機動戦士ガンダム Living Days   作:すからぁ

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巨大MS、ヴァイダーガンダムがロンドンに向けて起動していく話。
全高72メートルの殺戮兵器が目覚める。


ジェノサイド・マシン編
第四十六話 ジェノサイド・マシン


 

 シュネルギアは海上での氷河族との激闘を抜け、ローマにあるアステル家に戻っていた。そこで、彼女達はツヴァイガンダムの修復作業を行う。この間に、保護されていたリルムはアステル家の屋敷に招かれた。

 彼女自身が人生で一度も経験した事のない大豪邸は、感動するのに十分と言えた。

「これが、あの、ジャンヌ・アステルのお屋敷……」

「リルム・エリアス様、お部屋はこちらで御座います。」

アステル家の従者が、彼女を案内する。

 

 部屋に入ったリルム。そこは縁が金箔で彩られており。クイーンサイズのベッドが置かれているゲストルームだった。その模様は、まるで一流ホテルのスイートルームとでも言うべきか。

 リルムにとってこのような環境で過ごすのは初めてだ。だが、何故彼女はここに招かれたのか。

 理由は無論、あった。ジャンヌはリルムを保護しようと、考えていたのである。シュネルギアの艦内では危険だと判断し、今はアステル家の屋敷で保護しようと考えたのだ。そして、今に至るという訳だ。

「どうぞ、お寛ぎ下さい。何かあれば、こちらのボタンを鳴らして下さい。すぐに従者の者が駆け付けます。」

と言い、メイド服の従者は一度会釈をし、去って行った。

「凄い……これが、ジャンヌ・アステルの家……私、夢を見ているのかな?」

所謂一般家庭で育ってきたリルムにとっては、まるで自身がどこかの国の姫君になったかのような錯覚に陥る程の幸福といえる、今の時間。自分は、ジャンヌ・アステルの実家に居ると言う事自体がそもそも夢のようであるのに、更にそこで保護してもらっている。しかも、環境は最上級。これを、喜ばずして何で喜ぶべきなのか。

 まず、リルムはベッドに寝てみた。いつも彼女が寝ているベッドよりも遥かに柔らかく、それでいて心地が良い。目を瞑れば、恐らくすぐに夢を見られそうな程の快適な環境であると、言えた。

 

 この後リルムは食事も提供された上に、好きなドレスも着せて貰ったりした。その際、従者が仕立て、彼女をより、綺麗に際立たせる。今までした事のないメイクに、ヘアー。鏡に映る自分は、果たして本当に自分なのか。

 おとぎ話で出てくるプリンセスというのは、このような心境なのかも知れない。今まで縁もゆかりも無い環境です育ち、それなりの幸せで過ごしてきた人間が、この特上の世界を知るというのは別世界の他にない。その相手が、世界的歌手のジャンヌ・アステルというのだから、その驚きは果てしない。

 食事内容は無論、豪勢だ。客人に対して振舞う料理なのだろう。リルムはドレス姿のまま、振る舞われた食事を、慎重に食べる。テーブルマナーなど教わった事のないリルムは、周りの人間の食べ方を見様見真似で食べるのだ。この時の緊張が凄まじく、リルムはなかなか食事が喉を通らなかったのである。

 

 高級なドレスも羽織る事が出来た。メイクも出来た。その模様をEフォンに保存もした。別に、何も言われる事もなかった。

 今度は浴室だ。それもまた、豪勢である。観光大国、シンガポール国のマーライオンの像を模した像からは湯が延々と溢れ出ている。明らかに大衆浴場か、それ以上の広さを誇る浴室。サウナルーム付きは勿論、明らかに一人で使うには広過ぎると言えるサイズ。このような場所を、貸し切りで使えるというのは、何という贅沢なのだろうか。

「こんな生活を毎日出来るって事なの……?」

環境は最適だ。世界情勢が不安定な中で彼女はアステル家に保護してもらう事が出来る。しかも、このような豪邸に。これ以上の幸せは、果たしてあるのだろうか。

 

 

 しかし、残念ながら、その幸せな時間というのは長くは続かない。突然の立ち退きを命じられたから?違う。所謂貴族の家庭にありがちな、何らかのレッスンを受けなければならないから?それも、違う。では、何なのか。

 答えは一つ。彼女は一人で今の時間を過ごしているのだ。従者も仕事がある為に話し相手にもならない。彼女は広く、豪華な部屋に放り出され、確かにスイートルームのような夢の時間を過ごしてはいる。ただし、一人で。それが日数を重ねる度に寂しさを感じるようになるのは時間の問題と言えた。

 広い空間で、一人。食事も三食出る上、豪華な浴室。そしてドレス。メイクも自らを大きく変える。姫君のような、生活。それは一般庶民から見れば憧れだが、直接の話し相手がいないという寂しさはリルムの心を次第に落ち込ませていく。

(これが、本当に幸せなのかな。全然、感じない。やっぱりお家に帰りたい。お父さん、お母さんにもなんて言えば良いのかな。お姉ちゃんにも……結局何も言えないまま一ヶ月ぐらい経っちゃった。こんな事、誰にも言えないよ……友達にも……)

突然起きた非日常の出来事。リルムにとって困惑する事ばかりだった、シュネルギア内での出来事はただ、恐怖だった。

 今、恐怖からは解放されてはいるが、代わりに話し相手がいないという状況だ。しかし今の状況はリルムを別の意味で苦しめる。

 その上、彼女の居る部屋は、Eフォンの電波が入らない。何故ならば、アステル家の内部事情をSNS等で流出する訳には行かなかった為である。その為、妨害電波装置を部屋の隅に置いているのだ。これらも相まって、外部との連絡手段を途絶えている状況となってしまったのである。シュネルギアの場合は、通話のみは許可をされていた為、レイと会話をする事が出来たが、それ以上は許されていなかったのである。

 保護され、身の安全は保証される。だが、他者と話す事が出来ないというのはこれ程寂しいものなのか。リルムはそっと、ベッドの上に寝転がり、側臥位姿勢をとり、静かに、溜息を吐いた。

「レイ……会いたいよぉ……」

いつしか、ボーイフレンドとなっていたレイを求めるように、彼女はなっていたのだ。  

今、レイは何をしているのか。無事なのか。本当に、故郷に帰られるのか。リルムの不安が、次第に大きくなっていく。その中で、一人、静かに涙を流していた。何も知らない環境で育ってきたリルムにとって至極当然。自分がどうなるのかさえ、分からないのだ。

 

 

 

 アステル家に帰ってきていたジャンヌ達は、次に備えて動き出そうとしていた。ツヴァイガンダムの修理をし、サイコミュのコントロールの調整を行っている。サイコミュのコントロールをより格段に扱い易くする為にするのに必要な事だ。

 それ以外にも、新生連邦がどのように今後動いていくのかも確認しつつ、彼女達は過ごしている。今の拠点は、アステル家の屋敷だ。

 その中で、疲れを取る為にココットは浴室に入っていた。最初はこの浴室の存在に驚愕していた彼女だが、次第に慣れていた。

 一人でそこに入っていた筈のココット。だが、足音が聞こえてくるのを彼女は感じた。誰か、来る?

「ココットさん」

聞き覚えのある声。ジャンヌの声だ。

「え、あ……ジャンヌさん!?」

湯に浸かっているココットに、ジャンヌが声掛けをした。湯気が覆っているものの、相変わらずのプロポーション。淑やかな印象からは想像出来ない美しい肢体。乳房の形、腹部の形はある種の芸術すら感じられる。その上でのしなやかな脚線美。同姓とはいえ、彼女の姿は美しいと、ココットは素直に感じられた。

その上で、普段一人で浴室に入る事が多かったココットにとって、珍しい来客といえた。最も、客と言えるのはココットの方ではあるが。

「シュネルギアでの、業務は慣れてきましたか?」

ジャンヌは身体に湯を浴びた後に、足先から湯に浸り、ココットに近付いた。

「あ、えと……はい。少しだけ、ですけど。」

やはり、相手が著名人であるが故に緊張しているのだろうか。ココットの表情はどこか、固い。

「それはよかったです。貴方の言葉でクルー達は助かっております。貴方を起用して、正解でしたわ。」

と、更にジャンヌはココットに近付いた。湯気が室内を浮かんでいる中、彼女の綺麗な顔が近く、見える。

「ところで、アレンとの関係はどうでしょうか。」

突如、ジャンヌはココットにアレンについて、話し掛けてきた。

「え?どうって……仲は良いですよ?」

「それは、良かったですわ。いえ、寧ろそうであって貰わなければ困るというべきでしょうか。」

どこか、意味深な発言をするジャンヌ。

「ココットさん、改めて、貴方に確認したい事がありますの。」

そういった後、ジャンヌは急にココットに近づいた。ぐいと寄られ、思わずココットは後ろに移動する。

「アレンは、貴方の事をどう思っているのでしょうか。本当に、最愛の人と認識しているのでしょうか。」

「え……えぇ?」

それは何を意味している発言だというのか。まるで、挑発しているかのようなジャンヌの言動。ココットはすぐに、疑問を抱いた。

「ジャンヌさん、それって何を言ってるんですか?」

「フフ、“そのままの意味”と捉えて下さい、ココットさん。」

それを示す言葉が、この場で展開される意図の一つは、本当にアレンがココットの事を好きで居ているかという話だ。

 交際をしている恋人同士に訪れる事があるかも知れない、互いの信頼。それはふとした時によって崩れる事がある。最も多い例が、別の人間と交際する事による、浮気、不倫など。ココットは少しばかり、不安げな表情を浮かべる。

