機動戦士ガンダム Living Days   作:すからぁ

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乱入して来たデスゲイズは、セイントバードをビーム砲で撃ち抜く。戦場は更に混沌を極めつつあった――


第七十九話 セイントバード轟沈

 アレンと総司令が戦っている時、総司令に情報が伝えられた。突如出現したMSはセイントバードを破壊した後、六機のMSを一瞬の内に破壊したという情報である。それを聞いた総司令は、猛威を振るっているMSが出現したと言う場所へ向かう事にした。それを追いかけようとするアレン。だが、その背後にはアーヴァインがモノアイを輝かせ、背後からビームライフルを撃って邪魔をする。

「戦えよ!俺と……」

「邪魔をするな!」

「邪魔者扱いだと……舐めてるのか、お前……!」

アレンの一言で怒りを覚えたダウーラは握り拳を作り、コクピット内を思い切り殴った。そのボタンは実弾キャノンを発射するボタンであり、ダウーラの行動によってそれは発射されるが、ブライティスは素早く避け、そのままナパームの後を追いかける。

「つまらんな、逃げられると……」

そんなアーヴァインの後方では、国連のMSを次々と殲滅しているニッカとハーディの搭乗するガンダムの姿が見られた。この二人も突如現れた謎のMSの存在に気付いており、〝面白そう〟という理由で出現したとされるポイントへ向かっていく。

 

 

 

デスゲイズは猛威を振るっていた。国連、新生連邦関係無しに、無差別に有線式ビームサーベルを展開しては、次々とMSを破壊していく。

「そんなMSで大丈夫か?大丈夫だ、問題無い訳ねーよなァ!!尽く無双されてんモンなァ!俺にさァ!」

暴れ回るメイド。猛威を奮っている彼に対し、一機のMSが果敢にも挑んでいく。それは、クラリスの乗るグランシェだった。

「貴様ぁ!!!何のつもりだ!!!」

戦場を混乱させる存在として現れたメイドに、怒りを隠せないクラリス。そんな彼に対してメイドは馬鹿にするように言った。

「うっせえよデク人形!強化モデルのおもちゃがぬけぬけと抜かしてんじゃねーんだよォ!!!ハハー!!」

「俺が強化モデルだと分かるのか!?」

「おーよ!オカルトパワー持ってるからな!お前みたいなタイピカル強化モデルなんざ嫌でも分かンだよ!!!お前、なんか恨みを抱えてるみたいだなァ!!」

そう言って彼が不気味な笑みを浮かべた後、デスゲイズは両手を組み、両前腕部に備え付けられている二連装ビームキャノンを連射する。クラリスの乗るグランシェはこれらを全て大型シールドで防ぎ、お返しと言わんばかりに、シールドからビーム砲を展開した。しかしデスゲイズにはこの攻撃は一切通用しなかった。

「奴にもバリアーフィールドが!?」

「アホが!話にもならねえぜ!そんな雑魚MSで俺に喧嘩売るってのがアホもいいとこなんだよ!性能差も分かんねえの?MSに乗ってる軍人さんとしちゃあさァ、

それってどうよ?えぇ!?どうなのよォ!?」

 

ギュルルルルル

 

メイドがそう言った直後、デスゲイズは有線式ビームサーベルを展開し、六本全てをクラリスのグランシェに向かわせた。素早い動きはクラリスを的確にとらえ、貫こうとする。

「クソ!早い!?」

「てめえがッくたばるまで追いかけるのをやめないッ!!」

六本のビームサーベルはクラリスを襲う。彼がいくら逃げても、メイドのシンギュラルタイプ能力が追尾を容易にさせた。

しかしその時、別のMSがデスゲイズに攻撃を加えた。シーアの乗るグランシェである。

シュート・シューターでデスゲイズを狙ったのだが、それに気付いたメイドは有線を前腕部へ戻し、そこからMAに変形し、背部のガトリング砲でこれらを撃ち落とした。

「中尉をやらせるか!」

「シーアか!悪い!」

シーアの乗るグランシェがクラリスを助けたのだ。上官である彼を見捨てるわけにはいかないと判断したシーア。だが、相手は凶悪なMSに乗っている、凶悪なMSパイロットである。しかしMS見たさで動いている彼は、メイドのMSがどのようなMS何かに興味を抱いていた。

「仲間か……ハッ!」

「突然現れた時は驚いたけどさ……凄いMSに乗っているんだね……凄いや、そんなMS見た事が無い。」

「そうかい……ところで、俺の武器を見てくれ。こいつをどう思う?」

そう言って、デスゲイズは再びMSに変形した後、腹部からメガビームカノンを放出した。それに気付いたシーアは急いで回避運動を行う。この威力では、シールドを構えてもシールドが持たないと判断した為である。

「クッ……なかなか……」

「おいおい、そこは〝凄く……大きいです……〟だろうが!ノリ悪りぃなァオイィ!」

次に、デスゲイズは肩部からミサイルを発射した。更に有線式ビームサーベルを展開し、グランシェを襲う。グランシェはミサイルを回避し、ビームサーベルを展開して有線式ビームサーベルの線部を切り裂こうとするが、あまりに素早い動きを行うビームサーベルに、対応できなかった。

「まずい!これは冗談抜きで……!」

「ハハー!こいつぁ逃げられねえだろ!死ねボケェェェ!!」

ビームサーベルがシーアを襲う。だが素早い動きで迫ってくるこの攻撃に、グランシェの機動性が追い付かず、シーアは追い込まれてしまった。

しかし、その時。一筋のビームがデスゲイズを狙った。バリアーフィールドで防がれてしまうが、その攻撃のおかげでシーアは助かった。と言うのも、メイドの視線がグランシェでなく、ビームを撃った機体へと向けられた為である。

「ん?どこの馬の骨よ?俺に挑んでくる挑戦者は?」

ビームを撃っていたのはエファンの乗るカーティウスであった。デスゲイズに接近すると同時に、シーアに連絡する。

「なかなか手強そうだな。グランシェでは勝てない機体に見える。この機体は私が引き受ける。この場から去れ。」

「感謝します、少佐!」

間一髪助かったシーアは、エファンの言う通りその場から去った。デスゲイズが戦う次なる相手は、アドバンスドタイプの能力を持つエファン・ドゥーリアである。

暇潰しの為に戦場を荒らすメイドと、最強の力を持つエファンの対決が今始まろうとしていた。

「随分面白そうな機体に乗っているな。」

エファンがそう言った後、メイドが言う。

「てめーこそ随分格好良いMSに乗ってるじゃねえかァ。さっきの逃げ出したヘタレよりは強いんだろうな?」

エファンは笑みを浮かべた後、言葉を発する。

「ああ。お前よりも遥かにな」

その時、メイドは大笑いした。

「ハハハハハ!!!おーっほほほほ!!!ひーひっひひひひ!!!どーいうことだァ!?まるで意味が分からんぞ!」

だが彼はただ笑った訳ではない。その際に有線式ビームサーベルを展開してカーティウスに襲い掛かった。そしてMAに変形し、バックパックの先端部分からビーム砲を連射する。そして、左右の手形のマニピュレーターを組ませ、両前腕部の二連装ビームキャノンからもビームを発射し、これらのビームの雨と有線式ビームサーベルでカーティウスに襲い掛かった。

だが、ビーム兵器は全てカーティウスの前腕部に備え付けられているバリアーフィールドで防がれ、その上ビームサーベルも全て回避される。異常な動きをするカーティウスの姿に、いつの間にかメイドも笑みを消していた。

