魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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新章突入です。すみません、前話で特別編を書くと言いましたが、それよりも早く新章の話ができてしまったので、先に投稿しました。特別編は出来次第、合間に差し込む形で投稿します。


グリューエン大砂漠~王都・神山
砂漠での出会い


エリセンでミュウ達と別れてから数日が経った。その間に色々な出来事があった。アンカジ公国で再生魔法を駆使して毒に侵されていたオアシスを復活させたり、教会から異端認定されるもランズィを始めとした住人達によって庇われたり、怪我をしていたキョジオーンを助けたら懐かれて誠司の仲間になったりと本当に様々だ。

 

そんなこんなで、グリューエン大砂漠の横断も終わりが見えてきた頃、プリーゼを走らせる誠司達は、野生のドラピオンに襲われている隊商と遭遇した。

 

最初に、その騒動に気がついたのはシアだった。

 

「あれ? ハジメさん、あれって……何か襲われてません?」

 

ハジメはシアに言われた通り前方に前を向けると、顔を顰める。

 

シアの言う通り、どうやら何処かの隊商が襲われているようで、襲っているのは紫色の大サソリのようなポケモンのドラピオンだ。ドラピオンが腕を振り回すだけで近くにいた男の身体が吹っ飛ばされる。ドラピオンと戦っている者達の行動は二種類に分かれていた。結界が張られている隊商を守るように戦っている護衛と思しき者達と、小汚い恰好をしていてドラピオンから真っ先に逃げ出そうとしている者達だ。

 

「小汚い恰好をしている人達は賊か何かかな? 大方賊が襲ってきて対処していたら、今度はあのドラピオンが乱入して襲い掛かってきたってところだろうね」

「ああ。ドラピオンは砂漠を横断する者を問答無用で襲う習性があるからな。それにしてもあのドラピオン相手に対抗できてるなんて凄いな」

「ん……あの結界は中々」

「ふむ、さながら城壁の役割じゃな。あれを崩さんと本丸の隊商に接近できん。しかも結界越しに魔法も飛ばしておるようじゃし、ドラピオンも攻めあぐねておるんじゃろ」

「でも、一向に引く気配がありませんよ?」

「そりゃあ、あんな隊商全体を覆うような結界、異世界組でもなけりゃあ、そう長くは持たないよ。多少時間は掛かるけど、待っていれば勝手に解ける」

「それにドラピオンは執念深いからな。目の前の獲物を簡単に諦めたりはしない」

 

隊商の周りには重傷を負って蹲る者が数人、あのドラピオンだけでなく最初の賊達に殺られたのか既に血の海に沈んでいる者も数人いた。護衛達も必死に戦っているが、決定打に欠けていた。ドラピオンが、逃げ出そうとした賊の男を鷲掴みにして頭を引き千切った直後、ハジメの推測通り、結界は効力を失い溶けるように虚空へと消えていった。

 

それを見たドラピオンは不気味に笑って手に持っていた賊だったものを投げ捨てると、隊商のもとへ向かおうと歩みを進める。護衛達が食い止めようとするが止まらない。フードを被った護衛の一人は懐に手を入れるもどこか迷っているようだった。その時、隊商の方から何かが飛び出してきた。灰色の筋肉質なポケモン、ゴーリキーだ。突然魔獣が乱入してきたことで護衛達の間で混乱が生じるも、一応味方だと分かったようで、どうにか立て直す。ゴーリキーを見た一人の護衛も懐からあるものを出すと、また別のポケモンが現れた。騎兵のような姿のポケモン、シュバルゴだ。シュバルゴもドラピオンに果敢に立ち向かっていく。

 

ゴーリキーにシュバルゴ。誠司達にとって、この二体には心当たりがあった。

 

「ハジメ、悪いんだけど」

「うん、分かってる。()()()()がいるんじゃ放置できないよね」

 

ハジメはそう言って、アクセルを全開にした。車輪がギャリギャリギャリと地面を噛み、ロケット噴射でもしたかのように凄まじい勢いで加速する。

 

聞き慣れない音が聞こえてきて、その音のする方に視線を向けると、何か得体の知れない物体が自分達に向かってくる光景が見えた。新たな敵かと思い、護衛達が身構えるも、シュバルゴだけは動かない。それが何か知っているからだ。その物体から何かが現れると同時に男の声が響く。

 

「モグリュー、“ドリルライナー”!」

「グリュ!」

 

モグリューはドリル状に変形してドラピオンに突っ込んでいく。プリーゼから誠司達が降りると、ゴーリキーとシュバルゴは同時に反応した。ドラピオンは新たに現れた誠司達に最大限警戒しているようだが、折角の獲物を諦めきれないのだろう。逃げようとせず、ひたすらに誠司達をにらみつけている。その時だった。

