魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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最奥の悪竜

ユエがモクローを仲間にし、ハジメが銃を完成させてから随分経った。誠司達は着実に迷宮を攻略していき、遂に誠司達が最初にいた階層から百階層目になるところまで来た。今はその一歩手前の階層で各々の調整をしているところだ。さっさと突破したいところではあるが、流石にそれは楽観が過ぎるというものだ。また何か驚くような事態が起こるとも限らない。用心しておくに越したことは無いだろう。

 

ハジメはヒバニーとイーブイに技の練習をさせており、本人も狙撃の腕を磨いている。また、以前見せた銃の改良も進めているようで頼もしい限りだ。ハジメ自身この銃にかなり愛着が湧いているようで名前を付けたがっていた。誠司は「黒ちゃん」という名前を挙げていたが即却下された。ハジメ曰く某芸人を連想するとのことだ。最終的にこの銃の名前はドイツ語で雷鳴の意味を持つ「ドンナー」に決まった。随分厨二心をくすぐる名前だ。

 

一方でユエの方もシャンデラと一緒にモクローの稽古を付けていた。モクローは迷宮攻略を通じてある程度の実力は付いてきているもののまだまだ未熟だ。モクロー本人もそれを自覚しているのか積極的にユエ達のシゴキに食らいついている。

 

誠司もポケモン達と一緒に技の特訓や連携を教えていた。それによって、ネマシュとミズゴロウは新しい技を覚えることが出来た。ケンタロスとイーブイは新しい技こそ覚えなかったものの、動きは間違いなく向上していた。全員モチベーションも高いので上達も速いのだ。そのため誠司としても教えがいがあった。特に最初の相棒としてやってきたネマシュに対しては「ここまで強くなって……」という感動さえ覚えた。その時、誠司は気付かなかった。ネマシュの体が一瞬ではあったが、光り輝いたことに。もっともネマシュの体はいつもほんのり発光しているので分かりづらいのだが。

 

 

こうして全ての準備を整えた誠司達は階下へと続く階段を降りて行った。

 

階段を降り終えると、目の前には無数の柱に支えられた広大な空間が広がっていた。その柱は一本一本大きく全てに彫刻が施されていて、奥へ進ませるような配置になっている。地面も荒れた所が一切無い。どこか荘厳さすら感じる程だ。

 

誠司達はその光景に見惚れつつも奥の方へ進む。やがて大きな扉が見えてきた。その扉には柱よりも遥かに複雑かつ美しい彫刻が彫られている。この扉の先がこの大迷宮のゴール地点であることは容易に想像がついた。早速開けようとするが、扉はピクリとも動かない。

 

その時、中央に三十メートルはあるであろう魔法陣が出現したのだ。何かとんでもないものが現れることだけは分かる。

 

「っ、これは……」

「ああ。何か来るぞ。それこそ今までの奴らより遥かにヤバい奴が………」

 

誠司の予想通り、魔法陣からは巨大な黒い三つの首を持ったポケモンが現れた。サザンドラだ。三つの頭は誠司達を視界に捉えると咆哮を上げた。

 

「「「グルルラァァァ!!!!」」」

 

「どうやらコイツを倒さない限り……」

「うん。先には進めないね」

「……やるしかない」

 

誠司達は身構えるとサザンドラの三つの頭は口を大きく開いた。そして、三つの口から同時に“かえんほうしゃ”を放った。挨拶代わりのようだ。誠司達はその場を同時に回避する。そして、それぞれ三つに分断して反撃を開始した。ハジメは右、ユエは左、そして、誠司は中央の頭を攻めていく。三つの頭はそれぞれ別の技を使うことが出来るようで、かなり手強い。中央の頭は龍の形をした光線、“りゅうのはどう”を口から発射する。だが、ネマシュが前に飛び出て攻撃を受け止めた。ネマシュはフェアリー属性でもあるのでドラゴン技は効かないのだ。それを理解したのかサザンドラ(中央)は炎の技を放とうとする。

 

誠司は急いでポケモン達に指示を出す。サザンドラは悪・ドラゴン属性だ。幸い、ポケモン達にはそれぞれもってこいの技を覚えている。

 

「ネマシュ、“マジカルシャイン”。ミズゴロウ、“こごえるかぜ”」

 

誠司の指示を聞くと、ネマシュは体を眩く輝かせ、ミズゴロウは尻尾を使って冷たい風を引き起こす。先程新しく覚えた技だが、どちらもサザンドラに有効な技だ。サザンドラ(中央)は攻撃を受けると大きくのけぞった。中央の頭が生命線なのか他のサザンドラの頭も一瞬動きが止まった。その隙にハジメはヒバニーとイーブイに“にどげり”を指示した。効果は抜群で目を回して動かなくなった。ユエの方もモクローやシャンデラが頭を撹乱させつつユエの氷の魔法を使って攻撃して倒す。

 

しかし、中央の頭はまだしぶとい。大ダメージを受けたもののまだ倒れない。逆に怒らせる結果になってしまった。サザンドラの中央の頭は気絶した二つの頭を無理矢理起こすと、ある技を放った。先程までの攻撃とは訳が違う、強力な技だ。

 

サザンドラは“はかいこうせん”を中央の頭から、残りの二つの頭は“りゅうのはどう”と“かえんほうしゃ”を放った。それぞれ別方向に向けて撃っているため、躱すのが難しい。

 

誠司はネマシュとイーブイに“まもる”を指示するが、完全に防ぎ切ることは出来ず、全員吹き飛ばされてしまい、ハジメやユエ、一部のポケモン達は気絶してしまっていた。

 

地面に倒れつつ、誠司は呻いた。

 

「くっそぉ…… これほどとはな………」

「マシュ……」

 

ネマシュの声が聞こえ、そっちに目を向けるとネマシュはまだ立っていた。目はまだ諦めていない。いや、ネマシュだけではない。他のポケモン達もだ。全員、目は諦めていない。誠司の指示を待っていた。

 

(ネマシュ…… 皆……… くそっ! ポケモン達はまだ諦めていないのに俺が諦めてどうすんだ!)

