魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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今回は少し短めになります。


反転

誠司とハジメはお互いに睨み合う。先程までとは打って変わって、親愛の感情は一切無い。

 

「なんか、お前を見てると殺したくなってくるんだが」

「奇遇だね。僕も君の顔を見てると、殺意が湧いてくるよ」

 

気が付けば、お互いにドス黒い感情を放ち合っていた。このままいけば、殺し合いに発展しそうだが、記憶の中の自分達がこれは異常だとブレーキをかけていることで、どうにか堪えている。そうでなければ、とっくに殺し合っていただろう。

 

「ちょっと、何をしているんですか、お二人とも」

 

一触即発な雰囲気を醸し出している誠司とハジメに、怒声交じりの声がかけられる。シアだ。

 

「こんな状況で何を遊んでいるんです? ぶち殺しますよ?」

 

シアもまた、激しい嫌悪が宿った目で二人を睨み、コキコキと首を鳴らす。まるで、今すぐにでも殺してやりたいと言いたげだ。

 

「誰にものを言ってる? ハッセンフェッファーにするぞ、てめぇ」

「それ以上、口を開くなら、君の眼球に口紅を突き刺すよ?」

 

今度はシアに向かって、暴言を吐き捨てる誠司とハジメ。シアの隣に立つユエが、殺意の籠った目でポツリと呟いた。

 

「……耳障り。あなた達の声」

「だったら、その耳引きちぎってやろうか? おチビちゃん」

「あれ、いたの? 頭が低くて全然見えなかったよ」

「ハッ、スカしてんじゃねぇですぅ」

「……上等。全員、消し炭にしてやる」

 

誠司達四人はしばらく睨み合う。チラリと周囲に目を向ければ、会話には参加していないが、ティオも自分達と同様に憎しみの籠った目で睨んでいるのが見えた。

 

一触即発の空気の中、光輝が声を張り上げた。

 

「お、おい! 何をしているんだ! 中西や南雲に喧嘩を売るなんて!」

 

光輝は、誠司やハジメを庇ってユエ達を睨みつける。彼が誠司とハジメを見る目には親愛の色が宿っていた。どちらかというと、誠司の方が親愛の度合いは高いようだ。そんな光輝を見て、誠司もハジメも困惑した。ユエ達に対する憎悪のようなものは一切ない。ただただ無の感情が光輝に対して湧いたからだ。

 

「どうやら、今の魔法陣は、他人への感情の好悪が反転する仕組みって訳か」

「……みたいだね。こんな時に意見が合うなんて……」

 

二人は心底嫌そうな顔を隠しもしないで吐き捨てた。しかも厄介なことに、この反転効果は誠司達だけでなく、ポケモン達にも有効なようで、ヘラクロスなどは誠司達を睨みつけている。

 

無言だったティオが口を開いた。

 

「なるほどの。記憶、あるいは紡いできた絆を以て反転した感情を振り払い元に戻れるか、あるいは、悪感情を抱いたままでも今までの自分達を信じて共に困難に挑めるか……嫌らしい試練じゃ。質が悪いのは、絆が深ければ深いほど反転した時の嫌悪感は大きくなるという点じゃな。何より……」

 

ティオがそこで言葉を止めて聖絶をガリガリ齧っているコラッタ達を見やる。それに釣られて他の面々も無数のコラッタ達を見つめつつ記憶の中の感情との落差に言葉を詰まらせる中、ユエが何とも言えない表情で呟いた。

 

「……愛らしく見える」

 

目の前のコラッタ・ラッタの大群が可愛らしく見えていた。確かにコラッタもラッタも、一体だけで見れば、愛嬌が感じられる。だが、あれだけの大群ともなると、恐怖や嫌悪の感情が勝っている状態だった。先程まではそういう感情だったのだが、今は違う。あの無数に群がっている光景が非常に愛らしく見えるのだ。

 

「チッ、厄介だな……」

「まったくだね。でもやるしかないよ」

 

誠司とハジメは周囲に群がるコラッタ達を睨みつける。

 

「さっさと片付けるぞ、ヘラクロス」

「……ヘラクロ」

「五分で蹴りをつけるよ、エースバーン」

「チッ、バース」

 

ヘラクロスもエースバーンも不満そうに頷く。エースバーンに至っては舌打ち混じりに返事する。よっぽどハジメのことが気に入らないらしい。そんなポケモン達の態度にイラッとしつつも、二人は同時に指示を飛ばす。

 

「「“やつあたり”!!」」

 

“やつあたり”という技は、ポケモンが懐いていない程、威力が上がる技だ。普段は使うことがなかったが、今この状況では最大火力になる。他の技を指示しても無視してくる可能性もあったので、この技を指示したのだが、正解だったようだ。ヘラクロスもエースバーンも勢いよく飛び出して、障壁を突き破り、コラッタ達を蹴散らしていく。誠司とハジメも後に続く。

