魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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たった二日間の出来事~ポケモンとの向き合い方~

優花以外の面々は相棒ポケモンが決まったので、午後は各々で自由に交流を図って信頼関係を築いてもらうことにした。午前に引き続き、捕獲を手伝ってもらってバトルの経験を積ませることも考えたのだが、初心者がいきなり手持ちのポケモンを何体も増やしたところで、手に余るだけだろう。実際、誠司が最初にネマシュを相棒にしてから、次にミズゴロウを仲間にするまでにそこそこ間があった。ハジメもユエもシアも同様だ。

 

王宮に戻り、光輝達と別れた誠司と優花は、午後にまた捕まえに行くのに備えて、早めの昼食を食べに食堂へ向かった。その道中、二人はハジメに出くわした。

 

「あれ? 誠司に園部さん」

「おう、ハジメか。昼飯を食べに来たのか?」

「うん、やっと最終調整が終わったからね。明日が楽しみだよ」

 

誠司達が野生ポケモンを捕まえている間に、ハジメはユエ達と一緒に、とあるアーティファクトの整備を進めていた。明日には、王都を出発するので、その際に使う予定なのだ。

 

「それで、皆ポケモンを仲間に出来たの?」

 

ハジメがそう尋ねると、誠司は決まり悪そうに頬を掻く。優花はまた表情が暗くなる。それを見たハジメは結果を察した。

 

「あ~……他の奴らは捕まえたり、譲ったり出来たんだが、こいつだけ相棒のポケモンが手に入らなかったんだ。ポケモンを渡すだけなら簡単なんだが……野生に戻りたがってるポケモンを無理矢理押し付けるのは気が引けるし、そもそも懐かないだろうからな」

「そっか……ん? ってことは、午後は二人で捕まえに行く感じ?」

「まぁ、そうなるだろうな」

「だったら、僕も手伝うよ! 多分、ユエとかティオとか、メルドさんあたりも協力してくれるだろうし! 二人だけだったら、今日中には終わらないでしょ!」

「お、おう……」

 

ハジメがどこか食い気味にそんな提案をしてきた。誠司は若干気圧されつつも、魅力的な提案なので、受けることにした。午後はあと二つの箇所に向かわないといけなかったので、ハジメ達が手伝ってくれるのなら有難い。

 

そんな訳で、三人は昼食を食べ終えて一息吐いていると、突然、トランクからヤミカラスが飛び出してきた。

 

「ヤーーミカァァァッ!!」

「わっ!? ヤミカラス、どうしたんだ!?」

「ヤミーー! ヤミカァッ!」

 

どうやら、ポケモンフーズが無く、空腹で怒っていたらしい。いつもは予め作り置きしたものを貯蓄していたのだが、最近はまとめて作る時間が取れず、いつの間にか在庫が尽きてしまったようだ。

 

「なんてこった……悪い。急遽こいつらの食事を作らないといけなくなった。二時間……いや、一時間半で終わらせるから、ちょっと手伝ってくれ!」

「え? あ、うん!」

「わ、分かったわ!」

 

誠司に言われて、ハジメと優花もトランクに入っていった。トランクの中では、ポケモン達が一斉に空腹コールを上げていた。誠司は急いでポケモンフーズ作りに取り掛かる。

 

ーーーーーーーーーー

それから、誠司達は一時間半で、無事に全員分のポケモンフーズを作って配り終えることが出来た。ガツガツと美味しそうに食べているポケモン達の横で、誠司達は再び一息吐いていた。

 

「ふぅ。貯蓄分も多めに作ったし、これですぐに無くなるってことはないだろ…… 二人とも助かったよ、ありがとう」

「どういたしまして。いや~、それにしても園部さん、凄かったね。なんというか、手際が凄く良くてさ。下処理とかあっという間に終わってたじゃん。驚いたよ」

「私の実家は洋食屋でね。ピーク時とか、凄い沢山の注文が飛んでくるのよ。あれに比べたら、こんなの可愛いもんよ」

「へぇ……そいつは頼もしいな」

 

そんな会話をしていると、フォッコが誠司達のもとに寄って来た。口にはトレーを咥えている。食べ終えたので、トレーを返しに来たようだが、トレーの中にはまだポケモンフーズが残っていた。

 

