【東京喰種】僕の選択。   作:わむ

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最近玲緒奈が出てこなかった事に気付きました。


No, 25 先生

半喰種…!

まさか私の他にも居たなんて…!

会った時から匂いが普通じゃないなと思ったけれど。

 

「あったりー」

 

少女は抑揚の無い声で呟いた。

ギン、と右眼が染まる。

少女は少し首を傾け、睨め付けるように私を見る。

 

「もしかして、周りにもずーっと黙ってたの?」

 

「…バレたら面倒じゃない?」

 

いかにも面倒だというように言い放つ少女に私は違和感を持った。

 

「じゃあ、なんで私の言葉を素直に認めたの?」

 

少女は肯定した上に証拠まで見せたのだ。

否定しても良かった筈なのに。

 

少女はまたも口角を上げる。

まるで背筋がゾッとするような。

 

「お互いに知りたいことがあるだろう、高槻泉?」

 

私は驚く。

なんで少女が気付いたのか。

この少女に調べる術などない筈なのに!

 

「なんで君が知ってるのかなぁ?」

 

「手品の種明かしを進んでするやつはいないと思うよ。…芳村エト?」

 

いや、なになになに!?

自分の名前を連発されると怖いんだけど!

私は揶揄われてるのかな!?

 

「君がどこまで知ってるのか分からないけど、とりあえずその話に乗ろうか」

 

「じゃあ、僕が隻眼の喰種だってことを知ったから次はこっちの質問に答えてね?」

 

少女は最初の時のような明るい口調に戻る。

…というか今すごい無理矢理で理不尽なこと言わなかった?

 

「取引をする前の話は普通無効じゃないかな?」

 

「うん、僕はそう思わないかな。じゃあまず、なんで取引にこの場所を選んだの?」

 

笑顔でスパッと切り捨てられた。

私の意見なんて最初から聞くつもり無いんだろうね、酷い。

 

「ふふっ。君にとって思い出深いところでしょ?」

 

「うん、ここは…『先生』の居場所だった」

 

「だから迷わずに来れるだろうなぁって」

 

この少女は酷い方向音痴である。

それを配慮したのは本当だ。

 

「でもそれだけじゃない筈」

 

「うん、ここに来ればあの人の話を出すと思って」

 

「ふーん。何が知りたいの?」

 

「あの人…『ミラ』について知りたいんだ」

 

「うーん…昔話なら出来るけど…『先生』について詳しい訳じゃないよ?」

 

「大丈夫。ちょっとでも『ミラ』のことが分かればいいから」

 

「分かったよ。僕と『先生』が初めて会ったのはーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー優理が小学1年生の頃に遡るー

 

暑ー…

夕方になっても蝉が忙しなく泣いている夏休み。

またしても僕は道に迷っていた。

いつも贔屓にしているスーパーの改装工事によって、しばらく違うスーパーに行くことになったのだが、そうなればもう迷うしかないのである。

自動的に長時間、外にいる事になるので食べ物を腐らせぬよう、保冷剤を詰め込んだ小型保冷バックは欠かせない。

 

「やばい…いつの間にか路地裏に入り込んじゃった…!暗いし不審者に襲われたらどうしよう…いや返り討ちにしたらいいか」

 

真っ直ぐに道伝いに進んでいると、行き止まりに辿り着いた。

そこは先程の道よりだいぶ広くなっていて、部屋のようになっている。

公園にあるようなベンチが置いてあり、その上に女性が座っていた。

女性の近くには大きめのボストンバックが置いてある。

 

この状況だけでも異常である。

中には幽霊かと逃げ出す者もいるかも知れない。

まぁ、幽霊じゃなくても多くの人間がその場から逃げ出すだろう。

何故ならーー人間の死体が女性の側に転がっているのだから。

 

詳しく言うと、女性はその死体を喰べている。

要するに彼女は喰種だと言う事だ。

 

「わぉ」

 

僕がそう声を上げると女性はゆっくりと顔を上げた。

鎖骨辺りまで伸びた色素の薄い金髪がサラサラ揺れる。

その女性は華奢で口元に少しついた血を手の甲で拭う様子はとても妖艶だった。

 

「ちびっ子がこんな所に来るなんて珍しいな。どうしたんだ?」

 

口調は見た目とギャップがあり、少し驚いた。

彼女は僕をじっと見る。

 

「道に迷いました」

 

僕はそう端的に答えた。

いや、まぁホントだし?

