魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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今回でユエが出て来ると思った人も多いかもしれませんが、残念、まだ出ません。次回から出てきます。


臆病なケンタロスと双子のイーブイ

次に誠司達が来たのは草原が広がる階層だった。気候も丁度良いくらいだ。なんとものどかな場所だった。

 

「へぇ。ずっと地獄みたいな環境の階層ばっかりだったけどこんな所もあったんだな」

「ホントだ。なんか意外……」

 

ここが大迷宮でなければ呑気に昼寝でも洒落込んでいたかもしれない。しかし、ドドドドッと言う音がのどかな雰囲気をぶち壊す。二人は後ろをゆっくり振り返る。

 

「……………」

「……………」

「……まぁ、こうなるわな」

「だね。そんなに甘くないか」

「よし。それじゃあ………」

「逃げるぞ!!」「逃げよう!!」

 

誠司とハジメはそれぞれ自分のポケモンを抱えて同時に走った。その少し後ろには雄牛のようなポケモンの群れが走っている。ケンタロスだ。ケンタロス達は誠司達を縄張りに入った敵だと認識しているようだ。そういえば、この辺りは他のポケモンが全然見当たらない。

 

なんとかケンタロス達を撒くと、誠司とハジメは座り込む。誠司は額の汗を拭う。

 

「くそ…… あんなにケンタロス達がいると厄介だな……」

「うん。あの数を相手は流石にキツい…… 姿を隠しつつ進むしか無さそうだね。少なくともケンタロス達の縄張りを抜けるまでは」

「ああ。そうだな」

 

誠司達は用心しながら、木の影や茂みに隠れたりして進むことにした。そのせいで思うようには進まないが、また追い回されるよりはマシだ。数が多い時はネマシュの“キノコのほうし”で眠らせたりする。そして、やっとのことでケンタロス達の縄張りらしき所を抜けることが出来た。

 

「やっと抜けられた………」

「ああ。助かった……」

 

木の近くでハジメは緊張の糸が切れたのか座り込み、誠司も釣られて座り込んだ。疲労がどっと来たらしく眠くなってくる。何が起こるか分からない大迷宮で眠りこけたらどうなるか分からない。だが、瞼はどんどん重くなっていく。隣のハジメやヒバニーは既にスヤスヤと眠っている。ネマシュやミズゴロウもだ。こんな時に眠気を助長する気持ちの良い日差しや風が憎く思える。誠司も睡魔には勝てずに目を閉じた。

 

 

それからどれくらい時間が経っただろうか。誠司は荒い鼻息の音で目が覚めた。そして、目の前には今まで見たものよりもずっと体の大きいケンタロスがそこにはいた。

 

「う、うわああぁぁぁっ!!」

「ブモオォォォ!!」

 

お互い後ろに下がる。その声で他の皆も目を覚ました。

 

「うーん……誠司、どうしたの……ってケンタロス!? なんでここに!?」

「マシュ!」「ゴロ!」「ヒバ!」

 

ポケモン達もすぐに攻撃体制に入る。しかし、当のケンタロスは………

 

「モオオォォーー……」

 

ジリジリと後ろに下がっている。完全に逃げ腰だった。そして、すぐに逃げ出してしまった。残された誠司達はポカンとしていた。

 

「なんだったの、アレ……」

「ケンタロスにも色々な奴がいるみたいだな」

 

どうやらあのケンタロスは他のと比べると随分と臆病な性格のようだ。せっかく体が大きくて体格も恵まれているのに勿体ないと思う誠司だった。

 

 

それからしばらく誠司達は次の階層へ続く階段を探して探索をしていると、五つの丸い物体を発見した。物体にはオレンジの斑点がまだらにある。

 

「ほぉ、コレは珍しいな。ポケモンのタマゴだ」

「ポケモンの? 何のポケモン?」

「それはまだ分からないな。生まれてからじゃないと」

「へぇ…… 親はいないのかな?」

「多分近くにいるんだろ。あまり近づきすぎない方が良い」

「そうだね。親が怒って襲ってくるかもしれないし」

 

地球でも鳥の雛が巣から落ちていたら迂闊に触らない方が良い。それはこの世界でも同じことだろう。誠司達はタマゴを遠くから眺めながらその場を離れた。そして、マッピングを続けた。

 

「うーん………あそこは行き止まりだったね」

「ああ、次は向こうを探してみるか。………ん?」

 

マッピングを終えてもと来た道を戻る最中、騒がしいのに気付いた。何やら喧嘩のようだ。しかも、あのタマゴがあった場所だ。何かあったのか確認するためにそこに向かうと、ポケモン達のバトルが始まっていた。いや、バトルというよりも一方的なものだった。

 