「し……しているに決まってますよ!」

「本当にそう、言い切れますか。」

ジャンヌの言葉がココットの言葉を遮る。その際、彼女の表情が急に真顔になる。美女ではあるが、どこか迫力のある、その表情にココットは、やや怯えている様子だ。

やがてジャンヌは自らの口唇に右示指を運び、まるでココットを挑発するかのように言った。

「私は、アレンとキスを交わした事がありますの。それも、二回。」

それはセントマリア号で彼女が意気消沈していた時の話。絶望の淵に陥っていたジャンヌを、アレンが励ます気持ちで接吻を交わした、あの時。

 この内容はスキャンダルとして報道され、更に彼女を追い遣る事になった。そして、この事はココットも知っている。だが事情は理解している。なのに、ジャンヌは何故この事を自ら掘り下げるのか。

「けど、あれってアレンがジャンヌさんを励ます為だって聞いてますけど……?」

事情を分かっているだけに、何故挑発し、まるで不安を煽るかのような言動を行うのだろうか。ココットには、理解が出来ていなかった。

「ええ、確かに彼の行動は私を勇気付けました。ですが私はキスをされました。口唇を覆われ、まるで求めるかのように唇を覆ったのです。貴方と言う、最愛の人がいながら。本当に、私を勇気付ける為にそのような行動をしますか?」

この発言の意図は不明である。だが、ココットはジャンヌの言葉に対し、苛立ちを感じつつあった。まるで、アレンとの関係を誇示するかのような発言。ココットは、何を話せば良いか、分からないでいた。

「私も、人間です。少なくとも共に行動し、優しくして下さる殿方のキスを受けて嫌に思うことは無いでしょう。ですが、貴方と言う交際相手が居ながらその行為をするという事は、果たして許されるのでしょうか。それは、誰が許しを請うのでしょう?」

ライオン像が、湯を出す音が静かに聞こえるこの空間で、ココットは汗なのか、冷や汗なのか分からない、汗を掻いている。

「更に言わせて頂きますと、私はアレンと一夜と共にした事があります。寂しさを感じる私の側に、居て下さいました。そして、抱擁をして下さりました。」

「えっ……」

それは、スキャンダルに報道されていない内容だ。ジャンヌが母であるターナ・アステルを亡くし、涙を流した時に、彼女はアレンを求めた。その際にアレンは抱擁をした。

 だがそれは本来、話す必要のない話。何故今になってこれを話すのか。

「もしかすれば私とアレンは身体を交わる事もあったかも知れません。今はシュネルギアの艦長として、行動をしていますが、人肌を求める事はあります。私はアレンと結ばれても、良いとさえ思いました。かつての婚約者であったアーク・レヴンを亡くした今、私は誰を求めれば良いか、分からなくなる時がありますの。それが、アレンである事もあります。」

普通に考え、交際している人間に対して自分も、その交際相手の男性に関心があると伝えるのは明らかな宣戦布告のようなものだ。喧嘩を売っていると捉えられても過言ではない。ココットは、この言動に困惑していた。そして、内心で妙な苛立ちさえ、感じていたのだ。

「アステル家に彼が居る中で、夜になればいつでも私はアレンを求めに行く事は出来ますわ。そうなった場合、彼はどのような行動に出るでしょうか。私を求めるかも知れませんし、そうしないのかも、知れません。こればかりは彼の行動に委ねられます。だから、私は彼が本当に貴方の事を、どう思っているのかと、聞いたのです。」

この、内から湧き出る衝動は何か。まるで心臓から、顔にかけて何かが込み上げてくるような異様な感覚。これは苛立ち?それとも悲しみ?何故、ジャンヌがこのように挑発するのか。この行為に、意味はあるのか。何故、彼女はこれ程にココットを揶揄う事を呟くのだろうか……

「ココットさん、貴方が今、私に感じているもの。それが、“嫉妬”ですわ。」

「嫉妬……?」

今、紛れもなくココットはジャンヌに“嫉妬”している。嫉妬。ジェラシー。本来交際している筈の人間が、友人と言う立場の人間に嫉妬を抱くのだろう。どこか、自分が劣っていると自覚した上で、もしかすれば最愛の、アレンを取られるかも知れないという不安があるからなのか。

「先の言葉を聞き、嫉妬する心を持つ。それは当然です。ですが、貴方はアレンと共に、それを乗り越えて貰わなければなりません。彼の心が安寧である為には、貴方自身にも心の安寧があり続けなければならないのですから。」

先程までの、ココットを嫉妬の炎に導くような発言から一転、ジャンヌは彼女を支援するような事を言い始めた。では、先程までの言葉は一体何だったというのか。

「ジャンヌさん、貴方って……!」

ココットは怒っていた。だが、ジャンヌはそれを見て、喜ぶ様子を見せた。

「ココットさん、もう、私に対してはフランクな対応をして頂きたいのです。アレンが私に対して対応するように、ココットさんも、楽な感覚で私と接して下さい。だって、友達でしょう?」

またしても、ジャンヌのペースに飲まれていく。自らを敵視するような事を言っておいて、急に“友達”と発言したジャンヌ。何故こうした発言を、次々と出来るのだろうか。

 それは、彼女の経験がそうさせるのかも知れない。婚約者をアレンに倒されたのを理解し、その上で混迷の闇を払うべく、アレンと共に動き出したジャンヌ。だがその中で生じた信頼していた側近の裏切り、自身やアレン、親しい人間への襲撃、そして理不尽なスキャンダル。多くの出来事を経験した彼女は、ココットを躊躇わせるような発言も、平気で出来るようになったのかも知れない。

「そんなの、いきなり言わないで!私……混乱してるんです……いきなりそんなに言われて、整理出来る訳ない!ジャンヌさんはどうしたいんですか!?アレンとの事を煽ったり、自分の事を友達とか言ったり!こんな事、言わないで欲しかった!悪質だよ!!」

ココットは首を横に振り、ジャンヌを否定するかのような振舞いを見せる。

 だが今、彼女達は裸だ。湯に浸り、胸元を隠しながら、ココットは目の前に居るジャンヌを否定するかの如く、逃避する。

「ダメ、ですわ。」

だがジャンヌは何故か優しい笑みを彼女に浮かべる。ココットはどうすれば良いか、分からないでいた。目の前に居る美女は、聖女と呼べる人間なのか、それとも悪魔なのか。

「混乱してはアレンとの関係にも影響します。貴方が芯を貫かなければ、アレン自身にもゆくゆくは影響を与えるのです。この言葉に翻弄されないで下さい。貴方は、貴方のままで良い……」

ジャンヌの手つきはココットの頬を伝う。その異様な優しさはココットを余計に困惑させるのだ。

「ココットさん、貴方が私への嫉妬を克服する方法を教えましょうか。」

「な……何……?」

ジャンヌが、意味ありげな視線を送っている。

「この唇を、貴方の唇で重ねる事ですわ。アレンから受けたキスを、今、貴方が私の唇に重ね、貴方がアレンと間接キスをするのです。そうすれば貴方はアレンとキスをした事に成ります。」

要は、ジャンヌと接吻を交わせという事である。ジャンヌは一体、何故このような発言をするのだろうか。ココットを試している。そうとしか言いようがない、発言だ。

「ココットさん、貴方はキスをどう捉えますか?愛情表現ですか?親愛の表現ですか。異性へのコミュニケーションですか。性愛の入り口ですか。捉え方は恐らく、様々です。ペットボトルに他者の口付けが残った跡を間接キスと呼ぶように、キスは様々な捉え方をします。貴方が成す事は、間接キス。そう思えば、私とのキスだって可能な筈ですわ。」

それが何に繋がる?アレンへの愛情を戻すきっかけになるのか。ジャンヌから放たれる言葉はいずれもがココットに刺さる。

 だが今は、もう躊躇っていられない。ジャンヌへの嫉妬。それは紛れもない。彼女のペースに飲まれるのは分かっていた。だが彼女の要望を受けない限り、この気持ちは取れないだろう。ならばそれを晴らそう。晴らして、アレンの事を改めて再確認しよう。

 ココットの決意は、固まった。

「じゃあ……」

「フフ、決断されましたか。」

ココットは静かに、目を瞑る。口唇を突き立てるように動かし、ジャンヌの口唇に近付ける――

 

チュッ

 

ソフトな接吻だった。どこか、柔らかな感触を彼女は感じた。女性同士の接吻行為というのは初めてだ。まして、相手は友人とも呼べる人間。そして、世界的歌手、ジャンヌ・アステル。更に言うならば、アレンとも接吻を交わした相手。

 ココットは、同性との接吻を交わした。それは彼女自身、生まれて初めての経験であった――

「素敵でした。女性同士のキスと言うのは優しいキスなのですね。」

「わ、わわわわわ私、キス……ジャンヌさんと、キス……!!!」

それを終えたのち、ココットの表情は次第に赤く染まっていく。直後、顔を覆い、湯に顔を浸したのだった。

 

ザバァッ

 

湯が弾ける音が聞こえる。同時に、そそくさと後ろに下がるココット。

 ジャンヌはそれを見て、笑みを浮かべていた。愛らしく、思っていたのだろうか。

 

パシャッ

 

