魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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最近、お気に入り、しおり、感想の数が全然変わらないな……

作者のモチベにもなるので、積極的に入れてくれると有難いです。


VSオーロット

「オーーロォ!!」

 

探索を再開し、しばらく進んだ末に誠司達が辿り着いた場所には、一つ目を持った樹のようなポケモン、オーロットがいた。そして、到着直後にこのオーロットが暴れ始めた。オーロットは最初に天候を晴れ状態にする“にほんばれ”を発動させる。それにより、周囲の気温が上がり始めた。

 

どうやら、このオーロットが中ボスに当たるらしく、この先へ進むにはおそらく打倒する必要があるのだろう。そう判断した誠司達は戦闘に突入したのだった。

 

だが、メインで戦っているのは光輝達勇者パーティーだ。それというのも、今のところ成果が特にない光輝達が「こいつは俺達で倒す!」と飛び出してしまったからだ。誠司はベトベトン、ハジメはエースバーン、シアはゴーゴートを使って後方からのサポートに徹する。ユエとティオも同様に援護を図る。

 

ポケモンの姿になったが、そのポケモンに関連する技は使えるようである。オンバットになったユエであれば、“ちょうおんぱ”や“つばさでうつ”、エンニュートになったティオであれば、“スモッグ”や“かえんほうしゃ”といった具合にだ。

 

オコリザルになった龍太郎も同様に使えるのだが、“かわらわり”や“あばれる”といった技なので、残念ながらゴースト属性のオーロットには効果がない。攻撃が当たらず、ギャーギャーと怒りの雄たけびを上げている。

 

「ぐぅううっ、攻撃が重い!」

 

黒い影を纏った爪が迫る。光輝が聖剣でその一撃を受け止めるが、攻撃のあまりの重さに、食いしばった歯の隙間から呻き声が漏れた。通常個体の倍以上の体躯を誇るこのオーロットは、当然ながらパワーも並外れている。だからこそ、“シャドークロー”の一撃も相当の重さだった。

 

香織がラッキーに“メロメロ”を指示して動きを鈍らせようとしたが、不運なことにこのオーロットはメスだったようで効かなかった。寧ろ、「媚びてんじゃねえ!!」と言わんばかりに攻撃が激しくなる。

 

オーロットは“ねをはる”という技を使っているためか、その場から動く様子はない。だが、それでも攻撃範囲が広いので、優位に戦える訳ではない。逆に常時回復の状態になっている分、こちらが不利だ。

 

「ベトベトン、“どくどく”!」

「ベトォ!」

 

ベトベトンの猛毒がオーロットに当たり、オーロットは苦悶の表情を浮かべる。だが、その直後、オーロットの頭部の茂みから桃色の木の実が現れる。モモンの実だ。オーロットが頭に実ったモモンの実を口に放り込むと、たちまち毒を回復させた。それを見たティオが思わず叫ぶ。

 

『あのオーロット、“しゅうかく”の特性を持っておるのか!?』

「え? “しゅうかく”……ですか?」

 

意味が分からず、つい聞き返すシア。そんなシアにティオは解説する。

 

『“しゅうかく”というのは木の実を実らせて、使用可能にする特性じゃ。晴れの天候では、すぐに木の実が実ってしまう』

「なるほど、“にほんばれ”を使ったのはそのためか……」

 

誠司は苦い顔を浮かべながら納得した。“ソーラービーム”などの技の発動時間を短縮出来るといった利点がある一方で、弱点である炎技の威力が上がってしまうため、オーロットが晴れ状態にする“にほんばれ”を使ったことに違和感を覚えていたのだが、ようやくその理由が分かった。

 

「オロォォッ!?」

 

ティオの“かえんほうしゃ”が命中し、今度は火傷状態になるオーロット。“しゅうかく”で実る木の実は一種類だけなので、毒を治すモモンの実では火傷を治すことは出来ない。だが、そんな常識はこの大迷宮では通じない。

 

次にオーロットの頭の茂みから実ったのは水色の木の実だった。火傷を治す効果があるチーゴの実だ。オーロットはチーゴの実を食べてすぐに火傷を回復させてしまう。そんなオーロットを見て、誠司は呻いた。

 

「……流石は大迷宮のポケモンって訳か」

『うーむ。厄介じゃのぅ……』

 

雫は、飛んでくる葉の攻撃、“マジカルリーフ”をミジュマルと共に捌くので手一杯だ。香織も鈴も、自分達のために隙を作ろうとしているが、上手くいっていない。このままでは押し切れないことを察して雫は歯噛みする。

