魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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誠司VS勇者パーティー(後編)

次に誠司の前に出てきたのは、鈴だった。鈴はどこか緊張した様子で誠司に話しかける。

 

「つ、次は鈴が出るよ。その……お手柔らかに……ね?」

「……よろしく」

 

誠司はそう言うと、鈴の相手役をしてもらうポケモンを繰り出した。出てきたのは、カブトムシのような姿のポケモン、ヘラクロスだ。

 

ヘラクロスは最初ボーッとしていてやる気のない様子だったが、誠司が何かを耳打ちすると、突然やる気になって元気に角を振り回し始めた。

 

「うっ…虫……」

 

鈴はヘラクロスに対して、どこか苦手そうな表情を浮かべている。そして、タイマーが動き、戦いが始まった。誠司は先手必勝とばかりに指示を飛ばす。

 

「ヘラクロス、まずは挨拶代わりだ。“メガホーン”!」

「ヘラクロッ!」

「な、なんの!」

 

迫り来るヘラクロスに、鈴はやや表情を引き攣らせつつも、素早く障壁を展開する。“聖絶”という魔法で、全ての結界の中でも屈指の防御力を誇る。

 

“聖絶”は、無数の亀裂を作りつつも、ヘラクロスの“メガホーン”を完全に防ぎ切った。それを見た誠司は感心しつつも、次の技を指示する。

 

「中々の強度だな。なら、“ミサイルばり”」

「ヘラッ!」

 

ヘラクロスは、鈴から距離を取ると、角と両手の爪から無数の針をミサイルのように飛ばす。それを見た鈴は目を見開いた。

 

「う、嘘でしょ!? 何あの“ミサイルばり”は!?」

 

オルクス大迷宮での訓練の時にも“ミサイルばり”を使うポケモンと戦ったことがあったが、目の前のそれは針の数があの時よりも段違いだった。おまけに、軌道も不規則なので動きが読みづらい。なので、鈴は複数枚の障壁を作り出し、自身の周りに展開していく。“天絶”と呼ばれる結界で、防御力よりも展開数を重視したものだ。

 

しかし、それでも結界師である鈴が張るものなので、並みのポケモンであれば一枚割るにも数度の攻撃が必要なくらいの強度があるのだ。そのため、どうにか全ての“ミサイルばり”を防ぎ切った。攻撃を防ぎ切り、鈴は安堵の溜息を吐く。そして、自分の結界が誠司のポケモンの攻撃を防ぐことが出来ることに気付き、精神的にも余裕が生じているようだ。最初の頃より自信が顔に出ている。

 

なので、誠司は少しやり方を変えることにした。

 

「……守りは悪くない。なら……突っ込め、ヘラクロス!」

「ヘラクロッ!」

「ふふんっ! 鈴の結界ならどんな攻撃でも耐えてみせ……「“フェイント”!」……ふぇ?」

 

ヘラクロスは、角をわざと空振りさせた後に、再度勢いよく角を叩きつけたことで、鈴が展開した結界をいとも簡単に崩壊させた。

 

“フェイント”は、“まもる”や“みきり”といった防御技でも関係なく攻撃を仕掛ける技だ。そして、それは結界も例外ではなかった。最大の防御力を誇る“聖絶”であっても無効化することが可能なのだ。鈴の相手としてヘラクロスを起用したのも、そういう理由があった。誠司は呆然としている鈴に向かって、冷徹に言い放った。

 

「さて……今度はご自慢の結界が役に立たなくなった時、どうするのか……見せてもらおうか」

「ヘラクロッ!」

「……ひっ!」

 

誠司の台詞と同時に、ヘラクロスが翅を広げて飛び掛かる。鈴は悲鳴を上げながらもギリギリで躱し、必死で逃げ回る。

 

「ちょ、ちょっと! こんなのアリなの!?」

 

ヘラクロスが放つ“きあいパンチ”をどうにか躱しながら、鈴は半泣きで叫んだ。誠司は冷静に答える。

 

「……大迷宮なら集団で攻撃してくるぞ。“ミサイルばり”」

「ヘラッ!」

 

再びヘラクロスが無数の針を飛ばして攻撃を仕掛けてきた。躱し切れないと悟った鈴は、“天絶”をいくつも展開して防御していく。飛んでくる針を防御しつつ、隙を突いてヘラクロスが追撃してくるのを警戒していたが、そんな様子はない。どうにか攻撃を防ぎ切って周囲を見渡すと、そこにヘラクロスの姿はなかった。