 

だが、それでも押し切れないようだ。いくら相性が良くても、向こうの数が圧倒的に多過ぎる。誠司は舌打ちしながら、二つのモンスターボールから新たなポケモン達を繰り出す。

 

「ドンカラス、キュウコン、マーイーカ、お前達も行け!」

「ガァーーッ!」

「コン!」

「マーイーカァッ!」

 

何故か上下逆さまの状態でボールから出てきたマーイーカ。出てきた瞬間、彼の体がカッと光に包まれた。

 

「何!?」

 

これには誠司も目を見開いて驚いた。あれだけ色々試しても進化しなかったマーイーカが進化したのだ。魔獣図鑑の技能をもってしても、進化方法が一向に分からず頭を悩ませていたのだが、まさかここで進化するとは思わなかった。

 

光が収まると、そこにはカラマネロが立っていた。魔人族の味方のカラマネロ達とは違う、誠司の手持ちのカラマネロだ。カラマネロは振り返ると、腕を上げてサムズアップする。

 

「……まさかここで進化するとはな。キュウコンがあれだけうるさく連れて行くよう言っていたのはこのためか」

「……コン」

 

実は当初、誠司は今回の大迷宮攻略にマーイーカを連れて行くつもりはなかった。草や虫属性に有利な“かえんほうしゃ”など多様な技を覚えてはいるが、虫属性の攻撃はマーイーカにとって大ダメージを受けかねない。それならチルタリスあたりを連れて行った方が良いだろうと考えていたのだが、それに待ったをかけたのがキュウコンだった。キュウコンは半ば強引にマーイーカをメンバーに加えるように言ってきたのだ。それに押される形でメンバーに加えたというのが今回の経緯だった。

 

ハジメもまた、カラマネロに進化したのを見て驚きの表情を浮かべていたが、すぐに気を取り直して自分も別のポケモンを繰り出す。出てきたのはドクロッグとギモーだ。

 

どうやら、モンスターボールの中にいても魔法陣の効果を受けるようで、ドンカラスも、キュウコンも、ドクロッグも、ギモーもトレーナーに対して素っ気ない。だが、カラマネロだけは誠司を憎む様子はなかった。

 

「マーイーカ……じゃなくてカラマネロだけは普通だな。元から俺のことを嫌っていたのか、それとも反転の影響が進化に使われて感情は反転しなかったのか……まぁ、後者だろうな。そうであって欲しいが……」

 

理由はどうあれ、この状況でしっかり指示に従ってくれるポケモンがいてくれるのは有難い。

 

「カラマネロ、“ばかぢから”! ドンカラスは“ぼうふう”! キュウコンは“かえんほうしゃ”!」

「ドクロッグ、連続で“かわらわり”! ギモーは“マジカルシャイン”!」

 

カラマネロ以外のポケモン達は渋々ながらも技を繰り出していく。自分に向かって偉そうに命令してくる人間は気に食わない。だがそれ以上に、そんな感情に変えられたことはもっと気に食わなかった。だから戦う。それだけのことだ。

 

「おい、男女。俺達の足を引っ張るなよ」

「そっちこそ。僕達の邪魔をしないでよ、糖尿野郎」

 

お互いに毒を吐き、同時にピキリと青筋を立てる誠司とハジメ。

 

迫りくるコラッタやラッタの大群を蹴散らしていく誠司とハジメとポケモン達。その時、一つの黒い影が誠司達の前に姿を現した。

 

「ラッタッタ!」

 

ラッタ(アローラの姿)だ。だが、他の個体と比べて三倍近くの大きさを誇る。でっぷり太った体を揺らして太々しく笑う。もしかしなくても、こいつが群れのボスだろう。

 

「こいつがこの群れのボスか」

「見れば分かるでしょ。とにかく、あいつを倒せば、どうにかなるはず」

「だな。なら……」

「とっとと片付けるぞ」「とっとと片付けよう」

 

誠司とハジメが同時にそう言うと、二人のポケモン達がラッタに向かって攻撃を仕掛けた。そして、対するラッタも手下のコラッタ・ラッタを使って誠司達を迎え撃つ。

 

更にバトルは激化していく。




ハッセンフェッファー:ドイツの伝統料理。兎肉を使ったシチューのこと。灰色長身の某ウサギの台詞にもよく出てくる。

ちなみに、ウサギは化粧品の実験にも使われていた時期がありました(ハジメのシアへの暴言はそこから)。所謂ドレイズ試験のこと。


さかさバトル(タイプ相性があべこべになるバトル)仕様にすれば良かったなと、今更ながらに後悔しているところです。
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