魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

153 / 160
ポケモンになった仲間達

ズドォオオオン!! ドゴォオオオン!!

 

樹海の中を必死に走って逃げる誠司達の背後から、そんな轟音が響き渡る。

 

「ひぃぃぃぃやぁぁぁぁぁっ!!」

「ま、まだ追ってくるぞ! あいつっ!!」

 

あまりの怖さから香織は絶叫し、光輝は一瞬後ろを振り返り、まだ追いかけて来ていることを確認して叫ぶ。そんな彼らの後ろには、ピンク色の着ぐるみのクマみたいなポケモンが追いかけている。キテルグマだ。

 

「キテルグマの筋力は格闘ポケモンの中でもトップクラスだ! だから抱き着かれでもしたら、一発で背骨を砕かれるぞ!」

「ねぇ、今その情報要る!?」

「口より足を動かして! 追いつかれるよ!」

 

走りながら誠司がキテルグマについて早口で解説していると、鈴が泣きながらツッコミを入れる。そんな誠司達をハジメが怒鳴る。

 

なぜ、誠司達がキテルグマに追われているのか。それは、今から十分程前まで遡る。

 

 

スピアーの群れと戦った後、樹海を探索していた誠司達は今度はナゲツケサルの群れに出くわし、交戦した。スピアー以上に連携の取れたナゲツケサル達に光輝達は翻弄されたのだが、誠司達のおかげもあってどうにか切り抜け、安全地帯に到着することが出来た。そこで一休みすることにし、誠司とシアが見張りでその場を離れ、残りは休憩することになった。

 

各々が思い思いに休憩していたそんな時、鈴があるポケモンを見つけた。それがキテルグマだった。

 

キテルグマは鈴に向かって、大きく手を振っていた。まるで、「おーい、こっちだよ」と言うかのように。だが、この仕草はキテルグマの警戒の合図であり、実際は全く逆の意味だったのだが、当然ながら鈴はそれを知らなかった。着ぐるみのクマのような見た目で、ぱっと見では可愛く見えたのも災いした。

 

そして、そのまま迂闊に近付いてしまった鈴。

 

見張りから戻り、その光景を見た誠司とシアが血相変えて止まるよう叫んだ時には、もう遅かった。

 

鈴の目の前で、キテルグマが奇声を上げながら近くの大木を腕一本で軽々とへし折ってしまった。完全にキテルグマの怒りを買ってしまったのである。

 

そういう訳で、現在誠司達は全力疾走で樹海の中を駆け抜けていた。

 

最初は一体だけだったキテルグマだが、騒ぎが大きくなるにつれて、他のキテルグマまで集まってしまい、今では三体にまで増えている。

 

その時、誠司の魔獣図鑑の技能に、別のポケモンの情報が入ってきた。チラリと視線を向けると、そこには先程のナゲツケサルの群れがあった。更にその向かい側には、長い二本の尻尾を持ったポケモン、エテボースの群れもいた。

 

この二種は縄張り争いをすることもあるのだが、ナゲツケサル達もエテボース達も、暴走しているキテルグマ達を睨みつけている。そして、彼らは一斉にキテルグマ達に向かって飛び掛かった。自分達の縄張りを荒らしに来たと勘違いしたようだ。もう収集がつかないレベルの大乱闘にまで発展したが、今の誠司達には有難い。

 

そのまま誰にも気付かれないように、その場を後にした。

 

 

ーーーーーーーーーー

「はぁ、はぁ……」

「し、死ぬかと思った……」

 

どうにかキテルグマ達から振り切って、安全を確保した誠司達はやっと一息吐くことが出来た。鈴が半泣きで皆に謝罪して、ようやくキテルグマ騒動に一区切りがついた時、近くの茂みがガサガサと音を立てて揺れた。何かが迫ってくると全員身構えていると、茂みから一体のポケモンが姿を現した。

 

コウモリのようなポケモンだ。ふと誠司は、魔獣図鑑の技能が反応しないことに違和感を覚えた。

 

「確か、オンバット……だったか。でもなんで魔獣図鑑が反応しないんだ?」

 

その時、誠司は前にも似たようなことがあったのを思い出した。ティオと戦った時、リザードンに変化したティオに対して魔獣図鑑の技能は反応しなかった。更に、大迷宮に来てすぐ、ユエ達に成り代わっていたメタモン達が本物のユエ達は“変身”していると言っていた。そのことから、誠司は目の前のオンバットがただのポケモンではないことを瞬時に悟る。

 

「なぁ、このポケモンは敵……なのか?」

 

先程のキテルグマのこともあり、警戒心MAXの光輝が聖剣を抜こうとするが、ハジメが手で制した。ハジメも気が付いたようだ。

 

「お前、もしかして……ユエかティオか?」

「オン! ククッ!」

「「「「「え?」」」」」

 

ポカンと口を開けて呆ける光輝達。シアも疑問の声を上げる。

 

「あの、誠司さん。本当にこのポケモンがユエさんかティオさんなんですか?」

「俺の魔獣図鑑の技能が反応しないんだよ。少なくとも、こいつはポケモンじゃない。ただ……ポケモンじゃないから意思疎通の技能も使えないみたいで、何を言っているのか分からなくてな……」

「オン……」

 

自分が敵じゃないと分かってもらえて嬉しかったものの、言葉は分からないと言われ、ショボンとするオンバット(?)。そんな彼女を見て、ハジメはあるアーティファクトを思い出し、それを宝物庫から取り出す。

 

「そうだ。これ持ってみて。多分これなら言葉が通じると思う」

「ッ! オン!」

 

