魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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準備、そして新たな旅立ち

ハジメから衝撃の告白をされた(ちなみにユエは最初からハジメが女であることを知っていた)次の朝、朝食を食べ終えて一息ついた頃、誠司はハジメやユエ、ポケモン達に対して真剣な顔つきで口を開いた。

 

「よし。皆、落ち着いたな。それで、今後の方針についてなんだが……」

 

その言葉にハジメもユエも顔を引き締めた。昨日は怒涛の展開の連続で話す機会がなかったが、いつまでもここにダラダラと留まっているわけにはいかない。

 

「まずは俺自身の方針を言っておく。俺は外に出て他の大迷宮を攻略していくつもりだ」

 

誠司の言葉に二人は目を見開いた。大迷宮のきつさはこのオルクス大迷宮で嫌と言う程思い知っていた。それなのにまた別の大迷宮に向かうというのだ。まさに自殺行為である。

 

「昨日、俺はキュウコンの気持ちを知ってな。正直、キュウコンの力になってやりたいと思ってる。それに、俺はポケモンが大好きだ。エヒトとかいう奴が本当にパルキアやアルセウスを利用してポケモン達を迫害してるのなら俺はそれをなんとかしたい。そのためには大迷宮を攻略するのが一番の近道だと考えている」

 

誠司の言葉にハジメもユエも静かに聞いていた。ポケモン達、特にキュウコンは誠司の言葉に心から嬉しく思っていた。

 

「……それでだ。ハジメ、ユエ、ポケモン達(お前ら)はどうしたい?」

「「え?」」

 

誠司にそう言われて全員、一瞬戸惑った。てっきり自分達も同行すると思っていたからだ。それを察したのか誠司が答えた。

 

「これはあくまで俺個人がやろうと思っていることだ。ハジメ達にそれを強制させるつもりはない。ポケモン達も同じだ。本当なら同調圧力とか働かないように一人一人に聞きたいところだが、時間も惜しいからな。今ここで聞く。皆はどうしたい?」

 

ハジメ達は少し黙る。ポケモン達も中には不安そうに顔を見合わせる者もいる。誠司は一つ大事なことを思い出すと追加した。

 

「ああ、そうだ。パルキアを助けることはハジメにとってもメリットがあると思うぞ」

「………え?」

「パルキアは空間を司り、支配するポケモンだ。つまり、そのパルキアを解放して力を借りることが出来れば……」

「元の世界に帰ることが出来るかもしれない……ってこと?」

「そうだ。お前が今でも地球に帰りたいと思っているのなら十分メリットがあると思うぞ」

 

誠司のその言葉にハジメは少し呆れた表情を浮かべた。「ずるいなぁ」と言いたげだ。そして、ユエやポケモン達の顔を見るとやがて決心した顔つきで答えた。

 

「誠司、その旅に僕も付き合うよ」

「ん、私も付き合う」

「……良いのか? 俺が言うのもなんだが、命がいくつあっても足りない危険な旅になると思うぞ」

「まあね。それはもちろん分かってる。僕は早く生きて地球に帰りたい。そのためには誠司の言う通り、パルキアの力を借りるのが現時点で一番の方法だと思う。それに……誠司が戦いたいと思っているのなら僕は力になりたいと思ってる。生成魔法は皆の中では僕が一番使いこなせているし、力になれれば誠司も助かると思う。だから遠慮なく頼って」

「……私も。誠司やハジメには恩がある。それにシャンデラやモクローとこれからも一緒に暮らしていくには今の世の中を変えていく必要がある。だから、私自身、あなた達の力になりたい。私は全魔法に適正があるから大迷宮攻略の力になれると思う」

『グオオォォォォ!!』

 

ハジメとユエの言葉に呼応するようにポケモン達も全員、吠えた。どうやら、辞退する者はいないらしい。全員、自分の選択に迷いの無いやる気に満ちた目をしていた。あの時、トータスに来て参戦を決意した時のように周囲の空気に流されて選んだ者はどこにもいない。

 

「………………」

 

