機動戦士ガンダム Living Days   作:すからぁ

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ヴァイダーガンダムとの戦いが始まった。
国連対新生連邦。豪州での激戦が始まる。


第六十九話 激戦区、豪州地区

 碧色の光が自ら放たれるという現象が起きた。レイにとって、身に覚えのない超常的な現象。覚えのない感覚は彼自身を困惑させ、ただ、不思議に思うだけ。

 今まで、脳内に電流が流れる感覚は何度か感じた事があった。最初にそれを感じたのは、アインスに乗った時である。自分でも不明な感触に対し、シンギュラルタイプの力が自分には宿っているのではないかと思っていた。

 それからエリィに会い、自身がシンギュラルタイプと呼ばれる人種かも知れないという事に気付く。やがて、レイは多くの人と会い、その人から感じる感覚を覚えていくようになっていった。

 変化が訪れたのは日本海で海賊と交戦した時だ。倒されそうになった時、レイの目が深紅に染まった。そのまま敵を圧倒し、やがて敵は倒された。しかし、それが生じる条件な等は謎に包まれている。妙な感触と、言えた。

 それからというもの、戦闘が起こった時に時にその感覚がレイを襲う事があった。あれは、何なのかも分からないまま、今に至る。

 レイは今、医務室に居た。点滴をされている状態。先の痺れは改善傾向であったが、やはり自身が光るという妙な現象に対して戸惑いを隠せない。自分という人間は、一体どうなっているのか?光を放った?どうして?何故自分がこのような、現象を受けている?

 目先にある知らない天井の存在を呆然と眺める中で、レイはその事に戦慄していたのである。

「アドバンスドタイプって……何?訳が、分からない……僕は、僕自身が怖い……」

未知なる出来事が自身の身体に生じた時、人は恐怖する。それが医者等の専門家に症状を伝えても不明な時、より一層、恐怖するのだ。

 

「レイ、大丈夫か?」

そこへネルソンが入ってきた。僅かに夜酒を飲んでいてやや、顔が赤いが、酩酊歩行ではない。恐らく軽く飲んだのだろう。

「アレンとジャンヌ嬢から聞いたが、身体から光を放ったそうだな……?一体、どうなっている……?」

そう言った時、レイの眼が、見開かれた。

「違う!僕は光っていない!僕は人間だ!僕は怪物じゃない!!」

明らかに錯乱している様子のレイ。先の事が、恐ろしく感じられたのである。これ程にレイが取り乱す事は、最近では珍しいと、言えた。

「落ち着け!恐らくフラッシュバックしたのだな……すまなかった。」

と言って、彼を宥めるネルソン。

「君を処置してくれた医者に聞いたが特にバイタル面に関しては大きな問題はないようだ。それだけが、救いだった……君は休んだ方が良い。我々も極力刺激を入れないようにせんとな。君が、頼りなのだから。」

「はい……」

ネルソンは、錯乱するレイにどう、対応すれば良いか分からないで居たのである。しかし、レイの立場からすれば、全く分からない事が起きた時に恐怖を抱くのは至極当然だ。

 だが二日後には戦闘になる。その場合に自分がしっかりしなければならないと、レイは自身に言い聞かせていた。内心に迫る、恐怖と闘いながら……

 

 

 

レイが襲撃されてから二日が経過した。その間、別の人間がレイや他のパイロットが何らかの存在に襲撃される事はなかった。レイは点滴の効果もあり、フォリアによって盛られた薬の影響は消えつつあり、出撃本番の日では既に、改善していた。

この日はヴァイダーガンダムを迎撃する、大切な日。国連側は、多数のヴァントガンダムが基地内に配備されている。一方の新生連邦側も、ヴァイダーガンダムを囲むように多数の量産型MSが配備されていた。

既にダーウィンの市街地の一般市民の避難は完了している。先のロンドンの惨劇ではヴァイダーガンダムの存在を予見出来ていなかったが故に、避難指示が遅れ、多くの犠牲者を出す結果となってしまったのだ。この状況を見越していたギアが、既に市民に対して呼び掛け、市街地には誰一人いない状態となっていたのである。

今回の作戦に関しては、司令官であるワーゲインの指示もあってか、全員がパイロットスーツの着用を義務付けられた。国連兵にとって、これは当然の義務なのだが、今までMS乗りとして活動してきたセイントバードチームにとって違和感を覚える者が多かった。

皆、今は基地地下内のMSデッキにいる。ここから一斉に出撃するのだ。レイは自身に起きた事について疑問を抱きつつも、今は作戦に集中しなければならないと思い、不安を消すように取り繕う事にしていた。作戦の事を聞き、幸いにもそちらに集中する事は、出来そうであった。

「これが、軍用のスーツですか?実物を見るのは初めてです……」

初めて見るパイロットスーツの存在に驚愕するレイは、側にいたガーストに尋ねた。すると、彼は笑いながら答える。

「ああ、そうか!お前、パイロットスーツ初めてか!これさ、すげえ懐かしいんだよ。昔はこれを着て出撃しないとダメだったからな。人によってはこれを着ないで出撃している奴も居るけど、何せヘルメットが暑苦しいんだよ。宇宙じゃ必須だけどな。背中にジェットついてるだろ。これで空を飛んだりして奇襲をかけるんだよ、本来はな。今は使わないけど。」

軍用のパイロットスーツを初めて目の当たりにしてレイは目を点にしていた。これ程高性能なスーツなど今まで見た事が無かったからだ。

「ま、実際に着てみろって。こういうのは慣れが大事なんだからさ。つーか今までのMS戦だって本来はこれがいるんだぜ?じゃあな、レイ。頑張ってくれよ、今回の作戦の中核だろ。あいつらの攻撃、絶対に許してはダメだから……。」

最後の一言だけ、ガーストは暗い表情で言った。ヴァイダーガンダムの存在は彼も警戒しているのがその表情だけで分かる。レイはそっと深呼吸をし、緊張を和らげようとした。

今回の戦闘で、戦艦も出撃する。シュネルギアにはジャンヌが、セイントバードにはエリィがそれぞれ、艦を指揮する。互いの艦内にはオペレーターも、操舵士も、全員揃っていた。

やがてパイロット達は各々のMSに乗り始めた。それに釣られるように、レイも自分の機体であるツヴァイに搭乗する。

久々にツヴァイガンダムにレイは乗り込んだ。昨夜もまたあの夢を見た彼。そして、二日前に自身に起きた、自身が光るという未知なる現象。こうした悩みを多く抱えてしまっていた彼ではあるが、今は戦闘時。その行動に集中しなければならないと、思っていた。

(落ち着かなきゃ……今は、あんな事を考えないように……!)

レイはスイッチを押し、フルスクリーンのモニターを展開する。その際、カメラを起動さえ、ツヴァイは緑色の目を輝かせた。

 

キシィン

 

その時、ジャンヌから彼宛てに無線が入った。それに応じると、ジャンヌの顔が映し出される。その麗しい顔は、真剣そのものとなっていた。

「レイ。ツヴァイガンダムのプラズマカノン砲は切り札となってきます。そこで、プラズマカノンを最大出力で長時間射出が出来るよう、開発されたプラズマエネルギー供給マシーンとツヴァイをドッキングさせて下さい。供給マシーンは基地上部にあります。そこまで移動させて下さい。」

「あ、えと……はい。」

言われるままに、彼はツヴァイを動かした。そして地上に出て、やや高台の場所にツヴァイを止めた。そこには巨大な機械の塊が備わっていた。これが、彼女の言うプラズマエネルギー供給マシーンなのだろう。

「さて、ドッキングを開始して下さい。」

「えっと、どうすれば……?」

機体同士のドッキングなど、今までにしたことがない。無理もなかった。今までドッキングをする場面に携わったことがないのだ。

が、そのように迷っているレイに、ジャンヌがアドバイスを与えた。

「大丈夫。ゆっくりと後方に移動して下さい。そうすればマシーンが自動的に認識してくれます。」

言われるまま彼はツヴァイを、前面を向きながら後方に移動させた。すると、プラズマエネルギー供給マシーンはそれに反応するように自動的にアームが展開され、ツヴァイのプラズマエネルギータンクに接続された。

 

ガキィン

 

「うわぁっ!?」

突然の出来事に彼は戸惑う。この時、エネルギー供給マシーンとツヴァイはドッキングした形になった。それは余り格好良いとは言えない形ではあったが、プラズマカノンを長時間放出するのには十分なエネルギー量を蓄えたマシーンの存在を考えると、効率的な形ではあった。その直後に、ジャンヌがプラズマカノンの砲身を展開するように彼に言った。

 

グォンッ

 

やがて巨大な砲身が姿を現す。しかし、まだ発射はまだ出来ない。ヴァイダーガンダムへの照準が合っていない為である。

「固定されている為、迂闊に射出する事は危険です。マシーンには索敵機能を増大させる効果もあります。それを利用し、相手の巨大な熱量を感知して、位置を調整して、あのガンダムを破壊して下さい。全ては貴方の引き金にかかっています。どうか……お願いします。」

今回の戦いの中核を担うレイ。彼が失敗すれば国連は圧倒的に不利になる。しかし成功すればヴァイダーガンダムに致命傷を与えることが出来、有利になる。レイは慎重になった。