「……また、残したのか。苦手な味だったか?」

「……フォコ」

 

誠司の言葉にも、フォッコはあまり答えず、去って行ってしまった。誠司は溜息を吐く。優花はそのフォッコがなぜか気になった。

 

「中西、今の子は?」

「フォッコというポケモンだ。最近捕まえたばかりのポケモンなんだが、色々訳ありでな」

「そう、なんだ……」

「? 園部さん、どうかしたの?」

「いや、なんていうか…その……他人事じゃない感じがして」

 

その後、他のポケモン達の分のトレーを片付けた誠司達は、再び王都で野生ポケモン達を捕まえに行くことにした。誠司は、またまた一部の手持ちを交換している。モグリューとチルットをそろそろ進化させたいと思っていたからだ。

 

そんな誠司達をよそに、優花は先程のフォッコのことが気になって、フォッコに話しかける。フォッコは離れた場所で横になって休んでいるが、優花にはそれが他のポケモン達と距離を作っているように見えた。

 

「あの……こんにちは」

「…………」

「ねぇ、あなた、フォッコって言うのよね? えっと……何食べてるの?」

 

フォッコが何かをかじっているのを見て、優花が尋ねる。フォッコは無言でかじっていたものを優花の前に差し出した。それは小枝だった。

 

「え……枝…? そんなの食べてたらお腹壊すわよ」

「別に問題はないよ」

 

手持ちの入れ替えを終えた誠司が、フォッコというポケモンは、小枝が好物でおやつ代わりに食べることを簡単に説明した。

 

「そ、そうなんだ……ん? ちょっと待って。もしかして……さっき残してたのは、小枝を食べ過ぎたからなんじゃ……」

 

優花が視線をフォッコに向けると、フォッコはバツが悪そうに顔を背けた。それを見た優花は、思わずフォッコを叱ろうとした。

 

「ちょっとフォッコ、おやつが美味しいのは分かるけど、そういうのは程々にしないと」

「……フォコ」

 

だが、フォッコは、プイとそっぽを向いて、どこかへ行ってしまった。誠司は優花に声を掛ける。

 

「悪いが、そっとしておいてやれ」

 

ーーーーーーーーーー

その後、ユエ・ティオ・メルドにも協力を要請したところ、三人とも快くOKしてくれた。そんな訳で、合計六人で野生ポケモン達の捕獲を進める中、優花が改めてフォッコについて尋ねてきた。

 

「ねぇ、中西。あのフォッコ、一体何があったの?」

「なんだ? お前、随分あの子のことを気にかけるな?」

「いいから教えて」

 

どうもフォッコのことが気になっている優花に対して、誠司はポツポツと語り始めた。

 

「……あいつは人間に捨てられたポケモンなんだよ」

「えっ……」

「どういう事情があったのかは、俺も知らない。あいつも話したがらないからな。ただ……捨てられてから彷徨っていたところに、洗脳されて、ここに来たらしい。それで捕獲したんだが、色々辛い思いをしたせいか、人間不信になりかけてる。……最初は用意したポケモンフーズを全く食べようとしなかったくらいだ」

 

先程、フォッコはポケモンフーズを少し残していたが、あれでも相当進歩した方なのだ。

 

話を聞いた優花は、どこかショックを浮かべたようだった。そのせいか、襲い掛かるポケモンに気付くのが遅れてしまう。

 

「しまっ!?」

「クレフィ!」

 

クレッフィが咄嗟に“まもる”で防御し、“でんじは”を浴びせて相手ポケモンの動きを鈍らせる。そんな優花に、誠司は釘を刺した。

 

「念のため言っておくが、あのフォッコを相棒にするのはやめた方が良い。初心者には扱いが難しすぎるし、お前もフォッコも傷つくことにもなりかねないからな」

「う…うん……」

「だから、今はポケモンを捕まえることに専念……って、あれは……まさかピカチュウか!? モグリュー! 絶対ゲットするぞ!」

「グ、グリュ?」

 

ピカチュウを見つけてテンションMAXになった誠司は、そのまま捕獲しに走って行ってしまった。ポツンと残された優花はどこか悩んでいるようだった。そして、優花の隣でクレッフィは、小さく溜息を吐いた。

 

 