誠司は思わず黙り込んだ。正直、自分とキュウコンだけでもやり遂げるつもりだった。だが皆、自分の意思で付いてきてくれるというのだ。その事実に少し誠司の目が潤んだ。誠司は口を開いた。

 

「分かった。皆がそこまで言った以上、俺も腹を括る。皆の力を貸してくれ!」

「了解!」

「ん、任せて!」

「よし。……だが、すぐ出発する訳じゃない。大迷宮攻略は危険極まりないものだ。これから挑んで行くからには俺達もポケモン達も入念に準備をしておく必要がある。それに昨日の設計図とかからも分かる通り、オスカー・オルクスは非常に優秀な技術者だ。彼から学べるものは数多い。武器やアーティファクトも充実させた方が良いだろう。ハジメはそれも並行してお願いしたい。皆、それで良いか?」

「ん、私は大丈夫」

「僕も大丈夫。あっと驚かせる物を沢山作るよ!」

 

こうして誠司達は目的が定まり、このオスカーの隠れ家を拠点に装備の充実と鍛錬に集中したのだった。

 

 

それからあっという間なもので奈落の底で二ヶ月という長くも短い濃い時間を過ごした。それぞれ入念に準備を行い、大迷宮攻略に備えた。

 

現在、誠司は()()の調整をしていた。誠司の左腕部分には黒く輝く人工の義手が付けられていた。誠司が十五メートル程前にある的に目を向けて義手を構えると、義手に内蔵された魔法陣が反応して変形を開始した。手の部分を引っ込めて代わりに現れたのは少し直径が大きめの口を持った銃だった。銃はバシュンッという音を立てて一つの赤い球体を発射した。その球体は真っ直ぐ飛んで的に命中した。すかさず誠司は義手を変形して手の形に戻すと的に向けて手をかざした。今度は義手の中の別の魔法陣が光って磁石のように球体は義手に向かって吸い寄せられて行った。

 

「……よし」

 

誠司は満足そうに頷くと、ハジメが話しかけて来た。

 

「どう? 僕の作った腕は? リクエスト通りに作ってみたけど」

「ああ。完璧だ。魔法陣を介するから少し動作が遅いのと銃に装填出来る球の数に限りがあるのが難点だけど、期待以上だよ」

「あはは…… まぁ、そればっかりはまだね……」

「気にするな。今のところは問題ないしな」

 

 

この二ヶ月でハジメはこの義手を始め、様々な新装備を生み出した。その新装備についていくつか紹介しよう。

 

例えば、モンスターボールだ。元々はオスカー・オルクスが設計していたものだったが、改善点が多い代物だった。なので、ハジメが何度も改良を重ねたことで誠司が夢で見たものに近いモンスターボールが出来上がった。設計図にあったものの小型化・軽量化に成功し、更にポケモンの意識を保った状態でモンスターボールに入ってもらうことに成功したのだ。義手にもこのモンスターボールが複数個装填されており、銃弾の代わりに発射することで遠くにいるポケモンに当てることが出来る。

 

出来上がったそれを手に取って誠司は思わず感動した。夢にまで見たそれを使うことが出来るのだから。そして、三人は自分のポケモン達にモンスターボールに入ってもらうことにした。誠司はマシェードを始めとした自分のポケモン達に話をした。

 

「皆、これから先の旅ではお前らを怖がる連中が多い。俺達にはあのトランクがあるが、皆をトランクに出し入れするには手間も時間も掛かってしまう。だから、これから一緒に旅するためにこのモンスターボールに入って欲しい。大丈夫、これはお前らを閉じ込める檻じゃない」

 

それを聞いてポケモン達は皆、ほぼ同時に頷いた。誠司、ハジメ、ユエはボールをポケモン達に近づけてボタンを当てると、光に包まれてボールに吸い込まれていった。そして、数回揺れると、ポンッと言う音とともに蒸気を出した。

 

「よし。皆、これからよろしくな!」

「良かった。これで成功だね」

「……ん、変な感じ。でも悪くない」

 

モンスターボール達が揺れ動いた。まるで誠司達の言葉に頷いているようだった。

 

 

