魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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たった二日間の出来事〜王都での騒ぎ〜

ガヤガヤ、ザワザワと王都は普段に増して喧騒に満ちていた。突然の侵攻によって、王都では多くのものが失われたが、いつまでも悲しんではいられない。残された者達は、悲しみを抱えつつも復興に向けて前を向きつつあった。

 

そんな王都のメインストリートを、誠司とユエが歩いていた。向かう先はギルド本部。フューレンで受けたミュウをエリセンまで送り届ける依頼についての完了報告をするためだ。依頼の完了報告は、別の支部でも問題ないそうなので、王都の本部でさっさと済ませてしまおうと思ったのだ。

 

事が事なので、フューレンで直接報告すべきだったかもしれないが、フューレンを迂回して樹海に行くのは遠回りになるため、この形にした。それに、本部であれば、報告もきちんと対応してくれるだろう。

 

 

光輝達勇者パーティーとの対決が終わってから、誠司達は現在、各々別行動を取っていた。ハジメは、雫と香織の案内で、大結界の修復に向かっていた。なんでも、雫は、大結界の修復を進めている錬成師の職人達と武器の修理の関係で繋がりがあったらしく、彼女がいた方が話もスムーズに進むだろうということで案内を買って出てくれたのだ。香織もハジメと話がしたいらしく、雫と一緒に案内してくれることになった。

 

シアとティオは王宮に残っている。シアは、今の王都で他種族が堂々と歩いて無意味に刺激するのはマズイと自発的に居残ったのだ。実際、聖教教会のお膝元である王都においては、奴隷の亜人族すら忌避されるくらいで、元々、人間族以外はほとんどいない。なので、妥当な判断と言えるだろう。ティオはここ数日ぶっ通しで消費していた魔力の充填のため睡眠中である。

 

「それにしても……ユエも休んでて良かったのに。良いのか? 付いてきて」

「ん……どうせ暇だし。気にしないで」

 

そのうち、誠司とユエは冒険者ギルド王都本部にたどり着いた。フューレン支部ですら到底及ばない規模の歴史を感じさせる建築物だ。その入口はオープンになっており、数多くの冒険者達が忙しそうに出入りしている。王都侵攻に伴って依頼も爆発的に増えているのだろう。

 

誠司達は、ギルド内に入ると十列以上はある巨大なカウンターへと赴いた。冒険者でごった返していたが、流石、本部の受付というべきか素晴らしい手際で手続きをこなしていくので回転率が凄まじい。そして、受付が全員とても美人だった。

 

「……誠司」

「……別に鼻の下を伸ばしてないよ」

「ん、ハジメが怒る」

 

もしもハジメがここにいたら、このTHE・冒険者ギルドな雰囲気に興奮してそうだけどなと内心で思いつつ、ユエとそんな会話をしていると、誠司達の番になった。誠司は自分のステータスプレートと、ミュウをエリセンに送り届けた事を証明する書類を取り出すと、受付嬢に提出した。

 

「依頼の完了報告なんだが、フューレン支部の方に本部から伝えてもらえますか?」

「はい! 完了報告ですね! えっと……え? 支部長からの指名依頼……でございますか? すいません、少々お待ち下さい……」

 

渡された書類に目を通した受付嬢は、少し困惑したような声を上げた。ギルド支部長からの指名依頼を一介の冒険者が受けることなど滅多にないため当然の反応だ。現に、誠司の両隣りで手続きをしていた冒険者達がギョッとしたように誠司を見ている。

 

次に、受付嬢は誠司のステータスプレートに目を向ける。内容を確認すると、澄まし顔を崩して冒険者達と同じようにギョッとした顔になった。そして、何度もステータスプレートと誠司の顔を見比べると、慌てて立ち上がる。

 

「な、中西誠司様で間違いございませんか?」

「ん? ステータスプレートに表記されている通りですが?」

「あと、仲間の方に南雲ハジメ様もいらっしゃると伺っていたのですが、その方は?」

「ハジメは別に用事があったから、別行動だが……あ、もしかして、依頼を受けた者全員がいないといけなかった感じですか?」

「いえ、そういう訳ではないんですが…… あの、申し訳ありませんが、応接室までお越しいただけますか? 中西様及び南雲様がギルドに訪れた際は、奥に通すようにと通達されておりまして……直ぐにギルドマスターを呼んでまいります」

「あ~……どうする?」

「ん……仕方ない」

 

このままごね続けてギルドマスターからの心証を悪くするのもアレだし、何より後ろの列の冒険者達の視線も痛いので、大人しく従うことにした。

 

