魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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長くなりそうなので、分けました。


誠司VS勇者パーティー(前編)

光輝達と戦うことになった誠司は、早速トランクの中に入り、対決に使うポケモンの選出作業に入っていた。トランクの中には、誠司以外にもハジメ達もいた。

 

「それで……大丈夫? 天之河君達に勝てそう?」

「負ける気は更々ないよ。ところで、勇者や白崎達はどんな天職でどんな性格かちょっと教えてくれないか? それを基に対策を立てる」

「でも……誠司さんが戦う必要なんてあるんですか?」

 

シアが不安げに尋ねる。「強引に断るだけで良いのに、わざわざ戦わなくても……」と言いたげだ。

 

「あいつら、どうも大迷宮攻略を甘く見てるフシがあったからな。楽に出来ると思われるのが少し癪だったんだ」

 

誠司はそう吐き捨てると、ハジメから得た情報を基に、勇者パーティーと戦うための作戦を組み立て始めた。

 

 

 

 

そして、選んだポケモン達に、各々の作戦を予め指示している間に十五分が経過し、光輝達勇者パーティーとの対決の時間になった。誠司達が訓練場に向かうと、既に光輝達だけでなく、他のクラスメイト達や愛子、リリアーナ、メルド含む騎士団の面々が訓練場に集まっていた。

 

「……随分集まったな」

 

誠司はそう呟きながら訓練場の中心に向かうと、光輝が声を掛けてきた。

 

「中西、さっき言った通り、俺達が勝ったら大迷宮攻略に同行させてもらうぞ! 俺達の力をもってすれば……」

「ああ、言い忘れていたが、俺のポケモン達と戦うのは一人ずつだ」

「何!?」

「俺のポケモン達と、それぞれ一対一で戦ってもらう」

「そんなの……!」

「直近で戦った神山は一日一人だけしか挑戦出来ないものだった。それに他の大迷宮でも、アクシデントが起こって、少人数で攻略を進める場面もあった。いつでも隣に仲間がいるとは限らない。だから、一人である程度戦えるかどうかを見せてもらう。嫌なら諦めろ」

「あ、あの〜……」

 

そんな誠司の言葉に、おずおずと手を挙げて尋ねたのは、鈴だった。

 

「鈴は攻撃手段が無いんだけど、その場合はどうしたら……? それにカオリンだって、攻撃魔法はあるけど、治癒師で戦闘向きじゃないし……」

「ああ、それはハジメからも聞いてる。だから、ルールとしては……五分間、俺のポケモン達と戦うことが出来れば、合格とする」

「そ、そっか。分かった……」

 

本当なら三十分間にするつもりだったのだが、ハジメ達から「流石に長すぎる」と止められたのだ。確かに、一人三十分やるとして、全員だと二時間半は掛かるので、五分くらいの方がちょうど良い塩梅なのかもしれない。

 

説明を終えると、誠司は訓練場の真ん中から少し離れた場所に移動し、待機する。ちょうど光輝達と向かい合うような位置だ。その間にハジメは大型のタイマーみたいなものを宝物庫から取り出して、目に見える場所に置く。緑色のタイマーはデジタル式で『5:00』と画面に表示されている。側面にある窪みに魔力を通すことで操作することが出来る。

 

一方で、光輝達は最初に誰が出るのか話し合っていた。最初は光輝が出ようとしていたのだが、雫に止められたのだ。そして、ひとまず誠司がどんな戦い方をするのか見極めてからでも遅くないということで、龍太郎が先陣を切ることになった。

 

龍太郎は、やる気満々の様子で、己の拳をガツンと叩きつけながら前に出る。

 

「おっし! 俺が一番手だ! 手加減なしで行くぜ、中西!」

 

誠司は、無言でモンスターボールを取り出し、一体目を繰り出した。出てきたのは、チゴラスだ。

 

「グオオォォォッ!」

 

チゴラスもまた、やる気満々に咆哮を上げた。

 

「龍太郎! あの口と牙に気を付けろ!」

 

ガブガブと空に向かって噛み付く仕草を取るチゴラスを見て、光輝が龍太郎に注意するよう呼び掛ける。確かに、あんなのに噛み付かれたら唯では済まないだろう。

 