それからしばらくして、誠司達は、王都内にいるポケモン達を全て捕まえた。ハジメ達の協力もあって、二時間少しで終わらせることが出来た。

 

だが、誠司はどこか悔しそうにしていた。折角、ピカチュウを捕まえたのだが、どうやら彼は野生に帰りたいらしく、王都の外へ逃がすことが決定したからだ。血涙を流しそうなくらいに悔しがる誠司に、ユエ達は呆れた視線を向けていた。

 

「……たしかにピカチュウは可愛いけど、そんなに?」

「ピカチュウはそこまで珍しい訳ではなかったと思うんだがな……」

「誠司がそんなにピカチュウに思い入れがあったとは知らなかったのぉ」

「まぁ、誠司にとっては、ピカチュウはポケモンの象徴みたいなものだからね。さながらミッ〇ーみたいに」

「いや南雲、流石にそれはないでしょ」

 

いくらなんでも、夢の国のネズミと同列はないだろうと、優花がハジメにツッコミを入れる。それから誠司達は、王都の外に移動して、捕まえたポケモン達を逃がしていった。ポケモン達は、誠司達に軽く礼を言いつつ、皆どこかへと姿を消していく。

 

誠司のモグリューとチルット、ハジメのグレッグルが進化したり、メルドが新たにカモネギ(ガラルのすがた)を仲間にするなど収穫もあったが、相変わらず、優花の相棒ポケモンをゲットすることは出来なかった。午前と違って、何体か捕まえることは出来たのだが、王都の外に出たいポケモンばかりで、優花の相棒になっても良いという子がいなかったのだ。

 

「もうこうなったら、今日捕まえたやつの中から渡すしかないか……」

「……いや、もう良いわよ。ここまできたら縁がなかったって諦めるわ……自分達の力で、今度こそ愛ちゃん先生を守ってみせるわよ」

「そうか……」

「あ! でも最後に、あのフォッコに、私が作った食事をご馳走しても良い?」

「ん? どうしてまた?」

「一生懸命作って出したものを残されるのって、結構頭に来るのよ。なんていうか……あんな態度取られたら、絶対美味しいって言わせたいの」

「そ、そうか。俺は構わないが……」

 

ーーーーーーーーーー

「ふぅ……」

 

王宮に戻り、ハジメ達と別れた誠司は、ポケモン達と一緒に夕食の時間まで暫しの休憩を取っていた。誠司が現在いる場所は中庭だ。数か月前、ネマシュと初めて出会った場所だ。マシェードもこの場所のことを覚えているようで、懐かしそうにしていた。ポケモン達がじゃれ合って遊んでいるのを眺めながら、誠司は、ドダイトスの背中の上でウトウトとまどろみのひと時を楽しむ。だが、それを邪魔する者が現れた。

 

「お、おい! ここはお前達のような者がいるべき場所じゃない! 今すぐここから立ち去れ!」

 

何事かと、そちらに視線を向けた誠司達の目に映ったのは、十歳くらいの金髪碧眼の美少年が、こちらを強く睨む姿だった。彼の名前は、ランデル・S・B・ハイリヒ、この国の王子で、リリアーナの弟である。

 

胡乱げに視線を向ける誠司達に、ランデルはウッと一瞬たじろぐが、すぐに負けじと誠司達を睨み返す。だが、身体が震えていることから、虚勢を張っているのが丸分かりだ。それから、彼を追いかけて来たらしい老人や護衛っぽい男達も姿を現した。彼らは、必死にランデルを宥めようとする。

 

「で、殿下、ここは一つ穏便に……」

「だが、ここは父上の……亡き国王陛下のお気に入りの場所なんだ! それをあの者らが好きに踏み荒らすなど……」

「お気持ちは分かりますが……」

『………』

 

誠司とマシェード達は、顔を見合わせて、小さく溜息を吐いた。まるでこっちが悪者だ。仕方がないので誠司はドダイトスから飛び降りると、それを見た護衛の男達がランデルを守ろうと前に出る。だが、誠司はポケモン達を全員モンスターボールに戻した。そんな誠司の行動にランデル達は、目を点にする。

 

「邪魔したな」

 

そう言って、誠司はランデル達の脇を通って中庭から出て行こうとした。そんな誠司に向かって、再びランデルが突っかかってきた。

 