「どうやらビッグマウスはガチみてえだな。こいつぁ確かに強いかも知れねえなァ!」

強敵の存在に、メイドは歓喜していた。その時にエファンはメイドに対して言った。

「暇潰しに来たつもりだろうが、相手が悪いな。お前では私に勝つ事は不可能だ。」

「おいおい、なんでお前俺の考えてる事が分かったんだよ?透視能力持ち!?まさかのチート!?訳が分からないよ!そんな力があるなら、因果律そのものに対する反逆だぁ!ってなぁ!!!」

「フン……私はお前よりも上位の存在……アドバンスドタイプだ。お前の考えていることなど分かる。心が読めるからな。」

「ほぉ~!はっはははははは!面白ぇのなお前!ネタとしては面白ぇぞ!」

「ほぅ、気味悪く思わないのか?化け物だと思わないのか?」

「面白れェにきまってんじゃねーかよぉぉ!そんな漫画設定な野郎なんてさぁ!その設定、女の子だったら需要あったかも知れねぇケド男じゃあなァ!!!」

そう言ってデスゲイズは前腕部のビームキャノンをカーティウスに撃った。それを素早く回避したカーティウスはカメラアイを輝かせ、ビームサーベルを横腰部から抜いた。そして、デスゲイズに対して切り掛かる。

「ハハハ!俺に接近戦を持ちかけるのは自殺したいって言ってるようなもんじゃねえかよ!透視能力持ちの面白れェスーパーマンさんよォ!!!」

そう言って再び有線式ビームサーベルを六本展開し、カーティウスに襲い掛かる。その上、デスゲイズはデス・ランチャーを展開し、メイドはエファンの乗るカーティスを消滅させようと考えていた。

「往生しやがれェェェェェ!」

 

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 

エネルギーが溜められ、デス・ランチャーは発射された。直撃すればカーティウスと言えど、機体の形状が保たれる筈が無い。

だが、エファンはこの攻撃が来るのを分かっていたかのように、すぐに回避し、バーニアの出力を挙げてデスゲイズに接近し、右脚足底部のクローアームをデスゲイズのウイングに食い込ませた。

「なっ、早えぇ!?」

「この程度か、残念だよ!」

すぐに足底部からビームが発射された。デスゲイズのウイングは融解し、破壊されてしまった。この後でデスゲイズはMS形態に変形する。

「ハハハハハ!お前手応えあるな!無双は難しいな!」

エファンの技量を認めたメイドは更なる攻撃を加えていく。だが、いずれもカーティウスはこれらを回避しては接近戦を試みる為に何度もビームサーベルで切り裂こうとしていた。

「てめえが俺の人殺しギネス記録を阻止することになる可能性があるかもな!なかなかやるじゃねえか!俺の人殺しギネス記録阻止ハッピーバースデー!ってかァ!?」

「お前の話に興味は無いな。」

「ハハー!興味ねーのかよ!お前の攻撃なんざ、もう、何も怖くねーのよォ!」

強敵の存在に、テンションが上がるメイド。だが一方でエファンは冷静な様子を保っていた。再び有線式ビームサーベルを展開するメイド。だが、この攻撃は最早カーティウスには通じない。彼がこの攻撃を展開するたびに、動きを見切っているエファンは回避運動を続ける。

「何度同じ攻撃をする気だ?無駄だと言う事が分からないのか。実力者かと思ったが残念だよ。ワンパターンな攻撃は話にならない。」

「ハハー!ワンパターンは嫌いかよ!」

すると、デスゲイズは突如攻撃を止めた。モノアイが消え、有線式ビームサーベルを展開したまま空中に浮いている。疑問に感じたエファンだったが、それに臆することなく接近し、再び右脚足底部のクローを今度は腹部に食い込ませた。

「フン、終わりだ。死ね。」

そして、足底部からビーム砲が発射されようとしていた。しかしその時であった。

 

ビゴォン

 

突如、デスゲイズはモノアイを輝かせたのだ。それと同時に、左右の二連装ビームキャノンがカーティウスの右脚部を撃ち抜いたのだ。バリアーフィールドが前腕部にしかないと言う事を利用しての戦法だった。

「ところがである!その時であった!俺はお前の攻撃を見切っていた!圧倒的残念!!」

カーティウスは右脚部を破壊された状態で一度後方へ下がった。急な攻撃にエファンはやや動揺している様子だった。

(ん……)

動揺しつつも、前腕部のビームキャノンを撃つ。だがそれはデスゲイズの全方位に備え付けられているバリアーフィールドジェネレーターが弾いた。

「てめえ明らかに焦ってんじゃねーかよォ!!」

デスゲイズはモノアイを輝かせ、再び有線式ビームサーベルを展開し、カーティウスに襲い掛かった。だがカーティウスはこれらを再び回避し続ける。カーティウスがこれらを回避している間、周辺にいたハイエッジやジョゼフが串刺しになり、破壊されていく。

「ところでお前、アドバンスドタイプなんよな?そんな実力で本気で戦う気あんのかよ?」

「……ああ、油断したが……な。まあ、本気だよ。私はな。なかなかやるじゃないか、思ったよりは……」

この言葉に対し、メイドは眉をぴくぴくと動かした。その次に彼は大声で言った。

「嘘だッ!!!分かんだよ……お前が嘘吐いてるぐらいなァ!ガチで戦えよ!つまんねーヤツ!!お前ってほんとバカ!!!」

「フン……気付いていたとは……少しはやるな。」

実際、エファンは手を抜いていた。メイドの罠にわざと掛かったのだ。メイドはこの男が罠に掛かった事で、言葉では喜んでいた彼だが、内心では疑問に感じていたのだ。

「やっぱわざとか!てめえ本気で戦争する気ねえだろ!!!」

「暇潰しで戦場に介入するような男だ。相当な実力者かどうか確認しただけだ。」

「こいつホンマアホ!なんか気取ってやがるし!!気取ってんじゃねーよクソッタレ!」

「黙れ。お前にとって戦争は遊びか?変態が……」

エファンの言葉に対し、メイドは言った。

「仮に変態だったとしても、変態と言う名の紳士だよ!」

そう言った直後に再びデスゲイズは動き出す。そして有線式ビームサーベルを展開しようとした――その時。

「ん……?」

メイドの眼に一機の白いMSの姿が映った。それはツヴァイガンダムであり、新生連邦本部に向かっている最中であった。それを見たメイドは舌を舐め回し、カーティウスへの攻撃を止め、機体をツヴァイの方向へ向かわせた。それは、標的をカーティウスからツヴァイへと変えた瞬間であった。

「どこへ行く気だ?」

「お前の相手は飽きた。それよりも面白い奴がいるんだよ!!!俺の為に死んでくれる気になったら、いつでも相手してやんぜ!じゃーね!ハハー!」

デスゲイズはMAに変形し、途中まで戦っていたカーティウスを放置し、ツヴァイの方向へ向かった。今、レイに危機が訪れようとしていた。

(あのクソガキ……生きてやがったか!久しぶりに面を拝ませてもらうぜぇ……!)

