機動戦士ガンダム Living Days   作:すからぁ

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メイド・ヘヴン主役回。デウス帝国残党軍の暗躍の話。
新型MS、デスゲイズ登場。


第四十九話 帝国、デウスの影

 

 平和国連盟の議長であったチャール・ポレクが謎の死を遂げ、副議長であったギルス・パリシムが新最高議長となる、約一月前の出来事。その日は、ヴァイダーガンダムがロンドンを襲撃する三日前でもある。ウィリアと海辺の喫茶店で話していた際に、突然謎の男に呼び止められたメイド。

それに応じるかのように、メイドは男と共に行動する。男は車を持っており、メイドはその中に入った。男は運転席に、メイドは助手席に乗る。

やがて車を走らせる、男。やがて、二人が着いた場所は閑静な町だった。男は、その町の中にある、喫茶店内にメイドを誘導する。

席に座った両者。だが、メイドはこの時不機嫌そうな表情で男を見ていた。再び喫茶店に連れられた為、デジャヴを感じていたのである。それがメイドには不快だったのだ。

「で……話ってなんだよ。て言うかお前な、俺はお前のような〝知らないおじさん〟に付いて行ってんだぞ。ガキん時に習わなかったのかよ。知らない人について行っては行けませんって。それはつまり、大きくなっても誘拐をしてはいけませんって事だぞ。て言うかまず名前を名乗れや。」

と、自分を連れて行った初対面の相手に対し、容赦のない罵詈雑言を浴びせるメイド。

「貴方がそれ程に文句を言いたくなる気持ちはよく分かります。ですから先に名を名乗っておきましょう。」

男は、先に注文したコーヒーを一口啜り、テーブルに置いた。

「私はアルメス・ラグナ。デウス帝国の者です。」

メイドもその時にコーヒーを飲もうとしていたのだが、〝デウス〟と言う言葉を聞いて指を滑らせ、コーヒーの入ったカップを割ってしまった。

「デウス……だと?」

「ええ。」

アルメスという名の、男はデウス帝国の人間と言った。それがメイドにとっては不可解で仕方が無かった。

デウス帝国は先の大戦で地球連邦に敗北した一大国家だ。その歴史は百五十年以上前に及ぶ。長い歴史の中で対立していた地球連邦とデウス帝国の決着は、デウス動乱を経て着いた筈だったのだ。今、メイドの前に居るのはその、残党の人間という事になる。

「お、ほぉ。何を抜かしてやがんだよ。デウスは滅びたんだ筈だろォ?だから俺も地球でぶらりと過ごしてンだわな。」

これに対し、アルメスは、咳払いをして、言った。

「滅びた……と言う言い方をすると語弊が生まれますね。確かに、デウス帝国はその勢力を弱め、戦後に武力の解体をする事になりました。結果、本国は連邦の管轄下に置かれる事となり、デウス思想の人間は宇宙の端に追い遣られているのが現状です。しかし、我々は先の戦争から、生き延びました。そして、生き残ったデウスの志を持つ者達は、地球から見て月の裏側に存在する、とある小惑星に逃げ込みました。」

「小惑星……ん?デウス軍に小惑星なんかあったか?」

メイドは首を傾げ、言った。

「ええ。元々デウス軍のMSの装甲素材であるCメタルの原形となる金属成分を採掘する為に存在していた小惑星がありました。名は、アポカリプス。」

聞き慣れない単語だった。小惑星アポカリプス。それは、どのような存在と言うのか。月の裏側に、そのような小惑星がある事も聞いた事がない。

「アポカリプス……?なんやその中二病っぽい名前」

欠伸をしつつ、彼は近くにあった布巾でこぼしたコーヒーを拭き取りながら聞いた。アルメスは馬鹿にされた気分で少々辛かったが、気を取り直して解説を始める。

「小惑星アポカリプス。そこにあった空洞を利用し、そこを基地にして、戦後に完成させました。アポカリプスには、今でもデウスに対して忠誠を尽くす生き残りの兵士が存在します。デウス兵は戦後になって二つに分かれました。一つは国を無くし、行く宛も無くなった兵士達はデウスの誇りを捨て、地球連邦の言いなりになると言わんばかりに、地球に移住するようになった者が居ます。しかし、全ての人間がそうではありません。私のようにデウスの信念を貫き通す者もいます。今、お伝えしました、アポカリプスには私のような人間が多く存在しています。」

男は、メイドに対して熱い視線を送っている。彼のデウス帝国に対する忠誠心は、その様子から、“本物”であるとされた。

アルメスの言うように、デウス帝国はその、戦力が失われている状態である。だからこそ、彼を始めとするデウスの残党軍は、元々はMSの装甲を作る為のCメタルの原形となる金属成分を採掘する為に利用していた小惑星であるアポカリプスを改造し、現在は彼等の居城としていたのである。

 本国のあるCコロニー14群は、現在は新生連邦の自治下にある。事実上、デウス帝国としての機能を成していない状態だ。新生連邦に対して多額の金銭を取られている状況であり、貧困層が多く、とてもではないが、生活に適している環境ではないとされている。今はセイントバードチームである、ガースト・ピュアスもそれが原因で地球に移住する事になっていた。

彼等のようなデウス帝国の再興を願う有志が、小惑星、アポカリプスに移り住んでいるという訳である。

「雀の巣作り見てぇなことしてんのな。それよりも、じゃあなんでてめえは地球に居るんだよ。俺を見つけるためにわざわざ来たってのか?」

「私はそうです。数ヶ月前に地球へ来ました。ですが、アポカリプスからの使者として他にも沢山のデウス兵が地球にいます。」

次に、メイドが疑問を伝えた。

「つーか、なんで俺が生きているって分かったんだ?」

「情報ですよ。丁度我々デウスに情報を売ってくれる地球の人間が存在したものですから。運が良かったですよ。ただ、それ以外の情報は一切不明ですが。ただ、貴方の名前が地球で確認できたことが明らかになったので、貴方を必死に探していました。」