「……分かりました。えっと、応接室はどちらに?」

「あ、案内します! カレン、ちょっと受付変わって!」

「は、はい!」

 

受付嬢が、後ろに向かって叫ぶと、別の職員が代わりに受付を担当し始めた。そして、誠司とユエは周囲から痛いくらいの好奇の視線を浴びながら、応接室に向かった。

 

 

それから十五分が経過した頃、誠司達は、顎鬚をたっぷり生やし、異様な覇気を纏った細目の老人と和やかに談笑しながら、応接室から出てきた。

 

「いや~、ギルドマスター直々に呼び出されたから何事かと思いましたよ」

「ハッハ! そりゃあ、すまんな。イルワとロアが君達のことで太鼓判を押していたからな。どんな御仁か興味があったんだ」

 

この老人、ギルドマスターのバルス・ラプタは豪快に笑いながらそう言った。何か滅びをもたらしそうな名前だが、誠司が予想していたような面倒事はなく、ただ会って話したいだけだったようだ。しかし、彼の影響力は凄まじいもので、登場しただけでギルド内がざわめき、誠司達がそんな彼と談笑しているだけでギルド全体に騒ぎが広がった。

 

依頼の完了報告もしっかりやってくれるそうなので、安心してギルドから出ようとしたその時、金髪のイケメン冒険者が誠司達に声を掛けてきた。彼の周囲には取り巻きと思われる美女が数人いる。

 

「バルス殿、彼らを紹介してくれないか? ギルドマスターが目を掛ける相手なら、是非、僕もお近付きになりたいしね? 特に、そちらの可憐なお嬢さんには……「あらぁ~ん? そこにいるのは誠司ちゃんにユエちゃんじゃないのぉ!」……ひっ!?」

 

イケメン冒険者のキザったらしい台詞は、野太くて乙女チックな声に遮られた。邪魔されて、不快そうに声のした方へ視線を向けたイケメン冒険者は思わず悲鳴を上げる。

 

そこには、かつてブルックの街で、知り合った服屋の店長、クリスタベルが立っていた。傍らにはしなやかでありながら、引き締まった体躯を持つ緑色のポケモン、ハハコモリもいる。どうやら、以前譲渡したクルミルが立派に進化したようだ。この王都でポケモンを出しているのに誰も何も言わないのは、彼(彼女?)と関わり合いになりたくないからだろう。色々と目に毒な光景だが、誠司とユエは久しぶりに会った知り合いに、ホッと安堵の息を吐く。

 

「クリスタベルさんか……久しぶりですね。それに、クルミル……じゃなくて今はもうハハコモリか。お前も逞しくなったなぁ。……結構強くなってるし」

「ハハーリィ」

「ん……久しぶり。でもどうしてここに?」

「材料を仕入れに来たのよぉ。フューレンとかも良いけど、ここ王都にも良いお店がいくつかあってねぇん。でも、まさか滅茶苦茶になってるなんて……」

 

クリスタベルが王都に着いたのは、一昨日だったので、侵攻に巻き込まれずに済んだらしい。だが、目的の店の殆どが文字通り潰れてしまっており、非常にがっかりした様子だった。

 

クリスタベルとそんな会話をしているうちに、誠司達を中心に周囲の冒険者達が距離を取り始めていた。最初に話しかけてきたイケメン冒険者なんかは、既に取り巻きの女性達と一緒に建物から逃げ出している。完全に他の冒険者達からヤバい奴認定されたことを複雑に思いつつも、誠司達は場所を変えて話をすることにした。

 

それから、バルスと、最初に対応してくれた受付嬢から見送られつつ、ギルドを後にした誠司達は、少し先のカフェ(幸い被害が軽微だったのですぐに営業再開出来たらしい)で話に花を咲かせた。

 

 

ーーーーーーーーーー

クリスタベルと時間が経つのも忘れて話し込んだ誠司とユエは、クリスタベルと別れて、王宮に戻ることにする。その途中で、何かに追われているらしいハジメと遭遇した。心なしか周囲も騒がしくなっていた。

 

「あれ? ハジメ、ど…「お願い! 匿って!」……うぉっ!?」

 

切羽詰まったハジメの様子にただならぬ事情を察した誠司は、とりあえずトランクの中に入ってもらう。ハジメがトランクに入ったと同時に、職人と思われる風貌の男が数人、誠司達のもとに駆け寄って来た。

 

「今ここに白髪の少女が来なかったか?」

「いや、ここにはいないが……」

「そうですか…… 南雲殿ぉぉぉ! 私を弟子にして、ぜひあなた様の技術を伝授してくだされ~!!」

「いや、寧ろオレと結婚してくれぇ!」

「いやワシの息子の嫁に!」

 