ハジメが差し出したのは、宝石の付いたイヤリングだ。姿を変えられ、魔法も使えないようだが、魔力自体が無くなった訳ではないらしく、難なくそのイヤリング……もとい念話石を使うことが出来た。オンバット(?)も効果が分かるのか、それを耳に付けて魔力を通す。

 

『……聞こえる?』

 

ユエの声が聞こえる。どうやら、このオンバットはユエだったようだ。光輝達も、ユエの声が聞こえたことでようやく目の前の存在がユエの変わり果てた姿なのだと実感したようだ。

 

「ああ、聞こえる。ユエだったのか。分からなくてすまんな」

『……大丈夫。敵じゃないって分かってくれただけでも十分』

「それで、ユエ。一体何があったの?」

『ん、実は………』

 

ユエが言うには、転移した後に気付いた時にはオンバットの姿になっていたらしい。装備やシャンデラ達もおらず、魔法も使えない。オンバットの姿で樹海を彷徨っていたところ、何か爆音が聞こえてきたので、誠司達がいるのではと思い、音のする方へ向かったそうだ。

 

話を聞いて、試しにハジメが再生魔法をかけてみるが、ユエの姿は変わらない。おそらく、オンバットへの変質が神代魔法によるものなので、解除出来ないのだろう。少なくとも、スタート時点でいきなりゲームオーバーでは試練の意味がないので、先に進めば元に戻る方法が分かるはずだと今のところはそう結論付けることにした。

 

「まぁ、ユエは見つかったし、ティオと坂上君も見つけてさっさと攻略を進めよう」

「そうだな」

 

そうして、一行は再び樹海の奥へと歩みを進めた。

 

ーーーーーーーーーー

「あの、誠司さん。あれは……?」

「ああ、オコリザルだな。それであれは……」

『……あれはオコリザルの進化系、コノヨザル』

「え!? オコリザルって更に進化するのか!? 知らなかったな……」

『うむ。進化したことでゴースト属性も併せ持っておる』

 

オコリザルに更なる進化形態があることを知って驚く誠司に、エンニュートの姿になったティオが頷く。ティオは、ヤトウモリの集団に群がられていたところを発見した。エンニュートは、オスのヤトウモリを従えて逆ハーレムを形成するポケモンなのだが、ティオは通常のエンニュートの倍以上の数のオスを引き連れていた。ティオ自身も相当困っていたらしく、助けを求められて誠司達はヤトウモリ達を引き離すことになった。だが、フェロモン以上に、気品の良さというかそういうのを感じ取ったのか、ティオは滅茶苦茶モテており、ヤトウモリ達が頑なに離れようとしない。そのため、いい加減業を煮やした誠司がモンスターボールでティオを捕獲しようとして、ハジメに慌てて止められる一幕もあった。

 

 

ティオも見つかり、残るは龍太郎だけということで、樹海の探索を進めていたところ、誠司達は今度はオコリザルの群れを見つけた。オコリザルというポケモンは異常に怒りの沸点が低く、些細なことで簡単に激怒してしまう。厄介な性質を持つため、今回は見つからないように遠巻きに眺めることにする誠司達。

 

そして、オコリザル達の群れをよく観察してみると、群れのリーダーと思われるコノヨザルが一体のオコリザルと戦っているようだった。だが、ゴースト属性を持つコノヨザルに、オコリザルの攻撃が通じない。オコリザルは怒りのままに地団太を踏む。

 

しかし、そのオコリザルを観察していくうちに、誠司達は違和感を覚えた。このオコリザル、やたら洗練された武術の動きをしているのだ。

 

「なぁ、あのオコリザル……おかしくないか?」

「……ちょっと待って。あの動き……空手よ!」

「間違いない! 龍太郎だ!」

 

誠司がポツリと疑問の言葉を呟くと、雫と光輝が血相を変える。

 

龍太郎は、オコリザルに姿を変えられていたようだ。しかも、何故か進化系のコノヨザルと殴り合いをしている。先程言っていた、ポケモンと殴り合いしているんじゃないかというハジメの予想が的中する形となった。

 

なぜ逃げたり隠れたりせずに、真正面から戦っているのか。色々言いたいことはあったが、このままではあの世に旅立ちかねない。何せ相手は進化系かつ格闘技を無効化するゴースト属性だ。あまりにも分が悪すぎる。現に龍太郎の体はボロボロだった。

 

慌てて光輝達が助けに入り、コノヨザルや他のオコリザル達は誠司達が別の場所に誘導させることで事なきを得た。オコリザルは怒りの沸点が低いので厄介ではあるが、ある意味扱いやすいのだ。ちなみに、何故か龍太郎まで怒り出して他のオコリザル達と一緒に向かおうとして、光輝に取り押さえられる事態が起こったが、些細なことである。

 

 

こうして、やっと全員集まり、改めて攻略を進めようということになったのだが……すぐには始まらなかった。

 

龍太郎が滅茶苦茶説教されることになったからだ。オカンモードの雫に。オコリザルになったことで脳筋ぶりに拍車がかかり、怒りの沸点が異常に低くなった龍太郎だが、怒れる雫の前では正座で項垂れながら大人しくする他なかった。

 

死にかけなので、そんな場合ではないと分かっているのだが、鈴がお腹を抑えて笑い転げるぐらいにはシュールな絵面であった。




キテルグマに追いかけられるシーンは、NEWポケモンスナップでキテルグマに追いかけられるシーンと同じ感じです。

ちなみに、熊に出くわした際に背中を向けて走って逃げるのは大変危険です。目を合わせたまま、ゆっくり後ずさるのが正しい逃げ方です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。