メイドは、何処か不満げな表情を浮かべていた。

「いや、つーかなんでわざわざ俺を呼んだんだよ。」

メイドは耳を小指で掻く動作を行うのとは対照的に、アルメスは真剣な表情をして言った。

「単刀直入に言います。是非とも、貴方の協力が必要なのです。貴方にアポカリプスへ来て頂きたいのです。」

その言葉に対し、メイドは店の中にも関わらず怒鳴った。

「はぁ!?ざっけんな!なんで俺がわざわざ宇宙に行かなきゃならねえんだよ!冗談じゃねえぞこのヤロォォォー!!!」

メイドの声は店内に響き、見せにいた全員が彼等の方向を見た。アルメスは動揺し、メイドを落ち着かせるように言う。

「落ち着いて下さい。周りの人に迷惑ですよ。」

そうは言うが、メイドからすれば迷惑な話だ。突然呼ばれ、内容を聞けば宇宙に行けという内容。確かに彼は元デウス帝国の所属であり、活動をしていた人間ではあったが、今になってそう言われても、困惑するのは当然と言える。

「事情を、説明致しましょう。」

アルメスは、再び一旦咳払いをした後に、彼に来てほしい理由を説明し始めた。

「現在、月には連邦軍の膨大な基地、“シン・ナンナ”が存在しています。アポカリプスはその裏側に存在します。ただ……月基地には〝X-9〟と言う名の、破壊兵器が存在するのです。幸い、アポカリプスの位置は悟られていません。新生連邦もただの小惑星と思っていることでしょう。ですがもし悟られた場合は確実に破壊されてしまうのは間違いありません。我々はこの破壊兵器の存在を破壊するために幾度も攻撃を仕掛けました。プライドを捨て、テロリストと偽り。けれども連邦軍は我々デウスの技術を用いたMSを大量に投入して来たのです。その為、現在となっては旧式のMSである、ディエルやゴルモンテでは太刀打ちできませんでした。」

人員は愚か、資金繰りが厳しい状況のデウス残党軍では、現在の新生連邦軍に太刀打ちする事は難しい。その為、月に存在する兵器であるX-9の破壊は、困難を極めたのであった。

「そこで貴方にお願いがあるのです。そのX-9を破壊して頂きたいのです。」

アルメスの懸命な台詞とは対照的に、メイドは欠伸をしながら言った。

「ふぁぁ……まあ、長々と説明ご苦労さん。そもそも聞きたいんだけどさ、その、“シックスナイン”を破壊しないと行けない理由って何よ。」

アルメスは、やや、顔をしかめて言った。

「X-9(エックスナイン)です。その兵器は、我がデウス帝国の再興をする上で大きな障壁となっております。これを、突破しない限り、我がデウス軍は動き出す事が難しい状況なのです。」

それでも、メイドは乗り気でない様子だった。

 突然デウス帝国の人間が現れたと思えば、直接交渉で、月に存在する兵器の破壊を行えという依頼を受けた。地球上での生活が長かったメイドからすれば、違和感でしかない、出来事と言えたのだ。

「不服そうですね。無論、“無償”とは言いません。参加をしていただいた暁には報酬金……そして成功した暁にも報酬金を授けましょう。」

“金”の話が出た。彼は地球上で氷河族として活動をしているが、当然報酬は発生している。だが、問題はその額だ。その額が、氷河族のものより多いのならば、無論、参加する意義がある。

「どれぐらい出せるか、教えろ。」

高圧的なメイド。それを、受け入れる、アルメス。

「この額で、どうでしょうか。」

彼はEフォンを見せた。そこに映る金額は、メイドが氷河族で活動している時以上の額を見せていたのである。

 この瞬間、メイドの表情は大きく変わった。やはり金銭が絡むと、人はそのコンディションを高める効果があるというのだろうか。

「おー、ええやん。気に入ったわ。それなら、まあやってやってもいいぜぇ。まあ、任せとけや!俺の技量があればディエルでも何でも操ってやるよ!」

先程の不満げな表情は、何処へ行ったのか。高額な額を貰える事が分かり、喜びを感じているのだろう。

その額を見て喜ぶメイドに対し、アルメスは言った。その様子は周りの客に見られていたが、彼等はそのような事等、気にしていない様子だった。

「いえ……貴方には是非とも乗っていただきたいMSがあります。貴方のようなシンギュラルタイプにしか扱えないMSです。」

「俺に乗って欲しいMS?いや、つーか、なんで俺がシンギュラルタイプだって分かるんだ?」

何気ない疑問。シンギュラルタイプと断定するデータと言うのは、存在しない筈だ。その定義すら不明確なのに、アルメスはメイドが、“シンギュラルタイプ”と単語を放ったのである。

「戦時中の貴方の戦闘データです。命中率、射撃、撃破数……全てにおいて、基準値を上回っています。このデータ上では、シンギュラルタイプと認められています。」

と、アルメスは別の端末をメイドに見せる。

「そんなモン残ってんのかよ。やらしいなぁデータっつーのはよォ。」

「だからこそ、貴方が生きていた事は光栄なのですよ。」

言動こそ問題はあるが、メイド・ヘヴンの実力は、デウス帝国でも折り紙付きであった事が、この時点で伺える。帝国の使者が遥々、地球まで来た事が何よりの証と言えたのだ。

「まあ、いいや。この前さ、グラントロールを壊された所だしな。どんな機体に乗れるのかは興味あるね。」

グラントロール。それはメイドが現在ここにいる前に乗っていた機体である。オペレーション・デモリッション・クリエイションの混乱の中、シュネルギアを襲撃する為に出撃したが、アレンの乗るブライティスガンダムによって返り討ちに遭っているのだ。

「それは貴方の乗っていた機体ですか?」

「ああ。ほとんど俺の監修が入ったカスタム機体でさぁ、デザインはお好みよ。目からビームもあったし。」

会話の中で、独自の言葉を発するメイドだが、アルメスは表情を一つ変えず、言った。

「ならば、丁度良かったと、言うべきでしょうか。デウス帝国が戦後になり、来るべき地球連邦への侵攻の為に作成していた機体があります。それが、先日完成したばかりです。しかし、それを操る事が出来るパイロットの存在が居ないという問題が生じておりました。その中で貴方に会うことが出来た。これは、縁と呼ぶべきでしょうか。」