失敗すればピンチに陥るのは目に見えている。しかしまだまだ照準が合わない。彼はひたすら、ヴァイダーの様子を見た。

無論、緊張しているのはレイだけではない。彼以外の全員も緊迫したムードに包まれている。他のパイロットは、それぞれがいつでも出撃出来るように準備をしていた。その中にアレンの姿もあった。無論、ネルソンやガーストの姿もある。それぞれが、レイの行動に全てを賭けていた。成功するも失敗するも彼次第。まず、第一波としてヴァイダーガンダムを破壊する事が出来れば国連側が有利に働く事が出来るのだ。

 

 

 

ヴァイダーガンダムを配置している新生連邦は、すでに準備を終えていた。しかし、いつの間にか数多く配置されていた周囲の量産機体は、数が減っていた。別の場所に移動したのかは分からないが、周囲には既にディーストなどのMSしか残されていない。一体、他の部隊はどこへ行ったのか。それは謎に包まれている。

そしてヴァイダーはルイーナシステムを構える体勢に入っていた。二基のテールアンカーが地面に設置し、バインダーが二基共に、前方を向き、迎撃態勢を取る。今この瞬間に、ツヴァイとヴァイダーが互いに砲身を向け合う状態となったのだ。その矛先は、紛れもなく国連の基地だ。しかし、まだエネルギーは溜められていない。

「フォリア・チェーニ……あの、ツヴァイガンダムのパイロットの暗殺に失敗したか。まあいい。敵の中核だろうが、そんなものは関係のない話。ヴァイダーの破壊力さえあれば、全ては上手くいく。敵部隊など壊滅させてくれる。本部から借りた特殊強化モデルもいるし、負ける筈がない……確実に葬ってくれる。リノアス、全てはお前に掛っているのだ。」

フークは、不気味な笑みを絶えず零した。この様子から、フォリアがレイを暗殺しようとしている事を容認している様子だった。国連との短期決戦で挑む今回。彼等は、果たして以前の惨劇を再び引き起こそうと言うのか。

 

 

 

レイは相変わらず照準を合わせていた。一度しか許されないチャンス。そのチャンスを成功に変えるには慎重に行動せざるを得ない。ただただ、レーダーをよく見て、相手の動きを把握し、プラズマカノンの角度を調節しつつ機会を待った。

だが、彼の行動を邪魔する者が現れた。その瞬間に彼の頭の中で電流が流れる。明らかに何か不吉な事が起ころうとしていた予感がした。そして最悪な事に、その不安は的中してしまう。

 

ピキィィィ

 

「敵……!?」

レイが反応したと同時に、基地から各員に対して通達があった。

「敵機体、海上より接近!数、八!」

新生連邦が水中から奇襲をかけて来たのだ。ディープシーが、海中から八機。そしてその中には明らかに改良されているディープシーの姿もあった。突然の奇襲に、彼等は対応に遅れた。ヴァントガンダムがこれらに対抗するが、先に攻撃された分、明らかに不利だった。

「やはり襲撃……敵が妨害行為をするのは予想していました。」

彼女は急ぎ、アステル家及びセイントバードのメンバーに対し、言った。

「ツヴァイガンダムをやらせては行けません。各機は護衛に回って下さい。」

言われるまま、彼等の機体は全てツヴァイの護衛の為に行動する。それに合わせるように、国連の機体もツヴァイの前に移動した。現在、プラズマカノンのチャージ中のツヴァイは攻撃が出来ない。やられる訳には、行かないのだ。

 

 

 

戦闘が始まった。新生連邦はジョゼフやエグゼマー等、空中を移動する事が出来るMSで猛攻を仕掛けてくる。一方で国連側はヴァントガンダムで迎撃する。他にも、ネルソンのハルッグやガーストのエスディア、何よりもアレンのブライティスがこれらに対して攻撃を加えていく。

国連、セイントバードチーム、アステル家の連合軍が、脅威に対して立ち向かっていく。キーパーソンであるレイは絶対に倒されてはいけない。彼等は、プラズマカノンの発射を行おうとしているレイを死守していた。エネルギーは、既に溜まっている。彼の指先一つでこの戦闘の行く末が決まってしまう。

「照準を合わせないと……!くぅ……合わない……このままじゃ……!」

あくまでも、一度切りのチャンス。失敗は一切許されない。プレッシャーと新生連邦の部隊がレイを襲う。

 

キシィン

 

だがその時に、二機のガンダムがツヴァイに向け、迫って来た。チェーニ姉妹のガンダムである。ツヴァイの妨害の為に、姉妹が迫って来ていたのだ。

「フフ、チャージ中か何かかしら。この前は失敗だったけど今度は成功してみせるわ。」

「お姉様は焦らすからダメなんだよ。一気に仕留めて殺す方が楽でしょ?」

「いいえ、あの子は特別。簡単に殺してはつまらないから。」

「じゃあ、お姉様の望む通りに攻撃しようかなぁ!」

モニター越しで、リンセはフォリアに対して右示指を立て、ウインクを行った。

「……ん?それはどう言う意味かしら。」

「殺す前に、焦らしてあげるって事。これでね!」

そう言った直後、エクルヴィスガンダムの手掌部から、蜘蛛の巣状にデストロイウェブが展開された。それはツヴァイを狙って襲い掛かる。これを受けてしまえば電流がツヴァイを襲い、プラズマカノンの照準合わせを行っている場合ではなくなってしまう。

しかし彼女の狙いは的確だ。このままではデストロイウェブのダメージを受けてしまう。

 

バヂィィィッ

 

しかし、その攻撃が彼に届く事はなかった。と言うのも、彼の代わりにこの攻撃を受けた機体があった為である。それは、青いハルッグだった。ネルソンが自ら蜘蛛の巣にかかり、電撃を浴びてしまっている。

「ぐああああ!くぅ……!ツヴァイ……はやらせん!」

「ネルソンさん……!」

「レイ、集中しろ!目的は巨大ガンダムの破壊!ただ、それだけだ!」

「は……はい!」

自分の為に身体を張って守ってくれる人間が居る。そう思うと、彼は一層ヴァイダーに対して攻撃を集中しなければならないと悟った。

「ちぇ、邪魔が入った……」

舌打ちをする、リンセ。

「あのMS……一年ぐらい前にアインス強奪を邪魔した機体にそっくりね。」

ハルッグの配色は変化しているが、その形状そのものに大きな変化はない。エクルヴィスの妨害をした機体がハルッグである事を見抜くのに、そう時間を要さなかった。

「改良型……かな?まあ、どの道邪魔モノに変わりはないけどっ!」

姉妹は、標的をネルソンの機体に絞った。ヴェーチェルは背中から対艦サーベルを取り出し、エクルヴィスは両肩部のビームカノンを展開させ、狙った。

「ちぃっ!」

それを見たネルソンは慌ててハルッグをMAに変形させ、回避運動に移った。それと同時にエクルヴィスの肩部ビーム砲が発射される。次に、エクルヴィスは再びデストロイウェブを放った。

だが、ネルソンはこれを見切り、ロングビームライフルで狙い撃つ。そうする事で、デストロイウェブは蒸発した。

「舐めるなぁ!」

次に攻撃を繰り出したのはヴェーチェルだった。ヴェーチェルはメガランチャーを構え、ハルッグに狙いを絞る。照準が合ったと同時に、それは放出された。辛うじてネルソンはこれを避けるが、代わりに下方にいた水上艦が一撃で破壊されてしまった。

「ええい、なんて破壊力だ……!」

「死になさい!貴方の相手よりも私は……レイの相手をしたいの!あの子さえいれば、他の男なんていらない!死ぬほど愛おしくて憎い!だから私の手で葬り去ってやる!」

「レイはやられるわけには行かない!絶対に!」

「邪魔しないで!」

フォリアの猛撃が始まった。ビームウィップを取り出してそれをMAハルッグに対して攻撃する。鞭のようにしなる動きを繰り返すそれは、非常に素早く、避けるだけでも精一杯だった。

「発射はまだか!?」

ツヴァイが発射するまで、彼を死守する必要がある状況、一方の敵はただ攻めるだけ。状況は圧倒的に不利だった。しかし、それでも兵士達は戦っている。

 

Lock on

 

照準が定まった。狙うは、ヴァイダーガンダム。そしてそれが持つ、巨大なバインダー。それさえ破壊すればルイーナシステムと言う脅威は去る。それを破壊する為、レイは今しかないチャンスに賭けた。

 

「今だ!」

 

スイッチを押した瞬間、エネルギーが溜められた。凄まじい勢いで緑色の粒子が砲口の中に吸収されていく。そして――

 

 

ドバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ

 

 

高エネルギーの砲撃が、放たれた。

 

 

 

その一方、ヴァイダーは既に発射準備に入っていた。ツヴァイ同様に緑色の粒子がバインダーの砲口の中に吸収されていき、今にも都市を破壊する勢いで標的を狙っている。

「よし……これで奴等も何もかも消し去れる。クク、ヴァイダーのルイーナシステムの破壊力は凄まじいからな。」

フークは、基地内で不気味な笑みを浮かべてヴァイダーの様子をじっくり見ていた。恐ろしげなその表情は、都市の破壊を意味するのだろうか。

「エネルギー充填60%……70%……80%……90%……もうすぐです。」

「クク、100になった瞬間に発射だ。何もかも全てを葬り去ってくれる。」

既に勝ち誇った顔で、フークは余裕を見せていた。やはり以前にロンドンを破壊した実績もあって、ヴァイダーの破壊力をよく知っている。だからこそ、余裕でいられるのだろう。