 

大迷宮に入ってからというもの、かつての誠司の言葉が何度も脳裏を過ぎった。あの時、誠司は「五体満足で帰ってこられれば御の字」と言っていたが、誠司達やミジュマル達がいなければ、自分達はとっくに全滅していただろう。オルクス大迷宮で磨いてきた自信が粉微塵になりそうである。

 

雫は少し悩んだ後、光輝に向かって叫んだ。

 

「光輝! “神威”を使って!」

「なっ、ダメだ! 詠唱が長すぎる!」

「今の中西君達の話を聞いたでしょ!? あのオーロットが回復し続けてる以上、回復が間に合わないくらいの大技でいかないと勝ち目がない! 大丈夫よ! 私達が必ず守るから! だから信じて!」

 

光輝は、雫の提案にどうしたものかと悩んだ。

 

光輝も誠司達の話は聞こえていた。目の前のオーロットは、攻撃力も防御力も驚異的だ。そんな相手に対して無防備を晒すのは自殺行為と言っても良い。

 

しかし、オーロットは“ねをはる”で常に体力を回復させており、状態異常になってもすぐに回復出来てしまうので、このまま戦い続けていても雫の言う通り、勝ち目はない。この状態が続けば、いずれ何もできないまま敗北するのは目に見えている。

 

……それだけではない。光輝は誠司達がユエと再会した時のことを思い出した。姿が変わっても自分の仲間だとすぐに理解した誠司達。自分達もオコリザルに姿を変えられた龍太郎に気付くことが出来たが、あれは先にポケモンに姿を変えられたユエを見たことも大きい。もしも最初に再会したのが龍太郎だったとして、自分はすぐに正体に気付いて受け入れることが出来たか。そう思ったし、正直なところ、強い信頼関係を築けている誠司達に対して嫉妬の気持ちがなかったと言えば、嘘になる。

 

故に、光輝は決断した。自分達にだって信頼関係はある。それは決して誠司達に負けるものではないのだと、そう証明する為に。

 

「分かったっ。後を頼む!」

「ええ、任せなさい。皆! 固まって!」

「了解だよ!」

「うん!」

『応よ!』

「ムックル、お前も頼む!」

「ムクーーッ!」

 

光輝がその場で聖剣を頭上に掲げたまま微動だにしなくなった。口元だけは詠唱のためにブツブツと動いているが、意識は“神威”の発動に全て注がれているため無防備といっていい状態だ。その隙だらけの状態の光輝を狙って、オーロットは“タネばくだん”や“マジカルリーフ”を発動させる。

 

「ここ聖域なりて 神敵を通さず──“聖絶”!!」

 

光輝目掛けて襲い掛かってくる攻撃は、鈴が展開した障壁によって防がれる。今まで何度も自分達の窮地を救ってきた十八番の障壁だが、オーロットの怒涛の攻撃の前には長くは続かない。

 

「っぅうううっ!」

 

“聖絶”に無数の亀裂が入り、やがて耐え切れずに粉砕される。鈴の呻き声が響く中、急迫する攻撃を雫と龍太郎、ミジュマル、イシズマイ、ムックルが、刃と拳、ホタチと爪と羽で必死に捌いていく。

 

「はぁああああっ!」

『おぉおおおおっ!』

「ジュマァアアッ!」

「イママァアアッ!」

「ムクゥウウウッ!」

 

悲鳴とも雄叫びともつかない声を上げながら持てる技の全てで迎撃する。ラッキーの“てだすけ”によってパワーアップしたことで、ただの一撃も後ろへは通さない。それでも、怒涛の攻撃に無傷とはいかず、二人と三体は一瞬にして傷だらけとなる。

 

「“回天”」

 

戦場に響くその一言で、雫達の傷は一瞬で癒えた。香織の回復魔法だ。ラッキーの“てだすけ”の効果もあって、時間の巻き戻しのように回復していく。

 

鈴が再び障壁を張り数秒を稼いで、また破壊され、再び張り直すまで雫達が体を張って防御する。傷ついた体は香織が即座に癒し、また鈴が障壁を張る。それを繰り返すこと三度。

 

遂に、光輝から膨大な魔力が迸り掲げる聖剣に収束していった。太陽のように燦然と輝く聖剣をグッと握り直し光輝は大きく息を吸う。

 

「皆、行くぞ! “神威”!!」

 

自身の切り札たる最大の魔法を解き放った。光の奔流が射線上の地面を削り飛ばしながら爆進する。“マジカルリーフ”も“タネばくだん”も真正面から呑み込み、そして、オーロットに直撃した。