 

「あ、あれ……? ヘラクロスは……?」

 

鈴はキョロキョロと周囲を見渡し、必死にヘラクロスを探そうとするが、見付けられずにいた。そんな鈴に、誠司はヒントを出した。

 

「なぁ、結界ってのは()()()の攻撃にも耐えられるものなのか?」

「っ!? まさか……!」

 

鈴は、誠司の言わんとすることを理解して、自分の下に結界を張ろうとしたが、遅かった。地中からヘラクロスが現れて、鈴を突き上げたからだ。ヘラクロスは、“ミサイルばり”を発射してすぐに、“あなをほる”で地中に潜っていたのだ。

 

「どわっ!? がっ!?……きゅぅ………」

 

鈴は態勢を大きく崩し、そのまま頭を地面に打ち付けたことで気絶してしまった。鈴が気絶したのを確認したハジメがタイマーを止める。時間は三分五十七秒。思いがけない形での決着となった。

 

「ヘラクロッ!」

「……分かってるよ。後であまいみつたっぷりのスイカを食べさせてやるから」

 

誠司がヘラクロスを宥めながら、モンスターボールに戻す。気絶している鈴も端の方に運ばれていく。鈴は、前の二人のように怪我も少ないので治療もすぐに終わるだろう。ちなみに、先に負けた龍太郎と雫は既に回復しており、回復後は光輝達と合流し、負けたことに若干落ち込みつつも、仲間の応援に回っていた。

 

 

次の相手は香織だった。どうやら、勇者は最後のトリとして戦うようだ。誠司は、香織対策として選んだポケモンをモンスターボールから繰り出す。

 

「ムウッ!」

 

ムウマージだ。ハジメから、香織はホラー系が苦手だという話を聞いていたので、彼女を選んだのだ。事実、香織の表情はやや強張っている。

 

「い、行くよ!」

 

香織は開始早々、光系魔法を放とうとするが、それより早く誠司がムウマージに指示を飛ばす。

 

「“おどろかす”」

「ムゥ~マッ!」

「きゃっ!?」

 

ムウマージは一瞬で香織の近くに姿を現し、今夜夢に出てきそうな恐ろしい形相を浮かべて、香織を驚かす。“おどろかす”は、威力こそ低いが、相手を怯ませる効果のある技だ。香織は、恐怖から動きが一瞬止まり、光系魔法が発動出来なかった。

 

「香織! 後ろに私がいるわ! だから、恐怖に負けないで!」

 

後ろで香織の親友である雫が、必死に応援の言葉を投げ掛けている。香織も、親友の言葉で少し精神的に持ち直したようで、錫杖を握る力が少し強くなっているのが見えた。香織は再び、光系魔法を放つための詠唱を唱え始める。

 

「ムウマージ、“おにび”だ!」

「ムゥ!」

 

ムウマージは紫色の炎を複数作り出すと、それを香織に向けて発射する。香織もまた、詠唱が終わったらしく、複数の十字架形の光の塊を発射していく。それらがぶつかり合うことで、視界が一瞬悪くなった。その隙を突いて、ムウマージは香織の目の前まで接近する。香織は咄嗟に手元の錫杖で身を守ろうとするが、ムウマージの目が光る方が早かった。

 

「“さいみんじゅつ”」

「ムゥ~~~」

「っ!?」

 

ムウマージは特殊な念波を送って、香織に強烈な眠気を誘う。“さいみんじゅつ”とひとえに言っても、カラマネロや清水のような洗脳効果のあるものばかりではない。ムウマージのように、あくまで眠気を誘って、隙を作るものもある。

 

香織は必死に眠気に抗おうとするが、瞼はどんどん重くなるばかりだ。やがて、膝をついて眠りそうになる。誠司は更にムウマージに指示を飛ばした。

 

「続いて……“ゆめくい”」

「ムマッ!」

「ぅぁ……!」

 

ムウマージの体から黒い影のようなものが現れると、そのまま香織の身体を突き抜けた。“ゆめくい”を受けた香織は、そのまま、ゆっくりと前のめりに倒れ込む。勝負ありだ。かかった時間は二分十二秒だった。

 

「香織!」

 

香織が倒れたのを見て、雫が慌てて、親友のもとに駆け寄る。気絶していただけなので、すぐに意識を取り戻した香織を見て、雫は安堵の息を漏らした。気が付いた香織は自分が倒れたことを思い出し、しょんぼりした様子で、雫の手を借りながら、その場を離れていった。