そんなことを叫びながら、職人達はどこかへ駆け出してしまった。後に残された誠司とユエはポカンとした表情を浮かべていた。

 

最終的に、そのハジメと職人達による逃亡・追跡劇は、復興現場から職人達が消えるという事態によって各所で混乱が起き、遂にリリアーナの耳にも入って王族が事態の収拾に出張るという形でようやく収まるのだった。

 

 

「……はぁ、疲れた……」

「それで、一体何があったんだ? あんなに追いかけられて」

 

王宮に着いてから、周囲の安全を確認したハジメはどこかくたびれた様子でトランクから出て一息吐いた。そんなハジメに誠司は胡乱げな視線を向けつつ、事情を求める。王宮の一室には誠司、ハジメ、ユエの他に、ハジメと一緒に大結界に向かっていたはずの香織と雫もいた。香織と雫は部屋で先に部屋で休んでいたようだ。

 

事情を説明したのは雫だった。

 

 

雫と香織の案内のもと、大結界の修復に向かったハジメは、まずハイリヒ王国直属の筆頭錬成師という人物のもとを訪れることになった。ウォルペンという名の筆頭錬成師と、彼を始めとした職人達は、最初は二十歳にも届いていない少女が大結界を直せるということに懐疑的だったらしい。

 

そんな彼らだったが、ハジメがいとも簡単に大結界を直したことで非常に驚いたそうだ。その時は、雫と同じ異世界人であるからと説明されて、彼らもそれで納得したのだが、ある程度大結界を修復し終えた後でのハジメの行動がマズかった。

 

本当に結界が直ったのかどうか確認するために、ドンナーを始めとした武器を試し撃ちしようとしたのだ。流石にその行為は駄目だと、雫と香織に止められたが、ウォルペン達はハジメが使おうとした武器の数々に目を奪われてしまったらしい。長い人生の中で見たことのないものを目の当たりにして、ウォルペン達は見事に職人魂を燃え上がらせてしまったのだ。

 

その結果、ハジメの武器を見せてくれだの、技術を教えてくれ、弟子にしてくれと教えを乞う者が続出した。果ては結婚してくれと求婚してくる者まで現れる始末。

 

これはたまらんと、ハジメは逃げ出したが、王都中の職人ネットワークによって連絡が回されているらしく、どこへ行こうともヒュパ!と現れては根掘り葉掘り質問してきたり、求婚してきたそうだ。

 

一通り事情を説明し終えた雫に、ハジメはジト目を向ける。

 

「……にしても、助けてくれても良かったんじゃないの? 雫はあの人達と知り合いだったんでしょ?」

「無茶言わないでよ。私だって、あそこまで火が着くと思わなかったし……そもそも、ハジメがいきなり武器を出したのが原因でしょ」

「うぅ、ごめん、ハジメちゃん……」

 

目を逸らしながら弁解する雫に、申し訳なさそうに謝罪する香織。いつの間にか、ハジメは二人と親しくなったようで、名前呼びになっていた。雫は話題を変えるために、誠司に話を振る。

 

「そういえば、中西君達はどこに行っていたの?」

「あぁ、ギルド本部に行ってたんだ」

「本部に?」

「依頼完了の報告をな。別の支部からでも問題ないらしいし」

「報告って、もしかしてあのミュウって子のこと? 姿が見えないようだけど……」

「あの後、無事母親の元に送り届けたよ」

「ん……元気にやってる」

「そう……」

 

雫は、ミュウがここにいないことに少し残念そうにしつつも、母親と一緒の方が良いわよねと納得する。ハジメも会話に入った。

 

「まぁ、また会いに行くさ。僕のポケモンを預けたままだしね」

 

ミュウにポケモンを渡したことを少し驚く香織と雫。その時、香織は「あれ?」と疑問顔を浮かべた。少し気になったので尋ねた。

 

「そういえば、ハジメちゃんや中西君は、どうして魔獣のことをポケモンって呼んでるの?」

「そう言われてみれば、私も気になるわね。ポケモンって何かの略語?」

 

二人から尋ねられて、誠司とハジメとユエはお互いに顔を見合わせ、クスリと笑った。

 

「俺達が勝手にそう呼んでるだけだよ」

「ポケットモンスター、縮めてポケモン。僕達はそう呼んでるんだ。結構語感が良いし、愛着も湧くしね」

「……大切な家族であり、仲間」

 

三人の回答を聞いた香織と雫は、彼らが本当に魔獣、もといポケモンのことが大好きなのだと悟った。そして、二人は、もう少しポケモンのことを知りたいと思うようになった。

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