隊戦力としての条件として譲渡された事により、この機体の使用を許可されているのである。

 日本政府のジャスティスは頭部に日の丸のハチマキをしているのが特徴ではあるが、それ以外の基本性能は従来の機体と大差はない。ダッゲインを前にすればその差は歴然だ。しかし目の前に迫る巨体を止めなければ、甚大な被害が出る。それを止めるには、出撃するしかないのだ。

 日本政府所属のジャスティスが発進された。都市部にはサイレンが響いており、避難指示が出ている。

 パニックに陥る住民達。その上を移動する日本政府のジャスティス達。ビームライフルを構え、巨体に対してビームライフルを放つのだが――

 

ドバアアアアアアアアアアアッ

 

あろうことか、ダッゲインは腹部からビーム砲を放ち始めたのだ。避けきれず、シールドを構えるジャスティス達だが、出力は凄まじく、跡形もなく消し去られた。

 

 

 

 住宅街にて、逃げ惑う住民達。その中に、日本へ遊びに来ていたアムン・ディースの姿があったのだ。

「こんなの、聞いてない!あわわ……」

逃げ遅れまいとするアムン。人混みの中をかき分ける彼女。

「うぅ……」

その中、一人の女性が倒れているのを見つけたアムン。放って置けないと考えたアムンは人混みを避け、その女性に声を掛けた。

「あの、大丈夫ですか!?」

倒れている女性に気に掛けるアムン。女性は怪我をしている。動揺しているアムンだが、助けられるのは自分しかいない――と思っていた。

「あの、肩を持って下さい!」

そう言いながら、アムンは自身の肩を差し出す。女性は藁を掴む思いでアムンの肩を持つ。

「ありがとうございます……」

懸命に、アムンは移動しようとする。この場から、少しでも離れる為に――

「え?」

目の前に現れた、無線兵器、バレットビット。その銃口は、アムンともう一人の女性に向けられようとしていた――

 

ダダダダダダダダダダダダダ

 

凶弾は躊躇いもなく、アムンと、女性を撃ち抜いた。放たれる弾は連射により、彼女達の上半身を消し飛ばした。そこから多量の血液が噴水の如く溢れ、臓器を形成していたであろう、赤い肉片も散らばった。何とも、惨たらしい光景である。

 アムン・ディース。アニメ等が好きだった少女。彼女は、ダッゲインが放ったビットの凶弾により、上半身が消し飛んでしまった。助けようとした、女性と共に。最期の一言も、喋られないまま。

 

 

 ダッゲインは市街地へ確実に迫っていた。巨体に追従するように動くバレットビットは自衛隊所属のジャスティスを殲滅し、進んでいく。

 ある一機のジャスティスがビームライフルを構え、ダッゲインに向けて放った。しかし、ダッゲインにはビームに対するバリアーが張り巡らされている。従って、攻撃は無効化される。

「なら、接近戦で!」

勇猛果敢にも迫るジャスティスだが、バレットビットの前では無力だ。

一基のビットがふわりとジャスティスのカメラの前に迫り、凶弾を撃つ。カメラは瞬く間に破壊される。

「クソが!!」

自棄になるパイロット。視界が見えない状態で、ダッゲインに対して特攻を掛けようとしている。

 

ドバアアアアアアアアアッ

 

ダッゲインは腹部からビーム砲を放った。それを浴びたジャスティスは瞬時に融解する。

 

 このビームの矛先が、最悪と言えた。というのも、ジャスティスを破壊したビーム砲は、その矛先を東京のシンボルタワーである、東京スカイタワーに向けていたのである。

 東京スカイタワーの展望室は地上から350メートルの高さに存在する。更に100メートル上には展望回廊と呼ばれる場所がある。今、ビーム砲はこの350メートルの場所にある展望室に向けられていた。

 この日、展望室には観光客が大勢居た。突然の超大型MSの都市部の侵入に同然とする人々。逃げようとせんと、エレベーターへ向かう人々。

 その中に、ガースト・ピュアスの姿があった。彼は恋人であるプレーン・ミーンと共にスカイタワーへ上がっていたのだが、丁度、この時にダッゲインのビーム砲を浴びようとしていたのであった――

「嫌ぁぁぁ!」

「嘘……だろ……」

正に、最悪のタイミングだった。仕事が休みの日で、気晴らしに出かけた先でこのような事故に見舞われるという、悲劇。このままでは彼等はビームの光に包まれてしまう――

 

バヂィィィィッ

 

その時だ。迫るビームを、何者かが守った。ガーストは右肘で目を隠していた為、その瞬間を見ていない。

 やがて肘を退かした時――彼は、目の前にある、光景を見た。

「ガンダム……!?」

ガーストが見たもの。それは、ガンダムタイプ特有の顔貌をしたMSが、シールドを構え、ダッゲインが放ったビームから守っている光景だった。そのガンダムのカメラアイは、まるでガーストの方を見ているかのようだった。

 

ピキィィィ

 

