ありふれのアニメ3期の制作が決定して楽しみです。でも放送されるのはまた3年後くらいなのかな……?
「誠司殿」
そう言って誠司の元にやって来たのはパルという兎人族の少年だ。花を大切にするなど、まだまだ年相応の幼さはあるが、ポケモントレーナーとしての素質が高いと訓練中、誠司が特に目を掛けていた者の一人だ。相棒はエレキッドでハウリアの中で唯一の電気属性使いでもある。以前は「誠司お兄ちゃん」と呼んでいたが、今では他の皆と同様、「誠司殿」と呼ぶようになった。
「どうした、パル?」
「先程、大樹付近へのルートに熊人族と土人族の集団がたむろしているのを発見しました。全員武装しており、我々への待ち伏せかと」
その報告を聞いて誠司達は顔を顰めた。パルの言う通り、間違いなく報復のための待ち伏せだろう。しかも、大樹付近で待ち伏せすることで目標を目の前にして叩き潰そうという考えのようだ。アルフレリックの懸念が当たった形になった。ハジメもパルに尋ねた。
「それで、何人くらいだったの?」
「ざっと十五人程度です」
「十五人? 随分少ないね。もう少しいるかと思ったけど」
「多分、熊人族や土人族の中でもかなりの過激派なんだろう。そういった奴らには何を言っても無駄だろうしなぁ……」
「誠司殿、ここは我々に任せて頂けませんか?」
カムが誠司に頼んだ。
「良いのか?」
「はい。我々としても生まれ変わったことを奴らに見せ付ける良き機会です。それに、我々がやった方が今後、亜人族の報復もかなり少なくなるでしょう」
「なるほどな。それじゃ任せるよ。だが、一つ条件がある。殺さずに全員生け捕りにすることだ。アルフレリックさんとそのように約束しているし、それに何より……連中にとっては、格下だと思っていた奴らに捕虜にされる方が遥かに屈辱だろうしな」
「承知しました。よし! 行くぞ、お前達!」
『おおー!!』
カムの合図と共にハウリアは一人、また一人と姿を消していく。誠司達もパルの報告にあった場所へ向かうことにした。
「レギン殿、戦闘準備整いました」
「ああ、ご苦労」
その頃、パルの報告通り、熊人族や土人族の集団が大樹付近で待機していた。
レギン・バントンは熊人族最大の一族バントン族の次期族長とされている実力者だ。また、現バントン族族長兼長老、ジン・バントンの右腕的存在でもあり、彼に対して心酔のような感情を抱いていた。
だからこそ、ジンが一人の人間によって怪我を負わされたという話を最初は信じることが出来なかった。レギンや彼と同様にジンを強く慕う者達は何があったのかを長老達に詰め寄り、事情を聞いた。そして、全てを聞いたレギンは長老衆の忠告(特にアルフレリックが強く止めていた)を無視して、熊人族や土人族に事実を伝えて報復へと乗り出すことにした。
しかし、長老衆や他の一族、そして同じ一族でも客観的に物事を見ることの出来る者達の説得で全ての熊人族を駆り立てることは出来なかったが、熊人族と土人族で合わせて十五人程集めることが出来た。この集まった者達はジンやグゼを特に慕っていた若者達だ。レギンの提案にすぐ賛同してくれた。
少々人数は少ないが、卑怯な手を使った人間や弱い兎人族程度であれば何の問題もないだろう。
「どうせ奴らは卑怯な手を使ったに決まっている。だからこうして万全に構えていれば、我々が負ける理由はない!」
レギンの言葉に周囲から笑いが起こる。完全に自身の強さを過信した油断からの笑いだった。だからこそ、彼らは樹の影に潜むウサ耳達に気付かなかった。パルが小さい声で相棒のエレキッドに指示を出す。
「エレキッド、“でんじは”!」
「ビビッ!」
樹の影から放つエレキッドの攻撃によってまずレギンが身体の自由を封じられた。
「な、何っ!? ぐあっ!」
レギンは身体の痺れで立つことも出来ず、膝を突く。彼の仲間の間に動揺が走った。
「レギン殿!」
「くそっ! どこから攻撃が……」
熊人族や土人族が武器を構えようとするが、その隙を逃がさずにハウリアが次の攻撃に入った。
コフーライとアゴジムシとレドームシ、ビードルが四方から糸を吐いて数人の熊人族や土人族を拘束していく。
「何だ!? 糸!?」
「構わん、引きちぎれ!」
力の強い熊人族達が力づくで引きちぎろうとするが中々千切れない。アゴジムシの粘着質な糸を下に様々な糸が巻き付けてあるので、本来の力が発揮出来ないのだ。
次にポッポとホーホーのコンビが攻撃をする。先程、誠司のポケモン達に見せた手を使った。“すなかけ”で舞い上がる砂によって目を眩ませ、“エアスラッシュ”で急所を突いていくことで大ダメージを与える。致命傷というわけではないが、強力だ。怯んだところをなす術もなく拘束されてしまった。
そして、別の所ではナゾノクサやバタフリー達が“しびれごな”で熊人族達を痺れさせていく。痺れで動けない熊人族達はあっという間に拘束されてしまう。