デスゲイズの後姿を見たエファンは、呆れた様子で言った。

「意味が分からないパイロットだが……フン、まあいい……」

そして、カーティウスは本部の方向へ向かう。危機的状況に陥っている新生連邦本部を守る為である。

 

 

 

メイドがクラリスやシーアやエファンと戦う前、レイは撃ち抜かれたセイントバードに近付いていた。その光景を目の当たりにしていたレイは急いでセイントバードへ向かう。その途中、襲って来るMSは全てビームライフルやブリッツファンネルを展開して破壊していく。そしてレイはエリィと連絡を取った。

「エリィさん!エリィさん!」

「な、なんとか大丈夫よ……レイ君」

「セイントバード、大丈夫なんですか……」

「さっき各部チェックした結果……メインエンジン大破。完璧に撃ち抜かれてる……これ以上の航行は不可能……もうダメ……セイントバードはもう沈みます……」

エリィの声は震えていた。と言うのも、彼女は涙を流していたのだ。突然放たれた一撃により、エンジンは完全に被弾し、航行が不可能な状態に陥ってしまっていたのである。

「じゃあ……もう脱出しないとダメじゃないですか!」

「そうね……そうしないとダメ……あのね……レイ君。」

「はい……?」

セイントバードが被弾した為、艦内は非常警報が鳴った状態が続いていた。その上艦が大きく揺れた為、エリィは怪我をしてしまっていた。頭から血を流しつつ、レイに対して言う。

「あの……ね……急いで……離れて……レイ君はレイ君に出来る事をして……」

「出来る事って……僕は何をすれば……」

「この戦いを早く終わらせる為に、新生連邦本部の施設へ……!貴方なら出来るわ……いい?戦いが終わればジャンヌさん達と合流して……今まで、ありがとうね、レイ君――」

そこで通信は切れた。レイは彼女が最後に残した台詞が気になって仕方が無かったのである。

「今までありがとうって……き、気のせいだよね……エリィさんが諦めるなんてことするハズが無い……そうだ、僕は……向かわなきゃ……!」

エリィが気掛かりだった。しかし、今は進む事しか出来ない。エリィに言われた通り、彼は新生連邦本部へ向かっていく。

 

ドオオオオオオオオオッ

 

レイが去った直後、セイントバードに大きな爆発が生じた。デスゲイズによって受けたダメージが更に拡大していく。MSデッキにいた整備士達は消火器を持って消火活動を行うが、メインエンジンが被弾しているのでこの行動も最早無意味であった。

「クソッタレが!なんてザマだよ!」

「セイントバードが沈むなんて!そんなの信じたくないっスよ!」

「俺だって信じたくない!けど……これは本気でやばそうだな……どうする、艦長……」

その時、エリィの声が艦内に響いた。インクのマイクを借り、艦長である彼女が自らクルーに対して言った。

「セイントバードはもう限界です……各員は速やかにMSデッキに集まり、脱出用の小型輸送機に搭乗して下さい!ミシェさん、後は任せます!小型フライヤーを戦場の真ん中に放り投げるのは正直危険ですが……ここにいて死ぬよりはいくらか生存する可能性はあります!だからお願い!みんな早く逃げて下さい!!!」

「エリィの声……」

ミシェは呆然とエリィの声を聞いた。セイントバードが墜ちる――それを確信した瞬間であった。その時、ミシェは拳を作り、そのまま震えた。

「ミシェさん……艦長の言う通りにしないと……!」

「あ……ああ……」

悔しそうだった。世話になった艦が沈むという事実が現実に襲い掛かってきている。それはクルーの皆が感じている事だった。

 

 

 

セイントバードのクルーは皆MSデッキへ集められた。脱出用の小型フライヤーへ乗る為である。非戦闘員であるリルムやエレン、メナン、ウィリア、そしてミルフがMSデッキに向けて走る。ガーストはプレーンの肩を借りながらMSデッキへ向かう。

「セイントバードが沈むのか……くそっ!俺が出撃出来たら良かったのに!」

「ガースト……でも無理はダメヨ……けど……こんなのって……」

「……今は脱出しかないか……クソ……」

ガースト達も悔しそうだった。今まで世話になった艦が沈むのだ。それも、高出力のビームを一撃浴びただけで。

今までセイントバードは幾度も危機的状況に遭っていた。しかし今回は致命的過ぎたのである。

「エレンさん、大丈夫……?」

リルムがエレンを気遣った。というのも、セイントバードがデスゲイズのビームを浴びた時、エレンはビームを浴びたすぐ側の部屋にいたのだ。凄まじい揺れを体感していたエレンは足ががくがくとしていて、思うように動けていない。

「だ、大丈夫……な……の……?あ……う……」

「し、しっかりして!」

リルムはエレンの肩を持ち、支えた。

皆逃げるのに必死だった。沈みゆくセイントバード。そこからの脱出が始まろうとしていた。

「うわ、なんかやばそうだな!」

「やばそうじゃなくって、本当にやばいのよ……」

「……」

ウィリアはメナンに言った。相変わらずのメナンの様子に、ウィリアは内心苛立ちを感じていた。だがそんなことで怒っている場合ではない。

その、彼女の側には無言のミルフの姿もあった。彼女等はとにかく逃げなければならない。ウィリアを始めとする非戦闘員達はMSデッキへ向かっていく。

 

 

 

これを伝え終えたエリィはスラッグとインクにも脱出するように言った。言われるままに二人は自動ドアの方向へ向かう。だが、エリィは動く気配がなかった。疑問に感じたスラッグは尋ねる。

「艦長、なんで逃げないんですか?」

「……」

エリィは黙ったままだ。何も答えようとはしない。そればかりか、自動ドアの方向を見ずに、モニターの方向を見ている。

「艦長も逃げて下さいよ!」

インクが叫ぶように言った。というのも、エリィはゆっくりと艦長席の前まで移動し、そのまま座り始めた為である。

「何やってんスか!それじゃあ死にますよ!!!」

スラッグが言った。それでもエリィは動く様子が無い。決して動かない気でいたのだ。

「艦長!早く逃げて下さいよ!何をしてるんですか!!」

必死にエリィを呼び掛けるスラッグとインク。しかしエリィは動かず、二人と顔を合わせないまま言った。

 

「私は……最期までここにいます。」

 

「!?」

衝撃の言葉だった。二人は耳を疑ったが、紛れもなくエリィの台詞である。彼女は死ぬ気でいるのだ。

「なっ……何を言って……!?」

「前方にいる同型艦をこのまま放置する訳には行きません。あの艦は間違いなくこちらを狙ってくる……この艦がもうダメだというのなら、この艦を犠牲にし、少しでも皆の生存率を上げる必要があると私は判断しました。」

二人はただ、剛直するばかり。エリィの言葉は何を意味するというのか。

「でもこの艦はまだコントロールは効きます。ゆっくりと崩壊をしてはいますが……そこで考えました。残された武装を使って同型艦を攻撃した後で、セイントバードをそれにぶつけます。それで少しでも皆のリスクは軽減されるでしょう。無論、それは皆が脱出した後の話……」

この言葉が示す事は、ただ一つ。エリィは自分だけがセイントバードに残り、セイントバードをウイングイーグルに衝突させようとしていたのだ。

驚愕の発言に戸惑うスラッグとインク。インクは動揺しつつも、両腕を思い切り広げてエリィに言う。

「訳の分からない事言わないで下さいよ!なんで艦長がそんな……特攻なんて!意味が分からないです!艦長がそんな事する必要ないですよ!!!」

インクは涙を流していた。必死な訴えだったのだ。しかしエリィは静かに首を横に振るだけだ。

「……艦長だからこそです。艦の責任者である以上、皆の安全を優先する必要がある。私だけが残り、あの艦に特攻してリスクを減らす。これが艦長である私の義務……だから、貴方達は逃げて。早く!」

