魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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今回は少し長めです。


久々のフェアベルゲン

遠目にハルツィナ樹海が見えてきた時、あちこちに残されていた爪痕を見て、誰もが思わずといった様子で息を呑んだ。

 

帝国から再短距離で飛んできた為か帝国軍が樹海に進軍したルートと被ったらしく、彼等の強引極まりない進軍経路がまざまざと残されていたからだ。

 

「……酷い」

「自然軽視の考えは、少々考えるものがあるのぅ」

 

帝国が進軍したであろう経路は炭化し、黒く染まった道筋。幅は百メートル程で、それが奥へと続いていた。おそらく、「環境破壊は気持ち良いZOY!」とか言いながら、強引に突き進んだのだろう。

 

一応、延焼はしないように配慮したようだが、それでも被害は甚大で、香織やティオは表情を歪めていた。そして、良い思い出があった訳ではないものの、生まれ故郷の変わり果てた光景を目の当たりにしたシアは、ウサ耳をしょんぼりとへたれさせた。その様子を見て、傍らにいたユエが心配そうに、そっとシアの手を握っていた。

 

アルテナの話によれば、火をかけられたことに気が付き、少数の戦士達が迎撃に出た時点で、彼らは樹海へ火をかけるのを止めたらしい。おそらく、攫うつもりの亜人達が炎に巻き込まれて死ぬ事態を避けるためだろう。更に魔人族との戦いの跡が残っていたことも災いした。帝国兵達はその戦いの跡を辿って、フェアベルゲンに到達したそうだ。まさに、泣きっ面に蜂といった状況だが、そのためかフェアベルゲンまで燃やされずに済んだらしい。

 

奥地は霧が発生しており、フェアベルゲンの位置が把握出来なかったので、炭化した場所の霧がかってる手前辺りにフェルニルを着陸させた。

 

タラップが下り、誠司達に続いて捕らわれていた亜人達も恐る恐る降りていき、故郷に帰れることに喜びつつも樹海に刻まれた足下の傷跡を見て悲しそうな眼差しを向けていた。そんな彼らを見て、光輝は帝国に憤りの感情を見せていた。龍太郎、雫、香織、鈴も光輝ほど露骨ではないが、同様に怒りを見せている。

 

正直、再生魔法を使えば、周囲一帯を元の樹海に戻すことは可能だ。だが、今それを使えば、フェアベルゲンまでの道が分からなくなるので、使うとすれば、フェアベルゲンに着いてからだろう。なので、誠司達は再生魔法のことは黙っておいた。

 

その時、一体のポケモンが誠司に向かって飛び掛かって来た。黄緑色の蜘蛛のようなポケモン、イトマルだ。怒った様子で攻撃を仕掛けてくるイトマルを、誠司は咄嗟にマシェードの“キノコのほうし”で眠らせる。誠司は申し訳なさそうな表情を浮かべていた。そんな誠司にハジメは尋ねた。

 

「この子は?」

「多分、俺達を帝国兵か何かと勘違いしたんだろうな」

「そうか……」

 

おそらく、このイトマルも住処を焼かれて、随分と酷い目にあったのだろう。そう考えると、このまま樹海を放置するのが忍びなくなった。

 

「ハジメ、ユエ、ティオ。悪いんだが、亜人達を送り届けた後……」

「うん、良いよ。元々そのつもりだったし」

「……お安い御用」

「このまま放置して、また新手が攻めて来んとも限らんしのぅ」

 

誠司達の会話の意味が分からず、キョトンとする光輝達。どういうことか尋ねる前に、亜人達が先を急ぎたいと言ってきた。どうやら、この樹海の惨状を見て、故郷やそこに住む家族のことが心配になったようだ。彼らの気持ちも分かるので、シアやアルテナ達の先導のもと、誠司達はフェアベルゲンに向かって歩みを進めた。

 

ーーーーーーーーーー

「それにしても、相変わらず強力だな。ここの霧は……」

「本当にね。まだ戦闘の痕跡があるからスムーズに進めているけど……」

「ん……」

 

戦闘の痕跡が随所にあるおかげで、比較的スムーズに進めているが、それでも油断すれば感覚が狂わされそうになってしまう。以前体験した濃霧の世界のことを思い出した誠司、ハジメ、ユエはお互い顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。

 

