魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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夏バテで数日ダウンしてました。次回でオルクス大迷宮編が終わりになりそう。


解放者の隠れ家(後編)

キュウコンを仲間に加え、誠司達は再び書斎に向かった。トランクを先に調べたのでまだ他のことは調べずじまいだったからだ。キュウコンは他のポケモン達と交流を深めて貰うことにした。ポケモンのことはポケモン同士の方がスムーズに行くだろう。

 

そして、書斎をもう少し詳しく調べると、様々な設計図が見つかった。そのうちの一つにこの住居の施設設計図らしきものがあり、それによると三階の大きな魔法陣は地上へと繋がる出口の役割を担っているそうだ。ベテランシンボルを持っていないと発動しないらしい。これを知った時、誠司とハジメは歓喜の声が上がった。やっと奈落の底から出られることが分かったのだ。喜ばない方が無理だ。ユエも嬉しそうである。

 

更に設計図を調べていくと、他にも興味深いものがあった。特殊な人工魔石の設計図だ。その魔石は強力なポケモンの幻を作り出すことが出来るものらしく、殆どの階層のボスとして設置しているのだそう。幻といっても普通のポケモンよりもずっと強いだけで殆ど実物に近い。倒されたりして死ぬと跡形もなく消滅する。そして、消滅から一定時間を過ぎると復活するのだそう。設計図によると魔石自体が破壊されない限り何度でも復活することが可能だということも分かった。奈落に落ちた時に死んだはずのバッフロンが消えていたのもそういうことで、後で復活していたのである。そして、最後の階層のサザンドラも他のボスポケモンと同様に魔石によるものなので殺しても復活することが可能だ。つまり、殺すことに躊躇う必要は全く無かったのだ。そのことで誠司は心の中でますます罪悪感を募らせた。

 

また、モンスターボールの設計図もあった。どうやら、その設計図は晩年に作られたものでまだ改善の余地が沢山あるようだ。オスカー自身、設計の改善点を挙げているし、ハジメも設計段階での穴をいくつか見つけている。材料のぼんぐりや鉱石はトランクで大量にあるので改良は出来そうである。

 

 

 

 

工房にも入ってみると、様々な鉱石や作業道具が所狭しと保管されており、王国の錬成師が見たら卒倒しそうな場所だった。ハジメも目を輝かせている。今にも色々作りそうな感じだ。

 

 

そんなこんなでもう日も暮れて来たので、一旦ベッドルームに戻ってポケモン達にはトランクの中に入ってもらうことにした。ポケモン達も最初はトランクに驚いたものの、中に入ると、それぞれのエリアに喜んで入って行った。

 

マシェードやキュウコン、ケンタロスは草原のエリア、ミズゴロウは湿地のエリア、イーブイは森のエリアといった感じだ。他のポケモン達も同じようにそれぞれ適したエリアで過ごしている。

 

今後の方針は次の日決めることにする。今はまず休もうということで決まった。

 

 

「………はーー」

 

誠司はお湯を掬って肩にかける。オスカーが作った風呂は非常に高性能だ。天井は満天の星空が写し出されて幻想的な上に数十個はある蛇口からはそれぞれ違う効能のお湯が出る仕組みだ。しかも、蛇口を捻ればすぐに満タンになる。なので、それぞれ違う効能のお湯を楽しむことが出来る。誠司は火傷に効く効能のお湯を使っている。顔の左側の火傷はかなり酷く神水やハジメの回復魔法でもなかなか治らない。なので少しは効くかなという感じで使っている。気休めかもしれないが傷が癒えるような感覚もあって気持ちが良い。

 

「まさか、こんなところで温泉を楽しめるとは思ってなかったな……」

 

誠司は思わず感傷に浸った。

 

そんな時、ヒタヒタと足音が聞こえて来た。誰だ? 音がした方向に目を向けようとすると、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「お邪魔しても大丈夫?」

「なんだ、ハジメか…… 良いぞ」

 

ハジメの声だ。警戒を緩めた誠司は何の気無しに答える。

 

ちゃぷんという音と共に横にハジメが入ってきた。ハジメと話そうと顔を向けると、固まった。ハジメは結んでいた長い白髪を下ろし、首や肩を隠している。それだけでもかなり女の子っぽいのに更に下を見てみると、バスタオルで隠されていたが、明らかな胸の膨らみがあった。今までは服越しだったので無意識に気のせいだと思っていたが、もう気のせいではなかった。

 

南雲ハジメは女だったのだ。

 

一緒に奈落に落ちてからそれなりに経つが全く気付かなかった。思わず凝視する誠司にハジメが苦笑しながら言った。

 

「もう、誠司。ジロジロ見過ぎ」

「……ああ。悪い。えっと……その……… いつから女になってたんだ? もしかして奈落でタブンネを食べた時からか?」

 

ポケモンを食べて性転換するなんてことあるのだろうか……? だが、現に髪が長くなったり、体格が変わったりしていたしあり得るのかもしれない。確かにタブンネは女の子っぽいポケモンではあるが…… 誠司がアレコレそんなことを考えているとハジメが答えた。

 

「う~ん、この際だから言うけどね。途中から女になった訳じゃないよ」

「それは………つまり、元から女だったと?」

「うん。僕は女だよ。ずっと隠しててごめんね」

 

ハジメはそう言うが、誠司は混乱しっぱなしだった。無理もない。だが、色々と思い返してみると確かに不自然なことも色々あったような気がする。

 

