魔獣使いと錬成師が合わされば世界最強   作:マロニエ19号

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ちょっと入れたいネタがあったので入れた結果、原作と少し違う感じの大迷宮になってしまいました。でもまぁ……あの解放者ならやりかねんような仕掛けばかりですが……


ライセン大迷宮

翌朝、誠司はトランクの中にいた。ライセン大迷宮の入口を発見したことを報告するためと、その大迷宮の攻略で使う手持ちを選ぶためだ。どのポケモン達も自分を選んでくれと言いたげな様子で誠司を見つめている。誠司は予め考えていたメンバーを発表した。

 

「よし。今からメンバーを選ぶぞ。今回の大迷宮では特殊攻撃は殆ど使えないだろうからな。物理攻撃を得意としていて小回りが効く者達を選んだ」

 

そう前置きを言いながら、誠司は名前を呼ぶ。ワンリキー、チゴラス、エリキテル、ヘラクロス、ヌマクロー……どれも物理攻撃が得意なポケモンばかりだ。ヌマクローもいわくだきが使えるし、腕力も強いので心強い。名前を呼ばれたポケモン達は元気良く返事をする。

 

「そして、最後は……「コンッ!」……ん?」

 

誠司が最後の名前を呼ぼうとした時、待ったが掛かった。キュウコンだ。誠司は怪訝な顔をした。

 

「どうしたんだ、キュウコン? もしかしてお前が行きたいのか?」

「コンコン!」

「だがなぁ……俺はお前じゃなくて別の奴を考えていたんだが……」

「コン!」

「いや、でも……」

「コンッ!」

 

誠司は渋るが、キュウコンは一歩も引かない。いつも冷静なキュウコンとは思えない姿に他のポケモン達もどうしたものかと顔を見合わせる。正直、自分を選んで欲しいという気持ちはどのポケモンにもあった。だが、それを上回る必死さが今のキュウコンにはあった。

 

誠司もそれは分かったため、若干困惑しながらもキュウコンを手持ちに加えることに決めた。そして、他のポケモン達はトランクの中で留守番してもらうことになった。

 

選ばれなかったポケモン達は最初は少し残念そうにしたものの、すぐに気を取り直して選ばれたポケモン達を応援してくれた。ヤレユータン達に食事は各自、自分で用意するように頼むと、誠司はキュウコン達をモンスターボールに戻してトランクから出て行った。

 

トランクから出ると、ハジメ達は既にテントを片付けて終わっていた。

 

「悪いな、片付けをやらせてしまって」

「ううん、大丈夫。それで、どのメンバーで行くのか決まったの?」

「ああ。多少の変更はあったが、こいつらなら問題無いだろう」

「……んっ。良かった。それじゃ、出発する?」

 

ユエの言葉に3人はそれぞれ頷き、昨晩看板を見付けた所へ向かうことにした。

 

「さてと…… ここに大迷宮の入口があるはずなんだが……」

「変ですねぇ……奥は行き止まりですし……」

 

シアは入口を探そうと辺りをキョロキョロ見渡したり、奥の壁をペシペシと叩く。その様子を見て、ハジメが「不用意に動き回らないで」と言おうとしたが遅かった。シアの触った岩壁が突如グルンッと回転し、シアはそのまま壁の向こうへ消えてしまったからだ。「ふきゃっ!」という間抜けな声と一緒に。さながら忍者屋敷の仕掛け扉のようだ。

 

誠司達は一度顔を見合わせると、深い溜息を吐く。この溜息はシアの短慮さに対してか、それともライセン大迷宮の残念さに対してか、どちらかは分からない。案外、両方なのかもしれない。誠司達は回転扉に手を掛けて中に入る。

 

中に入ると、誠司達は圧倒されていた。ゴツゴツした岩壁の中とは思えないくらいに綺麗に整備されており、壁には複数のランタンが設置されているため明るい。先に入ったシアはほえーっと見惚れていた。その時、壁に取り付けられていた白地に目元に赤と青のラインが入った仮面が野太い声で話し掛けて来た。作り物のようだが、口元の造形がヤケにリアルで流暢に動く。

 

『Welcome to the 大迷宮! ここは恐怖とスリル、驚きがいっぱいの悪夢の迷宮。世界最高峰の仕掛けが君達を待ち構える! 果たして君達は生きて帰ることが出来るか!?』

「「「「…………」」」」

 

誠司達は思わず呆れた目を仮面に向ける。この仮面のせいで危険な大迷宮が一気に遊園地のアトラクションに見えてしまう。仮面はしばらく経つと、また同じ文言を繰り返す。それがまたアトラクション感を出していた。

 

「ねぇ、何のアトラクションなの、これ……」

「ん……この仮面、何のためにあるの?」

「さぁな……お客のテンションを盛り上げるためじゃないか?」

「攻略者をお客って……」

「……要らぬ気遣い」

「あのう…… 大迷宮ってこんな感じなんですか?」

 

大迷宮攻略は今回が初めてのシアが困惑した様子で質問する。その質問に三人は目を剥いて反論した。

 

「「「いや、ここだけだから!!」」」

 

誠司達は何とか気を取り直して先を進むことにする。そんな矢先、またしてもシアがドジをやらかした。床にある仕掛けを踏んでしまったのだ。ガコンッという音が響く。

 

すると、頭上から何かが降り注いで来た。降り注いで来た()()の正体が分かると、女性陣は悲鳴を上げた。

 

それは蝉の死骸だった。ハジメ達は半狂乱になりながら、身体に付いた蝉の死骸をはたき落とす。地球でも夏の終わりに、道端で蝉の死骸が落ちていることはよくあるが、それが大量に空から降ってくれば誰でも嫌だろう。女性陣はもとより誠司も気持ち悪い。

 

