魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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奈落、そして新たな仲間

「……………シュ。…………シュシュ。…………マシュシュ!」

「う………うーーーーーん………」

 

誠司が薄らと目を開けると目の前には涙目になっているネマシュがいた。

 

「マシュシュ!」

ネマシュが飛び付き右肩に顔を埋める。肩越しからネマシュの嗚咽も少し聞こえてくる。随分と心配させたみたいだ。誠司はしばらくそのままにして頭を優しく撫でてやる。

 

 

ネマシュがひとしきり泣いて落ち着いた頃、誠司はネマシュに尋ねた。

 

「それにしても…… 随分な高さから落ちたはずなんだが…… 一体どうやって助かったんだ?」

「マシュ! マシュマー、マシュシュマシュ!」

 

ネマシュが身振りを混じえつつ説明する。どうやら、奈落に落ちた際にネマシュがギリギリの所で”まもる“を発動させたらしい。誠司はネマシュの頭を撫でながらお礼を言う。

 

「そうか…… ありがとう、助かったよ」

「マシュー。マ、マシュマッシュ……」

 

ネマシュが少し気まずそうに下に視線を向ける。ネマシュにつられて誠司も顔を動かして視線を下に向ける。そういえば、妙に下が柔らかかったような………

 

そこにはバッフロンがいた。もちろん、既に屍だったが。石の床に叩きつけられて内臓は破裂し、骨が変な方向から飛び出ていた。血が今も尚ドクドクと流れている。かなりショッキングな絵面だった。誠司達が落ちたのはバッフロンの背中部分だった。飛び出た骨が身体に突き刺さらなかったのは本当に幸いだった。服にも血は付いていない。

 

誠司は思わず起き上がった。その途端に身体全体に強烈な痛みが走る。無傷で済んだ訳ではなかったようだ。まぁ、五体満足で助かっただけ良いだろう。だが、まずはそんなことより………

 

誠司は急いでバッフロンから降りると、すぐに近くの岩に向かって嘔吐する。ネマシュは心配そうな顔をしている。

 

「はぁ…… 牛肉とか当分食べられなくなりそう…… 夢に出て来ないと良いんだが……… つまり、俺はネマシュの”まもる“とあのバッフロンがクッションになったことで助かったって訳か……」

「マシュ」

「そうか………」

 

しばらく誠司はバッフロンの屍を見ないようにしていると、ふと大事なことを思い出した。

 

「……そうだ…… ハジメ! ハジメはどうなったんだ!?」

 

誠司は自分達が落ちた周囲を見渡す。しかし、ハジメの姿はない。もしやと最悪の予想をする。

 

そう、バッフロンの下敷きになってしまったのではないかという予想だ。誠司は夢中でバッフロンを動かそうとする。しかし、百キロ以上はあるバッフロンの死骸を動かすのは容易ではない。せいぜい数センチ動かすのが精一杯だった。吐きそうになるのを必死に堪えながらバッフロンの死骸を数秒だけ持ち上げたりもした。恐らく火事場の馬鹿力というやつだろう。誠司がほんの少しだけ持ち上げた隙にネマシュに素早く確認を取ってもらったりしてやっとハジメはバッフロンの下敷きになっていないことが分かった。この時ほど安心したことは無かったと思う。

 

安心したと同時にまた吐き気がこみ上げて来たので急いで岩に戻った。嘔吐し終えると、誠司は考え始めた。

 

「それじゃ、ハジメは一体どこに……? 俺は運が良かったけどもしかしたらハジメはもう………」

 

もしかしたらもう既にハジメは別の場所で死んでいるのかもしれないという恐怖が襲う。その時、足元に何かが寄りかかる気配がした。振り返ると、ネマシュが誠司に寄り添っていた。

 

「マーシュ……」

「ネマシュ…… ありがとう。たしかに色々怖がってちゃ先に進めないよな。それにもしも死んでいるのならせめて何か遺品だけでも拾ってやらなきゃな………」

 

誠司はネマシュを抱き上げる。そして、振り返ると誠司は目を疑った。

 

なんとバッフロンの死骸が綺麗さっぱり無くなっていたのだ。バッフロンはちゃんと死んでいたので自分で動くはずはないし、何かがバッフロンの体を持って行ったような形跡も無い。消えたとしか思えなかった。

 

「どうなってんだ………」

「マシュ………」

 

誠司はまるで狐につままれたような気分だった。ネマシュも同様だったのか呆然としていた。

 

 

 

それからしばらく誠司達はマッピングしながら歩き続けた。途中グラエナの群れに遭遇し追いかけ回されたり、ギガイアスに襲われたりもしたが、なんとか生きていた。しかし、妙な違和感があった。やけにポケモンに見つかるのだ。鼻が効きそうなグラエナとかならまだ分かるがギガイアスには明らかに鼻はない。音も出ないようにずっと注意を払っていた。

 