 

誠司は頬を両手で強く叩いた。そして、痛む身体に鞭打ってなんとか立ち上がる。

 

「よし! 俺達はまだまだ諦めねえ! 一気に逆転するぞ!」

「ゴロ!」 「ブモォ!」 「イーブ!」 「マッシュー!!」

 

その瞬間、ネマシュの体が光り輝いた。マジカルシャインの時の光とは違う。光の中でネマシュの体は段々と変化を遂げていく。小さかった体や頭のカサは大きくなり、長い両腕が生えていった。やがて光が収まると、そこには違うポケモンが立っていた。魔獣図鑑の技能によりそのポケモンの情報が頭に入ってくる。

 

「マシェード………」

 

誠司がそう呟くと、マシェードは振り返ってサムズアップする。ポケモン達も呆然とした表情を浮かべていた。

 

サザンドラも一瞬だけ驚いたような表情を浮かべたが、すぐに攻撃体制を取ろうとする。だが、思うように動けずにいた。“はかいこうせん”の反動によるものだ。しかも、先程までのダメージも尾を引いている。その隙を逃がさず、誠司はマシェードに指示を出した。

 

「よし! マシェード! 進化したお前の強さを見せてやれ! “ムーンフォース”!」

「マシェッ!」

 

マシェードは新しく習得した技、“ムーンフォース”をサザンドラに放った。効果抜群の技を受けたサザンドラは大きく唸り声を上げて倒れた。

 

サザンドラが倒れた音でハジメとユエも目を覚ましたらしい。ヒバニーやシャンデラに支えられながら誠司の方に近付いて来た。

 

「倒せた……の?」

「ああ。なんとかな……」

「……でもあの扉、まだ開いてない……」

 

ユエがそう言って扉の方を示す。誠司もハジメも視線を向けると、確かに扉には何も変化が見られない。

 

「ということはもしかして……」

「他にも何か条件が………」

 

その時、後ろから恐ろしい気配を感じた。ポケモン達の悲鳴も聞こえた。慌てて振り返ると、そこには今倒したはずのサザンドラが起き上がっていた。かなりの深手を負ってはいるものの、強さはまだ健在だった。いや、深手だからこそ強くなっていると言うべきか…… 起き上がり際にミズゴロウ、イーブイ、ケンタロスを気絶に追い込んでいる。誠司の手持ちで残っているのはマシェードだけだった。だが、そのマシェードもかなりの大ダメージを負っている。

 

「嘘……だろ………」

「まだやれるって言うの………」

「………しぶとすぎる……」

 

もう流石に厳しい。誠司達の顔に絶望の表情が浮かんだ。

 

そして、ハジメは意を決したように銃を取り出し、前に進み出る。それに気付いた誠司は思わず止めた。

 

「お、おい待て…… それでどうするつもりだ……」

「決まってるでしょ。早くアイツにトドメを刺さないと」

「だ、だけど……アイツはポケモンだぞ……… なにも殺さなくたって………」

 

誠司自身、自分が間違ったことを言っていることは分かっていた。だが、正直、ポケモンを殺したくなかった。殺されるのも見たくなかった。今までだって相手のポケモンを気絶に留める程度で済ませてここまで到達することが出来たのだ。今回も気絶させれば良いんじゃないかという淡い期待があった。そんな誠司にハジメが怒鳴る。

 

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ! 今やらないと、僕達も……ポケモン達もアイツに殺されるんだぞ!!」

「っハジメ、後ろ!」

 

ユエの切迫詰まった声でハジメが前を向くと、そこには右側のサザンドラの口が迫っていた。いつの間に間合いを詰められていたようだ。ハジメは一瞬、時間が何もかもゆっくりになった気がした。その時ーーー

 

「ハジメっ!!」

 

声と共に後ろからドンという衝撃が走りハジメは突き飛ばされた。その時に頭を打ち、少しだけ切ってしまう。

 

ハジメが急いで振り返ると、そこには肘から先の左腕が無くなり、本来左腕があった場所からドクトクと血が流れている誠司の姿があった。誠司は苦悶の表情を浮かべ、周囲が見えていなかった。そこに今度は左側のサザンドラの頭が追い討ちのように“かえんほうしゃ”を誠司に放つ。ハジメは危ないと叫ぼうとするが、声が出なかった。そして、そのまま顔の左部分に直撃してしまい、誠司は倒れ込んでしまった。一拍遅れてユエやポケモン達が急いで誠司の元に向かった。半狂乱で誠司を呼びかける声がこの階層に響く。

 

ハジメもすぐに誠司の元に行って彼の安否を確認したかったが、まずはやるべきことがある。ハジメは尚も暴れ回るサザンドラに殺意を向けると、サザンドラの心臓部分に照準を合わせて銃の引き金を引いた。サザンドラは心臓を撃ち抜かれたことで再び地面に倒れ伏した。そして、念のため三つの頭全てに銃を撃ち抜くことも忘れない。それによって、この階層のボスであるサザンドラは完全に絶命した。




ネマシュが進化しました。進化のタイミングはポケモン次第になります。アニポケでも明らかに進化するだろってポケモンが進化しなかったりするので。

誠司が重傷を負いました。彼がどうなったかは次回分かります。
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