例えば、体育の着替えの時とかもいつの間にかもう着替えてるなんてことはしょっちゅうだった。それはトータスに来てからもそうだった。一緒に着替えるなんてことは今まで無かった。中学や高校では水泳の授業とかもないから水着に着替えることもない。それに何回かハジメのステータスプレートを見たことはあったがいつも性別の欄は指で隠されていたような………一

 

一つ思い出すと色々なことを芋づる式に思い出していき、確信へと変わっていく。最終的にはハジメの言葉を信じざるを得なくなっていった。誠司は手を顔に当てて呻いた。

 

「………マジかよ。胸とかも無かったし声も低かったから今まで全然気付かなかった……」

「あははは…… それはある意味僕にとっては幸運だったかもね」

「だけど何でまた……… ハジメの親御さんがそういうことを強制するような人には思えんが」

 

誠司は何度かハジメの両親と会ったことがあるので二人の為人(ひととなり)はある程度分かっている。ハジメの両親が自分の娘を男として育てるような真似はするとは思えなかった。まぁ、漫画やゲームのネタになるって目を輝かせるような気はするが。

 

「ううん。父さんや母さんは関係ないよ。これは僕自身が好きで選んだことだから」

 

そう言ってハジメは自分の過去を語り出した。

 

小さい頃から男の子の格好をするのが好きだったこと、小学生の頃によくそれでクラスメイトから揶揄われたこと、いっそ男として過ごす方が楽であることに気が付いてしまったこと、そして中学・高校に上がってからは男として生活するようになったこと(小学生時代の知り合いがいない中学校や高校を選んで、学校には予め事情を伝えて理解を貰っていた)…………

 

そして、誠司と出会い彼と親友になってからは日に日に罪悪感のようなものが強くなっていった。親友を騙しているような感覚だ。いつかは本当のことを明かしたいが拒絶されるのではないかという恐怖。それはトータスに来てからも変わらなかった。寧ろ酷くなっていった程だ。それから奈落に落ちて空腹に負けてタブンネの肉を食べて変化した時、自分の身体が女そのものになっていた。今なら秘密を打ち明けられるかもしれない。そう思って誠司に打ち明けたのだ。

 

「………以上が、僕の全てだよ。それで、その……僕のこと………どう思う?」

 

ハジメはそう言うと、誠司の顔をジッと見た。不安そうな顔を浮かべているが、誠司の答えは最初から決まっていた。誠司は天井を見上げて少し深呼吸をして口をゆっくりと開いた。

 

「……そりゃハジメが女だったことには驚きはしたがな。だけどそれで拒絶なんかしねえよ。男だろうが、女だろうがハジメはハジメだ」

「………! そっか……そっかぁ……… 良かった……」

 

ハジメはその言葉に心から安堵したのかお湯に口の部分まで浸かった。そのはずみで一瞬バスタオルが捲れ上がりそうになるが、咄嗟に押さえた。それに気付かず誠司は言葉を続けた。

 

「ハジメは俺の大事な親友だよ。今も、これからも……な」

「……親友かぁ………」

 

その言葉にハジメは少し残念そうに言った。誠司は怪訝そうに尋ねる。

 

「どうした?」

「……僕としては()()()()が良いんだけどね……」

「え? それって…… けど……」

「ううん。分かってる。流石にそこまでは受け入れられないのは分かってる」

 

いきなり自分が女だと打ち明けてそれで好きだと愛の告白を受けても困惑するだけだ。今は自分が女だと受け入れてくれただけ十分だった。ハジメはそう思いながら自身の髪をかき上げた。すると、額に少し大きめの傷があるのが見えた。

 

「……! なぁ、その傷……」

「え? ああ、これ? 転んだ時に付いた傷だよ」

「………もしかしてあの時の傷か?」

 

その傷はサザンドラとの戦いの時、誠司がハジメを庇って突き飛ばした際に付けた傷だった。それが分かった時、誠司の顔は少し暗くなった。ハジメが女だと分かってますます罪悪感が湧いたのだ。それに気付いたハジメは誠司の頭にチョップをかます。

 

「いてっ!」

「もう…… さっき誠司が謝って僕やユエ、ポケモン達は許した。それで良いじゃん。さっきも言ったけど誠司の方が重傷なんだからね。もっと自分の方を心配しなよ。それに……顔に傷を付けたからその責任を取って……なんて僕は嫌だし」

「そ、そうか。悪い」

「僕は誠司が好きだよ。もちろん恋愛的な意味でね。だから傷とかそんなこと関係なく、これから僕のことを好きになってほしい」

「だけど、俺……左腕無くなったし、顔も酷い火傷を負ってるぞ。それでも良いのか?」

「何言ってるの。そんなんで嫌いになるわけないでしょ。腕なんかは僕が新しい腕を作ってあげる。とびきり高性能な奴をね。それに、美形は3日で飽きるって言うけどその顔なら一生飽きなさそうだし」

 

ハジメが朗らかに笑った。それに釣られて誠司も笑みを浮かべた。

 

風呂場に笑い声が響いた。

 

ちなみにユエはベッドでグースカ寝ていた。




はい、ハジメ君は実はハジメちゃんでした。女の子でハジメって名前は変かなって思いましたが、調べてみたらそういったキャラは色々いたのでそのまま通しました。

次回で誠司達の今後の方針などを明らかにします。

ハジメが誠司を好きになったキッカケ等は後々書こうと思います。
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