魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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全員集合

「何なんだ、こいつらは!?」

 

苛立ちの隠せない誠司の怒声が響いた。ポケモン達も、襲い掛かってくる目の前の化け物達に対して攻撃を浴びせているが、あまり効果があるようには見えない。

 

あの後、誠司とレミアは、仲間達と合流することが出来た。戦えないレミアは、ユエの張った結界とシャンデラ達によって守られており、シアは前衛として敵を寄せ付けないよう戦っている。ティオは炎や風を使って化け物達を蹴散らしている。そして、ハジメはポケモン達に守られながら、オルニスを駆使して、ミュウの捜索を続けていた。

 

だが、未だにミュウを見付けられずにいた。空を飛んで上空から探してもらっているヤミカラスとフクスローも戻って来ていない。

 

そうこうしているうちに、数十体の化け物達はお互いに合体し始めていく。そして、合体した化け物は、巨大な幽霊のような姿に変わった。醸成された悪意と敵意に塗れている。

 

『オンミョーーーン!!』

 

化け物は大きく吠え、彼らの意識が誠司達を捉えたのが分かった。目を向けられた訳ではないが、背筋が凍りそうなくらいの強大な力の気配を感じる。しかも、時間が経つ毎に、刻一刻とプレッシャーが増大していく。

 

化け物の周りにある無数の瓦礫や建物達が宙を浮かび始める。誠司の魔獣図鑑が反応する。

 

「これは……“ポルターガイスト”って技か? ってことはこの化け物はポケモンなのか!?」

 

だが、魔獣図鑑から該当するポケモンの名前が出てこない。ティオみたいに誰かが変身しているのかもしれない。浮かび上がった瓦礫達が誠司達目掛けて降り注ぐ。今は目の前に集中するしかない。誠司はキュウコンに指示を飛ばそうとする。

 

その時だった。

 

「“壊劫”」

 

誠司達を綺麗に避けて、その周囲の瓦礫を押し潰す。

 

「“黒傘九式・天灼”」

「“氾禍浪・大蛇”」

「“震天”」

 

更なる追撃が入って、誠司達に襲い掛かろうとしていた瓦礫達を、消滅させた。さしもの誠司達も目が点になる。今の攻撃の中に、重力魔法や空間魔法があったのだ。ユエのものではない。そもそも声が違う。だが、どこかで聞いたことのある声だった。と、混乱している誠司達に、ずっと探し求めていた声が響いた。

 

「ママーーっ!」

「フルルゥーーッ!」

「ミュウ!?」

 

心細い思いをしていないか。怪我をしていないか。そう心配と焦燥が募っていたが、当の本人は元気一杯だった。

 

「怪我はしてない!? ミュウちゃん!?」

「大丈夫なの! あとつよ〜い“えんぐん”も連れてきたの!」

 

母であるレミアのもとに駆け寄るミュウ。フローゼルもミュウを追いかける。それを見たハジメは苦笑いを浮かべる。

 

「レミアさん、ミュウちゃん……いつか絶対に大物になるよ」

「この子ったらっ、もうっ! どれだけ心配したと思って! もぉっ!」

 

レミアは泣きながら、ミュウを抱き締める。ユエやシア、ティオが、再会した母娘を保護する。そこへ無数の化け物が襲い掛かろうとする。ハジメがドンナーを発砲して隙を作り、エースバーンとギモー、そしてハジメ達と合流したフローゼルが反撃を仕掛けていく。

 

そんなハジメに、聞き覚えのある声が掛かった。

 

「……へぇ、燃焼石の爆発を利用して礫を飛ばす武器か。素晴らしいアーティファクトだ。それにこれだけの魔獣達と良好な関係を築いているとはね」

 

黒コートを翻す背中が見えた。黒い傘を使って応戦する、眼鏡をかけた青年に凄い見覚えがあった。

 

「オスカー・オルクス? どうして……」

「……なるほど。どうやらミュウちゃんの言う通り、本当に僕達のことを知っているらしいね」

「コン」

 

眼鏡をクイッと掛け直すオスカー。肩にはロコンも乗っている。ロコンが炎を吐き、同時にオスカーの黒傘が衝撃波を放つ。それにより、ハジメの目の前の化け物を吹き飛ばす。

 

視界の端では、ダダリンと海人族の美女が別の化け物達を圧倒していく。その姿にも見覚えがあった。更に、オスカーの隣にフッと長身の男が転移してきた。

 