 

「~~~♪」

 

何か歌声のような音が聞こえてきた。音量は然程大きくないが、それでもどこか心が揺さぶられる不思議な音色だった。その音の正体にいち早く気づいた一部の護衛やティオは素早く耳を塞ぎ、誠司達にも耳を塞ぐよう呼びかける。何人かは音に誘われそうになったが、なんとか全員その場に踏みとどまることができた。一方で、ドラピオンは音に完全に魅了されてしまい、フラフラした足取りで音のする方へ行ってしまった。だが、それを止める者は一人もいない。

 

しばらく音が流れるも、ドラピオンの姿が完全に見えなくなってようやく音が止んだ。音が聞こえなくなり、耳から手を離すと、シアが尋ねた。

 

「あの音は一体何だったんですか?」

「あれは精霊だよ。グリューエンの精霊」

 

シアの問いに、護衛の一人が答えた。彼が言うには、このグリューエン大砂漠を横断する際に、何か不思議な音が聞こえることがあり、その音を聞いても絶対に音のする方角へ向かってはいけないという暗黙のルールがあるのだそう。そして、その音のする方角へ向かって、帰ってきた者はいないらしい。

 

ひとまず、危機は去ったということで、張りつめていた空気が一気に緩くなった。残念ながら、護衛の中には亡くなってしまった者もおり、そういった者達は再生魔法でも治せなかった。悲しいことだが、こればかりは仕方がない。誠司のもとにゴーリキーとシュバルゴが嬉しそうに駆け寄ってきた。誠司も嬉しそうに二体に声をかける。

 

「久しぶりだな、お前ら。元気そうじゃないか」

「リキッ!」

「シュバ!」

「そう言うお前達もな」

 

フードを被った護衛が誠司達に話しかけてきた。フードを外すと、見覚えのある顔がそこにあった。

 

「やっぱりあなたでしたか。メルド騎士団長」

「お久しぶりです、メルドさん。シュバルゴを出してきた時にもしかしたらと思いましたけど。でも、どうしてメルドさんがここに……?」

「それは……」

「あの、その件については、私から説明させて頂きます。……僥倖です。私の運もまだまだ尽きてはいないようですね」

 

ハジメの問いに対してどこか歯切れが悪そうにしているメルドに、小柄で目深にフードを被った人物が口を挟んだ。一見すると物凄く怪しいが、実は先程の結界を張って必死に隊商を守っていたのがその人物であると、魔力の流れと色で既に確認していたので、誠司達は特に止める事もなく素通りさせた。

 

フードの人物は、心底ホッとした様子で、ずれたフードの奥から煌く金髪碧眼とその美貌を覗かせた。そして、感じ入るように細めた目で誠司とハジメを見つめながら呟く。

 

「……南雲さんと中西さん、ですね? お久しぶりです。雫達から貴方の生存は聞いていました。貴方の生き抜く強さに心から敬意を。本当によかった……」

 

フードの人物は、フードの奥から笑いかけた。

 

彼女の笑顔は、一度それを向けられたなら、老若男女の区別なく陶然とすること間違いないと思わせる可憐なものだ。だが、誠司もハジメも、特に何かを感じた様子はなく、むしろ胡乱な眼差しをフードの人物に向けていた。

 

「……………………?」

「……あの、失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」

「へっ?」

 

全く知らない人間を見るような目で見られた事にショックを受けて、思わず間抜けな声が出てしまったフードの人物。呆然としているフードの人物に代わって、慌てたようにメルドがフォローを入れる。周囲に聞こえると厄介なのか、耳に口元を寄せて小声で話す。

 

「お、おい、二人とも! 王女様だ! 彼女はハイリヒ王国王女、リリアーナ・S・B・ハイリヒだ! 覚えてないのか!?」

「…………………………………??」

「ああ、だからメルドさんが護衛してたのか……」

「ほ、本当に覚えていないのか!? 王宮で話したこともあっただろ!?」

「……………………………………………???」

「……………………………ああ、そういえば」

 

確かに、誠司達は立場が微妙だったこともあり、リリアーナと直接話した機会は数える程しかなかった。そのせいか、ハジメは中々彼女のことを思い出せずにいた。そして、誠司も未だに思い出せずにいる。そんな二人の態度にリリアーナは涙目になった。

 

「ぐすっ、忘れられるって結構心に来るものなのですね、ぐすっ」

「殿下、泣かないでください! 彼らはちょっと特殊なだけでして! 貴方を忘れる人は普通いませんから! だから泣かないでください!」

「……なんで僕達さりげなく罵倒されてるの?」

「……ダメだ。全く思い出せん」

「お前達は黙っててくれ!」

「いいのです、私が少し自惚れていたのです……」

 