その時だ。ガーストの脳内で電流が流れたのは。そして、彼は思わず、口を開く。

「あれに乗っているのは、アレンなのか……?」

何故ガーストはアレンの名を言ったのかが分からない。それは直感なのかも知れない。彼等を守ったそのガンダムのパイロットが、アレンであるかは、当然分かる筈がない。

 しかしガーストは、力を持つ人間であった。その直感は、ガンダムのパイロットの正体を理解した。

かつてのデウス動乱で、敵としても戦い、そして味方としても戦った人間、アレン・レインド。ガーストにとって戦友と呼べる彼が、目の前に居るかも知れない状況。

 無論、それに確証はない。だが、そのガンダムのパイロットはアレン・レインドであると、彼は確信していたのであった。

「頼む……守ってくれよ……!」

今の彼にとって、そのガンダムの存在は守り神も同様だった。神に祈るかのごとく、ガーストは傍にいる恋人、プレーンと共に心の中で祈る。このままダッゲインの侵攻を許せば、被害は甚大なものになりかねないのである。

 

 ガーストが直感で感じたように、東京スカイタワーを守ったのは、ティフォンガンダムであった。  

ジャンヌと共に来日し、この事態に気付いたアレンはティフォンを操り、ダッゲインを見ていたのである。

「なんで、こんな事が……」

東京の市街地に、超大型MSが侵攻している事実。市街地を守ろうとするジャスティス達は成す術もなく破壊されていく。市街地を巨大なMSが蹂躙する光景は、明らかに異様だった。

 その時、ダッゲインに攻撃を加えるジャスティスの中に、一機、ガンダムタイプの存在を確認したアレン。モニターを拡大すると、見覚えのある、紺色の機体が映った。

「まさか、レイか!」

アインスガンダムであった。それに気付いたアレンは、ティフォンを動かし、アインスの下へ向かう。

 

「何で!?ビームが効かないの!?」

アインスは迫るビット兵器を一基ずつ破壊しながら、本体への攻撃を行っていた。しかし、ビームは弾かれ続ける。これの理由が分からないレイは、ただ困惑するばかりだ。

スバキを助け出したいと願っている彼だが、まずは都市部に侵攻したこの機体を止めなければならないと、思っていた。

 ダッゲインと言う巨体は躊躇なく迫る。接近を許せば、被害が広がる一方だ。その上機体はバレットビットと言う兵器を展開し、無差別の攻撃を行っている。

 その数は多くの機体の協力により、半数程削る事が出来た。しかし、猛威はまだ止まっていない。

「レイか!!!」

その時、レイは聞き覚えのある声を聞いた。それと同時に、彼は“暖かな感触”を感じ取っていたのだ。

「ガンダム!?それにこの声、アレンさんですか?」

アインスの前に、もう一機のガンダムが降り立った。見覚えのない、ガンダム。それには一度一緒に戦った青年、アレン・レインドが乗っている。

 アレンとレイは再会した。だが、その状況は消して喜べる状況ではない。超大型MSが迫っている状況。このままでは都市部が蹂躙される。それは避けなければならない。

 彼等に益はない。しかし人が大勢死ぬ事は、避けなければならないのである。

「こんな所で再会するなんてな……」

一瞬だが笑みを浮かべるアレン。

「アレンさん、そのガンダムは?」

「詳しい事はあれをどうにかしてからだ!大体、どうしてお前はガンダムに乗ってるんだ?あれをどうにかしろって命令でも受けてるのか?」

「違うの、アレン君!」

と、エリィが割り込むように会話に入った。

「エリィさんがそこに!?どうして……?」

「助けたい人を助ける為に、一緒に移動していたの!ところがその最中にこんな事に……」

エリィの声を聞いたアレン。詳しい状況を聞きたいと思ってはいたが、それどころではない。

「アレンさん、あの機体、ビームが効かないんです!何発撃っても、全く!」

レイは咄嗟に、ダッゲインのビームバリアーについてアレンに説明した。それと同時に、ジャスティス達が撃っているビーム粒子を見る。

 ビームが、弾かれている。いずれも機体に傷が付く事なく、攻撃が無意味に終わっている。

「ビームが効かない!?バリアーフィールドジェネレーターを搭載しているのか!厄介な……」

バリアーフィールドジェネレーター。それはデウス動乱時代にビーム兵器に対抗する為に作り出された対ビームバリアーの事であり、主に大型のMSやMAに搭載されている。理論上発射可能である最大の出力のビーム兵器を完全に無効化するという、戦争の主流になりつつあるビーム兵器に対抗して出来た防御装置である。有効な兵器ではあるが、実用には莫大なコストが掛かる為、量産型機体等には採用されていない。