「あれはメイル・メルジーネ? それに空間魔法ってことはナイズ・グリューエン? ってことは……」

「フッフーン! 天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!」

 

天から自由落下で落ちてくる、もはや聞き覚えなどあり得ない声が響いた。誠司達の目の前に着地したのは、

 

「世界が愛する超絶天才美少女魔法使いのぉ……」

 

渾身の決めポーズを決める。世が世ならアイドルとかでも通用していただろう。

 

「ミレディちゃぁ〜〜ん! さん・じょう!」

「ソルルゥ!」

「ルナァン!」

 

わざわざ魔法で七色の噴煙をバンッと上げて、相棒達と共にミレディちゃんが参上した。ゴーレムでも、ニコちゃん仮面でもない、金髪碧眼の紛うことなき美少女姿である。以前、オスカーの手記に挟まっていた、メイド姿の隠し撮り写真にあった通りの美少女姿だ。

 

色々と驚愕や混乱はあるが、ミレディに出会った以上、やるべきことは一つだ。それは…………

 

「「「「死ね、ミレディーーーーーーっ!!!」」」」

「へ? にょわーーーーっ!?」

 

誠司の銃とハジメのドンナーが火を噴き、シアは思い切りぶん殴ろうと飛びかかり、ユエは強力な炎魔法で殺しにかかった。

 

ミレディは、バッチリ決まったご挨拶の直後に飛びっきりの憤怒を浴びて悲鳴を上げる。咄嗟にソルロックとルナトーンが防御してくれたが、二体とも冷汗を流している。

 

「ちょっ、君達落ち着け!」

「くっ、止めないでオスカー! 僕達がどれだけおちょくられたと思っているんだ! たとえ偽物や幻覚であったとしても、土手っ腹に五、六十発は風穴空けないと治まらないんだよ!」

「いや、一発でも風穴が空いたら、人は死ぬからな! ミレディの被害者だというのは分かったから……っておい! 君も何をしているんだ!」

「……ドダイトス、ムウマージ、遠慮は要らん。最高火力であの悪霊を滅ぼしてくれ」

「ドダ……?」

「ム、ムゥ……?」

「っ!? させるか!? ロコン、“かなしばり”だ!」

「コンッ!」

 

オスカーとロコンが、ハジメと誠司をどうにかして抑え込む。

 

「ウサギちゃんも落ち着きなさいな。ミレディちゃんがうざいのはお姉さんよ〜く分かってるからね? って、あなた本当に兎人族!? なんてパワーしてるのよ!」

「ダッダン!」

「いったい何度、正体不明の液体をぶっかけられたと思ってるんですか! コノ恨ミ、ハラサデオクベキカッ!!」

「ミレディちゃんっ、あなた本当にこの子達に何をしたの!」

 

水牢の魔法で、水の檻に閉じ込めたり、だぁりんの鎖で拘束しても、力づくで脱出してしまうシアに、メイルの方が悲鳴を上げる。

 

「ば、馬鹿なっ。空間魔法だと!? いったい何者だ!?」

「サン!?」

「……ミレディ死すべし! 慈悲はない!」

 

ナイズの空間固定の魔法やサンドパンの“ミサイルばり”でユエを止めようとするが、同じく空間魔法を使うことでそれらを悉く打ち消していくユエ。その光景に、ナイズは目を見開いた。

 

取り敢えず、全く記憶にないが、自分が何かしでかして相当な恨みを買ってしまっていることはどうにか理解したミレディ。

 

「ぜんっぜん身に覚えがないけど、なんかすみませんでしたぁーーーっ!」

 

潔く、そして器用に空中土下座を発動させた。それでも地に降りない頭の高さは、流石ミレディクオリティーと言うべきか。

 

一方で、ティオとレミアは何が何だか分からず、置いてけぼりの状態だ。そんなカオスな状況を打開したのは、ミュウだった。

 

「もーーーっ。ハジメお姉ちゃんも誠司お兄ちゃんもシアお姉ちゃんもユエお姉ちゃんも何してるのーーっ。今はそれどころじゃないのーーっ」

 

ミュウのお怒りの声は、この騒がしい戦場によく響き渡った。

 