「そういう言い方やめーや気色悪いわ。」

と、茶化すようにメイドは言った。しかし、アルメスが提示した機体は、自分のような人間しか扱えない機体と言う事で、メイドは興味を示している。まるで子供のようにアルメスの眼前に近づき、笑みを浮かべる。

「で、写真は?」

「お見せできません。」

「ファッ!?」

機体のデザインが無いという事で、驚愕する、メイド。

「これには理由があります。高額報酬が与えられるからには、それ相応の条件がある訳です。我々としてもようやく貴方と言うパイロットを見つけることが出来ました。ここで、拒否される事は今後の行動にも響きます。」

メイドは、これに対して溜息を吐いた。

「それにね、いくら貴方が強くても、旧式のディエルでX-9を破壊に至るには無理があります。いくら強力な機体が存在していても、結局はパイロットが不在であれば意味を成しません。その為の、MSなのです。」

この時、メイドは腕を組み、少しばかり考える。高額報酬は美味しい。その上で彼は戦場を暴れることが出来る。これは、彼にとって一石二鳥だ。それに与えられる新型機体。条件としては、十分だった。

「よっしゃ、そうと決まったら出発おしんこー!」

メイドはその場で立ち上がり、言った。アルメスは、彼の心境の変化に驚愕していた。

「随分と、早い決断ですね。交渉は成立という事で、宜しいですね。」

「おうよ。アポカリ……なんちゃら中二病ネームが糞連邦に悟られて破壊されていたらどうするんだよ!こういう時間も無駄なんだよ!オラ、行くぞ。」

すぐにその場を立ち上がり、店を出ようとする、メイド。

 だがそこへ店員が現れた。無論、そのまま店を出る事は、無銭飲食になる。

「お客様。お代をまだ頂いていないのですが。」

と、怒りの表情を浮かべる店員。

「お、そうだな。払わなきゃ」

 

スッ

 

すると、メイドはポケットからやや皺が入っている札束を取り出し、それを店員に渡した。その束は、明らかにコーヒー二杯の代金よりも上回っている。しかも、メイド達は何も言わないで去って行ったのだ。これに対し、店員の表情は一転。困惑しつつも、内心で喜んでいた。

「あ、あの……こんなに……えっ……?」

それを見て、周囲の客はどっと、笑っていた。

 

 

 

その出来事から、更に三日が経過した。この間、まずは宇宙へ行くシャトル便に乗らなくてはいけない。民間宇宙航行会社のシャトル便を手配し、それに乗り込む。

そこから大気圏を離脱し、まず、彼等はハブコロニーに向かった。他のコロニーや月へ向かう為の中継地点となるそこに移動した後に、更に別のシャトル便に乗る必要がある。このシャトルこそ、デウス帝国が関係しているシャトルだ。ハブコロニーは中立コロニーであり、デウスや連邦とも関係がある場所となっている。故に、表向きはデウス帝国内の民間宇宙航行会社を装っていても、怪しまれる事はほとんどないと言えたのだ。

そのシャトルに乗っている最中。彼等は間近で月の姿を見た。やがて、大規模な月面基地、シン・ナンナと思われる基地の前を通過する。その際、宇宙戦艦が数十隻存在しているのを確認した。

「あれです。メイド・ヘヴン様。」

「へぇ。随分と立派な、デカブツじゃねえの」

近くをシャトルが通った時。巨大な機械がそこにあった。先端には砲門らしい穴がある。メイドはそれを見て感じた。〝X-9は恐らくあれだ……〟と。

X-9は、戦後になって新生連邦に作成された巨大兵器である。膨大なプラズマ粒子貯蔵タンクを貯蔵しているその巨大兵器。このような兵器が必要となる理由としては、新生連邦への脅威の排除が目的だ。デウス動乱以後、軍備増強を掲げて来た新生連邦。その影響は、地球から38万キロメートル離れた、ここ、月にも影響を与えていたのであった。

その先端は360°回転するようになっており、自由にそれを撃つ事が出来るようになっている。その目的は、デウス帝国のような敵性勢力の監視、抑止力である。

宇宙にまで広がった生活圏ではあるが、結局、人は地球と言う重力から縛られる運命なのだろう。皮肉にも、宇宙で生活を送る人々を縛り付ける戒めの象徴が、このX-9と言えるのであった。

無論、アポカリプスの存在が新生連邦に目を付けられた場合、確実にX-9はアポカリプスを破壊するだろう。今のデウス残党軍にとっては、この存在が脅威以外の何者でもなかったのであった。

 

 

 小惑星、アポカリプスが近付いて来た。全長推定30キロメートル。突起物が幾重に重なっているような、歪な形状をした要塞である。元々そこはCメタルの発掘場として、かつてのデウス帝国が資源衛星にしていた小惑星だったのだが、アルメスの言うように、戦後になってデウス残党軍の拠点として存在するようになっている。周辺にはデウス帝国のMSである、ゴルモンテタイプの機体が数機、見られた。それらが誘導灯を出し、シャトルをアポカリプス内へ誘導していく。

やがて、シャトルは入港した。メイド達はその場から降り、そのまま、案内をされる。

「ご苦労様です、アルメス指令!」

敬礼をする、兵士。この様子から、アルメスは相当慕われている人間である事が、分かる。

「へぇ、偉いさんって訳かよ。」

「これでもデウス動乱時は前線で指揮を執っておりましたからね。優秀な部下も、居てましたよ。皆、死んでいった。今になって彼等がどうなっているのかも、私には分かりませんよ。」