 ダッゲインはこれを搭載した試作兵器であり、その発展型である今回のMk-Ⅱはそこに、サイコミュ兵器を搭載した機体として、君臨している。

「ばりあーふぃーるどじぇねれーたー……?」

聞いたことのない単語が並べられ、レイは困惑している。

「要はアンチビームフィールドの事だよ。それより、レイ。行く所があるんじゃないのか?ここは俺がどうにかする!お前は、そこへ向かうんだ!」

「え……でも……!」

「良いから!!」

事情を詳しくは知らないアレンは、彼をスバキの元へ行くように促す。しかし、それでも困惑しているレイ。

「アレン君も言ってくれている。レイ君、今は甘えましょう。大丈夫、アレン君なら止めてくれる……」

エリィの一声。これが、レイの中で決定打となった。今はスバキを助け出す事を優先する。この場は、アレンが止めてくれる。それに賭けるしかない……と、彼は考えた。

「お願いします!」

そう言った後、アインスはこの場から離れる。バーニアを展開し、奥多摩基地まで向かったのである。

 

 迫り来るダッゲインに対し、アレンはティフォンを駆り、まるで誘導するかのように飛び回る。都市部への侵攻は、避けなければならない。甚大な被害が出る前に、止めなければならないのだ。

「やめろ!何故こんな事をする!?」

アレンはパイロットであるリノアスに声を掛ける。しかし、ダッゲインは止まらない。

「感情……人間らしさ……私は……!」

リノアスの声。暴走を続ける彼女はダッゲインを、そのまま動かし続ける。

 これに対し、ティフォンは頭部機関砲をダッゲインの堅牢な装甲に対して撃つ。牽制の為である。

「攻撃……敵……?敵は……排除……」

標的をティフォンに向けたダッゲイン。巨大は都市部への侵攻を止め、ティフォンがいる方向へ向かっていく。その方向こそ、山がある方向だったのだ。

 人里からこの巨体を離そうと、アレンは考えていたのである。

「あのサイコミュ兵器もこっちで引きつけられれば!!」

そう言った時、ティフォンの方向に一斉にバレットビットが展開される。実弾は容赦なくティフォンに放たれ、無数に弾が放たれる。

 それらを見極めたアレン。次の瞬間、バックパックのビーム砲を展開し、ビットに向けて、放つ。

高出力のそれは、ビット兵器を破壊するのに十分な火力だった。その勢いで、ティフォンはダッゲインのコクピット近くまで接近する。

「もうやめろ!何の為にこんな事をするんだよ!?」

パイロット、リノアスに呼び掛けるアレン。無意味な攻撃を行なっていると、判断したのだろう。

「敵……の声……?この感じ……暖かい……?何……これは……うううっ!」

コクピット内で、リノアスは頭を抱え始めた。アレンの存在に対し反応し、苦しみ始めたのだ。

 これに伴い、ダッゲインの動きは止まった。そして、周囲を飛び回っていたビット兵器も、同様に動きを止めたのである。

(このパイロットの人為的な感覚……強化モデルか?それにしては、妙だ。感情を欲している……?)

何故リノアスが突如暴走を止めたのかは不明だ。

 基地から突如動き出し、市街地への侵攻を始めたダッゲインMk-Ⅱ。幸いなのは甚大な被害が出なかった事ではあるのだが、死傷者が数名出たのは事実である。実際、モントリオール出身の少女、アムン・ディースがバレットビットの凶弾に撃たれた。

 アレンは引き続き、ダッゲインに対して声掛けを続ける。

「俺の声が聞こえるか!攻撃をする必要なんてない!ここから去れ!早く!」

懸命に伝えるアレン。すると――

「分からない……私は……私は……」

リノアスの声が聞こえた。彼女が感じ取った、アレンの感覚。それにただ、混乱するばかりだ。

 

ズドオオオオオオオオオオオオオオオ

 

脳波コントロールで操る巨体、ダッゲインMk-Ⅱ。リノアスは脳波でダッゲインの脚部のバーニアの出力を上げるコントロールを行った。やがて、巨体はゆっくりと機体を上昇させていく。それに伴い、発射されたはずのバレットビットは全てリアアーマーに収納されていく――

「撤退した……?」

ゆっくりと、去って行く巨体。アレンはただ、それを呆然と見守るしか出来なかった。

「……機影?」

その時、一つの機影の存在が感知された。モニターでそれを確認するアレン。そこに映っていたのは、ネルソンの駆るハルッグだった。敵でない事を確認したアレンは、早速ネルソンに対して連絡を取る。

「ネルソンさん、俺です。アレン・レインドです。」

「何!?そのガンダムタイプにはアレンが乗っているのか?それより先程のMSは?」

「今、撤退しました。」

「少し遅かったか……」

ネルソンは街の方の異変に気付き、ハルッグを発進させていた。だが時は既に遅かった。巨体は既に去った後であり、彼の行動は無意味に終わったのであった。

「ネルソンさん、この後少し、合流出来ますか?」

「ん?ああ……構わないが。」

アレンの駆るティフォンは、ネルソンの駆るハルッグに追従するように、機体をMAに変形させる。そして、ハルッグの後を追い掛けたのだった。

「変形する新たなガンダムタイプか。いつの間にそのようなものを手に入れていたんだ?」

この時、ネルソンは一人、疑問を抱いていた。

 




第二十四話、投了。超大型MSに乗る一人の少女、リノアスが感情を欲して暴走するという話。バレットビットは実弾式の無線兵器で、それによって町の人間に被害が及ぶという話でした。
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