「お兄ちゃんもお姉ちゃんもメッなの!」

「あ、はい……」

「頭に血が上りました……」

「すみません……」

「ん、面目ない……」

「や〜い、幼女に怒られてやんのぉ〜!」

「ミレディお姉さん?」

「ひっ!? す、すみません」

 

幼女にマジお叱りを受けてマジ凹みする誠司達と、ちょっとした腹いせで反撃に出ようとしたら、幼女の真顔と低い声音を頂戴してマジビビリするミレディ。全員頭がすっかり冷えていた。

 

「そんなことより時間がないの! 影さんを助けてあげてほしいの!」

 

ミュウの真剣な表情に、誠司とハジメは顔を見合わせてほぼ同時に頷く。子供の戯言と切って捨てる選択肢はなかった。すぐにユエ達を集合させる。そして、同時にポケモン達と共に守りを固める。

 

オスカー達も同様に、誠司達のもとに集まって来た。そして、彼らと同様に周囲の守りを固めていく。

 

それにより、外は手出しが出来なくなった。時折り怨嗟の声が聞こえるが、スルーする。

 

「それで、ミュウちゃんは何を知ってるの?」

 

ハジメはミュウに視線を合わせつつ、尋ねた。ミュウは一呼吸おくと、近くに浮かぶ影に手を添えながら口を開いた。

 

「この影さんは、あのバケモノの仲間なの。影さんは、ハジメお姉ちゃんとオスカーお兄さんに助けてほしかったの」

 

廃城が近づくにつれて、少し力を取り戻した影はミュウに全てを明かしたらしい。

 

曰く、遥か昔、百八の悪の魂達は特殊な魔法によって、『要石』に封印され、長い間眠っていたらしい。

 

この影……魂だけは長い封印を経て、己を見つめ直し改心することが出来たのだが、残りの百七の魂達は改心することはなかった。寧ろ凶暴化したらしい。

 

そして、遥かな時を経て封印が弱まっていたこともあり、要石は壊れ、魂達は散り散りになってしまったらしい。まだ完全に要石は破壊されていないため、今のところ魂達がこの街から出ることは出来ないが、それも時間の問題だった。

 

完全に要石が破壊されれば、どんなことになるか分かったものではない。その事態を危惧する者がいた。

 

それがカプ・レヒレだった。この街の守り神でもあったカプ・レヒレは、街が滅んだ後も、見守り続けていた。そして、封印が解けかかっている状態を悟ると、特殊な霧を発生させた。

 

カプ・レヒレの能力には謎が多い。時と空間を超えることも、その能力の一つだったようだ。しかし、それも何度も何度も出来る訳ではない。

 

更に、破損したものを修復させるのであれば再生魔法でも良いのだが、昔のものであればある程、魔力を要するため、不可能だ。そこで、生成魔法を使える錬成師でなければならず、かつ保有魔力量や技術などの観点から二人以上である必要があったのだ。

 

「違う時代で、でもハジメお姉ちゃんとオスカーお兄さんは重なった! 同じ時、同じ場所に二人はいたの! 奇跡的に!」

 

手を広げながら叫ぶミュウ。

 

誠司は逡巡する。驚愕や疑念は尽きないが、このままでは埒があかないのも確かだ。

 

その時、地面が大きく揺れる。どうやら、本当に時間がないらしい。誠司はハジメを見ると、ハジメも仕方ないと肩を竦める。ミュウの頭をくしゃりと撫でる。ミレディも応える。

 

「よし、やろう。うちのオー君は世界最高の錬成師だからね。安心して良いよ! な〜んにも問題ないさ!」

 

やるのはオスカーだというのに、ドヤ顔で請け負うミレディ。そんな彼女にオスカーは苦笑しつつ頷く。

 

細かい事情や感情などは全て後回しだ。幼子の切なる願いを前にして考慮する理由などない。言葉にしていないが、そんな共感が全員を結びつけた。

 

「誠司、皆。僕達が要石を直している間、守りを頼むよ」

「ロコン、ミレディ、いつも通りだ。僕の作業を邪魔させないでくれ」

 

不敵な笑みを浮かべるハジメと、眼鏡をクイッと押し上げて小さく笑うオスカー。それに、誠司達とミレディ達も自信満々で請け負う。

 

ここに、時空を超えた世界最強チームが結成された。




カプ・レヒレの霧が、時間と空間を超越するというのは本作オリジナルです。でも、死者と再会出来たりと何でもありみたいですし、良いよね?
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