 

轟音と共に光が爆ぜ、周囲を白に染め上げる。

 

「やったか!」

 

光輝が会心の笑みを浮かべて叫ぶ。後方にいたハジメが、思わず「あ、それフラグ……」と小さく呟く。

 

そのフラグはきっちり回収された。

 

光が収まり粉塵が晴れた先には、ダメージを負いつつも、未だに立ち塞がるオーロットの姿があった。

 

「うそ、だろ……」

 

光輝の呆然とした声が虚しく虚空に響く。呆けているのは光輝だけではなかった。雫達もまた、光輝の切り札が通じなかったことに激しく動揺していた。

 

“神威”とは文字通り、勇者の切り札に相応しい威力を持った最上級の攻撃魔法だ。大抵の敵なら屠れる、絶大な信頼を寄せていた必殺技が、目の前の敵を倒すに至らず、戦意すら喪失させられない。そのことに、光輝はショックを隠し切れない。

 

今まで、心のどこかで光輝は「自分なら出来る」「自分なら大丈夫」と思い込んでいた。()()中西や南雲でも出来たことだったからだ。大迷宮攻略は。だが、現実は切り札を以てしても、自分の力が及ばないということ。

 

光輝が心の中で、必死に目の前の現実を否定していると、傍らの雫が何かに気付いて声を張り上げた。

 

「光輝、あれを見て! 直撃していなかったのよ!」

「……え?」

 

雫の視線を辿れば、そこには木っ端微塵になった大量の木々が散乱していた。どうやら光輝の放った“神威”はオーロットを直撃することなく、その手前で大量の木々にぶつかり防がれたようである。

 

オーロットが根を介して周囲の木々を操っていたのだ。“ねをはる”は回復だけでなく、周囲の木々を操るためのものだったようで、オーロットが右腕を振り下ろすと、周囲の木々が無数の枝を尖らせ、光輝達に向かって伸びてくる。

 

「やばい! ここに聖域をっ───“聖絶”!!」

 

一瞬呆けた鈴だったが、直ぐに状況の不味さに気が付いて詠唱省略した“聖絶”を発動した。ギリギリ発動が間に合ったが、詠唱を省略しているため効果が不十分だ。このままでは破られるのも時間の問題だろう。

 

「うっ、くぅ………」

 

とんでもない勢いで魔力が消費されていき、鈴が苦悶の表情を浮かべる。光輝は、そんな鈴を見て、ハッと我に返った。茫然自失していたのではない。少し安堵していたのだ。自分の切り札が通用しなかったのには、やっぱり理由があったのだと。だが、通用しなかった結果、こうして鈴は苦しんでいる。

 

光輝は、今の今まで感じていた己の心を頭の隅へ追いやった。そして、第二の切り札である“限界突破”を使う覚悟を決める。大迷宮に入って、こんな序盤で切り札を二枚も切らされるとはとんだ誤算であるが、自分の認識が甘かったのだと割り切るしかない。

 

一方で、誠司達もまた、オーロットによる攻撃を受けていたものの、防ぎ切っていた。ベトベトンが“まもる”で防御し、エースバーンとゴーゴート、新たに出したキュウコンとホルードが攻撃を捌く。ユエが“ちょうおんぱ”で攻撃の軌道を逸らしてもいる。

 

「……限界みたいだな」

 

前方の光輝達を眺めながら、誠司が呟いた。

 

「う~ん、あの勇者さんが“限界突破”を使えば、いけるんじゃありませんか?」

「どうかな。まぁ、“限界突破”の更に上のやつでも発動すればいけそうだけど、その後の弱体化や疲労が問題なんだよね……通常の回復魔法だと中々癒えないし」

『……再生魔法なら治せるかもだけど』

「あれは魔力の消費が大きいからなぁ。序盤で使うのはちょっと……」

『ふむ。では、勇者の坊やが使ってしまう前に片付けてしまうのが良いかのぅ』

 

キュウコンは、既に“わるだくみ”を三回使って特殊攻撃力が最大限まで上がっている。オーロットを倒そうと思えば、倒せる。だが、このまま進めても光輝達の攻略が認められるかどうかという懸念があった。

 

元々、彼らを大迷宮攻略に同行させたのは、自分達がアルセウスを救う際、神とは別に襲ってくるであろう神の使徒達を相手出来る戦力を増やすためだ。誠司とて勇者パーティー全員が神代魔法を習得出来るとは思っていないが、一人も習得出来なかったら、同行させた意味がない。だからこそ、彼らにはある程度の戦果を上げて欲しいと考えていた。