しかしヴァイダーがエネルギーを最大まで吸収した時だった。その瞬間に、得体の知れない大型の熱源をモニターが感知したのである。

「大佐!大型の熱源を感知……ヴァイダーに向かってきます!」

「なんだと!?ええい、発射しろ!何だか知らないが迎撃だ!」

「し、しかしまだ充填率が……」

「構うな!撃たせろ!」

慌てるフーク。その大型の熱源に対し、ヴァイダーもすぐに凄まじい破壊力を持つルイーナシステムを発射した。しかし、このルイーナシステムは完全なものではない。最大出力で撃つ前に砲撃されたものだ。従って、威力は若干落ちる。

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ

 

 

互いのプラズマ粒子が、直線状を交わった。ほぼ、同時のタイミング。レイの放った一撃とヴァイダーの放った一撃が、まるで拮抗し合うように碧色の輝きが彩っていた。

だが、ヴァイダーのルイーナシステムはツヴァイのプラズマカノンの外側を通過していた。一方のプラズマカノンはその内側を通過している。つまり、レイは危険な状況に置かれていた。ルイーナシステムの矛先は紛れもなく、レイが居る基地である。これが直撃すれば基地が滅んでしまう。それと同時にツヴァイもルイーナシステムに直撃し、巻き添えを食らって消滅してしまう。このままではレイの命が危ない……そう思われた。

しかし彼の方が素早くプラズマカノンを放出していた。それが、奇跡的に敵の攻撃を反らせることに成功したのである。プラズマカノンはヴァイダーガンダムのバインダー部に直撃したのだ。その威力によって、ヴァイダーはバランスを崩し、後ずさりする。装甲が分厚いため、簡単に蒸発することはなかったが、それによってバインダーの矛先が変わり、上空にルイーナシステムが向けられた。つまり、軌道を変えたのである。

危険だと感じたヴァイダーガンダムは、ルイーナシステムの放出を中断。そしてヴァイダーを横に動かしてプラズマカノンを回避した。その間も直撃を浴びたが、頑丈な装甲が蒸発を防いだ。以前はこれを長い時間浴びていた為、脚部が破壊された。しかし今回はそれ程長い時間浴びていないため、破壊されることはなかった。

「ば……馬鹿な……!?あり得ない……!……す、すぐに再充填を開始!」

「それは危険です、大佐!」

焦るフークに対し、近くにいた兵士が警告した。そんな兵士に対し、フークは胸倉を掴む。

「何故だ!?」

予想外の出来事が生じた事に、彼の冷静な表情は消え、焦燥に駆られる表情が見えた。

「落ち着いて下さい!先程多量のプラズマキャノンによる砲撃をヴァイダーガンダムは受けました。もしこれ以上ルイーナシステムを続けて撃てばあの機体が持ちません。ここから先はファンネルやビーム砲撃等で、攻撃していくべきです!」

「クソ、邪魔をしてくれる……!」

ツヴァイとヴァイダーの一対一の砲撃戦の結果、ルイーナシステムによる猛威は防ぐことが出来た。だがそれだけで全てが終わったわけではない。

本来、ツヴァイはヴァイダーを破壊することが目的でプラズマカノンを放出したのだ。実際、これは失敗と言うべきだ。だが、今更失敗だと悔いていられない。とにかく彼等は、この巨体をあらゆる方法を遣って破壊しなければならないのだ。

 

 

 

全力でプラズマカノンを放出したツヴァイ。最早プラズマカノンを放出するエネルギーも無い状態になり、ツヴァイはエネルギー供給マシーンと切り離さざるを得ない状態にあった。しかし、レイにはこれを切り離す方法が分からない。

このような時に敵MSが攻撃を仕掛けてくるものだから、彼は無理にツヴァイを動かす。すると、アームが綺麗に外れた。それが幸いした為、どうにかレイは敵の攻撃を回避出来たが、エネルギー供給マシーンが破壊されてしまった。

レイを襲ったMSはエグゼマーだった。しかし幸い敵は一機だった為、容易に狙う事が出来た。

すかさずツヴァイはバスタービームライフルを構え、エグゼマーを一撃で撃ち落とした。これを機に、彼は本格的に今回の戦闘に参加していくことになる。

 

 

 

 地上、低空上では激戦が繰り広げられている中で、スバキは海中にいた。水中からの奇襲部隊による攻撃を阻止する為だ。アインスを水中用に換装し、アクアバズーカを装備して迫ってくるディープシーを狙う。アインスは水中用装備に換装できることから、敵水中部隊に対し、彼女は既に任されていたのだ。

無論、一機では大量の敵部隊に立ち向かうなど危険が大きすぎる。従って、セイントバードチームは海中の敵に対抗して、他にもディープシーを投入したのだ。

「水中戦なんて初めてだ、上手くやれるかどうかだけど……」

いつもは強気でアインスを操る彼女だが、海中という、今までで初めてのフィールドで戦うとなれば話が変わる。無論敵の方が海中と言うフィールドでは慣れている。それ故に、不安が大きいのだ。それでも彼女はアクアバズーカを構え、懸命に敵機を探す。

 

ピキィィィ

 

「……あれか!」

その時、スバキの頭の中で電流が流れた。シンギュラルタイプの感が、敵の位置を教えてくれたのだ。すぐに彼女は標的に対し、バズーカを発射する。すると、すぐに敵のディープシーが破壊された。

味方のディープシーと敵の機体とでは、機体色が異なっている。敵は青だが、味方はカーキ色をしている。やがてアインス以外にも、味方のディープシーが実弾ライフルを撃って敵機に攻撃を仕掛けていく。ミシェのジャンク屋で貰った機体が、ここで役に立っているのだ。

「ビーム兵器は水中じゃ使えないからな……代わりがこれか!」

と、アインスはアクアグレネードを腕から放出し、敵のディープシーを破壊した。

 

ドォォォッ

 

しかしその時、突如ミサイルによる攻撃が彼女を襲った。慌ててシールドを構えるも、そのシールドが破壊されてしまう程の威力だった。

「!?どこから……?」

突然の攻撃に戸惑うスバキ。その時にセンサーを確認すると、大型の熱源反応が二つ確認出来た。恐らく戦艦クラスのものだろう。潜水艦がいるのだと悟った彼女は、それを破壊しようと考えていた。

「潜水艦……?それを攻撃すれば!」

彼女は素早く行動を開始した。カメラアイを輝かせ、一人、熱源の方向へ向かう。無論それは危険な行為に他ならない。

「おい!何考えてるんだよ!」

別のパイロットが、彼女を止めた。

「大丈夫だ!少しは慣れてきたから!」

ディープシーに乗るセイントバードのパイロットが注意するも、彼女はそれを簡単にあしらって前へ進んでいく。

しかしその時、他のディープシーとは形状が異なる機体が彼女の前に現れた。するとそれはビームサーベルではなく、リーチの長いビームランスを構え、アインスに襲い掛かる。

「わっ……!?」

急いでアインスもビームサーベルを構え、どうにか切り払う。しかし動きが他のディープシーと比べて段違いで、機動性が高い。

「新型……?クッ!」

お返しと言わんばかりに、アクアバズーカやアクアグレネード等で応戦するが、いずれも避けられる。そして実弾ライフルによってダメージを受けてしまう。

「ぐぅっ!」

強力な敵機の出現に苦戦するスバキ。その上、敵機は背中に背負っている巨大な砲身をアインスに向けて来たのだ。すぐにそれは発射され、素早い動きでアインスに迫ってくる。

直撃すれば大破は免れない。しかし避けるにも、弾の動きが速すぎて避け切れない。スバキに危機が迫った。

思わず彼女は目を瞑る。しかし少ししても、ダメージを受けた感覚が無い。ゆっくりと目を開けると、そこには彼女を庇った味方のディープシーの残骸があった。

「そ……んな……!?」

アインスは重要な存在だと知っていたセイントバードのMS乗りが、自らの身を持ってアインスを守ったのだ。強力な実弾兵器を食らってしまったパイロットは死んでしまっていた。彼女はこの時、自分の行動を深く反省した。

だが、敵は味方の死に対して哀悼の意を表す時間を与える程、優しい筈がなかった。

「このぉっ!!!」

怒ったスバキはアクアバズーカを連射して敵機を狙う。が、敵機の動きは非常に素早く、避けつつも実弾ライフルで攻撃を加えてくる。実弾ライフルは単発ではさほどの威力はないが、連続で食らうとダメージが大きい。

「もらったな、アインスのパイロット!さあ、大人しくアインスを我が軍に返してもらおうか!」

「あの機体のパイロット!?」

特殊な武装をしているディープシーのパイロットは、突如スバキに通信で話しかけてきた。それは余裕があって行っていることなのかは定かではないが、明らかにスバキを馬鹿にしているように見えた。

「なんだ、パイロットは女の子か!なかなか度胸があって良いな!ハハハ!」

「ば、馬鹿にして!」

強化型ディープシーのパイロットは筋肉質で、鋭い目つきをしている。そして目の部分に十字の形に傷が入っていた。見るからに寡黙なエースパイロットと言う風格をしているが、口調からしてそれとは正反対のパイロットである事が分かる。