ぞろぞろと歩く亜人達は、誠司達が自分達への悪意や偏見を持っていないことを理解したのか、かなり気を許しているようで、痕跡を辿りつつも、誠司達がそれぞれ見失って離れ離れにならないよう念の為に周囲を囲むように先導をしてくれていた。亜人達の中には、誠司達が連れているポケモン達を興味深そうに見ている者も何人かいた。先程のハウリアのこともあり、ポケモンがただ怖いだけの存在ではないことを知ったというのもあるのだろう。誠司はそれが嬉しかった。

 

そうして進むこと一時間ほど経ったときだった。

 

表情がいつも通りでも、どこかしおれた感じのシアのウサ耳がピコピコと反応した。ハッとしてウサ耳を澄ませたシアは、霧の向こうを見通すように見つめ始める。

 

「シア、どうしたの?」

「はい。ハジメさん、武装した集団が正面から来ますよ」

 

シアの言葉に誠司達はお互い顔を見合わせ頷くが、周囲の亜人族達は驚いたようにシアに視線を向けていた。その中には攫われていた兎人族も含まれており、どうやら自分達じゃ察知できない気配をしっかりと捉えているシアに驚いてるようだ。

 

そのシアの言葉を正しく証明するように、霧をかき分けて、武装した虎人族の集団が現れた。

 

全員険しい表情で武器を手にかけているが、彼らも亜人族が多数いる気配を掴んでいたようで、いきなり襲い掛かるということはなさそうだった。

 

彼らの内、リーダーらしき虎人族の視線が誠司達に留まった。直後、驚愕に目を見開く。

 

「お前達は、あの時の……」

「あなたは、確か……」

 

誠司は微妙な様子だったが、ハジメとユエは思い出した。ギルという名の警備隊の隊長だ。どうやら、襲撃を生き延びて、再び警備をしていたらしい。誠司も、ハジメに耳打ちされて、ようやく彼のことを思い出した。

 

「一体、今度は何の……って、アルテナ様ぁ!? ご無事だったのですか!?」

「あ、はい。彼等とハウリア族の方々に助けて頂きました」

 

誠司達に目的を尋ねようとしたところで、今度はハジメの傍らにいたアルテナに気付き、素っ頓狂な声を上げるギル。そして、アルテナの助けてもらったという言葉に、安堵と呆れを含んだ深い溜息を吐いた。

 

「それは良かったです。アルフレリック様も大変お辛そうでした。早く、元気なお姿を見せて差しあげて下さい。それにしても……お前達は、ここに来る時は亜人を助けてからというポリシーでもあるのか?」

「まさか。偶然ですよ、偶然」

 

ハジメがギルにそう返す。どこか親しげに話している彼らに、雫達が疑問顔になる。そんな雫達に、シアがこっそり何があったのかを簡潔に説明している。そんなシア達を他所に、誠司もギルに尋ねる。

 

「それより、フェアベルゲンにハウリア族の連中はいるか? あるいは、今の集落がある場所を知ってる奴は?」

「む? ハウリア族の者なら数名、フェアベルゲンにいるぞ。聞いているかもしれないが、襲撃があってから、数名常駐するようになったんだ」

「なるほど。……なら、フェアベルゲンに向かうか。また長老衆の誰かが来るまで待ってた方が良いか?」

「いや、それには及ばん。アルテナ様達のこともあるし、お前達が進んで我らに危害を加えるような輩でないことは前回の訪問で証明されているからな。お前達、武器を収めろ」

『はっ!』

 

そう言って、ギルは部下達に武器を収めさせると、フェアベルゲンまでの先導を務め始めた。その道中、意外にも見知らぬ人間の混じった誠司達に以前のような敵意や警戒心は向けられなかった。理由は分からないが、揉め事にならないなら、それに越したことはない。そう誠司達は判断した。

 

そうして辿り着いたフェアベルゲンは、大きく様変わりしていた。まず、威容を示していた巨大な門が崩壊しており、残骸が未だ処理されずに放置されたままだった。そして、あの幻想的で自然の美しさに満ちた木と水の都は、あちこち破壊された跡が残っており、木の幹で出来た空中回廊や水路もボロボロに途切れてしまって用をなしていなかった。

 

「ひどい……」

 

誰かがそう呟いた。

 

誠司達も全く同感だった。フェアベルゲンそのものも、どこか暗く冷たい風が吹いているようで、どんよりした雰囲気を漂わせている。

 