 

ドオオオオオオオオオオオオオッ

 

その時、ブリッジが爆発した。燃え盛る炎がモニターを焼き尽くす。このモニターに今までどのような光景が映っていただろうか……戦闘中をはじめ、いかなる時もこの3人はブリッジにて待機していた。そんな思い出が今更になって蘇る。だがそれは儚きもの。今は炎がこの思い出の光景を燃やしているのである。

「いい加減にして下さいよ!!なんで……こんな……!!!」

スラッグの訴えがブリッジに響いた。その時、エリィは近くにあったボタンを押した。それは強制的に自動ドアを閉めるボタンで、それによりドア付近にいたインク達は閉じ込められた。

「え……?」

「貴方達は私と心中してくれるつもりなの?」

「し、心中って……」

インクが涙を浮かべながら言った。

「……責任者は私です。貴方達は早く逃げて下さい。今ドアを開けます……早く!」

そう言って再びエリィはボタンを押し、ドアを開いた。躊躇う二人。このまま逃げる事も出来るのだが、エリィを見捨てて逃げる等出来ずはずがない。その間にもブリッジは業火によって燃え盛っていく。

「早くしないと燃えてしまうわよ。それでもいいの?」

「あ……く……!」

インクは涙を流しながら、戸惑っていた。しかしその時、スラッグは俯きながらインクの腕を引っ張った。

「え……?」

「逃げるぞ……早く……!」

「でも……!」

「いいから逃げるんだよ!艦長!俺、忘れませんよ!あんたと過ごした毎日を!」

スラッグがインクをドアの向こう側に引っ張った直後、エリィはすぐに自動ドアを閉じた。それはスラッグの言葉をこれ以上聞きたくないと思った為であった。

「行った……か。あとはミシェさんの連絡を待つだけ……そして私は……」

そう言ってエリィは静かに溜息を吐いた。彼女の眼前には、燃え盛る炎が広がっていた。やがてモニターが焼け落ち、彼女の眼前には敵艦であるウイングイーグルの姿が確認できた。それを見てもエリィは動じる様子が無い。

「早く……みんな脱出して……」

彼女にとってセイントバードはクルーが思っている以上に特別な存在であると感じていた。戦後になって常に母艦として幾度の苦難を乗り越えてきた空中空母であるセイントバード。しかし、今それは儚くも崩れ落ちようとしている。

ならば、せめて自分自身の勤めを果たそう……彼女は思っていた。それは彼女が言うように、前方にいるウイングイーグルへの特攻である。しかしクルーが全員脱出していない以上、まだ特攻を行うことが出来ない。もしそれが終われば彼女は死を持ってウイングイーグルへ直接攻撃を行う気でいた。

今、エリィはどのような心境であるのか。もしかすれば恐れがあるのかも知れない。しかし艦長という立場を重く受け取っている彼女は、そこから逃げ出すこともせず、果敢にも燃え盛るブリッジに残ったのだ。

 

 

 

外は激戦が続いていた。セイントバードを撃ち抜いたデスゲイズは新生連邦と交戦しており、沈みつつあるセイントバードに攻撃を加える機体は幸いいなかった。新生連邦軍の誰もが攻撃するだけ無駄だと判断したのだろう。この一方で、ネルソンはセイントバードが沈んでいく様子を見ていた。すぐにでも駆けつけたかったが、彼を邪魔する機体がいた。新生連邦軍のグランシェである。ビームサーベルで鍔迫り合いを行い、モノアイで睨みつけるように敵機を見る。

「邪魔をするな!!!皆が脱出しているかが心配なのに……!」

母艦が墜落しそうなのだ。ここで邪魔をされる訳には行かなかった。しかしグランシェはネルソンの予想以上に強く、逃げるにも逃げられない。というのも、このままセイントバードまで逃げても必ずグランシェはネルソンを追いかけてくる。そしてセイントバードに危害を加えてくる可能性があったのだ。それを考えたネルソンは、このグランシェを倒さない限りセイントバードへ向かえなかったのである。

するとグランシェはビームケーブルを展開し、ハルッグに迫ってきた。これに対し、ハルッグは変形して一度その場から離れ、ロングビームライフルを連射した。だが全てグランシェのシールドで防がれ、更にグランシェはシールドからビームキャノンを放出した。緊急回避を行うネルソン。ここで彼はミサイルを展開した。だが、このミサイルに対してグランシェはビームマシンガンで撃ち落とそうとする。どうしても撃墜が出来ないグランシェ。その間にもセイントバードは刻一刻と墜ちていく。

「頼むから……邪魔をしないでくれ!!!」

叫ぶネルソン。だがネルソンの願いも空しく、グランシェは彼の思うようになってくれない。セイントバードを前にして、意外な壁が彼を襲ったのであった。

 

 

 

それから少し時間が経過した頃、レイは涙を流しながら新生連邦本部へ向かっていた。エリィの言葉が気になって離れなかったのだ。彼に迫ってくるMSがいたが、いずれもツヴァイのブリッツファンネルで破壊していく。本部に近付くにつれ、攻撃が激しくなる。更に現在新生連邦本部には防衛機能として計五機のMAが存在している。これらの内の一機であるセーザムがツヴァイに反応し、ミサイルシステムを展開する。無数のミサイルがレイを襲う。だがいずれも彼は避け、避け切れないものは拡散ビーム砲で破壊する。

「行け……!」

 

ピシュンッ

 

彼の脳裏に電流が流れた後、敵の数の多さを少しでも減らす為、彼はブリッツファンネルを展開した。計十八基のファンネルは周辺にいた全ての新生連邦のMSに向けて攻撃され、幸い全ての機体が一瞬の内に破壊された。

「本当はしたくない……けど、今はやるしかないんだ……!」

涙を流し、レイは進んでいく。戦いを終わらせる為に。

だがその時、三本の有線式ビームサーベルがツヴァイに襲い掛かった。レイの頭の中に電流が流れた瞬間、彼は反応してこれらの攻撃を回避する。

回避した後、レイは攻撃してきた機体の姿を確認した。それを見た時、レイは身体が震えた。無理もなかった。彼を一度殺しかけたMSが今眼前にいるのだから――

「そ、そんな……!」

レイは恐怖に襲われた。そのMSはデスゲイズ。パイロットはメイド・ヘヴンである。レイは以前に男と交戦し、敗北を味わった。その男が目の前に居るのだ。

「どうして……どうして……?」

「聞きてぇかあの時のクソガキ!まさかてめーが生きてたとは驚き桃の木だなァ!絶対俺が殺したと思ったんだけどなァ?こんなの絶対おかしいよなァ!?」

メイドは強制的にツヴァイの通信回線を開いていた。その為、レイの驚嘆とした表情がメイドに分かり易く、伝わっていた。

「う、嘘だ……!どうしてここに……!?」

「暇潰しなんだよ!糞連邦と国連が派手にドンパチやってやがんの!そしたらあの時のクソガキがここにいるもんだからびっくらこいた訳!ハハハハハ!悪運の強い奴!