次に、彼女の後方で再び湯が弾ける音が。誰かいる。だが、誰か。

「恥ずかしがらないで、出てきて下さいな。」

だがジャンヌは警戒する事なく、呼んだのだ。それに応じたのか、音を立てた人間がこの場に、すぐに姿を現したのである。

 そこに居たのは、リルム・エリアスだった。先に浴室に入っていた彼女は、まさかココットが後から来るとは思わず、身を潜めていたのである。その後でジャンヌが入ってきて、まさかの接吻行為を見てしまうという事を、してしまったのだ。

「あ……あわわわ……」

リルムはどうすれば良いか分からない。何せ、女性同士の接吻を見てしまったのだから。

「フフ、可愛らしいですわね。けど、これは決して特別な事ではありません。私はキスには性別など関係ないと、思っていますから。ね、リルムさん。」

「え、あ……えと……」

只でさえアステル家に居て寂しい思いをしていたリルムにとって、この光景は衝撃以外の何者でもない。

 だが、それに驚愕していたのはリルムだけでなかった。ココットも、まさかリルムのような少女に先程の行為を見られていたとは知らず、余計に顔を赤めるばかりなのだった。

「あの……ジャンヌさん……ごめん……私、のぼせてきたみたい……」

その時だ。ココットの呼吸が早くなるのを、ジャンヌは感じた。急いで彼女の傍に寄り、声を掛ける、ジャンヌ。

「ココットさん!?しっかりして下さい!」

「だ、大丈夫……多分。」

そうは言うが、反応が乏しい。明らかな異常に、リルムも反応していた。

 

 

「ココットさん……長時間のお風呂は苦手でしたのね……」

更衣室内で、ジャンヌはココットを椅子に座らせた。この時、リルムはせめて湯当りを落ち付かせようと、傍にあった和製の扇子を使い、ココットに煽いでいた。

「あの……大丈夫ですか?」

リルムが、心配そうに見つめる。

「気持ち悪~い……変な感じ……」

頭が、ぼんやりとしているココット。先程のジャンヌによる挑発的言動や接吻が重なり、混乱と共に湯当りが生じてしまっていたのだ。

「リルムさん、ありがとうございます。私、ちょっとココットさんを揶揄い過ぎたのかも知れませんわ……」

「うぅー……」

意味深な発言に始まり、ジャンヌの言葉を経て、彼女達はいつしか、距離が縮まっている様子だった。この時一緒に居たリルムも、少しばかりだが距離が縮まったような、感触を抱いていた。

「でも、なんだか……ジャンヌさんの言葉で、アレンの事をもっと、大切にしようって……思えたかな……」

頬が赤いココットではあるが、ジャンヌの表情を見て、笑みを浮かべていた。どうやら、ジャンヌの言葉の“意図”を察することが出来た様子だったのである。

「あら……それは、それは。アレンとココットさんの愛情の絆がより、深まる事を祈っています。先程までの言葉は、貴方を試していたと、思って貰えれば。ちょっと、揶揄いすぎましたかね?」

「うん……ちょっと……いや、とてもびっくりしたけれど……」

ココットは、静かに笑みを浮かべていた。両者のやりとりをみて、リルムも僅かに、笑みを浮かべている。

 人同士が仲良くする光景を見た時、その場に近い人間も、笑みを浮かべる。笑顔は、伝達する力を持つのかも、知れない。

「あと……この事は、三人の秘密にしましょう、ね?ココットさん、リルムさん。」

この時、ジャンヌがどこか、自然に笑顔を浮かべているように見えた。

 

 

 

同じ頃。ダッゲインMk-Ⅱが破壊されたフーク率いる部隊の兵士達は、ブライティスガンダムの存在を非難していた。兵士達は怒っている中、フークのみ、笑っていた。

「あの青い羽のガンダムさえ居なければダッゲインは国連の連中を薙ぎ払えた!あのような事など、許される筈がない!」

「落ち着きたまえ。これで良いのだよ。リノアスが生きていればそれで。」

彼のすぐ側にはリノアスが無言で立っていた。それに対して兵士は反発した。

「ですが!やはりあれは……。」

「反発するな。私がリノアスさえ生きていればそれでいいと言ったのは理由があるから……と言う事が何故分からない?」

フークの言葉を聞き、兵士は黙った。

 

「あの……」

その時、側に居たリノアスが、急に喋り始めた。珍しい光景だと思う、兵士達。皆が可憐な少女の言葉に、注目している。

「彼は……私を包み込んでくれました。私は彼に会いたい……あの、暖かい感覚は……とても素敵な感触です。私は、会いたいです。彼に。」

兵士達には、生きていて良かったと伝えたフーク。その時の余裕の笑みは、リノアスの言葉によって次第に消えていきつつ、あったのである。

「今、何と言った?リノアス。」

その言葉に、リノアスは口を開く。

「優しく、暖かい感触。あれが感情でしょうか。あれを、私は欲しいのです。」

感情を欲するリノアスはそれを、無表情で伝えた。アレンと交戦した時に彼から、感情を押し殺しているのを感じていた彼女は、改めて、自身に感情がない事に違和感を覚えていたのである。

 日本でのダッゲインの暴走の際に、彼女は感情の話をした。それに対し、調整が行われた筈だった。なのに、再び彼女は感情の話をしている。この事は、余裕の笑みを浮かべていた筈のフークを、怒らせていくのに十分な効果を発揮していると言えた。

「黙れ」

フークが冷たく言い放つが、彼女は止めない。

「暖かい感覚は、私を人間へと変えてくれます――」

「黙れ!!!」

更にフークはリノアスに叱責し、頬を叩いた。それに反応したリノアスは、黙ってしまう。

アレンの持つ強い力が、特殊強化モデルである彼女を人間らしく、感情を欲する心情へと変えていくのだろうか。

 だが、これをフーク・カズロブが許す筈がない。リノアスを、戦闘道具としか見做していないこの男。彼女の台詞を聞き、苛立つ様子を見せたフーク。

「再調整だ。急いで行え!今度こそ、敵と対立しても、感情などというワードを発言せんようにな!会敵したとしてもただ、敵を殲滅するマシン!それがリノアスだ!余計な不純物に反応するという事は、まだ調整が不完全という事である!」

周囲にいた兵士は敬礼を行い、急いでリノアスを連行した。その後ろ姿を見たフークは、握り拳を作る。

「強化モデルに感情は要らんのだ……!戦闘マシンであるリノアスに、どれ程の投資をしたと思っている!?」

“投資”という言葉が出た。つまり、フークはリノアスを強化するのに金を掛けているという事になる。特殊強化モデルとして、人間らしい感情を徹底的に抜き、サイコミュ兵器専用の戦闘マシンへと育て上げた筈と、この男は言う。

「大佐、恐縮ではありますが、一つ、質問を宜しいでしょうか。」

「何だ!?」

兵士の言葉を聞き、フークは強い言葉で、言い放った。

「率直な疑問ではあるのですが、サイコミュ兵器を人工知能に任せる事は出来ないのでしょうか?」

人が感情で左右されるのならば、人工知能を用いる。俗な考えではあるかも知れないが、合理的な考えではある。しかし、フークはこれに対して言った。

「過去の人間が人工知能の進化を止めた結果が今の世界情勢だ!ならば人間を強化せざるを得んのだよ!!マシンを操る上で脳波コントロールを用いられるのは人工知能では不可能!!だからこそ、人間であり、合理的に敵を殲滅出来る、力を持つ特殊強化モデルが必要となるのだ!!そのような事も分からんのかね、君は!!」

「ハ、失礼しました!!」

人間を徹底的に推している世界。人工知能は、人の補助として役立っている世界。その中でサイコミュ兵器を扱うには、空間認識能力に長ける必要がある。人工知能ではこれらの正確なコントロールは不可能とされる。それは、人工知能では脳波コントロールを操る事が難しいからだ。その上でサイコミュ兵器を扱うには、やはり人の力が頼りになる。

 それが、リノアス・クリストルである。特殊強化モデルという、人種。サイコミュ兵器を扱うには、感情を殺す事で戦闘マシンに仕立て上げる必要があったのである。

 だがアレンとの接触はリノアスを変えていく。それが、許せないでいるフーク。この後、リノアスは更なる強化手術を施される事になるのである――

 

 

やがて強化手術が終了した。フークは彼女に対し、声を掛ける。その声に反応する、リノアス。裸で横たわっている、彼女。表情は以前にも増して、無表情である。表情さえあれば、恐らく年相応の可憐な少女で居られたのだろう。彼女の年齢は十八歳。思春期を経て、成人女性と認められる年齢だ。

もし彼女が普通の少女として生活をしていれば、どうなっていただろうか。友人と共に恋話を語るのだろうか。それともボーイフレンドと共に人生を謳歌していたのだろうか。いずれにしても、彼女にそのような事は、叶うことは無いのである。ただ、強化された人間という、リノアスに、そのような幸福の時が訪れる事は、無い。

「お前は何者だ。」

フークが、リノアスに聞いた。

「リノアス・クリストル」

「お前の目的は?」

「敵性戦力の殲滅」

以前の彼女はおぼろげながらに言葉を喋ろうと、努力をしていた。だが更なる強化をされた彼女は、話す言葉が限られてしまっている。

感情を持たぬ存在へと変貌した、リノアス。更なる強化を施され、彼女は、ただ、フーク・カズロブの手駒として生きるしかないのだろうか。

 

 

 

やがて、オペレーション・デモリッション・クリエイションから二週間が経過した頃。総司令、レヴィー・ダイルは、ギリシャにあるアーステクノロジー本社を訪れていた。社長室に居た、スルース・ディアン。彼は室内にも関わらずハット帽子を被り、まるで彼を待ち受けていたかのように応対する。

