魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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ありふれの13巻が既に書店で売っていたので購入して読みました。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、WEB版ではあっさり書かれていた部分が加筆されていて読み応えバッチリでした。WEB版とはまた少し違ったラストも非常に良かったです!

あと、最後の登場人物紹介で本編では書かれなかったクラスメイトの名前や天職が明らかになったので極力取り入れていきたいですね。


ライセン大迷宮への入口

昼頃、ブルックの町を出たハジメ達はライセン大峡谷付近で誠司と合流した。誠司の傍らには何か銀色の鍵ホルダーのようなポケモンがフヨフヨと浮かんでいる。随分と懐いているようだ。それを見てシアが尋ねた。

 

「あれ? 誠司さん、どうしたんですか、そのポケモン?」

「ん? ああ、こいつはクレッフィってポケモンだ。買い物途中に行き倒れていたのを見付けてな。錆だらけになっていたんだが、錆を全部落としてやってたら凄い懐かれたんだ」

「クレッフィーッ!」

「へぇ…… 買い物ってもしかしてお菓子作り用の道具とかですか?」

 

シアがそう言うと誠司は意外そうに目を見開いた。

 

「よく知ってるな。誰から……って、ハジメから聞いたのか」

 

誠司がハジメに視線を向けると、ハジメは少し気まずそうに頷いた。

 

「うん、言ったのは僕だけど……もしかして、言ったらまずかった?」

「いや、別に言われたところで困る趣味でもないしな」

「良かったぁ。それで、道具や材料は買えたの?」

「ああ、使えそうなのがいくつかあったよ。これなら何か簡単なお菓子くらいは作れるよ。……まぁ、錆取り剤やらで思わぬ出費があったけど」

「それは良かったじゃん。折角だし今度、何か作ってよ。久しぶりに誠司の作ったお菓子食べてみたいし」

「……ん。私も誠司の作るお菓子食べてみたい」

「私もですぅ! 是非作って欲しいです!」

「クレフィィ!」

「お前ら……」

 

三人と一体にお願いされ、誠司は了承した。元々何か作りたいとは思っていたので、楽しみにしてくれるのなら作り甲斐があるってものだ。

 

そして、話題はハジメ達の方に移った。ハジメ達は町で食料や薬やらを買い、途中で集団告白に巻き込まれて、断ったら逆上した男達が襲い掛かろうとしたが、突然倒れた話をした。誠司は集団告白の件ではドン引きした表情を浮かべ、最後に男達が倒れた件を聞いた所で何か考え込む仕草を取った。それに気付いたハジメが尋ねた。

 

「ねぇ、誠司。どうして男達が突然倒れたのか分かる?」

「うーん…… 俺は現場を見てないからな。詳しくは分からんが、恐らく…… なぁ、ユエ。ちょっとシャンデラを出してくれないか?」

「ん? シャンデラ? 良いけど……」

 

突然シャンデラの名前が出て怪訝そうな顔をするが、ユエは素直にボールからシャンデラを出した。だが、出て来たシャンデラはいつもと少し様子が違っていた。

 

シャンデラの炎がいつもよりも大きくなっていたのだ。シャンデラもどこか満足そうな様子だ。ハジメ達三人は思わず絶句する。シャンデラを見て誠司の疑念は確信に変わった。

 

「……やっぱりな。多分、その男達の魂を大量に吸い取ったんだろ。それこそ倒れるくらいにな」

 

ボールの中でもポケモンは意識を保っていられるので、恐らくボール越しから魂を吸い取って燃やしていたんだろう。誠司がそう言うと、ユエが呆れた表情を浮かべてシャンデラを叱ろうとした。だが、ハジメが止めた。

 

「まぁまぁ。助かったんだから良いじゃない。シャンデラも無闇に人の魂を吸い取る訳じゃないんだし」

「そうですよ。助けてくれたんですから」

「……む。分かった。シャンデラ、ありがとう。でも、無闇に人の魂を吸っちゃ駄目。吸い取って欲しい時は私が合図する」

「シャシャーン!」

「……合図をすれば良いのか……」

 