ぶっ殺してやんぜェ!覚悟しなァ!!!」

 

ビゴォン

 

デスゲイズはモノアイを輝かせ、有線式ビームサーベルを展開した。ツヴァイはこれらを避けつつ新生連邦本部の方向へ向かう。しかし本部ではクライシスがツヴァイを狙っており、メガビームランチャーを放出した。突然の攻撃に、バリアーフィールドを展開する余裕が無かったツヴァイ。このままではツヴァイが破壊されてしまう――

しかしその時、デスゲイズがツヴァイの前に出たのだ。その瞬間、デスゲイズのバリアーフィールドが働いてビーは消滅してしまう。それと同時に有線式ビームサーベルの矛先をクライシスに向けた。機動性の低いクライシスは串刺しになり、そのまま破壊される。

「守って……くれた……?」

「か、勘違いしないでよね……別にあんたの為にやったんじゃねぇんだから……てめーなんか守る訳ねーだろうがアホがァ!!!」

 

ギュルルルルル

 

するとデスゲイズは再び有線式ビームサーベルをツヴァイに向けて放出した。今度は腹部のビーム砲も発射し、確実にツヴァイを追い詰める気だった。

「獲物を取られたら腹立つからウザいMAを破壊したんだよ……俺がそんな人間に見えるか?あぁ?どんだけ目が腐ってんの?だらしねぇな!?てめえなんかフルボッコにしてやんよ!!!」

「ク……こ、このぉ……!」

ツヴァイは反撃と言わんばかりに、ブリッツファンネルを展開する。展開されたファンネルは全てビーム刃が展開されており、メイドに迫る。だがデスゲイズはまるでそれらを見切ったように素早い動きで回避する。

「このぉ……!だってよ!ハハハー!てめえはガンダムよりはもっとでかくて暴走するロボットとか乗った方が似合うかも知れねーなァ!!!」

「……邪魔をしないで下さい!僕は……行かないとダメなのに!」

レイは怒った。早く向かわなければならない場所があるのに、その場所へ向かわせてくれないメイドの存在に。だがメイドはそんな彼の訴えなど構うことなく攻撃を続ける。

「アホだこいつ、キレてやがるぜ!そんな風にすぐキレるからな、目先の事しか考えられなくてさ、結局シンギュラルタイプの能力も生かせずにてめーの母艦が沈められんだろうが!!!もしもっと早く気付いていたら防げたかも知れねーのによォ!!!」

メイドの言葉はレイを更に怒らせた。思えばセイントバードを沈めたのはこの男が原因である。その上男は暇潰しというあまりに自分勝手な都合でセイントバードを襲い、沈めたのだ。多くの非戦闘員がいるセイントバードを。

 

――――――――――――――――――ドクン―――――――――――――――――――

 

許せない……レイは思った。その瞬間彼の眼の色は変色した。握り拳を作り、デスゲイズに対して襲い掛かる。

「……倒す……倒す!!」

レイはメイドに怒っていた。彼が怒る事により、以前と同じ状態になった。紅い眼に変色したレイはデスゲイズを睨んでいた。

彼が覚醒した事により、メイドは頭痛を訴えた。この男が力を持つ人間である為、レイがもたらした影響を受けているのである。

「チッ、頭いてぇーよー。頭痛薬ねーし最悪。あいつ、マジギレしやがったな……」

レイの覚醒に反応するメイド。だが、それでも慄く様子を見せず、男は挑発するように言う。

「つーかキャラ変わってんじゃねーか!!!おもしれェ……おもしれェぞ!!」

「うるさい!!!」

セイントバードが破壊された……思えば、それは一年以上前の出来事だった。

モントリオールでチェーニ姉妹のガンダムに襲われている所をセイントバードチームに助けてもらったのだ。以後、セイントバード艦内で過ごし続けていた。時には危機的な状況に陥る事もあったが、それでもセイントバードはずっと航行し続けた。レイにとっては最早第二の家のようなものだったのだ。

そのような大切な場所をメイドがいとも簡単に破壊してしまった。それが許せないのである。今まで過ごしてきた場所を破壊された彼の憎しみが、メイドに対して襲い掛かる。

「許せないんだ!!」

「うっせぇんだよ中二病のショタガキがァァァ!!!」

デスゲイズは、ミサイルを放出した。だがこの攻撃を軽やかに回避するツヴァイ。するとデスゲイズはMAに変形し、有線式ビームサーベルを展開した。複雑な動きでツヴァイに襲い掛かる、六本のビームサーベル。だがレイはこれらを既に見切っていた。 

それぞれのビームサーベルは緩慢に動いているように見え、回避を行うのは容易だ。その為か、レイはこのビームサーベルがツヴァイに向かってきた瞬間、ケーブルの部分を掴み始めた。それも一本ではない。迫ってきた有線を、全てを掴んだのである。本来これは不可能な事だが、今のレイには可能だった。敵の攻撃が遅く見えた為だ。

「う、うそーん!?」

メイドは仰天した。ツヴァイの驚愕の行動に驚きを隠せない。

「野郎ォ……けどなァ!あれがビームサーベルだけだと思ったら大間違いなんだよォ!!」

するとデスゲイズの有線式ビームサーベルはビーム刃を展開するのを止めた。それと同時に、残り三本の線はツヴァイの左腕部を固定し始めたのだ。その為、ツヴァイは身動きが取れなくなる。その時にデスゲイズが前腕部の二連装ビームキャノンを撃ち、ツヴァイはこれを防ぐために右手のバリアーフィールドを展開しなければならず、不本意にも掴んでいた三本の線を離してしまう。それがメイドの思う壷だった。

「アホが!話にもならねぇ!!!」

「え――」

解放された三本の線が今度はツヴァイの右腕部を固定した。これにより、両腕部が固定された形になり、ツヴァイは身動きが取れなくなった。

「う……」

「切り裂き突き刺しだけじゃねえんだよな。ガキの身体にこれは効くぞ~!ハハ~!!!」

 

バヂィィィッ

 

その時、線から電流が流れた。腕部を固定されていて身動きの取れないツヴァイは電流を浴び、当然中にいたレイもこれをもろに食らってしまう。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

電流を浴び、声を上げるレイ。それを見てメイドは笑いながら言った。

「いくらてめえがキレようとナニしようがッ!そんなんで俺に勝てる訳ねェんだよォ!!!」

ツヴァイは身動きが取れない。電流を浴びた為、機体を動かすプログラムが機能しなくなってしまっているのだ。レイは必死にレバーを引く。だが動かない。どうしても動いてくれないのだ。

その時、デスゲイズは腰部を変形し、デス・ランチャーを放出しようとしていた。プラズマ兵器であるこれをツヴァイが受ければ確実にツヴァイは破壊されてしまう。レイは必死にレバーを引くが、動く気配が無い。

「ぅぁ……う……動け……動け……!」

「無駄無駄ァ!今日こそ確実にぶっ殺してやんよ!」

モノアイを輝かせたデスゲイズはデス・ランチャーのエネルギーを吸収し始めた。このままではツヴァイは跡形もなく破壊されてしまう。だがいくらボタンやレバーを押してもツヴァイは反応してくれない。

「動け!動け!動いてよ!お願いだから早く!動けぇ!!!」

「その後それが覚醒して俺が食われるってオチはなしな……その前に跡形もなく消してやんよォ!!!今度こそ終わりだなガキ!!!敵も取れずに死ぬなんて情けねーな!

