SOUL CATCHER(S) Tank and Reaper   作:アニアス

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プロローグ

桜の花が舞い散る満開の春。

 

ここは群馬県に位置する鳴苑高校。

 

今日は入学式ということで新しく鳴苑高校へ入学する生徒たちが校門を潜ると出迎えたのは在校生たちによる部活の勧誘活動。

在校生たちは勧誘に力を入れ部員を引き入れようとする中、とある男女はそんなことなど目にもくれず話し込んでいた。

 

「なぁ笹井!部活サボって遊びに行こうぜ!」

「ごめーん山市、従姉妹が入学してきてるから案内しないと」

「そっかー、しょうがねぇな~」

 

山市という男子が笹井という女子を遊びに誘おうとするが、用事があると言って柔らかく断る笹井。

 

(ったく、しつこいんだよ毎回…)

 

しかしその内面ではしつこくつきまとう山市のことを煙たがっており、嘘をついて彼から逃げようと試みている。

そんなことなど分かるはずのない山市が嘘に騙されて納得しようとした時だった。

 

 

 

「従姉妹…ホントかなぁ?」

 

 

 

山市のすぐ後ろを通っていた黒髪の男子が二人にわざと聞こえるように呟いた。

 

「…は?何だよお前?新入生か?」

「?」

 

当然山市と笹井の耳にもその呟きが聞こえて黒髪の男子の方を見ると、山市が突っかかっていく。

 

「笹井はそんなヤツじゃねぇよ!」

「す、すみません!そうじゃないなら失礼しました!」

 

笹井のことを信じている山市は呟いた男子に声を荒げながら詰め寄ると、黒髪の男子は慌てた素振りで謝った。

しかし、まだ怒りが治まらない山市が更に文句を言おうとした時だった。

 

 

 

「クロ、入学早々何してんの?」

 

 

『!?』

 

 

 

突然黒髪の男子の後ろから大きな影が伸び、山市と笹井がその方向を見ると祝入学の名札をつけている女子が黒髪の男子のすぐ後ろに立っていた。

 

その女子はウェーブボブカットの赤みがかった茶髪を携えているが、何よりも目立つのは身長。

筋肉質の体型ではないが脚と胴体が長く周囲からも一目を集めており、山市も笹井もその大きさに愕然としてしまう。

 

(デ、デカッ!?コイツ、2メートルはあるんじゃ!?)

 

そんな二人を余所に黒髪の男子は高身長の女子に何事もなく話しかける。

 

「ごめん、どうしても気になったからつい」

「だからって集合場所の校門から離れないでよ。運動部からの勧誘をかわしながら探すの大変なんだから」

 

呆れながらも高身長の女子は山市と笹井を見下ろす形で話し出した。

 

「すみません先輩。コイツとは中学からの付き合いなんですけど、人の感情を見抜く洞察力がずば抜けて高いんですよ。だから他人に対して余計なことを言ってしまってホントに困ったもんで…」

「あ、いや…」

 

愚痴を溢しながら謝る高身長の女子に対して、すっかり怒りが吹き飛んでしまった山市は言葉を詰まらせながら許そうとした時だつた。

 

 

 

「サツキー!ヨシヒトー!やぁっと見つけたデース!」

 

 

 

遠くから一人の人影こちらへと走ってきており、今度はそちらへ視線を向けると山市と笹井は少しだけ目を見開いてしまう。

 

走ってきたのは金髪のロングヘアを携えおり、白い肌にマリンブルーの目をしている明らかに外国人である女子だった。

まさかの外国人の登場に呆気に取られる山市と笹井であるが、辿り着いた外国人の女子は黒髪の男子と高身長の女子にカタコトの日本語で話しかける。

 

「遅れてごめんなさいデス!」

「…集合する時間と場所を決めてた張本人が遅刻するってどういうことよ?」

「2分の遅刻くらい許してあげたら?」

「ダメ。コイツは一度しめないとまたやらかす」

「Oh、許してくださいデス。サツキの大好きなウィダ-ゼリー3本でどうデス?」

「…分かった。5本で手打ちにしてあげる」

「君も君で甘いよね」

 