その時、通りがかったフェアベルゲンの人々がアルテナ達を見付け、驚愕の表情で硬直した後に、喜びを爆発させるように駆け寄ってきた。傍に人間族がいることに気が付いて、一瞬、表情を強ばらせるもののアルテナ達が口々助けられた事を伝えると、警戒心を残しつつも抱き合って喜びを露わにした。連れ去られていた亜人達の中には、ハジメ達に礼を言って一目散に自分の家へ駆けて行く者もいる。

 

次第にハジメ達を囲む輪は大きくなり、気が付けば周囲はフェアベルゲンの人々で完全に埋め尽くされていた。しばらくその状態が続いたあと、不意に人垣が割れ始める。その先には、フェアベルゲン長老衆の一人アルフレリック・ハイピストがいた。

 

「お祖父様!」

「おぉ、おお、アルテナ! よくぞ、無事で……」

 

アルテナは、目の端に涙を溜めながら一目散に駆け出し祖父であるアルフレリックの胸に勢いよく飛び込んだ。もう二度と会えることはないと思っていた家族の再会に、周囲の人々も涙ぐんで抱きしめ合う二人を眺めている。

 

しばらく抱き合っていた二人だが、そのうちアルフレリックは、孫娘を離し優しげに頭を撫でると、誠司達に視線を向けた。どこか苦笑いが浮かんでいる。

 

「……とんだ再会になったな、中西誠司、南雲ハジメ。まさか、孫娘を救われるとは思いもしなかった。縁というのは分からないものだ。……ありがとう、心から感謝する」

「あくまで助けたのはハウリア族ですよ。俺達は送り届けただけです」

「処刑が決まっていたハウリア族を助け、あそこまで変えたのもお前さん達だ。巡り巡って、お前さん達のなした事が孫娘のみならず我らをも救ってくれた。それが事実だ。この莫大な恩、どう返すべきか迷うところでな、せめて礼くらいは受け取ってくれ」

「そういうことなら、まぁ……」

「えっと、どういたしまして……?」

 

アルフレリックの感謝の言葉に、若干、困った様子の誠司とハジメ。そんな二人をユエ、シア、ティオは微笑ましそうに見ている。一方で、光輝だけは、この世界の人々を救うために迷宮に潜って訓練を積んできた自分よりも、世界を巡り意図せず人々を救ってきた二人に複雑そうな表情を見せていた。

 

アルフレリック曰く、ハウリア族はタイミング悪くフェアベルゲンの外に出てしまっているらしく、帰ってくるまでまだ少し時間が掛かるそうだ。なので、誠司はハジメとユエとティオに樹海の再生をお願いした。

 

アルフレリックに再生魔法を説明し、近くで倒壊していた樹を試しに再生させると、目を見開いて驚いていた。それは近くで見ていた他の亜人達や光輝達も同様だった。光輝からは、「そんな魔法があるのなら何でさっき使わなかったんだ!」と文句を言ってきたが、少し時間も掛かるし、早くアルテナ達を送り届けたかったからだと返されると、渋々ながらも黙った。

 

アルフレリックから、そういうことなら是非ともお願いしたいと頼まれたハジメ・ユエ・ティオはギル達警備隊の案内のもと樹海の再生に向かった。“せいちょう”という技を覚えているマシェード・ドダイトス・ゴーゴートもサポートとして貸したので、大丈夫だろう。

 

それから誠司達は、ハジメ達とハウリア達が戻ってくるのを待っている間、アルフレリックの家で待たせてもらうことにした。家にいるのは、アルフレリック、誠司、シア、光輝、龍太郎、鈴の六名だ。香織は、今回の戦いで怪我人が大勢いることを知り、治癒師として彼らを助けたいと言い出し、アルテナの案内のもと治療の手伝いに行ってしまった。親友である雫も、香織だけ行かせるのは心配だからと同行している。彼女達には神水を二十本程渡しておいたので、それらも治療に役立つだろう。

 

それからしばらく、出されたお茶を飲みながら、アルフレリックとある程度の近況を共有していると、先に香織達が帰って来た。

 

「ただいま~」

「あっ、カオリン、お疲れ~。どうだった?」

 

鈴が労いの言葉をかけながら尋ねると、香織はVサインを作って笑顔を浮かべた。

 

「ばっちりだよ! 中西君から貰った薬もあったし、おかげで全員分治せたよ!」

 