「だが、軍の物を持って行ってはダメだな、おしおきはしねーとなっ!そうだ、名前を言っておこうか。俺はルーボ・アルケニーだ!水中戦では負け知らず!いくらアインスが水中用の装備をしてようが関係無いんだよな!」

この状況であるにも関わらず、この、ルーボと言う名の男はどこか、余裕を持って戦っている。それに対し、余裕のないスバキはただ、反論するだけだ。

「黙れぇ!」

完全に相手のペースに乗せられているスバキは、やみくもに敵機に攻撃する。だがルーボの乗るディープシーは機動性も高く、軽やかに水中をステップ移動して実弾兵器を容赦せずに撃ってくる。

「なめんなぁお嬢さん!キャリアがダンチなんだよな!」

「そんなの関係無いだろう!」

「動きがぎこちないねぇ!」

ルーボの言う通りだ。水中用に換装されているとはいえ、パイロットが初めて水中戦を経験する為か、動きが鈍く見えた。

「初めてなんだろうが、戦争では関係が無い!安心しな、殺しはしないぜ。アインスのパイロットで良かったな!捕虜として扱ってやるから!」

「ふざけるな!新生連邦なんかに!もうあんな所にいたくないんだ!」

マサアキ・アルトに見せられた地獄と呼べる時間を思い出したスバキ。あの時間は彼女の人生に陰りを作った。もう、あのような場所に行くのは嫌だ。戦うしか、無い。

「へえ、訳ありか?まあ、そんなものは関係ねえ……生きられるだけありがたく思いなよ!」

すると、ルーボのディープシーはレールガンを放出した。急いでアインスはそれを避けるが、引き続きディープシーは実弾ライフルや背中の実弾キャノンを放出してくる。

「クソッ……性能が違い過ぎる!パイロットも強い……やっぱりエースか……?」

その時、セイントバードチームのディープシーがルーボのディープシーに攻撃を加えた。が、すかさずルーボのディープシーはそれを回避し、急接近してビームサーベルでコクピットを切り裂き、破壊した。これで海中ではスバキ一人で、新生連邦の水中部隊を相手にしなければならなくなってしまった。

 

 

 

 空も激戦だった。ヴァントガンダムがビームライフルを連射して敵機を破壊していくが、同様に敵機もヴァントを次々と破壊していく。中でも厄介なのが敵のガンダムタイプで、チェーニ姉妹のガンダムの他にも特殊強化モデルの三人が乗るガンダムの姿もあった。

ヴァイダーも徐々に国連基地に接近しつつある。既に無数のブリッツファンネルを放出し、多くの機体を破壊しているヴァイダー。

その中で、ガーストのエスディアはバイラヴァーガンダムと交戦していた。ビームバズーカを放出し、バイラヴァーに攻撃を仕掛けるが敵機は素早い動きでこれを回避する。

「ち、やっぱり相手がガンダムタイプだからか……?いや、そんなのは関係無い!てか……ガンダムだらけじゃないか……デウス動乱時とは偉い違いだな……」

戦場を見わたせば、ガンダムタイプの機体の多さに驚くガースト。しかしバイラヴァーはそのような事など考えさせてくれない。

「そんな機体でガンダムが倒せるかよ。」

バイラヴァーのパイロット、シエル・ホーンドが挑発するようにガーストに言った。これを聞いたガーストは、まるで馬鹿にされた感覚を覚え、怒りを剥き出しにした。

「お前!!!エスディアをなめるんじゃねえ!」

「うるせえ。」

バイラヴァーは、ビームライフルをエスディアに対し連射を続けた。どうにかこれを避け、ビームバズーカを撃つのだが、これも回避される。

一進一退の攻防が続く中、敵の増援でデスペナルティが出現した。高速でエスディアに接近し、二重大鎌で切り裂こうとする。

「オラアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「なんだこいつ……!?く、気持ち悪い感覚が……さっきから感じるこの感覚、何なんだ……?」

デスペナルティ、バイラヴァーのパイロットは特殊強化モデル。彼等が放つプレッシャーはガーストを襲った。不愉快な感覚は彼の動きを抑制する。

「こ……こんなモンに負けるか!」

振り切ろうと、必死にエスディアを動かし、ビームバズーカを連射する。だが、必死の攻撃もむなしく、全て回避される。

彼を援護する為に二機のヴァントガンダムが援護射撃を行いつつ近付いてきた。しかし、デスペナルティの肩部のビームがこれらを一掃した。

「ははははは~!愉快痛快~!!!」

「こいつら……ど、どうかしてる……」

躊躇う様子もなく、ただ楽しいから人を殺すと言う悪意を彼は感じ取っていた。シンギュラ

ルタイプとしての感覚が、この二人の悪意を伝えてくれた。

しかしエスディア一機ではどうあがいてもこの気に勝てる見込みはない。どうしても、他にも頼るべき人間が必要なのだ。彼はこの苦しい状況を苦い表情で感じ取っていた。

 

 

 

アレンも敵機に攻撃を繰り返していた。彼の技量もあってか、量産機体はどうにか破壊することに成功している。しかし、敵機がガンダムタイプ等のエース機体となれば話が変わってくる。

「速い!?」

彼の前に現れたのは、リンセの乗るエクルヴィスガンダムだった。眼前に現れたかと思うと、すぐにデストロイウェブを放出してきた。すかさず回避するも、すぐにビームカノンを放出する。これはバリアーフィールドを張ることで防ぐことが出来たが、敵機の素早い動きに彼は苦戦していた。

「青い翼のガンダム……ああ、ロンドンで見たヤツだ!あの時は戦ってなかったんよねぇ。さてさてぇ、パイロットは……?」

好奇心で、リンセはブライティスのパイロットを確認する為に回線を繋ぎ、ウィンドウを確認した。そこに映っていたのは無論アレンである。

「へぇ!噂のアレン・レインドってイケメンじゃない!一目惚れかも!」

「な、何を!?」

言葉を言いつつも、リンセは迫ってくる。これを必死にアレンは避けるが、次々と繰り出すエクルヴィスの猛攻に彼は必死だった。やがて背中からブリッツファンネルを放出し、彼女に対して襲い掛かるのだがそれも無駄な事だった。エクルヴィスに備わっているサイコミュ感知システムがファンネルの動きをリンセに教えてくれる為、後はリンセの技量でこれらを回避していけば良い。つまり、軽々と無数のファンネルは避けられてしまった。

「避けられた!?シンギュラルタイプなのか!?けど……力を感じない。」

そう呟いた時、別の方向からもう一機、ガンダムが出現した。今度はヴェーチェルである。しかしヴェーチェルはネルソンのハルッグと交戦中の様子で、互いに撃ち合いを繰り返していた。それを見たアレンはすかさず援護する為にファンネルを射出。狙いは無論、フォリアの方である。

だがフォリアの機体にもサイコミュ感知システムは搭載されており、軽々とファンネルを避けることが出来た。更に、ヴェーチェルは避けつつビームウィップでアレンに攻撃を仕掛けてきた。これをビームセイバーで切り払うも、背後からエクルヴィスが隠し腕でブライティスの両腕部を掴み、身動きを取れないようにした。

「しまっ……!?」

両腕部が動けない状態では何もできない。この後、ヴェーチェルが対艦サーベルを持ってブライティスに迫ってくる。それを見たアレンはブライティスの腰部からブラスターファンネルを二つ射出。ビーム刃を展開して、対艦サーベルと拮抗し合う。

「まだファンネルが!?」

「けど動けないんじゃぁね。」

「フフ、確かにね。」

今、操れるファンネルはブラスターファンネル二基のみだ。その二基も対艦サーベルと打ち合いを行っている。つまり、彼は機体をまともに動かせない状態だった。そして背後からリンセはビームセイバーを繰り出し、突き刺そうとしていた。

 

                  バシュゥゥゥ

 

しかし、その攻撃はすぐに阻止される。ネルソンがロングビームライフルを放出してエクルヴィスにダメージを与えた為である。

「きゃあっ!?」

この攻撃が原因で慌てて隠し腕を離してしまい、ブライティスは、自由に動けるようになった。

「ネルソンさんですか!?」

「久し振りだな、アレン。元気そうだな。」

「はい……ありがとうございます。」

ネルソンとアレンが会話を交わしたのは地中海上で新生連邦と戦った時以来だった。レイはアレンの事を嫌っているが、ネルソンは別に彼の事を嫌っている訳ではない。その理由に、先程の会話が成り立っている。

「正直、新生連邦の平和国本部襲撃の時はさすがに私も君の行動はどうかと思った。しかしそれで人間を決めてしまうのはおかしい事だ。現に、今君と共に戦っている。正確には君たちと共にと言った方が良いか。結局は共闘している以上、敵対する必要等ないのだ。私は最初から君達の事を敵視しているつもりはない。」

オペレーション・デモリッション・クリエイションの際の事を言われたが、ネルソンはそれに対し、何も思っていない。今は味方ならば、それを信じるだけ。共闘してくれるのならば、それに頼るだけだ。

「ネルソンさん……すみません、俺……」

ガーストやレイの言葉が僅かに思い出されつつあった時に、ネルソンの言葉は有難いと思えた。それと同時に、自分はまだまだ未熟な存在だと悟っていた。

 

 

 