 

頭を悩ませる誠司に、ティオの助言が入った。

 

『誠司よ。大迷宮のコンセプトを考えれば、戦闘での成果はそこまで意識せんでも良いかもしれんぞ』

「え?」

 

誠司が思わずティオに視線を向ける。ハジメ達も同様だ。

 

『おそらくじゃが、ハルツィナは絆を試しておるんじゃろう』

「絆……そう言えば、入口の石版にもその言葉はあったね」

『そうじゃ。あれは単に亜人族による大樹までの案内だけでなく、攻略において絆を試すという意味でもあったのではなかろうか。仲間の偽物を見抜くこと、変わり果てた仲間を受け入れること、まさに紡がれた絆が試されているように思うがの』

「………なるほどですね。その試練を乗り越えた先にゴールがあるなら、確かに〝道標みちしるべ〟と言えます。だとすれば……」

「天之河君達は、坂上君を受け入れているし、共闘もしている。さっきは命も預けた。ここまで来れば、確かに僕達が片付けても問題ないかもしれないね」

「………この先も、絆を試す何かを私達もあっちも乗り切れば問題ないってこと?』

『そういうことじゃ。まぁ、あくまで推測じゃがの』

「だが、ありえる話だな」

 

これが本当だとすると、単純な戦闘能力だけを問われないこの大迷宮の試練は、光輝達が初の神代魔法を手にする上で相性が良いのかもしれない。

 

方針が決まった誠司達は、それぞれ自分のポケモン達に指示を飛ばす。

 

「ベトベトン、“まもる”で防御を続けてくれ。キュウコンは合図を出したら“オーバーヒート”を頼む」

「ベトォ!」

「コン!」

「エースバーンも引き続き、防御をお願い」

「バース!」

「ゴーゴートもお願いします!」

「ゴー!」

「それから……ホルードは“あなをほる”で彼らを地面に落としてください!」

「ホールゥ!」

 

一見、おかしな指示だが、ホルードはシアの意図を理解しているようで元気に返事をする。そして、勢いよく穴を掘り進んで行った。

 

一分後には、光輝達の足元が崩れ、『うわああぁぁぁっ!?』という悲鳴と共に彼らの姿が消える。そして、遮蔽物がいなくなったことで、誠司達の前方にはオーロットがいる。誠司が叫ぶ。

 

「今だ!」

「コーーーーンッ!!」

 

直前まで目の前の光輝達に意識が向いていたため、オーロットは反応が遅れてしまった。気付いた時には、オーロットは周囲の木々諸共、灼熱の炎に包みこまれていた。晴れの天候で、最大まで上がった特殊攻撃力による炎属性の大技を殆ど無防備の状態で受けてしまうオーロット。同時に、大きな爆発も起きる。

 

「オ……ロォ…………」

 

黒焦げになったオーロットはそのまま、倒れ込んでしまった。

 

 

その後、ホルードが掘った穴に落ちた光輝達を引っ張り上げる。いきなり穴に落とされたことにジト目を向けつつも、灼熱の炎や大爆発は見えたり聞こえたりしていたようで、色々複雑そうな表情を浮かべていた。一方で、どこか光輝は悔し気に唇を噛み締めていた。

 

誠司達との力の差を感じずにはいられなかった。その差を覆すためにここにいるのだと自分に言い聞かせても、助けられっぱなしで、果たして神代魔法は手に入るのか、と、そんな不安が心の内から湧き上がってくる。

 

ネガティブな考えを振り払うように頭を振った光輝は、背後でメキメキッという音が響いたことに慌てて振り返った。

 

「な、んだ……?」

 

振り返った先には、地面から地響きを立てながら生えてきて急速に成長する巨木の姿があった。やがて、その巨木は大樹の時と同じように洞を作り始めた。

 

「なるほど。あれが次の入口って訳か」

 

誠司はそう呟きながら、洞に向かう。ハジメ達も同様だ。そんな誠司達を光輝達も慌てて追随した。

 

洞の中は、特に特徴のない空間だった。が、全員が中に入った直後、やはりと言うべきか洞の入口が勝手に閉じていき、ほぼ同時に足元が輝き出した。

 

「また転移だな……」

「今度は何だろうね」

「また誰かが逸れるなんてことにならないと良いですけど……」

『……意外とポケモンになるのは楽しかった』

『じゃが、やはり元の身体が一番じゃ』

 

そんなことを言いながら、誠司達の視界は莫大な光によって塗りつぶされた。

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