アルテナ曰く、最初は人間族ということで憎しみの目を向けてきたり、露骨に警戒する者も多かったのだが、香織の人柄や治療の腕が高かったこともあって、すぐにそういった悪感情を向ける者はいなくなったとのことだ。長老の孫娘であり、彼女達に悪感情を抱いていないアルテナが間に入ったことも大きかったのだろう。最終的には、患者全員から感謝の言葉を贈られるくらいにまでなっていたらしい。そんなことを雫が嬉しそうに話していた。

 

 

それからしばらくして、今度はハジメ達が帰って来た。彼女達も無事に樹海の再生を終えたようで、ギル達から随分と感謝の言葉を貰っていた。誠司とシアは、貸したポケモン達を受け取り、ハジメ達から話を聞いていると、ドアの向こうから地響きが聞こえてきた。その音は段々と大きくなっていく。

 

「どうやら、来たらしいね」

 

ハジメがそう言ったと同時に、ズバンッと扉が勢いよく開く。その衝撃で扉に亀裂が入り、アルフレリックが悲しそうな顔になる。飛び込んで来たのは、ハウリア族の男女複数人だ。彼らの相棒と思われるポケモン達もいる。

 

「お久しぶりですっ!」

「お待ちしておりましたっ!」

「お、お初にお目にかかりますっ!」

「新入り! 誠司殿達のご帰還だ!! 他の者達にも早急に伝達しろっ! 急げっ!」

「りょ、了解ですっ!!」

 

あまりの剣幕に、耳を塞ぐ者もチラホラ。誠司は声を掛ける。

 

「あ~、うん、久しぶりだな。皆、元気そうで何よりだよ」

『はっ!!』

 

その応答は樹海の全体に響く程の声だった。誠司は、苦笑いを浮かべつつ、彼らに労いの言葉を送った。

 

「ここに来るまでに話は聞いたよ。中々、活躍したそうじゃないか? 驚いたよ」

『恐縮ですっ!!!』

 

誠司からのお褒めの言葉に、ハウリア族の面々は涙目になっていた。そんな彼らに、本題でもあるパル達からの伝言を伝えた。内容としては、カムたちが帝都への侵入したらしい情報をつかんだことと、自分たちも侵入するつもりであること、あとは応援の要請だ。

 

「なるほど。……『必滅のバルドフェルド』達からの伝言、この『雷刃のイオルニクス』が確かに受け取りました。わざわざご足労頂き、有難うございます」

「あ、やっぱり君にも二つ名があるんだね……」

 

思わずハジメがそう言った。ハジメの言葉に、イオは当然と言わんばかりに頷く。

 

「勿論です。ハウリア族全員に二つ名が付いております」

 

どうやら、ハウリア族は既に手遅れだったようで、シアが絶望の表情を浮かべていた。ちなみに、イオの相棒ポケモンは、ヤンヤンマだ。「『雷刃』の二つ名を名乗るなら、せめて電気属性のポケモンにしろよ……」とも思ったが、イオ曰く、「落ちる雷の如く、予測不能かつ迅雷の斬撃を繰り出す」ことが由来らしい。そういう意味では“かそく”の特性を持つヤンヤンマにぴったりの異名なのかもしれない。

 

気を取り直して、誠司はあることを尋ねた。

 

「それで、大樹周りの霧が弱まるのはいつ頃だ? 一定周期で弱まると聞いているが……」

「はっ! 最短でも五日後になるかと」

「そうか……」

 

つまり、大迷宮に挑むまで五日は大人しく待つしかないようだ。それを聞いたシアがおずおずと声を掛けた。

 

「あ、あの! 誠司さん、ハジメさん、その……」

 

だが、踏ん切りがつかないようで、どこか遠慮がちだ。そんなシアをチラッと横目で見つつ、ハジメはイオへ更に質問する。

 

「今、トータルで何人くらいいるの? ハウリア族以外もいるようだけど」

 

見覚えのない者も数人いたし、新入りと呼ばれていた者もいたことから、ハウリア族は他の兎人族の一族を取り込んでいたのだろうとハジメは見当がついていた。

 

「……確か……ハウリア族と懇意にしていた一族と、バントン族を無力化した噂が広まったことで訓練志願しに来た奇特な若者達が加わりましたので……実戦可能なのは総勢百二十二名。それからポケモン達も合わせれば……二百四十五名になるかと」

 

随分と増加したものだと、誠司とハジメだけでなく、シアやユエも驚きを露わにする。ハジメは、質問の意図が分からず疑問顔を浮かべるイオを尻目に一つ頷く。

 