ガーストはバイラヴァーやデスペナルティと交戦を続けていた。強力なガンダムタイプ二機に、どうにか凌ぐことが出来るのは彼のずば抜けた技量の賜物である。

しかし、敵機の攻撃は激しさを増すばかり。たった一機で戦っている彼には非常に不利な状況が続く。その上敵から感じる特別なプレッシャーが、徐々に彼を苦しめている。

「クソッ……!こんなもんに負けられるか……!」

「ざまぁねえなぁ!ガンダムでもねぇ鉄屑MSでよーまぁ持ちこたえるねぇ!あぁ!?」

ニッカがそう挑発した時、ガーストは怒った。

「エスディアを馬鹿にするな!!」

「鉄屑が必死だなぁ!」

そう言った時、デスペナルティは二重大鎌を振り回し、エスディアに攻撃を仕掛けてきた。距離を空けて避けようとするエスディア。だが鎌の柄の先端部からのビームキャノンが更に追い込んでいく。

「クソ!」

距離を空けた後、ガーストはエスディアのバーニアの出力を上げ、は二重大鎌を掴んだ――

 

キシィン

 

しかし次の瞬間、デスペナルティのカメラアイが怪しく輝いた。

「隙ありだなァ!」

「なっ!?」

その瞬間、翼部からメガビーム砲を繰り出し、それをエスディアのコクピットに目掛けて放出した。二重大鎌の攻撃に目が行っていたガーストにこれを止めるすべはなく、この攻撃を直撃してしまった。

この攻撃により、ガーストは頭部から大量に出血してしまった。

「う……あぁ……」

モニターには何も映らず、エスディアはすでに機能していなかった。この一撃が強力だったのである。次の瞬間、機能を失ったエスディアは海に落ちて行き始めた。

この時点でガーストは敗北した。だが、バイラヴァーのパイロットであるシエルは、これに追い打ちを掛けるようにエスディアの元へ向かい、そのバーニアを展開し始めたのだ。

「念には念だ。殺す。」

ビームサーベルを展開し、あろう事か、エスディアに向けてそれを投げつけたのだ。それはコクピットに直撃しなかったものの、その歳の爆発がコクピットの中にいたガーストを傷つけた。

「っ……!」

既に重傷だったガーストは更に多量の出血をしてしまった。やがて意識を失い、目の前が暗くなっていく。この瞬間、エスディアは海に落ちた。ガーストは、特殊強化モデルの二人に敗北したのである。

そして、この瞬間をレイは見ていた。彼自身も別のMSと交戦中だったのだが、エスディアに追い打ちをかけるバイラヴァーの姿が目に焼き付き、衝撃を覚えた。

「ガー……ストさん……?そんな……!」

彼は見た。エスディアが、ビームサーベルが刺さったまま落ちていくのを。デスペナルティの時で既に大ダメージを負い、戦闘不能になっていたのに追撃を加えたバイラヴァー。彼が一番印象に残ったのはこの機体だ。この瞬間、激しい怒りが彼を包む。

 憎悪を感じる時、人の感情は極限になる。まるで頭に血が巡るような、感覚。怒りと言う感情で人は満ちた時、人の本能が目覚める――

 

 

―――――――――――――――――――ドクン――――――――――――――――――

 

 

レイの眼が深紅に染まった。今までにもあった、彼独特の現象である。この瞬間、彼以外のシンギュラルタイプやアドバンスドタイプの乗る機体に変化が見られた。全員、激しい頭痛を訴えていたのである。それと同時に謎の鼓動音を聞いていた。この瞬間、眼前に居た

デスペナルティとバイラヴァーのパイロット達が悶え始めたのだ。

「ぐ……おおお!?」

「こいつぁ……?」

謎の現象により、苦しむ両者。頭を抱え、身動きが取れない。

この間、レイは真紅の眼を光らせるように、バイラヴァーを探した。ガーストに対して追撃を仕掛けたその機体が、憎らしく見えたからだ。既に勝負はついていたのに追い打ちを掛けたこの機体のパイロットが、今のレイにとって心底憎く感じている。

この頃、既にデスペナルティは別の場所に移動しており、レイの眼中に映っていなかった。やがてバイラヴァーを見つけたレイは、早速追撃を開始。自分に迫って来ていると悟ったシエルは都市部へと逃げ始めた。入り組んでいる都市部に逃げれば大丈夫だと考えた為だろうか。だが、それでもレイは無言のまま追いかける。ガーストにとどめを刺した、許せない存在を。

「ちぃ……頭が痛い……!ふざけるな……!」

逃げつつも、バイラヴァーは左手部マニピュレーターに所持していたトリシューラランサーをツヴァイに投げつけた。が、軽々とそれは避けられ、高層ビルに直撃し、高層ビルの欠片が地上に落ちていった。

 

やがて高層ビルが両者を遮る壁のように連続して建造されているエリアに突入する。バイラヴァーはすぐに上空へ向かい、そこからツヴァイを奇襲する為に、バックパックのマニピュレーターを展開し、ビームライフルを所持し、連射した。

更にバイラヴァーは腹部からもビーム砲を繰り出し、徹底的にツヴァイを破壊しようと試みた。しかし全てこれらはバリアーフィールドで防がれ、無意味である。

「ちぃっ!」

引き続き逃亡を図るバイラヴァー。無論、その後を追うツヴァイ。この時にツヴァイはブリッツガンネルを射出し、バイラヴァーに襲わせた。

「……」

無言のまま、深紅の目をしたレイはファンネルをバイラヴァーに向かわせる。それに合わせるように、ツヴァイ自身のバーニアの出力も上げた。

ツヴァイのカメラアイは緑に輝いている。それは、まるで獲物を逃がすまいと懸命に睨んでいるようにも見えた。

しばらく追いかけていると、突如バイラヴァーが急停止し、ビームライフルを構えてツヴァイに向けて射出を始めた。急な攻撃だった為、バリアーフィールドを展開する余裕がなかったのだが、レイの技量のおかげか、攻撃を避けていく。バイラヴァーがしばらくビームライフルを撃っていると、ツヴァイのブリッツファンネルがバイラヴァーのビームライフルを貫いた。これにより、ビームライフルは爆発を起こして破壊される。

「ぐぅっ!」

突然の攻撃……しかも相手はファンネルと言うサイコミュ兵器を用いている。シエルは自分が圧倒的に不利な状況にある事を悟った。そしてしばらくし、再び逃亡を始める。無論レイもこれを追いかける。今、ダーウィン都市部で二機のガンダムによる激闘が繰り広げられていた。

背後から懸命にビームライフルを撃つツヴァイ。それを特殊強化モデルの技量で避けるバイラヴァー。両者とも、互いに譲らない技量で避けたり攻撃を加えたりと言った行為を続けている。

暫く進むと高層ビルが立ち塞がった。この為、バイラヴァーは逃げ場を失う。どうしようもなくなったバイラヴァーは迫ってくるツヴァイを見るなり、腰部からビームサーベルを展開し、そのまま接近戦を持ちかけてきた。

「ちぃ……死ね!」

ツヴァイは迫ってくるバイラヴァーに対し、メガビームセイバーを腰部から抜き、打ち合いを行った。その時、バイラヴァーは腹部からビームを高出力で放出した。至近距離だったが、左腕部を差し出してバリアーフィールドを展開し、防ぐ。機体は激しく揺れたが、ビームによるダメージは一切ない。

再びビームを撃とうとするが、今回の戦闘中に頻繁に撃ち過ぎたのか、ビーム粒子の残量が残っていなかった。肩部のビーム砲も使う事が出来ず、ビームサーベルのビーム刃も次第に縮小していく。こうなればバイラヴァーはもはや逃げるしかない。しかしそれをツヴァイはさせなかった。

「はああああ!」

真紅の眼をしたレイは突如掛け声をあげ、ファンネルを全て射出した。それらはビームの刃を展開し、一斉にバイラヴァーに襲い掛かる。上空へ逃げようとしたバイラヴァーはこのファンネルによってまず手部と脚部が串刺しにされ、やがて両脚部共に動けなくなり、最終的には機体の殆どが刺さる状態になった。

「しまっ――」

気付いた時にはもう遅かった。ブリッツファンネルがビーム刃を展開し、バイラヴァーのコクピットを狙っていたのだ。

 

ズバァァァッ

 

やがてそれは、バイラヴァーを貫くことに成功した。

 

「が……うあああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」

 

激しい断末魔を上げ、バイラヴァーのパイロットである特殊強化モデル、シエル・ホーンドは散った。ファンネル達がツヴァイの背部に戻って来た直後、バイラヴァーは爆発を起こし、完全に破壊された。これで敵のガンダムタイプによる脅威は一つ減ったことになる。

この時、レイは再び眼の色が戻った。彼はまたしても、敵を倒した手応えだけを感じていた。

「はぁ……はぁ……また……だ……何がどうなってるんだろう……」

二日前から感じる、自身の謎。光を放つといった事はないものの、この、謎の現象についても明らかになっていない。

「……駄目だ、今は集中だ……ガーストさん、死なないで……」

しかし今は戦闘中。その油断が命取りになりかねないと感じたレイはすぐに、その場所から離れ、戦場へ戻っていく。その傍で心配なのは、ガーストの安否であった。

 

 

 

バイラヴァーを撃墜した頃、遂にヴァイダーガンダムが出現。その凄まじい破壊力で次々と町を破壊しつつ、前進していく。巨体はファンネルを放出して国連の機体を破壊していく。