くたばれやァ!ティロ・フィナーレってなァ!」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 

エネルギーが最大まで吸収されたその瞬間、デスゲイズはデス・ランチャーを放出した。もう、間に合わない。ツヴァイはこのまま破壊されるしかないのだろうか。レイは眼前に迫る死の恐怖を恐れつつも、必死にレバーを動かした。それでもツヴァイは動いてくれない。最早これまでか――レイは死を悟ろうとした。

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

 

どこからともなく、プラズマ兵器がデス・ランチャーに向けて発射された。すると、デス・ランチャーは跡形もなく打ち消されていた。急な出来事にメイドは戸惑った。

「そんなぁ!?ティロ・フィナーレが!?みんな死ぬしかないじゃない!!……チッ」

プラズマ兵器が放たれた方向を見た。そこには、八枚のウイングを展開しているブライティスがカメラアイを輝かせ、プラズマランチャーを構えている姿が映っていた。ブライティスが発射したプラズマランチャーがデス・ランチャーを打ち消し、レイを救ったのである。

「ア……レンさん……?」

「大丈夫か、レイ!」

間一髪、レイは助かった。しかしデス・ランチャーのようなプラズマ兵器を別のプラズマ兵器で打ち消せた事にレイは疑問を抱いていた。この時、レイの眼の色は元に戻っていた。デスゲイズに電流を浴びせられたショックの為か、先程の真紅の眼をしたレイの姿はそこに居なかったのである。

「知ってたんですか?あの兵器の打ち消し方って……そんな方法があったんだ……」

本来プラズマ兵器は絶対に防ぐ事の出来ないものである。しかしアレンはこれを打ち消した。その事についてアレンはレイに言った。

「ああ一応前からね。実践したのは初めてだけどさ。プラズマ兵器はプラズマ兵器を打ち消す……現状ではプラズマ兵器を防ぐにはプラズマ兵器を用いるしかないって訳か……」

「そう……ですか……と、とにかく助かりました……ありがとうございます……」

レイが言った事に対してアレンが喋ろうとすると、メイドが邪魔をするようにブライティスに対して通信を開いた。

「アレン・レインドォ!!!てめえも居やがったかァ!!」

「メイド・ヘヴン!お前がどうしてここに?」

「暇潰しで来たんだよ!しかし……どうやら結構豪勢なメンツが揃ってるみたいじゃねーか!!!面白くなってきたなオイ!!こりゃ、満足出来そうだぜ……」

「ふざけるな!戦争を何だと思ってるんだ!」

アレンも怒った。だがメイドは挑発するように言う。

「戦争は遊びだよ!スコア競う遊び!!そして満足する為の遊び!!!サイコーじゃねぇか!こんだけ暴れ回れるなんてよォ!!!」

「そんなふざけた考えなんて……レイ……?」

この時、アレンはレイの様子がおかしい事に気付いていた。ツヴァイが動かない事に疑問を抱いたアレンはレイに尋ねる。

「レイ!動けないのか……?」

「あ……今は……ちょっと……あ、今動きました……」

その時、ツヴァイのプログラムは復興した。それに気付いたメイドは邪魔をする為に行動する。

「食らえや!ビリビリ!」

そう言って再びデスゲイズは電流を流そうとする。しかしそれを阻止したのはアレンだった。線を切り裂く為にプラズマランチャーを腰にマウントし、ビームサーベルを横腰部から抜いて切り裂こうとしたのだ。だがそれに気付いたメイドはすぐに、ケーブルを本体へ戻した。それと同時にツヴァイは自由の身になった。

「おぉう!これを切られるといろいろ不便なんだァ!」

「相当大事なものらしいな。」

「そりゃな!これがこいつの代名詞だからな!」

そう言って再びビーム刃を展開した有線式ビームサーベルを展開するメイド。その攻撃に対し、ブライティスは回避運動を行う。そしてその最中、アレンはレイに対して言った。

「レイ、奴を倒す為にファンネルを使ってくれ!一斉に射出するぞ!」

「え……あ……はい!」

ブライティスとツヴァイは同時にブリッツファンネルを射出する準備に入った。両者のカメラアイが輝いた瞬間、それらは展開される。

 

「行けッ……!」

 

ピシュンッ、ピシュンッ、ピシュンッ

 

二人がそう言った直後、一斉にブリッツファンネルが展開された。ブライティスからはブラスターファンネルも展開され、ツヴァイはミニファンネルも展開された。これらは全てビーム刃を展開し、デスゲイズに襲い掛かる。

「……チッ……流石にまずいか……?」

合計二十八基のファンネルはその標的をデスゲイズ一機に絞り込み、攻撃を行う。メイドはこのファンネルの数を見て一度後退していく。しかしファンネルはデスゲイズを追い続けた。

それと同時に、ブライティスとツヴァイもデスゲイズを追う。

 

デスゲイズの機動性に負けない素早さを見せつけるファンネル達は既にそれを追い詰めていた。そして躊躇することなくデスゲイズを突き刺そうと襲い掛かる。しかし、メイドはこの時ニヤリと笑みを浮かべた。

「ハハハ……追い詰められた狐はジャッカルよりも凶暴ってなァ!!!」

するとデスゲイズはMSに変形し、すぐに腹部からビームを放出した。セイントバードを破壊したそのビームは、迫ってきたブリッツファンネル十数基を全て消滅させる。

それらはいずれもツヴァイのブリッツファンネルとミニファンネルだった。そしてこれらの動きを見切っていたメイドはシンギュラルタイプの感を生かし、ファンネルの動きを予測し、その方向にビームキャノンを撃った。

するとそれは直撃し、ブライティスのブリッツファンネルが破壊された。

「てめー等の動きは既に見切った!だから無駄なんだよ無駄無駄ァ!ウリイイイー!!!」

「そんな……クソッ!」

追い詰めた筈が、完全に動きを読まれていた為に、ファンネルでは対処が出来なかった。アレンは悔しい思いを隠し切れず、コクピット内で拳を作り、それを思い切り振るって操縦桿付近に打ち付ける。悔しい気持ちをしていたのはアレンだけでなく、レイも同様だった。

「こんな……こんなのって……」

「てめえらが束に掛かって戦っても俺には勝てないってことだな!あーあ!」

爆笑し、二人を卑下するメイド。その時、デスゲイズに一筋のビームが放たれた。全方位にバリアーフィールドジェネレーターが張り巡らされているデスゲイズにその攻撃は通用しない。

「何奴?」

メイドが睨んだ方向には、特殊強化モデルの乗る二機のガンダムの姿があった。デスゲイズに向けてビームを放ったのはアトミックガンダムであり、ビームランチャーを構えてモノアイを輝かせていた。

「面白そうじゃん!いーじゃん!いーじゃん!」

「それに……あの白いのと青羽がいやがる……そうだ、あの白いのをぶっ殺してやろうぜ!!!シエルが殺されたんだろ?あいつに!」

「あ~、そうだなぁ!!!」

 

キシィン

 

デスペナルティがカメラアイを輝かせ、二重大鎌を構えてツヴァイの方向へ向かった。

二重大鎌でツヴァイを切り裂こうとするデスペナルティ。レイはどうにか回避するが、別方向からアトミックがビームランチャーを放出する。この二機の狙いはデスゲイズではなく、ツヴァイを狙っていた。以前のダーウィンでの戦いでシエル・ホーンドがツヴァイによって倒された事を根に持っていたのである。