 

そんな二人を横目で見つつ、誠司は最後の一人に目を向けた。

 

「さてと……残るはお前か」

 

勇者の天職を持つクラスメイト、光輝だ。光輝は前に進みながら、目の前の相手に対して警戒を強める。そして、最後にもう一度だけ対話を試みた。

 

「……中西。俺は勇者だ。この世界の人々を救う義務がある。だからこそ、神代魔法を手に入れて力をつけないといけないんだ。どうして分かってくれない?」

「……別に俺達に付いて行かなくても、大迷宮攻略は出来る。オルクスでも、ライセンでも、グリューエンでも行けばな。こちらとしても、わざわざ仲間の危険を晒してまで連れて行く義理も理由もないんだよ。付いて行きたいなら、強さを示せ。それだけだ」

「……そうか。なら、証明してやる」

 

そう言って、光輝は自身の武器である聖剣を構える。そんな光輝を誠司は冷めた目で見ていた。

 

……白々しい。この世界の人々のためだとか言っているが、自分達に同行するように言ってくる最大の理由は、単純に()()()から置いて行かれたくないからだろう。今まで勇者として前人未踏の領域に到達し、活躍していると思っていたら、実はそうでもなくて、自分よりも前を進む存在が何人もいたのだから。

 

彼の気持ちは分からなくもない。

 

要は、世界の根幹に関わる程の出来事が自分抜きで進められていることが、我慢ならないのだろう。なまじ自分が『勇者』という特別な天職を持っているから余計に。

 

……だが、それで付いて来られても、誠司達としては何もメリットはないし、連れて行く義理もない。だからこそ、負けるつもりは皆無だった。

 

誠司はフンと鼻を鳴らして、一つのモンスターボールからポケモンを出す。光輝が相手だと知って、リベンジしたいと自ら志願してきたポケモンだ。

 

「ベンツァーーーー!!」

「なっ!? こいつは……!?」

 

白いホッキョクグマのようなポケモン、ツンベアーだ。そして、以前、オルクス大迷宮にて光輝達と戦ったポケモンでもある。ツンベアーはお腹の傷跡を摩りながら、光輝に向かって唸り声を上げる。

 

「以前戦った時は操られた状態だったからな。あの時とは全くの別物だと思った方が賢明だよ」

「っ、“限界突破”!」

 

誠司がそう忠告したのとタイマーがピッと音を鳴らしたのは同時だった。開始早々、光輝はダッと駆け出して、ツンベアーに斬り掛かる。“限界突破”で全ステータスは大幅に上げた一撃だが、誠司は冷静に指示を飛ばす。

 

「ツンベアー、“メタルクロー”で応戦しろ」

「ベンツァ!」

 

ツンベアーは己の爪を硬化させて、聖剣の剣劇を防ぐ。ガキンッという重たい音が響く。接近戦では埒が明かないと判断した光輝は距離を取ろうとするが、それもツンベアーは対処していく。

 

「“れいとうビーム”」

 

ツンベアーは冷気を帯びた光線を発射する。光輝は咄嗟に躱し、躱した先は氷漬けになっていた。それから連続で“れいとうビーム”を発射して、地面を凍らせていった。光輝の動きを制限するためだ。光輝が迂闊に距離を詰められないようにすると、誠司は更なる指示を飛ばす。

 

「“ゆきげしき”」

「ベンツァーーー!」

 

ツンベアーが咆哮を上げると、訓練場の周りが雲で覆われ、雪が降り始めた。突然の雪に周囲が騒めくが、光輝は関係ないかのように、ツンベアーを睨み付けている。詠唱を唱え終えた光輝は聖剣を横薙ぎに振るう。

 

「“天翔剣四翼”!」

 

振るわれた聖剣から、四つの光の斬撃がツンベアーに向かって飛翔する。光の斬撃を飛ばす技は他にも“天翔閃”というものがあるが、手数の多さからこの技を選んだのだ。

 

「“ビルドアップ”」

「ベンツァッ!」

 

ツンベアーは全身にパワーを集中させ始めた。それと同時に、四つの光の斬撃がツンベアーに命中する。しかし、ツンベアーは無傷だった。

 

「な、なんで……!?」

 

光輝は目を見開いて、驚愕を露わにした。多少のダメージは与えられると思ったのに、全くダメージを与えられていなかったのだ。

 