「クソッ!化け物め……!」

「冗談じゃない!近付いてもあれで破壊される……無理だ……あんなの、倒せるわけがねえ!……がああ!」

諦めを見せる国連兵士。その瞬間に彼等は殺された。

ヴァイダーの破壊行為を見て、アレンは焦りを覚えた。ジェノサイド・マシンが迫って来ている。このままでは危ないと感じた彼はチェーニ姉妹との交戦を一旦止め、迫るヴァイダーの方向へ向かった。が、姉妹は彼の進路を防ぐ。

「クッ!?」

「行かせないわよ、残念だけど!」

焦っていたアレンはすぐに反応し、ウイングからブリッツファンネルを展開、姉妹に向けて攻撃を開始した。が、姉妹のガンダムはこれらを軽やかに回避し、アレンのブライティスに向けてビーム砲撃を繰り返す。

やがてフォリアのヴェーチェルはバックパックから対艦サーベルを展開し、カメラアイを輝かせ、ブライティスに迫った。素早い動きでブライティスの眼前に現れ、対艦サーベルを振りかざそうとした時、ブライティスは片手でそれを防いだ。

「片手で防いだ!?」

「何も分からないのか!あの機体がどれだけ危険な存在かを!あの機体がロンドンの街を滅ぼしたんだぞ!それでどれだけの犠牲者が出たことか!それを何とも思わないのか!」

「その台詞、以前に可愛い坊やから聞いたことがあるわね。けどその時もこう答えた。命令だから仕方がないのよ!どれだけ多くの犠牲者が出ようが、どれだけ町が破壊されようが……そんなものは私達には関係のない話!私達はただ新生連邦の任務に従い、それを実行し、そうやって戦い抜いていく!命令に背けばそれは死を意味するの!死ぬのは誰だって嫌……だから戦うの!ただそれだけ……それだけなのよ!」

持論を展開して迫るフォリア。そこへ、リンセがエクルヴィスを使ってフォリアの援護を仕掛けてきた。デストロイウェブによる攻撃を行い、アレンはそれを素早く避ける。

「そう!お姉様の言う通り!結局人間ってそんなもの!自分達さえ良ければそれでいいの!だから私達も任務に従って、いつも生き抜いているの!そして生き抜いてお給料をもらって休日に買い物を楽しむ!それが幸福なんだから!」

「その無責任さが世界を悪い方向へ持って行くんだってどうして気付かないんだ!自分達さえ良ければ良い……その考えがどれだけ危険か何も分かっていない!」

「臭い台詞を!関係無いわ!私達にも生活がある!仮に地球が滅びようともコロニーで暮らしていけばいい!ただそれだけ……私達は私達さえよければそれでいい!あの巨大なガンダムがいくら暴れようが、私達には関係が無い!ただ自分達の目の前の敵を破壊していくのみ!」

「その考えは間違っている!その戦いに意味は無い!」

「貴方にそれを決める権利があって!?」

ヴァイダーの危険性を何も分かろうとしないチェーニ姉妹。彼女達の自分勝手な発言にアレンは怒りさえ覚えていた。その時、ネルソンがハルッグをMAの状態でチェーニ姉妹と交戦した。ビーム砲を撃ち、ヴェーチェルをアレンから離す。

「アレン、あのガンダムを止めるのだろう?私がこの二人を相手する!」

「ネルソンさん、感謝します!」

そう言ってアレンは急いでヴァイダーの方向へ向かった。が、フォリアはネルソンの存在を無視してアレンを追いかけることにした。一方、リンセはネルソンを倒す為に彼の前に立ち塞がった。

「おじ様!あんたの相手は私なんだからね!」

するとハルッグはMSに変形し、サーベルラックを腰部から展開した。モノアイを輝かせ、エクルヴィスに戦いを挑む。

「クールなおじ様だけど……生憎……私はあんたが大嫌いなのよね!!!」

約一年前、モントリオールを二人が強襲し、アインスと交戦してアインスを大破させた後、突如出現したネルソンのハルッグ。この時の屈辱がどうしても忘れられないフォリアとリンセ。怒りに燃える姉妹の内の妹だが、それでも脅威であることには変わりがない。

すると、エクルヴィスはデストロイウェブを連射してハルッグを狙った。どれもこれもハルッグは回避するが、敵機の動きが非常に素早い。その上追尾式のミサイルを展開するものだから、これらを全て避け切るのに精一杯だった。

「アハハ!逃げられるものなら逃げてみなよー!」

「ちぃっ……!」

舌打ちをし、相手の動きを捉えようとするネルソン。しかし、敵のガンダムタイプは想像以上に強力で、どのように対処をすれば良いか、分からないでいた。

 

 

 

アレンは、一人ヴァイダーの方向へ向かう。周りにいるヴァントもバズーカを持ってヴァイダーを攻撃するが、弾が届く前にヴァイダーの無数のブリッツファンネルが弾を跡形も消すので、実質ダメージが無い。大量のビームと大量のミサイルが国連軍を襲い、次々と破壊していく。

彼は急いだ。だが後ろではメガランチャーを構えているヴェーチェルの姿が見られる。背後からブライティスを破壊しようとしているのだ。

「沈めッ!」

すぐにメガランチャーは発射された。高出力のビームがアレンを襲う。しかしそれにすぐ気付いた彼はブライティスの手部を差し出し、バリアーフィールドを展開。それによってメガランチャーのビームを防ぐことに成功した。が、高出力の為、機体が激しく揺れる。

「くぅっ……MS単体にあれだけ武装を付けるなんて……。」

確かに、今のヴェーチェルは武装が非常に多い。が、それに負けまいとアレンも攻める。しかしヴァイダーが迫って来ている中、ヴェーチェルの相手ばかりはしていられない。

逃げつつも彼はブリッツファンネルを射出し、それをヴェーチェルと戦わせた。

ブライティスから射出されたファンネルは半円を描くように動き、ビーム粒子を発射するのだがヴェーチェルはビームシールドを使ってこれらを防ぐ。そして迫ってくるファンネルを、このビームシールドを使って破壊したのだ。その数二基。つまり、アレンは残りブリッツファンネルを六基持っている事になる。

「フフ、逃がすものですか。」

サイコミュによる攻撃は彼女には通じない。フォリアは強気になり、アレンを引き続き追跡する。

 

やがてヴァイダーに接近した頃、また新たな脅威が彼を襲って来た。アトミックガンダムである。デスペナルティとバイラヴァーはガーストと交戦していて姿を見せていたが、この機体だけは別行動をしていたようで、今更になってアレンの行く手を阻まんと、襲って来る。

「はぁーっはははは!青羽根!今日こそぶっ殺す!」

「核持ちのガンダム!邪魔をするな!」

そう言う彼の邪魔をするのも、アトミックの役目である。

今回の作戦はヴァイダーガンダムが中核担っている。つまりヴァイダーガンダムの機能さえ停止させれば新生連邦は負けも同然なのだ。その上アレン・レインドと言う名のエースパイロットの存在もあってか、彼を執拗にマークする機体の数は計り知れない。

現に、水上艦やマドラ級も彼を狙って一斉射撃を行ってきた。更に悪い事に、無数のエグゼマーが彼を狙って一斉に射撃を開始した。このビームの雨をバリアーフィールド等を駆使して回避するアレンだが、一機だけでは防御不足に陥りがちだ。

「完全に狙われている……!このままじゃ……!」

回避運動を試みながら、ヴァイダーへ接近を行うアレン。しかし更に、そこへデスペナルティが出現した。二重大鎌を持つ、黒い羽根を持ったガンダムと青いウイングを持ったガンダムが、この宙域に並んでいる状態となった。

「シエルが死んじまったんだよなああああ!!!てめえは憂さ晴らし!」

「またか……!ん……?死んだ……?誰かが倒したのか!?」

それは彼にとって朗報でもあった。厄介だった特殊強化モデルの乗る新生連邦のガンダム三機の内の一機が倒れたのだ。これは朗報以外に何もない。それを聞いた時、彼は自然に不思議な笑みを浮かべた。

しかし、敵の攻撃は激しい。無数のビームやミサイルの嵐がブライティス一機を襲う。

兵士達はアレンだけを狙い続けた。ひたすらにビームライフルを撃ち、容赦のない攻撃を続ける。更に攻撃を仕掛けるデスペナルティとアトミック。二重大鎌を振るった後、アトミックがビームランチャーで攻撃を仕掛ける。

ブライティスがこれらを回避するが、それでもお構いなしに、アトミックは迫ってくる。モノアイを怪しく輝かせ、ビームランチャーを連射してアレンを追いつめる。

「くぅ、攻撃が……これじゃああれに接近する事もできない……!」

更に悪いことに、ヴェーチェルの存在もあった。メガビームライフルでアレンを容赦なく窮地に追い込む。

「死になさい!アレン・レインド!」

接近戦を試みたのか、ビームウィップを二つ装備し、アレンに迫る。やがてビームウィップはブライティスの左前腕部にダメージを与えた。

「しまっ……くぅ、ガンダムタイプが一度に三機……そして大量の機体……その上戦艦がこちらを狙って来ている……このままじゃやられるのを待つだけだ……一人で突破するのは難しいか……?」

アドバンスドタイプであるアレン。だが、この状況ではさすがの彼でも厳しい。その間にも、アトミックやデスペナルティはビームを連射し、アレンに迫ってくる。バリアーフィールドは片腕部しか展開できないので、別方向の物はビームシールドを展開して防ぐしかない。