「こんな時に!どうして!」

ツヴァイに迫ってくる二機のガンダム。その様子を見ていたメイドは大笑いをしていた。

「おいおいおい!ガンダムだらけじゃねえか!こりゃあ……ガンダム狩りには丁度いいよなァ!!!」

笑った後にデスゲイズは再び動く。ツヴァイと交戦している二機のガンダムに対して有線式ビームサーベルを展開し、襲わせた。急な攻撃にどうにか対処するデスペナルティとアトミック。

「あぁ~、悪いねぇ。あんたの相手はこの白い奴を殺してからしてやるよ!」

狂気的な笑いをするニッカに対し、メイドはニヤリと笑みを浮かべた。そして言う。

「残念……今やれや。」

明らかなメイドの挑発に乗る、二人。

「そうかよ!じゃあ……望み通りにしてやるぜぇ!!!」

そう言ってデスゲイズに挑んだのはアトミックだった。アトミックはビームサーベルを展開し、有線式ビームサーベルと鍔迫り合いを行う。その際にデスペナルティもデスゲイズへの攻撃に加わった。それはレイとアレンにとっては好機だった。新生連邦本部へ向かうのに足止めを食らっていたレイだったが、この二機が戦闘に介入する事でこの場所から逃げ出す事が出来るのである。

「レイ、行け!」

「はい!」

アレンに言われるまま、レイは本部へ向かう。少しでも早くこの戦いを終わらせる為に。一方のアレンはレイの手助けを行う為、本部を防衛しているMAに対して攻撃を開始した。

 

 

 

二機のガンダムと激闘を繰り広げているデスゲイズ。しかしメイドは余裕の表情を見せていた。

「まだあのガキとアレン・レインドの方が強いなァ!そんな弱っちいのはガンダムじゃねえ!ガンダムの顔をしてるだけの雑魚じゃねーか!」

「うっせえんだよクソ野郎が!ぶっ殺すぞてめえ!!!」

挑発されて怒るハーディ。それはニッカも同じで、両者はそれぞれ、ビームランチャーとウイングに収納されているメガビーム砲を展開して放出した。

しかしそれらは、デスゲイズのバリアーフィールドジェネレーターに弾かれてしまう。

「どうなってやがんだよあの野郎!!!意味分かんねえぞ!」

ハーディに代わり、デスゲイズに近付いたのはニッカの乗るデスペナルティだった。二重大鎌を構え、接近戦を試みたのである。

だが、その状態でデスゲイズに挑むのは自殺行為以外の何物でもなかったのである。

 

「逝けや」

 

メイドが放ったその一言。その直後、デスペナルティは有線式ビームサーベルによって串刺しになったのだ。最初の一本の時点でコクピットに直撃しており、残りのビームサーベルがデスペナルティの各所に直撃した。

 

「い……だい……いだ……ィ……ョ……ォ……タ……スケ……ェ……」

 

それがデスペナルティガンダムのパイロット、ニッカ・ドレイクの最期の言葉だった。コクピット内で夥しい量の血液を流していたニッカ。彼は最早助かる術すらなかった。ニッカが断末魔を言い終えた後に有線式ビームサーベルは全てデスゲイズへ戻っていく。その直後にデスペナルティは爆発を起こし、戦場に散ったのであった。

これにより、何度かセイントバードチームやアステル家と対峙していた三人の特殊強化モデル……残るはハーディ・クオレントの乗るアトミックのみになった。デスペナルティが散ったことで、メイドは大笑いをした。

「ぐふ……ぐふふふふ!ハハハハハ~!!!ガンダム狩り成功ォ!!!ったく、しかし汚ねぇ花火だなぁ。」

ニッカが殺されたことで、ハーディは怒りを隠せずにいた。シエルに続いてニッカが殺された――その怒りの矛先はデスゲイズである。

「何だ?俺とやろうってのか?結構結構!勝てる訳がないのに挑むのは勇気じゃなくて無謀ってなぁ!」

それに応じるメイド。アトミックはこの時MAに変形し、MA状態でしか使えない武装を全て使用してデスゲイズに襲い掛かる。

「てめええええええええええええええええええええええ!!!」

怒りにまかせて攻撃を行うハーディ。そんな彼に対して

「無駄なんだよ!当たんねーんだよボケナスがよォ!!!」

そう言って前腕部の二連装ビームキャノンを連射する。アトミックはこれを回避しつつ、メイドの言葉を無視して攻撃を続ける。

「殺す!ブチ殺す!!!」

アトミックはひたすらにウイングガトリングやヘビーマシンガン等を連射する。それに対してメイドは眉を潜め、握り拳を作って言った。

「当たんねーっつってんだろうが無視すんなやゴラァァァ!!!」

その瞬間、有線式ビームサーベルを展開したデスゲイズは素早い動きでMAのアトミックの胴体を切り落とした。苛立ちを覚えていたのだろうか、先程のように突き刺すことなく簡単にアトミックを破壊してしまった。アトミックは爆発を起こし、墜落していく。

「ハッ!……あ……けどあいつ生きてるな。コクピット壊してねーし……ま、いいんじゃないかな?さて、次はどいつを狩るか?正直誰でもいいんだけどな……あのガキ狙うとアレン・レインドが邪魔するし……」

二機のガンダムを破壊し終えたデスゲイズは次なる標的を探し始めた。

この男が戦場に介入した理由は暇潰し。彼の暇潰しの為に、多くの命が犠牲になった。しかしメイドはそれを罪に思う事は無い。何故ならば、彼自身が今まで数多くの人を殺害しており、自身の殺人ギネス記録を更新すると言う非道な発言をしているからである。

やがてデスゲイズはこの場から去った。次なる標的を破壊する為に、気まぐれな地獄の使者は動く。

 

 

 

メイドが二機のガンダムと交戦している時、レイは本部へ向かっていた。途中で彼を阻むMSを破壊しつつ、向かい続ける。

彼が新生連邦の本部へ向かい、占拠することでこの戦いは終わる。少年であるレイは混乱を極める戦場の中で、そのような大役を任されたのだ。本来ならば彼が行うものではない。 

しかし今、国連はツヴァイの力を宛てにしており、その為にセイントバードをロサンゼルス沖に待機させておいたのだ。そして戦力の要となるツヴァイに本部を占拠させ、国連が勝利を掴むというものだった。

レイはとにかく戦いを終わらせたかった。だからこそ、彼は必死に本部を目指したのだ。

「もうすぐなんだ……もうすぐで!」

本部周辺を護衛するMAはアレンが止めてくれている。だからか、ツヴァイは移動を行いやすかった。

だが、そこへ彼の邪魔をするMSが現れた。ダウーラの乗るアーヴァインである。突如アーヴァインはバックパックの実弾キャノンを撃つとこう言った。

「ガンダム!戦えよ、俺と……」

「そんな……こんな時に……!」

突如現れた敵にツヴァイは急停止する。更にアーヴァインはビームライフルを撃ってきた。これに対して左腕部を展開し、これを防いだ。

「おおっ……ハハハ!楽しませてくれそうだな!」

「邪魔しないで下さい!……いや、邪魔して当然か……」

確かに新生連邦の本部が狙われているのだから、その行為を邪魔するのは当たり前である。レイはこの機体を倒さないと先に進めないと判断し、アーヴァインと戦うことを決めた。

「散々邪魔者扱いだからな……やっと、まともに戦える……」

そう言ってダウーラが攻撃を仕掛けようとした時だった。周辺にいたジョゼフ三機がツヴァイに向けて前腕部グレネードを発射した。これを回避した後、ツヴァイがビームライフルを構え、発射しようとした時だった。この三機の内の一機がアーヴァインのフロントアーマービームキャノンで破壊されてしまったのである。