「これはレヴィー・ダイル総司令。先日の作戦はお疲れ様でした。無事、宣戦布告もされたようで。これで我々アーステクノロジーはより、一層新生連邦軍に兵器の投資を行う事が出来ます。互いにwin-winになり得る世界情勢に、いよいよなってきましたね。」

世界が戦争状態になれば、利益を上げるのが軍事企業だ。新生連邦にMSを提供しているアーステクノロジーが戦争状態になり、喜ぶのは至極当然と言える。

「ですが先のオペレーションは、予想外の介入によって断念せざるを得なくなりました。しかも、その中に投入した大型兵器が二機、撃墜されているのです。」

「ああ、エールゴーニオと、デウス帝国のダッゲインですね。」

それらは、いずれもアレンの駆るブライティスガンダムによって撃墜されている。この情報は、既に総司令の耳に入っていた。

「本来ならばあの作戦で“例のMS”を投入する予定でした。それが叶えば、恐らく国連を壊滅状態にまで追い遣る事が出来た筈でした。」

“例のMS”とは何を示すのか。不吉なワードが、彼の口から出たのだ。

「ああ、あの“MS”の発展型にあたる、ガンダムタイプのデータが、何者かに盗まれたというやつですね。」

「それこそが、アステル家です。彼女達はその発展型の機体をあろう事か、新生連邦で有名になりつつある、“あの少年”に渡していました。」

それは、レイの事だ。彼が乗っていた機体、ツヴァイガンダム。それと、二人が話しているMSとはどういった関係があるのだろうか。

「アステル家……へぇ、それは驚きですね。」

スルースは、関心を持っている様子だった。

「発展型に関係するデータを彼女達に盗まれた為、あの機体のロールアウトを大幅に遅らせてしまう結果となりました。そのデータと既存のデータを照合さえすれば、すぐにでもロールアウトを出来たというのに……」

先の作戦の失敗を、悔やんでいる様子の総司令。

「結果、保存していたデータの復元に時間を要した為、先のオペレーションに投入する事が出来ませんでした。これは、我々としても歯痒い気持ちではあります。」

総司令は俯きながら、言った。戦局を翻すかもしれないとされる、“MS”の話をしている彼。その機体とは、一体何の事なのであろうか。

「それはお気の毒です。しかし、ご安心を。データの復元には成功していますよ。そして、これが完成したデータです。」

そう言って、スルースは机に備えられていたボタンを押した。すると机が下に下がり、代わりに、タブレット型のコンピュータが出現した。そこに映っているデータを見せる、スルース。

「これが、例のガンダムですね。」

映っているグラフィック。それは、ガンダムタイプ特有の顔貌に、両肩に肥大化したバインダーとも呼べる兵装を装備している。

だがガンダムタイプの顔貌にしては、カメラアイが鋭利に上向いており、どこか凶悪な面構えを印象付ける。頭部アンテナは二本。口腔部に該当する突起は従来のものより非常に尖っているように見える。見た印象としては、明らかに、“凶悪”だ。

「既に実際の機体も完成しております。本社の地下に格納しております。一度、ご覧になられますか?」

「……ええ。」

総司令は、静かに頷いた。

 

 

 

 その後、彼等は地下へのエレベーターに乗り、そのまま深く、潜っていく。地下100メートルと言う、深い場所にまで降りた彼等。

 やがて数分程度歩いたところで、スルースは突如、立ち止まった。

「ご覧下さい。」

 

バンッ

 

スルースの言葉と共に、ライトアップが成された。

「これが、完成したガンダムタイプ……」

総司令は思わず呆然と呟く。先程見たデータ通りの機体ではあったが、問題はその大きさだ。

 従来のMSが全高18メートル程度とするならば、そこに聳え立つMSは、それらをゆうに四倍はある全高を誇っていた。全高約72メートルの超大型MSが、彼等の前に聳え立っていたのである。しかも、それは紛れもない、ガンダムタイプであったのだ。

これを見た時、スルースの目は大きく見開かれていた。やがて、その両手指を屈曲させ、歯を剥き出しにし、その、甲高い声を更に上げた。

明らかに異常ともいえる社長の行動。この目の前にある超大型のガンダムタイプが、そうさせるというのだろうか。

「素晴らしいッ!!!これによって全てが滅びる!!!やはり時代が進むに連れて兵器も進化するものですねぇ!!!素晴らしいィィィィィ!」

巨大なガンダムタイプは、まるで見下すように二人を見ているようだ。これが、新生連邦の最新兵器だというのだろうか。

「さあ、総司令!これがロールアウトすれば、国連の壊滅は目の前ですよ!!!新生連邦がこの地球圏の統一に相応しい事が、証明されます!!力こそが、全て!このガンダムはその可能性の塊!!!邪魔な連中は一網打尽にしてしまいましょう!この、ヴァイダーガンダムでね!!!」

ヴァイダーガンダム。型式番号、DXN-00X。名前の“ヴァイダー”は両肩部に装備されている超大型のバインダーが由来だ。この名前はあえて付けられており、複雑な名前ではなく、あえて名をシンプルにした事により、この巨体とのギャップを感じさせるというスルースのこだわりがあるのである。機体色は全般的に黒紫色をしており、カメラアイは赤く、不気味な印象を持つ。両肩部及びバインダー部にはミサイルコンテナが搭載されている。そして、最大の特徴と言えるバインダー。これが、存在感を放っている。

 スルースがこれ程までに狂喜乱舞するという事は、今まで無かった。何が、彼をそうさせるというのだろうか。

「この機体は凄まじいです!では、どれぐらい素晴らしいか?具体例として、国連と新生連邦をミツバチとスズメバチに例えてみましょう。ミツバチが国連で、スズメバチが新生連邦です。スズメバチはわずか二十匹程で三万ものミツバチを壊滅させる程の力を持っていると言われています。国連がいくら足掻いた所で、新生連邦に対して歯が立ちませんよ。ましてやこの機体はその二重匹以上のスズメバチ分の破壊力を秘めています。一機で国連を焼き払う破壊力を秘めています。これが実装されれば、新生連邦の勝利は見えたも同然ですよ!」

彼の言う通り、ヴァイダーガンダムは新生連邦にとって切り札的存在になる。それは新生連邦にとって効率の良い話だ。が、総司令は何故かこの話に対して納得が行かない様子でいた。だが、スルース・ディアンの言葉にどこか恐ろしさを感じていた。この違和感は、どこから来るのだろうか。

「総司令!かつてのデウス帝国が戦略兵器を使用した事は貴方もご存知の筈ですね!?」

「ええ……コロニーカノンですね。」

それは、デウス帝国が決戦兵器として用いた兵器。円柱型のCコロニーを一つ、丸々砲台に仕立て上げた超弩級の戦略兵器。

 当時試験段階だった、ビーム粒子に代わるプラズマ粒子を用いた兵器。これが発射されれば瞬く間に艦隊を滅ぼす力を持っていた。

 戦時中、一度だけ発射されたコロニーカノンは地球連邦軍の艦隊に大打撃を与えた。この衝撃は、参戦していた兵士達に今でも伝わっている。

「コロニーカノンは紛れもなく、デウス帝国の技術の結晶でした!居住地を丸々と兵器に変えてしまうと言う狂気!しかしあれは戦争の短期決戦を望む上で非常に効率的な兵器と言えます!ならば、それに近しい兵器をもっと小型化出来ないか!?如何に、効率良く大量破壊兵器を作り出せないか!?研究は戦後になって進みました!そして、完成したのがこの、マシンと言う訳です!!」

戦略兵器というのは戦争において、早期決戦を望む上で導入される事の多い兵器と言える。それらが、実装されれば、如何に数多くの兵器を運用していても、それらを微塵にする事が出来る。

 無論、デメリットもある。大抵の戦略兵器は大型であり、弱点を突かれればその機能を失う。その為、それらを守る必要もある。

 ヴァイダーガンダムは、MSの形状をしているが、スルースは戦略兵器と言った。つまり、単体で敵の大部隊を一撃で沈める事が出来る力を持っていると言う事である。

「地球上に於いてはコロニーカノンのような兵器の運用は非常に難しいです。例えば基地を丸々溶鉱炉に変える技術をするにも、味方への犠牲が伴います。それでは戦争に於いて合理的とは言えません。ですがこの兵器は、空母さえあれば輸送も可能であり、尚且つ戦場に応じて敵勢力の殲滅を図る事が出来ます!これが、如何に素晴らしいか!まさに、アーステクノロジーの技術の結晶!!!」

「戦後に月面基地、シン・ナンナ内部に存在しているエレシュキガルも同様ではありますが……まさか、地上でこのような兵器が作成されるとは……。」

総司令が、一言呟いた。“エレシュキガル”という単語は、何を示すのだろうか。

「なぁに、エレシュキガルは新生連邦には必要のないものとなりますよ。この、ヴァイダーガンダムがあれば、何も問題はありません!」

と、語るスルース。

「ディアン社長。一つ、質問を宜しいでしょうか。」

その時、総司令は質問を投げかけた。

「この巨大な機体を、何故、敢えてガンダムタイプに仕立てたのでしょうか。率直な、疑問です。」

戦略兵器、ヴァイダーガンダム。百五十年以上前のファースト・ガンダムをモチーフにした、ガンダムタイプの伝統はこのような兵器として現代に産み出された。狂気とも言えるこの兵器に、何故、ガンダムという伝説の機体の名が付けられたのか。