その上、エグゼマーやジョゼフは実弾攻撃による射撃を開始した。実弾兵器を防ぐにはビームシールドしかない。だがそれが多数だと避け切るのに非常に苦労する。不覚にも、ミサイルは肩部に直撃してしまった。

「あううっ……!ク、援護を……誰か……!」

そうは行っても、他の国連のパイロットは基地防衛やヴァイダーへの攻撃の為にアレンの援護が出来ない状態だった。危機的状況が、アレンを襲う。

 

 

ピシュンッ ピシュンッ

 

しかしその時である。突如、十八基のファンネルがこの実弾の嵐の半数以上を一斉射撃によって壊滅させた。その無数のビームが放たれた場所をアレンは目で追う。そこには、ツヴァイの姿があった。

「レイか!」

「アレンさん……敵が多いです、協力します!」

アレンに対しては彼も、複雑な心境ではあった。以前に攻撃を受けた事があった為である。だが、この状況で彼の援護をしないのはおかしいと、考えていたのだ。

 二日前にレイはアレンとジャンヌに助けられた。その恩もある。だがそれだけでない。レイ自身が、彼が苦戦している姿を見ていられないと、感じ取っていたのだ。

「助かる!ありがとう!」

感謝するアレン。しかし、その時に無数のビームが放出されるのを確認し、急いで回避行動に移った。避けきれない分は、バリアーフィールドジェネレーターを用いて防御する。

 ヴァイダーガンダムが、ブリッツファンネルを駆使して遠隔攻撃を行ってきたのだ。これらによる攻撃を回避しつつ、敵機体を一機ずつ、破壊していくツヴァイとブライティス。

「クッ!レイ、こいつらをやれるか!?」

「多分……ですけど!」

「ヴァイダーガンダムは俺が倒す!レイ、アシストしてくれ!邪魔をする敵は多いけど、そのガンダムならなんとかなる筈だ!」

そこに確証はない。いつしかツヴァイが作戦の中核を担う機体であった筈なのだが、破壊に失敗したが故に、ヴァイダーガンダムの猛攻は続いている状態だ。

 ツヴァイは広範囲による砲撃を得意とする。ブリッツファンネルがその役割を成す。ブライティスは被弾している影響もあり、ファンネルの数が少ない状態だった。そうとなれば、迫る大軍を相手にするのはツヴァイの方が、分がある。

「はい、何とか!」

ツヴァイはカメラアイを輝かせ、ブライティスがヴァイダーの元へ向かうアレンを援護し始めた。しかし敵の数はやはり多い。その上敵にはガンダムタイプが三機も存在している。いくら彼の技量があっても、これらを相手にするのは難しいと言える。

「やはり戦場で死ぬのが本望かしら、レイ?」

「フォリアさん……!」

攻撃の中で、フォリアがレイに言った。ホテルの一室で彼を殺そうとした女が、今度は戦場で襲い掛かる。

「ああ、可愛いレイ!貴方に対しての感情がごちゃごちゃよ!もっと痛めつけたい!もっと苦しめたい!もっと愛し合いたい!好きだわ、レイ!不思議ね!貴方といると気持ちの整理がつかなくなる!」

狂気とも言える発言。それに負けじと、レイは抵抗する。

「この人は!」

自分を殺そうとした女を許せる筈がない。レイ自身も、死なない為にも彼女と戦う。

「貴方の放った妙な光は何なのかしらね!やはり貴方は普通の人間じゃない!そこが、魅力なのよ!!!」

「!!」

レイは、この発言によって一瞬迷いが生じた。

 あの時に放たれた光は何なのか、その正体が分からない。それに苦悩している、レイ。その上で放たれた、彼女の発言……

 

―――――――――――やはり貴方は普通の人間じゃない――――――――――――――

 

怖いとさえ、感じた。自らが何者なのかも分かっていない状態で、不安を煽る、フォリア。

「言葉で迷うなんてね!」

「ハッ!?」

その油断を突いたのか、ヴェーチェルのビームウィップが迫ってきた。しなるビーム粒子は、機体を切除するのに十分な破壊力を秘めていると言える。

 

バヂィィィ

 

すぐに、レイはメガビームセイバーを展開して対応。互いのビーム刃同士が弾けた。

 

ドオオオオッ

 

しかし、それの邪魔をするのがアトミックやデスペナルティである。先程までアレンを狙っていた二機のガンダムが、ターゲットをレイに変更したのだ。

「てめえだなぁ!てめぇがシエルを殺したんだろうが!」

ニッカが怒っている。この時、レイは彼等にも人情があると言う事を実感した。

(この人達……強化モデルはあくまでも人工のシンギュラルタイプだと考えれば……同じシンギュラルタイプの死とかは感じ取れる……仲間意識はあるんだ……けど……結局は強化モデルとしてしか、戦うしか出来ない……こんなのって……)

彼等にも、人情はある。それがレイには驚きと同時に恐ろしく感じられた。強化モデルとは言え、やはり人間なのだ。そう思うと戦い辛く感じられた。しかし敵は待ってくれない。そして、彼は自分自身を守るためにも戦わなくてはならない。

「クソ野郎!死ね!!」

「僕だって、死にたくない!」

多くの敵が迫る中で、レイは懸命に反抗する。自身の謎も去る事ながら、今は身を守る為に戦うのだ。

「いいえ、貴方は死ぬの。ここで……!」

「嫌だ!死ぬなんて……死にたくない!僕自身が、分かっていないのに!」

そうだ。死ねるものか。自分自身が何者なのかも分からないのに、死ねる筈がない。そして、負けられる筈がない。

「贅沢を言うのね……生きたくても死んでしまった人間なんて数多くいるのに!そして貴方の年になるまでにどれだけの子が死んでいったか!戦争に巻き込まれたと言うのもあるけど、それ以外にも様々な病魔に侵されて死んだりした子だっている!みんな生きたかった!でも死んだ!貴方もその仲間にしてあげる!私の手で愛しい貴方を殺してあげる!」

すると、ヴェーチェルはメガランチャーを展開し、ツヴァイに向けて射出した。急いでバリアーフィールドを展開してこれを防ぐ。が、アトミックが次にMAに変形してヘビーマシンガンを撃ってきた。急いで避けた後、今度はデスペナルティがビーム砲を放出してくる。これらの砲撃を、ビームシールドで防ぐ。

「ダメだ、やっぱり一人じゃこれは……!」

このガンダム達の猛攻に加え、他にもエグゼマー等がツヴァイを狙っている。幸いアレンを追うMSも一定数存在した為、その対抗する数はアレンの時よりは多くないと、言えた。

しかしその時、ツヴァイに迫ろうとしていたヴェーチェルに対し、アトミックがビームランチャーを射出したのだ。急いでビームシールドで防ぐヴェーチェル。突然の意味不明な攻撃に彼女は焦りを覚えていた。

「何なの!?味方を撃つなんて……!?」

「うっせえんだよクズ女がよぉ。さっきからイライラしてたんだよなぁ!その白いのは俺の獲物!邪魔すんじゃねえ!」

「く、所詮強化モデル……単純思考の分際で!」

それはシエルの敵討ちなのかは定かではなかったが、フォリアにとっては不快な事に変わりはない。だからと言って味方機を攻撃するわけにはいかない。悔しくも、彼女はアトミックがツヴァイに攻撃を仕掛けている間は何も出来ないと、判断した。

 

 

 

その一方で、ツヴァイが囮になってくれている為に、ブライティスはヴァイダーに接近する事が出来た。バーニアの出力を上げ、ヴァイダーの背後に回る。が、ヴァイダーの背後に回っても、コンテナから展開される追尾ミサイル攻撃がアレンを襲う。周辺にいるエグゼマーやジョゼフの姿も厄介だ。

アレンはこれらをビームライフルや、ウイングのビーム砲で蹴散らして行き、ファンネルを全て展開してヴァイダーに攻撃を仕掛けた。

「中に乗っているのはあの少女に違いない……!クソ、どうしてこんな……」

ブリッツファンネルやブラスターファンネルを全て、ビーム刃に形状を変化させ、一斉に攻撃を加えようとするブライティス。しかしそれをヴァイダーは許さなかった。反撃するようにブリッツファンネルを展開し、ブライティスに襲い掛かる。

「くぅっ!」

大型で、尚且つ高出力のビームを放出する無数のファンネルを慎重に回避して、近付くチャンスを伺う。だが攻撃は増すばかりで、近づくことすらままならない。その間にもヴァイダーは一歩ずつ、確実に国連の基地に迫って来ている。

ヴァイダーは、指から合計十門のビーム砲や、腹部の高出力のビーム砲など、破壊力を持つ兵器をふんだんに使用し、破壊の限りを尽くす。巨体が一歩一歩確実に国連へ迫って来ている。早くこの機体を破壊しなければならない。アレンは焦燥を感じていた。

だが、その焦りは自分を死へ追い遣るのと同じ事だとは分かっていた。増してやこの巨体が眼前にいる状態では、いつ破壊されてもおかしくない。

戸惑っている一方で、ヴァントガンダムが次々と葬り去られている。それを見た時、彼は行動を開始した。じっとしていれば、味方がやられていく一方である。自分が行動しなければならないと、彼は悟っていた。とは言え、攻撃を加えたところでヴァイダーの頑丈な装甲には大したダメージにもならない。どうすれば良いかと考えた時、彼はただ物理的に攻撃を加えるだけでは駄目だと考えた。

「イチかバチか……言葉で言ってみるしか……!」

アレンは賭けに出た。リノアスを説得しようと試みたのだ。以前、声を掛けた時に彼女は反応した。彼女自身に、もし意思が残っているのなら――可能性はあるかも知れない。

やがてヴァイダーの前に現れ、アレンは回線を開いた。しかし、何故だろうか。モニターが映らない。一体、どういう事なのか。

(どういう事だ?反応がない?)