念のため自分のステータスプレートを確認するが、特に問題は無かった。まさかと思い、魔獣図鑑の技能を使ってネマシュをもっと詳しく調べてみた。すると、原因が分かった。

 

このネマシュの特性は”はっこう“というものだった。この特性は他のポケモンを引き寄せる効果があるらしい。道理でポケモン達によく襲われるわけだ。

 

「だからか………」

「マシュ……」

 

誠司は脱力した。ネマシュが申し訳なさそうにする。それに気付いた誠司はすぐにネマシュを励ました。

 

「そんな顔するな。お前には助けられている所も多いんだから」

 

一応原因が分かったのだ。まだ対策は取れる。

 

それから一層、誠司達は警戒を強めて進むことになった。幸い、ネマシュもポケモンだ。相手を無力化させる技は使える。襲われそうになったら片っ端から”ねむりごな“を使って眠らせていった。途中、相手を混乱させる”あやしいひかり“という技も新しく覚えた。

 

 

 

「こんな所に川があるのか……」

 

誠司達は水の流れる音が聞こえたのでその音がする方向に向かった所、川があった。ひとまず助かった。歩き通しで喉がカラカラだったからだ。誠司は川の水をすくうと口に入れた。すごく美味しかった。ネマシュも水を飲む。喉を潤したことで今度はお腹が鳴った。

 

「そういえば、何も食ってないもんな……」

 

誠司が思わずそう呟く。近くは岩ばかりで食べるものなんて無い。すると、ネマシュが近寄って来て頭のカサを見せてきた。

 

「ん? 何だ?」

 

その時、誠司は以前知ったネマシュの説明を思い出した。

 

「そうだ…… ネマシュの頭のカサって食べられるんだよな…… 確か食べられても一晩で再生するんだっけか?」

「マシュ」

「そうか…… それなら………」

 

誠司は恐る恐るネマシュの頭のカサを少しちぎり、口に放り込んだ。碌に味付けもされていないが、悪くない。ちゃんと調理出来ればきっと凄く美味しかっただろう。次にネマシュはかふんだんごを作り、それを誠司に渡した。誠司は試しにかじってみる。コレは美味くも不味くもない味、無だった。だが、こんな時に贅沢など言ってられない。

 

そんな時、川から何か声が聞こえてきた。

 

「ゴロゴロ」

 

青い何かが顔を出した。青い体にオレンジ色の頬、つぶらな瞳をした可愛らしい子だった。

 

「ん? 確かこいつは……」

 

すると、またいつものように頭の中に情報が入って来る。今まで何度もやられてきたせいかもう慣れたものだ。

 

「……そうだ。ミズゴロウだ。確か水属性の子だったな」

 

ミズゴロウは川から上がると、誠司やネマシュに興味があるのか近寄って来た。さっきまでのポケモン達と違って随分人懐っこい子のようだ。

 

「ゴーロゴロ?」

「ん? ああ。俺達はここに迷い込んだんだ。出口知らないか?」

 

ミズゴロウが尋ねる。慣れてきたのか技能がだいぶ強化されてきたのかポケモンが何を言っているのか大体分かるようになってきていた。

 

「ゴロ…… ゴロゴロ………」

 

ミズゴロウは首を横に振る。知らないらしい。どうやらこのミズゴロウ、元々は上の階層で暮らしていたらしいのだが、川に流されてここまで流れ着いてしまったらしい。そして、戻ることも出来なかったので以来ここでひっそりと暮らしているそうだ。

 

「そうか…… まぁそんなこともあるわな」

「マシュマシュ」

「じゃあ、俺達はそろそろ行くよ。住処でお昼休憩して悪かったな」

 

そう言って誠司はネマシュと一緒に出発した。しかし……………

 

「マシュマー」

「ああ。なんかあのミズゴロウ、俺達に付いて来てるな」

 

何故かミズゴロウも誠司達の後を付いて来たのだ。誠司達が振り返るとすぐに岩陰に隠れ、前を向いて歩き始めるとミズゴロウもこっそり付いて来る。流石に鬱陶しくなってきたので誠司がミズゴロウに尋ねた。

 

「おい、どうしたんだ? ずっと俺達に付いて来て……」

「ゴロ。ゴロゴロッ!」

「……! もしかしてお前、俺達と一緒に行きたいのか?」

「ゴロ!」

「そうか…… それなら一緒に行くか。少しでも戦力があった方が良いしな。ネマシュはどう思う?」

「マシュ!」

 

誠司が尋ねるとネマシュも頷いた。ネマシュも賛成のようだ。誠司はミズゴロウに呼び掛けた。

 

「来いよ、ミズゴロウ!」

「ゴロ! ゴロロッ!」

 

ミズゴロウは嬉しそうに誠司に駆け寄った。

 

 

こうして、奈落に落ちたものの早速新しいポケモンを仲間にすることが出来た誠司であった。




誠司の二体目、ミズゴロウゲットです。次回にハジメと再会します。
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