魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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ウサ耳少女、シア

誠司達はウサ耳少女を助けるために成り行きでチゴラスと戦うことになった。誠司はチゴラスの属性を確認すると、ヌマクローに指示を出した。

 

「チゴラスは岩・ドラゴン属性か。それなら…… “マッドショット”だ!」

「……マ、マクロゥ……」

 

ここで誠司は異変に気が付いた。ヌマクローが“マッドショット”を発動させようとするが、なかなか発動しないのだ。いつもは瞬時に発動させられるのに。

 

周囲を見てみると、ハジメのヒバニーもユエのモクローも技を発動させるのに手こずっているようだった。ハジメが誠司に呼びかけた。

 

「誠司! ライセン大峡谷は魔法が使えないんだ! 多分ポケモンの技も使えないみたい!」

 

ハジメのその言葉で大事なことを思い出した。ここ、ライセン大峡谷は魔力が分散されてしまい、魔法を使うことが困難な場所なことに。恐らく、ポケモンの技も同じことなのだろう。

 

チゴラスは技を出すのに手こずっているポケモン達に向かって大きなキバを剥き出しにして襲い掛かって来た。“かみくだく”だ。咄嗟にポケモン達は躱したが、チゴラスは近くの岩をいとも容易く噛み砕いてしまった。

 

(チゴラスは技が使えるのか…… 厄介だな。……いや、待てよ。もしかすると……)

 

その時、誠司の頭にある仮定が浮かんだ。試しにヌマクローに別の指示を出した。

 

「ヌマクロー、“いわくだき”だ!」

「ッ! マクロ!」

 

今度はヌマクローはすぐに技を発動させることが出来た。チゴラスは抜群技を受けたことで一瞬怯んだ。誠司はすかさずハジメやユエに怒鳴った。

 

「ハジメ、ユエ! 物理技だ! 物理技を指示するんだ!」

「っ分かった! ヒバニー、“にどげり”!」

「……モクロー、“つつく”!」

 

ヒバニーとモクローも今度はすぐに技を出すことが出来た。三体の攻撃を受けてチゴラスは倒れてしまった。それを見た誠司はすぐにモンスターボールを投げる。ボールはチゴラスに当たると、光を出してチゴラスをボールの中に取り込んだ。そして、少し揺れ動いて蒸気を出した。チゴラスの捕獲、成功である。

 

なんとか状況が落ち着いた。ハジメが誠司に尋ねた。

 

「でもどうしてヒバニー達は急に技が出せたんだろう?」

「多分技の種類だろうな」

「……技の種類……?」

「ああ。ポケモンの使える技には物理技・特殊技・変化技の3種類に分かれているんだ。“マッドショット”みたいな特殊技や“キノコのほうし”みたいな変化技は多分魔法と同じ扱いって感じなんだろうな」

「なるほどね。じゃあここでは物理技しか使えないってこと?」

「……魔法とかが全く使えない訳じゃない。でも魔力が分解されるから一割くらいの威力になる」

 

魔法が使えないと自分がお荷物になると思ったのかユエが少しムキになって反論する。

 

「まぁ、それだと殆ど使えないも同義だがな……」

 

誠司が苦笑しながらそう言った。その時、ヒバニーの体に異変が起こった。光に包まれたのだ。

 

「ッ!? ヒバ!?」

「え、ヒバニーどうしたの!?」

「落ち着け、ハジメ。これは……進化だ」

 

光が収まり、そこに居たのは落ち着いた表情のウサギポケモンだ。誠司は魔獣図鑑の技能で目の前のポケモンを確認した。

 

「ラビフットだ。良かったな、ハジメ」

「ん、おめでとう……」

「ラビ……フット……」

 

ハジメが呆然とした様子で呟くと、ラビフットは落ち着いた様子で手を軽く上げた。その様子に思わず苦笑してしまう。

 

「そうかぁ…… 進化したかぁ…… おめでとう、ラビフット……」

「……ラビ」

 

進化したことでクールな性格に変わったようだ。しかし、長い耳は赤くなっており、進化したことに物凄く喜んでいることは明らかだった。そこがまた可愛く感じる。周囲がお祝いムードに包まれる中、それを破る声が響いた。

 

「あのぅ…… すいません! 私達のこと忘れていませんかね!?」

「ホビホッビ!」

 

………完全に忘れていた。

 

 

誠司達はケンタロスとシャンデラ以外のポケモン達をボールにしまうとウサ耳少女とホルビーの方に向き直った。突然、ポケモン達の姿が消えて目を白黒させていたが、ウサ耳少女はお礼を言った。

 

「ええと…… 改めまして危ないところを助けて頂いてありがとうございました。私はシア。シア・ハウリアと言います。それでこの子はパートナーのホルビーです」

「ホッビ!」

「そうか…… まぁ助かって良かったな。それじゃ」

「それじゃ元気でね」

「んっ。お達者で」

 

誠司達はそう言って爽やかに立ち去ろうとしたが、シアに食い止められてしまった。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! お願いです! 取り敢えず、私の家族も助けて下さい!!」

「ホビホビ!」

 

シアとホルビーは誠司の足にしがみ付いて離れようとしない。おまけに図々しいお願いまでしてくる始末。

 

何が取り敢えずだ。誠司がそうツッコんで離そうとするが、全然離れない。ハジメとユエもシアとホルビーを引き剥がそうとするが、一体どこからそんな力があるのか全然離れない。

 

「にがじまぜんよおぉぉぉ!! 家族を助けてくれるまで絶対はなじまぜん!!」

 

シアの余りにも必死の形相に流石の誠司達も折れた。仕方なく、本当に仕方なく話を聞いてみることにした。

 

 

シアの話を纏めると、なかなか波瀾万丈な生い立ちのようだ。

 