アルメスは地位の高い人間だった。だが、それでもメイドに対して丁寧に振舞っている。その理由は、やはり、彼にデウスの機体に乗ってほしいという希望が、強いのだろう。

やがて、それに伴うように、シャトルの周辺にいた兵士達はメイドに対し、歓迎するかのように挨拶をした。

「メイド・ヘヴン様も、お待ちしておりました。戦時中の活躍は拝見しております。」

そう言われ、メイドはやや、上機嫌になった。

「ほぉぉ。お迎えかよ。あれやな、貴族とか金持ちの連中の気持ちってやつだな?」

と、冗談を言うメイド。

「んで、例の新型はどこかなーっと――」

メイドがそう言った時、アルメスが彼の言葉を止めた。

「メイド様。先にお伝えしておきたい事があります。」

言葉を聞いたメイドは、舌打ちを打った。

「おぅ、早くしろよ。」

アルメスは、静かに口を開く。

「我々、デウスは今でこそ、月の裏側に隠れている存在ですが、軍備が完璧に整えばいつでも、今の連邦政府に対して宣戦布告を考えています。しかし先の大戦でほとんど壊滅してしまった我が軍です。その再興にはどうしても、時間を要するのです。今、貴方が見て頂いている景色や人々は、その数少ない同胞達。地球連邦の愚民共がこうした世界を作り出してしまった。貴方が我々デウス帝国に協力するという事は、少なくともその志を理解してもらわなければならないと、いう事です。」

デウス帝国と地球連邦の戦争の歴史は、長い。その長い争いがあったが故に、長く地球から離れていた人々から見れば、先の戦争でその勢力を失い、地球連邦と言う戒めの存在が勢力を拡大している現状が、許せない状態と、言えた。

「地球連邦に良い様に利用されて、志を失った同胞も数知れません。その背景に、デウス帝国と言うだけで虐殺、拷問をされた者も、存在します。これは、我々にとって屈辱でしかないのです。その上で、あのX-9は間違いなく、戒めの象徴として存在しています。我々は、なんとしてもあれを破壊しなければならないのです。」

ここに来て、気持が高ぶったアルメスは、改めて自身の信念をメイドに伝えたのだ。

 しかし、メイドはこれに対し、あまり関心を抱いていなかったのである。

「へぇ~なぁるほどなぁ~確かに俺も兄者とデウスでを傭兵してたから今が大変なのは分かる。それは、分かる。でもさぁ、軍備が整ったところで勝てるのかよ。俺は戦後、地球に居てたけどな、今の糞連邦の連中はお前等が考えている以上に、力をつけてるぞ。見せたろか?これが証拠だぜぇ。」

そう言って彼はアルメスにEフォンを見せた。

「これは……!?」

それは、ヴァイダーガンダムがロンドンを強襲している姿であった。彼はEフォンに映る動画を、デウスの兵士達に見せた。

動画に映るヴァイダーガンダムと、その近くに映っている国連のヴァントガンダム。その機体の大きさは段違いで、このような、巨大な兵器を作っていたという事実にアルメスは目を疑った。

「これが、今の連邦のMSですか!?こんな巨大な機体が……しかも、これは我々にとって忌むべき存在のガンダムタイプではありませんか!」

ガンダムと言う存在は、デウス帝国にとっては忌むべき象徴として存在している。最初の開戦時に、当時の地球連邦軍が初めて作成したMS、ファースト・ガンダム。それらが最初のクリスタル・ウォーの際にデウス帝国を敗北に追いやった事実は、彼等の意思にも引き継がれているのだ。

 故に、デウス帝国はガンダムと冠する機体を作ることは無い。それは、彼等の意地であったのだ。

「お前らが倒そうとしている糞連邦は、なんでか知らねーがデウス動乱当時以上に戦力が増強されてる。それに対して、力を付けていた筈の戦力ですらさ、コテンパンにされちゃってさ、糞連邦の連中に良い様に利用されているような連中の残党がさ、勝てる相手とは思えねぇんだよなぁ。」

戦後の新生連邦の軍備増強は、彼等を絶望させる効果を持つ。それは、余りに恐ろしい光景だった。

 絶大な破壊力を秘めているヴァイダーガンダムが、その街を蹂躙する姿。このガンダムの破壊力もそうだが、それ以外にも違う意見が、出てきた。

「同じ地球人の筈なのに、何故このような事をしているのですか?内乱?それにしては、余りにやる事が凄惨過ぎる……」

これに対し、アルメスは言った。

「今、地球人は新生連邦軍と、国際平和連合と言う勢力同士が対立している状況なのだ。地球に潜伏している同胞が、情報を教えてくれていた。だがまさか、このような事をしてくるとは思わなかったが……」

アルメスの言葉により、兵士達は地球が内乱状態にある事を把握した。だがそれにしても、度が過ぎている。こうした破壊行為を同じ地球上に向けて出来るという異常。彼等は、今の連邦軍が如何に力を付け、尚且つ狂っているのかを目の当たりにしたのであった。

「しかし……我々も負ける訳には行きませんよ。こんな事で屈する訳にはいきません。例え、忌むべき地球連邦がいかに力を付けようとも……」

動画を見て、一度は意気消沈したアルメス。だが、彼はそっと呼吸を行い、右手を一度広げた後、強く握り出した。

「……メイド様、行きましょう。奥に貴方の駆るMSが用意されています。」

「おぅ、早くしろよ。」

改めて、決意を固めたように、アルメスの表情は険しかった。一方で、メイドの表情は、まるで玩具を与えられた子供のような表情をしていた。

 

 

 

彼等が辿り着いた場所MSが収納されていた。かつてのデウス帝国が使用していた機体が、そこには存在している。

手前に存在しているのは、ディエルタイプだ。それはデウス動乱時に最もデウス帝国が使用していた量産型MSである。その砂漠仕様の機体は、アスーカルが率いていた砂漠の狩人にも用いられた。

それ以外にも、宇宙用の重MS、ゴルモンテの姿もある。型式番号、DMS-97、ゴルモンテ。ビームバズーカを中心とした砲撃戦を得意とする、機体だ。ここに存在しているのは、このゴルモンテの改修機体、ゴルモンテMk-Ⅱである。ビームバズーカ以外にも左肩部に直接存在している大型のシールドが特徴的な、機体だ。

その中で、メイドはとある、MSの前まで誘導された。周囲に存在するディエルやゴルモンテよりも全高が高い大型。機体カラーは黒。その、一件奇抜にも見える機体が、メイドの新たな機体であった。