外国人の女子と高身長の女子、そして黒髪の男子。

どうやらこの3人は同じ中学校出身のようで親しげに雑談をしていると、黒髪の男子は山市と笹井の2人へと向かい合い会釈をする。

 

「お騒がせしてすみませんでした、僕たちはこれで失礼します。それとさっきのことですけど忘れてもらって大丈夫ですので、ホントにそうじゃないなら」

 

最後にそう言い残すと3人はそのまま校舎へと向かって行った。

 

「で?何で遅れたの?」

「それは~……家に忘れ物をしちゃったのデス」

「…成る程、寝坊ってワケね」

「な、何で分かったのデス!?」

「アンタは隠し事があると左手を隠す癖があるの。だからすぐに分かるっての」

「でも大抵の女の人は嘘をつくと手を後ろに回すらしいよ」

「勉強になるデス。気を付けないといけないデスね」

 

まるで嵐が過ぎ去ったように立ち去った3人に呆気に取られていた山市だったが、我に帰りいつものテンションで笹井に話しかける。

 

「何だよアイツ、女二人も引き連れて。それに最後の、まるで笹井が嘘をついているみたいに抜かして…なぁ?」

「……え!?あ、うん!ホントに失礼だよね!?」

 

しかし笹井は不意に話しかけられたことに驚きながら返すが、顔中汗をかいていて目は泳いでおり明らかに動揺している様子だった。

それを見た山市に不信感が芽生え始めてしまう。

 

(…あれ?笹井なんか、動揺してる…?嘘じゃねぇよな…!?あ!そういやさっき、女は隠し事をすると手を隠す癖があるって!)

 

さっきの新入生たちの話を思い出した山市は笹井の手へ注目すると、手は後ろに回しておらず前に出してジェスチャーのように動かしている。

 

(よかった…!手は後ろに回してねぇ!つまり隠し事はしてねぇってことだ!………いや、待てよ!?)

 

ホッとしたのも束の間、今度は別の違和感が込み上げてきた。

 

(何で手を前に出してジェスチャーしてるんだ…?笹井はそんなことしねぇってのに……まさか、手を後ろに回さないように意識してる…!?ウソだろ…!?笹井が俺に、嘘を!?)

 

普段からジェスチャーなんてしない彼女の行動に山市は徐々に疑いを持ち始める。

 

(急に言われて焦ったじゃん!何でバレたの!?わざとらしかった!?とにかく、手を後ろに回さないように気を付けないと!もっとちゃんと嘘をつかなきゃ!)

 

笹井も笹井でうまく誤魔化そうと手を前に出してジェスチャーを続けては警戒心を高めていく。

 

しかし2人は知るよしもない。

この状況が偶然ではなく故意によって生み出されたものだということを。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

そんな2人の様子を人混みに紛れて遠くから伺う人影があった。

それは先程の新入生3人だった。

特に黒髪の男子はとても楽しそうに見ており口元のにやけを隠せずにいる程だった。

 

「生まれた生まれた。疑いと警戒心…」

「またヨシヒトはオアソビしてたんデス?」

「毎回やってて飽きないの?」

 

あの2人を故意に不仲へと陥れた黒髪の男子に外国人の女子はいつものように笑顔を絶やさず、対照的に高身長の女子は呆れてしまっている。

2人とも黒髪の男子の性格などを把握はしているものの、責めたり咎めたりすることなどは一切見受けられなかった。

 

そんな2人に黒髪の男子は淡々と答える。

 

「全然飽きないよ。だって、ああいう"心"を見るとすごく面白いんだよ。それより、早く吹奏楽部のところへ行こうか」

「……相変わらずヨシヒトは歪んでるデスね。まぁ私としてはどうでもいいデスけど」

「止めはしないけど、なりふり構わず引っ掻き回さないでよ。クロのせいで私たちまで悪目立ちするのなんてまっぴらごめんだから」

 

そして妙な会話を終わらせると3人は校舎の中へと入っていった。

この時まで誰も知るよしがなかった。

この3人が鳴苑高校吹奏楽部に混乱を招くことなど。

 

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