魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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少し短くなりました。でも、割と内容は深く出来たかな?って思います。


覚悟(シアの場合)

訓練を始めて九日目、離れた場所でシアも訓練をしていた。相手はハジメとユエの二人だ。二人とも魔力操作が使えるのでシアに教えることにしたのだ。そして、ホルビーもハジメとユエのポケモン達と戦っている。ハジメはダンバルを、ユエはモクローを使っている。

 

誠司のやり方と違って、ポケモンバトルというよりもルール無用の乱戦に近い。ポケモン達に指示を出しながら、自分自身も戦わないといけないのだから。

 

ドパンッ、ドパンッ、ドパンッ!

ハジメがドンナーをシアに向けて三発、発砲する。通常弾ではなく非致死性のゴム弾なので死にはしないが、当たれば痛い。ユエは炎、氷、雷など多彩な魔法を駆使してシアに放つ。

 

シアは必死に走り回って回避しようとするが、全て避け切れない。少しずつ傷が出来、呻き声を上げる。しかし、シアの目は光を失っていない。かなりハードな訓練なのに根を上げない。大したものだとハジメもユエも内心では感心していた。

 

「……どうしてそこまでして戦うの?」

 

ユエが思わず尋ねた。シアは傷だらけになりながらも胸を張って答えた。

 

「決まっています。私もあなた達と一緒に行きたいからですぅ!」

「ホビホッビ!」

 

シアの言葉にホルビーも声を上げる。ハジメは冷めた目を向けている。

 

「それで、()()()()()()は決まったの? 前は答えられなかったけど」

 

ハジメが皮肉混じりに尋ねた。

 

ーーーーーーーーーー

訓練を始めたばかりの頃、シアはハジメとユエに自分達も旅に同行させて欲しいと頼んでいた。シアはハジメとユエという生まれて初めて出会った『同類』に理屈を超えた仲間意識を感じていたからだ。おまけに二人とも同性だったのも大きかった。なので、二人の傍にいたい、彼女達のことをもっと知りたいと思ったのだ。

 

だが、その二人からすればシアの要望は「ふざけるな」としか言いようが無かった。その怒りようにシアはもちろん、彼女のポケモン達も少し怯えるほどだった。

 

まず、ユエにはシアと違って自分を愛してくれる家族など居なかった。それこそ、自分の命を賭けてでも愛してくれる家族は。しかも、ユエは三百年以上生きてきたが、今までそんな同類には出会うことは無かった。だが、シアはたった十六年程度で出会った。そんな恵まれた者に対してユエは嫉妬というか複雑な感情を持っていた。

 

一方でハジメは二人と違って生まれつきこうなった訳ではない。奈落の底で飢えに耐え切れずタブンネの肉を食べたことでこうなったのだから。だが、タブンネの肉を食べたのは生きるため……もっと言えば、生きてまた家族に会うためだった。

 

境遇は違えど、二人が共通して感じたのは、「あんなに良い家族がいるのに彼らを裏切るようなマネするんじゃねえよ、クソウサギ!!」だった。

 

そして、シアが家族に迷惑を掛けたくないために、最初から家族の元を離れるつもりだったことも二人は見抜いていた。シアがやろうとしていることは家族の意に反する、ある意味裏切りとも言える行為だ。その裏切り行為に自分達を巻き込もうとしていることに二人は激しい怒りを感じていた。

 

だから、ハジメは問いかけた。シア・ハウリアとして一体何をしたいのか。ただ自分達とお友達になりたいのならわざわざ旅に付いて来る必要などないし、そんな消極的な理由で何の覚悟も無しに自分達の旅に寄生されても迷惑だとも。

 

その時のシアは何も答えることが出来なかった。

ーーーーーーーーーー

 

シアは少しの間、目を閉じる。何か自分自身と会話しているようだ。そして、ゆっくりと目を開く。

 

「……はい。私は家族やポケモン達とこれからもずっと笑っていける未来を見たい。ハジメさんやユエさんとももっともっと、仲良くなりたい。そして、ポケモンのことを色々と知りたい……それから、えーーと……」

「……それで、君の覚悟は決まったの?」

「はい! 何度もホルビーとも話し合って決めました。命がいくつあっても足りない旅なことは分かっています!」

「それだけじゃないよ」

「……え?」

「僕達の言っている覚悟っていうのは命を賭ける覚悟だけじゃないよ。言ってみれば……『嫌われる覚悟』かな?」

「嫌われる……覚悟……?」

「そう。知っての通り、ポケモン達はこの世界では魔獣として恐れられ、嫌われてる。そんな世界を相手に僕達は旅しているんだ。ポケモン達と一緒にね。だから当然、色々な人から嫌われるかもしれないし、恐れられるかもしれないし、憎まれるかもしれない。しかも君は亜人族だから余計にね。それでも僕達と一緒に行きたいの?」

 

ハジメがジッとシアの目を見ながら尋ねた。ユエも何も言わないが同じ気持ちだった。

 

 

シアは自分の腕が少し震えていることが分かった。今までも自分の家族以外からは自分は色々な目で見られた。同じ亜人族からは恐れや憎しみが込められたものも多くあった。それがもう一度、自分に向けられる。嫌だ、怖い……そう思わずにはいられなかった。

 

その時、クイクイと服を引っ張られるような感覚が走った。思わず下を見るとそこにはホルビーがいた。ホルビーはシアを見ている。心配そうな顔だ。それを見てシアは思い出した。

 

いつもそうだった。小さい頃から一緒に育ってきたホルビーはシアにとって自慢のパートナーだった。悲しいことがあっても明るくいることが出来たのも彼女のお陰だった。今も昔も、そして未来(これから)もホルビーと一緒なら大丈夫。未来視を使わなくてもそれは分かる。だから、シアは意を決して答えた。

 

「行きたいです。今、あなた達の旅に付いて行かなかったら一生後悔する。それだけは分かります! それに……迫害があっても乗り越えて見せます、ホルビーと一緒に!」

シアの言葉に、ようやくハジメは笑みを見せた。この訓練が始まってから初めてシアに向けた表情だった。ユエも少しだけ口元が緩んでいる。

 

「それなら、それを僕達に証明して。今日と明日で」

「ん。でも、私達も手加減はしない。根性を見せて」

「はいっ! 望むところですぅ!」

「ホビホッビ!」

 

シアとホルビーの最後の訓練が始まった。

 

「ダンバル、連続で“とっしん”!」

「ダンバ!」

「ホルビー、躱してください!」

「ホビッ!」

「……モクロー、“このは”」

「モフモッフゥ!」

「ホビビー!」

「ああっ、ホルビー!」

 

ドパンッ!

 

「はきゅんっ!」

「よそ見している暇は無いよ」

「んっ! あなたの相手は私達」

「そうでした! 絶対にあなた達に勝ってやるですぅ!」

 

内容は今までの訓練よりも遥かに過酷とも言えるものだったが、全員どこか楽しげな表情を浮かべていた。不思議なことに、シアやホルビーはまだ終わりたくないとすら思えてしまう程だった。そして、それはハジメ達も同じだった。

 

 

こうして、十日間の濃い訓練が終了した。結果は言うまでもない。

 

また、十日間、遠くでシアの訓練をジッと眺めているポケモンがいたのだが、当の本人達は気付かなかった。




15:00に投稿予定にするつもりが間違えて投稿しちゃった……マーイーカ
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