そんな微妙な雰囲気の誠司達のもとへ、またまた見覚えのある人物が寄ってきた。

 

「お久しぶりですな、息災……どころか随分とご活躍のようで」

「あなたは……モットーさんでしたか」

「ええ、覚えていて下さって嬉しい限りです。ユンケル商会のモットーです。あなた達とは何かと縁がありますな」

 

握手を求めながらにこやかに笑う男は、かつて、ブルックの町からフューレンまでの護衛を務めた隊商のリーダー、ユンケル商会のモットー・ユンケルだった。握手を交わしながら、誠司はゴーリキーのことを話題に挙げた。

 

「それにしても、ワンリキーがゴーリキーに進化していたとはね……驚きました」

「進化したことで更に逞しくなりましてな。今の彼は、我が商会に欠かせない大事な仲間ですよ」

「リッキ!」

「そうですか。ゴーリキーも楽しそうにしているようですし、良かったです」

 

少し得意げな様子のモットーとゴーリキーに、誠司はフッと口元を緩めた。背後では、シアがモットーとの関係を説明し、「たった一回会っただけの人は覚えているのに……私は……王女なのに……」とリリアーナが更に落ち込んでいたりする。そんな彼女をメルドが必死に慰めているのを尻目に、ハジメはモットーの話を聞いた。

 

それによると、彼等は、ホルアド経由でアンカジ公国に向かうつもりだったようだ。アンカジの窮状は既に商人間にも知れ渡っており、今が稼ぎ時だと、こぞって商人が集まっているらしい。モットーも既に一度商売を終えており、王都で仕入れをして今回が二度目らしい。ホクホク顔を見れば、かなりの儲けを出せたようだ。

 

その時、何かを思い出したかのように、モットーはあるものを積荷の中から引っ張り出すと、それを誠司達に見せてきた。それはーーーーーー

 

「……ポケモンのタマゴ……?」

「ええ。先日、リキ坊が見つけてきたのです」

 

水色と茶色の模様が入ったそれに、誠司は驚きの声を漏らす。他の面々も同様で、特にタマゴを初めて見たシアやリリアーナなどは、興味深そうに眺めていた。シアがワクワクした面持ちで何のポケモンのタマゴなのか尋ねたが、流石の誠司も分からなかった。

 

「どうでしょうか。もしよろしければ、このタマゴを買い取りませんか? 今ならお安くしておきますよ」

 

ここぞとばかりにセールストークを始めるモットーに若干呆れた目を向ける誠司達。だが、これくらいでなければ商人などやっていけないのだろう。誠司としても、ポケモンのタマゴには興味があったので、買うのを断る理由はなかった。ついでに、積荷の中にあった、色々な形の飴細工が詰まった瓶もタマゴと一緒に購入した。ワンリキーを譲る時の取り決めから、割引がされていたので比較的お得に買い物ができた。

 

 

その後、誠司達はモットーからアンカジ公国への護衛を依頼されそうになったが、リリアーナから待ったをかけられた。どこか切羽詰まった様子のリリアーナに、誠司とハジメはどこかキナ臭さを感じるも、傍らのメルドから「お願いだから一旦黙っていてくれ」と無言の訴えをしているので大人しく黙る。

 

そして、モットー達との話し合いの末に、リリアーナとメルドはモットー達と別れて誠司達に同行することとなった。ちなみに、話し合いは特に揉めるようなこともなくアッサリ片付いた。実はモットー達は、リリアーナ達が高貴な存在であることに最初から気づいていたようで、それを知ってなお同乗を許可していたのである。

 

別れ際に、誠司達が異端者認定を受けている事を知っている口振りで、何やら王都の雰囲気が悪いと忠告までしてくれたモットーに、誠司達もアンカジ公国が完全に回復したという情報を提供しておいた。それだけで、誠司達が異端者認定を受けた理由やら何やらを色々推測したようで、その上で「今後も縁があれば是非ご贔屓に」と言ってのけるモットーは本当に生粋の商人である。

 

モットー達が去った後、誠司達はプリーゼの中でリリアーナとメルドの話を聞くことになった。二人は最初は見たこともないアーティファクトに目を白黒させていたものの、すぐにそれどころではないと気持ちを切り替える。誠司達は、リリアーナ達の態度からどこか嫌な予感がしていたが、その第一声はその予感よりも更に悪い……最悪なものだった。

 

 

「愛子さんが……攫われました」




ちなみに、お気づきだとは思いますが、「グリューエンの精霊」の正体はフライゴンです。フライゴンの生態を知っていれば、ドラピオンの末路は何となく想像がつくと思います。
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