蝉の死骸を全てはたき落として何とか全員が落ち着いた頃、それを見計らってか壁の石版に文字が浮かぶ。

 

『ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? 暗くて狭い迷宮の中でも季節を感じて貰いたくて、ミレディちゃんからのせめてものプレゼントだよ〜 まさに……蝉時雨だねぇ。情緒があるねぇ。プギャー』

「「「「…………」」」」

 

四人の顔にビキっと青筋が浮かぶ。ハジメがポツリと呟いた。

 

「ミレディ・ライセンは解放者云々関係なく、人類の敵で間違いないよね」

 

ハジメの言葉に他の三人は大きく頷いた。

 

 

それから、何度か罠に掛かったりしながらも先を進んでいると、ハジメが気付かずに床の仕掛けを踏みそうになった。その時、ボールからグレッグルが飛び出して間一髪で助けられた。

 

「こんな所にあったなんて……危なかった。ありがとう、グレッグル」

「グェッ!」

 

グレッグルは床や壁にある仕掛けを示した。どうやら、グレッグルは罠を感知することが出来るようだ。それを見て誠司もあることに気付いた。

 

「そうか。このグレッグルの特性は“きけんよち”か。それで罠とかが分かるのか」

「でも……どうして今の今まで教えてくれなかったんです?」

「グェー……」

 

シアがもっともな疑問を投げかけると、グレッグルは気まずそうに鳴く。グレッグルが言うには、“きけんよち”が発動するのは本当に命に関わるような危機に対してらしく、ハジメが踏もうとした罠は致死生の非常に危険なものだったらしい。それを知ってハジメは顔を引き攣らせる。逆に言えば、それ以外の罠では感知するのが難しいようで、ボールから今まで出なかったのもそのためのようだ。

 

しかし、それでも十分有難いので、グレッグルの力を借りて攻略を進めることにした。途中、何度かスタート地点に戻されたり、タライやらトリモチ、白い変な臭いの液体のぶっかけといった嫌がらせとしか思えない罠にやられたりしたものの、少しずつ先を進んで行く。

 

 

そして、いつの間にか攻略を開始してから数日が経過していた。宝物庫には食料も潤沢にあるので餓死の心配はない。グレッグルのお陰で致死性の罠は確実に回避し、罠もいくつか見付けてくれたので何とか怪我なく進むことが出来ている。

 

それなのに、攻略にこれほど時間が掛かっているのは迷宮のルートが一定時間で変わってしまうことが原因だった。そのため、マッピングしても意味を成さず、彷徨い続けていたのだ。おまけにミレディのウザい文で精神を削られていく。最初のうちは心の内をミレディ・ライセンへの怒りで満たしていたが、段々と「もうどうでもいいやぁ〜」みたいな投げやりな心境の境地にまで至っていた。

 

誠司はマッピングが無駄だと分かってからは諦めて一切していなかったのだが、ハジメはマメにマッピングを続けていたらしい。すると、ハジメ曰く迷宮構造の変化には一定のパターンがあるそうだ。

 

その情報を基に先を進むと、初めて見る部屋に辿り着いた。右の壁に二体、左の壁に一体の合計三体の騎士甲冑が立っている。そして、部屋の奥には祭壇のような場所があり、奥の壁に荘厳な扉があった。周囲を見渡してハジメは顔を顰めた。

 

「いかにもな扉だけど……それよりも、あの甲冑達に嫌な予感がするのは僕だけ?」

「……大丈夫。お約束は守られる」

「それって襲われるってことじゃないですか。全然大丈夫じゃないですよ!」

 

ハジメ達がそんなことを言っている中、誠司はジッと甲冑を眺めていた。それに気付いたハジメが尋ねる。

 

「あれ? 誠司、どうしたの?」

「いや…… あの甲冑達、何で持っている武器がそれぞれ違うのか少し気になってな」

 

誠司の言葉通り、ハジメ達も甲冑達をよく見ると、確かに装備している武器がそれぞれ異なっていた。片手剣のみだったり、片手剣二本だったり、剣と盾を持っていたりと様々だ。

 

「確かに気になるけど、急いで行った方が良いよ。また何か変な仕掛けがあるかもだし」

 

ハジメの言葉に誠司以外は全員、頷いた。誠司も若干気になりつつもハジメの言葉に異論は無い。誠司達は先を急ぐことにした。しかし、誠司は心の中の違和感を拭えずにいた。思い出せそうで思い出せない、そんなモヤモヤだ。

 

(何だ? この違和感……夢にもあんな感じのポケモンがいたような…… 確か、名前は……)

 

突如、ガシャガシャと金属の擦れ合う音が部屋中に響いた。嫌な予感がして誠司達は振り返ると、壁にいたはずの甲冑達が同時に動き出している光景が映った。その様にハジメは苦笑した。

 

「やっぱりお約束通り動き出したかぁ…… こうなったらやるしかないよね」

 

ハジメの声で全員、モンスターボールを構える。その時、誠司はようやく甲冑達の正体に気付いた。試しに甲冑の剣達に向かって魔獣図鑑を発動させると、やはり正解だった。

 

「皆、甲冑じゃなくて持っている剣を狙うんだ! あいつらは……ヒトツキ、ニダンギル、ギルガルドだ!!」

「「「キイィィィン!!」」」

 

誠司の言葉に正解と言うように三体が金属音のような鳴き声を上げる。シアが驚きの声を上げた。

 

「ええっ!? あれがポケモンなんですか?」

「正確には、甲冑達が持っている剣や盾がポケモンなんだ。多分霊力か何かで甲冑を動かしているんだろうな」

「ん……厄介」

「でも……やるしかないみたいだね」

 

誠司達はモンスターボールからそれぞれポケモンを出した。




次回で皆大好きな、あの解放者が登場します。

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