シア達、兎人族は元々ハルツィナ樹海で百数十人規模の集落を作ってひっそりと生活暮らしていた。兎らしく、聴覚や気配察知に優れているので隠密行動が得意らしいのだが、それ以外の身体的スペックが他の亜人族より劣っているため格下と見られがちなのだそう。おまけに温厚で争いを嫌う種族なことも拍車を掛けていた。それもあってか、横との繋がりが強く、家族の情は亜人族の中では一、二を争うほどに深い。

 

また、容姿端麗なため、ヘルシャー帝国などでは愛玩奴隷にされることも珍しくないらしい。ハイリヒ王国の王都では、亜人族そのものを蔑視していたため奴隷は見なかったが。

 

たしかにこのシアという少女を見ていれば容姿端麗というのも納得出来る。さっきまで顔を汚していたが、よくよく見れば顔は整っているしスタイルも良い。

 

話を戻すが、シア達ハウリア族も他の兎人族と同様、樹海深部にある国、「フェアベルゲン」で生活していた。しかし、シアが亜人族には本来持たないはずの魔力を持って産まれたことで大きく変わってしまった。魔力を持ち、「未来視」と言う固有魔法も使えるシアは本来は忌み子として処刑されるはずだった。だが、ハウリア族の者達はそれが出来ず、シアを隠して育てた。兎人族には「一族みな家族」という考えがあったからだ。

 

匿われながらも周りから愛情を受けて育ったシアはある日、ホルビーと出会った。その時、シアにはもう一つ特殊な能力があることが分かった。彼女はポケモンを手懐けることが出来るのだ。

 

亜人族では人間族同様、ポケモン達は魔獣として恐れられていた。だが、シアと触れ合ったポケモン達は決して他者を攻撃しようとしなかった。そうやってハウリア族はいつの間にか、シアだけでなく色々なポケモンを匿うことになった。

 

当然、匿う相手が増えていけば、バレるのは時間の問題だった。とうとうシアやポケモン達の存在はバレてしまい、ハウリア族はフェアベルゲンから追放されてしまった(シアの未来視を使っても隠し通すのはもう限界だったらしい)。

 

そして、悪いことは続くもので樹海から出ると帝国の兵士達に見つかってしまった。若い男達は仲間、特に女子供を逃がそうと戦ったが、温厚な種族の一般人と兵士では戦闘経験の差は歴然。あっという間に捕らえられてしまった。

 

帝国兵から逃げるためにここライセン大峡谷に逃げ込んだが、襲い掛かるポケモン達によって他の者達と逸れてしまった。ここの峡谷のポケモン達は特別気性が荒いのか中々手懐けることが出来ない。そうこうしているうちにチゴラスの尻尾を誤って踏んでしまい、怒り狂ったチゴラスから逃げ回っていたらしい。

 

 

シアの話を聞いて誠司はハジメやユエと顔を見合わせた。確かに辛い思いをしたのだろうし、同情がない訳ではない。だが、可哀想だからというだけで見知らぬ他人を助けるかと言われるとそうではない。誠司達の雰囲気を察したのかシアは必死に頼み込んだ。ホルビーも同様だ。

 

「お願いします! 私の家族を助けてください!」

「ホビ!」

 

誠司がどうしたもんかと頭を悩ませていると、ハジメが言った。

 

「ねぇ、誠司。助けてあげても良いんじゃないかな?」

「ん、問題ないと思う」

「えっ!? い、良いんですか!?」

 

シアが驚く。これには誠司も驚いた。ハジメが続けた。

 

「でも条件があるよ。僕達にもやることがあるからね。何の対価も無しに助ける訳じゃない。元々はハルツィナ樹海にいたのならそこの道案内をしてもらう」

「……その代わりに命は助ける。あなたの家族も」

 

ハジメとユエの言葉で誠司もようやく二人の真意が分かった。ハルツィナ樹海は大迷宮があるとされている場所だ。だが、あそこは濃い霧で亜人族でないと迷うと言われている。ハウリア族にその道案内をさせるつもりなのだ。

 

「……そういうことか。お前もそれで良いか?」

 

誠司がシアに尋ねる。シアの先程までショボンと垂れていたウサ耳は今では嬉しさのあまりかピン!としっかり立っている。隣のホルビーも同様だ。実に感情表現が分かりやすい。

 

「も、文句なんてありません! ありがとうございます! うぅ〜、よがっだぁ〜、本当によがっだぁ〜…… あ、それでお三人のことは何て呼べば……」

「俺は中西誠司。誠司で構わん」

「僕は南雲ハジメ。ハジメで良いよ」

「………ユエ」

「えっと…… 誠司さん、ハジメさん、ユエちゃんですね」

「ホビホッビ!」

「………さんを付けろ。残念ウサギ」

「ふぇ!?」

 

シアが余計なことを言ったせいで一瞬剣呑な空気になりかける。ユエが吸血鬼族で自分より遥かに年上であることを知って、シアが流れるように土下座したことで何とか場は収まったが。だが、ユエはジト目をシアのある部分に向けていた。

 

こうして誠司達の旅に更に一人と一体、同行者が加わることとなった。ケンタロスに乗り込もうとしている時、ハジメが誠司に言った。

 

「樹海の道案内役も必要だけど……何より、ポケモンを大切にする人を見捨てたくないしね」

「ハジメ…… ああ、そうだな」

 

誠司はニヤリと笑った。




以下は入れようかなと思ってたけど諦めたシーンです。

ユエ「……私の方がずっと年上。だから呼び方も包容力のある大人の女性に相応しい呼び方をすると良い」
シア「えーと…… そうですね…… じゃあ、ユエママ」
ユエ「マッ……」
誠司・ハジメ「ぶはっ……」
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