「貴方の乗るMS……DXX-R04デスゲイズです。」

「ほー!ええやん!」

デスゲイズ。型式番号、DXX-R04。全高は約26メートル程度の大型MSである。漆黒のウイングが、バックパックに搭載されており、前腕部には二連装のビームキャノン、腹部にも巨大なビームカノンの砲門の姿が見える。頭頂部は二等辺三角形の、独特の形状をしている、そのMS。

 機体の構造は、ディエルやゴルモンテタイプと違い、複雑に見えた。変形機構を有しているのだろうかと、メイドは思っていた。

「こいつは変形するのか?」

それに対し、兵士が言った。

「ええ。MAに変形します。」

メイドは、白い歯をにやりと、見せた。

「すげえじゃないかぁ!ちなみにさ、こいつは俺の機体になるんだよな?」

と、メイドはアルメスに聞いた。

「今回の作戦次第です。もし、成功すればその報酬として、貴方に授けようと考えております。」

そう言った時、兵士がアルメスに言った。

「指令、それは宜しいのですか?確かにメイド・ヘヴン様は過去にデウスに貢献した方ではありますが、正規軍ではありません。あくまでも、客将という立場です。」

「構わんよ。」

と、アルメスが言った後に、兵士は黙る。

本来、機密に近い存在を赤の他人同然の人間に託すという事は、組織が許さない事が多い。だが、アルメスはそれを分かった上で、言った。

「まあ、何にしても、メイド様がどのようにこの機体を扱うかによって決まってきます。見極めと言う、やつですよ。」

その際、アルメスは何故か、笑みを浮かべた。

「ちなみにですが、この機体は単体で大気圏突入や離脱能力、そして機体全体にバリアーフィールドジェネレーターシステムを備えてあります。その推進力、火力は全てにおいてディエルタイプの五倍、いや、それ以上と言っても過言ではありません。」

資金難の状況のデウス帝国。その中で、技術を駆使して作り出した結晶ともいえる兵器が、この、デスゲイズだったのだ。

アルメスが言うには、シンギュラルタイプ等の、力を有した人間でなければこれを扱う事は難しいという。それを聞き、メイドは舌を舐め、回した。

「見極めねぇ。そりゃ、面白そうじゃねぇの。こいつが貰えるなら戦争のし甲斐があるってモンだぜ。」

“戦争のし甲斐”。この言葉を聞き、それを少しばかり恐怖に思う人間も、中にはいた。

 戦争とは本来、好んでするような内容ではない。国家同士や巨大な組織同士が争い合い、戦争が起きる。誰だって、戦争を望んでいる訳ではない。

 しかしメイドは違う。彼は戦争を楽しもうとしている。それは、余りに危険な思考と言えたのであった。この時、兵士の中にはこの男にデスゲイズを預けるべきなのかと、疑問を投げかける者も居たという。

「んで、いつ作戦は決行すんのよ。」

機体を受け取ることは出来た。だが、問題は作戦だ。X-9の破壊。それが今回の依頼。その時間がいつになるのか分からない以上、彼は落ち着いていられない様子だったのだ。

「明日までお待ち下さい。作戦会議室にて、説明します。今日は長い航行でお疲れでしょう。休まれて下さい。」

アルメスは、メイドに気を遣うように言った。だが、メイドはこれに対し、どこか不満げな表情を浮かべていた。

 

 

 翌日。作戦会議が行われた。目標は、新生連邦月面基地、シン・ナンナに存在する破壊兵器、X-9。今まで残党軍が度々攻撃を仕掛けてきたのだが、悉く敗退。今回はデスゲイズを中心とした部隊を展開し、確実に、叩く作戦だった。

 X-9の周辺には新生連邦の宇宙戦艦、ヴィッシュ級宇宙巡洋艦が点在している。それは、かつてのデウス帝国の際に使用された巡洋艦の改修艦だ。更に、MSも展開されている。突破するには、難しい布陣とされた。

 しかし、メイドはこの図を見て、言った。

「あれなら出来るんじゃねえの?今までは雑魚機体ばっかりだったから出来なかった。あの強いヤツならやれるだろ。俺に任せろや!」

びしっと、自身の左母指を自らの顔に付け、メイドは語った。それを見て唖然とする、兵士達。

「ならば、任せるしかありませんね。」

と、アルメスは冷静に言った。

「よ、宜しいのですか?」

「構わんよ。それ程に実力があるのなら、実際に動かしてもらうしかない。宜しくお願いしますよ。メイド様。」

まるで、メイドを試しているかのような言動。しかし、メイドは妙な笑みを浮かべるだけだ。

「じゃあ任せろや。準備万端!いつでもいくどー」

と、作戦会議を中断し、そのままデスゲイズに向かって移動してしまったのだ。身勝手な彼の行動に、兵士の中には疑問を抱く者も、居た。

「ラグナ指令。やはりあのような者にデスゲイズを託すのは、どうなのかと思われますが……」

いくら客将のようなメイドであれ、彼の身勝手極まりない言動は兵士達の不満を溜める効果を持っていると、言えたのだ。先の発言の中にあった、“戦争のし甲斐”という言葉も含めて。

「我々には、時間が残されていない。ようやく我々が見つけた、デウス軍において戦うことが出来る人物が、メイド・ヘヴンだ。その実力に賭けるしかないのだ。」

この台詞から、今のデウス残党軍が如何に追い込まれている状況であるのかが分かる。失敗は許されない、作戦が今、始まろうとしていたのであった――

 

 

 

作戦開始の時間が来た。各機体がアポカリプスのMSデッキから展開されようとしている。新生連邦の機体と比較して、性能が劣る機体ばかりだ。その中で、一際大型のMSがあった。それが、メイドの駆る、デスゲイズであったのだ。

「各機、スタンバイOK!」

「モーラ機、発進!」

「次いでアラド機も発進!」

「クドカ機はそれに継げ。奴等に一泡吹かせてやれよ!」

各MSが、発進していく。それぞれの機体が、宇宙空間を、バーニアで展開し、標的であるX-9に迫っていくのだ。

 その中、コクピット内で歯を剥き出しにし、両指関節を握り、漆黒の機体であるデスゲイズに合わせたようなパイロットスーツを着用している、男の姿があった。メイド・ヘヴンである。