「ま、待て! どうしてその魔獣共を使わない!? そいつらがいれば、余らを力づくで追い出すなど造作もないだろう!?」

 

ランデルの叫びに誠司は、「何言ってるんだ?」と言いたげな様子で、肩越しに振返った。

 

「……そうして欲しいのか?」

「ち、違う! どうしてなのか、その……気になっただけだ!」

 

誠司はなんてことないかのように、答える。

 

ポケモン達(こいつら)を前にしても言ってきたってことは、それだけ大事な場所なんだろ? だからどいた。それだけだ。別に譲れないものって訳でもないし」

 

仮に誠司にとっても譲れない場所であったなら、徹底抗戦も視野に入れたが、この中庭は別にそういう訳ではない。ただ、王宮を散策中に見つけて、ふと懐かしくなったので立ち寄っただけだ。わざわざ無駄な争いをする必要もない。

 

そのまま中庭を去る誠司の背中を、ランデル達は黙って見つめていた。

 

ーーーーーーーーーー

中庭を去った誠司は、夕食の時間も近づいてきたので、ポケモン達の食事の準備を進めていた。優花も誠司を手伝っている。優花はフォッコ用のポケモンフーズの準備に取り掛かっていた。

 

「それで、あのフォッコにどういう食事を用意する気だ?」

 

誠司が尋ねると、優花は先程収穫したばかりのマトマの実を取り出した。他にも辛い味の木の実がズラリと並んでいる。マトマの実に下処理を入れながら、優花は説明する。

 

「多分だけど、さっきのあのポケモンフーズ、辛味が少し薄いんだと思う。だから、激辛の木の実をふんだんに使ってみれば……」

 

そうして出来上がったポケモンフーズは、普段誠司が作っている辛口のものよりもずっと色が赤くなっており、見るからに辛そうだ。優花は出来上がったそれをトレーに入れて、フォッコの前に差し出した。フォッコは、恐る恐るだが、それを口に運ぶ。そして、一口食べたフォッコは、今までの少食ぶりは何だったのかって勢いで搔き込んでいく。

 

それを見た優花は小さくガッツポーズをする。一方で誠司は少しショックを受けていた。フォッコが食べているポケモンフーズの匂いに釣られたのか、ラグラージやヤミカラス、エレザードといった辛いもの好きなポケモン達が集まってきて、羨ましそうにフォッコを見つめていたのも一因だろう。

 

その後、ラグラージ達にもフォッコと同じものを出してやり、ポケモン達全員分の食事を終えると、誠司達は後片づけをしていた。フォッコは、随分と優花に懐いた様子で、擦り寄っている。それを見た誠司は、一つ頷くと、優花にある提案をした。

 

「なぁ、このフォッコ、貰ってくれないか?」

「えっ、でもさっき相棒にするのはやめた方が良いって……」

「確かにそうだが……ここまで懐いているなら、俺のもとにいるより良いかもしれないと思ってな」

 

人間不信になりかけていたフォッコが、優花に心を開いているのを見て、それも悪くないと誠司は思い始めていた。優花はしゃがんで、フォッコに視線を合わせた。

 

「……ねぇ、フォッコ。私と、その……パートナーに…なってくれる?」

 

フォッコは、まだ迷いがあるようで、少し視線を彷徨わせるが、やがて元気に鳴いた。

 

「フォコ!」

「交渉成立だな」

「良かった! よろしくね、フォッコ!」

 

フォッコの返事を聞いて誠司がそう言うと、優花は嬉しそうに笑った。紆余曲折を経てようやく念願の相棒ポケモンが手に入ったのだ。誠司は、そんな優花に改めて釘を刺す。

 

「さっきも言ったが、こいつは色々大変な思いをしてきた。だから、裏切るような真似は絶対にするなよ。いいな?」

「ええ、もちろん。分かってる」

「あと、それと……さっきの辛口のやつのレシピを教えてくれ」

 

こうして、優花の相棒ポケモンは、フォッコとなった。余談だが、辛い味のポケモンフーズは優花から教わったレシピを基に作るようになり、ラグラージを始めとした辛いもの好きのポケモン達から喜ばれた。




優花の相棒ポケモンはフォッコになりました。胃袋をつかまれました。
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