他にもハジメは魔力駆動四輪も製造した。移動手段ならポケモン達もいるのだが、大人数で長距離を移動することがあるのならあった方が便利だろうと考えて製造したそうだ。これには流石の誠司も目を点にしていた。剣と魔法の異世界にとても似つかわしくないハマータイプの軍用車両が目の前にあったのだから。

 

何から何までこだわって作った代物らしく、耐久性が抜群、しかも魔力で走行するため燃料は不要、冷暖房も完備しているという。取り付けられている魔石や操縦者の魔力で動くため、そこまで複雑な構造はしていないと言うが、それでもある程度車の構造を理解していないと出来ないことだ。そのことをハジメに言うと、本人曰く「オタクに出来ないことはない」とのことだ。

 

ある意味、1番与えてはいけない人物にこの天職を与えた感じがしてならない。

 

他にも色々な武器やアーティファクトが出来上がった。それらは全て「宝物庫」というアーティファクトに保管されている。これは元々オスカーが保管していたアーティファクトで指輪の形をしている。指輪に魔力を流し込むことで別の空間を創り出し、物を保管しておくことが可能な代物だ。さながらドラ○もんの四次元ポケットみたいなものである。

 

そして、ハジメは自分である程度は戦えるようになりたいとドンナーと新しく作った拳銃(シュラークという名前らしい)の二丁を使って銃技を磨いていった。誠司も銃を一丁作って貰い、ハジメから教えてもらっているが、ハジメのようにはいかない。なので、銃はあくまで護身用に使うことにした。

 

誠司はポケモン達を鍛えることに専念した。ハジメは銃技の上達や装備の開発で忙しかったためポケモン達の世話は誠司に任せてしまうことも多々あったが、忙しくてもハジメなりに愛情をしっかりと与えていたためヒバニーもイーブイも不貞腐れることは無かった。

 

 

そして、ポケモン達に色々な技を仕込み、訓練を重ねていったことでその成果が表れた。ミズゴロウが進化したのだ。

 

ヌマクローに進化して逞しくなった姿を見た時、誠司は感激した。進化にしろ新しい技を覚えるにしろポケモンが成長するのを間近で見るのは本当に楽しい。もっと多くの人にその楽しさを知って貰いたいと思うようになった。

 

ヌマクローは進化したことで新しく“マッドショット”という技も覚えた。地面属性も追加されたことによる影響だろう。他のポケモン達も新しい技をいくつか覚え、その技の精度や威力も上げていった。

 

また、誠司はハジメやユエにポケモンバトルを教えたりもした。簡単に言えばポケモンの技の組み合わせ等だ。ただ闇雲に攻撃をするのではなく、ポケモンの技を組み合わせて戦うやり方を教えたのだ。夢で見たポケモンバトルでもそうやってバトルをする者は多かったのでそれを参考にした。

 

ポケモンバトルの模擬戦でもハジメもユエも最初は不慣れで誠司に勝てない様子だったが、最終的には誠司と少しは接戦出来るくらいには成長した。魔獣使い(言い方が何か気に食わないので以降はポケモントレーナーと名乗ることにする)の誠司としてはまだまだ負けられない。

 

 

そんなこんなで準備を終えて誠司達はいよいよ奈落を出る日を迎えた。新たな出発ということで三人とも服装を一新している。

 

誠司は白いシャツに黒いズボン、シャツには緑色のネクタイを締めている。その上には白衣を羽織っている。緑色のネクタイには少し変わった遺伝子のような模様の七色に輝くアクセサリーが付いている。オスカーの工房にあった特殊な石でそれに惹かれた誠司がハジメに加工をお願いしたのだ。また、顔の火傷が酷いため、顔にはまだ包帯が巻かれている。完治にはまだ時間が掛かるようだ。ハジメからは志々○真実みたいだと言われた。誠司は「この顔の方が人の本性がよく分かる」と言って特に気にしていない。ハジメやユエ、ポケモン達が受け入れてくれていることも大きい。

 