「それには明確な答えがあります。ガンダムは強さの象徴だからですよ。だから現在、新生連邦では多くのガンダムが生産されているのです。貴方を含めた、エースパイロット用に存在する、強さの象徴。それが、ガンダム!」

強さの象徴。それが、ガンダムだと語るスルース。

「百五十年以上前に存在した、伝説の機体、MSの元祖、ファースト・ガンダム!あれが無ければ今の時代もガンダムは存在し得ませんでした。それがあるから、この時代にもガンダムの伝説は引き継いでいます!!そして、ガンダムも進化したものです!今やここまで巨大に、そして最強のガンダムが、目の前に存在しているのですからね!!全てを焼き払うガンダム!これに勝る兵器など、存在しませんよ!!!」

それ程に自信作と言える、ヴァイダーガンダム。元々は総司令の依頼で作り出された機体ではあるが、やはりこの巨大なガンダムタイプを目の当たりにすると、改めてガンダムとは何か……と、考えさせられるのであった。

「そして、次の課題はこのジェノサイド・マシンのパイロットですね!総司令、候補は上がっているのですか?」

機体を動かす為には、当然ながらパイロットの存在が必要不可欠だ。この機体を動かすことが出来る技量を持つパイロット。それは、誰か。

「ソフィアを、投入する事は出来ますか。」

その時、総司令が口を開いた。彼の側近、ソフィア・ブレンクスをこの兵器に乗せようと、言うのだ。

「総司令、お言葉ですがそれはお止めになられた方が良いでしょう。」

スルースは示指を左右に揺らし、言った。

「そちらのカズロブ大佐の部下に、特殊強化モデルが居た筈です。名は、リノアス・クリストル。彼女はダッゲインのパイロットを務めていた筈です。その経験は後継機としてヴァイダーガンダムを操るに相応しいと、私は考えておりますが。」

特殊強化モデルはスルースが作り出した人種だ。無論、どの機体にそれらが搭乗しているかも把握している。それ故に、彼はリノアスを推しているのである。

「手配しましょう。次の作戦で投入します。」

「次の作戦とは?」

総司令は、ヴァイダーの頭部を見て、口を開いた。

「先の大戦でも大きな激戦区となった、ロンドン。そこには平和国連盟の中心人物の一人である、エイゲル・ヴァーナー首相が在籍しています。国連を直接叩く前に、まずは彼を叩いておこうと考えています。そして、その指揮官をカズロブ大佐に一任します。ヴァイダーガンダムは、その際に使用します。」

「それは、楽しみですねぇ。この機体が動き出す瞬間は、出来れば生で見たいぐらいですよ。」

ヴァイダーガンダム。アーステクノロジーが開発した、ジェノサイド・マシン。この機体が、次なる惨劇を生み出す事になるのであろうか。

 

 

 

 時間が経ち、十月になった。オペレーション・デモリッション・クリエイションから一ヶ月の時が経った。

 セイントバードの修理は完了した。アッサラームを去ったセインドバード。この間、彼等はジャンヌ達と連絡を取る事なく、次の目的地を探そうとしている最中だった。

 大西洋を抜けるルートは危険だ。新生連邦軍の基地が多く、再び襲われる可能性が高い。

 ならばと、彼らは太平洋側に向かう事にした。上空7500メートル上を聖鳥が動いている。

「一ヶ月はお疲れ様だったな、艦長。」

と、エリィの部屋に入るネルソン。

「それは良いんですけど、レイ君の一件がちょっと心配というか……あの時から連絡も取ってないですし。ほら、ジャンヌさんはセイントバードのスポンサーじゃないですか。私達の行動に影響しないかなってちょっと心配で。」

スポンサーの存在は、援助されている側としては絶対な存在となる。資金援助が打ち切られる事が有ればセインドバードは路頭に迷う。彼らが航空を行えているのは今や、アステル家の力の影響も大きい。

「ジャンヌ嬢の器に委ねられる……か。しかし、あのガンダムを預かっているという事は我々を切り捨てる事は無いだろう。あれは確か、レイにしか操れない筈だ。サイコミュ兵器さえ気を付ければ、扱う事は出来る。今、ツヴァイガンダムはどのような改造をしているのかは不明だが。」

いつの時代も、スポンサーの存在は絶対だ。援助をして貰っている以上、歯向かう事は許されない。援助が打ち切られればそれで終わりだ。自らの力で動かなければならなくなる。

 MS乗りの世界は厳しい。幾度かの戦闘で、彼等の拘りと言えるMS、トルクスが補充されたのも、アステル家がスポンサーになった後援によるである。そうでなければ、鹵獲機体を利用していただろう。

 今のトルクスは外見こそジャスティスの軽度改修型であるが、中身は新生連邦製の機体のパーツを流用している。この人員増加も、各地のジャンク屋の絆や、アステル家によるものだ。先の戦いで三機失い、今は七機のみとなっているが。

 彼等は信頼の名の下に動いている。故に、航空を続けられる。だからこそ、アステル家に見捨てられる事は避けたいのだ。

「艦長、入電です!」

その時、インクから連絡が伝わった。何事かと思い、反応するエリィ。

「分かったわ、すぐに行きます!」

慌てる様子で、エリィはブリッジへ向かった。突然のアステル家からの連絡。これは何を意味するのか。

 

 

 ブリッジにて。入電を確認したエリィはすぐに対応した。それを確認した時、そこには、ジャンヌ・アステルのホログラムの姿が、映し出されていた。

『お久し振りです皆さん。この間は大変失礼致しました。本題ですが、貴方方に依頼したい事があります。ロンドンへ来てもらう事が出来ますか。そこでお話をさせて頂こうと思っています。』

ここでジャンヌの姿が出現した事も驚きではあるが、それ以上に驚いたのは、ロンドンへ集合しろと言う内容の指示だった。

ジャンヌが口にした言葉、ロンドン。何故、急にその場所を指定したのか。

「ロンドン?どうしてですか――」

と、エリィが言ったのだが、ジャンヌはそれを無視するかの如く話を続けた。

『ロンドンに近づく事がありましたらご連絡下さい。では。』

そのまま、ジャンヌの姿が消えた。彼女の質問に答えないまま。

「今の、録画っスね。」

スラッグが舵を握りながり言った。

「え、リアルタイムと思ってた……」

唖然とする、エリィ。

「旧世紀からある留守電みたいな感じっスよ。すぐに連絡取れるか分からないし。にしても何故ロンドン……?」

「何か、あるのかも知れないわね。目的地、ロンドン!このままユーラシアルートを抜けます!」

突然のジャンヌからの依頼を聞き、目的地は決まった。

 ロンドン。イギリス、イングランドの首都。デウス動乱時、激戦区となった場所である。戦後になり、都市としての機能自体は果たしているのだが、戦後の痛々しい傷跡が残る状況のある、場所。セインドバードは、この地へ向かうのだった。

 

 

 

セイントバードにイギリス首都、ロンドンへ来るように依頼をする前に、シュネルギアは既に、ロンドンに着陸していた。

旧世紀からイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの四つの国が集まって出来た国、イギリス。グレートブリテン島に存在する国だ。その構図は旧世紀から変わっておらず、首都もイングランドに位置するロンドンである。

 戦後直後は凄惨な光景を作り出していたこの地。その為、戦後に平和国連盟が復興に尽力を注ぎ、現代の形が作られていた。それ故に、この地は平和国連盟にとっても重要な地点とされている。

 この地の首相、エイゲル・ヴァーナー。彼は戦後になってからのイングランドの首相であり、一部代表を務めている人物だ。

 今回、シュネルギアは彼の要請でここ、ロンドンの地に降り立った。先の新生連邦によるオペレーションを受け、この地が狙われる危険性を考慮した為、要請に応じたという事である。

首相官邸にて。エイゲルはジャンヌを自身の部屋に呼んだ。アステル家が先の戦いで介入している事を聞いているエイゲルは、ジャンヌに対して丁重にもてなした。この時、側近のメイドが彼等に紅茶を運び、テーブルに置いてその部屋から去る。

「よく来てくれた。最高部隊のアース将軍から話は聞いているよ。先の戦闘で国連軍に加勢してくれたそうだね。お陰で国連軍は壊滅的な被害は免れた。」

エイゲルは紅茶を飲み、言った。

「新生連邦は宣戦布告をしました。これは平和という状況に対する脅威となり得ます。

その為にも、動いていかければならないと、思っております。」

ジャンヌは自らの訴えを、エイゲルに対して言った。

「頼もしい……と言うべきかな。戦後は君のお父上にも世話になった。凄惨な状況だったロンドンの復興に尽力をしてくれたのも、ジンク・アステルの力がなければ成せなかったからね。」

ジンクは平和国連盟の議員や、代表と繋がりが強い人間であり、ここ、ロンドンのエイゲルとも親交があったのだ。

「君達の戦艦、シュネルギアは先の戦いで国連の助けとなった。しかし、シュネルギアは国連に入るつもりは無いらしいな。」

アステル家はあくまでも国連への補助をする立場であり、厳密には国連と所属が異なる。言わば、同盟のようなものだ。

「えぇ……私達は私達で、新生連邦軍と戦っていきたいと思います。私達は常に平和を願っています。ですが、どうして人は……このように争いばかりを繰り返すのか……分かりません。先のデウス動乱でどれ程の命が消えたか彼等は分からないのでしょうか。どうしてまた犠牲者を生み出そうとするのでしょう……ここ、ロンドンも復興に時間を要したというのに。」