誠司が呆れたように呟いた。そして、お互い一通り話したいことを話し、謎も解けたのでライセン大迷宮を本格的に探すことにした。誠司やシアもケンタロスやゴーゴートを出して各々乗り込み、ライセン大峡谷を駆けて行く。

 

 

ライセン大峡谷の中を駆け回ってかれこれ三日が経過した。洞窟等があれば調べようと注意深く観察しているのだが、一向に見付からない。ポケモンが襲い掛かって来ることもあるが、手持ちのポケモン達が威嚇すれば簡単に逃げ出すので最近じゃ襲い掛かって来るポケモンも少なくなった。

 

その日も収穫無しで日が暮れ始めた。いつも通り、ハジメが作った野営テントで夜を過ごす。今、シアが夕食を作っている所だ。テントは生成魔法で作られたもので多機能な上に過ごしやすい。しかも、ポケモン達に見つかりにくいように作られているので安心して夜を過ごすことが出来る。

 

「はぁ……やっぱりライセンのどこかにあるってだけじゃ大雑把すぎるよね……」

「まぁ、他の大迷宮を攻略すれば何か分かるのかもしれんが……」

「……ここ正直嫌い」

「そりゃあ、ユエにとっては好ましくない場所だもんね」

 

ハジメ、誠司、ユエが愚痴を溢していると、シアが鍋を持ってやって来た。

 

「皆さん、ご飯が出来ましたよ!」

 

美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる。今日の夕飯はトマトシチューだ。鶏肉(トータスにはポケモンだけでなく普通の動物もいる)や各種野菜をトマトベースのスープで煮込んでいる。

 

誠司達は美味しそうに料理を食べる。シアも美味しそうに自分の作った料理を食べてくれるので嬉しそうだ。ポケモン達の食事は既に誠司が全員分、用意していたので、心置きなく食べられる。

 

「シアの料理は美味いな」

「ホント。シアがいなかったらどうなってたか……」

「シア、本当に料理上手」

「えへへ〜。お代わりは沢山ありますからね」

「グェ~ッ」

「「「「え?」」」」

 

聞き覚えのない声に誠司達は思わず声のした方に振り返った。

 

そこには青い身体の目つきの悪いポケモン、グレッグルが美味しそうにトマトシチューを平らげていた。しかも、ご丁寧にスープ皿を戸棚から取り出して。

 

誠司達は一瞬、ポケモンを出して追い出そうかと思ったが、このグレッグルに敵意は見られなかった。どうやら、お腹が空いていたところに良い匂いがテントからしたので勝手に入って来たらしい。勝手に入るのはどうかと思うのだが、グレッグルが無邪気な笑顔を浮かべるのですっかり毒気を抜かれてしまった。

 

結果的にグレッグルはハジメの手持ちになることに決まった。こんな形で仲間になるのは意外だったが、戦力が増えるのは有り難い。グレッグルはお腹一杯食べると、モンスターボールの中で満足そうに眠ってしまった。

 

グレッグルが仲間になるというハプニングがあった夕食が無事に終わり、その余韻に浸りながら雑談をしていると、誠司は何か思い出したかのようにトランクを開けて中に入って行った。どうしたんだろうと訝しげな顔をするハジメ達。

 

しばらくして、誠司はトランクから出て来た。手には複数のカップケーキを乗せたトレーを持っている。カップケーキはピンク色や黄色、薄緑色と色とりどりで目にも楽しく、それぞれ違う木の実が可愛らしくトッピングされている。カップケーキはトッピングの木の実に合わせて少し味も変えている。誠司が少し照れくさそうに言った。

 

「昨日から試作してたんだ。材料が少なかったからこれくらいしか作れないが、まぁ食べてみてくれ」

 

ハジメ達は嬉しそうにカップケーキを手に取った。そして、それを一口齧る。

 

「……うん! 美味しいよ。やっぱり誠司のお菓子は美味しいね」

「……ん! これ、ほんのり甘酸っぱくてクセになる」

「美味しいです! こういうのって良いですねぇ」

 