「おう! 分かってる!」

 

龍太郎は、注意深くチゴラスを睨み付けている。ピッという音と共に、タイマーの時間が動き出した。ここから五分間、戦い抜くことが出来れば、龍太郎の勝利だ。

 

始まったと同時に、龍太郎は一気に駆け出して距離を詰めてきた。

 

「オラァッ! 先手必勝!」

 

身体強化して放たれた強力な一撃がチゴラスを捉える。だが、誠司もチゴラスも動揺はない。冷静に誠司はチゴラスに指示を飛ばした。

 

「チゴラス、“アイアンヘッド”」

「グラアァァッ!」

 

チゴラスは頭を硬化させて、龍太郎の攻撃を迎え撃つ。ガキーーンッという音が響いたと同時に爆発が起こった。チゴラスは問題ないように頭をブルブル振って再度咆哮を上げる。だが、一方の龍太郎は自分の拳を押さえて、苦悶の表情を浮かべていた。

 

「ぐ、おぉぉ……、なん、だ……こいつ。めっちゃ硬え……」

「俺のチゴラスは“いしあたま”でね。簡単には砕けん。……まだやるか?」

「おう! 俺の辞書に……『諦める』なんて言葉はねえんだよっ!」

 

龍太郎は威勢の良いことを言いながら、再度チゴラスに向かって駆け出した。「壁にぶつかったなら、何度でもぶつかって壊すまで!」といった感じだ。だが、それで通用する程、誠司のポケモン達も、大迷宮も甘くない。

 

誠司はフゥと息を吐くと、チゴラスにある指示を出した。

 

()()()、チゴラス。“アイアンヘッド”」

「グラァア!」

 

チゴラスは激しく身震いをすると、カランッという音を立てて石ころのようなものが体から落ちる。そして、チゴラスは“アイアンヘッド”を発動させて再び龍太郎の拳に迎え撃つ。今度は両方の拳による攻撃なので、流石のチゴラスも苦しそうな声を上げた。このまま行けば、押し切ることも可能だろう。

 

しかし、それは()()()()()姿()であればの話だ。

 

「グゥゥゥオオオオオッ!!」

「なっ!?」

 

チゴラスの体が光に包まれたのだ。チゴラスの体はどんどん大きくなっていき、龍太郎の攻撃を押し返していく。そして、光が収まった時、龍太郎の目の前には、巨大なティラノサウルスのようなポケモンがいた。

 

「ガチゴラス、進化したお前の力を見せてやれ。“ほえる”」

「グララアアアアァァッ!!」

 

ガチゴラスは腹の底から力強い咆哮を上げ、龍太郎を弾き飛ばした。大したダメージはない。だが、彼は立つことさえ困難になっていた。ぐわんぐわん響く頭を何とか押さえつつ、何度も立ち上がろうとするが、中々立ち上がることが出来ない。後ろで光輝達が必死に呼び掛けているが、龍太郎の耳には届かない。

 

彼の頭の中には恐怖の感情が覆い尽くされていた。“ほえる”という技は、相手に恐怖心を与えることで追い払うというものだ。今の龍太郎は、恐怖に支配されてまともに動けない状態であった。それでも、何とか目の前の暴君から距離を取っている。恐怖に支配されていても、逃げる行為を取れるとは大したものだと、誠司は感心していた。せめてもの情けとして、一気に勝負をつけることにする。

 

「“かみくだく”」

「グラアゥ!」

 

ガチゴラスは、大きく鋭い牙を剥き出しにして、龍太郎に襲い掛かった。光輝が必死で叫ぶ。

 

「避けろ! 龍太郎ぉぉ!!」

「うおおぉぉぉぉっ!!」

 

光輝の声が届いたのか、龍太郎は力を振り絞って、渾身の一撃を地面に打ち込んだ。その勢いで、龍太郎の身体はぶっ飛び、ガチゴラスの牙をギリギリで躱す。ガチゴラスによって身体を嚙み砕かれるという、凄惨な光景を回避出来たことで、龍太郎は勿論、ギャラリーのあちこちから安堵の息が漏れる。そのため、気付くのが遅れてしまった。攻撃を躱されたにも関わらず、誠司もガチゴラスも全く動揺していないことに。