「宇宙なんざいつ以来だ?ブランクはあるかもやけど、まあ武装さえわかりゃあ後はなんとかなるってな。メイド、行ぃきぃまぁーすゥッ!」

 

ビゴォォォン

 

モノアイが、輝く。やがてカタパルトが射出され、その反動で、メイドの後継機に当たる機体、デスゲイズは起動したのだ。

デスゲイズは変形機構を駆使し、MA形態になった。両ウイングが左右に展開さ

れ、バックパックが頭部を覆う。両前腕部が前方を向くが、マニピュレーターは使用可能だ。脚部はバーニアの役割を果たす事になる。MAのデスゲイズは、まるで怪鳥のシルエットを描いていた。

「言っとくが俺は、最初からクライマックスなんだよなァァァー!!!」

そう言った後に、メイドはペダルを踏み、バーニアの出力を上げ、月基地へ向かっていった。それに続くように、ゴルモンテMk-Ⅱやディエルが向かうのであった。

 明らかに先行し過ぎているように見えたが、メイドはそれを気にしている様子ではなかったのである。

 

 

 

月基地に近付いた時、接近する機影に気付いた新生連邦軍はMS部隊を展開する。基地からはディーストやジョゼフ、エグゼマーが出撃した。散開するMS部隊。だが、メイドはそれらを気にする様子を見せない。何故、彼は初めて乗る機体だというのに、余裕の表情を浮かべているというのだろうか。

「こいつぁやべぇ……本能って奴か!グラントロールの比にならねェぞ、こいつぁ!!!」

肌身で感じる、デスゲイズの強さ。それは、それが単に最新兵器という訳ではない様子だったのである。

 

ピキィィィ

 

その時、メイドの脳内に電流が走った。歯を剥き出しにし、熱源に反応するMSを確認した後に、機体前腕部に搭載している二連装ビームキャノンの表面に装備されている、三本の有線式ビームサーベルを放ったのだ。

「記念すべき第一球、投げましたァァァ!!!」

 

ギュルルルッ

 

左右の前腕部に三つずつ搭載されているそれは、新生連邦のMSを尽く破壊していく。触手のようにうねる、ビーム刃は不規則な動きをし、獲物を確実に仕留めるのだ。

「う、うわあああ!」

瞬く間に、六機が一度に破壊されたのだ。

「ホホッ、これはなかなか……」

更に、デスゲイズはバックパックの先端からビームキャノンを連射。戦後になって初めての宇宙戦にも関わらず、まるでブランクを感じさせない動き。それは、彼自身の技量が大きく関係しているのだろう。

次々と、敵を破壊していくメイド。これらの機体は、最早、“雑魚”も同然と言えたのだ。それに負けぬように、動く、他のゴルモンテや、ディエル。

 

バシュゥゥゥゥゥ

 

デスゲイズに、ビームライフルが迫った。大型機体であるそれは、回避運動が間に合わない――

 

バイイイイイン

 

「び、ビームが効かないだぉと!?」

そのビームを放ったジョゼフのパイロットは、困惑していた。そして、メイドは舌を舐め、熱源の砲口に、前腕部に搭載している二連装ビームキャノンを放出し、あろう事か、一撃でディーストを破壊した。

デスゲイズにはツヴァイやブライティス同様、バリアーフィールドジェネレーターが搭載されている。それも、全身に。つまり、この機体にビームライフル等の遠距離砲撃は、一切通用しないという事だ。

「すげえじゃないかぁ!ビーム無敵!これはええぞ!ええぞ!」

これを受け、調子に乗ったメイド。そのままデスゲイズは変形させ、MSに変形した。そのまま、更に有線式ビームサーベルを、合計六本放出した。更に肩からはミサイルポッドを放出する。その上腹部には巨大なメガビーム砲があり、それを放出した。それらによって多数のディースト等が破壊されていく。

これを受け、士気が上がった残党軍の兵士達は、ゴルモンテMk-Ⅱを駆り、ビームバズーカを連射。ダメージを受けていたジョゼフがこれにより、破壊された。

この時、メイドが全機に命令した。

「聞けよ。俺がとっととX-9ってのを破壊するからよ、お前等は雑魚の相手をしてくれや!」

そう言うと全員が一言、〝了解〟と言った。そして彼は一人月基地内部へ向かう。それは、デスゲイズを操るメイドの強さを認めた何よりの証と言えたのだ。

やがて、再びMAに変形したデスゲイズ。MA形態でのデスゲイズの頭部はビームキャノンとして機能をする。他にも回転砲塔ガトリングが二つ備えられていた。武装の数が、他のMSの比にならない。

デスゲイズに近付いてくるディーストやジョゼフ。そんなものなどメイドにとっては雑魚同然だった。有線式ビームサーベルを展開して破壊していく。

やがてデスゲイズは降下を続け、月表面へ移動。漆黒の怪鳥はそのままX-9へ向かう。それを妨げるディーストやジョゼフ。ひたすらビームライフルを撃つ。だが、バリアーがこれらを弾く。ならばと言わんばかりに、ジョゼフは腕部からグレネードを放出する。しかし、デスゲイズはその機動性を活かし、回避を行うのだ。

「邪魔だてめえらァ!」

 

ダダダダダダダダダダ

 

デスゲイズはウイングの辺りに備えられているガトリングを放出した。ジョゼフはこれらによってダメージを受け、更に二連装ビームキャノンで破壊された。しかし新生連邦のMSの数は多い。これらを退け、メイドは単機、月面を単体で駆け抜けていく。

 事前に打ち合わせた作戦とは、何だったのか。まるで、デスゲイズの独壇場と言わんばかりの状況が、続いていたのである。

 

 

 

 X-9のコントロールセンターでは、突如出現したテロリストの集団に対して焦りを抱いていた。その、テロリストの正体がデウス残党軍であることを知らない彼等。その中に居る、強力な機体の存在に、その場にいた誰もが驚愕していたのであった。