戦争行為は人が築いたものを瞬く間に滅ぼす。いくら、戦争は良くないと言っても、結局は戦争を起こすのは人だ。先の戦争から何も学ばない世界情勢を見て、ジャンヌは嘆いている様子だった。これに対し、エイゲルは言った。

「新生連邦軍が強硬姿勢を貫く以上は、我々も守らなければならない。しかし、我々には平和主義があり、こちらから攻撃を仕掛けるという事は出来ない。だからこそ、君達の存在は頼りになる。犠牲者が出る前に先手を打つ事が出来れば、どれ程嬉しい事か。」

 チャール・ポレクが唱えた平和主義の存在が、国連の行動を遅らせているのは間違いないと言えた。

 確かに、戦争行為を先に行う事は出来ない。だが今の時代、下手をすれば先制攻撃を仕掛けられる事により、反撃の隙すらなく、滅ぼされてしまう可能性があるのだ。

「新生連邦軍は恐らく次にこの地を狙う可能性は考えられるだろう。国連はドーバー海峡にて艦隊を展開してはいるが、どのように動くのかは不明だ。」

平和国連盟にとって重要な地となるここ、ロンドン。今の新生連邦ならば、攻撃を仕掛けてくる可能性が高いと判断したエイゲルは、ジャンヌ達に護衛の依頼をしたいと、言うのだ。

「ご協力はさせて頂きますわ、ヴァーナー首相。よろしくお願いします。」

敵がどう動くは分からない状況で、両者は握手を交わす。戦前の傷跡が癒えないこの都市を、守る為に。

「ところでジャンヌ・アステル。」

その時、エイゲルが口を開いた。

「突然だが、君にとっては、何が平和だと思う?」

「えっ……?」

突然の質問に戸惑うジャンヌ。平和と。ただ、言われても迷うだけだ。

「平和とは、戦争の反対の意味をする。それが俗に言われる平和だ。つまり戦争が無ければ平和だと言う事。しかし平和になったとは言え、新生連邦が宣戦布告をする前から世界各地で様々な事件が起こっているのを知っているだろう?テロや紛争、殺人。その他にもまだまだ沢山ある。それは戦争が無い……つまり平和だから起こる事なのだ。これは平和だと言えるか?」

エイゲルが語る平和に、ジャンヌは困惑している。

「それは本当の平和とは言えないと、思います。結果的に人が死ぬような世界では、平和とは言えません。」

「平和……では無い……か。」

ジャンヌはコクリと頷いた。

「私は、そうは思わんよ。」

と、エイゲルは紅茶を一口含み、言った。

「人の心は様々だ。恐らく、君の中の“平和”のイメージとは、人が差別をせず、皆、仲良く、平等で過ごせる世界……それが平和かもしれない。しかし実際は戦争が起きていない事が平和なのだ。それが真実。どれだけ辛い目に会おうとも、戦争が無ければ平和なのだ。ややこしい話では無いだろう?単純な話だ。」

エイゲルの掲げる平和。それは、単純極まっている。大規模な動乱等がなければ、戦争。ただ、それだけだ。

「事実、平和世紀と呼ばれる時代になり、デウス動乱が終結してからは平和と呼べる時期はあったよ。小規模の紛争、テロ行為は所詮大規模な戦争に比べれば極論、平和だ。私は首相という立場であるから、小さな紛争などまでは把握出来ない。個人同士の些細な喧嘩もあれば、それが発展すれば殺し合いに。社会に不満があれば徒党を組み、反社会性力としてテロが横行する。しかし、それは社会という組織が成り立つが故に生じる、小競り合いに過ぎない。」

平和と戦争。この線引きは恐らく、個人によって異なるのかも知れない。エイゲルは、引き続き語る。

「しかし、今は違う。新生連邦という、地球上の大きな組織が宣戦布告をした。これは社会の崩壊の一歩だよ。新生連邦が平和といえた社会を、戦争に変えた。大規模な戦争はそれこそ、人間という存在を滅ぼしかねない。」

平和と呼べる世界が一転すれば、世が荒んでいく。恐らく、今後は戦争行為だけでなく、身近な犯罪行為も増える可能性が、十分にあると、考えられるのだ。

「私は、分かりません。“本当”の平和というものは何なのか。武器をなくしていく事が平和というのならば、私の存在が消える事が平和に繋がることになります。私はアステル家当主、ジンクの娘。先の戦闘でも新生連邦の横行を止められたのは、力があったからです。」

その、力に縋っているのもエイゲルだ。現在の平和主義がある以上、国連は攻撃を加えられない。いかなる状況であろうとも。だからこそ、アステル家に委ねられるのだ。

 だがそれは、国連と言う組織のみにしか使えない平和主義であり、それ以外の組織が国連に参加すれば、意味のないものと化す。それ自体に、本当に平和主義の価値があるのであろうか。

「力を持つ事は平和を作る上で必要だとは思ってはいる。しかし、その、平和と言う言葉を盾にして己が都合の良い世界を作り出そうとする人間がいるのも、また、事実だ。」

エイゲルは、俯いた様子で言った。

「それは、どういう……?」

「そのままの意味だよ。平和国連盟の議員達皆が恒久和平の為に貢献している訳ではないという事だ。」

チャールが最高議長を務めている平和国連盟ではあるが、それぞれが絡み合う人間模様や野心は複雑だ。実際、国連を見限って新生連邦に寝返ろうとしている人間も居た。ザビール・エルケス。ポルトガルの平和国連盟一部代表だが、彼の権限を使い、国連軍を無理にでも所属を変えようとした、男だ。

「先の戦闘でも、国連軍の一部が新生連邦に寝返り、国連に反旗を翻した者がいたと言います。戦争が始まった事により、不安定な状況が続いているというのでしょうか……」

ジャンヌは紅茶を啜り、少しばかり不安げな様子で言った。

「組織が大きくなればなる程、野心を抱える者も出てくるだろう。実際、平和国連盟の一部代表や議員の中にも腐敗している人間はいる。例えば政治家が国民等から集めた税金を利用し、私利私欲の為に動く者も居る訳だ。そういった存在は市民から叩かれるべきではあるが、そうは行かないようにしている人間も居る。腐敗した組織に人は集まらないのだが、それらを考えない人間も居るのも事実だ。」

そう言われ、ジャンヌの表情は曇っていく。

「そう考えると、平和を作るというのは難しいですわね。それは、権力を利用しているだけに過ぎません……」

「だが、それらも把握した上で進まなくてはならない事もある。ジャンヌ嬢、今後の展開には期待している。宜しく、頼むよ。」

そう言った後にエイゲルは左手を差し出し、ジャンヌはこれに応じる。深い、握手を交わした両者。

 今、ジャンヌに出来る事は、これ以上の犠牲者を出さぬよう、尽力する事だ。その為にシュネルギアが頼られている。そして、ジャンヌはこれに対し、協力の要請を、セインドバードに対しても行う事となったという訳である。

 

 

 

ロンドン市内は平和国連盟の力もあり、戦前によって受けた傷の復興が進んでいた。一部ではまだ、戦争の傷跡も残っている場所はある。瓦礫と化した風景は大通りには見られなくなったものの、住民の少ないエリアは荒廃している部分も多い。

 セイントバードはジャンヌの要請の通り、ロンドンに辿り着いた。エリィはそこで、ジャンヌに再会する。そこで行われるやりとり。それは、ツヴァイガンダムを返還するというものだった。エリィはそれを受け入れるのだが問題はレイの方だ。

 レイはジャンヌ達に対して疑問を抱いている。この一ヶ月間、アッサラームに保護されていた状況のセイントバード内で生活を送っていたのだが、その間も彼はジャンヌ達を決して良く思うことは無かった。それだけでない。彼はエリィとの関係も悪くしてしまっていたのだ。

 セイントバードはアステル家のスポンサーであるが故に、それに従うしかない。だが、彼はそのアステル家の所属のアレンに倒されかけた。こうした事も重なり、レイは多くの人間に対する不信を抱くようになってしまった。

 ロンドンに辿り着いた時も、レイの表情が明るくなることは無かった。ここに来た理由が、アステル家の依頼と言う事を聞いていた為、納得出来ない様子だったのだ。

 だが、彼はあくまでも保護されている立場でもある。彼自身の、この妙な立ち位置が、余計にレイを苦しめているのだ。

「レイ君。その……アレン君から連絡があったの。聞いてくれる?」

セイントバード内にて、エリィが、やや話辛そうに言った。

「直接会って、話したいことがあるって言ってた。うん。行ってきたら、どうかな。わざわざ言ってきてくれてるし……」

と、言った時、レイは静かに、呟いた。

「行った方が良いんですよね。あの人には僕にも言いたい事があります。ありがとうございます。」

と言う、レイの言葉はどこか、冷たい。エリィは一ヶ月前に頬を叩いた事を、気にしている様子だった。

「あ、あと……一応ガースト君と同行して貰うように言っとくね。一人だとレイ君、誘拐とかされちゃったら嫌だし。」

彼女なりに、レイに対して笑いをとるつもりだったのだが、レイはこれを聞いても反応しない。この時のレイの反応に、エリィは距離を感じていた。どこか、腫物を扱うように接してしまっていたのである。

 この時、レイはエリィに対して何も言わず、去って行った。

 

 

 