 

「“ドラゴンテール”」

「……え?」

 

誠司の指示に従い、ガチゴラスは体を大きく捻り、彼の尻尾が龍太郎の身体を捉えた。龍太郎は、突然迫ってきた尻尾に思わず呆けた声を漏らしつつも、そのまま勢いよく地面に叩きつけられてしまった。

 

衝撃で土煙が上がり、止んだ頃には、龍太郎が意識を失った状態で地面に横たわっていた。それを確認したハジメはタイマーを切る。かかった時間は二分十九秒。ルールである五分間の半分にも満たなかった。

 

ハジメはエーフィを取り出して、彼女の“サイコキネシス”で少し離れた場所まで運び、神水や回復魔法で治療する。ある程度手加減はされていたようで、大怪我は負っていなかった。龍太郎の治療の様子を横目で見つつ、ユエがポツリと呟いた。

 

「……彼は気付くべきだった。誠司が最初から“ドラゴンテール”を本命にしていたことを」

「うむ。ガチゴラスの武器が大きな口と鋭い牙だけだと思い込み、もう一つの武器である尻尾に目がいかなかった。それがあやつの敗因じゃな。もっとも、尻尾に目が向かないよう誠司が立ちまわっていたのもあるが……」

「……それにあの進化も偶然じゃない。誠司はギリギリまで調整してた」

「そうじゃの。確か、あれはポケモンの進化を止める効果を持つ『かわらずの石』じゃったか。それをギリギリまで持たせて、進化のタイミングを測っておった」

「うわ〜、誠司さん、そこまで考えてたんですね〜。私、全然気付きませんでした……」

 

ユエ達がそんな会話を繰り広げているのをよそに、次の対戦相手が前に出る。雫だ。

 

「中西君、本気で行くわよ」

 

雫はそれ以上言うことなく、剣を構える。雫の前に、誠司はガチゴラスをモンスターボールに戻して、次のポケモンを繰り出した。

 

甘い匂いと共に現れたのは、クリーム塗れのケーキのような姿をしたポケモン、マホイップだ。神山攻略後に、以前モットーから購入した飴細工を勝手に持ち出して、マホミルが進化したのだ。あの飴細工は、元々おやつに食べようと購入したものだったのだが、思わぬ収穫となった。ちなみに、ミルキィバニラとよつばアメざいくの組み合わせである。

 

思いがけず可愛いポケモンが登場したことで、周囲から少し黄色い声が上がる。雫もマホイップの姿を見て、少し動揺していた。

 

「そ、そんな可愛らしい子を使ってくるなんて……それで私がどうにか出来るとでも……」

「もちろん、こいつは可愛いだけのポケモンじゃない。まぁ……戦ってみれば分かる」

 

ハジメがタイマーに触れるとピッと開始の合図が鳴る。雫は一瞬でマホイップに向かって距離を詰める。勇者パーティーの中でも屈指の敏捷性を誇る彼女の動きは相当な速さだ。そんな雫の動きに対しても、誠司は冷静に指示を飛ばす。

 

「マホイップ、“あまえる”」

「マーホッ♡」

「っ!?」

 

マホイップの愛らしい笑顔にあてられて、雫は一瞬剣を握る力が弱くなってしまった。止まろうとするも、かなりの速さ故にすぐには止められず、マホイップを斬り付けてしまった。

 

攻撃を受けたマホイップはポロポロと涙を流して、痛そうにしていた。それを見た雫は何故かマホイップに謝罪を始めた。

 

「あ、えっと……ごめんなさい。私もそこまでするつもりは……」

「……何をしてるんだ? さっさと攻撃していけ」

「いや、攻撃しづらいわよ! 何でこんな子を使ってきたのよ!?」

「……そうか。なら、こっちから行くぞ。“マジカルシャイン”だ」

「マホッ!」

「……え?」

 

マホイップは雫に向かって小さく舌を出して“うそなき”を止めると、すかさず眩い光の攻撃を雫にぶつける。マホイップの余りの変わり身の早さに驚き、対応が遅れた雫はモロに“マジカルシャイン”を受けてしまった。