「テロリストの中に、強力な機体が一機、紛れている模様です!」

「何だと!?MSの増援を寄こせ!その上で、MA、セーザムを起動!奴等、まさかX-9の破壊が目的なのか……?」

何度か攻撃を受けて来た事を知っていたのだが、その中にメイドの駆る機体が飛び抜けた強さを見せているのには気付かなかった様子だったのだ。

セーザム。型式番号、NFMA-DX09。新生連邦軍の拠点防衛用のMAであり、バリアーフィールドジェネレーターを搭載している。防御性に優れている機体であり、中央部に大型のビーム砲が一門、後部に無数のミサイルタンクを貯蔵している。それは、魚類の“ノコギリザメ”のような形状をしており、その砲身も込みで、バリアーフィールドが覆われているのである。

やがてそのセーザムは、X-9の、管制塔の前に出現した。メイドが来るのを待っていた。

 

その間にもデスゲイズはMSと戦っている。と言っても擦れ違い際に破壊しているだけだ。デスゲイズを足止めする為に、三機の旧連邦の機体、ジャスティスがヒートストリングスを射出し、それをデスゲイズの脚部に命中させる。その後、電撃攻撃によるダメージがメイドを襲うと思われた。しかし、この男にそれは通用しなかった。

「アホが!御苦労だな糞連邦ォ!」

その次の瞬間、デスゲイズのビーム刃が展開され、三機のジャスティスは瞬く間に串刺しになり、破壊された。いずれも、コクピットを的確に狙っていたのである。

「ハッ……あれかァ……」

ジャスティスを破壊した後、そのまま進んでいると彼の目にX-9と思われる機械が、映った。そしてそのままそこへ向かっていく。

 

             ドォォォォォォォォォォォ

 

その時、前方から極太のビームが飛んできた。回避を一度考えるが、デスゲイズにはバリアーフィールドが搭載されている。そのまま、ビームを受けるデスゲイズ。機体は揺れ、メイドはやや、驚愕していた。

「うおっ!なんだ!?防衛システムか?」

極太ビームはデスゲイズの後にいたディーストを巻き込み、破壊した。そして、メイドは臆する事なく、寧ろ前進していった。

「くたばれやぁ!」

そう言った後に、デスゲイズは巨大なバックパックの先端からビームキャノンを放出した。だが、セーザムにはバリアーフィールドが展開されている。バリアーフィールドが展開されているならば、実弾兵器で対処するしかない――そう考えたメイドは、一度機体をMS形態に変形し、ミサイルを放出。

だが、セーザムには対迎撃ミサイルが存在した。無数のそれらは躊躇なく、デスゲイズに迫る。

「へぇ!?そりゃまあ、随分多いなぁ!」

次の瞬間、デスゲイズは腹部から強力なビーム砲撃を展開した。これらを薙ぎ払うように放ち、セーザムのミサイルは全てが、撃破されるのだ。

その上、追い打ちを掛けるようにデスゲイズはビーム刃を展開。それによってセーザムのカメラアイ等、様々な部分が串刺しになったのだ。

「うわあああ!」

搭乗していたパイロットは、ビーム刃の熱によって蒸発。直後に機体が爆発を起こした。拠点防衛用MAが相手とは言え、デスゲイズの敵ではなかったのである。

「うわははは!雑魚ォ!!!さて……問題はアレだな。」

X-9に接近したメイド。それに向け、ビームキャノンを撃つ。が、張り巡らされているバリアーフィールドがそれの邪魔をした。

「でしょうねぇ!!!」

今度は、ミサイルを放った。すると突然無数のビームがミサイルに放たれ、全て破壊された。

 更に、迫るミサイルを迎撃せんと、再び腹部からビームを放つ、デスゲイズ。

「クソが、さっきと同じやんけ。ん?」

ミサイルを相手にはしていられないと判断したメイド。その際、彼は一つの、穴を見つけた。何かあると、直感したメイドは、回避を行いつつ、デスゲイズをMAに変形させ、その、機動性を活かして、中に入っていったのだ。

 

 

 

他のデウス兵も必死だった。宙域でジョゼフと交戦しているゴルモンテMk-Ⅱも懸命に戦う。ゴルモンテMk-Ⅱはビームバズーカを腰にマウントしてビームマシンガンやシュツルムファウストといった武器を使用していく。ジョゼフはそれ等によって破壊されたが、ゴルモンテも破壊される。

デウス軍の主力機体はディエルとゴルモンテのみ。切り札はデスゲイズである。ゴルモンテは性能が現代の新生連邦のMSと戦える程である為、問題は無い。しかし、ディエルでは話にならなかった。

ゴルモンテはビームサーベルを装備し、そしてディーストに切りかかる。

「故郷を奪った憎き連邦!我等デウスの意地を見よ!」

「で……デウスだと……!?」

新生連邦兵士は最期に疑問を抱いて散っていった。他にもゴルモンテがディーストを攻撃していく。

デウス。まさか、戦後にこの言葉を聞くとは、思わなかっただろう。その、戦力を失っていた筈のデウスが、この場に出現したのだ。驚愕するのも、無理はないと言えたのである。

 

 

 

穴を通り、X-9の地下に侵入したデスゲイズ。その中にあるディーストを粉砕し、X-9のコンピュータを探した。

しかしジョゼフやディースト、エグゼマーはこの内部にも配備されており、彼らはデスゲイズ迎撃するために射撃を続けていた。

デスゲイズは一旦MS形態に変形し、二連装ビームキャノンを放出し、易々とジョゼフなどを破壊していく。そうしている内に、やがて彼はコンピュータを発見した。

「お、見つけたお!ヤっちゃうお!」

すると彼は回線を開き、あろう事か、大声で高らかに、言葉を発したのである。

「ヤっちゃうよ!!!ハハー!!!“シックスナイン”を殺っちゃうよォォォ!!!」

奇声を上げるメイドに、動揺する管制塔。明らかに動揺しつつも、負けじと反抗する。

「なんだあいつは……?だが、やれるものならやってみろ!X-9の防衛システムは完璧だぞ!テロリスト共がぁ!」

と、意地を張る、指令の男。しかし――

「司令!巨大な熱源反応をX-9地下にて感知!」

「何ィ!?」

この時、デスゲイズに搭載されている強力な武器が、展開されようとしていた。

それはMA形態のみに使用する事が可能な武器で、MA形態のデスゲイズの先端からやや下の部分に訪問があった。原理はヴァイダーのルイーナシステムと同じ、プラズマ粒子を使用しており、凄まじい破壊力を秘めている。デス・ランチャーと言う名のその兵器。その名の通り、それに当たれば、“死”に直結するのだ。