というのも、ツンベアーの防御力が大幅に上がっていたのが原因だ。雪の天候下では氷属性のポケモンは防御力が上がる。加えて、“ビルドアップ”の効果で更に防御力が上がったので、ちょっとやそっとの攻撃では効かなくなっていたのだ。ツンベアーは、ポリポリと体を掻きながら、不敵に笑った。

 

「連続で“れいとうパンチ”!」

 

ツンベアーは大地を蹴って、光輝に迫る。先程とは比べ物にならない速さだ。ツンベアーの特性“ゆきかき”の効果によるもので、雪や霰が降る天候下では素早さが大幅に向上するという特性である。

 

「速いっ!?」

 

聖剣でどうにか防御する光輝だったが、防ぎ切るのは難しそうだ。足場が氷や雪で覆われていて滑りそうになる上に、“ビルドアップ”で威力の上がった“れいとうパンチ”が高速で飛んでくるのだ。無理もない。“限界突破”でステータスが上がっているから防ぐことが出来ているが、それをしていなければ、もっと早くにやられていただろう。

 

ツンベアーの拳が空を切る。光輝が滑って尻餅をついたことで、攻撃が外れたのだ。光輝は聖剣を地面に突き立てて支えにすると同時に、眩いばかりの光魔法をツンベアーの目の前で発動させた。

 

「グァッ!?」

 

光で目を焼かれたツンベアーは、苦しそうな叫び声を上げた。視力が戻るまでしばらくかかるだろうが、その隙は大きかった。光輝はどうにか立ち上がると、聖剣を抜いてツンベアーに斬り掛かろうとする。もっとも、この状況がツンベアーだけであれば、確かに致命的な隙だが、指揮官(トレーナー)がいれば隙にはなり得ない。

 

「ツンベアー、“ふぶき”だ!」

「ッ!? ベンツァーーーー!!」

 

目が見えない状態ではあるが、ツンベアーは大きく息を吸い込んで“ふぶき”を放った。広範囲の技であると共に、この雪の天候下では、確実に命中するという効果もある。

 

「ぐぎっ!?」

 

凍える程の吹雪に晒されて、光輝の意識は朦朧とし始める。それでも、彼は前に進もうとするが、目も明けられない程の猛吹雪が押し返す。自分が必死に戦っているのに対して、ツンベアーの後ろに立つ誠司は余裕そうな表情を浮かべている。誠司の顔を見て、光輝の中に怒りが込み上げて来た。そして、怒りのまま叫んだ。

 

「な、中西! お前の、力は……ただ強い魔獣に頼っただけのものだ! こんなの……こんなものは本当の強さじゃないっ!」

 

光輝の叫びと同時に、“限界突破”の効果が切れたのか、彼は前のめりに倒れ込んでしまった。

 

「ツンベアー、もう良い」

「……ベンツァ」

 

それを見た誠司は、ツンベアーを止める。もう勝負はついた。かかった時間は三分五十八秒。結局、この勇者も五分以上戦い抜くことが出来なかった。

 

これにより、勇者パーティー全員が、五分以上戦えず敗北する結果に終わった。誠司は無言でツンベアーをモンスターボールに戻すと、代わりにマシェードを繰り出した。

 

「マシェード、“にほんばれ”」

「マッシェ!」

 

マシェードは橙色のエネルギーに満ちた球体を作り出し、それを上空に打ち上げると、訓練場を覆っていた雲が晴れ、強い日差しが差し込む。それにより、地面の雪や氷が解けていく。ハジメが光輝に近寄り、回復魔法を掛けてやる。光輝はまだ気絶したままで、目を覚ますのに少し時間がかかりそうだ。

 

誠司は雫達に視線を向け、分かってはいるだろうが、改めて結果を伝えた。

 

「……結果は全員不合格。五分以内に戦闘不能になってるからな。大迷宮にはこれと同じくらいのレベルの奴らがゴロゴロいると思った方が良い。それでも大迷宮攻略をしたいのなら、場所や攻略方法とかの情報は渡すから好きにしろ。まぁ、オススメはしないけど」

 

冷たく宣告された雫達は一様に項垂れていた。周囲のクラスメイト達や騎士達も、衝撃を受けたように固まっている。そんな彼らをスルーして、誠司達は訓練場を後にした。

 

「……本当の強さ……ね。……くだらん」

 

そう小さく呟いた誠司の呟きは、誰にも聞こえることなく消えていった。




レジェンズZAで新メガシンカポケモンが色々実装されたので、今後何体かは出していきたいですね。特にシャンデラはメガシンカするとは思ってなかったので、絶対出したい。
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