ハジメも黒い上着に白のシャツ、誠司のアクセサリーと同じ石をペンダント状に加工したものを首にかけている。下は黒のズボンを履いている。スカートにしないのかと尋ねた所、ハジメ曰く「スカートは恥ずかしいし落ち着かない」とのことだ。少しもったいない気もするが仕方ない。また、長い髪をしっかりと結び、ユエから化粧を教えて貰ったおかげなのか、なかなかの美人になっている。

 

そして、ユエは見た目とは裏腹に大人っぽい服装をしている。ある意味年相応というべきか。フリルがあしらわれた純白のドレスシャツに、フリルがあしらわれた黒のミニスカート、その上には白のロングコートを羽織っている。頭のリボンには誠司やハジメが付けているのと同じ石のアクセサリーが付いている。

 

これらの服装はユエがデザイン、製作してくれたものだ。王女であるユエにこんな才能があるのは意外だった。オスカーの部屋には沢山の服があったためそれらを作り直したのだ。何故か男一人で暮らしていたはずなのに大量のメイド服も見つかったが。オスカーはそれを着る趣味でもあったのだろうか……

 

ちなみに、攻略の証であるベテランシンボルはそれぞれ白衣や上着の裏側に着けている。シンボルの裏にはよく見ると小さい針のようなものがあり、それで服に留めることが出来たので身に付けることにしたのだ。

 

 

出発前、誠司達はある場所に来ていた。キュウコンを除くポケモン達はモンスターボールにしまい、ボールは腰のベルトに付けている。磁石のようにくっついているためすぐに外れてしまうことはない。誠司の片手にはオスカーのトランクも持っている。ポケモンの住処には最適だし、モンスターボールの材料もあるので貰うことにしたのだ。オスカーの相棒キュウコンも誠司がトランクを持って行くことに文句は無いようだった。

 

その場所には形の整った石がポツンと置いてあった。そして、その石にはこう記されている。

 

『解放者オスカー・オルクス、ここに眠る』と。この石はオスカーの墓標である。石の下にはオスカーの骸が眠っている。

 

誠司は合掌した。それにハジメやユエも倣って手を合わせる。三人ともオスカーには感謝の念があった。キュウコンは墓に向かって深く頭を下げる。

 

「………よし。行くぞ」

「……うん」

「……ん」

 

三人は建物内の地上への移動用魔法陣へ向かった。キュウコンは一度振り返り、もう一度頭を下げると、三人を追いかけて行った。

 

 

三人は魔法陣の前に立っていた。既にキュウコンはモンスターボールに戻してある。誠司は改めてハジメとユエに告げた。

 

「ハジメ、ユエ。改めて言うが、ここからの俺達の旅は命がいくつあっても足りないヤバイ旅になる。覚悟は良いな?」

「ん、今更……」

「うん。覚悟は出来てるよ。教会や国、あの狂ったエヒトとかいう神もどきと敵対するかもしれないんでしょ? そう言う誠司の方こそ大丈夫? オスカー達のように敗れるかもしれないよ。それでもやる?」

 

ハジメが挑発的に言った。誠司を心配しての言葉ではない。わざと誠司を試す言葉だ。それが分かっているため誠司もフンと鼻を鳴らした。

 

「俺達は負けねえよ……… ポケモン達(こいつら)がいる限りな!!」

「そうか…… それなら行こう」

「んっ。どんな奴が相手でも私達なら負けない」

 

三人は頷くと、ほぼ同時に魔法陣に足を踏み入れた。すると、魔法陣は光り輝いて三人を包み込んだ。




誠司の義手はアニポケのシトロイドみたいな感じです。腕が銃に変形してモンスターボールを発射するのはカッコいいなぁと思い、取り入れました。

誠司とハジメのイメージを作成しました。

中西誠司のイメージはこんな感じです。

【挿絵表示】


やわらかめのネコヤギ
https://picrew.me/image_maker/197705


ちなみにこの作品の南雲ハジメのイメージはこんな感じです。

【挿絵表示】


テイク式女キャラメイカー
https://picrew.me/image_maker/407340

最初は誠司同様、やわらかめのネコヤギで作成していたんですが、微妙にイメージと違ったので別のキャラメイカーで作成しました。


次回から不定期更新になります。ご了承ください。(既に数話前から不定期になってしまっていましたが……)
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