 ロンドン市内で、レイはガースト共に歩いている。目的はアレンに会う為だ。彼等が向かっているのはロンドン市内のトラファルガー広場である。旧世紀から存在する観光名所ではあるが、それは現代になっても存在している。ここには、多くの市民が集っていた。かつて激戦区だったこの地の中で、被害が比較的少ない場所でもあった。

 ガーストとレイはアレンに会うという事で、どこか複雑な表情を浮かべ、歩いている。無理もない。オペレーション・デモリッション・クリエイションで攻撃を加えられたのだから。

 やがて、彼等はアレンに会う。この時、アレンはココットと一緒に行動していた。

 二人で行動するのは、ジャンヌの配慮があった。互いの愛情が必要だというジャンヌの言葉を聞き、アレンはあえて、ココットと行動していたのである。

「レイ」

両者が会った時、先に口を開いたのはアレンの方だった。

「アレン、この子が、前に言ってた子?なんか、女の子、みたいだね……可愛い……」

「あ、ああ。」

アレンの言葉が静かに流れる。対するレイは、彼に対して睨むような視線を送っていた。

「レイ、ジャンヌがお前に会いたがっている。彼女は今、忙しくて対応が出来ない。だから、代わりにそれを伝えにきた。」

アレンの言葉に、対し、レイは言った。

「アレンさん、僕はずっと聞きたかった事があります。どうしてあの時攻撃をしたんですか。あんな事、する必要なんて無い筈なのに。僕には全く分からない、分からないですよ。」

不穏な空気が流れている。アレンとココット、そしてガーストとレイ。彼等の前にある噴水が、無情に流ればかりだ。

「俺自身のコントロールが出来ていなかった。それに関しては謝る。だが、今はそれで歪み合っている場合じゃ無い。ジャンヌから聞いている筈だ。ここ、ロンドンが新生連邦に狙われるかも知れない。だから、セイントバードにも助太刀をして欲しいって。」

ジャンヌがセイントバードを呼んだ理由。それは、戦力が欲しいという純粋な思いがあった。そのついでにツヴァイをレイに渡し、その後に対策をしていこうと考えていたのである。

 スポンサーという立場である以上、セインドバードは動くだろう。背く事は出来ない。だが、個人の意志となれば話は変わってくる。

「アレンさん。あんな、無差別攻撃をして大量虐殺みたいな事をしておいて、そんな事を頼むなんて、虫が良すぎませんか。」

レイの言葉が、アレンに刺さる。先の戦闘でのアレンの攻撃の事を、レイは根に持っていたのだ。それに次ぐように、ガーストは言った。

「確かに、俺達の立場は弱い。アステル家がスポンサーなんだから、俺らがお前達の言う事を聞くのは当然だろうな。だけどだからって何やっても許されるって考えはおかしいだろ。アレン、お前いつから立場が偉くなった?俺達は友達じゃなかったのかよ。おかしくねぇか?」

明らかに険悪な状況。この中で、ココットが言った。

「あ、あの……ガースト君、久し振りだよね……?その、プレーンさんも元気?」

「元気だぜ。というかココットが生きてたっていうのも驚きだけどな。」

ココットとガースト。彼等も、知人関係だ。アレンを通して知っている仲である。

 たが、この場においてその再会は素直に喜べないのである。ココットの言葉は、かえって気まずいものとなってしまったのだ。

「アレン、お前は良い立場かもな。ジャンヌの下で安全を保証されてる状態でさ、愛しの彼女とラブラブ。いいね、羨ましい限りだよ。ホント。」

明らかな皮肉だ。それを聞き、ココットは何も言えないでいた。

「ガースト。俺だって必死だった。だから、こうして謝ってる。けど、新生連邦が迫るかも知れない状況でセイントバードに来て欲しいと依頼したのはジャンヌの願いなんだよ。」

アレンの謝罪。だが、それはガーストに響かない。事情は分からない訳では無いのだが、先の戦闘中に攻撃をされた事を考えると、身勝手過ぎるような印象を受ける、依頼と言えた。

「俺は協力はするけど、お前、少し自分勝手過ぎないかって意味では俺は納得は行ってない。お前の事情に関しては概ね分かってはいるよ。納得は出来てないけどな。けど、友達で、尚且つ立場的に優位な上で何しても許されるって考えはそもそも間違ってるからな。アレン。」

やはり、彼はアレンに攻撃された事が気になっている様子だった。

「ガーストさんは友達だったから、そう言えるんですよね。協力できるって。」

この中で、レイが口を開いた。暗く、それでいてどこか、苛立ちを感じている様子の、声。

「アステル家がセイントバードのスポンサーって立場だから、万が一断ったりしたらお金を出さないって事なんですよね。アレンさん。そりゃ、そうですよね。スポンサーって、絶対的な立場なんですから。僕達がそれを断るなんて出来る訳がないんですよね。ガーストさんも、大人だからそう言うんでしょう?お金を出して貰ってるから、それに従うって。」

彼の言葉に、ガーストは言った。

「そういうのは別にして、俺はアレンに忠告しているだけだけど……?」

ガースト自身、アレンに納得していない様子だったのだが、それ以上にレイの暗い声がどこが、不気味に感じられていたのである。

「違いますよ。僕はアステル家の勝手な言い分が納得行ってないんです。ジャンヌさんはずるいですよ。僕に直接話をしないで、アレンさんに行かせているんですから。自分から話をしたら良いのに。」

「レイ、ジャンヌは今それどころじゃないんだよ。ロンドンのヴァーナー首相と話をしている。その中で俺がお前に伝える事を任されたんだよ。」

アレンがそう、言った時――

「そういうの、僕は納得出来ませんよ!」

レイが声を荒げた。様々な思いが、一度に噴き出た瞬間だった。

「スポンサーとして、お金さえ出せば何をしても許されるって考えが納得出来ません!そんなの、おかしいです!僕は必死に戦ってきた……セイントバードのみんなを守る為に!なのにアレンさんに無差別攻撃をされて、その上でリルムとも会えなくて!その上で、アレンさんは幸せでいるって、そんなの、おかしいです!」

聞く人間によっては子供の戯言として捉えかねない言葉だ。しかし、アレンに彼の言葉を遮る事は、出来ない。

「それに、仮にここが攻撃されるとするなら、アレンさんが戦えば良いじゃないですか!あの強いガンダムだったら敵が何者であろうと勝てますよ!どうせあれを使えば無差別に攻撃するんでしょう!?セイントバードを、これ以上巻き込まないで下さい!」

レイは、精一杯の思いを伝えた。しかし、これに対してガーストが口を開いた。

「レイ!お前、それは違うだろう!」

ガーストはレイに注意をした。彼等はスポンサーとして、協力を要請されている。なのに、それに応じなければどのような処遇に遭うのかは分かりきっている話だ。

「ガーストさんもおかしいと思わないんですか!?都合が良すぎるの、おかしいでしょう!スポンサーとか、そんなの関係ないです!」

「お前な!確かにアレンには納得していないけど、ジャンヌは別問題だろう!資金援助が打ち切られる事が、セイントバードにとって如何に危険な事を分かってないからそんな事が言えるんだよ!」

「だったら、僕はツヴァイに乗りません!」

ガーストの言葉が、途絶えた。

「レイ、それはダメだ……何の為にツヴァイをシュネルギアに預けたのかが、分からなくなる。」

アレンが言った。レイの為の機体であるのに、彼が拒否すると言う事。それは、最早完全にスポンサーとしての依頼を放棄しているのと何ら変わらない。

「ジャンヌがセイントバードをここに呼んだのはお前にあの機体を返す為だ。その上での協力の要請だ。だから、ジャンヌはお前に会いたがっているんだよ。」

「そんなの、都合良く僕を利用しているだけじゃないですか!わざわざここに来たのが馬鹿みたいです。僕は、セイントバードを守る為に戦っていたんだ……そんな、都合良くツヴァイに乗るなんて思わないで下さい!」

止まらない、レイの怒り。アレンは、何も言えないでいる。

「それに、リルムはどうなってるんですか!?シュネルギアに居るんじゃないんですか!?」

これに対し、アレンは言った。

「その子はアステル家の屋敷で保護されてるよ。シュネルギアに居るよりは安全だとジャンヌが判断したから。今、ここに居るよりは良いだろう。」

保護されている。それは、不幸中の幸いと言えた。だがレイ自身は、本心で納得している訳ではない。

 彼女とはいつ会えるかも分からない状況であり、その上でセイントバードはスポンサーの名の下で稼働させられている。要は、利用されていると言う解釈になる。少年であるレイにとっては、理解の出来ない事態である。

「……無事なら、良かったですが。分かりました、僕は、もう戻ります。例え戦闘になったとしても、アレンさんが戦ったら良いですよ。仮にセイントバードチームが戦っても、僕は戦いません。アステル家の言いなりになるような戦いはしたくないんです。それと……セイントバードチームを傷付けるような戦いだけは、しないで下さいね。」

と言って、レイは後ろを振り向いてしまった。

 アレンが起こした事がこのような確執を生む事になってしまった。セイントバードは資金援助して貰っている時点で、スポンサーに逆らう事は許されない。だが、レイはそれを、納得出来ていない。そこから生じた溝は、埋まる事を知らない。