やがてデス・ランチャーのエネルギーが吸収され、そしてX-9の制御コンピュータに向かって放出した。

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 

 

その瞬間、凄まじい爆発が発生し、X-9は破壊された。デスゲイズもそのまま脱出し、無傷であった。X-9は大規模な爆発を起こし、完全に消滅した。

 この瞬間、今までデウス帝国に猛威を振るっていたX-9の存在は消え失せたのであった。これは、デウス残党軍に地球圏へ侵攻する大きな一歩に繋がると、考えられた。

「粉砕!玉砕!!大喝采!!!すごいぞー!かっこいいぞー!!!ハハハハハァー!!!」

だが、これによってシン・ナンナ基地は滅びたわけではない。これは、一部が破壊されたに過ぎないのだ。月基地の地下は膨大で、多くの兵器等が備わっているのだから。

 

 

 

やがて、アポカリプスに帰還した彼等。作戦は見事に成功し、メイドは、アルメスに称えられた。

「素晴らしい……の一言ですね。まさか、初出撃であれを見事に乗りこなすとは。」

「相性良いんだぜ。あいつは俺の相棒には十分過ぎるんだよなぁ!ハハハハハ!」

勝利した事を受け、メイドは、有頂天な様子だった。

「こいつは約束通り貰っていくぜ。俺の相棒としてなぁ!」

「承知しました」

この瞬間、作戦の成功報酬として、デスゲイズが、正式にメイドに託された。だが、兵士の中にはそれをメイドに託す事に、疑問を抱く者も数名居た。

「但し、メイド様。一つ、条件を宜しいでしょうか。」

その時、アルメスが言った。

「デスゲイズに乗っている以上は、その、位置情報をこちらで共有させて頂きます。それだけは、承知して頂ければと、思います。」

この発言には、裏があるのは分かっていた。だが、メイドはそれでも、承諾をしたのである。

「破壊されないかが心配って訳か?そいつぁ、面白れぇ。安心しな。簡単にやられる機体じゃねぇよこいつぁ。俺は知ってるぜ?こいつぁ丈夫なんだ。滅多な事じゃ破壊はされねぇのよ。ま、直感だけどな。」

その自信は、どこから湧くのだろう。しかし、それがメイドの強みでも、あるのかも知れない。もしかすれば、彼自身の“力”が、そうさせるのかも知れない。

「恐らくですが、貴方はこのままデウス帝国に留まり、再興に協力して貰えないかと尋ねても断るでしょう。それは、分かるのですよ。貴方は今、地球に戻りたがっている。そこでその機体を操りたいと、心から願っている。違いますか。」

まるで、メイドの心を読むかの如くの対応だった。その、アルメスの言葉に、メイドは言った。

「ほーお。よく分かってんじゃねえか。そう。俺は別にデウスに興味はねぇ。ただ、あの“シックスナイン”を破壊してデウスが侵攻していくのに貢献してやったのは事実だろが。その分の報酬は貰ってもいい筈だろ?」

「それは、分かりますよ。我々としても、win-winの関係でありたいと、思っていますからね。」

アルメスは、静かに笑みを浮かべ、言った。

 その後、メイドはデスゲイズを駆り、アポカリプスを去って行った。その機動性は瞬く間に月面を通り越し、地球に向かって行った。

 

 残されたアルメス達は、去って行ったデスゲイズを見送っていた。その際、側に居た兵士が、言った。

「指令。宜しかったのでしょうか。あの機体はデウスの要になり得る機体。いくら位置情報を把握しているとはいえ、あのMSを彼の私物にするのはどうなのかとは、思いますが。」

兵士の疑問。恐らくその兵士以外の人間も、疑問に抱いている事だろう。だが、それでもアルメスは彼の行動を、許可したのだ。

「メイド・ヘヴンの性格を見たまでだ。あの男の常軌を逸した性格を見ても明らかなように、デウス帝国に所属させておくのは危険以外の何者でもない。だが、あの実力は本物だ。ならば、あえて“放し飼い”をした方が良い。」

アルメスの思惑が明らかになる。彼はメイド・ヘヴンと会話をする事で、彼の言動を見極めた上で、デスゲイズを託す事を判断したのだ。

「それにあの男は、恐らく地球上であの機体を使い、“何か”と戦うだろう。それも、我々にとっては、都合が良い。地球上で暴れていたとされる、あの巨大ガンダムタイプの事もある。今の地球連邦の機体等のデータを持ち帰る事は、今後のデウスの侵攻にも繋がる。それを見越したまでだ。」

兵士達は、それを聞き、感心している様子だった。全ては、この男の思惑という訳である。

「我々は再び、栄光あるデウスを取り戻さなければならない。地球連邦の犬として生きる事はあってはならない。今回の侵攻の成功は、次なる一手に大きく貢献する事だろう。デウスに、栄光の輝きを。」

アルメスがそう言った後、兵士達は、声を揃え、言った。

「デウスに、栄光の輝きを!」

アルメス・ラグナ。デウス帝国の士官。戦後になってもデウス帝国に絶対的な忠誠を誓う男だ。戦後から地球圏に同胞と呼べる人間を送り込み、情報収集を行い、地道にデウス帝国の復興の為に動いてきた男だ。戦闘狂であるメイド・ヘヴンさえも利用しようとしているこの男は、手段を選んでいない。

 新生連邦と平和国連盟の対立により、混迷を極める地球圏は、更に混迷に巻き込まれていく事になるのかも、知れなかった。

その間にも、デスゲイズは大気圏を突入しようとしている。戦闘狂が得た強力なMSは、今後、世界にどう影響しようというのだろうか。

今地球に、新たな脅威が迫っていた。

 




第四十九話、投了。

新型MS、デスゲイズは圧倒的なスペックで新生連邦のMSを翻弄していきます。この回から、メイド・ヘヴンの本格的な暗躍が始まっていきます。
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