3人とも好評だった。誠司は嬉しそうに黄色のカップケーキを齧った。オボンの実の甘さがカップケーキを上手く引き立てている。久しぶりに作ったが、腕は鈍っていないようで安心した。地球には無い食材も色々使ったが、やはりお菓子作りは楽しい。それを再確認出来たのは誠司にとって大きな収穫だった。

 

そんなこんなで皆で楽しく駄弁っていると、就寝時間になった。野営の時は交代で見張りをすることにしている。ハジメが作ったテントは高性能だが、無敵ではない。危機的状況に備えて見張りをすることにしたのだ。それでも寝袋はフカフカで寝心地は非常に良いため、特に問題は無い。

 

スキンシップも兼ねてハジメとグレッグルが一緒に見張りをしていると、テントからシアが出て来た。少しモジモジしている。

 

「シア。どうしたの?」

「グェッ」

「えっと…… ちょっとお花を摘みに」

「谷底に花はないと思うけど?」

「ハ・ジ・メ・さ〜ん!」

 

デリカシーの無い発言にシアはキッとハジメを睨み付ける。ハジメは意味が分かっているので苦笑いしながら謝罪した。

 

「ごめんごめん、良い花があると良いね」

「はいですぅ! ではちょっと行ってきます」

 

そう言ってシアはそそくさと後にする。グレッグルは呑気に手を振っている。

 

しばらくして…………

 

「ハ、ハジメさ〜ん! 皆さ〜ん! 大変ですぅ! ちょっとこっちに来てくださぁ〜い!」

 

と夜中なのに馬鹿でかい大声でハジメや誠司達を呼ぶシア。その大声でテントから誠司とユエも飛び出した。二人とも「折角眠っていたのに……」と不機嫌な顔だ。

 

誠司達がシアの声がした方に向かうと、そこには巨大な一枚岩が谷の壁面にもたれ掛かるように倒れており、その間に人が入れるような隙間が空いている場所があった。シアはその隙間の前でブンブンと腕を振っている。その表情は「信じられないものを見た!」というような興奮で一杯だ。

 

「こっち、こっち、こっちですぅ! 見つけたんですよぉ!」

「分かったから少し落ち着け。頭に響く」

「……うるさい」

「まぁまぁ二人とも…… それで、シアは何を見付けたの?」

「ふっふーん! 付いて来れば分かります!」

 

はしゃいだ様子のシアに案内されて、岩の隙間に入る誠司達。その空間は意外と広く、中程まで進むとシアが得意そうな表情で壁の一部に指差した。

 

「これを見てくださいっ!」

 

そう言われて三人はその指先をたどって視線を転じると、そこには岩壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の看板があった。その看板には妙に女の子らしい丸っこい文字でこのように彫られていた。

 

『おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪ 命のポロリもあるよ♡』

他の岩壁をよく見ると、『か〜ら〜の~? 入口は内緒!』だの『ここからが本当の大迷宮! なんちって!』とも刻まれている。三人とも呆然と地獄の谷底には似つかわしくない看板を見つめている。

 

「「「…………」」」

「あれ? どうしたんですか? 大迷宮の入口ですよ! 偶然見付けちゃいまして。いや~、本当にあったんですねぇ、大迷宮って」

 

能天気なシアの声が空間に響いた。ようやく三人は硬直が解けたようで何とも言えない表情を浮かべてながら、お互い顔を見合わせる。

 

「……同じ大迷宮でも何でこんなにチャラいの?」

「……なぁ、ユエ。これ、本当に大迷宮だと思うか?」

「……『ミレディ』の名前がある。多分間違いない」

「やっぱりそこだよね…… それに、文章のセンスが古いままなのも本物っぽいよね」

「ああ、攻略者が来なさすぎて……か」

「ん!」

 

ミレディが聞いていたら地味に心に突き刺さりそうな台詞である。シアが振り返って尋ねた。

 

「それで……皆さんどうします?」

「俺としては今は勘弁かな」

「同感。明日準備を整えてから行こうよ」

「……んっ! 今はゆっくり休むべき」

 

こうして四人は翌日に大迷宮攻略をすることに決めた。




ハジメさん、グレッグルをゲットです。無邪気な性格の女の子です。

次回からライセン大迷宮に入ります。グレッグルが大活躍します。
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