 

女性はずっと僕のことを見ている。

グサグサと刺さり続ける視線に耐えていると、ふっと視線の重みが消える。

そのあと、彼女は僕の目を見てこう呟いた。

 

「…喰種か?なんか雰囲気が普通じゃないな。あと顔色悪いぞ?ちゃんと喰ってんのか?」

 

「一応、喰種ですけど…。人の食事が食べれるので、大丈夫です」

 

「へぇ、初めて聞いたな。…でも明らかに栄養失調の顔色してるぞ?」

 

た、確かによく玲緒奈に『顔色悪い』とか、『いつも血の気が無い』とか言われてるけど。

大体の人は僕のこと『色白で羨ましい』と言ってくる。

 

「気のせいじゃないですか?」

 

「いいや、気のせいじゃない。とりあえずコレ喰べとけよ」

 

そう言って彼女は手に持っていた腕を差し出す。

 

「………」

 

「?…あぁ、人間が喰いたくないなら安心しろ。コレ喰種だから」

 

それもそれで驚きである。

僕が黙ったまま突っ立ていると、彼女が近寄ってくる。

 

「……?」

 

圧を感じ、少し後ろに退がる。

彼女は腕をひと口サイズに千切った。

 

「はい、あーん」

 

ポカンと開いていた僕の口に少々無理矢理ソレを入れる。

僕は無意識にソレを咀嚼する。

喰種は不味いと原作で読んだが、僕はそう思わなかった。

甘い血の味が口に広がる。

 

「意外と美味いだろー?周りは不味いって言うけどな」

 

そう言いながら彼女は追加を僕の口に入れる。

まるで小さな子供の口に飴玉を落とすように。

 

美味しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言われるがまま喰べているとソレはすぐに無くなった。

 

「そういや君、優衣さんとこの子だろ?」

 

「?母のこと知ってるんですか?」

 

「知ってるも何も、ここら辺では一番親しい間柄だ」

 

彼女はふふんと胸を張って、宣言した。

 

「母さんにそんな人居たんだ。そういえば名前を伺っても?」

 

「私はミラだ。えーと、君は確か…うーん…一回聞いたんだけどな…」

 

腕を組んで思い出そうと奮闘している様だが、出てきそうにない。

 

「優理です」

 

「そうだ、そう!優理だ、優理!」

 

うんうんと納得しているミラさんを見ながら、一つ気になったことを尋ねる。

 

「そういえば、母さんは僕と自分が喰種だってこと隠してるんですけど、こんなことしていいんですか?」

 

「へっ?」

 

目をこれでもかと見開き、ミラさんは僕を見つめる。

 

「母さんと仲良いのに知らなかったんですか?」

 

僕がもう一度そう尋ねると、あっと声を上げた。

 

「そういや、そんなこと言ってた様な…でも君はさっき自分から喰種だって言ったよな?」

 

「はい」

 

「どうやって知ったんだ?」

 

「察しました」

 

 

 

ミラは思った。

きっと優理はこれ以上この事に首を突っ込むなと言いたいのだろうと。

ミラは優衣がのんびりおっとりしながら、地雷を踏むとかなり物騒な人間…いや喰種であることを知っている。

心の隅で思った。

優理も同じタイプだろう、と。

 

 

 




どうでしたか?

ちょっと無理矢理だった気がする。。。

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