味方を攻撃し始めるアーヴァインの姿にレイは目を疑った。

「イライラするんだよ、せっかくガンダムと戦えると思ったのに……」

何故味方を破壊したのか……理解の出来ない様子のレイは通信回線を開き、ダウーラと会話を試みた。しかしそこにいた、恐ろしい目つきの男にレイは恐怖を覚えた。

「ど、どうして味方を……?」

「ん……?ハハハ……お前は女なのか?」

女ではないと、言いたかった。しかし今はそんな事を言っている場合ではない。味方を殺したこの男を倒さなければ先に進めないと分かっていたからだ。今のレイに余裕は無かった。

「……まあいい。何故殺したか?そりゃあ……俺の邪魔をしたからな。」

そう言って突然ビームライフルを撃つ。それに気付いたツヴァイもバスタービームライフルを撃った。これらのビームは打ち消し合い、消える。次にアーヴァインはビームサーベルを構えた。ツヴァイも同様にメガビームセイバーを構え、打ち合いを行う。

「面白いよなぁ!戦いってのは!」

「まさか……遊んでるんですか!?」

「さあ……?どうだろうなぁ!?」

レイはこの男から悪意を感じ取った。力を持つレイだからこそ分かる不気味な感覚である。相手が強化モデルであることが、この時に分かった。

(この人……普通じゃない……さっきのガンダムの人間と同じ……違う、さっきのパイロットよりも怖い……暗い感覚が……)

この男の発する得体の知れない感覚に、レイは怯えていた。ただ戦いを楽しんでいるだけの男……しかしレイから見れば不気味な男である事に変わりがない。

「もっと俺を楽しませろよ!強力な武器とかはないのか?」

「僕に命令してる……?」

「つまらないんだよ……ありきたりな武器ばかり使って!下らん……」

アーヴァインは一度ツヴァイから離れ、フロントアーマービームキャノンを撃つ。それと同時にビームライフルも撃ち、更には左前腕部からビームキャノンも撃つ。アーヴァインはビームの一斉射撃を行った。当然全てツヴァイはバリアーフィールドで防ぐ。しかしその直後にアーヴァインはツヴァイに接近し、ビームサーベルで切り掛かった。急な攻撃だった為、ビームディフェンスシールドを展開して攻撃を防ぐ。

「うぅっ……!」

「フン……」

ビームディフェンスシールドで防いでいた時、アーヴァインはフロントアーマービームキャノンを展開し、至近距離でそれを撃とうとしていたのだ。レイはそれに気付き、急いで右腕部を腹部に移動させてバリアーフィールドを展開する。この為ビームキャノンによる攻撃は防いだが、機体が激しく揺れた。

と、更にアーヴァインはバックパックの実弾キャノンを発射したのだ。この攻撃を至近距離で受けてしまったツヴァイはコントロール不能になり、海に落とされる。

「うぁ……!」

レイに激痛が走った。機体が揺れた衝撃により、彼は頭を打ったのである。

「足りない……まだ足りないぞ!」

アーヴァインは海へ落ちていくツヴァイを追いかけた。機能を失っているツヴァイに対し、アーヴァインはブースターを使っているので早く追いつく。そしてアーヴァインはツヴァイの左脚部を持った。その為、ツヴァイはアーヴァインによって逆さにぶら下がっている状態になった。

「ガンダムがその程度な筈が無いだろうが……!もっと楽しませろ!イラつく!」

「あ……ぁぅ……」

意外な攻撃に油断したレイは激痛に苦しんでいた。しかし戦いを望むダウーラは容赦なく罵声を浴びせ続ける。

「残念だな!ガンダムは雑魚だとは思わなかった……」

この時、ツヴァイのプログラムは復旧した。しかしレイ自身が苦しんでいる為、動くにも動けなかった。するとアーヴァインはビームライフルをコクピットに向け始めた。撃ち抜こうとしていたのである。

「消えろ……!」

やがてそれが発射される――

 

――――――――――――――――――ドクン―――――――――――――――――――

 

突如鼓動音がダウーラに聞こえた。疑問を抱く彼は攻撃を中止する。その直後、ツヴァイのカメラアイが輝いたのだ。そして掴まれていないもう片方の脚部でアーヴァインの肩部を思い切り蹴り、アーヴァインから離れた。この時、レイの眼の色は先程と同様に紅に染まっていた。

「……」

「あ……頭がぁ……!なんだ……こいつは……!?」

レイは再び覚醒した。彼が覚醒する時にダウーラが感じた鼓動音……それはこの男のように、力を持つ者のみが聞こえるという特殊な物である。頭痛に苦しむダウーラ。その際にツヴァイは猛攻撃を開始する。

ツヴァイは先程メイドと戦った時に消耗してしまったブリッツファンネルの残りを展開した。ビーム刃を展開し、一斉にアーヴァインに襲い掛かる。

「ふざけやがって……!うらああああああああっ!」

対するアーヴァインはこれらの攻撃を回避しつつツヴァイに接近する。しかしファンネルはしつこくアーヴァインを追いかけ続ける。やがてファンネルがアーヴァインに迫った時、アーヴァインはファンネルの方向にビームライフルを撃った。それによりファンネルは破壊されるが、その直後にツヴァイがアーヴァインの肩部を掴み始めたのだ。更に両脚部はアーヴァインのリアアーマーを固定し、アーヴァインの身動きを完全に捉えた。

「何の真似だぁ……?」

「……!」

紅の眼のレイはその時にスイッチを押した。するとツヴァイのバックパックに搭載されている左側のプラズマカノンのみが起動した。そして、それはエネルギーを吸収し始めた。その間アーヴァインは抵抗を続けるが動く気配が無い。

「ちぃ……!イラつく!離せ!」

「……嫌……だ!!!」

 

ドバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ

 

次の瞬間、ツヴァイの左側のプラズマカノンが発射された。この攻撃によってアーヴァインの左肩部が破壊された。

「お前……!」

怒ったダウーラはビームライフル等の武装をツヴァイに向け、連射するが、ツヴァイはこれらを避け続け、メガビームセイバーを横腰部から抜いてアーヴァインに迫った。

「ハアアアアアアアアアアアア!!!」

両手部でビームセイバーラックを持ち、確実にアーヴァインのコクピットを切り刻もうとしていた。それに気付いたダウーラは急いで上昇を試みる。

しかし、その時にアーヴァインはフロントアーマーからリアアーマーにかけて切り裂かれた。この為、脚部は完全に破壊され、最早アーヴァインは達磨のような状態だった。これ以上の戦闘は危険だと判断したダウーラは苛立ちを覚えつつもその場から去ることを決めた。

「お前……覚えてろよ……イライラさせやがる……!!!あああああ!!!」

レイに対する憎しみを抱きながらダウーラは戦場から去った。その際、彼の眼は元に戻っていた。アーヴァインがいなくなった事を確認したレイは、そっと胸を撫で下ろす。

(良かった……倒したんだ……)

安寧の表情を浮かべた後に、再びレイは新生連邦本部を目指し、移動を開始したのであった。




第七十九話、投了。
セイントバードはデスゲイズの攻撃を受け、沈み行こうとしていた。
その中で、躊躇なく迫るメイドに怒るレイ。この戦いの行方は、一体……
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