一方は紫色の体をした蛇のようなポケモン、アーボだ。それも三体もいる。毒のある牙で容赦なく噛みつこうとする。そして、もう一方はなんと先程の臆病なケンタロスだった。ケンタロスは後ろのものに気を取られて思うように戦えない状態だったようだ。まるで何かを必死に守ろうとしているようだ。まともに動けないケンタロスをアーボ達が攻撃を仕掛ける。ケンタロスは遂に足がよろめいてしまう。

 

仕方ないので誠司達も加勢することにした。ポケモン達の攻撃で追い払う。すぐにケンタロスの様子を確認すると傷は多いものの毒を受けたりはしていなかった。

 

「ブモォォ……」

「しかし、危なかったな。お前は一体何を守ってたんだ?」

 

ケンタロスは体をどかした。そこには先程のポケモンのタマゴがあった。しかし、先程は五つもあったのに今はたった二つしか無かった。その事実にハジメは少しショックを受けた表情を浮かべる。誠司も顔を顰める。

 

「そうか…… 残りの三つはもう………」

 

そういえば、心なしか先程のアーボ達は太っていて動きも若干鈍かったような気がする。つまりそういうことだろう。自然の摂理とは言え、悲しいことである。

 

「お前はこのタマゴの親だったのか?」

 

誠司が尋ねるとケンタロスは首を横に振った。どうやらこのケンタロス、タマゴがアーボに食べられている所を目撃しタマゴを助けようとしてあのような状態になっていたようだ。

 

「なんて言うか…… お前、随分優しい奴なんだな。見ず知らずのタマゴのためにここまで体を張れるなんて」

「うん…… 凄いよ。ごめんね、さっきは攻撃しようとして」

 

ハジメがケンタロスに謝罪する。ヒバニーやミズゴロウ、ネマシュも同じ気持ちらしく、同様に謝罪した。その時、タマゴが大きく揺れ動き、光を放ち始めた。

 

「うわ! 何が起きてるの!?」

「コレは…… タマゴが孵ろうとしてるんだな」

「そうなの!? うわ、どんどん光が強く………」

 

二つのタマゴが殆ど同時に割れて中から茶色と薄茶色の体毛に長めの耳、首周りの白い毛が特徴の可愛らしいポケモンが二体飛び出して来た。二体とも同じ姿をしているが、それぞれ尻尾の先の模様が少し違う。

 

「「イブ!」」

「うわぁ…… 可愛い!! これは……」

「ああ、コイツらは…………イーブイだ」

 

誠司もよく知っているポケモンだ。散々夢でも色々な場面で出てきた。可愛いので誠司も割とすぐに名前を覚えた。

 

「だけどまさか…… こんな所でイーブイに会えるとは思わなかったな」

 

誠司は思わずそう呟いた。

 

 

そして、また誠司達はマッピングを再開した。しかし………

 

「………それでなんでお前らも付いて来てるんだよ……」

 

誠司達の後ろに何故か当然のようにケンタロスと双子のイーブイが付いてきているのだ。どうもあの三体から懐かれてしまったらしい。ハジメが笑いながら言う。

 

「なんか、僕達の旅も段々賑やかになってきたね」

「俺とハジメ以外はもれなく人外だけどな」

 

 

それからマッピングを続け、ようやく次の階層への階段らしきものを見つけた。だが、素直に通してはくれないらしい。ドドドドッという足音が聞こえてきたからだ。どうやら、ここもケンタロスの群れの縄張りに当たる場所らしい。誠司達はあっという間にケンタロスの群れに囲まれてしまった。

 

突如、群れのボスに当たるケンタロスが前に進み出た。そして、誠司達と一緒にいるケンタロスを見ると烈火の如く怒り狂った。その様子にケンタロスはすっかり怯えてしまっている。ボスが言うにはあのケンタロスは元々はそこの群れの一員だったのだが、あまりにも臆病な性格のため群れから追放されてしまったらしい。その追放された者が縄張りに入って来たのだ。怒り狂うのも無理はない。

 

ボスのケンタロスは誠司達に攻撃を仕掛けて来た。まるで、ここを通り抜けたければ俺を倒してみせろと言わんばかりだ。

 

「仕方ない。あの階段を抜けるためだ! 戦うぞ!」

「うん!」

 

ポケモン達も戦う気満々だ。イーブイ達も張り切っている。

 

「ちょっと待て。お前らは駄目だ。まだ早い。そこでケンタロスと一緒に大人しくしててくれ」

 

誠司が急いでイーブイ達を抱き上げるとケンタロスに引き渡した。ケンタロスも戦いたくないらしい。まぁ、無理もない。なので強要はしなかった。イーブイ達は不満げな顔をしている。だが、生まれたばかりの子がまともにあのボスのケンタロスに太刀打ち出来る訳がない。

 

「よし! ネマシュは“エナジーボール”、ミズゴロウは“いわくだき”だ!」

「マシュ!」「ゴロ!」

「ヒバニーは“にどげり”!」

「ヒバ!」

 