「ポケモン達はモンスターボールに入ってもらうとして……それくらいなら全員一度に運べるね。イオ…ルニクス、帝都に行く人達を集めて。全員帝都に送り届けるから」

「……は? はっ! 直ちに!」

 

一瞬、何を言ってるのか分からなかったようで間抜け顔で聞き返すイオだったが、直ぐにハジメが帝都に同行してくれる意味だと察して、敬礼をすると仲間達を引き連れて他のハウリア族達を呼びに急いで出ていった。

 

イオは、ハジメ達は大迷宮のために戻って来たのであって、自分達を手伝ってくれるとは思っていなかったのだろう。意外すぎる言葉に動揺してしまったようだ。

 

そして、シアもまた、ハジメの言葉に驚いていた。その大きな瞳をまん丸に見開き、ウサミミをピンッ!と立ててハジメを凝視している。

 

「ハ、ハジメさん?」

「カムさん達のことが心配なんでしょ? バレバレだよ」

「っ……それは……その……でも……」

 

ハジメに図星を突かれて口籠るシア。

 

自分達の目的が大迷宮であり、カム達の事情は関係ない以上、シアとしてはわざわざ面倒事が待っていそうな帝都に入ってまでカム達の行方を探して欲しいとは言えなかった。まして、カム達は連れ去られたというわけではなく、自分達から向かったのだ。何かあっても自己責任である。

 

だが、それでも家族の行方が分からないと知れば、心配する気持ちは自然と湧き上がるもので、そう簡単に割り切れるものではない。それが憂いとなって顔に出たために、誠司とハジメ、ユエ、ティオにもシアの心情は筒抜けだった。

 

誠司も口を開く。

 

「同じポケモントレーナーのよしみだ。どの道、五日は大迷宮に挑めないしな。それに何より……そんな顔で大迷宮攻略に挑んでも成功確率が落ちる。だったら、五日の間に片をつけた方が良い」

「……素直にシアが心配だからって言えば良いのに」

「まったく、素直じゃないのぉ」

「うっさい」

 

年長者二人から揶揄われ、顔を顰める誠司。そんな誠司達の温かい言葉に、シアは言葉を詰まらせつつも、湧き上がる気持ちのままに思いを言葉にした。

 

「……私、父様達が心配ですぅ。……一目でいいから、無事な姿を見たいですぅ……」

「やっと言ったね。最初からそう言えば良いのに。今更、遠慮なんてするから何事かと思ったよ」

「わ、私、そこまで無遠慮じゃないですよぉ! 何言ってるんですかぁ!」

「はっ、よく言うぜ。最初に会った時、チゴラスから助けたら、取り敢えず家族も助けてくれって泣きついてきた癖に」

「……ん、確かに言ってた」

「ほぉ、そんなことが……」

「わわっ、そんな昔の話、蒸し返さないでくださいよぉ……!」

 

そんな誠司達のやり取りを、香織達は一歩引いたところから眺めていた。彼らを見る目はどこか微笑ましさがあった。一方で、光輝は、ポツリと呟いた。

 

「……やっぱり、仲間のためなら見返りなしに戦うのかよ……」

 

どこか感情を感情を抑え込んだような、或いは苛立った様子で呟く光輝。親友の様子に、龍太郎はどうしたもんかと頭を掻いた。

 

その時、ちょうど良いタイミングでイオが戻って来た。どうやらハウリア族の準備が整ったようだ。滅茶苦茶、迅速な対応である。

 

だが、いざ出発しようとなったその瞬間、あることが判明した。以前、誠司達はハウリア族と別れる際に、空のモンスターボールをあるだけ送ったのだが、既に在庫が尽きてしまっており、まだモンスターボールに入っていないポケモンが多くいたのだ。

 

それでもしっかり懐いてはいるのだが、フェルニルに乗る以上、重量の関係で、出来る限りポケモン達にはモンスターボールに入っていて貰いたい。なので、空のモンスターボールを再度配布する必要があった。モンスターボールをまだ持っていなかったハウリア族は、非常に感動した様子で受け取り、それをギュッと握り締めていた。

 

ようやく準備を終えた誠司達は、アルフレリックとアルテナ達の見送りを受けながら樹海を抜けた。道中で、先程襲い掛かってきたイトマルが、再び誠司達の前に姿を現し、仲間になりたそうにしていたので仲間にするというハプニングはあったものの、ハウリア族と共に帝都に向けて再びフェルニルを飛ばすのだった。

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