 彼はセイントバードの為に戦うのなら、戦っただろう。しかし、アステル家が関与していると分かった時点で、戦う事を放棄したのである。

「レイ、一つ言っておくよ。ツヴァイはどの道お前に必要になる筈だ。今は、その気じゃなくても……な。」

去りゆくレイに対し、アレンはそう言った。レイは何も言わないまま、去っていく。ガーストはアレンの方をちらと見ながら、レイに付いて行ったのであった。

「あの子、意固地になってる気がする。」

ココットはアレンの側に寄り、彼の顔を見上げる。

「溝が埋まるのには時間が掛かるかも。ただ、無闇に謝れば良いってものでもない。俺達はあいつと違って、子供じゃないし……」

謝罪は必要な時は、確かにある。だがそれをしたからと言って許されない事もある。今のレイがそれに該当するのだ。

 しかし、いつまでも確執を産んでもいられないのが事実だ。新生連邦が迫る状況で、猫の手も借りたい状況でシュネルギアはセイントバードを要請したのだから。戦力の要になるのは、恐らくアレンとレイだろう。その、レイが戦闘を放棄する事は、平和国連盟にとって、危険な事に繋がる可能性があったのだ。

 

 

 

「レイは、やはり納得をしませんでしたか。」

その夜、シュネルギア内にて。アレンはジャンヌにレイの事を報告した。確執を産んでいる彼等。仮にセイントバードにツヴァイを戻しても、彼が乗る事を承諾しなければ、ツヴァイの意味を成さない。

「もし敵が来るのなら、俺がやるしかない。」

と言った時、ジャンヌが言った。

「貴方は先の件についてレイに謝罪をされましたか?」

「ああ、それはした。けど、あいつは許してくれてない。」

それを聞き、ジャンヌはそっと呟いた。

「こちらにも非があるのは承知ではありますが、それで納得が行かないのならば、こればかりは時間が経過して解決する事を願うしかありません。ですが、今はそれにばかり囚われている場合ではありませんね。彼も一組織の人間である以上は、その役目を自覚して貰わないと……とは、思うのですが。」

世には組織の在り方等に納得のいかない事は多いだろう。だが組織から何らかの資金援助をして貰っている状況での反抗というのは本来、愚かな行為だ。それを寛大に認めるというのは、ジャンヌの器量によるものか。

「無理もないのかも知れないな、あいつは子供だ。それも、戦場を僅かな期間しか知らない。」

「それでも、戦う力を持つという事は、責任も伴うと思っていますわ。彼は少年ですが、物事の善悪は判別出来ます。その事は、理解して貰わなければなりません。」

ティーンエイジャーに対する対応というのは、難しいものだ。大人と子供の狭間を生きる人間。故に、繊細である。

 しかし、彼等は教育機関ではない。敵が迫っているかも知れない状況では、時間もない可能性があるのだ。

「今日は、お疲れ様でした。ゆっくりと休んで下さい。」

「ジャンヌも、無理しないで。」

そう言った後、アレンはブリッジを去る。

 シュネルギアの艦長を務め、その上で国連との連携をしているジャンヌ。麗しい筈の彼女の表情にも、やや、疲れが出ているように見えた。

 

 

 

三日後。フランス、カレーにて。その地に待機している、新生連邦のフーク・カズロブ率いる部隊がそこにあった。

カレー。ドーパー海峡の玄関口として旧世紀から存在している港町。フランスからのイギリスを形成するグレートブリテン島との貿易のやり取りを続けて来た場所だ。

フランスは新生連邦政府の勢力圏であり、今回、フークはこの地に軍隊を展開していた。彼の思惑としては、このカレーの地から、ロンドンへ直接攻撃を仕掛ける作戦を行なうつもりらしい。

しかし国連がイギリス全体に強力な防衛ラインを張っている。容易に侵入は出来ないようになっていた。しかし今のフークの前ではそれは関係の無い話だった。

「国連の艦艇推定数、百と見られます。」

「無駄な努力だな。我々を経過しての事なのだろうが、それが如何に無駄な努力であるかを見せつける時だ。」

国連側も大艦隊を展開してはいるが、それでも余裕の笑みを浮かべるフーク。

そして、彼の側には以前にも増して冷たい目になっていたリノアスの姿があった。感情を完全に奪われた表情。この青い海を見ても全く何も感じていないような印象を受ける。彼女は、フーク・カズロブの忠実な人形となってしまっていたのである。

「アーステクノロジーも化物を提供してくれたものだ。総司令も、あの機体にリノアスを乗せるように推薦して下さっている。ありがたく利用させてもらおう。殲滅の時は、近い。」

この作戦に投入される機体。それは、ヴァイダーガンダムであった。スルース・ディアンが最高傑作と狂喜乱舞していたそのガンダムの初陣が、この地で行われようとしていたのである。

 彼等の目的は首都、ロンドンだ。そこからこの機体を使い、どのような攻撃を行おうとするのだろうか。

「大佐、報告です!以前にオペレーション・デモリッション・クリエイション最中に出現したジャンヌ・アステルが指揮すると思われる戦艦が、ロンドンへ入港している姿を目撃されたそうです!」

一人の兵士が、フークに言った。

「ん……?と言う事はあの青いウイングのガンダムも居るという事になるな。」

先の戦闘でダッゲインを撃墜したブライティス。その圧倒的な強さを見ていたフーク。それが、今回対峙する事になるのは、予想外だった。

「つまり敵の中にアステル家が居るという事か。まあ良いだろう。それもまとめて消し去ってくれよう。」

ヴァイダーガンダムを駆使し、敵勢力の殲滅を図ろうとするフーク。その冷徹な目は、対岸に存在するグレートブリテン島をそっと見ていた。

 

「カズロブ大佐。」

「お元気ですかぁ?」

その時、フークに声を掛ける女性の声が。その方向を見ると、そこにはフォリア・チェーニとリンセ・チェーニの姿があった。

「コラ、リンセ。大佐を前にその態度は良くないわ。」

「はぁい。」

と、改めて敬礼をする両者。

「そう言えば君達もここに配属だったな。日本での任務以来だな。宜しく頼む。」

そう言って、フークも静かに、敬礼をした。

「ところで、あのガンダム達はお気に召したかな?」

フークは意味深な発言をした。“ガンダム達”と言う単語。ここに来て、そのワードは何を示すのか。

「我々の機体の改修……ですね。光栄に思っておりますわ。」

「あれから大変でしたからねぇ。ホント。」

姉妹は、喜んでいる様子を見せた。

「機体の復元には時間を要したが、その上でアーステクノロジーも協力してくれたお陰で、君達のガンダムは新しく生まれ変わった。その初陣が今回の戦闘で行われるのは光栄と思いたまえ。」

改修されたガンダム。姉妹の乗って来たヴェーチェルと、エクルヴィスの事なのか。それらが示す言葉は、何だというのか。」

「有難き、幸せ。」

再び、フォリアは言った。

「さて、今から行われる第一波を君達もよく見ておくと良い。最強のガンダムの力。敵を瞬く間に滅ぼす力。君達は運が良いよ。本当にな……」

フークの言葉を聞いた姉妹は、彼と共に対岸のグレートブリテン島を眺めていた。その先にあるロンドン。今回の標的はそこだ。

 だがロンドンまでの距離は直線状でおよそ180キロメートルは離れている。その距離を、何で攻撃しようというのだろうか。

 

 

 

特殊強化モデル、リノアス。FCLシステムに搭載されている、デスペナルティ、アトミック、バイラヴァーのパイロットと比較し、激情的ではないのだが、ただ命令に従う存在だ。そして今、リノアスは殺戮兵器、ヴァイダーガンダムに乗り込もうとしていた。

「全てを破壊しろ。何もかも……全てを!」

そう言って、フークは椅子に座った。そして、波線が描かれているモニターを見始めた。これはリノアスの脳波を現しており、彼はこれを観測し始めていたのである。

カレーにて滞在しているフークの率いる部隊。もうすぐ彼等の攻撃が始まる。ヴァイダーガンダムの攻撃によって。

 

キシィィィン

 

ヴァイダーガンダムは起動した。赤く輝くカメラアイ。異常とも言える巨体。歩くたびに大地が裂けそうになるほどの重量……全てが巨大であるジェノサイド・マシンは対岸に向け、まずは両膝部を屈曲させる。バックパックにある、二基のテールアンカーを展開し、地面に設置。この際にも重厚な音が鳴り響く。

 やがて巨大な肩部のバインダー二基を前方に稼動する。バインダーの先端に装備されている巨大な砲門……そこにエネルギーが吸収され始めた。

 ルイーナシステム。ヴァイダーガンダムに搭載されている、別名、対艦隊迎撃システム。その砲門は、対MSや対艦に留まらず、“対艦隊”に向けられる。これが成すもの。それは、何か。

やがてバインダーに、エネルギーが蓄積されていく――

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 

 

ビームではない、プラズマ粒子による凄まじい破壊力を持つその光は瞬く間に海を越えた。ドーバー海峡に滞在する国連の艦隊は異変に気付いた。

「凄まじい熱源を感知……う、うわああああああ!!!」

光は艦隊を包み込み、その、全てを葬る。消し炭と化した艦隊。その中に居た人々の命も、瞬く間に消えゆく。

 

 

 

消えた。沿岸部に滞在していた、何もかもが。少なくとも沿岸部には百隻余りの艦が滞在していた。それが全て消滅したのだ。そして、そこに居た人々も。たった一発の攻撃。それが、余りにも強過ぎたのだ。

 ジェノサイド・マシン、ヴァイダーガンダム。殺戮兵器が国連に牙を向いた瞬間であった。

 




第四十六話、投了。

ジャンヌの依頼でロンドンに向かう事になったセイントバードチームだが、そこで待ち受けていたのは――といった話。
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