ポケモン達がボスのケンタロスに同時に攻撃を仕掛ける。だが、あまり効いていないようだ。ミズゴロウやヒバニーの攻撃は効果抜群のはずなのに。ボスのケンタロスは“とっしん”でネマシュ達を吹き飛ばした。なんとか倒れずに済んだが、ダメージはデカい。

 

「くそ…… ここまで強いとはな……」

「どうしよう…… まだアレは完成していないし……

 

その時、2つの影が前に現れた。

 

「イーブ!」「ブイブイ!」

「な!? イーブイ! よせ! お前らじゃ……」

 

誠司の制止も聞かずにイーブイ達はボスのケンタロスに“たいあたり”をする。だが、当然全くダメージが無い。寧ろボスのケンタロスの怒りを買っただけのようだ。イーブイを振り払うと、二体に向けて大技をぶつけようとして来た。“すてみタックル”だ。まだ生まれたてのイーブイ達がこんな技を受ければひとたまりもない。誠司は急いでネマシュに指示を出した。

 

「まずい! ネマシュ、“まもる”だ!」

「マシュマ!」

 

ネマシュが急いでイーブイ達の前に出て“まもる”を展開した。しかし、“すてみタックル”の威力が高すぎて“まもる”で防ぎ切ることが出来なかった。結果、ネマシュとイーブイ達は吹っ飛ばされてしまった。咄嗟に誠司とハジメがなんとか受け止めて事なきを得る。

 

その時、後ろから凄まじい怒りの声が上がった。後ろを見ると、先程まで怯えていたはずのケンタロスが初めて激しい怒りの表情を見せていた。

 

 

ケンタロスは怒っていた。ボスのケンタロスに……だけではない。まだ生まれたばかりのイーブイ達ですら勇気を出して戦おうとしたのに何も出来ず震えることしか出来ない無力な自分に怒りを感じたのだ。

 

自分は臆病な性格だ。そのせいで群れの仲間からいつも馬鹿にされていた。そして、最後には群れからも追い出された。ケンタロスはそんな自分が嫌だった。だが………

 

「お前、随分優しい奴なんだな」

 

先程、自分を認めてくれる者がいた。その者達が、自分が守ろうとしたイーブイ達が戦っているのだ。自分も勇気を出さないでどうする。ボスは強いし怖い。だが、ここで立ち向かわないとずっと後悔し続けるだろう。ケンタロスは勇気を振り絞って雄叫びを上げた。

 

 

ケンタロスがボスに向かって“とっしん”をした。しかし、ボスにはあまり効いていない。ボスが攻撃を仕掛けて来た。誠司が指示を出す。

 

「ケンタロス! 躱すんだ!」

 

ケンタロスは誠司の指示に従ってすぐに躱すが、ボスがまた攻撃に入った。今度は命中してしまい、ケンタロスはよろめく。しかも急所のようだ。

 

「負けるな、ケンタロス! “リベンジ”だ!」

「ブモオオォォ!!」

 

ケンタロスは渾身の“リベンジ”をボスにぶつける。ダメージが大きいようでフラフラとよろめく。この時、誠司は気付いていなかったが、このケンタロスの特性は“いかりのつぼ”という急所に当たると攻撃力が最大まで上がるものだった。そのため大ダメージを与えることが出来たのだ。ボスは再び攻撃を仕掛けようとするが、そうは問屋が下さない。

 

「させるか…… ケンタロス、“10まんばりき”!」

 

ケンタロスは持てる全ての力でボスを吹っ飛ばした。ボスは気絶してしまった。周囲はざわめいたが、戦いを挑む者はいない。やがて、気絶したボスを連れて群れは去って行った。

 

戦いを終えたケンタロスは力が抜けたのか座り込んだ。誠司もハジメもケンタロスがここまで強かったことに驚いた。ネマシュ達も同様のようだ。イーブイ達は目をキラキラさせていたが。誠司はケンタロスに近寄り、声を掛けた。

 

「お疲れ様。ケンタロス」

「モオォォォ……」

「凄かったぞ。なぁ…… お前さえ良かったら俺達と一緒に来てくれないか?」

「モォ?」

「ああ。俺達はこの大迷宮を降り続けているんだ。色々と強い奴がいる。でも俺達は行かないといけないんだ。だからお前の力を貸して欲しい。無理にとは言わないが、協力してくれると俺達も嬉しい」

 

誠司がそう頼むとケンタロスは頷いた。どうやらOKのようだ。というかまだ仲間じゃなかったことに少しショックを覚えているようだった。なんか申し訳ない………

 

もちろん、イーブイ達も仲間に加わった。オスのイーブイは誠司の、メスのイーブイはハジメの仲間になった。ネマシュやミズゴロウ、ヒバニーは仲間が一気に増えて嬉しそうだ。




誠司はケンタロスとイーブイ♂、ハジメはイーブイ♀をゲットしました。
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