 

「うっ!?」

「俺のマホイップは演技派でね。だから言ったろ? 可愛いだけのポケモンじゃないと」

 

眩い光で目がくらみ、雫は慌てて距離を取る。同時に、見た目に惑わされて攻撃を鈍らせた己を恥じた。しかし、誠司は容赦なく追撃を与えていく。何度も隙など与えない。

 

「“マジカルフレイム”!」

「マッホ!」

 

マホイップは、指先から炎を噴射する。雫は咄嗟に炎を躱すが、突然甘ったるい匂いが雫の周囲を取り囲んだ。あまりにも強い香りに、雫の足の動きが鈍っていく。マホイップの技、“あまいかおり”によるものだ。この技は、相手の動きを鈍らせ、回避を難しくさせる効果がある。

 

そこで、雫はこれ以上、回避に徹していたら“あまいかおり”を浴び続けることになると危惧したのだろう。マホイップの方に向かって駆け出した。そして、マホイップに向かって剣を振るう。今度は迷わずに。

 

だが、そんな雫を嘲笑うかのように、誠司は冷静に指示を飛ばす。

 

「“サイコキネシス”で投げ飛ばせ」

「マホッ!」

「しまっ!?」

 

マホイップの目が青白く光ったと同時に、雫の動きも止まった。雫は慌てて、拘束から抜け出そうと足掻くが、もう遅い。そのまま、後方に投げ飛ばされてしまった。更に、追撃としてマホイップは、“エナジーボール”を発射する。

 

雫は、自分に向かって飛んでくるそれを切り伏せて、どうにか防いだものの、もう既に彼女の中に勝てるビジョンが見出せずにいた。そんな雫を見て、誠司は尋ねる。

 

「……まだやるか?」

「ええ……最後まで足掻いて見せるわ」

 

雫はチラリとタイマーに目を向ける。時間は、まだ残り半分くらいだ。そう、最初に誠司が言っていた通り、マホイップ相手に勝つ必要はない。時間内まで立っていれば良いのだ。

 

雫は一旦深呼吸する。甘ったるい匂いに、一瞬だけ顔を顰めるが、それでも少しは落ち着くことが出来た。マホイップが再び“マジカルフレイム”を放ってきたので、それを回避しつつ、マホイップの背後に回って斬り付ける。マホイップの苦しむ声に、罪悪感が湧くが、それで攻撃の手を緩める訳にはいかない。雫は心を鬼にして、何度も攻撃を躱して、剣を振るう。

 

やがて、雫はある違和感を覚えた。何度斬り付けても、手応えが感じられなくなってきたのだ。その時になって、ようやく雫は、自分の剣の状態に気が付いた。自身の剣はクリームにまみれてベタベタになっていた。これでは、切れ味など無いに等しい。それを見た雫は愕然とした。剣の状態に今の今まで気付かなかった自分に対してだ。

 

マホイップの“あまいかおり”は、雫の動きだけでなく、雫の判断力までもを蝕んでいたのだ。そして、敵の前で動きを止めたのもまた、致命的だった。

 

「“マジカルシャイン”!」

「マーーホッ!」

「うぐっ!?」

 

またしても、マホイップの輝きにやられ、これまでのダメージが蓄積していたこともあって、雫はついに膝をついて体勢を崩してしまった。そんな雫にマホイップは近付く。誠司は指示を出す。

 

「……終わりだ。“ドレインキッス”」

「マホッ♡」

「あっ……」

 

マホイップは雫の腕に軽くキスを落とした。それだけで、雫は全身の力が抜けていく感覚に陥った。反対に、マホイップの体は傷がみるみるうちに癒えていく。雫は、もう立つことも出来なくなり、そのまま前のめりに倒れ込んでしまった。マホイップの勝利である。

 

(時間は四分二十六秒……まぁ、健闘した方か)

 

そう思いながら、マホイップをモンスターボールに戻すと、誠司は光輝達に視線を向ける。倒れた雫は、龍太郎同様、ハジメ達によって端の方に運び込まれ、治療を受けている。大怪我は負っていないので、すぐに回復するだろう。

 

「さぁ、次は誰の番だ?」

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