回線に反応しない、リノアス。違和感を覚えていたアレンは、以前、彼女から感じていた感覚を思い出した。

 それは、白く彩られた空間で、両者共に裸で対話をしている場所。彼はリノアスと、その時に会話をした。それが、彼女の意思だと感じていたのだ。だが、今回は彼女の声が聞こえない。少女の甲高く、どこか静かな声が、聞こえないのだ。

 違和感は、あった。だがアレンは諦める訳には行かない。無駄かも知れないが、せめて声を掛ける事は出来る。アレンは、音声回線を繋ぎ、ヴァイダーに対して声を掛けた。

「こんな事をしてどうなる!?君は戦う必要なんてない!君は感情を欲していた筈だろう!?この行為は感情とは関係ない!無意味だ!軍の言いなりになって、何になる!?」

以前は、会話が出来た。だが今回はそれすらもままならない。無言で、無表情で、ただ前進する。そして破壊の限りを尽くす。

更にあろう事か、その攻撃対象はヴァントガンダムに留まっていなかった。なんと、自軍のMSをも巻き添えにしているのだ。最早、彼女は無差別に破壊を行うただの人形と化していた。敵味方の識別すら、出来ていない。ただ、目の前に居る存在を排除する、存在と化している、ヴァイダーガンダム。この機体を残しておくことは、極めて危険だ。

 

 

 

ブライティスとヴァイダーが交戦している中、アレンの行動をあざ笑うフークの姿が新生連邦基地にあった。ヴァイダーの周囲を回り、懸命に説得しようとしているアレンの姿が彼にとって無駄な努力に見えたのだ。

「あの青い羽根のガンダム……やはりリノアスの前に現れたな。説得のつもりだろうが……」

幾度も、アレンによって苦汁を飲まされて来た事を思い返すフーク。その度にリノアスは苦しんでいた。何度も調整を行っても、感情を欲する彼女の欲がフークの思い通りに行かない事が多々、あった。ブライティスガンダムは、フークにとって忌むべき存在として、認識しているのである。

「無駄だよ!彼女は“人”を捨てたのだからな。今の“彼女”が一番理想の強化モデルと言えるだろう。クク……」

人を捨てた?何を示しているのか。人を捨てるというのは、どういう事か。

その傍で、兵士がモニターを見て何かを観測している様子だった。それはリノアスの脳波を観測しており、彼女の現在の生体データを見ていた。

「彼女の“脳波”に異常値は認めません。順調に活動を行っています。」

「そうか、クク、やはり人を捨てた事は正解だったな。今のリノアスは完全な戦闘マシーン。何も喋らず、ただ破壊行為を行う。誰の言うことも聞かない。ただし、私の言うこと以外は。」

ヴァイダーの破壊行為を、ただ笑ってみているフーク。無差別に味方機体も破壊されているというのに、それに見向きもしていないのだ。

人を道具としか見ていない男、フーク。この時代に限らず、デウス動乱時代にも強化モデルと呼ばれる人間は存在しており、いつも強化モデルを監視する人間はこの男のような冷酷な人間が多い。それに該当する人間の中に、今は亡き元アーステクノロジー社長のスルース・ディアンの存在があった。

「アーステクノロジーのディアン社長が謎の死を遂げたと聞く。強化モデルの研究機関所長の彼だったが、その意志は私が継いで行こう。今の彼女は、私が完璧に扱う事が出来ているからな!」

強化モデルと呼ばれる人種は、その主や目的遂行の為に、自らの意思を無くしている存在ばかりだ。命令には絶対服従。何らかのイレギュラーすら、許されない。

 リノアスの場合は特別だった。アレンが干渉する事で、イレギュラーが生じた。感情を欲していた彼女は、感情を求めてアレンと接触をしていった。

 だが今の彼女に、それは聞こえない。ジェノサイド・マシンとなっているヴァイダーガンダムを、ただ、動かしているだけなのだ。

 

 

 

ヴァイダーは確実に、国連の基地に接近し続けている、その間にも無差別の破壊行為を続けていた。ヴァイダーから放たれる凄まじいビームの雨。指や腹部やファンネル等、あらゆるビームが戦場に降り注ぐ。これらを防ぐ方法は、果たしてあるのだろうか。延々と続く容赦のない攻撃は、接近する者を容赦なく消し去っていく。

 

バヂィィィ

 

しかしこの時、アレンはヴァイダーから異常音を聞き取っていた。ヴァイダーに懸命に攻撃を加えるアレンは、この音を聞き逃さなかった。僅かではあるが、何かが破損しているような、音。

(なんだ……どうしてこんな音が……何かあるのか……?)

そう考えている間に、ヴァイダーはファンネルを放出してアレンを襲う。彼はこのファンネルの動きを見切り、ビームライフルで二基を撃ち抜いた。だが、別のファンネルが彼を襲う。

「クソッ……これじゃあ……一度引くしかない……」

ビーム砲撃が激しく、ブライティスはバーニアを駆使し、一度引くことにした。

が、ファンネルは容赦のない攻撃を加え続けてくる。バリアーフィールドを展開しようにも、ビームライフルを所持している為、右腕部が防がれているので展開する事が出来ない。左側は損傷している状態であり、ビーム自体を防ぐ事は難しい。従って、これらの攻撃を回避するしか、対処法がないのだ。

(気になるのはあの音……ヴァイダーに何かが起こっているのは間違いない……それは断言できる。チャンスかもしれない。これは……)

ジェノサイド・マシンを打開するチャンスだと考えたアレンは、一度後退し、様子を見る事にした。異常音が聞こえている状態でも、ヴァイダーは攻撃の手を緩めない。ただ、敵機体を無差別に破壊するだけだ。

 

 

 

地上では激戦が繰り広げられている最中、水中でもスバキが激闘を繰り広げていた。強化型ディープシーに乗っているルーボが手強く、ようやく水中に慣れたばかりのスバキでは手に負えない状態だったのだ。

しかも水中には潜水艦もいる。たった一人でこれらを相手にするのは、まず不可能と思えた。

「いつまで逃げられるか!?どうせ無理だ、もう諦めたら?」

「だ、ダメだ……こんな……いや、まだ諦めるもんか!」

彼女はまだ諦めなかった。アクアバズーカを射出してディープシーにダメージを与えようとするが、避けられてしまう。

しかも運の悪いことに、バズーカの弾が無くなってしまったのだ。それも予備の弾薬も全て。つまり、使い物にならなくなってしまった。

「しまった……けどまだ武器はある……」

そう言ってアクアグレネードを発射しようと試みた。しかし、発射されない。弾切れなのだ。それならば魚雷を使用しようとするが、それも発射されない。つまり、彼女は頭部機関砲

以外の実弾兵器を全て使い果たしてしまったのだ。焦るスバキ。

その間にもルーボは迫ってくる。背中のキャノンから弾を発射した。その素早い動きはア

インスのコクピットを狙っていた。シールドも持たず、自分を守るものが無いアインスはこの攻撃を防ぐ術がなかった。

 

ピキィィィ

 

彼女の頭の中で電流が流れ、迫るその弾のスピードが、遅く見えた。シンギュラルタイプ特有の現象が、彼女を救ったと言えた。

「な……見える!見えるぞ!」

喜びに満ちた笑顔でこの弾の攻撃を避ける。絶対に直撃すると思われた攻撃が回避された様子を見て、ルーボは焦りを感じていた。

「馬鹿な!?今のは避け切れないはず!?クソッ!ならば!」

すると、ルーボのディープシーは接近戦を試みたのか、ビームランスを展開し、迫った。そのまま、海中にてバーニアの出力を上げてアインスに近づく。

スバキがこの動きに気付いたのは、ディープシーが眼前に現れた時だった。

「しまっ……!?」

「終わったな、今度こそ最後だ!」

ビームランスを突き刺そうとするディープシー。しかし、スバキはこの時再びこの動きが緩慢に見えたのである。

動きさえ読めればこちらのものだ。急いでこれを回避し、ビームサーベルラックを抜く。そして――

「やあああっ!」

そのままルーボのディープシーのコクピットに直撃させたのだ。

 

「ぐうおおっ!?」

 

この直後、ディープシーは爆発した。辛うじて、彼女はルーボを倒すことが出来たのだ。しかしこの後が厄介である。水中にはまだ潜水艦の存在がある。だが、弾の補給をする必要があると悟った彼女は一度地上に上がる事にした。幸いルーボを倒した後、敵機の存在は見られなかった。

 




第六十九話、投了。
ジェノサイド・マシン、ヴァイダーガンダムを巡る戦い。その中で様々な人間達が戦って行く――
今回で新生連邦の特殊強化モデルの一人、シエル・ホーンドが散りましたね。合唱。
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