そして、残ったのはレギン一人になってしまった。ハウリアとポケモン達の連携に何も出来ないまま拘束されていく部下達を目の当たりにして、レギンは現実を拒否するように首を横に振った。
「そんな馬鹿なっ! くそっ! 兎人族は戦いを忌避するものではないのかっ!」
「我々は家族のために変わらなければならない。それに気付いたまでだ」
「なっ! カム・ハウリア……!」
痺れる身体で何とか声のする方に振り向くと、そこにはカムが立っていた。傍らにはケムッソから進化したドクケイルがバサバサと翅をはためかせている。レギンは憎悪の表情を浮かべて、これでもかとカムを睨み付ける。
「貴様ぁ……卑怯な手を……!」
「戦場に卑怯という言葉はない。それに……先に卑怯な手を使ったのは貴様らではないのか? ドクケイル、頼む」
「ドッケ!」
ドクケイルは翅から毒の粉を撒き散らしてレギンに振りかけた。ドクケイルの鱗粉をまともに浴びれば大の男でも体調を崩す。レギンの顔色は悪くなっていく。すぐにドクケイルは糸を吐いてレギンも拘束した。
こうして熊人族と土人族の集団はハウリアとポケモン達によって簡単に無力化させられた。
「さてと……念のため聞くが、お前らは一体何でここにいたんだ?」
しばらくして、カム達の元に辿り着いた誠司が糸で縛られたレギン達に尋問した。ドクケイルの鱗粉の影響で顔色が悪いままだが、レギンは誠司をこれでもかと睨み付けている。
「ふんっ! 貴様が族長やグゼ殿に怪我を負わせたからだろうが! しかも、卑怯な手を使ってな! だから報復に来たまでだ!」
レギンの逆恨みとしか言いようのない言葉にハジメ達やハウリア達は殺気立つが、誠司が片手で制す。こんな奴と議論するのは時間の無駄だ。
「ほう……それで? そっちの土人族の奴らは? 熊人族より随分数が少ないみたいだが」
捕らえた集団は熊人族十人なのに対して土人族は僅か五人しかいない。土人族の一人が忌々しそうに答えた。
「貴様がジン殿を怪我させたことでグゼ殿まで大怪我を負ったのだ。貴様のせいでグゼ殿はあんな怪我を……」
「ああ。確かにあんたの所の長老はそこの熊公共の長老が起こした暴走の巻き添えで怪我を負った。だから、俺はお詫びとして回復薬を渡したんだ。なのに、この仕打ちか? 随分恩知らずの種族のようだな、土人族ってのは」
「ぐっ……」
土人族の一人が呻いた。自分を止めようとした同じ一族の者達の言葉とまさに同じだったからだ。
ちなみに、土人族の多くは誠司達にそこまで悪感情は持っていない。長老衆からグゼの怪我はジンの巻き添えだったことは聞かされていたし、グゼの治療のために神水を渡して治療してくれたのもあったからだ。だからこそ、レギンの言葉に賛同して報復に向かおうとする若者達を止めようとしたのだが、結局止めることは出来なかった。
「ああ、それとな。折角だから良いことを教えてやるよ。本当ならお前らをそのまま殺しても良かったんだがな。アルフレリックさんから頼まれたんだよ。お前らみたいな暴走する輩が出て来ても殺さないでくれって」
「なっ……!」
レギンが驚いたような声を上げる。他の者達も同様だ。誠司は嘲るように笑った。
「良かったじゃないか。お前らは長老のお陰で命が助かるんだ。お前らが軽視した長老様のおかげでな」
「なっ! 違うっ! 我々は長老を軽視してなど……」
「してなかったら、こんな真似してないだろ。長老衆の言葉を無視したのは他でもないお前らなんだから。なぁ、殺そうと思ってた相手に情けを掛けられる気分ってのはどんな気分なんだ? 教えてくれよ」
「ぐぬううっ! くそっ、くそぉぉぉっ!」
誠司の嘲りの言葉にレギンは怒りと屈辱から声を荒げるが、もうどうにもならない。他の者達も反応は様々で、項垂れる者やレギンと同様に誠司を睨み付ける者もいる。
その後、誠司はハウリア数人に彼らをフェアベルゲンまで連行するように頼んだ。そして、長老衆に伝言も頼んだ。「貸し一つ」と。
その時のレギン達の顔は見ものだった。自分達がフェアベルゲンの弱みになってしまったことにようやく気付いたようだ。それからの彼らはトボトボと大人しくハウリアに連行されて行った。
フェアベルゲンに帰った後の彼らは一生日陰者扱いになる可能性も高いだろう。だが、理不尽な逆恨みで命を狙ったのだから自業自得だ。殺されなかっただけ有難いと思って欲しいものである。
邪魔者がいなくなった誠司達はハウリアの案内のもと、今度こそ大樹の元へ向かった。
原作と違って熊人族達の数が少なかったですが、誠司達がジンに対して過剰に反撃をしなかったのが理由です。報復に来たのは「ジンの攻撃を防御しなければジンやグゼが怪我をせずに済んだ」と考えている連中で、完全な逆恨みです。
次回で大樹に到着、そして新たなポケモンが仲間になると思います。